【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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いつもとは違って投稿かなり遅れましたね、ウルトラマン見てたら書くの忘れてました。平成三部作終わったので番外編も書いてたんですよ、外伝のやつは本作のティガニキたちがどんな戦いをしてたかを描いてます。
向こうは最初なので、まだ全然進んでないですし内容大して変わってませんけどね。

それと、今回の話は四万文字超えたので流石に分けました。
後編は明日投稿します。
いや、想像以上に日常編やってしまったな。ぶっちゃけ妹ちゃんの話は2万文字想定だったんだが……おいおい、戦闘なくてもやれば出来るじゃねえか。
それじゃあ、最後に一言---エピソードZが見たいなぁ(願望)




【朗報】亡くなったと思っていた家族が生きていた【妹】

 

「おかえりなさい、お兄ちゃん♡」

 

「……はっ?」

 

紡絆は目の前で起きた出来事に頭が真っ白になる。

狼狽え、動転し、冷静さを欠き、思考が出来ないほどの困惑と混乱に陥る。

現実なのか、それとも夢の世界にでも居るのか、少なくとも紡絆の気持ちは乱され、何が何だか分からない状況だということは確かだった。

分かることはひとつ、これは夢でも幻覚でも幻想でもない。錯覚でも幻でも何でもなく、現実だということ。

今も感じる痛覚が強制的に現実だということを証明する材料となっていた。

そして真っ白となった頭でも、脳が目の前にいる人物を認識する。

他人でも、幻影でも幻覚でもない。

彼の目の前にいるのは、間違いなく妹だということを。

 

「お兄ちゃん? 早く入ってくれないと閉めれないよ?」

 

「ぁ……わ、悪い…」

 

不思議そうに見つめられながら声を掛けられると、癖で、以前と変わらない対応を無意識にした紡絆は、家に上がる。

すると少女は後ろ手で玄関の鍵を閉め、前屈みになりながらふわりと優しく微笑み、口を開いた。

 

「はい、おかえりなさい」

 

「た、ただいま?」

 

再び帰宅した紡絆を迎える挨拶を言われ、これはまた無意識に紡絆は対応する。

今も内心は荒れに荒れ、台風のような荒れ具合だが、それとは裏腹に言葉は口から自然と出ていた。

 

「どうして疑問系? あ、カバン貰うね。それとご飯! やばいかも、ちょっと待ってね!」

 

「ま、まっ---」

 

「大丈夫だよ、そんな顔しないで。ごめんね」

 

紡絆のカバンをそっと取ると慌ただしく走って戻っていく姿を見た紡絆は手を伸ばすが、少女は振り向きざまにただ笑顔を向ける。

まるで紡絆の本心を見抜いたように。心を見抜いたように。表情を、見抜いたように。

それだけ言い終えると、彼女は急いでキッチンへ戻って行った。

その場に取り残されたのは、紡絆一人。

彼は俯き、思考する。

 

(なんで……どういうことだ……!? 反応がないからビーストが化けたわけでもない……! でも小都音は死んだはず。だけど同じだ。

あの笑顔も、声も、喋り方も、全部。じゃあ母さんと父さんは? 化けて出た? 違う、小都音は本物だ。ちゃんと生きている……)

 

懐に手を伸ばし、紡絆は不安を隠すようにエボルトラスターを握り締める。

流石の紡絆も死んだと思っていた妹が突然現れたら取り乱すくらいはする。

それでも握ったところで何も変わらなければ、何の反応もない。ただ一度鼓動が鳴るだけだが、徐々に紡絆は冷静さを取り戻していった。

 

(考えたところで分からない……事情を聞こう。母さんや父さん……小都音が事故にあったのは俺の責任だ。

でも、聞かなくちゃならない。俺は、あの場で、あの後に何があったのかを。

ごめん、ウルトラマン。落ち着いた……俺らしくなかった)

 

エボルトラスターを離し、懐にしっかりと入れ直した紡絆は前を向いた。

不安そうな表情も、動揺した様子も何一つない。

いつも通りの紡絆に戻り、エボルトラスターは眠るように黙る。

 

(狙ったようなタイミングにも見えるし、関係ないようにも見える。正直、疑いたくないけど怪しい。

けど、俺は小都音の兄だ。兄なら……妹のことは信じなきゃ。事情を聞いてから、ちゃんと考えよう。

こういう時に掲示板は……ダメだ、やってる時間が無いな。怪しまれそうだ。

せめて化けるスペースビーストがいるかどうか教えて欲しかったんだが、ウルトラマンの結界を考えるとない……か)

 

少女の、妹である小都音の元へ向かう前に紡絆は心の持ち方を変える。

覚悟を決めて、ちゃんと考えて、それでも前へ進む。

ただ信じるように。

なにより---紡絆の心には隠しきれない嬉しさと喜びと、罪悪感と申し訳なさと後悔が浮かんでいた。

会えた嬉しさと、生きていたという喜び。自分が悪いという罪悪感と原因であることと、記憶を未だに失っている申し訳なさ。救えなかった後悔。

正と負の感情に挟まれながら、紡絆は向かう。

真実を確かめたいがために。

仮に文句を言われようが、暴言を吐かれようが、責められようが、全て受け入れる覚悟を胸に。

 

そうして紡絆は、小都音の元へ向かうように歩いていった---

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お兄ちゃん。カバン置いておいたよ。ご飯も、もうすぐ出来るから」

 

「分かった。ありがとう」

 

「ううん、だってお兄ちゃんは私が作らないとインスタントばかりでしょ? この山、見たら分かるもん。料理出来るのに、もうっ」

 

指差すところには、積まれたインスタントのラーメンやうどんなどがある。

だからか、ぷくーと可愛いらしく頬を膨らませる小都音を見て、紡絆は目を逸らす。

否定することが出来ないからこそ、反応に困ったのだろう。

 

「はぁ……お兄ちゃんらしいけど、心配になるよ」

 

「腹を満たせるなら、何でもいいかなと……インスタントでも美味いし」

 

「反省してないでしょ」

 

「………してる」

 

じとーと怪しむように紡絆を見る小都音だが、呆れたような表情となり、何処か安心したような表情をした。

 

「でも、変わってなくてよかった」

 

「? 数十年経ってるかならともかく、一年も経ってないしそうそう変わらないだろ」

 

心底不思議そうに紡絆は小都音を見つめるが、小都音は困ったような、なんと言えばいいか分からないといった様子を見せる。

 

「うぅーん、そうなんだけどそうじゃないというか……。ん、いいかな、それより終わったよー?」

 

「あぁ、じゃあ手伝う」

 

結局分からずじまいだったため、きょとんとした紡絆だったが、料理が出来上がったということなので皿を取り出したり、テーブルに運んだりして手伝う。

そうして準備を終えると、向かい合わせになりながら座った。

 

「じゃ……いただきます」

 

「うん、召し上がれ」

 

手を合わせてから食事の挨拶をした紡絆は、お箸を手に取り、じーっと見てくる小都音の姿に若干食べづらく思いながら一口食べてみる。

牛肉に付けられたタレの味がご飯を進めさせ、味噌汁とレンコンの甘辛炒めに付け合せである野菜が調和していて一つの献立として想定されているのだろう。

 

「どうかな……?」

 

「うん、美味い。というか、以前より腕が上がってるような?」

 

「ふふん♪ 実はね、ここに帰ってくる前にお世話になっていたところで学ばせてもらったの。料理が上手くて、勉強になることが多かったんだ〜。

まだまだ覚え足りないけどね」

 

褒められたことにか、不安そうに聞いたのが嘘のように嬉しさと照れが混じった笑みを浮かべながら、小都音はそう話す。

しかし紡絆はそれを聞いて、気になった箇所があった。

 

「お世話に?」

 

「あ、その辺は後で話すから。今はご飯食べよ?」

 

「そうだな……分かった。料理冷めちゃ、せっかくの料理が台無しだもんな」

 

気になるといえば気になる。

だが話すということは、話してくれるのだろうと紡絆は久しぶりに食べる小都音が作った料理を堪能する。

以前よりも格別に上がっていて、味も好み。でも、偽者なんかではなく、本人だとより教えてくれる味。

紡絆は食べる度に腹が満たされる満足感を感じ取っていた。

ただこんなふうな、以前と変わることの無い、久しぶりの妹との食事を紡絆は摂る。

今は深く考えずに、食べるだけ。

 

