【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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長くなった。
誰だ二話か三話構成にするとか言ったやつ。
引け(分けれ)なくなったじゃん。
そんな話です。嘘です。
続きです。




「-悪夢-ナイトメア」

◆◆◆

 

 第 14 話 

 

-悪夢-ナイトメア

 

×××

 

???編中編

????編

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

一つの、戦いの夢。

それは決して、現実などではない。あくまで、夢。

紡絆が夢の中だと実感し、見たモノ。

不思議な実感があったのだ。まるでアニメを見てるような、テレビを見てるような感覚。ヒーロー物のテレビを見てるだけの世界。

それは、未来。

過去ではなく、ひょっとすれば、ウルトラマンが紡絆に出した警告なのかもしれない。

その夢は、簡単なこと。

至極簡単で、単純で、終わりを意味する夢だった。

立ち向かうのは、ネクサス。メタフィールドを貼ったネクサスがファウストとバーテックスのような怪獣を相手にする夢。

ネクサスのコアゲージは鳴っていない。だが、何故かネクサスは片腕しか使っていなかった。時々右腕を使うだけで、メインは左。

二対一で捌き、攻撃を受け、吹き飛ばされ、翻弄され、ダメージを与え、光線を防がれ、最強技ですら防がれ、光線を受けて、重力を支配され、為す術なくコアゲージが鳴る。

ジュネッスとなっているネクサスは、ただ圧倒される。

どれだけ壊しても、どれだけ攻撃しても、どれだけ強烈な攻撃を与えても、どれだけ熾烈に攻めようとも、怪獣はものとしない。嘲笑うように回復し、再生し、無意味だと思い知らされる。

それどころか、ネクサスの動きを見極め、学び、凄まじい速度で学習して、叩きのめす。ビーストの特性を一段階成長させたような、習熟度。さらに、そこへファウストの力も加わる。ただでさえ厄介な怪獣に、強敵の力が入る。

どれだけ抗おうが、抵抗しようが、諦めなかろうが、未来は変わることは無い。

ネクサスの脚は砕かれ、腕を折られ、消耗し、ボロボロになり、光を奪われ、輝きが薄れる。

ただ孤独に戦い、一人で立ち向かい、その末に---負けた。

敗北した。殺される。いや、ウルトラマンが、紡絆が殺された。

そうしてウルトラマンはこの世界から消え失せ、世界が切り替わると、残ったのは守りたいものを守れず、蹂躙され、ただ壊される街並みと人間---ある者は抵抗し、ある神は人類を守ろうと結界を貼る。だが死のウイルスから生まれたヤツらが攻めてきて、抵抗する者は妨害され、神は、滅ぼされた。

それはつまり、人類の---

 

 

 

 

 

 

「ッ!? っだぁ!?」

 

心臓が波打ち、汗を流し、服はぐっしょりと濡れていた。

胸を抑え、激しい動悸と共に、意識と視界が蘇る。

勢いよく起き上がろうとした紡絆は、全身と主に肩の痛みでダウンし、天井を見た。

 

(知らない天井だ……って何回やるんだよ! 飽きたわ!)

 

同じネタをすれば、流石に飽きるもの。

口に出してなかったのが幸いと言うべきか、目覚めた紡絆は脳内(掲示板)で心配されるだけで済んだ。

 

(今のは……悪夢? それとも、俺の未来? ウルトラマンの警告? 分からない……どちらにせよ、負けたら人類の敗北ってか? まともに戦ったら勝てないことくらい、流石の俺でも分かる)

 

ただ嫌な夢、悪夢だと感じるだけで、紡絆に絶望の色などは見られない。

普段は馬鹿みたいな思考しかしない紡絆でも、こういう時は真剣だ。

 

(でもなぁ……正直、勝つ方法は知ってる。でも、方法がない。

俺に勇者としての力があれば、封印の儀を執り行うことでやつの御魂を引っ張り出せる……。

多分御魂に光線を直接撃たなきゃ消し飛ばせない。御魂の力は超再生。

ウルトラマンの光線技では肉体を破壊出来ても御魂までは届かない……樹海化は勝手に入れるから良いけど、あの世界に勇者を呼ぶ方法なんてまずあるのか? とりあえず状況整理しよう)

 

考え込んでいても、無意味だと判断した紡絆は今の状況を確認する。

右肩を抑えながら、痛みを我慢しながら体を起こして周りを見渡す。

部屋の大きさからして、マンションかアパートのどちらか。

部屋内にはダンボールがある他にトレーニングに使うような健康器具もあり、助けてくれた主の物だろう。

懐には無事エボルトラスターもあれば、部屋の中には自身のカバンもある。

そして違和感を感じて視線を肩や腕、脚に移せば、怪我をしていた箇所に包帯が巻かれていた。

 

(引っ越ししてきた人かな……。ベッドからいい匂いがする。でも申し訳ない。お礼を言って、去らなきゃ。

時刻はまだ夜……ストーンフリューゲルで傷を治して、次の戦いに備えないと。あの夢だか未来かは知らないが、片手しか使ってないってことは、傷が癒えてなかったってことか? 右肩が痛いし……やっぱり片手しか使わなかった理由これだわ)

 

携帯で時間を確認すると、まだ一日も経っていない。

勇者部のみんなから通知で返事や既読がなかったからか、心配するようなトークが来ていた。

ただ右肩は予想通りと言うべきか、削られているような窪みがある。

使えないことはないが、戦闘で多用するのは間違いなく痛みが発生して隙が出来るだろう。

 

「はぁ……腹減った」

 

思わずため息を零すと、腹の虫が鳴る。

友奈と東郷の手によってご飯を食べさせられた紡絆でも時間が夜食時だ。

カバンを探れば、3秒エネルギーチャージゼリーしかない。

腹の足しにもならなかった。

空腹という大変悩ましいことに悩んでいると、人の気配を感じる。この部屋の借主だろうか? 流石にお礼を言わずに去るほど無礼者でもない紡絆は大人しく待っていた。

そして、扉が開かれる---

 

「あぁ、やっと起きたんだ」

 

「あ……ど、どうも。この度は、ご迷惑をおかけしてすみま---」

 

「別に。邪魔だったから運んだだけ。あそこは普段使わせて貰ってるから騒ぎになると面倒なのよ」

 

(えぇ……?)

 

入ってきたのは、美少女と呼べるほどの同年代と思われる少女。

髪の色は濃い茶髪で、髪型は首くらいまでの長さのツインテール。赤いリボンで結んでいる少女だったが、鋭い目で見られたり何処か棘のあるような言い方に流石の紡絆も困惑した。

 

「えと……君が助けてくれたん、だよね?」

 

再度確認するように恐る恐る紡絆が聞く。

 

「さっきの話聞いてた? 邪魔だっただけよ」

「なるほど、助けてくれたんだな。ありがとう」

「はぁ!?」

 

妙にツンツンとしているが、残念ながらツンデレという存在を知っている紡絆にそんなものは通用しない。

すぐさま納得したようにうんうん、と頷く紡絆に対して、少女は意味不明と言うように叫ぶ。

 

「なんでそうなるのよ!?」

 

「まぁまぁ、落ち着きましょう? ほら、お茶飲む? それともご飯に……ご、ご飯にしますかね……?」

 

叫ぶ少女に対して、落ち着かせるように泣く泣く、と言った感じで3秒チャージゼリーを取り出す紡絆。

舐めてるのだろうか。正直殴っていい。

 

「どうしてそうなるのよ! てか、ここは私が借りてるマンションなんだけど!? 何勝手なこと言ってんの!?」

「細かいことは気にしちゃダメって習わなかった?」

「あ、アンタねぇ……っ! あぁああっ! なんなのよアンタッ! 頭のネジ外れてんじゃないの!?」

「あはは、よく言われる」

 

照れたように後頭部を掻いて、笑う紡絆。

皮肉すら通じないとは、流石の少女もたじろぐ。

そもそも、少女が言ったのは紡絆の本質なのだから正解である。

 

「褒めてないわよ……。はぁ……」

「ため息吐くと幸せが逃げるらしいぞ」

「アンタが言うか。アンタが」

「ん?」

 

きょとんと、首を傾げる紡絆。

ため息を吐く羽目になった原因である紡絆を睨むように少女は見つめるが、不思議とペースが崩されていることに気づく。

だからか、調子を戻すように話題を変えた。

 

「それよりアンタ、私と喋ってる暇があるなら帰んなくていいの? ご家族の方とか心配してる---」

 

「あ、俺もう居ないから」

 

「---はっ?」

 

笑いながら、それでいてあっけらかんと言う紡絆に、少女が困惑した。

だがそれでも、踏み込んではいけないはずの話題。常識を持っている少女は申し訳なさそうにした。

 

「ご、ごめんなさい……初対面の私が踏み込んじゃいけなかったわ」

 

「別にいいけど? てか、君は恩人だし。それに怪しい俺の情報を探るのは当然でしょ」

 

「自覚はあるのね……」

 

そう言いながら、なんで謝るのか理解出来ないと言った感じだが、理解出来ないのはこっちのセリフだと言いたい少女だった。

 

「ま、それよりさ。なんかお礼させてくれないか? この包帯巻いてくれたの、君だろ? 本当に助かった」

 

「別に何もいらないわよ……」

 

「………」

 

興味がなさそうに少女が紡絆から視線を外す。

紡絆は無言で見つめ、右肩を抑えたまま立ち上がった。その時にゴミ箱を透視して頷く。

 

「よし! じゃ、そこで待っていてくれ」

 

「は?」

 

「お腹空いてるだろ。調理場借りるな」

 

「別に空いてなんて---ッ!」

 

否定しようとした少女の腹の虫が、鳴いた。

体は正直なのか、否定しようとした瞬間に鳴ってしまい、少女は顔を赤める。

タイミングが問題だったのだろう。

 

「お礼くらいさせてくれ。それに、もし断ったら……」

 

「こ、断ったら?」

 

先程とは違う雰囲気に、少女は気圧されたように思わずごくり、と喉を鳴らす。

紡絆は真剣な表情で、口を開いた。

 

「料理された具材に申し訳ない」

 

「あ、そう……」

 

そして一瞬で雰囲気を台無しにした。

そんなことは知らず、紡絆は調理場へ入っていった。冷蔵庫を開け、ただ一言---

 

「うわ、予想通り全くねぇ……買ってくるか。というか、普段何食べてるんだ?」

「煮干しと弁当とサプリ」

「………普段から?」

「普段から」

「マジ?」

「別にいいでしょ、栄養に偏りがあるわけでもないし、私が決めることよ」

 

聞いた瞬間、頬を引き攣らせた紡絆。

言ってることはまともではあるが、流石の紡絆もそれはどうかと思った。

ちなみに紡絆は基本インスタントしか食わない人間なのでお前が言うなとしか言えないのだが。

 

「いやまあ、そうなんだけど……。はぁ、買ってくるから待っててくれ」

 

「いいわよ。そんなことしなくたって」

 

「俺がやりたいからやる。大丈夫だ、10分で片をつけてやる!」

 

「買い物に行くだけでしょ!?」

 

少女のツッコミを無視し、不用心にも紡絆は財布だけ持つとカバンや携帯を置いて玄関を開けて走っていく。

嵐のように去って言った中、一人残された少女は頭を抑えていた。

 

「……何なのよ、アイツ」

 

いつの間にか向こうのペースに持っていかれたかと思えば、いつの間にか料理を作られることとなった。

しかも初対面の相手なのにも関わらず、大事な荷物を置いていく始末。特に携帯電話なんて個人情報の塊だ。

パスワードがあったとしても、パスワードを解く方法なんていくらでもある。というか、ホーム画面で放置されてるのでパスワードが仕事していない。

だからこそ、少女は意味が分からないとしか思うことが出来なかった。

考えても仕方が無いため、少女は素直に待つことを選び---10分後には紡絆が袋を持って帰ってきた。

 

「お待たせ。あっ、苦手なものとかある?」

 

「特にないわね。……というか、本当に作る気?」

 

「うん。おかしいか?」

 

「おかしいって……どう考えてもおかしいでしょ」

 

「……そうか? 俺は恩を返したい。君はお腹が空いてる。ウィンウィンだ」

 

そういうことを言いたいわけではなかった少女だが、何を言っても何かと言い訳をつけて料理を作ろうとするだろう---もう作っていた。

やはり理解出来ないと少女はため息を吐き、不味かったら文句を言ってやろうくらいの気持ちで居ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

そして数十分後。

部屋中には香ばしい匂いが充満していた。お腹が空いてしまうような、いい香り。

出された料理はハンバーグ定食。ご飯、ハンバーグ、味噌汁、ニンジン、ブロッコリーに冷凍ポテト。

 

「ということで、ハンバーグだ」

 

「何が!?」

 

「まぁまぁ。召し上がれ」

 

