【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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合間合間を縫ってようやく書き終えました…リアル忙しければ朝早いので基本的にもう週一投稿とか無理だと思います。
GW俺にも寄越せ。
それはともかく、必要な話し終えたのでようやく原作に入ります。
未だにやる気は継続されてるけど、赤から落とされそうでちょっと怖いですねはい。
まあ長々語っても邪魔だと思うので、過去の話を地味に誤字とか修正しましたという報告だけしておきます。




「-新たな勇者-リインフォースメント」

 

 

 

◆◆◆

 

 第 17 話 

 

-新たな勇者-リインフォースメント 

 

 

 

風格ある振る舞い

牡丹(ボタン)

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

652:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

うわー! 暇だあぁああああああ!

いつ敵が来るか全く予想つかねぇ!

あれから融合型も来ないし、試しに作られたのか?

もしかしてこのまま両方来ないのかなー? それならそれでいいんだけどね。

小都音も少しずつ勇者部に慣れてきたみたいだし、寝ておこうかなー。

それとも安価でもやる?

 

 

653:名無しの転生者 ID:24j1AQWma

うっわ……前まで怪我してたやつの思考とは思えねぇ

 

 

654:名無しの転生者 ID:9SGcgcJTz

くっそ暇そうで草

 

 

655:名無しの転生者 ID:cIzdJwwcV

>>653

諦めろ、ここのイッチは普通だと思ってたらこっちが狂うぞ

 

 

656:名無しの転生者 ID:ET48mAeFC

>>652

懲りずにまーた安価しようとしてるよこのイッチ

 

 

657:名無しの転生者 ID:TQcmhiT5v

お前それでこの前の安価酷かったの覚えてるからな?

 

 

658:名無しの転生者 ID:KdDM9o4sp

前の安価って何だったっけ?

 

 

659:名無しの転生者 ID:idJoc56YX

えー、覚えてないな

 

 

660:名無しの転生者 ID:WctYLLTm2

>>658

激辛ペアングに似たようなやつがあったから、そのソースを十個入れてその激辛を一個完食するゾ

それでイッチ辛すぎて体中が熱いとか言いながら死んでたな。

でも完食したとかマジ?

 

 

661:名無しの転生者 ID:zKs+KJXAR

六月に食うものじゃないんだよなぁ……

 

 

662:名無しの転生者 ID:upSruf1j4

流石樹ちゃんのケーキで鍛えられただけあるな……!

 

 

663:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>662

あれは暫く食いたくないんだが?

 

 

664:名無しの転生者 ID:xxR8bh4Kt

激辛ペアング擬きはいいのに、そっちはダメなのか…(困惑)

 

 

665:名無しの転生者 ID:VIFiD9WUm

というかソース十個とかもうただ辛いだけで草

麺じゃなくてソース食ってんじゃん。というかソース食えよ

 

 

666:名無しの転生者 ID:pGACBk2G0

でもそれくらいだよなー。後は妹ちゃんと買い物してた時に、子供庇って交通事故にあったくらいか

 

 

667:名無しの転生者 ID:IeXWyQzzv

妹ちゃん凄く怒ってたの記憶に深く残ってるね、可愛かった。

義兄さん、妹さんをください。幸せにします

 

 

668:名無しの転生者 ID:ZE0G10G7A

>>666

あれは驚いた

 

 

669:名無しの転生者 ID:b53wD6Ifk

>>666

いうて吹っ飛ばされただけで怪我してないんだよな

 

 

670:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>667

オーバーレイ・シュトロームを一週間耐えれたらいいぞ。もちろん防御や再生、能力とかなしで普通の人間と同じ状態でな

 

 

671:名無しの転生者 ID:MsxSLceTU

オーバーレイを防御なしで一週間とか殺す気しかなくて草

 

 

672:名無しの転生者 ID:Sw3ciOPnB

>>666

夏凜ちゃんの家に入り浸かっていたことを忘れてるゾ

 

 

673:名無しの転生者 ID:5qkiz8pmJ

>>672

ツンデレキャラはデレたら可愛いんだよね。まだデレるほどの好感度までは足りないからイッチは頑張れ

 

 

674:名無しの転生者 ID:zrGMq0U9T

まぁ、平和なのは良いことなんじゃない?

 

 

675:名無しの転生者 ID:Xb5Fzl2Qx

せやなーファウストの正体は気になるが、中身がいない可能性もあるし、戦いよりは平和の方がいいでしょ。

仮に戦いになったらどうせイッチ怪我するし

 

 

676:名無しの転生者 ID:stIPRfrlv

ネクサス関連って厳しいよな、ほんと。

ほんへの筋書きをなぞってるなら対策出来るのに、ビーストの出てくる順番もバラバラだし。一難すら去らないし。

 

 

677:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

まぁ、敵の目的がどうであれ俺がやれることはウルトラマンとして戦う……ん?

 

 

678:名無しの転生者 ID:kSnI4pje7

イッチ?

 

 

679:名無しの転生者 ID:xkj96lQph

どうした、またなんかやったんか?

 

 

680:名無しの転生者 ID:wutACo89m

流れ変わったな

 

 

681:名無しの転生者 ID:gFyKhFurJ

あ、切り替わったわ

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

樹海となった世界を、紡絆は傍にいる勇者部の仲間たちと見ていた。

紡絆が睨みつけるように見る先に居るのは、全体的にメカニカルな姿をしており、縦長の本体から四本の足が生えているといった形状を持っている他、頭部らしき部分には黒子のように常に舌のような頭巾を深く被っている山羊型---つまり山羊座の名を冠するバーテックス。カプリコーン・バーテックスだ。

 

「やぎ……山羊座……? あれ、山羊座だよね、山羊座であってる? 山羊座じゃなくね?

ちょっとイメージと違うんですけど。

いや、よく見ればそうなんだ、そう見えるけど山羊座要素少なすぎるというかパッと見てそう見えないし普通もっとこう、バフォメットとかさ、トナカイとかさ、そんな感じの見た目と思うじゃん?

何がどうしたらそうなったのか俺は聞きたいというか、もはやただの三角木馬だしその形は色んな意味でどうかと---」

 

「あーもう、うるさいから黙りなさい。そんなこと知るわけないでしょ」

 

「あっはい。すみません」

 

睨みつけていたかと思えば、困惑したような表情で長々と愚痴のように語り始めた紡絆だったが、風の言葉に大人しく口を噤む。

 

「あれが五体目ね……」

 

「とりあえず変身しちゃおう!」

 

「そ、そうですね。やっぱりこの状態だと危険ですし」

 

「まぁ、融合型と以前戦ったから大丈夫だと思うけどバーテックス単体は久しぶりとはいえ、油断なく行きましょうか」

 

気を取り直し、それぞれの顔を見て頷くと、風と樹に友奈と東郷が、一斉に手にした端末の画面をタップした。

それぞれを象徴する色の光の花びらが舞い上がり、四人がそれに包まれる。

何気に紡絆は健康的な状態で初めて近くで見る勇者へ変身するためのプロセスだが、神聖さを感じる光景に目を奪われたのも束の間、数瞬後には光が弾け、その中から勇者服に身を包んだ勇者達が現れた。

 

(あー……なるほど。みんなが言ってたのはそういうことか……。最初の時は遠くて見えなかったが、近くだと目を逸らした方がいいのかもなぁ)

 

何処か納得したように紡絆は頷きながらまじまじと見ていると、何故か照れたように頬を赤めてる勇者たちに姿を見て、こてんと首を傾げた。

 

「そ、そういえば見えるの忘れてた……」

 

「あー、いやみんな良いと思いますよ。はい、風先輩可愛いと思うし、友奈と樹ちゃんも。もちろん東郷も」

 

「そ、そうかな?」

 

「わ、忘れてくださいっ!」

 

「紡絆くんにそう言って貰えると嬉しいわ」

 

思い出す風と、照れる友奈。頬を赤めながら忘れるように無理難題を言ってくる樹と何処か冷静な対応はしているが、声音が少し嬉しそうな東郷といった感じと言った感じでそれぞれ違う反応を示していた。

その中で紡絆は友奈と樹を見て、一つ思ったことがあった。

 

(忘れるのは難しいしこれからもあるだろうから無理じゃない? というか、誰に向かってウインクしてるんだろう友奈と樹ちゃんは……)

 

まったく、そこまで、全然今考える必要でもないことだが。

そもそも今は敵のことを考えるべきだろう。

 

「こほん。えーとにかくバーテックスをパパッと倒しましょ」

 

「そうですね。よーし、じゃあここは俺が早速---」

 

「紡絆は待機ね」

 

「ふぁっ!?」

 

緊張感の欠片もない空気を変えるように咳払いした風の言葉に頷き、腕を回しながらエボルトラスターを手にした紡絆は前に進むが、まさかの指示にずっこけると振り向いて不満げに見つめる。

 

「確かに、スペースビーストがまだ現れてないなら、紡絆くんは温存するべきなのかもしれないわ」

 

「紡絆先輩の場合はエネルギー消費……ですもんね」

 