「ごちそうさまでした。料理してもらったし、片付けは俺がやるよ」

 

「ごちそうさまでした。

あっ、お兄ちゃんはゆっくりしてて良いのに」

 

「いいからいいから」

 

ご飯を食べ終えると、しっかりと感謝をして小都音のお皿も含めて紡絆は持っていく。

水を出し、お皿を落とさないように気をつけながら石鹸で洗っていた。

 

(流石に痛むかぁ。今回はメタフィールドの形成で疲れただけで、痛むだけで済んでる分マシだな……ほんと、もし一人なら負けてた自信しかない)

 

普通に洗ってると暇なので、今日の出来事を思い出しながら、皿を洗う。

洗い終わった食器は食器棚に置き、また別のを洗う。

量も大した数はなく、すぐに終わったが。

 

「お兄ちゃーん。花瓶の水って換えた?」

 

皿洗いを終えた紡絆に、小都音が聞いていた。

その声に反応するように紡絆が視線を送ると、仏壇の花瓶を両手で持ちながら、首を傾げている姿がある。

 

「いや、今日は換えてないな」

 

「そっか、じゃあ換えとくね〜」

 

「ああ、頼んだ」

 

小都音が花瓶を持ちながら、水面台に持ってくると水を入れ換えていた。

紡絆はそれを傍目で小都音を見ているが、彼女は何処か楽しそうな様子で、それでいて慣れている様子で花に触れていた。

そんな小都音だが、紡絆の視線に気づいたのかキョトンとした顔で紡絆を見つめた。

 

「お兄ちゃん、私の顔に何かついてる?」

 

「あ、いや……ちょっと、な」

 

「……? 変なお兄ちゃん。あ、でもそんなところも好きだよ?」

 

「はいはい。ほら、持っていくから」

 

「むー……」

 

あっさりと受け流した紡絆に小都音が不満そうに見つめるが、自身を気遣って花瓶を代わりに持ったその姿には嬉しさ半分不満半分といった様子だった。

といっても、その半分の不満は紡絆が簡単に受け流したところだろうが。

それはさておき、仏壇に花瓶を置いた紡絆は、写真が消えてることに気づいた。

 

「取ったんだな」

 

「あ、うん。勝手にごめんね……でもこうして生きてるのに、死んだように写真を飾られてるのはちょっと……」

 

「それは確かに。俺でも嫌かもしれないし、まあそこまで気にしてないから平気だ」

 

申し訳なさそうにする小都音を見て、紡絆は苦笑しながら本当に気にしてない様子を見せる。

それを見てか、小都音は嬉しそうに、それでいて悲しそうに紡絆の手を握った。

 

「……小都音?」

 

「……えっとね、さっき言ったよね? 後で話すって。お母さんとお父さんのことも、お兄ちゃんに話すべきだと思って……」

 

「あぁ……」

 

突然握られたことには驚いたが、紡絆は納得したように口に出す。

こうして小都音は生きて、別の家でお世話になっていたらしいが、帰ってきた。

しかし、両親は帰ってきていない。写真も取っておらず、悲しそうな表情をしている小都音の姿を見ると、紡絆は嫌でも察することが出来る。

両親がどうなったのかを。

 

「別に、無理に話そうと思わなくたっていいからな。話しても話さなくとも、何かが変わるわけじゃないんだ」

 

「ありがと……でも、話すよ。その前に、お母さんとお父さんに挨拶していいかな?」

 

気遣うように言った紡絆だが、小都音は辛い面持ちを隠さず、それでも真っ直ぐな瞳で紡絆を見ながら訊く。

紡絆はそれを見て諦め、頷いた。

 

「その方がいいかもな……。そうだ、俺も今日はしてないし一緒にするか」

 

「うんっ」

 

小都音の意思を尊重しつつ、紡絆は色々と忙しかったのもあって挨拶するのを忘れていたことを思い出し、優しく告げると小都音は嬉しそうに頷いた。

二人はそのまま仏壇の前で隣同士で正座で座ると礼拝する。

礼拝にて暫く無言の空間が占める中、ゆっくりと目を開けた小都音が口を開いた。

 

「実はね、私もあんまり覚えてないんだ」

 

「………」

 

目を細め、重々しく告げられた言葉に、紡絆は沈黙を貫きながら聞く。

何も言わず、邪魔せず、耳に入れながら両親の写真を見て。

 

「病院の先生は両親を喪ったショックで記憶が飛んだんじゃないか、って言ってた」

 

「……そっか」

 

何も思って、何を考えて、どんな感情を抱いているのか。

今の紡絆は珍しく顔色を伺うことも出来ず、何も分からない。

そしてまた、紡絆は気遣ってか、小都音の表情を見ないようにしてるため、彼女がどんな表情をしているのかも分からない。

 

「でも……記憶が飛んで良かったって思ってるの」

 

「……どうしてだ?」

 

お通夜のような重苦しい空気が淀む空間の中、小さく、安心したような悲しいような、しんみりとした声が響く。

紡絆はただ、純粋な疑問のみを乗せて訊いた。

 

「私が覚えてるのは、事故に遭う直前でお母さんとお父さんが庇ってくれたところだけ。相手が誰なのか、何があったのかは覚えてないし、事故に遭った後も知らない。

だけどね---」

 

小都音が一度口を閉じると、仏壇から視線を外し、紡絆の右手と自身の左手で手を繋いだ。

紡絆は手を繋がれたことに気づいて、悠然とした様子で小都音を見つめる。

少しの間、ほんの数十秒ほど見つめ合っていた二人だったが、小都音は繋いだ手の指の間に自身の指を絡め、所謂恋人繋ぎと呼ばれる繋ぎ方にして、重苦しく口を開いた。

 

「私にもし記憶があったら、相手を赦せないと思う。

お母さんとお父さんを奪った存在がいるなら、私は復讐するかもしれなかったから。暴走……って言うのかな? そうなっちゃうかもしれなかったから。

記憶があったら、行動に移してたかもしれないから」

 

強い憎悪と殺意を募らせ、隠すことなく全面的に押し出され、告げられた言葉。

紡絆からすると、その感情は大変理解し難い感情だ。

紡絆は人を憎まず、自分を憎む性格。

他人が悪いのではなく、自分が悪いと判断し、他人に怒りを抱くことはあれど、人間に対して復讐心を持たない。

人間として何処か欠陥しているのが、彼なのだ。

それこそ、彼の仲間たち(勇者部の皆)が彼を光と例えるくらいには。

 

「お兄ちゃんは、そんな私を、嫌いになる……? 正直ね、相手が誰であっても、私は憎いとは思うから……。

もし思い出して、そんなことを、暴走とかしたら、どう思う……?」

 

不安そうな、縋るような表情で見つめる小都音だが、その瞳の奥には恐怖という感情があった。

紡絆はそれを見透かせたように達観した様子で口を開く。

 

「別に、いいんじゃないか」

 

「……えっ?」

 

何処か投げやり気味に呟かれた紡絆の言葉に、小都音の顔には困惑の色が浮かぶ。

叱責されると、忌避されると、反感されると、嫌われると思っていた。

例え違っても、少なくとも、何らかの悪感情を持たれるのではと危惧していたのだろう。

しかし、そのどれでもなく、返ってきたのは、肯定。

 

「小都音は人間だろ。人間って、豊かなんだ。

感情豊かな人間だからこそ、色んな感情が生まれてしまう。衝動に駆られてしまう。欲望に負けてしまう。愚かなことをしてしまう。血迷った行動をする。人を憎んでしまう。

でもそれは、誰にも止めることの出来ないモノだろ?

