【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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やる気は全然あったというか感想や評価のお陰でありすぎて四万文字超えるということが起きたので分けました。戦闘シーンだけでどんだけ文字数取ってんだよ…ということで戦闘は次回で。
あっ、そういえば作者はギャラファイY〇uTube待ち勢ですがシン・ウルトラマンは見ました!
続編のシン・ウルトラマンネクサスはまだですかね?(ない)
で、感想としては作者はめっちゃ好みで映画館で見ることをおすすめします。演技力高すぎるッピ!
それとさ……思ったんだ。シン・ウルトラマンのラスボスやばくて、この小説、難易度まだ低くないか?
ということで、次回ほぼ完成してるから早いと思います。
期待してて♡




「-誕生日-サプライズ」

 

 

◆◆◆

 

 第 19 話 

 

-誕生日-サプライズ 

 

 

 

鷺草(サギソウ)

芯の強さ

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

任務に着くにあたって与えられたマンションの一室。

夏凜はその居間にあるソファーの上にその身を投げ出していた。

視線の先にある室内照明を煩わしく感じ、腕で目を守りながら横目で忌々しそうな視線をとあるものに向ける。

本来他人にも自分にも厳しい夏凜がここまでだらけた姿を見せるのは珍しいのだが、その原因は親の仇のように見つめる先にあった。

そこにあるのは、やさしいおりがみの折り方と書かれた本と折り紙。何個か作ったであろう鶴であり、精神的な疲れから彼女をこんなふうにさせていた。

 

(私、なんでこんなことしてるんだか……)

 

別に風に押し付けられたわけでも、紡絆に言われたわけでも、勇者部の誰かに言われたわけでもない。

部活が解散になった後、帰り道で見かけた本屋で夏凜が自ら自主的に購入したものだった。

引き受けたからには完璧にやり遂げる必要があるからなどと、心の中で誰に聞かせるでもない言い訳をしながら手に取り、必要以上に周りの目を気にしながら家に持ち帰ってきたのだ。

折り紙など最後にやったのはいつだったかは覚えていないが、まぁ子供のお遊び程度のものそんなに大したものではないだろうと高をくくって、適当に目についたページを参考にして作業を開始してから数分後。完成した作品の出来栄えは、彼女の慢心を打ち砕くのには十分なレベルだった。

そんな馬鹿なと一瞬茫然とした夏凜だったが、先ほどは流し見程度に読んでいた教本に慌ててかじりつき、何が悪かったのか振り返りながら二、三体目と制作し、先程鶴を作り終えた。

その時に、ふと真剣に練習してることに気づいてバカバカしくなったのだ。

はっきり言って、これは任務とは関係ない。

確かに紡絆が言っていたような勇者であるならば、これも必要な任務のひとつかもしれない。

しかし彼女が与えられた任務は勇者とウルトラマンと協力して人類の敵であるバーテックスとスペースビーストの討伐。

鍛錬を怠ってまで練習することでもないし、こんな周期が乱れていていつ来るかわからないって非常時にレクリエーションやら部活やらしてる暇なんてないとも思っている。

 

(そうよ。別にこんなことする必要なんてない)

 

夏凜にとって、ここに来てから---正確には紡絆と出会ってから全てが初めてのことばかりだった。

いらないと言っても厳しいことを言っても悪意ひとつ感じさせない純粋な善意でお節介を焼く紡絆のような人間とは会ったことないし、プールの時のようにバカみたいに賞賛してきた友奈のような脳天気な人間とも会ったことない。

その他にも個性的すぎる勇者部のメンバーたちのような存在なんて同じく会ったことがない。

だが馬鹿みたいに騒いで、笑顔を浮かべて、危機感を全く感じさせない姿に夏凜はどうしたらいいのか、何をすればいいのか分からなかった。

特にグイグイくる二名に対してどう対応すればいいのか。どう向き合えばいいのか。何もかも分からない。

ただひたすら、心が掻き乱されるだけ。

しかし勇者であろうと、馴れ合いをせずに役目に全うしようとしても紡絆は、勇者部がそれを決して許さない。

ただ、ただそれでも---

 