「大丈夫だよ、一体だけだし!」

 

「いやいや、怪我治ってるから大丈夫だって! あくまでメタフィールドを形成しなければ問題ないし、それに結局俺も戦った方がはや---んん?」

 

まるで何かを感じ取ったように言葉を区切った紡絆がバーテックスが居る方を向き、目を細める。

突然過ぎる行動になんだなんだと友奈たちの視線が集まった。

 

「紡絆? 何かあったの?」

 

「いやまさか…んなはずは……。すみません、俺行きます!」

 

「ちょっ……」

 

何かを言われる前に紡絆は変身することなく()()()カプリコーンに向かって走っていく。

その同タイミングで、頭部らしき部分に何かが突き刺さり、爆発を引き起こした。

 

「えっ!? 爆発した!? 東郷さん?」

 

「私は何もしてない……」

 

「じゃ、じゃあ何が……?」

 

スコープを通して監視していた東郷は目を離すと、友奈の言葉に首を横に振り、この場の誰もが思ったことを樹が口に出した。

そんな中、走ってどこかへ行った紡絆が気にはなるものの、友奈たちがカプリコーンの頭上に注目しているとそこには敵に向かって落下する、赤い勇者服を身に纏った茶髪のツインテールの少女の姿があった。

味方かどうかも分からぬ少女の姿に友奈たちが動揺していると、少女は日本刀を両手で持った状態で不敵な笑みを浮かべている。

 

「チョロいッ!!」

 

そう叫んだかと思うと、投擲された二本の刀が正確にカプリコーンの脚に突き刺さり、爆発を引き起こす。

 

「封印開始! 思い知れ、私の力っ!」

 

「あの子、まさか一人でやるつもり!?」

 

少女がさらに追加で刀を一本が投擲すると地面に突き刺さり、早くも封印の儀式が行われる。

本来一人では不可能なはずの封印だが、少女が執り行った儀式は関係なく封印の儀が始まる。

カプリコーンの頭巾のようなものが上がると、顔らしき部分が露出してカプリコーンは御魂を吐き出す---と同じくして、何らかの禍々しい霧が発生する。

バーテックスの御魂にはそれぞれ異なる能力があり、それが今回のものなのだろう。

 

「ガス……!?」

 

「うわっ、なにこれ!?」

 

「み、見えない〜…ッ!」

 

「っ……しまった、あたしらは問題なくても…って、紡絆は!?」

 

カプリコーンから噴出したガスは友奈たちがいる位置だけではなく、樹海全体に充満していくように凄まじく噴き出していた。

しかも勇者が持つ精霊がバリアを貼ったということは、致死傷ダメージがあるということ。

さらに前方が見えなくなるほど濃く、勢いもそれなりに強い煙。

既に紡絆の姿を前提として認知していない謎の少女はともかく、他の面々も紡絆を見失ってしまった。

場所が分からなくなった紡絆はさておき、バーテックスの近くにいる少女は視界を覆われていても、精霊のバリアが発動しても気に留めることなく御魂の方を正確に捉えている。

刀を持ち、跳躍するために力を入れようと---

 

「その程度の目眩し、気配で読め---」

 

「ゲホッゲホッ!? やべ、これって毒霧じゃ---あぁああああぁぁ!?」

 

「はっ!? 今の声って……!?」

 

忘れてはならない。

今の紡絆は生身であり、既にバーテックスの近くまで来ていた。

そして友奈たちですら足を止めているのに、生身である紡絆が突っ込んだらどうなるか?

当然、吹っ飛ぶ。

毒霧を吸ってしまったせいか、咳き込みながら悲鳴のような声が響く中、少女は驚いたように動くのをやめて周りを見渡してしまった。

本来聞くはずもない、知っている声。

 

「って、考えるのは後! これで終わりよ!」

 

すぐに我に返った少女は今は気にしないようにしたのか、今度こそ跳躍して御魂を斬り裂いてみせた。

ヴァルゴとは違って耐久性はないのか、御魂はあっさりと斬れる。

 

「殲…滅!」

 

『諸行無常』

 

華麗に着地し、そう呟いた少女の背後では例の如く、御魂が光となって昇っていく光景があり、大した出番もなくカプリコーン・バーテックスは砂となり---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()

暗雲がいつの間にか存在しており、凄まじいエネルギーの奔流が地面に流れる。

 

「ッ!? この気配は……!」

 

素早く振り向いた少女は刀を再び手元へ呼び出し、警戒するような視線を向ける。

すると、消えかかっていたはずのカプリコーンは再生し、まるで何かに取り込まれるように地面に溶けていく。

さらに樹海内が突如()()()()()()()()()()()大きく揺れ、だんだんと震源が近くなっていた。

 

「そこかッ!」

 

気がついたように、少女が大きく後ろに跳びながら刀を二本投げつけ、それが地面に突き刺さると、揺れは人際大きくなり、地面が地割れを引き起こして一気に何かが出てきた。

土埃を撒き散らしながら現れたのは、植物。

かつて存在していた東南アジアに原生する世界最大の花、ラフレシアを思わせる黄色い巨大な花が特徴で、顔がラフレシアを思わせる花になってるだけで怪獣そのものだ。

その怪獣は空中に居る少女の方へ向くと、花弁を開く。

さらに開いた花冠から黄色い花粉と()()()()を放出する。

 

「こいつ……大赦が言ってたスペースビースト! それと合体したやつってこと!? 

くっ…! 空中だと身動きが……!」

 

迫るふたつの霧に対して、空中にいる少女が逃げる方法などない。

勇者という力は身体能力の強化はあっても、空は飛べない。

跳ぶことは出来ても、浮けないし飛べないのだ。

だからこそ、少女は刀を横にして盾にするようにしながら自ら落下を早めるが、間に合わない。

花粉と霧が直撃する方が早いだろう。

精霊によるバリアで守られはするだろうが、ウザったらしいのは間違いない。

だが、足掻いたところで何もすることなど出来ず、少女は花粉と霧に包まれ---

 

 

 

 

 

 

 

 

『シュワッ!』

 

銀色の体を持つ、一人の巨人が花粉と霧を突き抜けて現れた。

そう、ウルトラマンネクサスだ。

彼はそのまま怪獣の頭部を踏んづけて背後へ回り、地面に着地すると握り拳を地面に置いてゆっくりと開いた。

 

「ここは!? って、あんたは……報告にあったウルトラマン?」

 

『デェア……シュワッ!』

 

少女が無事なのを確認したネクサスは、すぐにビーストへ振り向き、ファイティングポーズを取る。

そして植物型のスペースビーストに対して、一直線に走って拳で殴り掛かった。

 

『ウワァアアアァァ!?』

 

しかし突如として背中に生えた、四本の白い足のようなものがネクサスを蹴り飛ばした。

リーチの差で拳が届くこともなく、ただ一方的に吹き飛んだネクサスは即座に起き上がる。

 

『ファ!?』

 

しかし、目の前に存在する、明らかな異形の姿にただただ驚愕した。

二足歩行の怪獣であるのだから、腕もある。

脚もある。

だが、背中からは巨大な足のようなもの触手が四本生えており、色は白く、イカのようなものだ。

まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()---

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

782:名無しの転生者 ID:2lmv1Ezcp

こいつって、もしかして!?

 

 

783:名無しの転生者 ID:PuHyumUJr

間違いねぇ……今度は素材として組み込まれるんじゃなくて、スペースビーストの方がバーテックスの特性を吸収しやがった!

恐らく能力も取られてるぞ!

 

 

784:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

元となったのは間違いなく、ウルトラマンネクサス、Episode0.9とEpisode10に登場するブルームタイプビースト、ラフレイア!

黄色い巨大な花が特徴的な植物型のスペースビーストだ!

日中は地底に身を潜めているが、夜になると地上に出て活動する夜行性のビーストで、武器は花弁から放出する猛毒の黄色い花粉!

この花粉は付着すると瞬時に気化して超高熱を発し、付着した物を瞬く間に炭化させてしまうという性質がある。更に可燃性な上、花粉自体の質量が水素と同等で拡散しやすい!

このビーストへの無暗な攻撃は大惨事を招きかねないという厄介な代物だぞ!

樹海の中ではもっと酷いことになるかもしれん!

 

 

785:名無しの転生者 ID:W+6dE4LmF

そうか、前はバグバズンが素材になっていた!

別にバーテックスの方はやられた後でも、完全に消滅する前なら行けるのか。

そうだよな、バーテックスは前回のことも含めて考えると素体じゃなくて素材みたいなもんだ!

 

 

786:名無しの転生者 ID:rUksCPfVf

カプリコーン・バーテックスとラフレイアを合わせて、捻りが特にないが、もじって融合型昇華獣ドラゴレイアはどうだろうか。

山羊は古代ギリシア語でトラゴスだし

 

 

787:名無しの転生者 ID:NUMoBDuRI

うん、それでもいいと思うが今はそうじゃねぇ!

イッチ、気をつけろ!

黄道十二星座のバーテックスとの融合はまだどれほど強いのか未知数だ…!