だったら、俺に小都音を否定する権利なんてない。でもさ、俺は小都音のお兄ちゃんだ。

だから小都音が人としての道を踏み外すなら、それだけは絶対に止める。少なくとも、母さんや父さんが喜ぶことでもないから、復讐という行動は止めることになるのかな。暴走するなら、止めて、落ち着かせる。

喪ったものは、取り戻すことなんて出来ないからさ、俺に出来るのは想いを無駄にしないことだけ」

 

何処か遠い目をして、紡絆は語る。

否定はしない。それは、()()()()()()()は否定しない。

でも家族であり、()()()()復讐という行動を阻止すると言いたいのだろうか。

暴走しても、落ち着かせると言いたいのだろうか。

記憶を失い、妹は戻ってきたとはいえ、両親は喪った。それほど経ってはいないが、帰ってくる前は妹も居なかった。

もしかしたら過去に友達を失ったのかもしれない。もしかしたら夢を喪ったのかもしれない。もしかしたら恋人を亡くしてしまったのかもしれない。

思い出という生きてきた全てを消失させてしまった紡絆だからこそ、取り戻せないという言葉は誰よりも重く響く。

 

「結局、止めるってことだよね……?」

 

「悪意を抱くのはいい。人間がそうであるなら、好意も悪意も抱くことは正しいことだ。

でも人として正しくない行動に移すのだけは間違いだと思う。それで全てを失う方が、きっと悲しい。

だから、間違えた行動だけは俺が止める。ずっと傍に居て、支えてやる。そうしたら、間違えないだろ」

 

理想論。戯言。滑稽。無稽。現実的ではない言葉。まさしく荒唐無稽。

その程度で人が止まるならば、誰も苦労しない。誰も衝動に駆られない。誰も間違えない。

はっきり言って、紡絆は強すぎるのだ。

その在り方が、その生き方が、その強さが、その想いが、ありとあらゆるものが、未成年とは思えないほどに強すぎる。

誰も紡絆ほど強く居られない。誰も紡絆ほど強く思えない。傍に誰か居たって、行き過ぎた人間は手遅れだ。

だが---きっと手を伸ばすのだろう。

間違えた人間だって、戻れると信じて。闇に打ち勝てると信じて。誰もが光になれるのだと信じて。

そんな彼だからこそ、光の権化であるウルトラマンを宿せたのかもしれない。

 

「……そっか。お兄ちゃんが止めてくれるなら、安心。

怖いし、嫌だけど、もし思い出して復讐心に駆られても、怒りに身を任せることになって暴走しても、お兄ちゃんが止めてくれるもん」

 

恋人繋ぎにした手を強く握りながら、小都音は儚げに微笑む。

ただ、心の底から安心したような雰囲気を纏って。

 

「きっと、俺だけじゃない。

小都音も縁が出来て、大切な人が出来たら、その人が支えてくれるだろ」

 

「あ、それは絶対にないから。だから、お兄ちゃんだけは私の傍に居て。もう二度と離さないで……私は何があっても、お兄ちゃんが良いの。お兄ちゃんが居てくれるだけで、幸せなの。ずっと、ずっと傍に……ふたりだけで……

 

「え、いや……後半は聞こえなかったけど、前半にお兄ちゃんとして将来が心配になる発言が聞こえたような……?」

 

「ふふ〜ん♪」

 

誤魔化すように小都音は紡絆に抱きつく。

困ったような表情をして考えかけるが、考えるのが面倒臭い紡絆は放棄しながら頭を撫でていた。

 

「まぁ……何でもいいけど、結局分からないってことかぁ」

 

「そうなるのかなぁ……?」

 

「確信はしてたから、良いけど。母さんと父さんが小都音を守ってくれた……それだけでも聞けて嬉しかったな。

自慢の両親だと胸を張って言える」

 

やはり、この男は何処までも前向きなのだろう。

亡くなってしまったことが確定してしまったにも関わらず、最期まで両親が親にとって娘である小都音を守る行動をしたことを、紡絆は誇りに思う。

なぜなら、悲しんでも、恨んでも、何も帰ってこないから。

なら今を生きる自分だけは、誇れる行動をした両親を自慢の両親だと心に刻もうと。

 

「……あれ、他に何の話するんだったっけ?」

 

だが、相変わらず雰囲気をぶち壊す所だけは、何も変わらなかった。

余韻を感じさせないところも流石と言えるのかもしれない。

 

「んー、私がお世話になった人のこと? まだ言ってなかったよね?」

 

「あーそうそう……というか近い」

 

「お兄ちゃん成分が足りないのー」

 

いつの間にか紡絆の膝の上に乗り、甘えるように頭を擦り付けたり、恋人繋ぎにしたまま離さない小都音だが、行動はともかく、言葉は正確だった。

 

「まぁいいや……で、聞いてもいいことなのか?」

 

「別にいいけど、大したことじゃないよ? でもとても優しい人でね、お兄ちゃんのところに来るのが遅れたのは私のわがままでもあったんだ。

その人は私と同じくらいの年齢の娘さんを喪ったらしくて、お年寄りの夫婦だったんだけど……倒れた私を病院に運んでくれたのも、引き取ってくれたのもその人たちなの」

 

本当に嬉しそうに、楽しそうな様子で話し始めた小都音。

辛いことなら、話しづらいなら無理には聞く気はなかった紡絆だが、杞憂だと分かると耳を傾ける。

 

「流石に讃州市から離れてたからすぐ帰ることも出来なかったし、ショックもあるだろうから良ければ居なさいって言ってくれたの。

最初は断ったんだけど、結局押し切られてお世話になることになって。

でも本当の娘みたいに接してくれて、祖父と祖母が出来たみたいだったよ。

それにね! おばあちゃんの方は、料理を教えてくれてね、いーっぱい教わったんだ」

 

「あぁ、今日の料理はその人に教わったものなのか」

 

「うん、おじいちゃんの方には色んな話を聞いたし、技術とか教わったから勉強になって面白かったよ?」

 

紡絆は小都音の話を聞いて、充実した日々を送れていたことに安堵する。

それが辛い日々であったなら、文句のひとつは言ったかもしれない。

だがこんな幸せそうに語られると、感謝の言葉しか浮かばないものだろう。

 

「良い人達で、本当に良かったんだな」

 

「うん。だから今度、お礼を言おうと思ってるけど……何も残せないのは寂しくて。だからひとつ、お願いしてお借りしたんだ」

 

「借りた?」

 

首を上に曲げ、見上げる形で小都音は紡絆を見つめると、紡絆は首を傾げる。

ただ少し小都音が申し訳なさそうにしているため、紡絆は疑問符を浮かばせるしかなかった。

 

「お兄ちゃんには申し訳ないし、お母さんやお父さんにも申し訳ないんだけど……。

その、私がその人たちと生きていた証に、というより……これからも忘れずに居たいって、また来たいって誠意で、これを……」

 

渋々と紡絆から離れては鞄を大切に抱えて戻ってきた小都音は再び紡絆の膝の上に座り、何らかの用紙を恐る恐る差し出した。

紡絆は大切そうに扱っていたため、丁寧に受け取って紙を見る。

 

「なるほどな……別に俺は気にしないしあの母さんと父さんのことだから気にしないと思うが、そんな簡単に出来るもんだっけ、これ」

 

「大赦の人にして貰ったんだ。あっさり通っちゃった」

 

(えぇ……何やってんの、大赦。というか権力凄すぎるだろ)

 

若干、いや、大赦にガチ引きする紡絆はともかく、どうやら養子扱いでは無いが、後見人というか身元引受人のようなものでもうひとつの戸籍、というべきものか。大きく見れば養子ではあるのだが、そういった書類では無いらしい。

が、紡絆は全く気にしていなかった。

そんなことより大赦の権力に引いていた。

 

「一応本戸籍はこの家だけど、これからはこっちで名乗ろうかなって……」

 

「いいんじゃないか? 感謝の気持ちを忘れず、名を背負いながら生きる。

それは意志を継ぐようなものだが、立派なもんだ。それにこの方が混乱も少なそうだしな……」

 

「あはは、確かにそうかも」

 

一応言っておくが、小都音は生きていたとはいえ、死んだと思われていた。

生きていたことは喜ばしいことだろうが、混乱が生じる可能性がある。

しかし、口合わせのために養子に出ていたとすれば混乱は避けられるだろう。

紡絆を除いた家族全員というのはただの噂で、妹だけは無事だった、ということになるが。

どちらにせよ、別にデメリットはないので紡絆は特に何も言わない。

もっとも、本人の意思を尊重したいという思いの方が強いだけかもしれないが。

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

膝の上に乗って背を向けていた小都音は、紡絆のことを呼びながら体を反転させ、対面になる。

距離感が非常に近いが、紡絆は諦めてるのか何も言わずに首を傾げるだけだ。

そして---

 

