【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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感想見る→あれ、この内容15話じゃ……→んん? あれ? 日曜日投稿したはずだが……ん? 今日月曜日……あっ、間違えてね? あんれー!?
はい、予約投稿してて日曜日が21日だと勘違いしちゃってました、てへぺろ(´>ω∂`)
二年(初投稿が2020の3月8日)も活動していて初心者みたいな間違えをする作者がいるらしい。しょ、初心に帰るのも大事だから()

それはともかく、正直クソ悩んだ回です。
主にピンクにならないかどうか。
最後に、友奈ちゃん誕生日おめでとー! キャラの誕生日なんて基本覚えてないから忘れてたわ…ちょうどミスって投稿した15話が誕生日だったのね…。






「-戻ってきた生活-ライフリターンズ」【その②】

◆◆◆

 

 第 16 話 

 

-戻ってきた生活-ライフリターンズ 

 

×××

 

日常編①

天海小都音編後編

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

学校の廊下を、紡絆はどこが疲れた様子で東郷や友奈と一緒に部室への道を歩いていた。

 

「ね、寝足りねぇ……。腹減った……部室で食お……」

 

「全然食べれなかったもんね、紡絆くん」

 

「それでも、ちゃんと授業は受けなくちゃダメよ」

 

そう、普段授業中は寝てることは多いとはいえ、今回の紡絆は午後は寝ていたが、午前の授業を全てちゃんと受け、その上昼食を食べることはあまり出来なかった。

簡単に言えば、紡絆が弁当箱、それも中身にハート型の料理が入っていたせいで、クラス内に衝撃が走り、転校生や編入生のように囲まれたかと思えば、付き合ってるのかとかうんたらかんたらで質問責めにあい、何故か友奈と東郷も巻き込まれたというわけである。

ちなみに友奈と東郷が巻き込まれた理由は普段からいるからという理由であり、紡絆は途中から食べるのをやめて弁当箱を閉じると悟りを開いていたが。

 

「きょ、今日は午前は受けたし? あぁ……」

 

部室へ向かう道は友奈が押してるため、隣で歩いている紡絆は東郷から目を逸らして言い訳しようとするが、ぐぅーと腹の虫が鳴る。

そしてテンションも下がっていた。

 

「朝の明るさが嘘のようね……」

 

「ほ、ほら元気出して! もう少しで着くよ!」

 

「ん、そうだな……よし、大丈夫だ! 腹減った以外は問題ない! 腹減った以外は!!」

 

無駄に強調して言うが、部活動は自分たちだけではなく、他人と関わる。

だからこそ紡絆は空腹を意識外に投げ飛ばし、明るさを取り戻した。

 

「ごめんなさい、紡絆くん。こんな時にぼた餅用意してなくて……」

 

「い、いやいや東郷は何も悪くないって。むしろあんなことになるとは予想外過ぎた。逆に勘違いされて困ったろ」

 

「私は気にしてないよ〜結局紡絆くんは話したの? 私は対応で精一杯だったから聞けなかったんだけど……」

 

「私も紡絆くんとの噂なら全然平気よ。あ、そういえば私もそれは知らないわね」

 

「二人の優しさに感謝しとく……ちなみにそれは秘密ってことで押し通した。まぁ、近いうち分かるんじゃないかな」

 

何故秘密にするように言われたのかは分からないが、紡絆は近所である、それも隣の同士の二人ならすぐ分かるだろうと投げやり気味に呟き、ふと思い出したように口に出す。

 

「そういえば、一年の方で新しく来た子がいるらしいな。質問責めにあったとき、言ってた」

「それに関しては朝来た時にも結構話題になってたわよ?」

「一年ってことは樹ちゃんのクラスの可能性もあるってことだよね。どんな子かなぁ〜」

「どの道、勇者部への依頼が来ない限りは会うことはないだろ。俺らは二年だし……なんて言ってると部室に着いた……が」

「依頼主が来てるのかしら……」

「とりあえず入ろっか」

「だな、んじゃ風先輩居るっぽいしなんか言われそうだから俺が先入るわ」

 

部室前に来た紡絆たちだが、部室の中では話し声が聞こえてきたため、依頼主と話してるのではと考えたようだ。

となると小言を受けるかもしれないため、紡絆は自ら前に出てノックした。

 

「すみませーん。入りますー」

 

「あ、早く入ってきなさい。特に紡絆、早く説明して」

 

何処か気の抜けたような声でドア越しに話しかけると、何故か指定されながら早く入るように言われたため、紡絆は一度友奈たちと顔を見合わせてからドアを開け、口を開く---

 

 

 

 

 

 

「失礼しm---「お兄ちゃんッ!」うぇえぁ!?」

 

口をまともに開くことも出来ず、今朝も聞いた声が耳を通る。

紡絆は突然来た腹の衝撃に空腹なため力が出ずに耐えることも叶わないまま、尻餅を着いた。

 

「い、いてて……何!? 罠!? 風先輩の罠!? 俺なんかした!?」

 

「つ、紡絆くん大丈夫!? って、この子って……」

 

「今の言葉から考えると、もしかして……」

 

指定されたため、さては罠でも仕掛けられていたのかと紡絆が考えていると、腹に違和感と心底驚いたというように驚愕の表情で自身を見る友奈と東郷に紡絆は怪訝そうな表情を浮かべ、視線を辿って違和感のある腹に視線を向けた。

すると、そこには---

 

「えへへ……ごめんね。驚いた?」

 

「……はっ?」

 

妹である小都音が、イタズラが成功した子供のように小さな舌をちろりと出して、可愛らしい笑顔で首を傾げながら紡絆を上目遣いで見つめていた。

想像もしてなかった出来事に、紡絆はつい前日の夜と同じ反応をする。

ちなみに紡絆が想像もしてなかったのは、讃州中学の女子制服に身を包みながら、この学校に来ているということである---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直し、紡絆はまるで法に裁かれる罪人のように椅子に座りながら、その対面には友奈、東郷、風、樹の四人が座っていた。

全員揃ったことから、状況の説明を求められた紡絆は、かくかくしかじかで説明した。

簡潔に纏めると、事故に遭った時、両親が小都音を守ってくれたこと。

小都音本人を病院に連れて行って、引き取ってくれた人がいたこと。

その引き取ってくれた老夫婦の家に暫く居たらしく、昨日の夜に戻ってきていたこと。

妹の名前が違うのは、お世話になったお礼としてお世話になった人の苗字を使っていること。

前日の夜そのまんまの説明すると、勇者部の皆は自分の事のように喜び、めでたいという言葉を紡絆に送っていた。

それにお礼だけを返し、盛り上がって話題がどこかへ行く前に、風が咳払いをひとつ入れる。

 