ジュネッスになるなら、考えてなれ!

こいつらの特性からして、下手に本気で戦うと戦闘データが取られるぞ!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

いつものファイティングポーズを取るネクサスに対して、実質合計八つとなる拳と脚の中、背中に生えた触手四つと両腕を構えるドラゴレイアと命名された新たな融合型昇華獣。

背中に生えた触手の合計四本は何処か翼のように見えなくもない。

それを見ても、ネクサスがジュネッスになろうとする様子を微塵たりとも感じ取れない。

手数でも負けているというのに。

 

『デェヤッ!』

 

ネクサスが動く。

同じように愚直に突っ込んでいく姿に迎撃しようとドラゴレイアは背中の二本を器用に丸めて握り拳のようなものを作り、ネクサスが範囲内に入ると真っ直ぐ突き出す。

ネクサスはそれを寸前のところで屈んで避けると、懐へ潜り込む。

 

『ヘェ---ウオッ!?』

 

拳で肉体を殴ろうとした瞬間、巨大な花冠から再び黄色い花粉と()()()()を放出され、ネクサスが苦しむ。

霧を少しでも防ぐためか手で払おうとするが、当然払うことなど出来ない。

まるで近接で攻撃してくるネクサスに対して、()()()()()()()()()()()()されている敵だ。

近づけば八つの触手と拳と脚が。中距離であるならば毒霧と花粉。

 

『ウグァ……ウウッ……!』

 

ネクサスを覆う花粉と毒霧は消えることなく、毒霧に至っては突如としてネクサスの腕に纏わりついた。

そこに普通の腕を振るってネクサスの胸を引っ掻き、ダメージを受けるネクサスはいつまでその場に留まっていても花粉と攻撃に苦しめられるだけだと、攻撃された際の勢いを使っては距離を離すために後ろに転がる。

 

『デアッ! ガッ……!?』

 

そんなネクサスを逃がさないというようにドラゴレイアは毒霧のみを吐き出し、ネクサスはまるで鎖でも付けられたように離した距離を戻された。

 

『うぐ……シュア! デェアァアアア!』

 

距離を離そうとしても、動くことが出来ない。

それどころか、ネクサスの腕が一向に動かなかった。

よくよく見れば、ネクサスの両腕には紫色の腕輪のようなものが付けられており、そこから伸びる鎖は空間に作られた紫のモヤ状のモノに繋がっていた。

恐らく、元は毒霧だろう。

だからこそ、どれだけ力を込めようが、勢いよく振るおうとしようが、動かない。

それこそ、人類か生み出した手枷のように。

 

『ぐぐ……ッ!』

 

さらに、先程ドラゴレイアが吐いた毒霧。

今度はネクサスの腹を覆うと、ネクサスは一気に締め付けられる。

霧というものは、水分が含まれている。液体である霧が凝固化され、それがネクサスを拘束していた。

つまり、ネクサスの両腕はドラゴレイアの能力によって妨げられている。

 

『ぐあっ、ガハッ……!?』

 

自由が唯一効いた脚を動かそうとすると、両脚にも纏わりつき、ネクサスを上空へ持ち上げたかと思えば地面に叩きつけ、再び持ち上げると地面に叩きつける。

ネクサスはネクサスで拘束を外そうと片手になんとか手を伸ばすが、拘束が強まると動けなくなる。

ならばアームドネクサスで切断しようにも、場所的に不可能。

抵抗、対抗する手段はなくこのままだとネクサスに訪れるのは、敗北---

 

 

 

 

 

 

「そこだあぁぁぁッ!」

 

『ハッ!? デェヤァアアア!』

 

突如聞こえてきた声にネクサスが顔を向けると、刀が真っ直ぐ飛んでいき、ネクサスの両腕に纏わりついていた霧を少し切り裂きながら、鎖を切り裂いた。

元が水分なのもあって再生しようとしていた一瞬を見極めたネクサスが腕を思い切り振りかぶると一気に振り下ろし、変化が訪れる。

体に纏わりついた毒霧を光の熱で吹き飛ばし、その体を銀と紅に染める。

肩パットのような板状のものが形成され、半球状の青い光を持つコアケージが生成された姿、ジュネッスへと変身したネクサスは拳を握りしめ、一気に突き出した。

不意打ち気味に放たれた拳はドラゴレイアに直撃し、さらに斬撃が襲いかかる。

 

『フッ! ハアァァ……』

 

即座に決着を付けるために両拳を前に突き出し、交差したネクサスが光を纏う。

そしてエネルギーを保ったままゆっくりと動かしてV字型に伸ばすと、L字型に組み、放たれる---

 

 

 

『ッ!? デェアァ!』

 

オーバーレイ・シュトロームが()()()逸らされ、即座にエネルギーが消えた。

いや、違う。

ネクサスは自ら逸らし、消したのだ。

その理由は、ドラゴレイアが持つ花粉。

ドラゴレイアは自身の特性を理解しているのか、ネクサスの光線に合わせるように一気に花粉を撒き散らした。

ネクサスの光線には光のエネルギーという強力な力があり、可燃性を持つ花粉が当たれば、現実世界に大きな影響が与えられてしまう。

死人が、出てしまうのだ。

人質を取られてしまえば、ネクサスに出来ることはない。

 

『ンンンンン---グッ……! シュワ………』

 

何処か悔しそうにネクサスが拳を握り締め、ドラゴレイアが上空に現れた暗雲に連れ去られる。

行き場のなくなった力は自然と降ろされ、花粉が消えたのを見るとネクサスは少女に目を向けた。

 

「はぁ、せっかく華麗なる初陣を華麗なる勝利に決めようとしたってのに……!」

 

『シュワ………ハァ』

 

なぜだか文句を言っている少女の姿にネクサスが何処か息を吐くと、光となって消える。

少女が視線を向けると既に虚空だが、何を思ったのかぼーっとしていた。

 

「今の違和感は……?

ったく、なんだって言うのよ……。まぁいいわ、とりあえず向こうの連中に挨拶くらいはしにいきましょう」

 

ネクサスがどういうことが言いたかったのか理解出来なかった---というか理解出来る存在が一人しか居ないのだが、何処か既視感を感じた少女は違和感を胸に残しつつ、スマホを手にすると位置を把握し、跳んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……。し、死ぬかと思った……」

 

とぼとぼと歩きながら、ネクサスから紡絆へと戻った彼は勇者部の人たちがいる場所に帰ったはずが、位置を間違えたせいで居なくて、徒歩で戻ろうとしていた。

そんな紡絆は若干咳き込んでいる。

毒霧と花粉を吸い込んだ影響だろう。

生身で吸い込んだのもあるが、ネクサスに変身しても猛毒を受けていた。

といっても、スコーピオン・バーテックスの時とは違って直接注入されたわけじゃないので特別死ぬほどの影響はないのだが。

 

(あれが黄道十二星座との組み合わせ……か。厄介というか、今回は能力が噛み合いすぎてる。

花粉と毒霧。しかも両方毒があって、花粉に至っては下手に光線技をぶつけたら爆発して被害が凄いことになる……これは開幕メタフィールドが必要だ。

それに恐らくバーテックスとしての能力がまだ残ってる……みんなを置いていった俺が悪いけど、夏凛が居なければやられてたかもしれない。

あの気体を凝固する力は厄介だ。一人じゃ外せない)

 

未だに樹海化している世界を歩きながら紡絆は戦いを振り返っていた。

融合型昇華獣の能力について、しっかりと思い出しながら。

 

(それにいくらなんでも、撤退が早すぎる……ということは、あくまで偵察のはず。

本当の力はあれ以上で、他に奥の手があっても不思議じゃない…ジュネッスの力を少し解放したのは早計だったか…?)