「私は完成型勇者なんだから、折り紙くらい出来て当然じゃないと」

 

少しくらいは、ちょっとくらいは良いかもしれないと思ってきている自分を誤魔化すように作業に没頭する。

もし上手く出来れば、あの紡絆のことだから夏凜のことを褒めるだろう。紡絆だけではなくみんなが褒めるかもしれない。

そのようにまた褒められるかもしれないと考えてしまったところで、夏凜は首を横に振って折り紙と無心で格闘するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日である六月十二日。

夏凜は学校が休みの日だというのに、一人学校へと来ていた。

自転車置き場に自転車を止めるといつもなら大勢人がいる学校に辿り着く。

今日は休日なのもあって、普段はありえない静謐さを湛えた校舎だが、その中をちょっとだけ新鮮な気持ちで夏凜は歩いていた。

勇者部の部室を目指して覚えた道を歩き、部室の目の前まで辿り着くと普段のバカ騒ぎが嘘のように静かだった。

 

「来てあげたわよ…!」

 

そう言って部室の扉を開けると、部室内の電気は消えており、人の気配がひとつもしない。

 

「……誰もいないの?」

 

一応声を掛けるが、何も返ってこない。

つまりは誰もいないということになる。もし誰か居れば、何かは返って来るだろう。

 

「早すぎたかしら……」

 

そう思ってスマホを取り出して時刻を見ると、9時45分。

本来の集合時間は10時00分であり、まだ15分前だ。

流石に5分とかならともかく、15分は早すぎたかと夏凜は部室で待つことにした。

しかし、ただ静かに座って待つこと15分。

携帯の時刻は10時00分を表示していたが、やはり、誰の気配もしない。

 

(だらしない……)

 

人を呼んでおいて自分たちが遅刻とはどういう了見なのか、常識的に考えても早く来るべきだろう。

そう思いながら扉の窓から廊下を覗くが、誰かが走ってくることもなければ足音も聞こえない。

視覚からも何も捉えることが出来ず、ただただ時間が過ぎていた。

再びスマホの時刻を見ると、表示は10時30分。

 

「これ、ひょっとして……」

 

そこでふと、気がついたように鞄の中から昨日貰ったレクリエーションの予定表を夏凜は取り出して確認する。

当日の予定:

10:00分……現地集合。なるべく早めに準備を済ませておくこと。と書かれていた。

 

「現地……しまった。私が間違えた」

 

そう、誰も来ない理由は現地集合。

そもそも集合先が違うのだから誰も来ないのは当然であり、あのお人好し連中がそんな揶揄うために夏凜を別の場所に呼び出したり冷やかしのために夏凜にだけ別の集合先を指定していたりするわけではなく、純粋に夏凜がしっかりと読んでなかっただけということになる。

 

「えっと……電話しておいた方がいいわよね」

 

独り言を呟きながら、間違えたのなら連絡か一言メッセージでも飛ばすべきだろうと夏凜はスマホの画面を操作しようとして、突如電話が鳴り始めた。

 

「わわっ、この番号……結城友奈!? あ、あっちから掛かってきた……! えっと、ええっと……」

 

人間、突然のことにはパニックになるもので、ただ電話に出るだけだというのに夏凜は慌ててしまう。

そもそも夏凜は電話というものをなかなかする機会がなく、唯一大赦に報告するべくスマホでメールしているくらい。

だからこそ、慣れてない夏凜はパニックのあまり電話に出るのではなく、拒否のボタンを押してしまった。

 

「あ……切っちゃった……」

 

気がついて後悔しても、もう遅い。

既に電話の着信音は消えており、出ることは叶わない。

ただしそれは向こうから来ることがないだけで、こちらからは可能ということ。

 

「か、かけ直した方がいいわよね? こういう時はなんて言って……えっと、えっと……」

 

普段の様子からは考えれない夏凜の姿だが、こんな出来事を経験したことのない者からすれば、分からない。

夏凜はそれに当てはまっているため、電話をかけ直した後になんて言えばいいのか分からなかった。

 