「こほん。それで、今のをもっと簡単に纏めると、紡絆が知らないところで、無事に生きていたってことね。本当に良かったわ……」

「まぁ、流石に県を跨いで全ての病院を探すことは出来てませんでしたから、そこは盲点でしたね……。けど、なんで小都音がここに?」

「兄さんが讃州中学に入ったことは知ってたから、兄さんの家に戻る前に手続きをしておいて、わざと言わなかったんだ。

驚いたでしょ? ちなみにクラスは樹ちゃんと同じで、友達になれたの。凄い?」

「えっ!? 樹に友達が……今日は赤飯炊かないと!」

「お、大袈裟だよお姉ちゃん!」

 

紡絆は納得したように頷き、目を輝かせながら隣に座る小都音は紡絆に頭を近づけていたため、紡絆は頭を撫でながら目の前でこれはまた大袈裟に騒ぐ姉妹、主にその姉を見て苦笑する。

 

「一年生に来た編入生って、小都音ちゃんのことだったのね」

「わぁ……ここでも会えるんだね、またよろしくね!」

「はい、東郷さん、結城さん。よろしくお願いします。私が居ない間、兄さんがご迷惑をおかけしていないでしょうか……?」

「ううん、全然大丈夫だったよ! むしろお世話になってるくらい!」

「えぇ、紡絆くんにはとても良くしてもらってるわ」

「そうですか……あ、でも兄さんは渡しませんからね?」

 

ホッ、と安心したように微笑む小都音だが、すぐに警戒するような視線を東郷と友奈に向けていた。

友奈はどういうことかと首を傾げ、東郷はただ微笑ましそうに微笑む。

様子からして顔見知りのようだが、隣同士なのもあって会うことはあったのだろう。

とりあえず紡絆は事情聴取が終わったため、椅子を動かすと机を借りて弁当箱を開けていた。

 

「兄さん、ご飯食べなかったの? それとも私が居ない時に苦手なものでも出来た?」

 

「いつの間に!? いや……ちょっと騒ぎになって」

 

「紡絆くんが弁当を開けたら、クラスメイトの人たちが来て、紡絆くん食べる時間なくなったんだ」

 

「なるほど……」

 

「でも、そういうことだったのね。紡絆くんが今日持ってきた弁当は小都音ちゃんが作った……と。腑に落ちたわ」

 

友奈たちと話していたため、離れたはずの紡絆はいつの間にか隣に来た小都音に驚きつつ、事情を話す。

しかしあまりにも淡白過ぎたからか、友奈が補足して、東郷は先程聞いた近いうちに分かるという言葉を思い出して、納得していた。

 

「じゃあ、兄さん。私が食べさせてあげる! ほら、あーん」

 

「自分で食えるんだが……まぁいいか」

 

特に気にしない紡絆は大人しく従い、口を開けて食べさせて貰っていたが、ここが家だとでも思ってるのだろうか。

 

「あのぉ〜……私たちのこと忘れてませんかね?」

 

「あ、えへへ」

 

「くっ、確かに反則級の可愛さ……! でも樹も全く負けてないわ! いいえ、むしろ上…!」

 

「何言ってるの、お姉ちゃん……」

 

風の言葉を聞いて、小都音は思い出したように照れたように笑う。

風はそれを見て、よく分からない反応をしたからか樹に突っ込まれていた。

 

「……兄さん、続きはまた家でね」

 

「お、おう……?」

 

そんな風の様子を知らずか、小都音は肩をくっつけたまま紡絆の耳元で囁く。

紡絆は困惑しながら返事したが、微妙な空気が部室内を占めていた。

なお、肝心の紡絆は小都音が肩をくっつけていても美味しそうに集中して弁当を食べるため、役に立たない。

 

「え、ええっと、小都音ちゃんはどうして勇者部に? もしかして依頼があるとか?」

 

「そうね、私たちに出来ることなら気軽に相談していいのよ」

 

そんな空気を変えるために、約立たずな紡絆は置いておいて、友奈が本題に入る。

それに乗るように、東郷も優しく言っていた。

 

「そうでした。樹ちゃんにも言いましたけど、兄さんに会いに来たのが一番の目的です。

でももうひとつあって、風先輩」

 

「ん? あたし?」

 

きょとんと首を傾げる風を見ながら、小都音は視線を向けて真剣な表情を作っていた。

 

「勇者部に入部したいって言うために来ました。あ、皆さんが()()()()()()()()()についてることは、大赦の人から聞いてるので、邪魔にはならないと思います」

 

「ぶっ……!? ちょ、知ってたのか!? でも何処で!?」

 

まるで普通の会話のように言った言葉に、周りが驚いてから言葉を発するより前に、紡絆は喉を詰まらせかけながら素早く反応した。

そのことに、小都音は説明するように口を開く。

 

「色んな手続きを大赦を通してしたからね。

その時、大赦の人から聞いてたの。ほら、精霊も見えるし。

これって勇者のお助けみたいなものだったかな? 誰のだろ……?」

 

「あ、それは私のだよ。牛鬼って言うんだ。なぜか私より紡絆くんの方が懐いてるんだよね」

 

紡絆の背中にこっそりと近づいていた牛鬼を、小都音は見逃すことなく優しく包むと手に乗せながら、誰の精霊か聞くと友奈に差し出していた。

友奈は牛鬼を受け取ると、腕で抱きしめる。

 

「それよりも……見えるってことは、小都音ちゃんにも勇者適性があるってこと? 風先輩は小都音ちゃんが勇者だということは聞いてますか?」

 

「いえ、聞いてないわ。そもそも新しい勇者が来るってことすら聞いてないし……。一応、メールはしてみるけど」

 

「じゃ、じゃあ小都音ちゃんはどうして……?」

 

東郷の言葉に、一番詳しいであろう風も分からないといったように首を横に振り、携帯を取り出してメールを出していた。

樹はとりあえず、聞いていたが。

 

「あ、私にあるのは()()()()()()なの。そもそも死亡扱いされていたみたいだから、勇者としての力も用意されてなくて。

知識としてなら、皆さんが勇者としてバーテックスという存在と戦ってるってことくらいは知ってますけど……」

 

「言ってることは本当見たいね。すぐ返ってきたわ」

 

「なるほど、それなら……いいんじゃないですか? 小都音は事情を知っていて、なおかつ俺たちは勇者部の人員も増やせる。メリットしかないですし」

 

「はい、ですから安心してください。兄さんもこう言ってるので!」

 

弁当を食べ終えた紡絆だが、どうやら話は聞いていたらしい。

小都音は紡絆の腕に抱きつきながら、風の目を真っ直ぐ見ていた。

 

「風先輩。小都音ちゃんはしっかりとしてますし、私も良いと思います」

 

「うん、私もそう思います!」

 

「私もいいと思う」

 

「ここで断ったら私が悪役みたいになるんだけど!? まったく、みんなに言われたくたって許可するわ。それに……」

 

「なんです? 俺の顔に何かついてますか?」

 

部員の声を聞いて、軽くため息を吐きながら、風は言葉を区切りながら小都音を見て、次に紡絆を見つめた。

不思議そうにする紡絆に対し、風は自身の口元を指さした。

 

「なんでもない。でも紡絆、ご飯粒ついてるわよ」

 