「……変なもの入れてないでしょうね」

 

「変なものって? 普通の食材しか使ってないぞ?」

 

床に座り、怪しむようにテーブルに置かれた料理を見る少女に紡絆は不思議そうに見つめる。

まるで、そもそもそんな発想すらないような雰囲気だった。

だからか、少女は素直に一口食べた。

 

「……まぁまぁね」

 

「そっか、じゃあ良かった!」

 

「何がいいのやら」

 

味の感想を述べた少女だが、紡絆は嬉しそうに笑うと、自身も食べていく。

少女は美味しそうに食べる目の前の男の子を、ちらりと見てから同じく食べていた。

ちなみに少女とは違い、紡絆はお皿ではなく紙皿だ。箸も割り箸で、買ってきたついでに買ったのだろう。彼は無神経に家の皿を使うのではなく、気遣える男だった。

 

「だって、まぁまぁってことは不味くはないってことだろ? じゃあ普通に食べれるくらいの味ではあるってことだからな!」

 

「そ、それは……そうなるわね」

 

紡絆らしい、前向きな思考。

毒気を抜かれるような笑顔で答えた紡絆に少女は顔を逸らしながら肯定するしかなかった。

自分で言ったことから否定することも出来ないからだろう。

そして紡絆が作った料理。それは何処か暖かくて、何処か安心するような味。

彼の人格を現したかのような、他人のためだけに作られた料理は、普段弁当しか食べない少女に優しい温もりを与えていた。

 

「あ、そういや君って呼ぶの面倒だし、名前聞いてもいいか?」

 

「今更すぎるでしょ……それに名乗るなら自分から名乗るものじゃない?」

 

「それもそうだ。俺は、け---姫矢。姫矢って言います、はい」

 

確かに、と頷いた紡絆は何故か姫矢と偽名を名乗る。

少女は彼の名前を知らないので、当然の如く信じてしまう。

 

(なんだろうな、まだ名乗るべきじゃない……そんな予感がするような。お名前、お借りします。姫矢さん)

 

なお、本人も曖昧な答えしか持ち合わせていなかったが。

 

「なんで敬語? 別に良いけど……私は三好夏凜よ」

 

「じゃ……かりりん!」

 

「変なあだ名を付けるな! 馴れ馴れしいにも程があるでしょ!」

 

「あはは、はーい。夏凜ね。よろしく」

 

「い、いきなり下の名前……まぁいいわ。よろしく」

 

揶揄うために言ったのだろう。

笑いながら、すぐに修正した姫矢、もとい紡絆に夏凜は乗せられたのだと理解すると、複雑そうな表情をして挨拶を返した。

 

「ご馳走様」

 

「ん、お粗末様でした」

 

そうして食べ終えると、紡絆は紙皿などはゴミ箱に捨て、夏凜の皿を持っていっては洗う。

怪我人の割には、よく動く紡絆だった。

そしてお皿を洗い終わった紡絆は戻ってくると、夏凜を真剣な表情で見つめた。

 

「なぁ、夏凜。これも今更だけどさ」

 

「何?」

 

相変わらず、ぶっきらぼうな対応をする夏凜。だが、紡絆は気にしたような様子を一切見せないまま、口を開いた。

 

「夏凜って優しいんだな」

 

「どこが---」

 

「俺の事を深く聞かないこと。わざわざ包帯まで巻いてくれたところ。家を追い出さないところ。あと、俺の料理食べてくれたし名前も教えてくれたところかな」

 

「それは………興味が無いだけよ」

 

そっぽ向いて答える夏凜の姿に、紡絆はただ笑う。

ツンデレに相応しいツンツン具合だが、根は良いのだろう。

 

「でもさ、もし俺が襲ったりしてたらどうしてたんだ?」

 

「別に、撃退するだけ。アンタくらいぶっ飛ばせるわ」

 

「……い、意外と凶暴?」

 

「誰が凶暴よ!?」

 

ふと思った疑問を紡絆がぶつけると、夏凜の予想外の返答にかぶるっと体を震わせる演技をするが、夏凜が前のめりになって紡絆を睨む。

 

「あはは、夏凜って面白いなー」

「なんでそうなるの!?」

「はい、それよりこれ」

「アンタが出した話題でしょうが……で、これ何?」

「連絡先」

「それくらい分かってるわよ! なんで私が交換しなくちゃいけないのか聞いてんの!」

 

夏凜は気づいてないのか定かではないが、紡絆は顔が近いことを気にせず、携帯に触って操作すると夏凜に画面を見せるように差し出す。

が、突然そんなことされても夏凜の言葉が最もである。

 

「別にいいじゃん。また来たい時に連絡するからさ」

 

「なんで来ることが確定してんのよ……」

 

「夏凜に会いたいし?」

 

「………アホなの?」

 

「よく言われるけどアホじゃないぞ」

 

「それはアホなんじゃ……」

 

「アホじゃないです」

 

真顔で否定する紡絆に、ため息を吐く夏凜。

素直に諦めたのか、紡絆と連絡先を交換していた。というよりかは、拒否したら面倒臭いことになりそうと判断したのだ。

 

「夏凜」

 

「今度はなんなのよ……」

 

「ありがとうな」

 

「………ふん」

 

やはり素直ではないのだろう。

顔を逸らした夏凜の姿を見た紡絆は、優しい眼差しを向けるだけ。

なぜなら、頬が若干赤いのと感謝を受け取っていたのだから。

 

「さて、あまり長居しちゃダメだよな。俺もここいらで……いっつ……」

 

そろそろ時間的に帰らなければ、寝れないだろうと紡絆は起き上がった瞬間、痛みが再発したのか右肩を抑えては膝を着く。

そのような怪我を負っているのに料理したり買い物に行ったりしたら、それはそうなるだろう。当然のことで、自業自得だった。

 

「ちょっと……」

 

「大丈夫大丈夫。すぐ治るって」

 

「治るわけないでしょ、バカなの? それに外はもう暗いわ。帰ってる途中で倒れられたりしたら迷惑なのよ」

 

声をかける夏凜の姿に紡絆は平気というように笑うが、呆れたような表情をする夏凜は正論を述べていた。

 

「うぐ……な、何とかなるし……?」

「どうやって?」

「分からない!」

「はぁ……今日は泊まりなさい。夜は視界悪くなるでしょ」

「でも男女が同じ部屋で泊まるのは---」

「あぁもう、ウザったらしい! いい!? その体で今外に出て、倒れたりしたら色んな人に迷惑がかかんのよ! ここから出た後にすぐ倒れられたりしても私に迷惑がかかる! そんなのも分からないの!?」

「あっ、はいすみません」

 

目を逸らして答えたかと思えば、自信満々に分からないと言う紡絆。流石にイラついた夏凜は物凄い剣幕でまくし立てる。

その姿を見て、大人しくなった紡絆は反省したように正座をしていた。

 

「で、でも男女は危ないというかなんというか……」

 

「安心しなさい。触れたらぶっ飛ばすから」

 

「き、気をつけます」

 

すっかりと肩を縮こませた紡絆だったが、同時に彼は夏凜の人柄を、改めて評価していた。

いくら表に出さないようにしていても、彼女のお人好しな部分が出ている。

それはきっと、隠しきれない彼女の本心なのだろう。

 

(人付き合いが苦手で、素直じゃないだけで優しいよな。というか、典型的なツンデレといった感じか。でも、仲良く出来るといいなあ……同じ年代っぽいし)

 

ニコニコと笑顔で夏凜を見つめながら、紡絆は短時間で観察した上で整理してから夏凜の人柄を冷静に分析していた。

 

「何? 私の顔に何か付いてる?」

 

「いや、なんでもない」

 

そんなふうに見ていたのを感じ取ったのか、夏凜が訝しげな表情となって見つめ返すが、紡絆は笑顔のまま首を横に振る。

 

「……変なやつ」

 

「やめろよ、照れるだろ。よく言われるけど」

 

「褒めてないんだけど!? ったく、ほんっと変なやつなのね、アンタ」

 

呆れたように言う夏凜の言葉に紡絆の表情が笑顔から苦笑いへと変わっているが、否定はしなかった。

周りからの評価が既に変なやつ認定されてる彼からすると、一番か二番目くらいに言われ慣れてるセリフかもしれない。

 

「まぁ、でも……素直にお借りします。朝になったら出ていくから、学校あるし」

 

「はいはい、勝手にしなさい。迷惑にならないんだったらいいわ」

 

「ん」

 

こくり、と頷くと、紡絆は隅っこで寝転ぶ。

それを見て、夏凜はため息を吐いた。

 

「いや、ソファーあるんだから使いなさいよ……やっぱりバカなの?」

 

「いや、寝れたら良くない? 使ってもいいなら使うけど」

 

「こっちが寝づらいのよ。流石に私もそこまで非道ではないし」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

流石にそう言われると使うしかないため、紡絆は起き上がると遠慮がちにソファーに寝転んだ。

電気が消され、ベッドに入り込んだ夏凜の姿を見ると、紡絆は喋る---ことはせず、一瞬で睡魔によって意識が暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。

時間通り朝早く目が覚めた夏凜は、眠気を覚ます。

顔を洗って、着替えて、そして何となく、ソファーを見てみれば、無防備にも寝顔を晒しながら寝ている姫矢---紡絆の姿があった。

 

「……姫矢こそ警戒するべきだと思うけど」

 

今の紡絆は、ほぼ片腕しか使えないようなものだ。

もし夏凜が本当は別の目的があったり、命を狙ってたりしてたなら、この時点で紡絆は殺される。

なのにも、警戒しない。無警戒で今も眠っており、昨日の夜だってそんなの辞書にないと言わんばかりに、一切警戒することなく、妙にグイグイと来る。それも初対面の夏凜ですら分かるほど、如何わしい想いも悪意の何一つもない純粋に仲良くしたいという善意と想いで。

それに初対面でここまで他人に隙を晒す存在は、夏凜は見たことがなかった。

バカ、とも言えるし、間抜け、とも言える。

 

(まぁ……どうでもいいか。連む気は無いしあくまで邪魔だから助けただけ。どうせこれ以上関係が続くはずがない)

 

不思議な、変なやつとは思ったが、これ以降すれ違うことはあれど、夏凜は関わることはないだろうと興味を失せたようにマンションから出ていく。

鍛錬は決して辞めること無く、しっかりとスケジュールやメニューを作ってやっている。

そうして夏凜は朝の鍛錬を行っていった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の鍛錬を終えた夏凜が戻ってくると、鍵を使う必要もなく開いていた。

僅かに警戒しながら開くと、すぐに警戒を解いた。

なぜなら、靴がなかったからだ。鍵が開いていたということは、帰ったということだろう。

警戒して損したと言わんばかりに、息を吐くと、鍵を掛けてから夏凜はリビングへ入る。

飲み物を飲むために冷蔵庫から取り出そうと、冷蔵庫の前に立ち、開けば---

 

「……?」

 

夏凜ですら知らないお皿が入っていた。

正確にはお皿は知っているが、お皿を入れた記憶が無い。

飲み物を取り出して飲み、好奇心に従うように何かが貼り付けてある皿を取り出すと、そこには紙が貼られてあった。

目を通せば、『助けてくれてありがとう。温めて食べてください。あ、また来るからな』と書かれている。他のお皿にも紙があり、昼食とまで書かれている。

 

「……本当に、変なやつね」

 

何故か確定してる事項にため息を吐いた夏凛だが、用意された料理を棄てる---訳にも行かないため、呆れつつも渋々従って何気にバランスの整っている朝食を食べた。

その料理は---鍛錬の疲れを癒し、温もりが確かにあって、心を落ち着かせるような料理だった。

 

「なによ、美味いじゃない……」

 

悔しげに呟かれた、言葉。

コンビニ弁当しか食べてなかったのもあるが、誰かを想いやる心の籠った料理は食べる者に普通であっても美味しいと判断されるほどの、心が込められているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、夏凜が自身の部屋に入るまで木に登って監視していた紡絆は飛び降りた後、当然の如く傷が癒えるはずもない右腕と右肩に負担をかけないように左手でカバンを持ちながら家に帰り、風呂に入ってから学校の準備をしていた。

 

(さて、助けられたからには勝たないと。夏凜のことも心配だからなー。あれじゃ、誤解する人が多そうだ。根は良い子だし、それは避けさせたい。とりあえず……放課後、あの怪獣についてみんなに話してみよう。他は授業中に対策を練るしかない……転生者たちに頼るか、頼れるかなぁ……?)