「……何をやってるの私は……。

そうよ、関係ない。別に部活なんて鼻から行きたかったわけじゃないし」

 

スマホを見て、我に返ったように夏凜は何処か自分自身に納得させるように、言い訳するように呟く。

 

「そうだ、神樹様に選ばれた勇者が何を浮かれてるのよ。私はあんな連中とは違う……真に選ばれた勇者」

 

今更児童館に向かったところで、学校から児童館までの時間を含めると部活出来るのは少しくらいで、遅すぎる。

なによりも行く気が起きず、夏凜はスマホの電源を落として部室を出ていく。

自転車置き場へ向かい、自転車に跨ると夏凜は一度家に帰ってからいつもの浜辺に向かった。

木刀を両手に、いつもの鍛錬を行う。

決して怠ることなく、真剣に、集中して忘れるように。

 

(紡絆を除いて、あいつらは所詮試験部隊。でも私は違う。

私は期待されているのよ。

だから、普通じゃなくていいんだ---)

 

自分と勇者部は違うと、切り離すように夏凜は夕方になるまで鍛錬を続ける。

部活、友人との馴れ合い、遊び、それらの普通というものはいらないと己に言い聞かせるように。

そして夕方になると、暗くなる前にコンビニに寄って夜食を買い、コンビニの袋を置いてランニングマシンで脚と体力作りに勤しむ。

 

「……滞りなし」

 

特に物事が進まなくなったりせず、いつも通りであることを理解する。

何らかの不調や障害が起きることも無く、いつもと何ら変わらぬ毎日。

ただ学校へ行って、鍛錬をして、ご飯を食べて、後は寝るだけ---とご飯を食べて報告して寝るというスケジュールを夏凜が頭の中で組んでいると、突如としてピンポーンというインターホンの音が鳴った。

ランニングマシンを止めつつ何か頼んでいたかと考え、何も頼んでないことを思い出すとピンポンダッシュかイタズラだろう、と出ないことにした。

可能性としては大赦の可能性はあるが、わざわざメールもなしに来るはずがないので、間違いなく違う。

だとしたら、やはり関係ないだろうと夏凜は判断して---

 

「ひぅ……ッ!?」

 

何度もインターホンを鳴らす音に、流石にびっくりした。

誰かが連打してるのだろう。一向に止まる気配がなく、うるさいし少し怖い。

そのため、いい加減うざったらしくなった夏凜は近くにあった木刀を手にして、今も鳴らし続ける不届き者を撃退するための武器を手に走って勢いよくドアを開けた。

 

「誰よ!?」

 

「ぐふ!?」

 

ガコン、という痛そうな音が響き、誰かの悲鳴が聞こえた。

夏凜が目を開けると、木刀を向けられて驚く勇者部と、咄嗟に真剣白刃取りをしようとして失敗し、頭を抑えながらぜぇぜえと息を切らせつつ倒れ伏せている紡絆を介護する小都音の姿があった。

正確に説明するならば、ドアの前に立っていた紡絆が、ドアを開けられた際に頭を少しぶつけ、怯んだ直後に木刀が綺麗に当たったのだが。

 

「あ、あれ……あんたたち……」

 

「あ、あんたねぇ、何度も電話したのになんで電源オフにしてんのよ? それに紡絆が殺られたし!」

 

「い、生きては……はぁ…ま、す……」

 

夏凜に指を指して言う風は、次に倒れた紡絆に指を指しながら夏凜を見ると、夏凜も同じく紡絆に視線を送り、一瞬だけ申し訳なさそうな表情を浮かべたが、気を取り直すようにすぐに表情を引き締めた。

それにしても、あの体力に溢れてる紡絆が息を切らすとは、一体どういう状況なのか。

 

「そ、そんなことより何!?」

 

「何じゃないわよ。心配になって見に来たの。特に紡絆なんて夏凜を探すために学校に行ったり浜辺に行ったり合流時間ギリギリまで走って探してたのよ? メールも返って来ないから心配だーってね」

 