「え、何処だ!?」

 

「とりあえず、これ入部届けね」

 

「あ、はい。ありがとうございます。

それと兄さん、もっと左だよ。取れないなら私が取ってあげても……」

 

慌てて口元を確認した紡絆の姿に苦笑い気味に笑った風は、入部届けの紙を持ってきて差し出す。

小都音はそれを受け取って書く前に、場所を教えていた。

紡絆はその指示通りに米粒を取り、口に含む。

 

「ん? なんか言ったか?」

 

「……なんでもなーい」

 

聞こえてなかったのか、謎の難聴を発揮した紡絆は小都音に疑問を投げかけるが、小都音は不満そうに書類を書き始めた。

それを見ながら、風は友奈や東郷、樹の元へ近づいてボソッと呟く。

 

「……距離感近くない? あれ、兄と妹の関係よね? あたしの気の所為?」

 

「気の所為ではないかと思います。さっきだって、小都音ちゃんは肩をくっつけてましたから」

 

「兄妹で仲が良いのは良い事だよね!」

 

「け、兄妹の域を超えてるようにも見えますけど……」

 

明らかに周りから見ると、容姿からして違うことから、歳差の違うカップルのようにも見える。

そのことに疑問を持ったため、話題になりかけるが、それは小都音が書類を持ってきたため、長く話されることはなかった。

 

「これでいいですか?」

 

「……えぇ、ばっちり。それじゃあ、詳しく説明していくわね」

 

「はい、お願いします」

 

「なんで俺も?」

 

紡絆の腕に自身の腕を絡めている小都音はニコニコと機嫌が良さそうな笑顔で説明を聞くために耳を傾けている。

何故か巻き込まれた紡絆は首を傾げていたが。

 

「……やっぱり気の所為じゃないわね」

 

「俺の存在が気の所為とでも!?」

 

「誰も言ってない!」

 

その距離感を見て再び小さい声で呟いた風だったが、何もしてないからか、普通に聞き取った紡絆がショックを受けたように言い、風は一喝した。

それはともかく、風だけではなく、友奈や東郷、樹も含めて改めて小都音の歓迎と、勇者部の説明をしたり、事情を知っているということから勇者の説明も交えて行った後にアプリだけ入れさせて、今日は解散となった。

ちなみに紡絆も同じくお役目についていて、ウルトラマンであることは明かしたのだが、一般人にはウルトラマンは知られてないからか小都音はきょとんとしていたとだけは言っておこう。

なお、紡絆はややこしくしないように喋らないように言われたため、みんなが小都音に説明している途中で寝ていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色々な説明を終え、家に帰ってきた紡絆はご飯を食べるとひとまず、湯船に浸かっていた。

のぼせ対策としてか、頭にタオルを乗せ、体を休めている。

 

「ふぃ〜……」

 

疲れが取れているのか、何処か気持ち良さそうな声を出しながらただ虚空を見つめる。

何か考えているような様子だが、紡絆は何も考えてなかった。

ただ風呂が気持ちいいとかそんな普通のことしか考えていない。

 

(あー……二日連続でここまで驚くことになるなんてな〜。小都音に勇者適性があるなんて初めて聞いたし、まさか学校に来るとは……)

 

ふと今日の出来事を思い出し、心の中で呟く。

昨日よりかは動揺したりはしてなかったが、驚いたことに間違いはない。

そもそも何も言わなかった目的が紡絆を驚かすためだから、小都音からすると大成功である。

 

「はぁあぁ……今日はどうしよ。寝るか? 完全に怪我を治さなきゃだし……」

 

紡絆はただリラックスするように息を吐きながら、風呂を終えた後のことを考える。

特にやることもなく、ゲームをしたりするのもありなのだろうが怪我が治っていない。

だから紡絆は悩んでいた。

 

「……ダメだ、ねむい」

 

湯船の中は寒くもなく、暑すぎるわけでもないため、むしろちょうど良い温度に心地よくなったのか、目が半開きになり、うとうとし始めた。

湯船から出るという選択もなく、紡絆は風呂で寝ないように目を開くという抵抗しかしていない。

正直それは出るだけで解決なのだが、紡絆は行動しない。

それどころか、だんだんと目が閉じそうになっていた。もはや今の紡絆は睡魔に抗うだけで、まともに思考すらしていない。

それでも、睡魔には勝てないのか紡絆の目は閉じられ、そのまま---

 

 

 

 

 

 

 

 

何かの音が聞こえた。

それが何か分からない紡絆は、気がついたように意識を取り戻し、目を擦った。

眠気を少しでも覚まし、もしかして何かが落ちたのではと思った紡絆が音の聞こえた方へ視線を向けると---

 

「お、お兄ちゃん……入る、ね?」

 

「……ふぁっ?」

 

恥ずかしそうに顔を赤めながらも、タオルを巻いた小都音が浴室へ入ってきていた。

思わず紡絆は息すら忘れるほどに完全に停止し、固まった。

 

「…………」

 

「…………え、えっと……」

 

「……あっ、ご、ごめん」

 

返事がない、ただの屍のようだ---とはならず、タオルを強く握りながらもじもじと落ち着かない様子を見せた小都音の姿を見て、紡絆は再び意識を取り戻して目を逸らした。

 

 

59:名無しの転生者 ID:w8dZzJxfZ

ナイッスゥー!

めっちゃ美少女やんけ!

 

 

60:名無しの転生者 ID:fppD58M4o

妹ちゃん美少女過ぎん……?

くっ、タオルが邪魔過ぎるぜ……!

 

 

61:名無しの転生者 ID:7VxFT2Ui3

何はともあれ、チャンスだ!

イッチ! 事情は後で説明するから妹ちゃんの胸を見ろ! 出来れば生まれたままの姿を見ろ! タオルを何とか外せ!

 

 

62:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

はぁ!? なんで!? そんなこと出来るかっ!

見たいだけだろ!?

 

 

63:名無しの転生者 ID:zZXG4YNp

ええい! 見たい気持ちは確かにあるが、今回はちゃんとした理由があんだよ! チャンスだから見ろ!

いいな、このチャンスだけは逃さすなよ!! お前の運命もかかってんだからな!!

 

 

 

 

脳裏での掲示板が凄まじい速度で動き始めたことで紡絆は悩むが、やけに真剣な様子に純粋な邪な考えだけでないことには気づいた---のだが、どうすればいいのか分からなかった。

いつもなら、一人くらいは止める人がいる。しかし、今回は一人も居ないどころか、やれとしか言わないのだ。

紡絆が知っていて、普段止める人たちすらやれと言うのは、流石に何かあるのだろう。

そう考えた紡絆は逸らしたまま横目で小都音を見ると、彼女はタオルを強く握ったままチラチラと紡絆を見ており、とにかく紡絆は大事な部分を隠すために頭に乗せていたタオルに手をやる。

 

「小都音、とりあえず……顔背けてくれ」

 

「う、うん……」

 

(よし、速攻で隠す! 流石に見せられない……!)