 

次々と考えることが出てくるが、普段の言葉からして、真剣な場合は手を貸してくれるが、茶化してくるかもしれないと思うと、微妙そうな表情となった。

現に今もスルーしているが、罵倒されていそうだとも思う。

 

(いや絶対されてる。夏凜の家に泊まったし)

 

はぁ、とため息ひとつ零した紡絆だが、頬をパンっと叩くと気合いを入れ直した。

考えるのは後で、結局頼るしかないのだ。紡絆には昭和ウルトラマンならともかく、スペースビーストの知識はないのだから。

 

「よしっ、学校に行く---ってぇ! くっそっ!また右使えないのは嫌がらせか…!?」

 

毎度の事ながら右ばかり負傷してる気がした紡絆はビーストだかバーテックスか分からない怪獣に若干怒りを抱きながら学校へと向かった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

103:名無しの転生者 ID:INNqueu4T

で、ジード先輩見たく近距離で光線撃った結果、爆発に巻き込まれた気分はどうよ?

 

 

104:名無しの転生者 ID:xqv6FfWhY

おめぇ、ベリアル因子入ってない? 実は入ってるとか言われても違和感ないんだが???

 

 

105:名無しの転生者 ID:5hrFnYP/D

ついでにチョロそうなツンデレ女の子に助けられた気分はどうだよ

 

 

106:名無しの転生者 ID:5x7vaQ1Od

なんでイッチは行く先々で女の子ばかり知り合ってるんですかね…親友ポジおらんやんけ! 好感度分かんねぇだろ!

 

 

107:名無しの転生者 ID:ZPfhJ3dAg

ギャルゲーの世界じゃないから……

 

 

108:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>103-105

夏凜とは仲良くしたいと思った。

全身痛いけど、右肩が一番痛いので辛い。ベリアル因子とやらは多分ない。

そもそも前も思ったがベリアルって誰だよ……

 

 

109:名無しの転生者 ID:M45IuEtrw

長くてめんどいから割愛するが、基本的に善人しかいない光の国で、悪の道に堕ちた唯一のウルトラマン。後々追加で一人増えたけど、それまでは唯一だった。

宿敵であるウルトラマンゼロと何度もぶつかり、最期は自らが生み出した息子の手で引導を渡された悪トラマンゾ

 

 

110:名無しの転生者 ID:es1KUjxsE

>>108

そりゃ右肩食われてたじゃん。しかも集中的に。それで無事だったら怖いわ

 

 

111:名無しの転生者 ID:W1QSMnHHn

イッチって怪我治ったらすぐ怪我するよな。お前、マジでこの先死ぬんじゃないか

 

 

112:名無しの転生者 ID:RYcDuWmA1

なんか未知のスペースビースト出てきたしなー。マジでなんやねん、あいつ

 

 

113:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

本当に知らないから何も言えない……

 

 

114:名無しの転生者 ID:nx25SOZdM

あれ、でもなんか分かったようなやつ居たよな?

 

 

115:名無しの転生者 ID:VABxHEinD

>>111

少なくとも自爆覚悟のゼロ距離光線なんて連発すれば死ぬだろうな……。ネクサスは他トラマンとは違って軽減されることなく、そのままダメージ還元だし

 

 

116:名無しの転生者 ID:QBFCSNYmd

>>114

一応予想はつくけど、ワイよりイッチの方が分かってると思うで。イッチの専門分野だし

 

 

117:名無しの転生者 ID:gHMTrrJoC

え、マジ? 『あの』イッチが分かるのか!? あのバカでアホで間抜けで天然たらしのイッチが!?

 

 

118:名無しの転生者 ID:F+Zfisi+t

ば、バカな……イッチはバカなのに!

 

 

119:名無しの転生者 ID:NHv5IJlBU

『あの』イッチがだと……?

 

 

120:名無しの転生者 ID:LcKaVLuv6

ロリコンのイッチが……!?

 

 

121:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

あのさぁ……君ら相変わらず俺のこと毎回めっちゃくっちゃ言うよね。俺がバカなわけないだろ! いい加減にしろ! よく言われてるけど! んなわけないじゃん!!

 

 

122:名無しの転生者 ID:wnYEU0l+B

よく言われるってことはバカってことなんじゃないですかね……?

 

 

123:名無しの転生者 ID:s9vgxPxd0

話が進まん。

イッチがバカでもロリコンでも間抜けでもハゲでもアホでも変態でも天然たらしでもバカでもバカでもバカでも百合の間に挟まるクソ野郎でもなんでもいいから早く言え

 

 

124:名無しの転生者 ID:IE2V86OG1

そうだそうだ、はよ言えや

 

 

125:名無しの転生者 ID:e5fLsyuXK

 

 

126:名無しの転生者 ID:7s5X8vEed

刺されてもいいからはよ

 

 

127:名無しの転生者 ID:XAzw1vTcm

イッチがバカなのはいつものことだし周知の事実なんだよ。どうでもいいわ

 

 

128:名無しの転生者 ID:rB/7pdplu

今更何を言おうとも無駄だから

 

 

129:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

分かったよ……あとハゲてないからな。そこだけは許さんぞ。ロリコンでも変態でもクソザコナメクジでもその辺に落ちている落ち葉でも木の枝でもいいが、そこだけは許さん

 

 

130:名無しの転生者 ID:JwL5nioeT

誰もそこまでは言ってない定期

 

 

131:名無しの転生者 ID:tvA8j525q

その若さでハゲは洒落にならんもんな……サイタマ先生でもまだ生えてた頃だわ

 

 

132:名無しの転生者 ID:cQ/DsCqHc

若いうちは髪の毛ある方が良いよね……

 

 

133:名無しの転生者 ID:P0F2QtNgL

で、それよりどうなんだ? 分かることあるのか?

 

 

134:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

あっはい。

えーと、真面目に言うと、まずあの怪獣の正体はスペースビーストであり、バーテックス。ただ黄道十二星座ではないから、お役目とは関係ないバーテックスだと思う。向こうが黄道十二星座なら、こっちは黄道十二星座を抜いた八十八星座……七十六星座の中から現れる星座型バーテックスかな?

倒し切れなかった理由は御魂が持つ能力が『超再生』だったからだと思う。恐らく御魂自身がオーバーレイの範囲外に逃れて、そこから再生された。

クロスレイ・シュトロームを至近距離で撃って爆風で吹っ飛ばされる前に確認したから間違いない。ただあれでも倒すことも出来ずにアンノウンハンドに回収されたから間違いなく俺一人じゃ勝てない相手。

そしてあの遺跡は、ノアの結界という予想が正しいと可能性が出てきた。

その理由としては、ファウストが遺跡の神殿跡を狙ったこと。以前の戦いでチャンスだったのに撤退したこと。ヤツの言葉や行動から察するに、ファウストやスペースビーストは樹海、または遺跡じゃないと戦えないんじゃないかな……じゃなきゃ、今俺を襲撃したらいい話だ

 

 

135:名無しの転生者 ID:N9dwQcbyb

なるほどなぁ……にしては、普通のバーテックスより強かったような? いや、黄道十二星座の方はイッチを完全に殺す寸前まで追い込んだから向こうの方が強いか……でも別の強さがあるんだな

 

 

136:名無しの転生者 ID:YZ6aqyUOd

でもそうか、ということは勇者の力が必要不可欠なわけだ……どうやって遺跡に連れてくるんだ?

 

 

137:名無しの転生者 ID:9S4E9HRUZ

予想が正しければ、ノアの結界ということになる。

つまり……方法はあるはず。問題は強制召喚だからイッチが勇者を遺跡に連れてくる方法を知らないということか

 

 

138:名無しの転生者 ID:Krcrbf7yO

>>134

確かに襲撃されたら今の状態で街守らなきゃだしな。で、その星座は?

 

 

139:名無しの転生者 ID:RK/p6CHZ4

多分アレだな、スペースビーストという入れ物に星座を組み込んだ……『なり損ない』がビーストと融合することで生まれる存在……なのか? バーテックスとスペースビーストの融合の名を名付けるなら、融合型昇華獣かな

 

 

140:名無しの転生者 ID:S45jbpi2R

>>139

採用

 

 

141:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>139

いいね、それで行こう。おそらく間違ってないし

 

>>138

そう! 体に刻まれていた星を線で結ぶと星座が分かったんだが、そこが問題だったんだ。

まず、一番目立つ星座は腹から胸辺りに刻まれていたもの。

星の位置からして、ヤツの中枢となっている星座は『うしかい座』で間違いはない。

神話は詳しくないが、能力は『重力操作』。うしかい座にはギリシア神話の巨人の神、ティターン神族のアトラスは両腕と頭で天の蒼穹を支えていたという神話がある。もちろん、一説だから確定じゃないんだが……その神話を組み込んだのがあの融合型昇華獣なんだと思う。しかも、うしかい座のα星アークトゥルス(アークトゥールス)はおおぐま座の後ろを着いて回ることから『熊の番人』とも言われている。

 

 

142:名無しの転生者 ID:Krcrbf7yO

なるほど、だから頭には申し訳程度に牛みたいな角生えてたし人間みたいに背筋が伸びていたのか……。それにクマみたいな毛皮もあったし

 

 

143:名無しの転生者 ID:SdiikCU0o

流石イッチ。星座については詳しい。バカだけど

 

 

144:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

いや一言多いな!?

それはさておき、問題はまだある。

その二つ目がやつの両腕を真っ直ぐにくっ付けて見ると、そこにも星座があるってこと。

両腕の星を真っ直ぐ横に結ぶと、『りょうけん座』。

そもそも『うしかい座』ってのは二匹の猟犬(りょうけん座)を従え、拳を振り上げる巨人の姿を現している星座。

だから、二匹の猟犬(りょうけん座)が居たということはそれを従える『うしかい座』ということに繋がるんだ。

それで、融合型昇華獣は二匹の猟犬を召喚した……だからこそ、星座は『うしかい座』と『りょうけん座』ということは確定した……わけなんだが、実はまだありまして……。

あ、ちなみに猟犬だが、北側は『アステリオン』、南側は『カーラ』って言われてる。α星に至ってはコル・カロリと呼ばれてるが、アステリオンとカーラでいいと思う

 

 

145:名無しの転生者 ID:Y3w2SPUwp

そんな蘊蓄は今はどうでもいいんだが、つまり星座が二つ入っていて、その上でスペースビーストと融合! アイゴー! ヒアウィーゴー!したということか? アホか? なんだよ、そのてんこ盛り……!

 

 

146:名無しの転生者 ID:cBDC1WXkZ

やったのはザギさんなんだろうなぁ……

 

 

147:名無しの転生者 ID:C25GjMBK7

イッチに厳しいなぁ……というか、まだあるのかよ

 

 

148:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

こればかりはガチで吹き飛ばされるまで分からなかったんだが、背中見たらまた二つあったんだよ……。

で、またまた線で繋げてみれば、あらまあ、不思議なことに北斗七星で知られている『おおぐま座』と親子にあたり、尾の先に北極星ポラリスを持つ『こぐま座』がしっかりと見れちゃうんですよね……なんかパワー半端ないなコイツとは思ってたが、毛皮といいクマの性質も持ってると思う。

 

神話通りなら、確かおおぐま座はギリシア神話に登場する、森や泉の精(ニンフ)の一人でカリスト。

彼女は月と狩りの女神アルテミスの侍女だったらしい。

ところがカリストは大神ゼウスに気に入られ、ゼウスの子・アルカスを授かった。そのことを知って怒ったアルテミスは、カリストを醜い熊の姿にして森へ追いやったと言われてる。

それから15年の歳月が過ぎ、立派な狩人として成長したアルカスはある日、大きな牝熊と出会う。

その大熊こそカリストで、息子だと気づいたカリストは喜びのあまり自身の姿を忘れて息子に近づいていくが、母親だとは知らないアルカスは弓を引いた。

その姿を見ていたゼウスは二人を哀れみ、カリストをおおぐま座に、アルカスをこぐま座にしたと言われていて、だから二つはよくセットとして扱われてる。

 

それから導き出されるのは、四つの星座とスペースビーストの強さが合わさった融合型昇華獣……黄道十二星座のバーテックスに引けを取らない強さを持つ力とバグバズンの強さを持った怪獣の完成ってことになるの、かな? そこはわかんない。

ただ、多分うしかい座に関連する星座全部組み込んでるのかな……おおぐま座とこぐま座は一見関係ないように見えるが、りょうけん座はおおぐま座を追い立ててるように見えると言われてるし。

こぐま座は多分ついで

 

 

149:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

つまりイッチのをまとめると、星座であるうしかい座、りょうけん座、おおぐま座、こぐま座の特性を持ち、バグバズンの能力を継いだ新たな怪獣、融合型昇華獣。

四つの星座を取り込んでるだけあって、黄道十二星座のバーテックスに匹敵する力に、元となったビーストの特性と凄まじい学習能力を持つ…ということか。

本当にバグバズンでもバーテックスでもない、融合型ってのが似合うやつだ。でも逆に言えば、バグバズンで良かった。

大した能力はないし……だから四つ?