「心配…? あっ……」

 

言われて気づいたのか、気まずそうに夏凜が目を逸らす。

何の連絡ひとつも寄越さず、しかも電話は拒否。

メールに至っては返信もなければメッセージの既読もつかない。

それなら何かあったのかと思って、紡絆は心配で走り回ったのだろう。

ちなみに流石にレクリエーションを放って探すのは出来ないため、紡絆以外に家の場所を知っている小都音が案内を、紡絆が探し回る役目を受け持って、合流時間となったら紡絆が合流して今に至る、というわけだった。

 

「よかったぁ……寝込んでたりしてたんじゃないんだね」

 

「え、ええ……」

 

「じゃ、上がらせてもらうわよー」

 

安堵の息を吐く友奈に対して、戸惑った状態で声に出す夏凜に、風はそう言いながら本人を素通りして許可もなく家の中に侵入した。

さらっと樹は風の後ろについて行っている。

 

「ちょ、ちょっと!? 何勝手に上がってんのよ!?」

 

「いてて、はぁ……水飲もっと」

 

「流石に私も今のは擁護出来ないからね、兄さん。木刀はともかくドアは絶対回避できたんだから」

 

慣れた様子で風と樹の後ろから紡絆と小都音も入っていき、その紡絆たちの後ろを夏凜が慌ててついていって最後尾に友奈と東郷が入る。

その時に友奈が鍵はちゃんと閉めたようだ。

 

「はー殺風景な部屋……」

 

「ど、どうだっていいでしょ!」

 

「まあいいわ。ほら、座って座ってー」

 

「な、何言ってんのよ!?」

 

入って開幕一言がほとんど何も無い紡絆以上に何も無い部屋に対するコメントだったが、まるで自分の部屋のように言い出した風に夏凜が当然のことを言う。

 

「これすごーい! プロのスポーツ選手みたい!」

 

「勝手に触んないでよ!」

 

ランニングマシンの存在に気づいた樹が珍しい物を触るように撫でくり回してるところを、夏凜が叫ぶように発する。

 

「わああああ……ほとんど水だ!」

 

「んく、ごくごく……ふぃー。まぁ俺が見た時よりかはマシだぞ? 最初もっと酷かったし、調味料に至っては買ったの俺だしな」

 

「三好さんって基本コンビニ弁当らしいですからね、私も一回お邪魔しましたけど驚きました」

 

「確かにゴミ箱の中は弁当の容器や煮干しなどがあるわね」

 

「勝手に開けないで! 飲まないで! 漁らないで!」

 

勝手に冷蔵庫を開ける友奈と適当に水を取って飲み干した紡絆に、止めるつもりは無い小都音とゴミ箱の中身を覗く東郷といった様子で自由に散策されていた。

 

「やっぱ買ってきてよかったわねー。流石私」

 

「なくても作ればいいですけどね、材料はまだ残ってますし明日くらいは持つか……どうだろ」

 

「腐ってないし匂いも見た目も大丈夫だからやれるよ? 作る?」

 

「やるなら私も手伝うわ」

 

「なんなのよ……」

 

冷蔵庫の中身やらキッチンの棚などを開きながら確かめていると、小都音はやる気満々に聞いて東郷も乗っていたが、夏凜の言葉が聞こえて一瞬鎮まる。

 

「いきなり来て何なのよ!」

 

夏凜からすると、当然のこと。

勝手に家中を散策されて、勝手に物を漁られて、勝手に家の中に入ってきて、勝手に決めたり自由にしている。

もはや行かなかったことについての嫌がらせなのかと思うレベルで夏凜は彼ら彼女らの行動が理解出来なかった。

 

「友奈」

 

「うん。あのね---」

 

表情を和らげた紡絆が友奈に呼びかけ、それに答えた友奈は何らかの箱をテーブルの下から取り出す。

いつの間にか知らぬ間に隠していたようで、夏凜が引っ掻き回されている時に自然と隠したのだろう。

 

「ハッピーバースデー! 夏凜ちゃん!」

 