 

 

 

「ただいま」

 

「……あぁ、おかえり」

 

花のように可憐な笑顔で微笑む小都音に、表情を柔らかくしながら返す。

まだ一度も言ってなかった、迎える言葉。

紡絆が帰ってきたことについての挨拶は交わしたが、小都音が帰ってきたことについての挨拶はまだだった。

だからこそ、一区切りついた今、小都音は言ったのだろう。

 

「くんくん……」

 

「……って、なぜ嗅いだ!?」

 

「お兄ちゃん……知らない女の匂いがする……」

 

「え、匂いって、そんな分かるもんだったっけ?」

 

不満ですといった様子を隠さず、ぎゅーっと強く抱きつく小都音の姿に、紡絆は質問攻めを個人情報ということで沈黙を貫くことで現実逃避した。

そろそろ彼は、喋ることすら、疲労で限界なのである。

ちなみに結局は小都音が質問を諦めた代わりに、満足するまで抱きつかれたままだったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

1:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

【朗報】亡くなったと思っていた家族が生きていた【妹】

 

事の発端→【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】

 

【悲報】 気がつけば別世界に飛ばされたんですが…【どうして】

 

 

2:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

人物紹介

 

・俺(継受紡絆)

ウルトラマンに変身できること以外に特徴がないし取り戻した分の前世の記憶と記憶失った後に過ごした約二年間近く以外何も覚えてない完全記憶喪失転生者。

勇者部所属。

 

・友奈

本名・結城友奈

元気いっぱいの前向きな女の子。

でも勇気が人一倍あるだけで割とメンタルは普通だから、無理しないか心配。

 

・東郷

本名・東郷美森

一応、似たような記憶喪失者。

半身不随で車椅子の生活を強いられることになった女の子。

博識で上品だし優しく穏やかな性格してるけど、戦艦というか国防関連の話になると火がつく。止めれない。

 

・風先輩

本名・犬吠埼風

我らが部長。

リーダー力もあるし、ムードメーカー。シスコン。

でも責任感ゆえに自分一人で背負うのはやめて欲しい。

女子力高いらしい。かなりの大食漢。

 

・樹ちゃん

本名・犬吠埼樹

姉である風先輩とは対照的におとなしく、気弱で引っ込み思案。

料理がやばかった。

時々毒舌吐いてくるけど、彼女の声は割とマジで素敵なものだと思う。

ちなみに占いはよく当たる。

 

用語

 

・勇者部

美少女揃いで良い子ばかりのお人好しグループ。

人のためになることを勇んでやる部活で、簡単に言えばボランティア。

本当の目的は、人類の敵であるバーテックスというウイルスの集合体と戦うために作られたらしい。

神樹様(この世界における神様)の力を借りて、勇者として戦う。

俺にはない(無慈悲)

 

 

3:名無しの転生者 ID:bctPJtdFP

1人で背負うのはやめて欲しいって、お前が言うんか……

 

 

4:名無しの転生者 ID:LdR8Ropl+

良かったじゃん、生きてて

 

 

5:名無しの転生者 ID:cxcwP+vDo

勇者部って本当に美少女ばかりだよな……うらやま

 

 

6:名無しの転生者 ID:EnGwoKNUi

改めて見るとさ、転生者が「其処にいる理由」を作る為に過去が捏造される場合と普通にポップする場合の二種類だけはあるのは判明してるけど、イッチって未だに不明なんだよな。

前世の記憶取り戻しただけで、どう存在していたのか、どういった過去があるのかが不明すぎる。

でも>>2だけ見ればイッチクソ酷くて草

 

 

 

7:名無しの転生者 ID:2kCsc9Rnp

憑依型か特に何も無くただ前世の記憶を忘れてた状態で生きていただけか……それとも他のパターンか。

少なくとも歴代デュナミストの過去を融合させた感じってのは判明してるゾ。

なんで記憶喪失になったかは不明なんだっけ、なんでだ

 

 

8:名無しの転生者 ID:RuVKi/T9g

まぁ、でも家族死んだと思ってたら妹だけは生きてたんでしょ。

イッチ、よかったな。

両親が助からなかったのは残念だろうが、妹ちゃんだけでも生きてたらね

 

 

9:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

それはそうなんだけど、さ

 

 

10:名無しの転生者 ID:lFOjCQKaa

なんだなんだ

 

 

11:名無しの転生者 ID:dAInMScBJ

どうした、素直に喜ぶところだろ?

 

 

12:名無しの転生者 ID:BFrQq2v7k

というかイッチならウザイくらい喜ぶと思ったけどな

 

 

13:名無しの転生者 ID:8qIOToBjD

また一人で抱え込む気か?

言えよ

 

 

14:名無しの転生者 ID:KAV0E4aec

そーだそーだ

 

 

15:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

いやさ、抱え込まないけど、なんかこう……おかしくないか?

や、別に妹の様子は可笑しいわけじゃなくて、以前より甘えん坊になってるようには見えるけど……なんだろ、妹は関係ない。

ただ俺の中で拭い切れない感じがあって……

 

 

16:名無しの転生者 ID:W0VcdUz6n

んん?

 

 

17:名無しの転生者 ID:HDNqqUsZ8

イッチにしては珍しいな……

 

 

18:名無しの転生者 ID:gHMTrrJoC

普段はのほほーんとしてて授業中に寝まくってここでも真面目な時とプライベートで落差があって、バカなことしかしないイッチが珍しい様子だ……

 

 

19:名無しの転生者 ID:S62ZsgXgH

>>18

やっぱり散々言われるの草

 

 

20:名無しの転生者 ID:WSiSjgu0P

>>15

で? ちゃんと言ってくれないと伝わらないんだが

 

 

21:名無しの転生者 ID:Y4Oghiwl5

>>15

何が言いたい?

 

 

22:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

えっと、なんというか、俺に都合が良すぎると思うんだよ。

このタイミングだとそう考えてしまう。

いや、運が良かった。奇跡。偶然。

そう言われてしまえば、反論は出来んけどさ……。

たぶん、両親が妹を守ってくれたのも理解出来るし、言ってることは本当なんだろう。

嘘をついてる様子は一切なかったし。

でも……本当に何も無いのか? なんでこんなタイミングなんだ?

嬉しくない訳では無い。

喜ばしいことだ。

だけどなぁ……怪しんじゃうんだよ。邪推…って言うのかな

 

 

23:名無しの転生者 ID:sN8JX1KMo

んだよ、そんなことか

 

 

24:名無しの転生者 ID:vn+VVUMKl

しょーもな。

解散

 

 

25:名無しの転生者 ID:Lm78cJ/uQ

心配して損したわ

 

 

26:名無しの転生者 ID:9tcUnZq1g

初期から見てるけど、あのさぁ……

 

 

27:名無しの転生者 ID:7VGv2Kwwt

イッチさ……自分が幸せになるのは間違ってるとか思ってないか?

アホか

 

 

28:名無しの転生者 ID:8Z4aGkPC+

>>22

見返りは求めてないんだろうけど、お前よくやったじゃん。

ウルトラマンとして怪獣と戦って、勇者部として誰かの笑顔を守った。

そんなやつが少しも報われない方がおかしいっての

 

 

29:名無しの転生者 ID:SST853j+V

そうそう、その世界でいう神様……神樹様がイッチのことをちゃんと見てたんだろ

 

 

30:名無しの転生者 ID:NknWNqxJ8

助かったものは助かったんだからいいでしょ。

お前勇者部の子たちに今のこと言ったら間違いなく怒られると思うぞ

 

 

31:名無しの転生者 ID:2IKaoldZN

むしろ、ここまで人助けしてるやつが何も報われない方がクソにも程がある

 

 

32:名無しの転生者 ID:IB3Zl4w/T

というか、怪しんだところで分からないだろうし、素直に喜んどけ。

マイナス思考よりプラス思考の方がイッチらしいし、気が楽

 

 

33:名無しの転生者 ID:6OscC1vI9

>>22 >>30

まあ、イッチらしいというかなんというか

 

 

34:名無しの転生者 ID:4mxSEPstJ

んなこと考えるならはよ寝とけ。

怪我が治らんぞ

 

 

35:名無しの転生者 ID:MaXgvaOT3

いつか巡り回って返ってくるって言うし、良いことをしていたイッチに対するプレゼント……とでも思っておいたら?