 

 

150:名無しの転生者 ID:4qpg50ajE

>>141 >>144 >>148-149

つまり実質ファイブキング

 

 

151:名無しの転生者 ID:Z2byvAB1Q

ファイブキングとかギンガですら二人(正確には二人と六人分の力)だしTDGですら(パワー、ミラクル、SVだから実質四人)だしゼットですら(変身者合わせて実質五人)で戦った怪物やぞ。

流石にそのクラスはない……ないよな?

 

 

152:名無しの転生者 ID:ALgoxDn6E

>>152

あったら流石のイッチもあっさり負けてんじゃないかな

 

 

153:名無しの転生者 ID:0AoKbju1P

というか融合型昇華獣とか呼びにくいな。どうせまだ出てくんだろ、その後に続く固有の名前付けないと。

 

 

154:名無しの転生者 ID:WVugzpmwF

とにかくイッチは昭和……平成……令和……神世紀のタイラント相手にファウスト含めて戦わなくちゃいけないのか。

しかも勇者必須。

 

 

155:名無しの転生者 ID:d7/0O4bjU

と言うよりは、星座四つなのは絶対とは思わない方がいいな。わざわざバーテックスとしてではなく、ビーストを使ったってことは>>138の言う通り『スペースビースト』という『入れ物』がなきゃ生まれない存在だろ。

そう考えたら一つの場合や二つの場合もあるかもしれん。

先入観は捨てておいた方がいい。むしろザギならやる。

だけど、少なくとも今回の個体の能力はタネが割れてるな。

重力操作、二匹の猟犬召喚、クマ特有の剛毛と剛腕などの身体能力。バグバズンの力。

見事なまでにバランスが整っているしバランス型かな?

それならイッチは一番は爪に気をつけた方がいいかもしれん。あれでもバグバズンは姫矢さんネクサスの脚に怪我負わせたし、それがより強化されてると思うと……厄介

 

 

156:名無しの転生者 ID:uo4IYPYaV

ただ前回の戦いで学習してるだろうからな……前と同じ戦い方で果たして勝てるのかどうか。

成長速度が未知数だ

 

 

157:名無しの転生者 ID:91I9dfPGl

そもそも勇者をどう呼ぶかも分かってないしな……

 

 

158:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

そこはなんとかするし、説明して頼んでみる。

戦い方については考えてるし、勇者呼ぶ方法は……出来るかどうか分からないけど、出来なかったら終わりだ。

実は昨日目覚める前に夢で負ける未来のようなのは見て、勇者も居ない、俺一人で挑んだ夢だった。たぶん言わなかったんだと思う。

だから一人じゃ負けるなら、みんなで勝つ未来に変えてみせる! 未来は変えれるからな!

 

 

159:名無しの転生者 ID:BABedRQv8

よう言うた! それでこそ男や!

 

 

160:名無しの転生者 ID:eQHnR0GXk

こんな時だからこそ不吉な夢は見るからな…ならお前の運命はお前が変えろ!

 

 

161:名無しの転生者 ID:ga8/HNSD8

これこそイッチやなって……!

 

 

162:名無しの転生者 ID:VX3b8Rw12

ところで右腕と右肩は右脚は平気なんですかね……?

 

 

163:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>162

右肩が一番だけど、光線を受けた背中も含めて全身すっげー痛いです(真顔)

あっ、そんなことより>>153の見て大事だなと思ったから、>>192頼んだ

 

 

164:名無しの転生者 ID:fDaPe8R8b

そんなことより……?(困惑)

 

 

165:名無しの転生者 ID:O73SZzPYo

ここで安価するんかよ!?

 

 

166:名無しの転生者 ID:4O9b4Ldx8

言うタイミング違くない? 勢いを台無しにしてて草

 

 

167:名無しの転生者 ID:8DekmkQFM

まぁ、それでこそイッチでしょ

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は学校を遅刻することは無かった紡絆は友奈と東郷と共に勇者部の部室に入ったまでは良かったが、暫く経ったというのにどう話題を切り出すか悩んでいた。

部活の方も大事にしたいという想いはあるが、遺跡のことをどう話したらいいか分からないのだろう。

 

「あー、うーん……うぅーん? あぁー……んー、……はぁ」

 

が、本人は頭を抑えながら体を曲げたりして考えるのに必死で、唸り声を出してることに気づかなかった。

今は特別誰かが依頼を行ってるというわけでもなく各々好きなことをしているので、そんな紡絆は目立っている。

 

「アレ、何?」

「えっと……私も分からないんですけど、今日紡絆くんずっとあんな感じなんです」

「何か悩み事でしょうか……紡絆先輩、あんまりなさそうですけど」

「樹ちゃん、そんなことないわ。紡絆くんも人間だから悩む時は悩むもの。ただ、今日は色々とおかしいわね……なんというか、動きも右側の方だけ普段とは違って緩やかというか鈍いし」

 

紡絆を除いた勇者部の女性メンバーたちは集まると、普段も奇行な行動が目立つ紡絆だが、それとは別で変な様子の紡絆に小声で話し合っていた。

そこでさらっとアレ扱いされたり失礼なことを言われたりしているが、当の本人はため息を吐いたかと思えば、ついには両腕を机に乗せてその上に顔を埋めている。

そしてぶんぶんと横に首を振ると、今度は後頭部を掻いていた。

周りから見ると一体何をしたいのか、はっきりいって分からないだろう。

 

「あー…あー……あーうー? ……なー」

 

しかも発声練習でもしているのかと思うような声の出し方をしている。

なお、本人は至って真面目である。

ちなみにだが、牛鬼は紡絆の背中に入って台襟から顔を出しながら寝ているので余計に真面目には見えない。

 

(俺らしくないよなー。普通に話すか。悩んでても仕方がない! 遺跡のことは結局どうしたらいいか分からないけど、なんとかなる! してみせる!)

 

そんなふうに考えた紡絆は心地の良いパンっと高い音が鳴るほどの威力で頬を両手で叩き、いざ話す---という行動に移るわけでもなく、叩いた頬が痛かったのか摩っていた。

 

「なんか自滅してない?」

「た、確かに様子が変だよ……」

「よーし、ここは私に任せて! しっかりと聞いてくる!」

「待って、友奈ちゃん。私も行くわ。気になることもあるし」

「それじゃあ、二人に任せましょうか」

「ここは部長であるお姉ちゃんの出番じゃ……」

「い、いいのよ。ほら、同じクラスメイトの方が話しやすいかもしれないし、先輩や後輩には話しにくい話題かもしれないでしょ。とにかく、頼んだ!」

「はい!」

「お任せ下さい」

 

女性陣による作戦会議を終えたのか、いてて、と頬を摩るバカな紡絆に友奈は車椅子を動かしながら東郷と一緒に近づいた。

そうして、背中を向けてる紡絆の肩をちょんちょんと友奈が突く。

 

「うお、どうした?」

 

「えっと紡絆くんの様子がちょっと可笑しいなって思って。もしかして悩み事? 相談なら乗るよ?」

 

振り向いた紡絆がキョトンとした顔で訊くと、友奈は早速本題へと入っていた。

悩んでいたのは事実だからか、紡絆は何処か納得したような様子を見せる。

 

「あー、そんな分かった? まぁ、ちょっと……」

 

「みんな分かってたわ。紡絆くん分かりやすいから……それよりも、悩みって紡絆くんの二の腕と上腕……あと右脚のことに関係ある?」

 

「え? あ、右肩と右腕という事ね……というかそれも分かってたのか? え? そんなわかりやすい?」

 

「わ、私はちょっとくらいしか……」

 

右肩から右腕にかけて動かしづらくなっていることについては隠していたつもりだが、あっさりと見抜かれていたことには紡絆は驚く。

そのことに思わず友奈にも視線を送った紡絆だったが、友奈はぶんぶんと首を横に振ってから頬を掻き、上記を述べていた。

 

「紡絆くんと友奈ちゃんのことなら大抵の事はお見通しよ」

 

「そっか。そうだな、大事なとこだし……風先輩、樹ちゃん。二人も聞いてもらっていいですか?」

 

何処か自信アリげな表情で言ってのけた東郷の言葉に特に違和感を持つことも怖がることも無く一言で片付けた紡絆は風と樹にも目線を向けて、そう言った。

 

「大事なこと? まぁ、紡絆が言うならアタシも聞くけど」

 

「あ、はい。私も……」

 

「俺もまだまだ分からないんですけどね。実は---」

 

前置きにまだ分からないことだけは伝えておきながら、紡絆は前日のことを全て包み隠すことなく話した。

昨日の夕方くらいの時間にスペースビーストと戦ったこと。その時、自身がウルトラマンと融合する前に、いつの間にか居た遺跡に三度目の転移が成されたこと。

闇の巨人であるダークファウストとバグバズンと呼ばれるスペースビーストと戦い、敗北したこと。

その理由がバグバズンを何とか倒したが、以前にも現れた紫色の闇---アンノウンハンドがバグバズンを強化し、その実体はバーデックスと合成された未知の敵、融合型昇華獣カウベアードであること。

名前から予想出来る通り、牛と熊の名に相応しくうしかい座、りょうけん座、おおぐま座、こぐま座の『うしかい座』に関連する星座全てがスペースビーストという入れ物に入り、バーデックスでもスペースビーストでもない未知の生物へ進化したこと。

能力が重力操作、二匹の猟犬召喚、クマのような剛毛と剛碗を持ち、バグバズンの力そのものも受け継いでいること。

負けた一番の理由が、カウベアードにもバーデックスと同じく御魂が存在し、超再生による再生能力が厄介なこと。

最終的にはジュネッスの光線を防がれたが、相討ちで何とか撤退させたことと、全身にダメージは残ってるが右肩からかけて右腕、右脚の怪我はその戦いでの影響だということ。

 

「---ということなんです」

 

「色々と驚いたけど……どうしてそれを言わなかったのよ? 特に遺跡なんて聞いたこともないけど?」

 

「いやー、それがですね。本当は夢、または精神世界みたいなものなんです。だから関係ないかなと話しませんでした。

それでも一度目は融合する条件だったにしても、三度も転移するとなると何かあるな…と思ったので話した次第です。

で、それが神樹様がバーデックスが出現したら貼る防護結界と同じようにスペースビーストや闇の巨人が現れたら貼られるウルトラマンの結界なのかと思ったんですよ。

実際にファウストは俺がウルトラマンとなった独特なオブジェクトがある神殿跡を狙ったり、触れようとしたら弾かれてました」

 

あくまで予想ですけどね、と付け加えて締める紡絆の言葉を聞いて、流石に関係ないと思っていたなら文句を言うことでもないと聞いていた面々は理解したように頷いていた。

 

「つまり、私たちがスペースビーストの存在を知らなかったのはウルトラマンが貼ってくれていた結界のお陰で、紡絆くんは私たち勇者のように危機が迫ると転移される……ということよね? でも、昨日の夕方なら私たちも召喚されたっておかしくないんじゃないかしら……」

 

「あっ、確かに! 紡絆くんの話だと、戦ったのはバーデックスも合わさったやつなんでしょ? なんで?」

 

「ふっ……俺が知ってるとでも?」

 

「自信満々に言うことじゃないです」

 

唯一の情報を持つものがドヤ顔で知らないと顔に出しながら答える姿に、困った表情をする。

が、冷静に飛んできた後輩の言葉には紡絆は目を逸らしていた。

 

「友奈の言う通り、そこは分からないわね。そもそもアタシたちは行けんのかね? そこの辺りはどうなの?」

 

「どうなんですかね……俺もエボルトラスターが鼓動して勝手に光って転移することしか分かりません。でも、一つだけ策としては考えてます」

 

「策?」

 

風の言葉に真剣な表情で答えた紡絆は、ちゃんと考えていたらしい。

当然分からないため、聞かれる。

 

「後で言います。で、ここから本題なんですけど……勇者の力がない俺には、怪我がありますしファウストも現れるでしょうから、次は絶対勝てません。

オーバーレイなら御魂を引き釣り出せますが、そうなると超再生を破れない…封印の儀が必要不可欠なんです。

だから……一緒に戦ってくれませんか? いや、お願いします……力を貸してください!」

 

策よりも大事なことだからか、本題へ入った紡絆は全員を見渡した後に誠心誠意を持ってお願いするように頭を下げる。

いつも一人で抱え込む紡絆のことを考えると、珍しい姿だ。だがこれは紡絆一人ではなく、全人類の命が掛かる戦い。

ウルトラマンが貼ったと思われる結界が壊されたら、現実世界にビーストが現れるかも知れない。

予想だから分からないとはいえ、『かもしれない』が事実だったなら、人類は間違いなく滅びるだろう。

ならばこそ、紡絆には選択がないのだ。もし自分一人しか関係の無いことだったなら、彼は抱え込んだかもしれないが。

後は---彼が見た、悪夢の影響もあるかもしれない。

 