そう言って友奈が太ももに乗せた箱をパカッと開けると、そこには純白のケーキに彩りとして花を作られているいちごがたくさん乗っていた。

中央には『お誕生日おめでとう』と書かれたプレートがある。

 

「ほら、誕生日おめでとう、夏凜」

「おめでとうございます、三好さん」

「夏凜ちゃん、お誕生日おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう夏凜」

「おめでとうございます、夏凜さん」

「……えっ?」

 

次々と投げ掛けられた、祝辞に戸惑う夏凜。

まるで予想してなかったと言わんばかりの様子で、ただ戸惑いと疑問が夏凜の頭の中に浮かんだ。

 

「ど、どうして……?」

 

「あんた今日誕生日でしょ? ちゃんとここに書いてあるじゃない」

 

夏凜の疑問に、答えを叩きつけるように入部届けの紙を風が見せる。

そこには生年月日欄のところに、神世紀286年6月12日と書かれており、日付は今日を指している。

 

「友奈ちゃんが見つけたんだよね」

 

「えへへ。あっ!って思っちゃった」

 

「……で、だったら誕生日会しないとなーって意見が一致したんだよな」

 

「歓迎会も一緒に出来るねって」

 

「ちなみにケーキは私と東郷さんの共同作なんですよ。なので期待しておいてください」

 

そう言いながら、コーンハットを夏凜以外全員が被っていた。

なお、紡絆だけはコーンハット被った瞬間にそこの定位置は自分のだと言わんばかりに牛鬼が足蹴りで弾き、被っているだけにかぶりついた。

 

「本当は児童館で子供たちと一緒にやろうと思ってたの」

 

「サプライズとして用意してたんですよね」

 

「だから黙ってたんだけど……」

 

「当日の楽しみとして、メインディッシュとしてさ」

 

「そうそう。でも当のあんたが来ないんだもの。焦るじゃない」

 

ネタばらしを聞いて、喋ることなく呆然と夏凜は聞いている。

まさか自分の知らないところでそんな大掛かりなサプライズを用意されていたなんて露にも知らなかったのだから。

 

「家に迎えに行こうとも思ってたんだけど…子供たちも激しく盛り上がっちゃって」

 

「この時間まで開放されなかったのよ。ごめんね」

 

「あ、でも紡絆先輩だけは子供たちから脱出したので探し回ったみたいです」

 

「兄さん子供にも大人気だったから、逆に苦労させられたけどね…」

 

「それは純粋にすまん」

 

「ふふ。紡絆くんは愛されてるもの。居なくなって泣く子が居たくらいなんだから」

 

紡絆の性格から考えて、子供には間違いなく好かれやすい。

たとえ独りでいる子供が居たとしても、輪に入れられるだろう。喧嘩していれば、綺麗に終わらせる。

もし輪に入れられるのが嫌だとしても、喋るのが苦手な子でも紡絆ならどうにかする。

なぜなら、それが紡絆なのだ。

ただまぁ、そんな大人気な紡絆が突然居なくなれば盛り上がってる子供やまだ遊び足りない子供は不満になるわけで、そこは勇者部の面々が苦労させられた部分なのだろう。

 

「さっきから黙ってるけど、どうかした? ひょっとして自分の誕生日を忘れてた?」

 

「ブーメランって知ってます?」

 

明らかに部員たちに何も言わなかった風が言えることではないので、紡絆が呆れたように風に告げるが、彼女は一瞬目を逸らしただけだった。

自覚はあるらしい。

 

「………アホ、バカ、おたんこなす」

 

「えっ、えっ?」

 

「おたんこなすは初めて言われた!」

 

「そこ!? まったく、夏凜ももっと他に言うことあるんじゃない?」

 

そんな中、今まで黙っていた夏凜が口を開いたかと思うと、暴言の嵐だった。

それを受けて特に困惑することもダメージを受けることもない紡絆は言われ慣れているというか、別の反応を一人だけしていたが。

 

「…た、誕生日会なんてやったことないから……なんて言えばいいか分かんないのよ……!」

 

「……そっか。じゃ、改めて誕生日おめでとう、夏凜」

 