 

早く終わらせようとしたとはいえ、長引く戦闘になることもなくジュネッスになったのを見ると撤退した敵。

明らかに目的は神樹や勇者、ウルトラマンを狙った訳ではなく、情報収集と見るのが近い答えだろう。

第一、こちらには向こうもこちらも知らないであろう勇者が一人来たのだから。

ちなみに紡絆は歩いているが、友奈たちと合流するために携帯を見て方角と位置を把握していれば、時々木々をぴょんぴょん跳んで移動している。

 

(そういえば、なんで夏凜はいたんだろ? 思わず飛び出してしまったが、理由が分からん……聞いてみるしかないな。

あと少しで着くし)

 

1度止まって携帯を見れば、反応はもう少し。

夏凜の反応もあったため、紡絆は訝しげに思いつつも、合流したら分かるかと一気に走っていく---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の名前は三好夏凜。大赦から派遣された正真正銘の正式な勇者よ」

 

「正式な……勇者?」

 

夏凜と名乗る少女の言葉を聞いて、友奈たちは頭を捻る。

彼女たちからすると、何の説明もなく一人突っ込んで一人いつの間にか変身して、一人挑みに行くバカ(紡絆)を援護するために向かっていれば、まさかの自分たちが辿り着く前に戦いが終わり、見れたのは融合型昇華獣となったと思われるスペースビーストの姿を少しだけ。

あとは紡絆が光となって自分たちを通り過ぎたかと思えば、こうして目の前にいる夏凜という少女にエンカウントして開幕ちんちくりんやら揃いも揃ってボーっとしてる、ウルトラマンを見習えばみたいなバカにすることを言われたのだ。

 

「そう、私は正式な勇者。

つまりあなた達は()()()ってわけ。はい、お疲れs---」

 

「おーい! みんなー!」

 

そんな中、夏凜の言葉を遮るように明るい声が響き、何事かと不満そうな表情で夏凜が睨みつける。

友奈たちは知っている声に振り向いた。

 

「あっ、紡絆くん! こっちだよー!」

 

手を振り、ぴょんぴょんと小さく跳ねて位置を知らせる友奈を見て、紡絆は駆け寄る。

 

「…ん? あれ、もしかして……取り込み中?」

 

辿り着いた紡絆は勇者部のみんなと夏凜を見て、首を傾げた。

漂う空気感的に何かあったのでは、と思ったのだろう。

 

「えっとそれが……」

 

「かくかくしかじかよ」

 

「なるほど」

 

「え? 今の分かったんですか!?」

 

どう話すべきか言い淀む東郷に風が代わって言うと、紡絆は納得したように頷いた。

ツッコミを入れる樹はともかく、そういえば大人しくなったと、紡絆以外が夏凜の方を見ると、彼女は視線を紡絆のみに向けて神妙な様子で酷く驚いたような表情をしていた。

 

「まさか……姫矢?」

 

「「「「姫矢?」」」」

 

「……あっ、やべっ!」

 

明らかに紡絆を見て呼ばれたからか、視線が今度は紡絆に集まる。

それはそうだろう。

勇者部のみんなは継受紡絆という名前は知っているが、姫矢など聞いたこともない。

そのことを盆忘れしていたのか紡絆が少し気まずそうに目を逸らすとガツガツといった感じで夏凜が紡絆の目の前に来た。

 

「ちょっと、姫矢! なんであんたがここに居るのよ!?

何? ここが何処か本当に分かってる? あんた勇者ってわけでもないでしょ?

そもそもここに居られる理由が分からないんだけど? 確かに大赦からは男で入れる存在がいるってのは聞いてはいたけど…それがあんたってこと? だったらさっきまでどこ行ってたわけ!? 勇者システムも扱えないんだからうろちょろしてたら死ぬわよ?

というか、一体何を隠してんのよ? 黙ってないで言いなさい!

それにコイツらが言ってた紡絆ってどういう---ッ!」

 

「ど、どうどう。待て、待つんだ夏凜。

こ、これには深い事情があって……うぇ……」

 

夏凜は紡絆の胸ぐらを掴むと激しく揺らしながら捲し立てるように言う。

紡絆は落ち着かせようと手を動かしながら、若干小さな声で呟いた。

というか、勇者システムを纏ったまま揺らされたため、異常に気持ち悪くなっていた。

このままだと華麗な虹色の液体を吐き出すに違いない。

 

「はぁ? 事情?

どんな理由があるってんのよ。どうでもいいこと言ったらぶった斬るわよ」

 

「そ、それは死ぬだろ!?

あーあれだよ。まず、俺の名前は継受紡絆。姫矢ってのは……何となく名乗った偽名だ」

 

「……は?」

 

物騒なことを言われたが、偽名だとドヤ顔で言ってのけた紡絆。

そのことに意味が分からないと低い声を発しながら苛立ちと疑問符を浮かべる夏凜に説明するために口を再び開く。

 

「で、さっきも一緒に居たじゃん! 俺はうr---あっ、すまん時間切れだわ」

 

口を開いたのはよかったが、極彩色の光が迫ってきてるのを見て最後まで説明出来ないと理解すると、紡絆は苦笑した。

 

「はぁああああぁぁ!? ちょっと待ちなさいよ!

まだ詳しいことは聞いてな---」

 

「それは神樹様に言ってくれよ……」

 

「この---次に会うときは覚えておきなさ---ッ!!」

 

諦めたようにため息を吐く紡絆は、最後に聞こえてきた脅迫に近い言葉を聞かなかったことにした。

彼は言葉を受け流すのは得意なのである。

そうして光が全員を覆い尽くし、紡絆を含めて勇者部と夏凜は元の現実世界に戻されるのだった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相も変わらず屋上へ飛ばされたが、夏凜の姿はなかった。

どうやら別の場所に飛ばされたらしく、紡絆は屋上から見渡して夏凜が無事なのかを確認してほっとする。

そして次に、どう説明すべきか悩み、考えるのをやめた。

 

「ねぇ、紡絆くん。さっきの子と知り合い? なんだか知ってる感じだったけど」

 

「あ、友奈。えーと友達、かな? そうそう、夏凜が何言ったかは分からないけど、素直に受け止めなくていいと思うぞ」

 

純粋に気になるといった様子で友奈が紡絆に聞くと、紡絆は少し曖昧気味に返す。

というのも、向こうが友達と思ってるかは分からないからだろうが。

 

「素直に受け止めなくていいって、どういうことよ?」

 

「恐らく、夏凜は援軍として来たんじゃないですかね? 夏凜はあんな感じですけど、素直じゃないというか自尊心が高いというか…まぁ、とにかくいい子なんです!

なのでその、恨んだりしないであげて欲しいなぁ……と」

 

何故か自分のことのように眉を下げながら紡絆は自身が知っている夏凜のことをみんなに言う。

お前は保護者か、と思われるような発言だが。

 

「紡絆くんの友人なら、悪い子ではないってことくらい、みんな分かってるわ」

 

「東郷……」

 

そう言われ、紡絆が見渡すと各々不快そうな表情をするわけでも怒ってるわけでもなく、自然とした表情だ。

 

「まぁ、発言にはムカついたけどね」

「あ、それは同感です。紡絆くんを褒めたところは評価しますけど、友奈ちゃんをチンチクリン呼ばわりしたのは少し」

「なんかごめん」

「紡絆先輩が謝る必要ないんじゃ……?」

「でもでも、仲間が増えるってことは戦いやすくなるよね。あの融合型昇華獣…だっけ? まだ倒せてないし!」

「あー…あいつな。下手に倒す訳には行かなくて、とりあえずそれは後で---」

 

穏やかな空気が流れる中、紡絆たちはいつまでも屋上に居ても仕方がないため、喋りながら屋上の扉へと向かい、紡絆が扉を開けた。

 

「おに……兄さんっ」

 

「わん!?」

 

扉を開けると、凄まじい威力を腹に受けて犬のような鳴き声を漏らす紡絆。

尻もちをついて見れば、お腹に顔を埋めながらぎゅーっと締め付ける女の子---小都音の姿があり、飛びついてきたのだろう。

ちなみに紡絆の後ろにいた友奈たちは咄嗟に下がったため、特に被害はなかった。

 

「だ、大丈夫?」

 

「驚いたけど大丈夫。友奈たち…というか東郷の方は大丈夫なのか? 車椅子当たったりとか」

 

「私は大丈夫よ。それより小都音ちゃんに屋上ってこと言うの忘れてたわね……」

 

「兄さん、怪我はない? 何処か痛めてない?」

 

あーといった感じで頭に手をやる紡絆だが、心配してくる小都音を見れば若干息が荒いため、走って探したのだろう。

とりあえずぺたぺた体中を触って怪我を確認してくる小都音に対して、撫でるという行動に移った。

 

「俺は平気。言っておくべきだったな、ごめん」

「ううん怪我がないならいいよ。あ、皆さんも怪我とか…樹ちゃんも大丈夫? 怪我は?」

「私は大丈夫です。というか…」

「その辺は後で。とにかく部室へ向かいましょ。ほら、そこの兄妹は早く立つ」

「小都音がいるので動けないんですが」

「兄さんから離れたくないです」

「本当に仲良しさんだね〜」

「ええ、でも……その方がいいのかもね、紡絆くんにとっては」

「そうだね」

 

動けないとは言いつつも家族という存在がいるからか嬉しそうにする紡絆を東郷は見ていて、安心したように微笑む。隣に並んでいた友奈も同じように微笑んでいた。

なお、屋上を出るための道を紡絆が塞いでる感じになっているため、部室に戻るのは若干時間がかかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、次の日。

説明を今日するといったため、情報を頭の中で整理しながら新たに現れた融合型昇華獣、ドラゴレイアの対策を練るために睡眠しながら考えようとしていた紡絆は、朝から妙な気配を感じて起きていた。

周りが騒がしく、なにやらイベント事でもあるのかと若干わくわくしながら起きているのである。

運動ならバッチコイ、勉強ならいつでも寝る準備は出来てるぞといった心構えもしっかり出来ている。

 

(あー、でもちょっと運動は不味いかもな…腕あんまり動かないんだよな。流石に毒の影響はあったか……)

 