 

 

36:名無しの転生者 ID:vS4BZRyJu

喜ばしいなら喜んだらいい。

それだけの話では……? それとも、イッチは妹ちゃんと会うのは嫌だったんか?

どんな子かは想像するしか出来んし、見たこともないけど

 

 

37:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

い、嫌じゃないが、なんだ……お前らちょっと怖いんだが。

いつもは罵倒くらいしそうなもんだが、優しくない?

気のせいか?

 

 

38:名無しの転生者 ID:gzlh8HFyJ

は? 普段から優しいだろバカ

 

 

39:名無しの転生者 ID:8bmfldmzT

そうだバカ。

なんて酷いこと言うんだ

 

 

40:名無しの転生者 ID:gHMTrrJoC

イッチが俺らのことをそう思ってたなんて……悲しいよ、俺

 

 

41:名無しの転生者 ID:NHv5IJlBU

そんな罵倒するわけないだろ……間抜け、ハゲ

 

 

42:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

前言撤回。

やっぱ、いつも通りじゃねーか! あと前世含めてハゲてないです。

まぁでも、ありがとうな。なんか気が済んだわ。

素直に喜んで寝とく。

おやすみ

 

 

43:名無しの転生者 ID:bxPjpqCri

おう、おやすみー妹ちゃんの姿早く見せろ

 

 

44:名無しの転生者 ID:I59wHFh0v

期待してるぞ!

 

 

45:名無しの転生者 ID:9cAiuKYdT

むしろイッチにはそこしか期待してない

 

 

46:名無しの転生者 ID:YfVguuKYy

やれやれ。

ウルトラマンを宿すやつは大半が自己犠牲精神を少なからず持ってるからなぁ

 

 

47:名無しの転生者 ID:GQ5YPS/ua

そもそもこの世界がそこまでやるか? レベルで連戦だったり乱入者居たりするし……

 

 

48:名無しの転生者 ID:4SomMpnhJ

バーテックスも厄介。ビーストも厄介。

その二体が融合するやつも居て、闇の巨人もありか……まだラスボスクラスが居ない分マシな方なのだろうか

 

 

49:名無しの転生者 ID:zeQ0tqStf

で、イッチは寝たんか?

 

 

50:名無しの転生者 ID:B7OHafGGC

反応ないってことは寝たんじゃないかな

 

 

51:名無しの転生者 ID:em+bzuUYJ

確かに……試しに言ったらわかるか、イッチのハゲ、バカ。唐変木! ラノベ主人公!

 

 

52:名無しの転生者 ID:xUDeqMbF+

一瞬で否定しないってことは寝たっぽいね

 

 

53:名無しの転生者 ID:LBKr9nDZm

じゃあ、別の話題(察しろ)になるが、本当にこれでよかったと思うか?

 

 

54:名無しの転生者 ID:l0WzAQQ4u

まだ確定じゃないんだ。

それまでは……これでいいと思う

 

 

55:名無しの転生者 ID:Z5ALpulw1

恨まれるのは慣れてるし……いや、文句言われるだけで終わりそうだが

 

 

56:名無しの転生者 ID:9u9MForqL

とにかく、どうにかして確認するしかない。

下手に不安を煽っても良いことはないだろうしさ

 

 

57:名無しの転生者 ID:Z5RkIhQCd

知らないのは良かった。

でも知ってる身からすると…最悪は有り得る話だ

 

 

58:名無しの転生者 ID:Q8pT+gXgq

出来るなら俺たちの勘違いで終わって欲しいけどな

 

 

59:名無しの転生者 ID:V+lNb54f6

でもなぁ……ヤツら、愉悦を感じるためにやりかねんし……。そもそも世界観的に有り得るし……

 

 

60:名無しの転生者 ID:aC9kApTpH

もしそうなら……大丈夫だろうか。

闇に決して負けない心が必要になるけど

 

 

61:名無しの転生者 ID:s+6i2eeQN

俺たちに出来ることは無い。

だからせめて、今だけでも……な

 

 

62:名無しの転生者 ID:8xc66jZgY

真実は時に残酷である。

だが、その真実を受け入れるかは本人が選ぶことだ……

 

 

63:名無しの転生者 ID:Iy502g6lF

絶対にそれはないと断言出来ないのは流石だな……

 

 

64:名無しの転生者 ID:kDjC2pWU4

まぁ、本編でも積み上げてきた信頼を何の躊躇もなくぶち壊した上に、容赦なく好意がある同僚を撃ったやつだし……有り得る、やりそう、やりかねない、そうとしか思えんだろう

 

 

65:名無しの転生者 ID:coYYM7kmC

>>62

セフィロスのやつ……ッ!

 

 

66:名無しの転生者 ID:ww7HC5gjd

本当は言った方が対策を取れるのかもしれない。

だが、確信がないからな……願うのであるならば、違う方がいい。

せめて俺たちが疑うしかない、か……

 

 

67:名無しの転生者 ID:Q9QVGheu4

正直、喪ったと思っていた家族が一人でも生きていたってイッチにとっては幸せなことだと思う。

俺たちが余計なこと言って、不安を煽ったり辛い目に合わせるのはね……今回のやつは普段からやってることとは違うし

 

 

68:名無しの転生者 ID:ackuYX1ho

結局、なるようになるしかない……か

 

 

69:名無しの転生者 ID:lzxJg9uQr

そうだな、少なくとも出来るのであれば確認してもらいたいが……覗きはやりそうにないし、チャンスが訪れることを待つしか

 

 

70:名無しの転生者 ID:cVMXEqAxi

はぁ、ままならないねー

 

 

71:名無しの転生者 ID:b89jSl3+w

やっぱさ……ツンデレだよね。ここの掲示板のやつらって

 

 

72:名無しの転生者 ID:HOmFw3Lws

素直なやつはあんま居ないよ。イッチが珍しいレベルやし、というかイッチみたいなやつがいっぱい居たら逆に怖いしとんでもねぇわ

 

 

73:名無しの転生者 ID:fES0/+yTK

>>71

う、うっさいわい! 誰がツンデレだ!

 

 

74:名無しの転生者 ID:WUufLewKM

いうて、今回ばかりなぁ。

誰でもキツいぞ

 

 

75:名無しの転生者 ID:yfR6jxUXr

まま、とりあえずイッチの世界時間で朝になって言えそうなら言おうぜ、遠回しに

 

 

76:名無しの転生者 ID:R3fB74eEQ

じゃ、それまで証拠消すかー!

 

 

77:名無しの転生者 ID:RPiRqYFIM

流石に一から全部確認なんてしたらとんでもない時間かかるからせんと思うが、一応ね。

名を出さないように最低限隠してはいるけど、バレたら大変なことになりそうだ

 

 

78:名無しの転生者 ID:bnMI6zUbb

よし、勇者部の子たちについて語るか

 

 

79:名無しの転生者 ID:YvHwk2icV

せやな、後はイッチに妹ちゃんのことを確認するように言えばいいし……えーと、胸辺り見れば多分分かるかな……?

 

 

80:名無しの転生者 ID:WHH7TbxAY

前回の見た感じ直撃受けたのはそこだが……え、それ無理じゃね?

 

 

81:名無しの転生者 ID:UKz3jwUDA

でも大打撃受けた部分はそこしかないんだよなぁ……や、でも流石に難しいぞ。

小学生低学年の頃ならともかく、中一の妹の裸を見るなんてことないだろうしさ

 

 

82:名無しの転生者 ID:Izru+f2pp

んな、ラノベ主人公みたいな展開……

 

 

83:名無しの転生者 ID:CxVMy2DjF

ありそうだ……イッチ、何度かラノベ主人公みたいなことしてるし

 

 

84:名無しの転生者 ID:twb+A1AqT

少なくともコアインパルスを胸に受けたわけだから、絶対怪我はしてる。

そこを怪我していたら……

 

 

85:名無しの転生者 ID:iyfyh7ySS

確定、か……。

リコの時がそうだったもんな

 

 

86:名無しの転生者 ID:OpNNgmkHV

腕なら分かりやすかったのにな……イッチなんて今肩抉れてるし

 

 

87:名無しの転生者 ID:ok3Ljj7oE

うーん場所が厳しいな。流石に俺らもそんな最低なことしろとは言わんぞ……見たいとは思っても

 

 

88:名無しの転生者 ID:ubX45DZMl

ラッキースケベが発動すればワンチャン……!