 

混乱して動かない頭---いや、元々大してよくない頭しかない紡絆は今出来て、やるべきことを思いつくと、とりあえず口に出して行動に移す。

小都音が顔を背けた瞬間に立ち上がって一瞬でタオルを腰に巻く。

たったそれだけのことだが、常人ではない速度だった。

 

(……で、考えれるくらいに返って冷静になったが、俺は見なくちゃいけないってわけか? なんか考えがあるらしいが、妹の裸を見る兄ってどうなんだ!? というか、なんで入ってきたんだ!?)

 

こんなハプニング……と言っても、小都音から入ってきたのだから紡絆からしてのハプニングだが、急速に冷静な思考へと移行した紡絆はただ純粋に疑問が浮かび、とりあえず腰巻きタオルがあるので湯船から出た。

 

「えっと……どうして入ってきたん、だ?」

 

「そ、それは……」

 

湯船から出た紡絆は近づくことはせず、浮かんだ疑問を投げかける。

すると小都音は相変わらず顔を赤くしたまま、言い淀んでいた。

 

「それは?」

 

「お兄ちゃんと……入りたくて……」

 

「そ、そうか……」

 

返ってきた言葉に、何と返すべきか分からない紡絆は一言で返事した。

そうすると、二人の間で無言の空間が作り上げられる。

両者とも動かず、何も言わない。

それでも何か言わなければ、何も変わらないことは事実だった。

 

「……出るべき、か?」

 

思わず、と言った感じで紡絆が口に出す。

やれと言われたとしても、どれだけ重要なことでも、良くないという考えは紡絆にはあった。

だからこそ、紡絆は出るために小都音の横を通り、紡絆は浴室のドアを---

 

 

「お兄ちゃん………っ」

 

「んな!? ちょ、小都音!?」

 

開けようとしたところで、腕に抱きつかれて止まってしまう。

離さないように、行かせないようにと紡絆の腕を胸でぎゅっと抱えて。

そこまで密着されると、いくら小都音がタオルを巻いていても、紡絆の腕は袖もないため、素肌だ。

服を着ていても感じられると言うのに、素肌だとより成長過程である女の子特有の柔らかい感触が腕に直接当たっており、紡絆は別の意味で慌てていた。

主に他人の視点から見ると、現時点で兄としての最低な現場になってるのではという自己嫌悪に陥りそうという意味で。

 

「……一緒に、入ろ?」

 

「そ、そうは言ってもな……小都音も、見られたりは嫌だろ?」

 

「う、ううんお兄ちゃんになら……いいよ。全部見られても、何を見られても。それに、ずっと会えなかったお兄ちゃんとの時間を、埋めたいの」

 

前述はともかく、後述の言葉は反則だと紡絆は感じた。

前者の方は何と返すべきか分からなくても、後者を言われてしまえば紡絆にはどんなことがあれど、()()()()()()()()()()

まだ一度もそのことには触れてないが、小都音は無事とはいえ両親を失った原因は全て自分にあると思っている紡絆からすれば、断れるはずがないと思っているのだ。

 

「だ、ダメなら……無理には言わないから。お兄ちゃんは、嫌かもしれないし……私と入るの……」

 

「……いやさ、俺は別に嫌じゃないし、小都音が良いなら入るが……本当にいいのか? 小都音も中学生になってさ、男女で入るのは普通ではないって分かってるだろ?」

 

「……うん。でも、お兄ちゃんだから。むしろ、私はお兄ちゃんと入りたいの」

 

紡絆からすると、小都音の表情は見えない。

それは逆に言えば、小都音から見て紡絆の表情は見えないことになる。

だがそれでも、紡絆は不思議と小都音が寂しそうだということを理解して、視線は向けないまま空いている片手の方で小都音を安心させるよう自身の手を小都音の手に重ねた。

 

「じゃあ、入る……か?」

 

「……! うんっ」

 

「分かった、一緒に入ろうか」

 

背中越しから、嬉しそうな声が紡絆の耳を通り抜ける。

それを聞いて紡絆は優しい声音で言い、小都音は腕を解放していた。

解放されたからといって、逃げ出すなんてこともせず、紡絆は背中を向けたまま動かない。

小都音を気遣って、だろうか。

 

「も、もうこっち見ても……大丈夫だよ」

 

「ん、分かった」

 

声を掛けられると、紡絆は言われた通りに振り向く。

特別変わったことはないが、普段とは違ってお互いに身を包む布が少ないこと、くらいだろう。

少なくとも小都音はタオルをちゃんと体に巻いていたので、紡絆はそれを察して待っていたのかもしれない。

 

「えっと、先にお兄ちゃんの背中……流す?」

 

「そうだな……頼めるか?」

 

「任せて、綺麗にするから……!」

 

そう訊いたということは、そうしたいのだろうと紡絆は優しく笑いかけながら頼む。

その紡絆の言葉に、両手をガッツポーズしながら小都音は気合を入れていた。

 

(いやまあ、二度目だけど。それにしたって……どっちだよ! お前らが言ったんじゃ……?)

 

どうやら紡絆は、浸かる前に体は洗うタイプだったらしい。

それはともかく、小都音を思ってのこととはいえ、一応やれと言われたから一緒に入ることになったのもあるのに、嫉妬されることに心の中で納得がいかないまま、紡絆は風呂椅子に座った。

 

「そ、それじゃあ……洗っていくね」

 

「おう」

 

とりあえず忘れることにした紡絆は、素直に身を委ねる。

すると小都音はボディタオルにボディソープで泡立て、そっと背中をゴシゴシと擦って洗っていく。

 

「ど、どうかな……?」

 

「あぁ、心地良い。痛くもないし、弱すぎる訳でもない、絶妙な力加減…って感じ」

 

「よかった……痛かったら、言ってね」

 

「分かった」

 

安心したように息を吐いた小都音は、そのままの力でよいしょ、と可愛らしい声を漏らしながら、紡絆の背中を洗い、紡絆はじっとして大人しくしていた。

 

「………お兄ちゃん」

 

「なんだ?」

 

手を動かしながら、小都音は紡絆に呼びかける。

紡絆はそんな小都音に対して、体を動かせずに口だけ動かした。

 

「やっぱり……なんでもない」

 

「そっか」

 

何を言おうとしていたのか、紡絆は分からない。

後ろにいる小都音の姿は、紡絆には見えないのだ。

だけど、言わなかったということは言いたくないのだろうと短く返す。

 

「痒いところとか、ない? ないなら流すけど……」

 

「問題ないな。頼めるか?」

 

「じゃあ、流すね」

 

「ん」

 

小都音はただ普通に洗い終えると、紡絆に聞いてから、問題ないと分かるとお湯で背中の石鹸を洗い流す。

何も無い、本当に普通に洗っただけ。

しかし洗い流した小都音は、紡絆の背中を優しく撫で、体を押し付けるように紡絆の背中にくっつく。

何処とは言わないが、まだ控えめだが確かにある二つの柔らかい感触を、紡絆は背中から感じ取れてしまう。

 

「……小都音?」

 

「……………」

 

そのことを小都音も知っているはずと思いながら、不思議そうな声音で紡絆が小都音に呼びかける。

だが、返事は特にない。

なので、紡絆は特に動かずに正面を向いていた。

何も言わず、何も聞かず。

だからこそ、紡絆には分からない。

彼女が、小都音が何を思ってかは知らないが、背後で辛そうな表情をしていることに。

ただそれでも、温もりを求めるように紡絆の背中に抱きついて、密着していた。

 

(こういう時、声を掛けるべきじゃないよな……。

小都音は過去を話さない。俺の過去をあまり話さないのは、帰ってこないと分かってるから、か?