顔を赤めながら、そんなことを言った夏凜を笑うことも無く、微笑ましそうに勇者部が見つめる中を代表して紡絆が優しい声音で再び祝辞を投げかけた。

それに照れた様子を見せながら夏凜の誕生日パーティが始まる---。

 

 

 

 

◆◆◆

 

500:名無しの転生者 ID:VS/1X/DAj

いやーなんかいいよね

 

 

501:名無しの転生者 ID:hrCn9lTMe

あのケーキが羨ましい。場所代われ

 

 

502:名無しの転生者 ID:unzr8cxlW

>>500

分かる。

やっぱ日常なんだよなぁスペースビーストは帰ってもろうて

 

 

503:名無しの転生者 ID:JlH898JTi

こんな幸せな空間をぶち壊そうとする連中がいるってマ?

 

 

504:名無しの転生者 ID:U47TqRjWS

バカな、イッチが有能でしかねぇ…!

 

 

505:名無しの転生者 ID:l3uYQLfA+

いいぞ、その調子で夏凜ちゃんを仲間に引きずり込め

 

 

506:名無しの転生者 ID:6+PL3mEM0

誕生日会なんてやったことない、か……。うっ……

 

 

507:名無しの転生者 ID:UmbkWDiRM

>>506

おいバカやめろ

 

 

508:名無しの転生者 ID:AlfYJCUwq

誕生日会…約束…一人……うっ、頭が

 

 

509:名無しの転生者 ID:fDCwfkwbt

>>506

はは、友達? 恋人?

いらねーよ、俺には(二次元の)嫁がいるから……

 

 

510:名無しの転生者 ID:w7i0Lyat+

>>508

何時間も待ったのにな……

 

 

511:名無しの転生者 ID:RKTTrflws

ここのスレ闇深すぎんだろ……

 

 

512:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

俺でもやったのは十人くらいでかなぁ

 

 

513:名無しの転生者 ID:9S4E9HRUZ

やってんじゃねぇか!

 

 

514:名無しの転生者 ID:wEMUGYrxZ

こいつ、馬鹿な癖に出来る……!

 

 

515:名無しの転生者 ID:XjRITsWDA

そもそもニートのお前らにネット以外友達なんてあんまいねーだろ。

俺も全く居ねぇわ

 

 

516:名無しの転生者 ID:cIzdJwwcV

>>515

それ

 

 

517:名無しの転生者 ID:SmgvBm8+j

お前らの誕生日なんてどうでもいいんだよなぁ

 

 

518:名無しの転生者 ID:TfXPpXc5x

問題は夏凜ちゃんを引き込めるかどうかなんだよねー。戦力足りねぇもん

 

 

519:名無しの転生者 ID:aFUeCWvlh

あと純粋に夏凜ちゃんには勇者部の人と仲良くなって欲しい

 

 

520:名無しの転生者 ID:kIgRi6GIV

二割戦力。八割純粋に仲良くなって欲しいって感じ

 

 

521:名無しの転生者 ID:xizRZ4g9Q

今回もイッチならなんとかなるだろ、たぶん

 

 

522:名無しの転生者 ID:zUC1p3Ual

でも割とギリギリだからな、毎回

 

 

523:名無しの転生者 ID:GEMaDI8Sf

エナジーコア鳴る時もあったし、ジュネッス使えるようになってからは基本的にはコアゲージが毎回鳴った状態で勝利だからなぁ

 

 

524:名無しの転生者 ID:wHixIBJMi

この世界の難易度が可笑しい

 

 

525:名無しの転生者 ID:SG10y7A1i

とにかく、これからも仲良くしていて欲しいね

 

 

526:名無しの転生者 ID:3lOh2LvUs

ところでイッチはなにしてんの?

 

 

527:名無しの転生者 ID:s9+zFvSPY

そういえば、一人だけ誕生日会から抜けてるよな

いや、夏凜ちゃんはお手洗い行ったけど

 

 

528:名無しの転生者 ID:v5gGNw2D/

考えるのは戦闘のことより今だ。

で、結構なにしてんの?

