「ウッ…‥オ”エ”エ”エ”ェ」
死人の戦士達に囲まれた中、限界点に達した吐き気を堪えきれずとうとう口からソレを吐き出した──ウサギ頭のムッキリスケベの変態が。
「お前が吐くんかい!!」
前フリもクソもない唐突に起こったクソ展開にソフィアはつい吐き気を忘れて愛用のメイスで件のナマモノをぶん殴ってツッコミを果たす。
このテの創作モノでは騎士の得物といえば剣のモノが多いが、大きな魔物や甲冑を身につけた騎士の類いを■す場合、いちいち斬れるヶ所を瞬時に見極めたり斬鉄という変態的な技量を要求される上にリーチが微妙な剣よりも、普通に大きな鈍器による打撃で装甲の護りを無視して骨と臓腑を潰すなり、長槍等でリーチ外から貫く方がハードルが低いし致命傷を与えやすいから、この世界では近接武器といえば棍棒や戦鎚、長槍や斧槍にサイドアームとして肉厚のコンバットナイフか、それと長剣の中間くらいの刃渡りの小剣をベルトのアタッチメントを通して佩くのがスタンダードなのである。
…‥決してハリセンの代わりではないのだ!!
閑話休題、メイスで殴打されて仰け反るナマモノの口から飛び散る吐瀉物は光を反射し虹を描くが、神の傀儡とされた死人達もそれを被るのは生理的に嫌なのか、顔をしかめて一歩後退る。
なお、彼等の存在は怒涛の展開にブチギレたソフィアの意識から一時的に消えている。
「ねえ!何で今から戦おうって時に更に意味不明なナマモノに変態するの!?そんでもってゲロるの!?正直吐きたい気分なのはコッチだったんだよ!!」
「年頃の少女がゲロるのは絵面的にマズイだろう」
「既に取り返しがつかないくらいにやベー光景になってんだよ!!しまいにゃ叩き潰して肉団子にするぞ!ナマモノがぁ!!」
「…‥そうか、すまない」
「ま、まあ…‥わかってくれれば良いんです。一応、ヘル神との契約とはいえ、貴方が私達を助けに来てくれた事実には感謝していますし…‥」
流石に協力者にあたる彼女をマジギレさせるつもりはなかったのか、素直に謝罪するウサギ(笑)に、ソフィアも一先ずは怒りを鎮めた。
「いや──もっと凄い事になるから、先に謝っておこうと思っての事なんだが」
「…‥…‥ゑ?」
──が、束の間正気を取り戻した彼女も床に撒き散らされた黒いヘドロ状の吐瀉物がうねり、そこからム○クの叫びのあの狂気じみた断末魔のような表情をした貌をした人魂みたいなモノが無数に涌き出すという冒涜的な光景を間近で見せられて、そのあまりのおぞましさにハイライトが二度、タヒんだ──SAN値直葬である。
「眼には眼を、死者には死者だ!!」
「もうお前、神に裁かれろォ────!!」
アウトだろ、冥府の神に世界のバランスを立て直すように頼まれて来ておいてソレは完全にアウトだろ、ヴォーダンとやってる事が大差ないじゃないか、お前…‥!!という殺意と良心が入り混ざったソフィアの渾身のツッコミにこの明らかに邪悪な魔王とかその腹心の部下がやるような禍々しい所業を為したウサギ()は 待て、ちゃんと解説するから。
と、答えたのでソフィアはソレだけでヒトを殺せそうな視線を解いて、再び自分達から少し距離を取って此方の隙を伺っている敵の軍勢から眼を離さないようにしながら無言で説明を促す。
「まず、これは見てくれはソレッぽいがあくまでも変態した私の能力で生み出された産物なので実際の死者とは何も関係ない──此方の世界で分かりやすく言うなら魔法等で一から作り上げた使い魔のようなモノだ」
「それはそれで生み出す過程もその造形も悪趣味過ぎますね!!」
「しかしまあ、効果は抜群だ。見るが良い」
ウサギ()の言葉に釣られて襲撃者達の方を見ると──そこにはイカ臭い臭気が漂う中、白目を剥いて口から泡を吹きながら地に倒れ伏し、ガクガクと壊れたゼンマイ仕掛けの人形みたいな状態で痙攣する男達がいた。
「アレは標的の身体に後ろの孔から不法侵入し、憑く。そして憑かれた者の感覚は全て快感に変換され、それが三千倍に増幅されて快楽堕ちするのだ!!快楽に耐性の無い者ならばテクノブレイク必至だな!!」
「酷い…‥酷すぎる…‥」
二重の意味で昇天していくエインへリヤル達。
なんてモノを寄越してくれたんだ、あの世の神は──精神的に色々限界に達したソフィアはとうとう意識を失った。
はい、という訳でチュートリアルは終わり、ソフィアちゃんに殺意の波動とツッコミスキルがインストールされました(ニッコリ)。
ちなみに知ってる人は知ってると思いますが、ヴォーダンはオーディンの事です。
戦争大好き、知識と宝は奪うもの、な蛮族王を♂️イキさせる時が楽しみだァ…‥( ^ω^ )