記憶を失ったあと家族と一緒に何度も居たが、俺の記憶が戻る予兆すら見せなかったのだから)

 

そう、それは今も変わらないことなのだ。

紡絆には記憶がない。

小都音には記憶がある。

小都音からすれば過去の紡絆を知っているが、もし言ってしまえば、それは今の紡絆に過去の紡絆を押し付けてしまうようなものになる。

だからこそ、彼女にしか分からない、別の辛さがあるのだろうと紡絆は声を掛けるべきではないと判断していた。

別のことを考えてるかも知れないが、少なくとも紡絆自身は何も言わない選択を取るらしい。

そんなふうに、一分にも満たぬ時間くっつかれていたが、ふと温もりと重みが消えるのを紡絆は感じ取った。

 

「……それじゃあ前も、洗おっか?」

 

「いや、既に洗ったし十分だ。それより、交代しようか。小都音の髪も洗わなきゃな」

 

「うん、ならお願い」

 

交代するように椅子から退くと、紡絆は小都音の後ろに回って座らせる。

既に入ってくる前に櫛で髪を梳かしていたということが目に見えて分かるので、紡絆は艶々とした見惚れるくらい綺麗なうなじから意識を外しつつシャワーのお湯を掛けることを言いながら、濡らし残りがないように隅々まで小都音の髪を濡らす。

どうやら、紡絆は女の子の髪の洗い方を知っているようだ。

 

「痛かったら言ってくれ」

 

「ん……えへへ」

 

念の為に紡絆は言うが、小都音がこくりと小さく頷きながら、心地良さそうにするのを見て紡絆は杞憂かと思った。

そしてその間にも紡絆はシャンプーを小都音の髪ではなく、地肌を洗うように指の腹を使ってマッサージをするように洗う。

 

「流すぞ?」

 

「うん」

 

しばらくして洗い終わった紡絆は、一言だけ言ってからシャワーを手に取って、小都音の髪についたシャンプーと汚れを共に洗い流す。

その間に小都音は目を閉じていたが、しっかりと残らないようにシャンプーを洗い流した紡絆はトリートメントを馴染ませるように塗っていく。

トリートメントを塗り終えると、少し時間をおいてから綺麗に洗い流し、洗髪は終わる。

 

「よし、こんなもんだな。やっぱり男とは違って時間がかかるというのは改めて分かった」

 

「女の子にとって、髪は命と同義だからね」

 

自分の中では評価が高いのか、紡絆は小都音の髪を見て満足気に頷き、納得したようにしみじみと呟く。

そのことに当然というような返答が返ってきたが、余程見た目を気にしない限り誰もがケアするだろう。

男なら、髪の洗い方なんてもっと適当でいいのだが。

 

「よくそう言うもんなー。っとそれで、問題は体だけど……まぁ、俺は湯船に---」

 

「だ、ダメ」

 

そそくさと逃げるように湯船へ向かおうとした紡絆の腕を、小都音は掴む。

無理矢理動けるといえば余裕なのだが、そんなことすれば小都音が怪我するかもしれないため、紡絆は大人しく止まった。

 

「い、いやいや、だって俺が洗うなら見えるぞ? 流石に背中だけ見るってのは無理だし、目隠しされても気配くらいしか読めないから無理だし」

 

言われた目的を達成するには、正直都合がいい話ではある。

しかし背徳感が上回った紡絆は、自ら辞退しようとしていた。

当然チャンスを無駄にする行為でもあるため、紡絆が行動しないと心配事が分からなくなってしまうという困った点があるのだが。

 

「私はお兄ちゃんなら良いから……どうしても、ダメ?」

 

「どうしてもっていうか……背中以外も見えるかもしれないからな。小都音がそれでも良いなら、俺は別に気にしないが……文句は言うなよ?」

 

「う、うん」

 

「じゃあ、背中洗うからな。痛かったら言ってくれ」

 

紡絆の言葉に頷いて答えた小都音は、背中を流せるようにタオルを解いて、白い背中を差し出した。

スラリとした背中は瑞々しく、肌も透けるように白い。

まだまだ幼く、小さく小柄な、穢れのない白い背中を見て紡絆は理性を制御するためかひたすら何も考えず、優しく丁寧な手つきで背中を上下に擦りながら洗っていく。

 

(見た感じ、()()()()()が……しょっちゅう怪我してる俺はともかく、普通はこうなんだよな。俺とは違って細くて、柔らかくすべすべしてて、でも簡単に壊れてしまいそうなほどに脆い……。

小都音だけじゃない。勇者部のみんなも本当は、精霊が居なければ死んでいた場面なんてたくさんあった。

いくら勇者とはいえ、こんなふうに奴らとは比べて人間は脆いんだよな………だから、俺が守ろう。今も必死に暮らす人々のためにも)

 

改めて理解したように、思い出したかのように、紡絆は心の中で考える。

事実、変身後はウルトラマンの肉体によって、変身前は強化された身体能力によって多少頑丈になっている紡絆とは別で、勇者たちは精霊がいなければ、多少強化されてるだけで人間と何ら変わりない耐久しか持たない。

ウルトラマンは怪獣の攻撃だろうが光線だろうが、一撃で死ぬことは無い。

紡絆ですら、一撃程度では意識を失うことはあったとしても光線を直撃しない限りは死なない。

しかし、勇者は違う。

精霊がいなければ、一撃受けただけで即死だろう。

そしてまた、もし紡絆が負けてスペースビーストが現実世界に現れてしまえば、目の前の小都音も、他の人たちも全員殺されてしまうのは誰にでも分かることだった。

 

「お兄ちゃん?」

 

「あ……悪い、手が止まってたな」

 

呼ばれて、紡絆はハッと気づいたように手を動かす。

ただ手ならともかく、タオルで洗うのは力加減がよく分からないのか、慎重にしていた。

 

「んっ……もう少し強くていいよ。それで、何か考え事?」

 

「分かった。

いや、大したことじゃないけど、みんなを守らないとって思ってな」

 

「ふぅん……一人で抱え込むのだけはやめてね?」

 

小都音に言われて紡絆はほんの少し力を込める。

特に何も言われないため、それを維持しながら紡絆は苦笑する。

ただ苦笑するだけで、しないと確信を持って言えないのは小都音も気づいてるようで、何処か呆れ顔だった。

 

「また人助けのこと? お兄ちゃんはいつも誰かを助けようとするよね。私を含めて。()()()も……」

 

「小都音は大切な妹だし、困ってる人は放っておけないだろ? でも………あの時って?」

 

「あ……ううん気にしないで。そ、それより力加減ちょうどいいよ」

 

「そうか。っと、力加減がちょうどいいのはよかったが、洗い流すな」

 

「うん」

 

一瞬、何か分からずに疑問符を浮かべた紡絆だが、小都音がすぐに話を逸らしたため、深堀りせずにシャワーのお湯でしっかりと石鹸を洗い流す。

 

「ふあぁ……ん、お兄ちゃんの手、気持ちいい……」

 

(……なんかイケないことしてる気がするんだが? 健全だ、ただ洗い流してるだけ…いや、妹と入ってる時点でアウト……!?)