 

 

529:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>526->>528

ん? ベランダで星見てる。

一応飲み物とお菓子はあるけど

 

 

530:名無しの転生者 ID:8mGxAVO0H

なんで星見るために抜けてんだよw

 

 

531:名無しの転生者 ID:lRYpGkeBD

時間帯的に見える時間だからね仕方がないね

 

 

532:名無しの転生者 ID:SLbScips0

四国しかない分、星見えやすくなってんのかな

 

 

533:名無しの転生者 ID:gxU66oQUl

今考えても四国しかないってやべぇな?

 

 

534:名無しの転生者 ID:0eoDkgBEc

バイオですら四国以外あるぞ

 

 

535:名無しの転生者 ID:kTGd5xMZ1

そもそも四国以外滅んでるとかマジなんすかね…実はウイルスってのは嘘でしたーかもしれん

 

 

536:名無しの転生者 ID:h0Dokad09

仮にあったとしてもビーストに滅ぼされてると思うけどな

 

 

537:名無しの転生者 ID:rqQMCdpgk

まぁまぁ、考えても意味ないし今はやめておこうぜ

 

 

538:名無しの転生者 ID:ZW2eCvB4L

不確定要素で話を進めるのは良くない……ん?

 

 

539:名無しの転生者 ID:LerqdwNaD

おっ、スチル回収イベントかな?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

あの後、誕生日会は滞りなく進み、コーラで酔っ払う風や夏凜が練習していたであろう鶴を発見した樹がそのことを言い、小都音が揶揄ったり、友奈が勝手に勇者部の予定と遊びの予定をカレンダーに書き込んだり、文化祭でやる出し物が演劇ということが確定したり夏凜も演劇に含まれたり、罰ゲームでパシらされた紡絆が買ってきた材料で東郷と小都音の手料理が振るわれたり等など、わいわい騒いで馬鹿みたいに笑い合うような、そんな時間が過ぎていった。

夏凜が一度お手洗いということで離席し、紡絆は体勢を変えながら見渡した。

 

「小都音ちゃん、これはもうちょっと醤油を足すべきかもしれないわ」

 

「なるほど……うどんの柔らかさはこれでいいかと。問題は出汁ですね。東郷さんのはもう少し甘くしたらベストかも知れないです。あっ、それと私もですけどこう、舌にピリッと少し来る刺激が欲しくなるかも……」

 

「ほんの少し辛味もいるってことね……これは練習して試すしかなさそう。でも小都音ちゃんと一緒なら自分でも気づけないことに気づけるし助かるわ」

 

「いえいえ、私の方こそ東郷さんから学べることは多いですし、兄さんの好みは意外と難しいですからね。基本何でも美味しい言ってくるので判断が……」

 

小都音と東郷は何やら料理の話をしていて、紡絆は料理は出来るが一般レベルなのでよく分からないということで、次に友奈と風、樹の方へ視線を向ける。

 

「演劇することを決めたの一歩前進だけど、やっぱり時間はかかるわね」

 

「物語を考えたり脚本書いたり衣装作ったり練習してセリフを覚えたり音楽を決めたり……やること多いね」

 

「忙しくなるけど、きっと楽しいよね、みんなで出来ることだし!」

 

どうやら三人は友奈のアイデアである文化祭の演劇について少し考えているようで、紡絆は皆が何をしているかを確認するとこっそりとベランダに向かって行った。

一人ではなく、一人と一匹。

頭に牛鬼を乗せたまま紡絆はベランダの手摺に手を置きつつ少し冷たい夜風に当たりながら星を見上げる。

 

「ふぅ……さて、と」

 

一息付き、ペットボトルとお菓子を室外機に置いて懐から取り出したものは、エボルトラスター。

決して落とさないようにぎゅっとしっかり握りながら、紡絆は口角を上げて星空を見上げていた。

まるで楽しそうに、年相応な子供のように。

 

「ウルトラマン……俺の知ってるウルトラマンは、M78星雲からやってきた光の巨人。君は何処から来て、何のためにこの地球に来たんだろうか……たまにさ、そう思うんだ」

 