「危険なのは承知の上です。お役目にも関係ありません。それでも---」

 

お役目に関係はないが、戦い。

死ぬ可能性もある戦いへ来て欲しいと頼み込んでるからこそ、紡絆は少し心を痛めながらも言葉を紡ぐ。

だが、そのことで---彼女たちが断ると思っているのだろうか。

紡絆の肩を叩く者。手に触れる者。裾を握る者。そして、顔を上げさせる者。

紡絆の顔が上がると、彼の視界には笑顔が咲いていた。

 

「なに水臭いこと言ってんのよ。そもそもアンタこそ、ウルトラマンとして戦ってくれてるじゃない」

 

「正直、隠すより言ってくれた方が嬉しかったわ。紡絆くんのこと、私も守りたいから。答えなんて決まってるでしょう?」

 

「あの……私じゃ頼りないかも知れませんけど、紡絆先輩が一人で戦うものじゃないと思います」

 

「友達が困ってるなら、助けるのは当然! 勇者として、友達として力を貸すよ!」

 

「みんな……」

 

誰もそれを断るという選択はないように、当然だと言うように頷きながら、笑顔で紡絆を見ていた。

申し訳ない気持ちはあるが、それでも頼れる仲間たちのことを見て、紡絆は嬉しそうな表情をした---

 

 

 

「ところで、すみません風先輩。そこクソ痛いんですけど」

 

「このタイミングで言うか!?」

 

「右肩削られてて痛いんですよ! 流石にこんな空気でも耐えれるかぁ!!」

 

紡絆のガチで痛そうな声が、部室内に木霊した。

相変わらず雰囲気を台無しにする姿は、流石というべきか---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、夕方。

紡絆は再び昨日と同じく、砂浜で海を眺めていた。

手にはエボルトラスターが握られており、負傷は治ってなどいない。

 

(恐らく、今日来る……。

あの夢を正夢にはさせないが、あれが本当の未来なら、左しか使ってないということ。それは回復する隙は与えなかったってことだし、俺だったらすぐ狙う。

掲示板の人たちも、同じ意見だ)

 

明日の可能性もあるが、それならそれで傷を少しでも治せるから良い。

だが、来ない可能性の方が低いというのが全体的な意見で、紡絆はその意見から考えて動いた。

そんな彼の予想を裏切ることもなく、エボルトラスターが鼓動する。

紡絆は迷うことなくスマホアプリのNARUKOでグループトークに来たことを打ち込み、送信する。

すぐに了承の返信が来たの見ると、紡絆の肉体は光に包まれ---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光の眩しさによって閉じた瞳を開くと、紡絆は遺跡へと召喚された。

やはり、呼ばれる形で転移させられるのだろう。

樹海化警報が鳴るように、此方はエボルトラスターが鼓動するのだろうか。

 

「さて……ウルトラマン、頼んだ!」

 

そのようなことを考えていたが、紡絆はビーストが現れる前にエボルトラスターを空へ掲げる。

紡絆の願いを聞き入れたようにエボルトラスターから()()()()()()()()()()が空へ打ち上がり、ストーンフリューゲルのようなオブジェクトのある神殿跡に突っ込んでいくと光はすり抜け、この世界から消失した。

 

「やっぱり、ウルトラマンの力なのか……? 予想は当たってる……のかもしれないな」

 

やったのは一応思いついていた策で、実行する前に掲示板に聞いて行ったこと。

ここがウルトラマンの結界内であるなら、ウルトラマンの力なら勇者を呼ぶことが出来るのでは? ということ。

もちろんやり方は分からないからウルトラマン頼りの行動ではあるが、紡絆の信頼に応えた、とも取れる。

 

「じゃあ、後は変身---」

 

 

421:名無しの転生者 ID:05577AVup

バカ!

 

 

422:名無しの転生者 ID:NwqkC67oZ

その前に右に避けろ!

 

 

 

 

「ッ!?」

 

ふと感じた気配と掲示板(転生者たち)に従うように右に転がった紡絆は、起き上がりざまにエボルトラスターと入れ替えるように取り出したブラストショットを背後に放った。

放たれた流動弾は、頭や手足の形状が昆虫で節足動物を思わせるものの胴体は体毛に覆われていた両腕の鋏と鞭のようにしなやかな尻尾を持つナニカに直撃し、消滅した。

隣に口を開けたカエルを思わせる外見をしている明らかなスペースビーストが驚いたような、憐れむように先程まで居た仲間らしき存在場所を見ていたことから、消滅したのもスペースビーストなのだろう。

そこへ容赦なく流動弾を一発放ち、リロードした後にもう二発連続で放つ紡絆。

 

『ガォオオオ……』

 

抵抗する火球を打ち消され、悲しみに溢れる鳴き声で消滅したビースト。

その姿に、紡絆は首を傾げる。

 

「やばい……解説聞く前に倒してしまった。なんだったんだ、あれは」

 

哀れ名も知らない瞬殺されたビースト。

 

 

424:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

カエルみたいなのはEPISODE.18に登場したアンフィビアタイプビースト、フログロス。

口からは体内の油を気化させたオレンジ色の火球を連続発射する。

設定上は地上だけでなく水中や地中でも活動することが可能と言われているが、劇中にそのようなシーンは無い。

もう一匹は同じ話とEPISODE.EXに登場するインセクティボラタイプビースト、アラクネア。

武器である両腕の鋏を使って地中を掘り進む能力を持つという設定があるが、劇中で使用されることもなければネクサスと戦うこともなくナイトレイダーにやられた可哀想な二匹だ。

ちなみに前者だけは大怪獣バトルと映画で登場した。

 

 

 

 

すぐに解説がくると、10mくらいしかなかったとはいえウルトラマンとして倒すべきだったかと若干紡絆は同情したが、消耗したくなかったので気にしない思考へ即座に移行した。

 

「ん? うわっ!?」

 

すると今度は紫色の光弾が足元の地面に着弾し、地面に転んだ紡絆は次々と飛んでくる光弾をぐるぐると横に転がりながら避けると、ブラストショットを再び放つ。

だが、放たれた流動弾は簡単に弾かれてしまった。

 

「ダーク……ファウスト……!」

 

『フハハハ……あの程度では光を纏う必要はないようだな』

 

睨むように紡絆が見つめると、正面に居たのはダークファウスト。

光弾を放ったのも、流動弾を弾いたのも、ファウストなのだろう。

 

『ん? ほぉ……まさか、その肉体で私と戦う気か?』

 

「そんなのはどうだっていいだろ。それより何故俺に付き纏う? お前の目的はなんだ!?」

 

紡絆の肉体が回復していないことに気づいたようにファウストが疑問を投げかけるが、紡絆はファウストに対して探りを入れる。

 

『私は影、無限に広がる闇の権化だ。

貴様という光が、私という影を生み出した。光があれば、自ずと影は生まれる。無論、闇もな。

貴様という光は、闇の者にとっては邪魔者でしかない』

「ややこしいな! つまり結局は人類を狙うためにウルトラマンの力を持つ俺を潰したいだけだろ! あまり変な言い回しされると分からないんだよ!」

『……低能なヤツめ』

「誰がバカでアホで間抜けで天然だ!? バカって言った方がバカなんだぞ!」

『何を言っているんだ……?』

「今度から分かりやすく話せと言ってんだバカ。バーカバーカ!」

『フン、貴様の無駄な知恵をこんなことで回すよりも、貴様が光であるならば、言葉ではなく行動で示すといい。さぁ、纏え光を! 纏わなければ滅ぼすだけだ!』

「無駄な知恵って……なんて嫌なこと言いやがるんだこいつは…! でも、そんなことさせはしない! みんなの明日を、お前のような影に覆わせるわけにはいかないんだ!」

 

子供のような煽り方をした紡絆だが、ブラストショットを収納すると、エボルトラスターを取り出す。

それと同時に、近くで暗雲が立ち込め闇の中からカウベアードが現れ、紡絆は内心で舌打ちした。

 

(まだ友奈たちは来てない……! これ以上の時間稼ぎは無理か! だったら来るまで戦うまでだ!)

 

そう、あくまで紡絆が会話に持ち込んだのは、時間稼ぎ。

だがそれは無理になったようで、巨大化したファウストを見ながら紡絆はエボルトラスターの鞘を左手で持って左腰に構え、右腕で本体を前方に引き抜く。

 

「バカにしたのは許さないからな!」

 

---時間稼ぎのはずなのだが、本当は根に持っているのかもしれない。

それはともかくとして、前方に引き抜いた本体を右腕を後ろから前に回して本体を空に掲げた。

その瞬間、紡絆は眩い光に包まれ、その肉体を銀色の巨人の姿へと変貌させる。

 

『うっ……シェアッ!』

 

『ギィェアア!』

 

全身が痛むのか、僅かに止まったネクサスだが、気合を入れるように両腕を勢いよく振り下ろすと即座に腰を深く落とし、アンファンスの姿で走り出す。

迎撃するようにカウベアードが同じく走ってきて、ネクサスは手刀の形を作って腹部を横から打ち付け、さらに素早く回転して腕を叩きつける。

そしてジャンプし、顎元へ蹴りを決め込んだ。

カウベアードは吹き飛び、蹴り込んだ際に倒れたネクサスは起き上がると---

 

『ディェヤッ!』

 

『ぐあっ!?』

 

ファウストの拳による一撃を顔面に受け、顔を抑えながら反動で一歩下がると、()()を殴られ、抑えた瞬間には蹴り飛ばされた。

 

『……デェア!』

 

『ガァァアアア!』

 

『ハァアアア……!』

 

二頭の猟犬が現れ、棍棒を捨てたカウベアードの両手の爪には赤いエネルギー色が纏われる。

ファウストを含め、四体一。

油断なくネクサスは見据えながら、右肩をひと撫ですると問題ないと判断したのか、アームドネクサスから光の鞭、セービングビュートを形成して武器のように構えながら警戒していた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方で、忘れては行けないだろう。

勇者部の女性陣は、集まって待っていた。

何かをする訳でもなく、ただスマホを持って、勇者のアプリをいつでも起動させられるように待機しているだけ。

 

「このままで良いのかな?」

 

「紡絆先輩からの通知を見たら、十分くらい経ってますけど……何も来ないですね」

 

「うーん、紡絆は何とかするとは言ってたけど、本当に大丈夫かしら」

 

だが流石に時間が経っていると、心配になるのだろう。

そもそも本人が方法も分からないと言ってる時点で、賭けに等しい。

 

「友奈ちゃん、みんな、あれは?」

 

その時、ふと窓側を見た東郷は何かに気づいたように指差していた。

東郷の言動にそれぞれ反応すると、窓側を見る。

 

「え? なになに?」

 

「何かのお祭り……なわけないでしょうね」

 

「と、というより近づいて来てるような……」

 

「あれは……光?」

 

突然打ち上がった光に注目していると、徐々に近づいてきている。

そのことに気づいた勇者部の女性陣は訝しげになるが、光は四つに別れ、突如として加速した。

 

「わ、こっち来てる!?」

 

「しかも増えてるじゃない!」

 

「ど、どうしよう……」

 

「待って。あれが紡絆くんが言ってた方法なのかもしれません」

 

「ということは……えっと、みんな! そろそろ準備!」

 

「「は、はい!」」

 

「わかりました」

 

流石に慌てていたが、東郷の言葉ですぐに風は指示を出す。

その直後、光は加速後に窓へ突っ込み、壊すこともなくすり抜けると、友奈や東郷、風や樹たちは思わず目を閉じた。

何も無いことに直撃した彼女たちは目を開くと、光が優しく、暖かく包み込んでいるのを感じる。

そして四人は、目が開けられないほどの眩い光に照らされた---

 

 

 

 

 

 

 

四人が再び目を開け、視界が鮮明になると、その場所は変わっていた。

先ほどまでいたはずの勇者部の部室のような雰囲気も場所も何一つなく、夕陽に照らされる遺跡の世界。

何個か建造物があるが、一番目立つのは何らかのオブジェクトと思われる独特な巨大な神殿跡。

 

「ここは……?」

 

「ここが紡絆くんの言ってた遺跡……あの神殿がウルトラマンの結界が貼られている場所かしら」

 

「紡絆先輩は何処に……」

 

「探すのは後! 先に変身しておくわよ!」

 

周りを見渡していた四人だが、ハッと気づいたように風はみんなに言うと、勇者としての力をその身に纏う。

それぞれ違う色の花が咲き、戦うための力を身に纏うと、勇者としての強化による効果か、視界に捉えたものがあった。

 

『シュア……デアッ!』

 

『フン、フアアァァ!!』

 

『ギィャァオオオオ!』

 