 

妙に色っぽい声を漏らす小都音に対し、紡絆は内心動揺するが洗い流さないわけには行かないため、視線を下に向けないように意識しながら石鹸を落としていた。

 

「よ、よし……終わった。本当に、贔屓目なしで綺麗だな。特に髪」

 

「ふぇ……っ!? も、もう……そんなこと言っても何も出ないよ!?」

 

「本当のこと言っただけだが……?」

 

洗い終えたということは臀部を見ないように意識する必要はなくなったため、背中から視線を外しながら紡絆は思ったことをそのまま言った。

鏡が曇ってるせいで小都音の表情は紡絆からは見えないが、顔を真っ赤にしており、一方で紡絆は不思議そうな表情だった。

 

「うう……お兄ちゃんのバカ、えっち……。前も洗ってっ!」

 

「え……っ。それは兄としての尊厳が完全に死ぬ」

 

妹にですらバカと言われたことに精神的ダメージを負うが、前もと言われると紡絆は全力で顔を逸らした。

しかし逸らしたところで小都音が振り向けば意味はないので効果はない。

 

「何があってもお兄ちゃんは()()()()お兄ちゃんだよ……?」

 

「それは嬉しいんだが、そう言いながらも迫ってくるのは何故だ!?」

 

顔を逸らしたまま、一歩ずつ後退する紡絆に対して、振り向いた小都音は立ち上がって顔を赤くしたまま下がった分の距離を縮める。

その光景は男が迫るのはではなく、女の子が迫るという逆の立場になっていた。

唯一の救いは、濡れたお陰か小都音の素肌に巻かれてないバスタオルが張り付いている点---なのだが、それがむしろ逆効果だ。

しっとりと濡れた蒼の点す髪に人工的な光が照らす小都音の肢体。張り付いているバスタオルは薄く透かせていて体のラインを浮き出させている其の姿は扇情的であると同時に、決して穢れることの無いような神聖さを秘めていた。

迫ってくることにツッコミを入れた紡絆は思わず見てしまい、息を飲む---前に理性が押しとどめ、状況とは違って冷静な思考はどう切り抜けるべきか考えていた。

兄としての行動を心掛けようという意思がなければ不味かったかもしれない。

 

「こ、小都音? まず落ち着こう。ほら、ちゃんとバスタオル抑えないと……」

 

「私は落ち着いてるよ。は、恥ずかしいけど……お兄ちゃんになら見られてもいいって…言ったでしょ?」

 

助けを求めるように周りを見ても、当然何も無い。

一歩ずつ下がっている紡絆は浴室なのもあって、あっさりと壁際まで追い詰められた。

もはや仕事をしていない小都音のバスタオルだが、紡絆の逃げ場は塞がれてしまっている。

そこで、紡絆は何故こんな状況か考え、特に逃げる必要がないことに今更ながら気づいた。

 

(なんで逃げたんだっけ。うん、特に理由ないわ。逃げる必要ないじゃん……それは近づいてくるよ)

 

普通のことだったと納得した紡絆は、背中を壁に預けながら目の前にいる小都音を見つめる。

すると小都音も目前で止まり、紡絆を見上げるように見つめていた。

 

「お兄ちゃん、兄妹ならこれくらいも普通だと思うの」

 

「マジで? って騙されないからな!? 俺が襲ったりしたらどうするんだ?」

 

ほんの刹那だけ信じかけた紡絆は流石に違うと否定し、純粋な疑問を投げかける。

紡絆と小都音は体格差と筋力から考えても、間違いなく紡絆の方が上である。

ここで紡絆が襲いかかれば抵抗しても無意味だろう。

 

「お、お兄ちゃんがしたいなら……」

 

「えぇ………しないから。確かに魅力的だし俺も男だから興味が無い訳では無いが、やらないから」

 

「み、魅力的だなんて……えへへ。照れちゃうよっ」

 

「この状況じゃなければ撫でてたんだけどなぁ……」

 

両手で両頬を抑え、きゃーっと言いながら首を振る小都音を見て、紡絆は苦笑する。

だが様子からして、洗うことに関しては本当の本気ではないのだろう。

 

「ほら、前は自分でやってくれ。他の事だったら何でもするから」

 

「はーい……。元から自分で洗うつもりだったけど」

 

「じゃあ先入ってるから」

 

「うん、でもちょっと残念かも」

 

最後の発言に関して聞こえていたが、触らぬ神に祟りなしと下手に茶々を入れず、紡絆は湯船に浸かると小都音の方を見ないように壁側へ向き、小都音に背中を向けたまま今度こそ一息つく。

 

 

 

 

 

 

 

263:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

はぁ……なんとか乗り越えた。で、これでいいんだよな?

わざわざ確認のためにさせたってことはビーストか闇の巨人に関連することなのだろうが、特に何も無かったぞ?

俺はこの後どうしろと?

 

 

264:名無しの転生者 ID:zUC1p3Ual

怪我とかはなかったか……

 

 

265:名無しの転生者 ID:BdOJgCYug

ま、まぁ妹ちゃんがファウスト説は薄まったし……

 

 

266:名無しの転生者 ID:56qc5FaKw

特に何も無いなら、ヨシ!(ガバガバ調査)

 

 

267:名無しの転生者 ID:CxVMy2DjF

それにしてもほんとラノベ主人公みたいな展開しかしねぇなイッチ。

けどまさか入ってくる側とは……

 

 

268:名無しの転生者 ID:5Uk081TWp

>>263

というか気づいてたんだな。

正解だ、妹ちゃんがファウスト説があるんだ

 

 

269:名無しの転生者 ID:8BId3Exv0

>>263

ちっ……もう少しでいいシーンが見れたというのに。

せめてちょっとムフフ展開にしろよ

 

 

270:名無しの転生者 ID:cBdb7e6FZ

>>269

全年齢対象なのでダメです

 

 

271:名無しの転生者 ID:9Tt404sb+

この先の展開を見たい方は18歳以上対象の方でご購入してください

 

 

272:名無しの転生者 ID:Us6/xTb5J

>>267

イッチが入る方だと思ってた

 

 

273:名無しの転生者 ID:lyrmbnb8a

>>265

でも絶対ないと言いきれないのが悲しい……

 

 

274:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>268

あれだけ必死だと何かあると思うからな。わざわざ胸を指定したこと、怪我って部分でピンと来たわ。

そもそもファウストに至っては俺の影とか言ってたから怪しいし。

でも、関係ないっぽいよね、てかないよな? 頼むからないよな?