 

 

89:名無しの転生者 ID:dOxLkj6j/

とにかく、ここのスレは1000まで埋めて新しくスレッド作成しとこう

 

 

90:名無しの転生者 ID:KOeCyIsko

せやな、結局は何も出来んし、ちょっと展開に期待しつつイッチには言えそうなら遠回しに言っておこう

というか期待してる人しかいなさそう……()

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 第 15 話 

 

-戻ってきた生活-ライフリターンズ 

 

×××

 

日常編①

??小都音編前編

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付は跨ぎ、時間は止まることなく過ぎてゆく。

西へ沈んだはずの太陽は東から昇っていき、暗くなった世界を明るく照らす。

夜の世界から、朝の世界へ。

時間が経つたび、外の世界は明るさを取り戻し、人も増えるのだろう。

ある者は学校へ、ある者は仕事へ、ある者はなんらかの用事で外へ、昼になれば、ある者は遊びに、ある者は買い物にと言った感じで。

深夜帯、と言われる時と比べ、朝とはいえ、徐々に色んな行動をする人が出てきた頃合---当然、学生である紡絆は学校に行く必要があるため---

 

 

 

 

 

「んん……すぴー……。あと……ごしゅーかん……」

 

起きることなく、寝ていた。

むしろ惰眠を貪るつもりしかなかった。

そうなると、紡絆を起こすものは目覚まし時計しかない。

その目覚まし時計はゆっくりだが確実に動き、鳴った瞬間には目覚まし時計は黙らされた。

しかも、役目を果せたというわけでもなく、紡絆は眠ったままである。

約立たずだった。

こうなってしまうと、遅刻が確定になるのだが、前日のことを考えると仕方がないといえば仕方がないのだ。

体力を大きく使うオーバーレイ・シュトロームに、命を削るメタフィールドの形成。

さらにダークファウストとの戦闘。

勇者部の依頼もやっていて、さらに予期せぬ出来事が起こったのだから、頭も肉体も疲れてるといえる。

一応紡絆は授業中寝てるとはいえ、朝は苦手なタイプではないのだが、体力の回復が追いついていないのだろう。

紡絆は起きる気配もなく、時間は一向に過ぎ、このまま東郷か友奈が来ない限り寝たままになる---のが増えてきていたのだが、紡絆の部屋で変化が起きた。

 

「お兄ちゃーん、学校遅刻するよー?」

 

ドア前でノックする音が響き、紡絆の家に居ることから察することが出来るが、少女---紡絆の妹である小都音の声が部屋に届く。

しかし何の返事もなく、少し経っても何も返ってこないため、不審に思った小都音はもう一度声を掛けた。

 

「お兄ちゃん? 入るね?」

 

そう告げても、やはり返事はない。

なので、小都音はドアノブを掴んで開けると、部屋へと入った。

しっかりとドアを閉めた後に、小都音は紡絆の部屋を見渡す。

特に目立ったものもなく、ごちゃごちゃしているわけでもない。基本的には極一般の家具しかない部屋。

星に関連するものは多くあるが、それでも部屋の中は思春期の男子が持つには何も無さすぎる。

ゲームもあるといえばあるが、綺麗に収納されていることから、紡絆が全然物を買っていないのは誰でも分かる光景だった。

そんな中を気にせず、小都音はベットへ一直線に向かう。

小都音の視界の中には、毛布を頭まで被ってるのか毛布が膨れ上がっており、紡絆は間違いなく寝ているのだろう。

小都音は目の前まで来ると、毛布をそっと捲ることで顔を露出させた。

 

「あ、まだ寝てる……もう」

 

小都音は紡絆を起こすために体を揺すろうとするが、ふと手が止まって、穏やかな寝息を立てながら気持ち良さそうに眠る紡絆を見つめていた。

 

「………」

 

「すぴー……」

 

起きる様子が一切なく、紡絆は眠ったままだ。

それどころか、小都音が近くにいるという気配すら察知していないのだろう。

小都音はそんな紡絆をただ見つめ、床に座ると寝顔を眺めるように見ていた。

 

「お兄ちゃん……全然起きない?」

 

頬をつんつんと指で突くと、むにゃむにゃと呟くだけで起きる様子がないのを見て、小都音はくすり、と小さく笑うと満足したのか体を揺り始めた。

 

「お兄ちゃん、起きてー? 起きないとイタズラしちゃうよ?」

 

「んん………にじかん……」

 

「うっ……だ、だめ。遅刻するし朝ごはん食べれなくなるからっ!」

 

一瞬だけ、心に認めようかという甘い考えが生まれかけるが、邪念を振り払って小都音は紡絆の体を大きく揺すった。

大きく揺すられた紡絆は流石に寝続けることなど出来ず、ゆっくりと目を開いた。

 

「んぇ……? あれ……小都音?」

 

「あ、やっと起きた」

 

「なんだ、夢か……」

 

目の前の人物を認識した紡絆は名前を呼ぶが、小都音が安堵の息を吐いた瞬間にはまた布団を被りながらベットに寝転んだ。

昨日の出来事を忘れているのだろうか。

 

「もぉー! 起きてーッ!」

 

「うぉ!?」

 

ついには怒った小都音は大声で叫びながら毛布を引き剥がし、それによって完全に目が覚めたのか、紡絆は驚きながら起きた。

起きたのだが---

 

「お兄ちゃん」

 

「………はい」

 

両手を腰に当てて怒ってます、という雰囲気を纏う小都音に対して紡絆は正座をしながら頭を垂れていた。

 

「分かってる?」

「いや、ごめん……ごめんなさい」

「んん……もういいから早く着替えて! それからお兄ちゃんのことだからいつも朝ごはん食べてなさそうだし、ちゃんと食べる!」

「わ、分かった。でも、別に食べなくても……」

「おにいちゃん?」

「あっはい」

 

ついには笑顔---それも目は笑っておらず、低い声を発した小都音に紡絆はただ従うという選択しか取れなくなった。

 

「じゃあ、待ってるからね」

 

「ん、悪いな」

 

「気にしないで」

 

それだけ言い終えた小都音は紡絆の部屋から出ていき、残された紡絆は時間を確認した後、慌てて服を脱いだ。

肩の傷は癒えており、腕や脚は包帯が必要なだけでそこまで重傷でもないことから、ストーンフリューゲルによる回復でほぼ治ったのだろう。

少なくとも肩が全快した紡絆は腕を回して確認してから、即座に制服へ着替え、必要なものをカバンに入れるとカバンを持ってリビングへ向かう。

リビングに着くと既にテーブルにお皿は置かれており、準備は終わっていた。

紡絆は椅子に座りながらカバンを傍へ置くと、小都音は対面に座っていた。

 

「今日は和食にしてみたよ。食べよ?」

 

「おう……いただきます」

 

「いただきます」

 

手を合わせて食事の挨拶をすると、紡絆は早速鮭を一口食べ、こくこくと満足そうに頷いていた。

 

「やっぱり美味いな。味付けもちゃんとされてて普通にこれだけでも食べれる」

 

「お兄ちゃんの口に合うなら、よかった」

 

嬉しそうに、それでいて安心したように笑う小都音を見て、紡絆も自然と頬を綻ばせる。

こうして誰かと食べるのは何度もしているはずだが、朝食を家族と食べるのは久しぶりになるからだろう。

 

「そういえばお兄ちゃん。怪我してる? さっき、部屋に包帯見えたけど……」

 

「ん? あぁ、腕と脚にちょっとな。対して痛くはないから大丈夫」

 

「……そっか」

 

気になったように訊いてきた為、紡絆は本音で答える。

というより、別に嘘を言っても得しないしバレるからだろう。

紡絆は全力の、本気で隠さない限り、嘘がすぐにバレるほどにヘタクソなのだから。結局すぐバレることが多いが。

しかし紡絆は一瞬だけ何処か悲しそうにしていた小都音に気づくこともなく、食事に有り付いていた。

そうして食事を終えた二人は、感謝するようにまた手を合わせて食後の挨拶をした。

 

「じゃあ、俺は学校行ってくるけど……」

 