それは、空。

空中で浮くファウストとセミのような長く透明な羽を生やしたカウベアード。

そしてネクサスがマッハの速度で戦い合っている。

あらゆる方向へ飛び回る空中戦。

ネクサスが形成した光の鞭がカウベアードとファウストへ向かうと、両者はそれを弾き、ネクサスはしなやかにあらゆる方向から振るうことで攻撃をする。

鬱陶しくなったのか、闇のエネルギーを纏ったファウストが手刀で打ち消し、赤いエネルギーを纏ったカウベアードが爪で打ち消す。

しかし素早く接近していたネクサスがアームドネクサスのエルボーカッターでカウベアードの肉体を切り裂くと、一瞬にして再生。

空中で一回転することでファウストの攻撃を躱したネクサスに対して、カウベアードが爪を振り下ろす。

それを逸らし、腕を掴みながら投げるために背中をカウベアードに向けると、阻止するようにファウストが僅かな隙間の背後からネクサスを蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされたネクサスは両手足を広げることで空気抵抗を減らし、ブレーキと同時に、振り向いて光刃からパーティクルフェザーを飛ばすと、ファウストが手の先から放つダークフェザーで相殺。

爆発の中、口から紫の弾を吐き出したカウベアードの攻撃がネクサスへ向かい、爆発の中から突然来た攻撃にバリヤーを貼ることを間に合わないと悟ったネクサスが両腕をクロスすることで防御する。

 

『う……アアアアァァ!?』

 

だが、それは重力の塊。

受け止めきれない重力のエネルギーに耐えきれず、ネクサスは墜ちていく。

墜ちながらもネクサスはアームドネクサスを輝かせ、両腕を横に振ることで塊を真っ二つにする。

 

『ハァ……ハァ……デェヤッ!』

 

『ハアッ!』

 

加速し、一回転しながら勢いを殺すことなくファウストが脚を振り下ろす。

右腕を前に出し、それを腕でガードしたネクサスは、即座に退いた。

瞬間、カウベアードの突進が見事に空振るが---

 

『ガルゥ!』

 

『グルル!』

 

『ぐううっ!?』

 

カウベアードの両腕にある紐のようなものが光ると、二匹の猟犬が出現。

ネクサスの両腕を封じるように噛みつき、さらに通り過ぎたカウベアードの尻尾がネクサスの首を掴む。

そのまま突進の勢いを殺すことなく真っ直ぐに地面へ向かっていくことから、このまま行けば地面に叩きつけられるだろう。

だがそれは---この時点で()()()()()()()()、だ。

 

「自ら来てくれるなんて、ねっ!」

 

「お姉ちゃん、こっちは私が……!」

 

「紡絆くん!」

 

『フッ!? ……ジュワッ!』

 

風が跳躍し、大剣を横にして構える。

樹のワイヤーが一匹の猟犬を掴む。

そして風の大剣が振るわれると猟犬は吹き飛び、もう一匹は樹のワイヤーによって投げられる。

さらに友奈が拳を強く引き絞りながら跳躍し、東郷の狙撃銃による射撃が尻尾に直撃し、拘束が外れる。

ネクサスは驚いたような反応をしながらも頷いて真っ直ぐに上昇し、友奈の引き絞った拳がカウベアードの腹部を殴り飛ばした。

 

『何故勇者が……ハッ!?』

 

『ヘェアッ!』

 

上昇したネクサスが固まっているファウストに近づくと、体を抱いて一気に下降。

そのまま地面にぶつかる寸前で投げ、ネクサスは転がるように着地する。

 

「紡絆くん、大丈夫?」

 

「お待たせ! あれ殴ったけどちょっと硬いね。効いてる感じしないかも」

 

「アイツが封印が必要なわけね。確かに厄介だわ」

 

「間に合って良かったです……」

 

各々言いたいことを言っているが、ネクサスは平気というように頷く。

そして視線を一人一人に移し、腰深くではなく、いつものように力強さを感じさせるような構え方をした。

 

『シュア』

 

「とにかく、あれは封印の儀が必要みたいだから、重力には気をつけつつ、封印するわよ! 紡絆はファウストだっけ、抑えられる? 東郷はウルトラマンの援護をしながら、あたしたちの方もいけそうならお願い」

 

「はい!」

 

「うん!」

 

「了解です」

 

ネクサスが頷き、勇者たちにも部長をしてるだけあって相応しい指示をする。

それに答えた勇者部は各々の武器を構えた。

 

「紡絆くん、気をつけて」

 

東郷はネクサスを見ながら言うと、距離を離す。

安全なところから射撃するために離れたのだろう。

 

『まぁいい。性能を確かめるいい機会だ』

 

『ギァオオン!』

 

起き上がったファウストとカウベアードよりも先に、二匹の猟犬がネクサスに飛びかかる。

 

『ハアッ!』

 

ネクサスは冷静に腕を振ると、光が水に落ちたような音がした。

美しい水の波紋のような光が、水面に流れる波紋のように、ウルトラマンの表面を流れる。ネクサスは二匹の猟犬の下を前転で回避し、前に踊り出ながら姿が一瞬で変わる。

銀に染まっていた体は、赤や黒の比率が高い体へ変わり、胸部の生体甲冑を形成する胸部にはコアゲージが現れ、その姿を赤いジュネッスへと強化変身させた。

 

「やああぁぁ---ッ!」

 

「ええい! 邪魔!」

 

ネクサスが避けた二匹の猟犬は友奈と風の一撃に叩き落とされ、ネクサスはジュネッスに変身すると同時に両腕のアームドネクサスを左側で十字に組み、手首に青い輝きの粒子を右手に集めて大きく右側に弧を描く。

そして脇を絞ると、右腕を掲げて光線を空高く撃ち上げた。

光は途中で止まり、そこからドーム状の黄金色の光がこの場の全員を包み込んだ。

 

『自ら命を削るとは……愚かなヤツめ。無駄だということを知るがいい!』

 

ファウストが嘲笑うと黄金色の空間の中、両腕を上に向けることで黄金色の空間を赤黒いエネルギーが覆い尽くす。

光は呑み込まれ、世界は汚染された闇の世界へと変貌する---ダークフィールド。

だが、ネクサスは気にした様子はない。

恐らく、貼ったのは神殿跡を守るためだろう。

ここから始まるのは、命懸けの戦闘(三分間の制限時間)

 

『フゥ……デェヤッ!』

 

両拳を構え直し、ネクサスが一気に走る。

彼の背後からは銃弾が横を過ぎ、ファウストがダークシールドで銃弾を防ぐ。

そこをネクサスがシールドを殴り、弾かれる。

シールドを打ち消したファウストはネクサスの脛を蹴り、怯んだところで拳の甲を横に振るうことでネクサスを横へ吹き飛ばした。

援護するように飛んできた銃弾を避け、超人的な視覚で東郷の場所を割り当てたファウストはダークフェザーの構えを取るが、ネクサスが背後から羽交い締めする。

 

『フンッ!』

 

『グハッ……!? デェアッ!』

 

暫く抵抗していたファウストだが、胸部に連続で肘打ちして拘束を外す。

が、膝を着いたネクサスはすぐに地面に手を着いてくるりと半回転しながらファウストの足を巻き上げるように蹴り、ファウストが浮いた瞬間には銃弾が何発も襲った。

 

『グウゥ……!?』

 

『シュ…! へアッ! デェアッ!』

 

体勢を整えることが出来ずに転んだファウストに対して、ネクサスは跨るとファウストの胸を手刀で叩き、顔面を殴り、肩を拳で攻撃する。

攻撃を受けていたファウストだったが、ネクサスの両腕を掴むと脚を利用して後ろへ投げ飛ばした。

ネクサスは受け身を取るが、即座に転がりながら起き上がり、互いに様子を見るようにネクサスとファウストは向き合って構えながら、回るように動いていた。

 

「いい加減しつこい!」

 

「やっ! はっ! ハアァァ!」

 

一方で、風と友奈は何度も向かってくる猟犬を迎撃していた。

大剣という振るうことに時間を掛かる部分を樹が拘束することで時間を稼ぎ、ワイヤーで縛り上げながら目だけで通じ合い、大剣を振り翳す瞬間には拘束を解いて直接ダメージを。

友奈は流れるように拳から足技へ移行し、蹴り飛ばす。

すると、ついに猟犬は消滅する。

 

「友奈! 本体行ける!?」

 

「はい! 片付け---わぁ!?」

 

「また〜!?」

 

消滅したはずの猟犬は復活し、今度は勇者を無視する。

凄まじい速度で地面を蹴りながら通り抜けられた友奈たちは思わず後ろを見るが、そこにはファウストと向かい合っていたネクサスがいる。

 

『へアッ!? ぐっ……シュワッ!』

 

反応したネクサスがパーティクルフェザーを飛ばす。

二匹の猟犬は回避し、ネクサスへ飛びかかった。合わせるようにファウストも殴り掛かり、どちらを優先すればいいか分からないネクサスは迷い、先に飛んできたファウストの攻撃を顔を逸らすことで避け、連続攻撃を下がらないようにしながら手で落とし、弾き、防いでいく。

 

「お姉ちゃんと友奈さんは本体をお願いします! 紡絆先輩への援護は私が……!」

 

「でも……」

 

「風先輩、行きましょう!」

 

「分かったわ、頼んだわよ!」

 

「うん!」

 

友奈と風はカウベアードの方へ。

樹は今にも噛み付こうとしている猟犬の一匹をワイヤーで拘束すると、地面へ叩き落として細切れにした。

残る一体の方へワイヤーを向けるが、間に合わない。

ワイヤーが伸び、猟犬の口が開く。

 

『ッ!? デェア……!』

 

「間に合わない……!」

 

右肩を庇うようにネクサスが猟犬に対して、ファウストの腕を掴むと位置を変えて左肩を向ける。

大ダメージを負うよりも、傷を増やす方を優先したのだろう。

ワイヤーは伸びていくが、一手足りない。

そして、猟犬はネクサスの左肩を噛み付き---牙が触れる直前で、大量の風穴を空けながら吹き飛んだ。

樹の傍へ、降り立つ一人の影。

 

「紡絆くんの邪魔はさせない……!」

 

「東郷先輩!? 遠くから撃ってたんじゃ……」

 

「位置があの巨人にバレてたから、移動してたの」

 

「な、なるほど……助かりました」

 

そう、正体は東郷。

手に持つのは、散弾銃(ショットガン)

至近距離で撃てば撃つほど威力が強くなるそれを、至近距離で当てたのだろう。

 

『シュアァッ! デアッ!』

 

『グオッ……!?』

 

ネクサスは即座に前蹴りでファウストを吹き飛ばすと、東郷と樹に頷き、カウベアードに指差した。

そこには、口から吐く重力弾を避けながら近づき、攻撃を加えつつも封印には至れてない友奈と風の姿が。

 

「そう、分かった。樹ちゃん、私たちは友奈ちゃんと共に封印を」

 

「え? でも……」

 

「紡絆くんは、ウルトラマンは私たちを信じてる。だから、向かうように言ってるのよ。私たちはそれに応えましょう?」

 

「分かりました。行きましょう!」

 

ネクサスが言いたいことを理解した東郷は頷くと、樹を説得して援護へ向かう。

ネクサスは拳を構え、ファウストと再び向かい合った。

 

『時間稼ぎか……だが、貴様の光を奪ってから奴らも始末すればいいだけのこと』

 

『フッ……デェアァァアアアア!』

 

『ハアアァァァァァ!』

 

そうはさせないと、ネクサスがファウストへ駆け出す。

ファウストも駆け出し、ネクサスとファウストは互いに拳を突き出し、交差した。

そして互いに振り向くと脚を上げてぶつけ合い、戻すと肘同士を打ち合う。

そこから背中合わせとなって互いに投げようとしていた。

完全なる、互角の戦い。しかし追い詰められているのは闇を強める空間であることから、制限時間があって肉体ダメージも引き継がれているため、徐々に弱っていくネクサスであることは、両者共に理解していた。

なればこそ、ファウストは撃破しなくとも時間稼ぎすればいい。だからこそ、ネクサスは勇者たちを向かわせた。

その光景は、まさしく光と影に相応しい。

そしてまた、その光景は前回のお役目でウルトラマンが勇者を助けていたように、今度は勇者がウルトラマンを助けるという綺麗な共闘関係になっていた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫色の空間が、カウベアードから一定の範囲を覆っていた。

そこには二人の少女が精霊によるバリアに守られながら、地面に伏せている。

 

「友奈! 動ける!?」

 

「んんーっ! 重たくて、難しいです……!」

 

「そっちもか……!」

 

大剣を地面に突き刺してそれを頼りに何とか起き上がる風と気合いで起き上がることに成功している友奈。

しかし、そこはカウベアードによって作り出された重力場。

起き上がることに成功したところで、動けるとは限らない。

 

「うう、急がないと紡絆くんが危ないのに……!」

 