前日の戦いで紡絆は拘束され、地面に何度か叩きつけられている。

だがなによりも、彼は毒を浴びすぎたのだ。

そもそもドラゴレイアが持つ花粉は猛毒があるのもあるが、付着した物を炭化させるという何処ぞの歌いながら戦う世界の敵と同じ能力を有している。

ウルトラマンの力がなければいくら強化されている紡絆でも生身だと長時間の活動は死傷に繋がる。

しかも何気に生身でも毒霧を吸っていたため、多少の効果は出ていても不思議ではないだろう。

むしろ痺れる程度で済んでるのはウルトラマンがいるお陰か。

何故なら勇者ですら精霊のバリアが発動するレベルの毒なのだから。

 

紡絆が毒の影響のことを考えていると、彼は何かを感じ取ったのかふと黒板に視線を移す。

周りは静まっており、気がつけば担任の先生が立っていた。

 

「ホームルームを始める前に、皆さんに新しく転校してきたクラスメイトを紹介します。入ってきて」

 

「はい」

 

何処でも似たようなもので変わらない言葉を聞くと、扉の方から一人の少女が堂々とした態度で入ってくる。

その姿を見て紡絆は若干驚くが、なんとか声には出さなかった。

誰かが騒がしくするわけでもなかったため、スムーズに進むと静かな部屋の中に白いチョークが黒板の上を走る軽快な音が響く。

クラス全員が見つめる先で担任教師の手により『三好夏凜』と名前の書かれた黒板の前で静々と佇むのは、昨日突如あの戦場に現れて衝撃の発言と紡絆を揺すりに揺すって吐きさせかけた少女だった。

 

「こちらは、本日から皆さんと一緒に勉強することになった三好夏凜さんです。三好さんは、ご両親のお仕事の都合でこちらに引っ越してきたのよね」

 

「はい」

 

皆の注目が集まる中、担任教師の言葉に淡々と答えるその姿はその名の通り凜としていて、只者ではなさそうな彼女の雰囲気はこういったイベント事には目のないはずの中学生達を静まり返らせていた。

なお、紡絆は喋りたいのを我慢するので精一杯だった。

自制は出来るらしい。

そうして続く担任の言葉によれば、編入試験もほぼ満点で通っているらしく、雰囲気だけではなく本当に只者ではないようだと今いるクラスメイトたちは思っただろう。

 

「では三好さん。三好さんから皆さんに挨拶を」

 

「三好夏凜です。よろしくお願いします」

 

素っ気ないとも言えるシンプルな挨拶が終わり、ようやく教室内が騒がしくなり始めた。

クラス皆が好奇心に満ちた視線を向ける中、呆気に取られている表情が二つある。その持ち主はいうまでもなく勇者部所属の二人だ。

だが一人だけ、笑顔の者が居た。

 

(じゃあ、これからは学校でも会えるってことか。袖振り合うも多生の縁…ってよく言ったものだな。でも学校でも話せるのは良いなー)

 

友奈は単純に驚いて、東郷はどこか得心がいったというように。

ニコニコ笑顔な紡絆は純粋に嬉しそうに。

シンプルな挨拶を終え、夏凜は席に着くために紡絆の横を通り過ぎると睨みつけるように視線を送ったが、通じなかった。

 

「ここでも仲良くしような!」

 

「……放課後覚えておきなさい」

 

「えっ、こわ」

 

喜び全開で小声気味に口を開くと、ヤキ入れ的な意味がありそうな声音で言われ、紡絆は嫌そうな表情をしたが夏凜に凄まれたので頷いた。

兎にも角にも彼らの日常は、また騒がしくなりそうだった。

といっても元から騒がしいというのは、言うだけ無駄だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーいかr……」

 

休憩時間。

見事なまでに睡眠を取った紡絆は、休憩時間に夏凜の元へ向かおうとし、人の雪崩に殺られた。

流される紡絆。

慌てて救出する友奈。

囲まれる姿を見る東郷。

冷たく返す夏凜。

色々と分かれていた。

 

「やっぱり、こういうイベントごとだとそうなるのね…」

 

「紡絆くん、平気?」

 

「助かった……まぁ、見た感じ、お役目期間しか関わらないんだからつるむ気はないみたいな感じかな。よし、関わろう」

 

無駄に鋭さを発揮した紡絆は夏凜の姿を見て、そう推測する。

事実、当たっていた。

夏凜はバーテックスを全滅させるまでの期間、援軍として呼ばれた。

だから友達なんて必要ないと思っているのだろうか。

しかし既に友達と思っている紡絆にとっては、例え短い期間だったとしても彼女のような優しい人物には楽しい日々を過ごして欲しいと願う。

なので、紡絆は隣にいる自分と同じくらいコミュニケーション能力に長けている友奈を見た。

 

「なぁ、友奈は友達になりたいと思うか?」

 

「え? そりゃ仲良く出来るならしたいけど…流石に私もあの中は無理だよ?」

 

「いや、それだけ聞けたらいい。友奈も東郷もさ、夏凜と仲良くしてあげて欲しい。なんだかんだ、良い奴なんだ」

 

「ええ、紡絆くんが言うなら良い子だと思うわ。そういえば、紡絆くんはいつ出会ったの? 昨日は聞けなかったけど……」

 

「あー……ええっとだな」

 

休み時間の残り時間を確認すると、紡絆は要約して説明した。

融合型昇華獣が現れた際に負けて倒れていたところを助けられたこと。

最初は恩返しだったが、家に遊びに行って関わっていくうちに友人レベルまで親しくなったこと。

ツンデレ---簡潔に言うと、素直じゃないだけで根は良かったり、優しかったりノリがいいところ。

それを話すと、友奈と東郷は納得したように頷く。

 

「つまり紡絆くんはそうして出会って、仲良くなったのね。紡絆くんらしいわ」

 

「じゃあまずは、放課後になったら勇者部に連れていこっか。話すなら部室の方がいいだろうし!」

 

「ん、だな。放課後動くか。流石にあれは無理だ、俺もむり。

仮に突っ込めても危ないし怪我させくないからやりたくない」

 

そそくさと諦めると、休み時間がもう終わりなのもあってそれぞれ椅子に座ると、夏凜の周りに集まっていた人たちも戻る。

それを見て解放されたからか、夏凜は一息ついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三好さん放課後時間ある? もしよければ一緒に帰らない?」

 

「いえ、行くところがあるから」

 

「もしかして部活とか? もう何処に入るのか決めてるの?」

 

「別に。特には決まってない」

 

放課後。

休み時間の時よりかは部活があるもの、即座に帰ったもの、友達と帰ったものがいるからか、夏凜の周りは少なかった。

それでも人が居るのだが、夏凜は誘いを理由づけて断っていた。

ただそれは嘘ではなく、本当なのだが。

 

「おはよー夏凜」

「は?」

「おはよー!」

「な…何がおはよーなのよ!? 時間考えたらそんな言葉出てこないでしょ!」

「あはは、だって俺寝てたし」

「なんのために勉強してんのよ…」

 

しかしその分、人が居ないお陰で紡絆は無事に夏凜の近くに来ることに成功しており、親しげに話しかける---というより、周りから見ると先程の態度と打って変わって、親しげに見える。

冷たい態度からツッコミまでしてるくらいなのだから。

 

「あ、ごめんごめん。ちょっと用があってさ、彼女お借りします」

 

「あ、うん。ごめんね三好さん。時間取らせちゃって、またね。あと紡絆くんたちも勇者部頑張って!」

 

「おう、ありがと。悪いな」

 

流石紡絆と言うべきか、勇者部というべきか、夏凜に話しかけていた女子生徒たちが理解したように散らばってゆく。

散らばった彼女たちはふたつに分かれただろう。

ひとつは勇者部としての活動、またはお節介。

もうひとつは転校生であるはずの夏凜が紡絆と親しそうに話すという二人の姿からして、関係性を疑った者。

そのふたつに。

どちらかといえば、前者なのだが。

 

「じゃ、案内必要だろ? 行くゾー!」

 

「はっ? ちょ、私の鞄---!」

 

「友奈ー! 夏凜の鞄頼んだ!」

 

「はーい!」

 

夏凜の腕を掴むと、引っ張っていく紡絆に突然の状況に硬直する夏凜はハッと気づいたように叫びながら連れて行かれた。

教室から消える前に友奈へ叫んだのだけはナイス判断なのかもしれない。

まぁ、言わなくてもお人好しメンバーの一と二を争う友奈がいるので問題ないと思うが。

言わずもがな、一位説が濃厚なのは紡絆である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室から誘拐(語弊)した紡絆は、夏凜の腕を離して少し前を歩いていた。

ついでに道が分からないであろう夏凜に対して、通る道の場所や使う教室の場所を教えているのは、彼のお人好しさが全面的に出ている証だろう。

 

「まさか夏凜が来るなんてなー」

 

「……転入生のフリなんて本当に面倒くさい」

 

「まぁまぁ、せっかくの学校生活なんだからさ」

 

ある程度説明を終えると、紡絆は顔を夏凜に向けつつ、時々前を見ながら話題を振る。

 

「で、何か言いたいことあるんだろ? まぁ、言わないでも察せられるけどさ」

 