 

>>269 >>271

ねーよ! するか! というか、考えないだけで精一杯だったわ!

兄としてダメでしょ!

 

 

275:名無しの転生者 ID:fpFiAzSqe

一緒に入ってる時点でアウトじゃ……

 

 

276:名無しの転生者 ID:2DSvtKxST

>>274

別によかったんやで? ヨスガってもな!

 

 

277:名無しの転生者 ID:dFszcdCLQ

ほら、妹ちゃん別に良さそうだったじゃん? イッチが手を出せばそれはもう解決なのでは?

 

 

278:名無しの転生者 ID:cE6210bHL

期待以上だぜ、イッチ!

 

 

279:名無しの転生者 ID:NCH1M59dF

結局今のところは問題解決になったのかな。

ファウストの可能性は薄まったわけだし、本当に事故にあっただけなのかも

 

 

280:名無しの転生者 ID:M45IuEtrw

このタイミングで言うのはちょっと悪いんだけどさ、君たち、ザギさんの能力忘れてない?

あの人、ノアさまと同じ能力あるからな?

情報ニキー!(バンバン)

 

 

281:名無しの転生者 ID:51wraHIay

え、なにかあったっけ

 

 

282:名無しの転生者 ID:xVNseg+Ey

んん?

 

 

283:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

>>280

はいはーい

多分言ってるのは『ザギ・ウェーブ』のことかな? 瞬時にウルティノイドやスペースビーストの傷を治せる力で、ウルトラマンFで初使用した技。

このことから、生物なら使用可能で勿論人間にも使用可能だと思われる。

ということは、仮に妹ちゃんがファウストだったとしても治されていて、違ったとしたら怪我なんて初めからないからどっちにしても初めからないことになるんですよね、なのでイッチの行動は……お察しで

 

 

284:名無しの転生者 ID:0t2Djyw7j

あっ……

 

 

285:名無しの転生者 ID:6KK3KUDwF

あー

 

 

286:名無しの転生者 ID:vCY3aPsTK

(忘れてたという顔)

 

 

287:名無しの転生者 ID:lz0oIDmDj

えへへ、ドジっ子だから忘れちゃってたぁ

ごめんね♡

 

 

288:名無しの転生者 ID:LzRQ/LZ6P

てへっ

 

 

289:名無しの転生者 ID:4Chy2m3qp

許してヒヤシンス

 

 

290:名無しの転生者 ID:0EZUViDAS

なんでみんなして忘れてたんだろうね、不思議!

 

 

291:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

はぁ!? ちょ、俺の行動無意味じゃん! え、結局何も解決してないよね!

ああくそっ! もう関係ないことにしとくわ。

流石にそうじゃないと俺でも精神的にキツイ! 今なんて特にキツイ!

ほんと、これを茶番って言うんだぞ!

はぁ、とりあえず湯船から出ないと長くいるともうや

 

 

292:名無しの転生者 ID:2UPiNYGre

>>291

妹ちゃんの(ほぼ裸)見れたからいいだろ!

えっちちじゃん!

 

 

293:名無しの転生者 ID:J1LKE9g8a

あれ、イッチ?

 

 

294:名無しの転生者 ID:My+PbHNd/

なんか途切れてね?

 

 

295:名無しの転生者 ID:TBSaKV+eV

これは……(理性)逝ったか?

 

 

296:名無しの転生者 ID:HMrxzsTli

イッチは無駄に理性を削っただけになってしまった……ママ(イッチだから)エアロ

 

 

297:名無しの転生者 ID:dfYJFKguS

>>291

いうてイッチが入ってたところに妹ちゃんが来たわけだし、せーふ。

 

 

298:名無しの転生者 ID:w0JynNvum

元から回避不可能なイベントなんだよなあ

 

 

299:名無しの転生者 ID:wSdm2xUh3

俺らは誰も悪くない!

争いを産んでも意味ないからね! 悪い人なんて誰もいないのさ!

 

 

300:名無しの転生者 ID:3lx47WAkP

イッチは妹ちゃんの生まれたての姿を見れた。

俺らはえっちちになりそうな展開を見れた。

なんだ、win-winじゃないか

 

 

301:名無しの転生者 ID:e4QsOYorq

誰も損はしてないな!

 

 

302:名無しの転生者 ID:7k8Nj3a4a

これぞ責任投擲。

またの名を、開き直り!

 

 

 

 

浴槽という小さな空間の中で、紡絆と小都音は背中合わせとなって浸かっていた。

紡絆は困ったような表情を、対する小都音は俯いて恥ずかしそうにしながらも嬉しそうな表情だ。

理由としては、その手だろう。

恋人繋ぎとして繋がれた手によって強引な手段を使いたくない紡絆は出ることが叶わない。

だから困った表情で、小都音が恥ずかしそうにしてるのは背中とはいえ一糸まとわぬ姿であるからなのかもしれない。

そもそも浴槽に小都音が入ってからすぐに紡絆が去ろうとしたから、こんなふうに手を繋がれたわけなのだが。

 

(……抜け出せないなぁ。流石にそろそろのぼせそうだし、あまり居続けるのは今は問題ないが、続けば割と宜しくない気がするぞ。

対面なら視線をどうすることも出来ないからやばかった……)

 

(ちょ、ちょっと大胆すぎた……? 思い返すと凄く恥ずかしいけど……)

 

考えてることが全くの別で、話も特になく沈黙が続く。

その中、小都音が俯いたままチラッと視線を送ると紡絆からは何も感じれない無の表情---というか達観して何も考えてなかった。

それを見てか、小都音が口を開く。

 

「お兄ちゃんは……その、えっと……お風呂気持ちいいね」

 

「そうだな」

 

「………むぅ」

 

一言で会話が終わり、小都音が繋いでいた手を離した。

急に何も言わずに解放された紡絆は何かあったのかと振り向きそうになるが、今の状態を思い出して振り向かないでいると小さな柔らかい腕が首に巻き付けられ、背中には別の柔らかい感触を感じ取ったことから、小都音が抱きついてるのだろうと紡絆は認識した。

 

「小都音?」

 

「……本当は、不安だったんだもん」

 

「……不安?」

 

突然のことになんのことかと思うが、何処か震えながら、強く抱きついてくる姿に冷静に紡絆は返す。

ちなみに小都音は腕だけは力を入れず、体のみを押し付けるようにしてるお陰で紡絆の首は絞められてなかった。

 

「外では隠してたの……でもね、この世界は私のお兄ちゃんからまた別の何かを奪うじゃないかって。怖くなってきちゃった。

お兄ちゃん……まだ思い出してないんでしょ?」

 