「どうにかして攻略法を……」

 

精霊のお陰でマシとはいえ、三分間しか時間はない。

だからこそ、冷静に見極めるしかないのだが、方法がなかった。

このままだとただ時間が過ぎるだけで、何も出来ないまま終わる。ダメージは与えても、封印まではいっていないのだから。

しかし---戦況なんてものは、一手でもあれば、優に変えることは出来るのだ。

 

「友奈ちゃん、風先輩。構えて!」

 

「投げます!」

 

突如として銃弾の雨が襲い、重力を操るだけで動けないカウベアードは肉体で全て受けるしかない。

火薬の煙で見えなくなったからか、それとも怯んだからか、重力場が消える。

そして樹のワイヤーが伸び、風と友奈の体に巻き付くと二人を持ち上げ、そのまま投げた。

 

「え、よ、よーし! 勇者ァ---」

 

「樹ぃー!? お姉ちゃんまだ良いなんて一言も言ってないんだけどぉー!?」

 

カウベアードに飛んでいく友奈と風だが、友奈は拳を引きながら力を溜め、風は文句を言いながらも大剣を巨大化させていた。

移動する必要もないからこそ、当てることだけに集中することが出来る。

 

「パァァァァンチ!!」

 

「でええぇええい!!」

 

『ギャァオ!?』

 

そして、二人の渾身の拳と大剣はカウベアードの両腕を破壊する。

さらに射撃とワイヤーが肉体を傷つけ、ダメージを回復させる隙を与えない。

 

「まだまだーっ!」

 

「畳み掛けるわよ!」

 

着地した友奈と風も攻撃に加わり、大ダメージとは行かなくとも、少しずつ地道に傷を増やしていく。

再生、ダメージ、再生、ダメージ、再生、ダメージ、再生---

 

『イィギィギァ!』

 

「きゃっ!?」

 

「んな!?」

 

「わぁ!?」

 

「っ……!」

 

だが、簡単にやれるようではウルトラマンが苦戦するはずもない。

バグバズンの部分である尻尾が友奈と風に噛みつき、バリアが発動するとそれごと蹴り飛ばし、樹と東郷に対して再生した腕から爪による斬撃を飛ばす。

何とか避けた二人に重力弾が放たれ、精霊が防ぐ。

さらに、何かが点滅する音が勇者たちの耳に響いた。

 

「紡絆くんの制限時間が……!」

 

「お姉ちゃんと友奈さんは大丈夫みたいです!」

 

「よかった……早く封印の儀を執り行わないと」

 

再び遠距離と中距離による射撃とワイヤーが顔を狙って放たれる。

カウベアードは鬱陶しそうに爪で防御すると、走るように向かってきた。

 

「えい!」

 

「隙だらけ!」

 

『ギィェェ!?』

 

即座に復帰した友奈と風が防御していた爪の部分を、押すように拳と大剣で殴る。

すると殴られた際の衝撃によって顔を守っていたカウベアードの爪は自身の顔に食い込み、痛そうに抜きながら悶えていた。

 

『ギャオオオオオ!』

 

「これで---ってはやっ!? どんだけ再生が速いのよ!」

 

「おりゃー! この! えい! やぁーッ!」

 

まだ空中にいる友奈と風に、再生したカウベアードの怒りの爪による攻撃が振るわれる。

友奈はわざと落下することで避け、カウベアードの膝を踏むと飛び越えて尻尾に跨る。それから何発も殴り、風は樹が間一髪のところで引っ張ると、視線を送って空中で解いてもらい、肩に乗ってから何度も叩きつけるように斬る。

樹と東郷は足を止めるためか、樹のワイヤーが足に絡みつき、銃弾が足元を攻撃する。

今も戦えているのは、勇者が持つ特有の精霊のお陰だろう。

衝撃などは走るために気絶する可能性はあるが、ダメージは吹き飛ばされるくらいならば防げる。何よりも、ウルトラマンとは違って彼女たちは小さい。

だからカウベアードにとっては攻撃が与えにくいのだ。

その分、ダメージはウルトラマンよりも圧倒的に低いのだが、何人も居れば厄介であることに変わりはない。

 

『グゥゥルラアアアアァァ!』

 

「わわ!?」

 

「何処から取り出したのよコイツ!?」

 

足は止まったものの、カウベアードが尻尾をブンブン振ったため、友奈は尻尾から投げ出され、風はぺちっと蚊を払うように爪で弾き出される。

しかも怒り狂ったように棍棒を投げ、離れた位置にいる東郷と樹は攻撃を中断して避ける。

流石に怪獣クラスの棍棒となると、人間からすれば凄まじくでかいのだ。

 

「一体どうすれば……。ウルトラマンみたいな威力を出さないと……」

 

「再生を上回るほどのダメージが必要……みたいですよね」

 

体勢を整えるために弾き出された友奈と風も東郷と樹と合流し、その身を岩場に隠した。

そこで変わらない戦況に悩ましい声が呟かれる。

避けることは何とか出来る。

攻撃も精霊が守ってくれたため、此方に致命傷はない。

しかし、いくらなんでも再生が速すぎた。ウルトラマンの光線にも対抗する再生能力は、ダメージは間違いなく入っていても封印するに至るまでにはいかない。

それどころか、与えたはずのダメージ量を超えるレベルで再生されているため、一度に致命的なレベルでダメージを与えなければ封印は不可能。

さらに彼女たちからみると既に互角から劣勢に変わったため、ウルトラマンである紡絆が追い詰められている姿が見える。

流石にダークフィールドであること、コアゲージが鳴っていること、怪我が残ったままなのもあって、ずっと互角というのは無理なようだ。

 

「うーん……ウルトラマンみたいな……上回るダメージ……。あ、これだ!」

 

「友奈? 何か思いついたの?」

 

焦る気持ちもある。

しかしそこで友奈が視線を周囲に向けていると、気づいたように声を挙げた。

代表してか、風が疑問を投げかける。

 

「あれ、使えませんか!?」

 

そう言って友奈が指差すのは、先ほどカウベアードが投げた棍棒。

巨大なため、一人では持つことすら叶わないであろう質量があるだろう。

 

「あれは、さっきの……? 流石に持てなくない?」

 

「いえ、風先輩。持つ必要はありませんよ。

流石友奈ちゃんね、あれをぶつけれたら、きっと行けるわ」

 

「でも、どうすればいいんでしょうか……」

 

「まず下準備をしましょう。ひとつ思いついたわ」

 

考えがある、と言うように同じ場所で暴れ狂うカウベアードの姿を見ながら、一同は棍棒へ隠密しながら向かっていった---

 

 

 

 

『ウワァァアアアア!?』

 

ドォオオオーン! という凄まじい音が周囲に響き、砂埃が舞う。

コアゲージによる点滅が始まったネクサスはダメージが響いているのか、右肩を庇うように戦うようになっていた。

しかし今さっき、空中戦をしていたところでファウストに叩き落とされたところだ。

 

『ぐぁ…ウウッ……。アアァァ………』

 

『エネルギーが少なくなっているようだな。今楽にしてやろう……ん?』

 

痛みに悶えるネクサスの傍へ降り立ったファウストが、光線を打つための動作に入ろうとした瞬間、何かに気づいたように視線をネクサスから変えた。

そこには、棍棒のところで何かをやろうとしている勇者たちの姿がある。

ファウストからすると人間の無駄な足掻き、とも見れる姿。

 

『やつは暴れて何をしている……? まぁいい、何をしようとも無駄なことだ』

 

カウベアードに視線を変えたファウストは勇者もネクサスもいないのに暴れる姿に呆れたような視線を向けるが、興味を失せたようにネクサスの首を押さえ、持ち上げて締め上げる。

ネクサスは引き離そうと両手でファウストの腕を掴み、外そうともがき苦しむが、弱まっているせいかビクともしない。

 

『気が変わった。このまま貴様の光を奪ってやろう……!』

 

『ヘエェ!? ぐ……!』

 

『フンッ!』

 

驚いたような声を漏らし、ネクサスの抵抗が強まる。

だがファウストが近くの岩に勢いよくネクサスを押し付け、抵抗が緩まった。

 

『がは……!?』

 

その隙にファウストがさらに力を加え、腕を掴んでいたネクサスの手が少しずつ外れかけていた。

コアゲージは鳴り、勇者はカウベアードの相手。助けに来ることなど不可能。

首を絞められて意識が薄くなっているのか力も抜けてきている。

そんな中で、ネクサスはファウストを見るのではなく、その後ろを見ていた。

その先に居るのは---

 

 

 

 

 

 

「これで良いですか?」

 

「ええ、あとは引きつけるだけ!」

 

「よぉーし、トドメの準備よ! 構えておきなさい、友奈!」

 

「はい! 結城友奈、準備OKです!」

 

仲間の、勇者たちだった。

カウベアードの物である棍棒を樹のワイヤーがミサイルのように斜めに固定し、段差あるところから巨大化させた大剣を風が斜めに構える。

その大剣の背後には友奈が拳を振り絞り、東郷はそれを見て射撃を始めた。

 

『グァア!? ギァオオオオォォン!』

 

「来た……! 樹ちゃんはタイミングを合わせて! 風先輩、友奈ちゃん! 後はお願い!」

 

東郷の射撃によって気づいたカウベアードが空想通りの怪獣のように土埃を発生させながら走ってくる。

もし普通に撃っていれば、何か警戒していたかもしれない。

だが、カウベアードは怒っている。

バーテックスとスペースビースト、その二つの融合型昇華獣に感情があるのかは定かではないが、怒りに支配されているやつは、自身を怒らせたちっぽけな存在を殺せるチャンスが来た、と向かってきている。

作戦通り、と言った感じで東郷は射撃を続け、途中で散弾銃に変えながら射撃を繰り返す。

やはりダメージは効いている様子はないが、まんまと策にハマったということに気づいてないカウベアードは警戒もなしにドンドコ接近していく。

 

「樹ちゃん、行くよー! 風先輩、打ちます!」

 

「ドンと来なさい!」

 

「いつでも大丈夫です!」

 

「今!」

 

友奈が声を掛け、問題ないと分かると東郷がタイミングを言う。

その瞬間、風が大剣を棍棒にぶつけた。

その程度では、何も動かない。

しかし---

 

「全力全開! 勇者ァァァァ---パァァァァンチィイイイイイ!!」

 

友奈の拳が大剣の裏を全力で打ち込み、凄まじい力の衝撃が加えられると押していた風の大剣がより押し出され、同時に固定していた樹のワイヤーが解除される。

巨大化した大剣を殴り飛ばす力が加えられた大剣は固定を解除された棍棒を、それこそミサイルのように凄まじい速度で打ち飛ばした。

 

『ギェ!? ギィヤアアアオォォーン!?』

 

衝撃が加わり、凄まじい速度で飛んでいく棍棒を全力で走っていたカウベアードは避けることも急に止まることも出来ない。

そのまま一直線に進む棍棒はカウベアードの胸に直撃し、貫通して仰向けに倒れた。

 

「封印開始!」

 

そのチャンスを逃す、勇者たちではない。

四人でカウベアードを囲むと勇者たちの傍に精霊が出現し、封印の儀が始まる。

仰向けに倒れているため、カウベアードの背中の下に光の円陣が現れ、それと同時に口から逆さになった四角錐の物体が吐き出される。

そう、彼女たちはやって見せた。

ウルトラマンの信頼に応え、封印の儀を成功させた。それもウルトラマンの力を借りず、人間の一番の武器である発想力で。

 

『なんだと……っ!?』

 

異変を感じ、振り向いたファウストが驚愕する。

無駄だと、無意味だと断定していたにも関わらず、融合型昇華獣であるカウベアードが目の前にいるウルトラマンの力もなく御魂(弱点)を露顕させられてしまっている。

ならば、ネクサスは、紡絆も応えなければならない。

その信頼に。信用に。応えてくれた勇者たちに。

勝利を収めなければならないのだ。

 

『ハァァァ---』

 

『なっ---』

 

弱っていたネクサスの姿が嘘のようにファウストの腕を掴む力が強まると、両腕を首から引き離し、ファウストの両腕が左右に離れる。

驚愕していたファウストはネクサスの底力にまた驚かされていた。

 

『デェヤァアアアアァァァ!!』

 

『グワァアアアァァ…!?』

 

そして開かれたところをネクサスがファウストの両腕を一気に押し出すことで跳ね除ける。

するとファウストの足が地面を大きく離れては浮き、隙だらけとなった胸にネクサスは全力の右拳を振り抜いた。

防御することも出来なかったファウストは叫びながら吹き飛ぶ。

 

『ハァッ! ハァァァァァァ……』

 

吹き飛び、倒れたファウストに向かってネクサスは両拳を作りながら両腕をエナジーコアの前でX字を作ると白い光を纏い、左腕を上から左に、右腕を下から右に回していき、最初とは真逆で右腕が上に、左腕が下になることでZのような形を作る。