本題と言った感じで話に入る紡絆に夏凜は特に何も変わらず、平然とした表情で見て口を開いた。

 

「だったら言わせてもらうけど、あんたがあのウルトラマンであってんの?」

 

「あんまり大声で言わないで欲しいんだが……正解。ごめん、内緒にしてて」

 

「別に……気にしてない。ただ少し驚きはしたけど。

まさかウルトラマンが人間だったなんて。それも紡絆、あんただったってことに」

 

「俺も驚いたぞ? 夏凜が勇者だったなんてさ、そのお陰で助かったけど」

 

言われて少し声音を下げて喋る夏凜の僅かに不満そうな様子を感じ取り、紡絆は苦笑しながら申し訳なく謝る。

 

「で、予想はつくけど、どうして秘密にしてるのよ? 勇者と違って、あんたなら自慢したり力を見せびらかすことも出来るんじゃない?」

 

「ウルトラマンの力は、そんなことのために使うための力じゃない。それに大々的に言ったとして、俺の力が狙われないとは限らないからな」

 

「でしょうね。悪ければ人体実験や実験台。良くても兵器としての運用くらいかしら」

 

「両方とも最悪じゃん……人類を守ることに関しては迷いはないけど、それはやだなー」

 

夏凜に言われたことに紡絆は心底嫌そうな顔をした。

モルモットか兵器、どちらにせよ人間として見られないのだから。

 

「それよりさ、夏凜は援軍として呼ばれたんだろ?」

 

「……えぇ、一応ね。紡絆含めて全員頼りないけど」

 

「これはまた手厳しいことで」

 

特に怒る訳でもなく、否定する訳でもない。

それでも、紡絆は勇者部の勇者たちの強さは知っているため、口には出さないが夏凜にも知って欲しいと思っていた。

 

(そのためにも、まずは交友だな……これからは勇者部の部員の一人として活動してもらうし)

 

いつの間に部活に入ることが確定事項になっているのか。

少なくとも、夏凜はまだそのことを知らない。

 

「ほら、ここが勇者部の部活だ。たぶん友奈と東郷以外は揃ってる」

 

「そう、ここが」

 

部室のプレートを見上げる夏凜。

そこには文字通りそのまま勇者部と書かれている。

 

「……部室の名前まで緩みきってるんじゃないの? 変な名前」

 

「そうかな、俺はいいと思うけどな」

 

ふっと表情を柔らかくし、眼を細めて部室のプレートを紡絆は見た。

夏凜はそれを見て興味を失せたように逸らし、気づいた紡絆は何とも言えなさそうな表情で友奈たちを待つことにした。

そんなふうに会話が途切れて少し経つと、車椅子の音と足音が聞こえて紡絆が視線を移す。

 

「紡絆くん、お待たせー。あ、これ鞄だよ」

 

「はい、忘れ物。他人のことを気遣うのはいいけど、自分のを忘れちゃダメよ」

 

「おっ、悪い悪い、サンキュ。ほら、夏凜も」

 

「……私の場合は紡絆のせいなんだけど」

 

「……!」

 

「今気づいたみたいな反応するんじゃないわよ!」

 

東郷から自身の鞄を受け取った紡絆は、友奈が夏凛に鞄を手渡すのを見たが、告げられた言葉に豆電球でも出ていると錯覚するような反応をして、ツッコミを入れられた。

 

「ま、まぁ入ろう?」

 

「そうね。いつまでも部室前で騒ぐのは宜しくないわ」

 

「じゃー入るか。えー、夏凛連れてきたので全員入りますー」

 

コンコンコンとノックした紡絆は声を掛けるだけ掛けると、返事を待つことなく部室の扉を開けた。

先に先頭にいる紡絆、東郷、友奈、夏凛の順へ入る。

 

「あ、兄さんっ」

 

「ん? やっと入ってきたようね」

 

「皆さん…えっと、こんにちは…」

 

樹と話していたらしい小都音が、ぱああっと笑顔で向かい入れ、風は扉前で騒いでいた紡絆たちがやっと来たことに反応して、樹は夏凛にどう接すればいいか分からなさそうに。

 

「………」

 

「夏凛?」

 

元気よく挨拶を返そうと手を挙げようとしたところで、紡絆は無言のまま黒板の前に堂々と立つ夏凛を見て呼びかける。

が、反応はない。

 

「へんじがない……。

ただのしかばねのようだ」

 

「うるさい」

 

「あだぁ!?」

 

黒板の方にあったらしいチョークをこめかみに投げつけ、寸分の狂いもなく放たれたチョークを紡絆はまともに受けて背中から倒れた。

 

「わー!?」

 

「紡絆が死んだ!」

 

「す、ストライクです…!」

 

「綺麗な弾道だったわ…!」

 

「に、兄さん大丈夫!?」

 

「死んでないんですけど!?」

 

慌てた様子で小都音が紡絆を抱き起こすと、勝手に殺された紡絆は復活すると無事だと言うことを知らしめるように叫んだ。

 

「本当に気楽なやつら。よくもまあ、今まで生き残れたものね。

けれど、私が来たからには完全勝利間違いなしよ」

 

そんな紡絆をさておき、自信満々に豪語する夏凛に対して話を進めるためにか、代表して東郷が口を開いた。

 

「なぜ今このタイミングで? もっと早く---それこそどうして最初から来てくれなかったんですか?」

 

「私だってもっと早く出撃したかったわよ。でも大赦はお役目の完遂を確実にするために二重三重に万全を期しているの。

戦力を即時投入するよりも更に質を高めることで最強の勇者を完成させるためにね」

 

「最強の勇者……」

 

「そ、あんた達先遣隊の戦闘データを得て完全に調整された完成型勇者、それが私。

それに伴い私の勇者システムには対バーテックス用に最新の改良が施されている」

 

改良されているらしい最新のスマホを見せびらかすと今度は精霊を呼び出した。鎧兜に烏帽子を被った戦国武将のような容姿をしている人型の精霊。

義輝である。

 

「その上、あんたたちトーシロとは違って、戦闘のための訓練を長年受けてきているのよ!」

 

そう言った夏凛は傍にあったモップを手に取り、演舞のように流れるような動きで空中を舞い踊る。

そこには、素人とは一線を画す、一朝一夕では身につけることの出来ない確かな技が込められていた。

ただモップというのが絵面的に微妙なのだが。

 

「なるほど……躾甲斐のある子が出てきたわね」

 

「なんですって!?」

 

そんな中、腕を組んで頷いていた風が片眼をあけながら挑発的な言葉を漏らした。

それに反射的に突っかかる夏凜。

不敵な笑みを浮かべる風と夏凜との間で視線が交錯し、一瞬火花が散る。

 

「ふん、まあいいわ」

 

「あ、私質問いいですか?」

 

「何よ? あんたは……確か紡絆が言っていた妹ね」

 

そんな二人だったが、先に矛を収めたのは夏凛だった。

そこに話題を振るタイミングを測っていたのか、小都音が手を挙げると夏凛の視線が小都音に移る。

 

「はい、天海小都音です。兄さんの妹です」

 

「で、なんか用?」

 

「えっと、一つ聞きたいんですけど---」

 

そう言うと小都音は一度言葉を区切り、少し貯めると真っ直ぐ、それも物凄い真剣な表情を作って見つめる。

今までの勇者部には似つわしくない空気に一体何が来るのかと夏凜は身構えた。

 

「兄さんとはどんな関係ですか?」

 

「……は?」

 

「えっ?」

 

可愛らしい声を出しつつも若干黒い雰囲気を纏う笑顔の小都音から、予想の斜め上を行く発言に身構えていた夏凜は呆気に取られ、周囲からは困惑した様子を感じ取られる。

その中でも小都音の隣にいる人物が一番困惑してこんがらっていた。

無論、紡絆である。

 

「兄さんとはどんな関係ですか?」

 

再度、繰り返して聞く小都音。

それでようやく理解した夏凜は口を開く。

 

「別に、ただの知り---「いや、友達だぞ」」

 

「は、はぁ!? 誰と誰がよ!?」

 

「そりゃ、俺と夏凜しかいないだろ?」

 

「いつ、どこで、どうしてそうなるのよ!」

 

「友達の定義を俺が知るわけないだろ! 哲学は分からん!」

 

当然と言った様子で遮った紡絆に文句のひとつでも言ってやろうかと思っていた夏凜だったが、何故か自信満々に知らないと言う紡絆に言うだけ無駄だと悟ったのかため息を吐いた。

 

「あの……」

 

「今度は何!? またこいつのこと聞くんじゃないでしょうね!?」

 

また何かあるのかと小都音を見ながら、紡絆に対して夏凜は勢いよく指を差す。

小都音は先程と変わらぬ真剣な表情を作っており、紡絆は首を傾げた。

 

「兄さんはあげませんからね?」

 

そして真剣な表情はそのままで、自分のだと言うように小都音は紡絆の左腕を胸元で抱きしめて威嚇するように夏凜を見つめる。

ちなみに紡絆はされるがままだ。

 