「あ、それはちょっと待って」

 

「ん?」

 

カバンを持って行こうとしたところで、小都音が慌てて立ち上がってキッチンへ向かう。

紡絆は首を傾げると、小都音は手に何かの袋を持ちながら帰ってくる。

 

「それは?」

 

「お弁当」

 

「有難いけど、わざわざ作ってくれたのか……」

 

「だってこれを昼食にしようと思ってたでしょ。お見通しだからね?」

 

弁当箱が入ってるであろう袋を差し出すと、紡絆は受け取るが、呆れ果てたような表情で小都音は例の3秒チャージゼリーを取り出した。

紡絆は弁当箱を入れつつ、カバンから消えてることに気づく。

 

「そ、ソンナコトナイヨ……」

 

「バレバレ……」

 

今更誤魔化すように目を逸らした紡絆だったが、小都音からの呆れた視線にいたたまれなくなったのか踵を返した。

 

「と、とにかくそろそろ行ってくる! 東郷のところ行かないと!」

「あ、そうだね。それじゃあ、お兄ちゃん。楽しみにしててっ!」

「へ?」

「私のことはまだ東郷さんたちには話さないでね。ほら、早く行かないと!」

「え、ちょ……まぁいいか。行ってきます」

「行ってらっしゃーい!」

 

背中を押され、玄関まで歩いた紡絆はそのまま小都音の勢いに押される感じで見送られながら出ていく。

出たあと、玄関の鍵を閉める音が聞こえると首を傾げつつも思考停止した紡絆は東郷の家へと向かう。

すると、ちょうど東郷も出てきたところだったので、紡絆は駆け足で手を振りながら近づいた。

 

「おーい東郷ー! おはよー」

 

「あら……紡絆くん、おはよう。今日も元気ね。怪我は平気?」

 

「おう、ストーンフリューゲルを使って回復したから大丈夫。それより友奈は……まだか。家に行こう」

 

朝から明るく挨拶をしてきた紡絆に東郷は微笑んで返すと、怪我の調子を訊く。

紡絆はそれに軽々と返すと、嘘じゃないというのは分かっているのか東郷は素直に頷いた。

 

「そうね。友奈ちゃんを迎えに行きましょう」

 

「よし、それじゃ押して行くぞ」

 

「えぇ、お願い」

 

「ん」

 

紡絆は車椅子の後ろに回り、手押しハンドルを握ると徒歩の速度で押していく。

紡絆と東郷は友奈と近いのもあって、全く時間かかることもなく辿り着けた。

数秒程度で着いたため、紡絆はインターホンを鳴らす。

 

「お、お待たせー!」

 

元々準備は終わっていたのか、インターホンを鳴らして少し経つと、友奈が急いだ様子で出てくる。

 

「おはよう。起きてたみたいだな」

 

「おはよう、友奈ちゃん」

 

「ちゃんと起きてたよーおはよ紡絆くん、東郷さん」

 

鍵を閉めながら答えた友奈は、振り向いてから二人にも挨拶を返していた。

そんなこんなでいつもの登校メンバーとなった三人は、讃州中学に向かうための通学路を歩く。

その通学路も同じ時間帯に出たのか、それとも早く出たのか他の生徒たちも歩いているのが見える。

そんな中を他愛もない話をしながら歩く姿は、彼らの仲の良さがはっきりと分かるだろう。

 

「なんだか今日の紡絆くんはいつもより明るいというか、嬉しそうね」

 

「確かに、ちょっと弾んでる感じがするかも。何かあった?」

 

「ん、いや。良いことがあったんだ」

 

「良いこと?」

 

「怪我が治ったのもあるけど、ちょっとな」

 

「そっか。じゃあ良かったね!」

 

「だな! 悪いことよか良いこと起きた方がいいもんだ」

 

外に出る前に言われたことを思い出した紡絆は曖昧にするが、言いたくないと判断したのだろう。

二人は特に訊くことはせずに、そのまま三人は教室へ向かった。

もし役目に関することだったなら聞き出していたかもしれないが、紡絆の様子からして特に悪いことでもないから、聞かなかったのだろう。

それはともかく、今日も今日とていつも通りの日常を過ごすのだった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

その日の朝。

讃州中学は、妙にザワザワとしていた。

珍しいことがあったのか、それとも何かあるのか、それはまだ定かではないが、HRの時間になると生徒たちはチャイムが鳴る前には席に着席し、先生を待っていた。

すると、少し経ってから眼鏡をかけた少し老婆の先生が出席簿である綴込(とじこみ)表紙を手に入り、教壇の前にに立った。

先生が教壇の前に立つと、クラスの生徒たちは一斉に審議を問いかけるが、先生は軽い注意をしてから、説明するためにも注目を集める。

好奇心故か、生徒たちは大人しく従い、先生はこほんとひとつ咳を入れると、口を開く。

 

「今日は皆さんにこのクラスに編入してくる新しいお友達を紹介します。入ってきて」

 

「はい」

 

先生の言葉に教室の入り口に注目が集まる中、先生に呼ばれたであろう生徒は讃州中学の制服を身に纏いながら堂々とした様子で歩いていく。男子や女子からも驚いたような歓声が挙がるが、その生徒は先生の横に立ち、クラス内を眺めていた。

その間に先生は黒板に名前を書いていく。

小声でクラス内がぼそぼそと話し始めてはそわそわし、ただ一つだけ言えることは、女子よりも男子の方が反応がいい。

つまり---女子生徒だった。

讃州中学の女子制服を身に纏い、綺麗な髪が小さく揺れていたのだ。

そしてその女子生徒はただ待ち、先生が名前を書き終えると先生はその生徒に声を掛けた。

 

「では、早速自己紹介お願いします」

 

そう言われた女子生徒は一歩前に出る。

綺麗だと感じさせる()()()()()()()を靡かせ、美少女と呼べるほど整った容姿を持つ少女は口を開いた。

 

「皆さん、こんにちは。今日からこのクラスでお世話になる天海(あまみ)小都音(ことね)です。よろしくお願いします」

 

ふわりとした柔らかい笑顔で自己紹介し、礼儀正しい綺麗な作法で頭を下げた編入生の後ろには、天海(あまみ)小都音(ことね)と書かれていた。

その正体を、容姿を知るものは---

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えぇえええぇぇ!?」

 

一人だけ存在していた。

思わず、といった感じで椅子から立ちながら大声を出してしまったのは、犬吠埼樹。

そう、このクラスの学年は一年であり、その学年の樹は唯一と言えるくらいに編入生の存在を知っていた。

なぜなら編入生の名前と容姿は、紡絆の家で見た()()()()()なのだから。

苗字は違えど、驚くだろう。

そもそも編入生ということで興味は惹かれていたのに、それが知っている先輩の妹である可能性が高かったのだから、恥ずかしさや普段の気弱さはどこへやら。

立って叫んでしまったのである。

 

「犬吠埼さん、どうかしました?」

 

「あっ、い、いえ……すみません……」

 

「………犬吠埼?」

 

恥ずかしさのあまり、顔を赤めながら席に座るが、周りからよりザワザワとしていた。

だからか、編入生である小都音が小さく小声で呟いたのは聞こえることなく、ただ小都音の瞳は顔を赤めて縮こまる樹に対して、『興味』という感情を宿して見ていた。

 

「コホン。気を取り直して、天海さんはまだこの学校に来たばかりで至らないことはあると思います。なので困っていたら声をかけてあげてください。

そして仲良くしてあげるように。

天海さんは何か言うことはありますか?」

 

「えっと……ご迷惑にならないように出来る限り早く覚えていきたいと思います。なので、これからよろしくお願いしますね」

 

「天海さんの席は向こうの方ね」

 

先生に言われ、小都音は大人しく席に座る。

すると隣の席や後ろの席の生徒に話しかけられたため、小都音は一言社交性のある挨拶だけを返して、HRの話を聞いていた。

しかし、小都音は樹を興味津々といった様子でほんの少しだけ再び探るような細めた視線を向けていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