すると丸く形作られた白い光がエナジーコアに収束され---

 

『テヤッ!』

 

右脚を一歩前に踏み込み、両腕を左右に振り払うのと同時に、エナジーコアから強力なエネルギー光線を放射するオーバーレイと同じく分子分解能力を持つ超熱量光線---『コアインパルス』。

 

『ウグ……ウワァァアアアアァァァ!?』

 

ネクサスのエナジーコアから放たれたコアインパルスはファウストへ真っ直ぐ進み、体を起こしたファウストの胸に直撃。

もう一度吹き飛ばした。

 

『アァァッ………。グォォ……! こ、今回はここまでだ……!』

 

『フッ!?』

 

分子分解される前に吹き飛んだからか、ダメージに悶えるファウストはそんな捨てセリフを吐くと、一瞬で姿を消した。

驚くネクサスだが、即座に思考を入れ替えると、勇者の方を見て跳躍する。

 

「えぇい! わ、私でもダメ!」

 

「私のも通じない……!」

 

ワイヤーによって移動させられないように固定された御魂を破壊しようと攻撃をしていた友奈たちだったが、御魂の再生能力が超再生、それも超高速再生なのもあって破壊しきれていなかった。

 

「全員ダメか……。封印の時間もあと僅かだけど……ん?」

 

「あれ……変わってる? ということは、紡絆先輩……!」

 

そんな中、封印の儀の制限時間を見て思考していた風はふと周りの景色が変わっていることに気づき、樹や友奈に東郷も気づいた。

 

『シュワ……!』

 

くるりと回転し、ネクサスは友奈達の傍で着地を決める。

景色が変わったのは汚染された世界から青が濃すぎる空にオーロラのような光が満ち溢れ、光源がないにも関わらず明るい世界へ変わったからだろう。

砂も無い。

結晶が埋められた赤土が敷き詰められたかのような、真っ赤な荒野。

汚染された世界から、神秘な世界へ。

これこそ、本来貼るはずだった空間、戦闘用不連続時空間(異空間)---メタフィールド。

 

『シェア、デアッ!』

 

「みんな、ちょっと離れて! って言ってるわ!」

 

「え、東郷? 今の分かるの!?」

 

「お姉ちゃん、そんなツッコミ入れてる場合じゃないよ!?」

 

「紡絆くーん! あとはおねがーい!」

 

さっきまでの空気は何処へやら。

緩やかな空間が作られかけているが、笑顔で手を振りながら言う友奈にネクサスが頷く。

 

『シュッ! フッ! シュワァァァァ---』

 

みんなが離れたのを見るとコアゲージを見て、すぐにうっすらと白く光らせた左腕を前方に突き出し、右腕を左腕に重ね、下方で両腕---アームドネクサスを交差する。

稲妻の如き青白いエネルギーを纏いながら両手の握り拳を胸の前であるエナジーコアの傍に持っていくと、両腕をゆっくり左右に開く。

すると離された両腕を稲妻のような高エネルギーが行き来しており、高エネルギーそのものである青白い光のエネルギーを両腕に纏うとV字型に伸ばす。

 

『ヘェアッ!!』

 

気合いの籠った掛け声と共にネクサスは両腕のアームドネクサスをL字型に組むことで凄まじい光エネルギーの奔流を発射する。

放たれたオーバーレイ・シュトロームは一直線に御魂へ直撃し、ワイヤーが外れると空へ飛ばしながら再生など関係なしに分子レベルへと変換し、分子分解してみせた。

吹いた(かぜ)によって分解された分子が流されていき、封印の儀を執り行われていたカウベアードの残った肉体は嘘のように消える。

メタフィールド内であるならば、ウルトラマンの力は強化されるのである。

 

『……シュワッ』

 

コアゲージが鳴る音だけが響く中、ネクサスは勇者部のみんなに顔を向け、頷くと幻のように消えた。

 

「これ、どうやって戻るのかしら」

 

「同じではないでしょうか」

 

「あ、今度はなんか光ってるよ?」

 

「これで戻れるみたいですね……」

 

そうしてメタフィールドが遺跡へ変わり、戻り方が分からないことに不安を感じる必要もなく友奈たち勇者はすぐに光り輝くと、遺跡から追い出された。

変身を解除し、それを見ていた紡絆は光が四つ向かってきたため、エボルトラスターを向けた。

すると四つの光は返ってくるように入り込み、紡絆を労わるようにエボルトラスターの鼓動が一度鳴る。

 

「ウルトラマン……ありがとう」

 

一息付き、感謝を述べた紡絆の肉体も光り輝いた。

 

「ふぅ……ひとまずの問題は解決、か。一番最悪なのは黄道十二星座との融合かもな……バーテックスにすらなってない星座四つとはいえ、ビーストの中でも下らしいバグバズンでアレなんだから」

 

脅威だった存在を思い出しながら、光に身を委ねると---

 

 

 

 

 

 

紡絆の存在も遺跡から出され、先程まで居た砂浜に戻されていた。

早速スマホを取り出し、お礼やら無事だということ、怪我はないかとの諸々返信したり聞いたりして終えた紡絆は、人を探すように周囲を探る。

強化された目によって見つけた紡絆は、すぐに走っていった。

 

「おーい! かりりーん!」

 

「誰よ、人をかりりんって呼ぶやつは!?」

 

紡絆は聞こえる距離まで近づくと声をかけ、目の前で止まる。

鍛錬途中なのか、はたまた終わったのか木刀を振るっていたかりりんと呼ばれた少女---三好夏凜は渾名のようなものを呼ぶ目の前の存在を怒鳴り気味に睨む。

 

「俺だ!」

「でしょうね、言ってからそうだと思い出したわ」

「おっ、そうなのか。覚えてくれてるのは嬉しいぞ」

「なっ……べ、別にそんなのじゃないわ!」

「あはは、その反応は逆に可愛いだけだと思うけどなぁ」

「か、かわ……!? 急に何言い出すのよ!?」

 

ニコニコと嬉しそうな、楽しそうに喋る紡絆に、夏凜はやはりペースを崩されていた。

 

「まぁまぁ、事実じゃん。それとさ、夏凜の夜食はレンチンより作り立ての方が美味しいからわざと作ってなかったんだけど、行っていいか? というか行くな」

 

「事実って……そんなこと---って既に確定してる!?」

 

「よーし、レッツゴー!」

 

「ちょ、待ちなさい! まだ木刀置いたまま---」

 

「あ、既に回収してるぞ?」

 

「いつの間に!?」

 

腕を引っ張られ、目紛しい事態に対応出来ないまま紡絆に振り回される夏凜だった。

押しに弱いのか、それとも無理だと判断したのか、少なくともグイグイ来る紡絆に対して冷静になると、夏凜は諦めたようである---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏凜の夜食を作り、紡絆は帰宅するための道を歩いていた。

本当はメタフィールドの生成によって疲労が凄まじい紡絆はすぐにでも休みたいが、そうも行かない。

流石に夏凜の家に連日止まる訳にも行かないし、帰らないといけないからだ。

ちなみに次も来ることは約束したのだが、『はぁ!? べ、別に来なくていいわよ!』という夏凜の言葉は紡絆はあっさりと投げ捨てていた。

それはともかく、脳内掲示板(転生者たち)と会話をしながら、紡絆は歩く。

 

(ウルトラマンの結界説はほぼ確定……。これで現実世界に現れる心配は必要ない。次に考えなければならないのは、お役目と……ファウスト、いや闇の巨人(ウルティノイド)の目的、か)

 

次のお役目は近いかもしれないし、また今回のような融合型昇華獣が現れるかもしれない。

それでも、現実世界に現れる前に召喚されることを知っただけで紡絆の気は軽くなっていた。

自身も気づかずに誰かが犠牲になるのは辛い。自分が巻き込まれるのは良い。

紡絆はそういう人間なのだ。

偽善でもなんでもなく、本心。

 

「まっ、いっか。それより風呂入って寝るか!」

 

既に空は暗く、陽の光が消えている。

雲に覆われ星空は見えないが、紡絆は変わることなく明るさ全開で家まで帰ってきた。

考えるのをやめて、今、帰ってから何をするかを考える。

遥か先の未来や、分からないことを考えても仕方がないからだろう。

しかし---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

違和感を、感じた。

家に着き、後は入るだけ。

だが、その違和感は凄まじく、決して見逃せることではなかった。

決して紡絆がウルトラマンだから、というわけでも、エボルトラスターが鼓動したわけでも、紡絆の勘でも何でもない。

それは紡絆でなくとも、誰であってもそうだろう。

なぜなら---

 

「なんで()()()()()()()()()んだ?」

 

そう、家の灯りが、点いていたのだ。

本来、外に外出するならば電気は消しているはず。

そして紡絆は今日、一度も帰ってきていない。唯一帰ってきたのは、朝帰りのみだ。

今も学校用の鞄を手にしていて、服装も制服である。

 

「消し忘れた? いや、そもそも俺は点けていたか? 朝にわざわざ? 暗いわけでもなかったのに? そんな、まさか……点ける必要なさすぎるだろ。それはアホでもバカでもなくボケてるだけじゃん……俺、前世(以前)もそんな歳じゃないんだけどなぁ」

 

ここまで来たら未期だなと苦笑しながら、しかし妙に腑に落ちる。

そもそも朝とはいえ、全身痛ければ右肩なんて凄まじく痛かったのだ。

間違えてボタンに当たって点けた可能性もあれば、つい癖で点けていた可能性もある。

そう考えると、色々な可能性が広がり、無駄に考えすぎたと反省する。

 

(もしかしたら、帰ってきたのが実質一日ぶりだからかもな。長い一日だったし、感覚が狂うのも頷ける。

なら気の所為で考えすぎか…例え泥棒が来たとしても価値あるものなんてないしきっと帰って来たときも今も疲れてるだけなんだろう)

 

それはそれでどうかと思われる思考だが、過去はどうだったか知らないが基本自分に頓着しない紡絆は日用品くらいしか買わないので盗まれても価値があるものがあるとは思っていない。

結局は疲れが原因で気付かないうちに点けていた、考えすぎだと判断したが、それでも、どうにも拭いきることの出来ない胸に残り続ける違和感を抱えながら、家の鍵を開けて入り---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい、お兄ちゃん♡」

 

「……はっ?」

 

目の前に居る()()()()()()()()()を見て、紡絆の思考が完全に停止した---

 

 

 

 

 

 

 

 





〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
一人で戦う(BADEND)ルートだったやつ。でもなんだかんだでそんなルートぶち壊しそうなのが怖い。
アンファンスの戦い方がカウベアードにバレているため、鞭を武器に後半憐スタイルで戦った(スピード重視)
ジュネッスでは従来通り

〇ファウスト
何を言っているんだ……?(ガチ困惑)

〇カウベアード
名付けはスレ民。
重力は強いが、精霊バリアによってダメージは入らない(逆に言えば致命傷レベル)
成長して爪に赤いエネルギーを纏わせて強化、斬撃、重力弾を口から吐き出すことも出来るようになったが、御魂を吐き出すと光線も避けれないただのザコ。
ちなみに封印の儀は実は四人必要。

〇友奈ちゃん
一番のMVP。
実は紡絆くんの怪我を少しは察してた子

〇東郷さん
怪我も察するしネクサス状態の紡絆くんの言葉も完璧に読めるし冷静だから頼りになる子。
もしかして同率MVPでは?

〇風先輩
勇者を纏める役に相応しく、しっかりとした指示をこなす。
大剣大型化が大活躍。
もしかして同率MVPでは?

〇樹ちゃん
何気に補助や援護、最後の攻撃や御魂の動き封じなど小さな大活躍。
もしかして同率MVPでは?

〇フログロス、アラクネア
文字数を削られ、瞬殺された二匹。
出す予定なかったし出しただけマシ。

〇夏凜ちゃん
地の文では分かりやすくするために紡絆だが、名前を姫矢と信じ切ってる子。
根は良い子だったり紡絆くんに(心の中で)性格看破されたり振り回されてるけど、言葉とは裏腹に会話や行動に付き合ってることからお察し。

〇??小都音
亡くなった()()の妹。
青髪(色合い的には水色に近い)にセミショートの(といっても長さ的に一部はお腹くらいまではある)女の子。
年齢は樹ちゃんと同じ。

▼質問
Q.紡絆くんと防人組との関わり

A.時系列考えると雀は関わることになるけど他は分かんない。まだまだだし。けどそこまで続いたら紡絆くんが死ぬであれ生きるであれ主人公交代するであれやるんじゃないかな。
正直妄想はしてるが、芽吹や亜耶ちゃんにしずくは問題ないけど夕海子だけが難しい(主に主人公が関わる必要が無さそうという意味で)

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