「それは……けど、大丈夫だって。俺は一人じゃないし、危ないのは俺だけじゃない。俺が戦えば、犠牲が出ることは無いかもしれない。

大赦から聞いたなら、勇者が戦う理由は分かってるだろ? 俺も同じだ。

それに勇者部って、今の俺にとって大切な帰る場所なんだ。守りたい場所なんだ。

そこがあるうちは、俺は絶対に死んだりしない」

 

「………」

 

思い出してないのは事実なため、記憶に関しては言い返せないが紡絆は戦うことへの覚悟は既に終えている。

だからこそ、その想いを口に出した訳だが何も返答がないのを理解した紡絆は小都音の腕に手を乗せると、少し申し訳なさそうな声音で発する。

 

「ごめんな、小都音の気持ちを組み込んでなかった。

それでも、俺は戦う以外選べないと思う。ウルトラマンの力があるのは俺だけで、今は小都音という大切な家族がいる……俺の宝物を、たった一人の家族を守るためにも、頑張りたいんだ」

 

「お兄ちゃん……ふふ」

 

「わ、笑われると恥ずかしいんだが……」

 

小都音がくすり、と笑うと、紡絆は頬を掻く。

しかし背中から感じていた感触が消え、紡絆が振り向こうとすると小都音は紡絆の背中に顔を埋める。

 

「ふふん、今のは冗談だよ。騙された?

私、お兄ちゃんよりお兄ちゃんのこと知ってるもん、お兄ちゃんは例えそんな力がなくたって、誰かを助けようとするって。

だから気にしないで?」

 

「小都音………」

 

表情が見えないからこそ、それが本当なのかどうかは分からない。

ただそれでも、紡絆は確信することが一つだけあった。

しかしそれをわざわざ口に出すことは、するべきじゃないと理解している。

だから小都音の名を呼ぶと、口を閉じた。

 

「あっ、でもお兄ちゃんが勇者部の人たちのことを口説かないか心配だから、ちゃんと部活しながら近くで監視するね!」

 

「凄く台無しなんだが!? 別に口説くつもりなんてないし、俺は本当のこと言って、普通に部活して、生きてるだけだぞ」

 

「はぁ……」

 

「何故ため息!?」

 

意味分からないといったように口に出す紡絆に小都音は溜息を吐くと、何も言わずに立ち上がった。

音でそれに気づいた紡絆は当然振り向いてはいけないと分かってるため、じっと止まる。

 

「お兄ちゃん、目閉じて」

 

「ああ、出るならその方がいいか……」

 

言われて一番いい方法はそれだったと理解したように、紡絆は目を閉じる。

小都音は湯船から出ると、バスタオルで巻いて紡絆を見つめる。

 

「お兄ちゃん。一緒に入ってくれてありがと、また入ろうね!」

 

「え、それは……ッ!?」

 

小都音の言葉に目を閉じたまま返そうとすると、紡絆は頬に柔らかいものをあてがわられた気がして、思わず目を開けると驚愕した。

 

「な……え、何を……!?」

 

「あ、もうっ! 見ちゃダメなのに……お兄ちゃんのバカ。でも、お兄ちゃんの反応で満足出来たから今日はこれで終わりにしてあげる!」

 

少し怒ったように頬を小さく膨らませた小都音だが、紡絆の反応を見て照れたように、恥ずかしそうに、それでいて満足したようにそそくさと浴室から出ていった。

紡絆は呆然と空虚を見つめ、頬に手をやる。

 

(……まったく。口付けくらいで動揺させられるなんて、我が妹ながら凄いな。

けど、失うのが怖いのは本当なんだろ…? 他は分からないが、あれだけは嘘じゃない。

当たり前だ。小都音からしたら、彼女が一番よく知っている継受紡絆という存在は一度死んでるもんな……)

 

浴室のドアの向こうにいるだろうと察してか視線を外しながら、紡絆は思う。

さっきの出来事は全てではないが、怖くなったという部分だけは間違いなく本当なのだろうと。

もし紡絆が戦いで命を落としたり記憶を失えば、実質死んだようなものなのだから。

それが彼女にどれだけ辛く、待つのがしんどいことであっても、紡絆は理解はしたところでやらないという選択肢は存在しない。

この世界を守るために戦うという選択は、絶対取るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浴室のドアに背中を預けた小都音は、今も湯船に浸かってるであろう紡絆の姿を見るように表情に陰を落としながら視線を向ける。

 

「お兄ちゃん……困らせてごめんね。お兄ちゃんは止まらないよね、分かってたよ。

でも私、ウルトラマンは好きになれない。お兄ちゃんには戦って欲しくないの。もうこれ以上、何も奪われて欲しくないから……。

神樹様は、神様なんでしょ。だったら、私からお兄ちゃんを奪わないで……。お兄ちゃんを、戦わせないで……。他の人じゃ、だめだったの?

どうしてみんな、みんなお兄ちゃんばかり苦しめるの? 傷つけるの? お兄ちゃんが何したの……?

お兄ちゃんはずっと私の傍に居てくれたら、傍で笑ってくれたら、それだけで良いのに………。

お兄ちゃんを傷つける世界なんて---」

 

辛そうに、悲しそうに、うわ言のように内に秘めた思いを小さな声で呟いた小都音は唇を強く噛み締め、何処か憎むような目をしていた。

しかし、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

紡絆は辛いとは思っていない。守りたいと願うだけ。

だが所詮それは、紡絆の感情であり、彼を大切に思う者の存在を考えれば---辛いのは待つ方だということを、誰が見ても分かるはずだ。

少なくとも---記憶を失った紡絆からこれ以上何を奪うのか。

記憶以外に残った大切なものなんて、簡単に絞られてしまうだろう。

それは一体何なのか、知っている者は神でも居ないだろうが---

 

 

 

 

 

 

 





〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
ここに来て前世の影響があり、理性と頑張って戦ったお兄ちゃん。
傷を確認しろとかで掲示板が怪しかったので、もしかしたら小都音をファウストだと思ってるのでは…?と思ってたが、結局真実は分からなかったので、そう思わないことにした。
まさに真実は迷宮の中である。

〇天海小都音
恥ずかしいけどお兄ちゃんになら素肌を見られても(性的に)襲われてもいいといった行き過ぎた家族愛以上の感情を持っていると思われる。
外面上は平気そうだが、あくまで兄を気遣ってるだけ。
実際の内面は中一に上がったばかりの女の子なので、当然鋼メンタルでも何でもなく普通のメンタルで繊細。
一体どれが本当でどれが嘘なのか、それは本人にしか分からないだろう。
ただ唯一、ひとつだけ分かることは、彼女は兄想いである。
ちなみに勇者適正はあるのでシステムさえあれば使用は可能。システムがないと精霊が見える程度。
勇者や防人のような力がないので樹海化には巻き込まれないと思われる(適正があるだけで樹海化に巻き込まれるなら樹海にはもっと人がいる)

〇掲示板
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