犬吠埼樹にとって、今日の朝の出来事は未だに忘れられないでいた。

編入生が来るという周りからの噂を聞いた樹は興味を持っていたが、忘れられないでいるのは自身の失態である。

流石に自己紹介中にあんな大声で叫んでしまえば、恥を晒すにも程があるだろう。

しかしそれほど驚いたのである。

無論、まだ確証はないため、勇者部のトークで話すことも出来てないが、それは肝心の小都音が転校生特有の質問責めにあっており、樹は突撃出来るような度胸はなかったからだ。

どの休み時間に話しかけようかと視線を向けても、質問責めにあっている。

小都音は笑顔でどんな質問にも冷静に教えられないものは教えられないと言い、返せるものは返しているが、樹はそれを見て少し羨ましいとも感じていた。

 

(わ、私には無理……)

 

あれだけの人数に囲まれてもなお、全て笑顔で捌けるほどのコミュ力を持つのを樹は少ない知り合いの中に、そうそういない。

何故なら簡単に想像出来るのは二人、三人---いや、コミュ力が高い人ばかりで、ほとんど捌けそうな人たちしか浮かばなかった。

ちなみに今は放課後で、樹は勇者部に向かうための準備をしている最中である。

 

(もし紡絆先輩の妹さんだったら、紡絆先輩喜ぶかな……だといいな。でも違ったら、先輩を余計辛い目に合わせちゃうんじゃ……。苗字は違うし、私の気のせいかも? それとも先輩を呼んで確認してもらうとか……だけどそれはそれで迷惑に……)

 

カバンに必要なものを収納しながら、その間に心の中で思ったことを呟く。

考えてる事は紡絆のことだが、純粋な彼女の好奇心もあるのだろう。

 

「---埼さん」

 

(うぅ、気になる……本当は確かめたい。友奈さんや紡絆先輩なら、絶対すぐに話にいけるのに私は……。それに自己紹介を邪魔しちゃったみたいなものだし、早速嫌われたかも……! も、もう一度謝るべきなのでは…!?)

 

「--吠埼-ん」

 

(で、でも紡絆先輩が話してた時のことはそれほど経ってないし記憶に深く残ったから覚えてる……。写真も見たけど、髪の色も見た目も本当に同じだし、私と同じ年齢とも言ってたもんね。じゃあ、本当に先輩の妹さん? どう確かめたら---)

 

「犬吠埼さん! 聞こえてる? 大丈夫?」

 

「へぁ!?」

 

そんなふうに考えてると、樹は顔を覗き込まれたことで視界一杯に広がった整った顔を見て、その人物に気づいた瞬間、驚いたように顔を上げる。

 

「どうしたの? 体調悪いとか? あっ、ごめんね。タメ語になっちゃった」

 

「え、あ………いえ……。ど、どうして……? さっきまであそこに……」

 

心配と言った様子で見つめてくる小都音の姿に、既視感を覚えつつ樹は必死に思考しながら言葉を紡ぐ。

 

「普通に断って抜け出してきたよ? それより、あなたが犬吠埼さんで合ってる、よね?」

 

「は、はい」

 

さらっと普通は難しいことを言っているが、小都音は気にした様子は無いまま自らの要件を切り出してきた。

人違いと言うわけにも行かず、むしろ話すきっかけが出来たことを樹は活かそうと疑問をどう訊こうか考えようとして---

 

 

 

 

 

「よかった。おに---兄さんから聞いてたの。()()()()()()()()()()()()()()()()って」

 

考える必要が、なかった。

ほぼ確定、と言えるだろう。問題は紡絆が妹が生きている事実を知っているということを樹が知らないという点である。

 

「やっぱり、もしかして……」

 

察したように、それでいて驚いた表情で樹は小都音を見つめると、小都音は柔らかく微笑む。

 

「あ、自己紹介では言ってなかったもんね。改めまして、天海(あまみ)小都音(ことね)です。継受紡絆の妹で、兄さんも既に私のことは知ってるよ。

それで、いつも兄がお世話になってる……のかな?

えっと、間違ってたら申し訳ないんだけど、姉が入ってるならあなたも勇者部に入ってる?」

 

「わ、私は犬吠埼樹です。犬吠埼風は私の姉で、その……勇者部には入ってますけど、紡絆先輩にはむしろ私の方こそお世話になっていて、そんな……」

 

色々な疑問が浮かぶ中、何とか樹は小都音の言葉に返していく。

そもそもの問題として、樹は紡絆から聞いたのは、妹が死んでいるということ。

名前が小都音ということ。

同じ年代ということ。

それくらいしか聞いておらず、だからこそ、混乱していたのだ。

聞きたいことは山ほどあるし、逆に考えたいことも多くある。

だが、状況的に整理が追いついていなかった。

紡絆が知ってるということから、言わなくていいと言うことだけは分かったが、せいぜい編入初日に悪い印象を与えないように無視しないように返すだけが精一杯だったのだ。

 

「……そっか。よろしくね、樹ちゃんって呼んでいい? 私のことは小都音って呼んでくれたからいいから。

あ、さん付けは禁止ね」

 

「だ、大丈夫です。えっと、じゃあ、小都音ちゃん……?」

 

「うん、それでいいよ。

でも、良かった……勇者部の人が居てくれて。今から部室に向かうところ?」

 

少々グイグイ来るとはいえ、小都音は紡絆とは違ってまだ常識のある姿というのが分かるだろう。

少なくとも紡絆ならこの時点で何かはやらかしていても不思議ではなかった。

まぁ、そもそもの問題として小都音の興味はあくまで勇者部であって、樹のみを対象としてないのもあるのだろうが。

 

「はい……一緒に来ますか?」

 

「いいの?」

 

「私に話しかけて来たのって、それが目的かなって」

 

「そんな分かりやすかったかなぁ……?」

 

樹の言葉に首を傾げて不思議といった表情をする小都音だが、樹は首を横に振った。

違うと言いたいのだろう。

 

「私も、同じ立場だったら似た目的を持つと思ったので……。正直、紡絆先輩がわかりやすいだけで小都音……ちゃんは全然……その、読めないです」

 

「そっか、なるほどね……樹ちゃんはお姉さんのことが大好きなんだ」

 

「私にとっては、最高のお姉ちゃんですから」

 

「良いと思うな、そういうの。ね、それなら樹ちゃんのお姉さんのこと、私の兄さんのこと、樹ちゃんのこと教えてくれる? これからも付き合いが増えていくと思うし」

 

慣れてない様子の樹の言葉を待ち、バカにすることもなく、引くことも無く、ただ優しい表情で見つめていた小都音は一緒に勇者部の部室へ向かう道の中、親睦を深めるように会話をする。

小都音は樹が話しやすそうな会話を選んでそのことを聞いたが、初対面とは思えないほど樹は話しやすかった。

だからか、部活に着くまで会話は途切れることなく、間違いなく初日で二人の仲は深まっただろう。

なにより、気弱で引っ込み思案の樹でも、性格が全くと言って似てない小都音と話せるのは、二人には共通点があったからだった。

人間関係で一番効果的で、一番仲を深めやすいのが共通点。

趣味、好み、嫌いなもの、ニュース、流行りなどとそういった話題。

色々なものがあるが、本音を話し合え、嘘偽りなく言えることは二人だけにはあったのだ。

兄と姉についてという、最強の話題が---。

 

 

 

 

 

 

 





〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
妹に恋人繋ぎされてもなんか甘えん坊になってる気がするけど、こんな感じだったな、うん普通だわみたいなこと考えてるやつ。
ウルトラマンとしては復讐などは止めなければならないが、紡絆としては人間なので、紡絆自身は性格上普通に他者の意思は人としての道を踏み外さないなら尊重する。
ただし、彼自身は後悔も罪悪感も未だに残っているようだ。
それと大赦の権力に引いた。

〇エボルトラスター
紡絆を落ち着かせるために一度ドクンした

天海(あまみ)小都音(ことね)
苗字から分かる通り、天海という老夫婦の家に暫く居候していたらしい。
料理も上手で色々家事も出来る。
事故に遭った時の記憶は飛んでいて覚えていないらしいが、仮に覚えていたら復讐すると語った。
兄である紡絆との距離感が一方的に近い。
外では兄さん、家ではお兄ちゃんと呼ぶよ。
一応大赦と縁はあるようだが……?

〇樹ちゃん
そりゃあ、聞かされてた話とは違うと驚くよね。
でも以前紡絆に言われた通り、仲良く出来そうだと思ったとか。
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