「いらない!」

 

「ひどっ!?」

 

「兄さんがいらないってどういうことですか!?」

 

「あぁー! 兄妹共に面倒くさいっ!!」

 

ショックを僅かに受ける紡絆といらないという発言に文句を言いたそうな小都音。

そしてあまりにもの面倒さに癇癪を起こしたように切り捨てる夏凜の姿がそこにあった。

 

「はいはい、友達なのは分かったから一旦落ち着きなさい」

 

「部長が部長らしいことしてる……!」

 

「あぁん?」

 

「あっごめんなさい」

 

「はぁ、何はともあれ、あんた達全員大船に乗ったつもりでいなさい」

 

余計なこと言って、風のドスの効いた声に即効で謝る紡絆。

それはさておき、会話が終了すると夏凜は一つため息を吐き、話はこれで終わりと言わんばかりに発言した。

そしてその発言を聞いた友奈が立ち上がり、近づくとニコニコとした笑顔で口を開く。

 

「うん! よろしくね、夏凜ちゃん!」

 

「あ、あんたまでいきなり下の名前…!?」

 

「嫌だった?」

 

「別に、名前なんて好きに呼べばいいわ」

 

友奈の距離感の近さに戸惑いながらも夏凜は何処か興味がなさそうに返す。

そこにさすがに空気を読んだ紡絆も立ち上がると、夏凜に向かって笑顔で口を開いた。

 

「じゃあ、ようこそ勇者部へってことだな」

 

「は? ちょ……誰も部員になるなんて話、一言もしてないわよ」

 

部員達の中では半ば以上確定事項だったことを紡絆が言葉にしたのだが、夏凜には毛頭そんなつもりはなかった。

というか、紡絆に至っては案内中に確定していたのだが。

 

「違うの?」

「違うわ! 私はあんたたちを監視するためにここに来てるだけよ」

「えー、もうここには来ないのか? なら俺から行くべきか……?」

「どんな頭してんのよ……来るわよ、お勤めだし」

「それなら……なぁ?」

「うんうん、入っちゃった方が早いよね?」

 

部室の中でもコミュニケーション能力に長けた二人の猛攻撃は、普段とは考えられないほどの正論の言葉が飛んでくる。

何一つ、間違いは言っていない。たまに斜め上の発言をしているが。

 

「う……っ。まぁいいわよ、それならそういう事で。その方が監視もしやすいのは確かでしょうしね」

 

流石に二人には勝てないのか、折れた夏凜だが、この期に及んでもまだ頑なな態度を取る姿には勇者部女子部員たちは苦笑気味だ。

紡絆はニコニコ笑顔なのだが、内心少し言いすぎている自覚はありつつも素直になれない性格が邪魔しているという、ツンデレのことを理解しているからなのだろう。

何気に人助けが趣味なのもあって他人のことばかり見てるのが彼なので、だいぶ関わっている夏凜の分かりやすい本質を見抜くくらいは出来ていた。

 

「でもさ、夏凜。監視監視って言ったってスペースビーストの出現は俺も分からないし、みんなだって分からないだろ? そんなサボるみたいなことは言わなくていいんじゃ?」

 

「いい? 大赦のお勤めはね、偶然適当に選ばれたトーシロー連中が余裕綽々と出来るものじゃないのよ」

 

「よゆう……しゃくひゃく?」

 

「兄さん、余裕綽々は落ち着き払ってるって意味」

 

「なるほど余裕綽々か」

 

聞き間違えたのか、そんな単語あったっけ?と首を傾げる紡絆に小都音が教える。

どうやら頭は兄より妹の方が良いらしいが、聞いて納得したようなので聞き間違えたのだろう。たぶん、きっと、流石に。

それはともかく、紡絆のせいで話が途切れたか、夏凜は咳払いをひとつ入れて再び口を開く。

 

「……とにかく、この御役目はそんな生易しいものじゃなければ半端な覚悟で出来ることでもない。おままごとでも思ってるなら御役目をお---ってあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

また何か厳しい発言を言い切りかけた時、突如夏凜が悲鳴を挙げる。

その視線の先には---牛の様な精霊に頭を齧られている大事な相棒(精霊)の姿があった。

 

「あああああああああアンタ一体何してんのよ! 離しなさいよこの腐れチクショー!!!」

 

今にも食われかねない絶賛大ピンチの義輝のもとに大慌てで駆け寄った夏凜がその体を掴んで振り回す。

先ほどまでの姿は見る影もなく、もはや完全に取り乱してしまっている。

要救助者である義輝が目を回してしまうほど何度もシェイクした結果、とうとう耐え切れなくなった牛鬼の顎が外れ、遠心力に従ってポーンと飛ばされた。

 

『外道め!』

 

夏凜の両手には大事そうに両手で持たれている義輝が居り、牛鬼に対して声を挙げていた。

精霊が喋ったことに反応するよりも気になったのか、放物線を描いて飛ぶ牛鬼の行方を皆の視線が追う。

そんな状況にも関わらず割と余裕な表情で勢いのまま流れに身を任せていた牛鬼だったが、着地地点にあるものを視界に収めた瞬間に目をギラリと輝かせて、涎を垂らしながら口を大きく開いた。

 

「はあ……」

 

がぶり、と牛鬼が何かを食べる。

そこには、ため息を吐きながら諦めたように食べられる紡絆の姿があった。

 

「つ、紡絆くん大丈夫!?」

 

「わ、わわ…兄さんの髪の毛が…うらやま……大丈夫!?」

 

「あー髪の毛引きちぎられてる訳でもないし大丈夫大丈夫」

 

何故か食べられる姿に殆どの部員がやっぱりか、といった様子を見せるが、心配する友奈と小都音の声を聞きながら当の本人はすっかり慣れた様子で、自身の頭部をあむっと咥える牛鬼を撫でていた。

既に仲良しだ。

 

「と、とりあえずほら、牛鬼〜こっちには大好きなビーフジャーキーがあるよ~? おいでおいで~」

 

牛鬼の涎らしきものが紡絆の頭から大量に落ちていくのを見て、いつまでも食べさせてはならないと思ったのか友奈がビーフジャーキーを取り出して猫じゃらしのように揺らす。

それを見て、牛鬼はビーフジャーキーと紡絆を何度か見て、しばらく悩んだ挙句に友奈の方へ行った。

……紡絆をドバドバに汚してから。

 

「いや、なんで悩まれたん?」

「ちょ、ちょっと! 人の精霊を食べたり人間を食べたり、アンタの精霊どうなってんのよ!」

『外道め!』

「外道じゃないよ牛鬼だよ。ちょっと食いしん坊さんで紡絆くんのことが大好きなだけだよ」

「じ、自分の精霊くらいちゃんと躾なさいっての!」

「はい兄さんこっち来て」

「ういっす」

 

大好物であるビーフジャーキーと同レベルまで牛鬼は紡絆のことが好きなのかどうかは分からないが、考えても仕方がないため紡絆はいいツッコミ具合を見せる夏凜を見ながら、小都音にタオルで拭い取って貰っていた。

なおタオルが足らなかったため、東郷にも借りたという。

恐るべし、牛鬼の涎。

 

「ところで風先輩、爆笑してたの見逃してませんからね」

 

「い、いや……今のは無理でしょ、くっ…ぷぷぷ」

 

「お、お姉ちゃん……。えっと紡絆先輩、私もお手伝いしましょうか……?」

 

部員が食べられていたというのに爆笑していたらしい風に紡絆は恨めしそうに見るが、オドオドしながらも健気な後輩は先輩のために行動を移そうかと尋ねる。

 

「許して……」

 

「ええっ!?」

 

紡絆は風に関してはどうでも良くなったのか恨めしそうにするのをやめ、樹に許しを乞いながら拭きやすいように固まった。

 

「紡絆くんほら、ここも付いてる。

それで牛鬼のことだけど、紡絆くんは何故か噛まれるけど他の精霊も牛鬼に齧られるから私も含めてみんな精霊を出しておけないのよ」

 

「あざーす……」

 

流石に手が足りなくて東郷が車椅子に乗ったまま紡絆の服を拭い、小都音は髪をやっていた。

だからこそ、樹に対して断ったのだろう。主に後輩にまで拭かせてるように見えてしまうというのは光景的にマズいと思って。

なお紡絆がされるがままなのは、本人が自分でやろうと動こうとしたら注意されたからである。

 

「じゃあそいつを引っ込めればいいでしょ!」

 

「この子勝手に出てきちゃうの」

 

「はぁ!? あんたのシステム壊れてんじゃないの!?」

 

『外道め!』

 

もきゅもきゅと美味しそうにビーフジャーキーを食べる牛鬼を余所に夏凜が常識的な反論を言うが、システムに詳しくない彼らが説明出来るはずもなく、何も言えない。

 

「そういえばこの子は喋れるんだね」

 

「ええ、私の能力に相応しい強力な精霊よ」

 

「あ、でも東郷さんには三匹いるよ」

 

「はい」

 

話題を変えるように別の話を振られると夏凜は答えるが、友奈の言葉に東郷がスマホで精霊を呼び出した。

卵のような精霊、丸坊主。青い炎の精霊、不知火。狸の精霊の、刑部狸の三匹。

それを見た夏凜は絶句して言葉を失う。

自分とは違ってアップデートもされていないのに三匹精霊がいるというのだから仕方がないだろう。

 

「……ど、どうしよう、夏凜さん…!」

 

「今度は何よ!」

 

「夏凜さんの運勢…死神のカード…!」

 

「勝手に占って不吉なレッテル貼らないでくれる!?」

 

「樹ちゃんの占いはかなり当たるらしいので注意した方がいいかと…流石私の友達です」

 

「余計タチが悪いわ!」

 

ただならぬ様子を見せる樹に自分のことのように自慢げに話す小都音に、ただただ夏凜のツッコミが炸裂する。

流石にこれ以上はないかと思われたが---

 

 

 

 

「や、やばい…夏凛……!」

 

「次から次へと何!?」

 

「手がベタベタする……!」

 

「知るかぁー! 手洗って来ればいいだけでしょ!」

 

やはり紡絆は空気を読んで、正論で返された。

それはさておき深呼吸を数回、何とか精神を落ち着けた夏凜がみんなの前で改めて宣言する。

 

「と、ともかく! あんた達はこれから私の監視の元、バーテックスとスペースビーストの討伐に励むのよ! いいわね!?」

 

「部長がいるのに?」

 

「私はね、部長よりも偉いのよ」

 

「ややこしいなぁ…」

 

話を無理矢理区切った夏凜は割と無茶苦茶な理論を喋るが、誰も特に返事することなく、友奈は首を傾げていた。

 

「つまり俺も偉い……?」

 

「それはないから安心しなさい。で、事情は分かったけど学園に居る限りは上級生の言うことを聞くものじゃない? 正体を隠すのも任務の中にあるでしょ?」

 

夏凜が偉いなら自分もそうなのではとでも思ったのか、紡絆の発言は風によってバッサリ切られると部長らしい言葉で諭す。

 

「ふん…まあいいわ。どうせ御役目を完遂したら終わりなんだしそれまでの我慢ね」

 

「じゃ、これからも一緒に居るってことだろ? それなら一緒に頑張っていこうぜ!」

 

「夏凜ちゃん、一緒に頑張ろうね!」

 

「が、頑張るのは当然でしょ! せいぜい、私の足を引っ張らない事ね! 特に紡絆!」

 

「えぇ……なんで俺ぇ…?」

 

照れたように頬を僅かに赤めると、夏凜は紡絆や友奈から逃れるように後ろを向いてごまかすような棘のある言葉を呟いた。

まっすぐ、純粋な好意に弱いのだろう。

言われた本人は訳分からないといった表情だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュンっといった(かぜ)を切る音が聞こえる。

ここは有明浜。

倒れていた紡絆を夏凜が発見し、保護した場所---すなわち、彼と彼女が初めて出会った場所だ。

二刀の木刀を手に持ち、夏凜がまるで踊るように木刀と体を動かすと、(かぜ)を切る音だけが響く。

その様子は慣れており、いつものやっている、日課のような動きだった。

 

「こんな買ってどうするの?」

 

「夏凜に作ってるんだよ。あいつコンビニ弁当しか食わないからさ。あんな動いてたらお腹空くもんだろ?」

 

「お兄ちゃんが言っても凄く説得力がないんだけど……」

 

「飯食うの放棄してたら胃袋小さくなってたからな…」

 

はぁ、と軽い息をつきながら荷物を持つ紡絆は遠くから夏凜を見ていた。

小都音も同じく視線を動かして見ているが、そこまで興味はなさそうだった。

彼らがいる理由は、本当は友奈たちにうどんを食べに行かないかと誘われていたのだが、自ら断ったのである。

紡絆が断ると、当然小都音も行かないわけで何処に行くか気になったため、来たというわけだった。

 

「時々遅かったり別の匂いするなーと思ったら三好さんだったの?」

 

「ん、そうなる。これでも命救われたし、一人で食べるより複数で食べた方が良いしな。それに知り合いだった俺が仲良くなれば勇者部でも過ごしやすくなるかも。嫌か?」

 

「別に良いけど、それで済むならいいんだけどね……友達で」

 

はぁ、と今度は小都音がため息を吐いた。

似たような動作を短時間でやるのは、流石兄妹と言うべきか。

妹の方は意味が変わるが。

 

「んん? どういうこと?」

 

「んーん、なんでもなーい」

 

意味が分からずに首を傾げる兄を見ながら、小都音はそっと肩をくっつけて寄りかかる。

ますます意味がわからなそうにしているのだが、説明されそうにないと知ると諦めて、紡絆は終わったであろう夏凜に声を掛けることにした。

 

「おーい! 夏凜ー!」

 

紡絆は荷物を片手で持つと手を振って自身の場所をアピールしながら大声で呼び掛ける。

すると夏凛が驚いたような表情をしながら、近づく。

 

「ッ!? な、なんで居んのよ!?」

「や、いつも家行ってるけど行く途中で見つけたし。どうせコンビニ弁当で済まそうとしてたんだろ? だから今日も俺が作ろうかなーと」

「う……別にいいでしょ。何度も言ってるけどいらないわよ」

「まあまあ、ちゃんとした方がいいじゃん。な?」

「それはそうだけど…」

「じゃあけってーい! 面倒だから決定! 拒否する権利は毎度の事ながらない!」

「どうしてよ!?」

「面倒だから」

 

雑い決定事項を呈示する紡絆だが、もし今夏凜が理由を聞いても同じことを繰り返すbot化すだろう。

そこで黙って紡絆の腕を抱いていた小都音が口を開く。

 

「三好さん、私たち買いすぎたんです。このままだと残りの分は捨てないといけないので……ダメでしょうか?」

 

「え、いy---むぐぅ」

 

嘘を付かない紡絆らしく余計なことを言いかけたが、小都音が思考を読んだのか紡絆の口を抑えて喋らせず、夏凛に向かって言っていた。

 

「いや、でも……」

 

「私話したいこともありますし、別に全然気にしませんよ? 兄さんがもとより作ってたみたいですし、お節介とでも思って。その、どうしても嫌だって言うなら悲しくなりますけど……」

 

「う……っ」

 

暗い表情を作る小都音に、何故か慌てたようにどうすればと手をバタバタする紡絆が居るが、流石の夏凛も親切感と好意で言ってくれるのだと

分かるからかバツが悪そうな表情で髪を掻くと、ため息を一つ零す。

 

「分かった、分かったわ。まったく、私が悪いみたいになるでしょ。ほんと、バカでおかしなやつ」

 

「……?」

 

きょろきょろと紡絆が周りを見渡し、そんな人物は居ないとでも言うように首を傾げていた。

 

「ありがとうございます。それじゃ兄さん、きょろきょろしてないで行こっか」

 

「あ、そうだな」

 

未だに自分だということに気づかずに周りを見ていたのか小都音に言われて紡絆は頷いて、首を傾げながら夏凛の家がある場所へと歩いていった---

 

 

 

 

 

 





〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
お節介でお人好しが全面的に出ているが、平常運転。
しかし変身せずにバーテックスに突っ込んで行ったのは間違いなくアホ。

〇三好夏凜
ようやく偽名だと言うことを知ったが、流石にドヤ顔で言われてイラついた。
なお、紡絆のことはバカだと既に前から思っている。
ただ彼女にとって、厳しい言葉を投げかけても諦めることなく絡んでくれる存在は本当は有難いのかもしれない。
ちなみに実は男がいることは大赦から聞いていたが、姫矢(紡絆)だと知ったときに体揺らした理由は心配も含まれている。
妹が生きていた件は紡絆に聞いてるので、特に驚きはなし。

〇天海小都音
学校では紡絆が来るまで基本的には樹ちゃんと行動して話をしている。
が、やはり外でも紡絆に対する愛情が表に出たり出なかったり。
ちなみに気になる方もいると思うので、改めて正確に情報を少し挙げます。
青髪(色合い的には水色に近い)にセミショートの(といっても長さ的に一部はお腹くらいまではある)女の子。
年齢は樹ちゃんと同じ。
身長:148cm(樹ちゃんと一緒)
体重はk■■■■
胸はある。胸は意外とある(多分BかCの間くらいでCまでは流石にない)。
容姿の元はエロゲキャラから。

〇ドラゴレイア
カプリコーン・バーテックスとラフレイアの融合型昇華獣。
元ネタは古代ギリシア語の山羊、ドラゴスからだが、ネーミングセンス皆無で泣いた。
それはともかく、紡絆はまだ手を残してるのではと推測しており、現実世界に大きな悪影響が出ることからメタフィールドを貼らない限り、撃破不可能な敵。
ウルトラマンと勇者に対する、対抗策を身につけてきた敵とも言えよう。
現在把握している能力は物質を炭化させる猛毒の花粉と毒霧、毒霧という気体の凝固。
背中から生えている触手のようなイカみたいな脚
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