星空を見上げたまま、紡絆は独りごちる。

彼の頭の上では牛鬼が首を傾げており、精霊には分からないのだろう。

 

「この地球は四国以外残ってないらしい。そんな地球に、君は来てくれた。はっきり言って、こいつらが居てもこの先の融合型に勝てるかは怪しいところだ」

 

紡絆らしくない、何処か後ろ向きな言葉。

こいつら、というのは優しく牛鬼を撫でたことから、精霊のことだろう。

ただそれでも、相手はひたすらに強くなっていっている。

ネクサスの力を学習し、成長し、対策し、勇者にすらも対策してくる。

 

「……でも俺は諦めたくない。最後の最後まで足掻いて、スペースビーストを倒して、みんなと、夏凜も含めた勇者部でこれからも生きていきたいって思ってる。

みんなの明日を守りたい、この想いは俺だけのもので、俺自身が出した答え---だから、これから先も厳しくなる戦いだと思うけど、ずっと俺に力を貸して欲しい。君が居なければ、俺は無力な人間だからさ」

 

変身すれば自分の意志とはいえ、ウルトラマンという存在に頼るしかない。

頼るしか出来ない自分を自嘲するような笑みを浮かべながらも、その瞳に諦めるという文字はない。

その瞳の先にあるのは、絶対に未来を掴み取るという輝きの光。

それに応えるように、エボルトラスターは人際強く返事するようにひとつ鼓動した。

 

「ありがとうな。それなら、俺も頑張らないと!」

 

明確な対応策がある訳でも、考えがあるわけでもない。

それでも、紡絆が居れば、ウルトラマンが居れば、勝率は上がる。

どれだけ脅威であったとしても、諦めなければ必ず勝てるのだ。

紡絆は負けて、惨敗して、故郷を失って、大切な人たちを喪って、それでも必ず二度目には勝っていたウルトラマンを知っているのだから。

 

「……紡絆?」

 

「ん?」

 

そんな時、ふと聞こえてきた声に紡絆は振り向いた。

そこには夏凜が靴を履きながらベランダに入ってきている姿が見えた。

夏凜はそのまま歩いて紡絆の隣に行くと、訝しげに見つめる。

 

「何してんの?」

 

「大したことじゃないよ。それより夏凜はいいのか? みんなと話すこと、あるだろ」

 

「別に。今は特にないし、みんな話してるのに一人いなくて、(かぜ)でカーテンが動いてたら気になるわよ」

 

「確かに何してるんだろうなーとは思うなぁ」

 

納得したように笑いながら言う紡絆と呆れたような表情をする夏凜だが、紡絆は気にせずに再び空を見上げる。

それを見て、夏凜も釣られるように星空を見上げた。

満天の星空---というわけではなく、所々に星が見える程度。

だが紡絆には何が見えているのか、先程と同じく楽しそうな様子で夏凜はよく分からなかった。

そもそも夏凜は星に詳しいわけでもないため、星があれば星がある。月があれば月が見えるという一般人と同じ感想しか抱かない。

互いに何も喋らず、何も行動せず、ただ星空を見上げるだけの沈黙の空間が貫かれる。

後ろから聞こえる騒音を後ろにしばし、暫くそのような無言の空間が辺りを占めていると、ふと紡絆が星空を見上げるのをやめてエボルトラスターに視線を変えていた。

それに気づき、同じく夏凜も紡絆の手に視線を移す。

 

「…それは?」

 

気になったのか、夏凜が疑問の声を投げかける。

紡絆の手にあるエボルトラスターのことだ。

 

「俺がウルトラマンに変身するためのアイテム、かな」

 

「そう、私たちにとっての勇者システムってわけね」

 

「そうなる」

 

詳しく説明すると長くなるため、簡易に説明すると迎えるのは沈黙の空間。

話すのが得意でもない夏凜は、残念ながら話題に乏しく、今の紡絆は珍しく自分から話題を振らない。

エボルトラスターを見ているだけで、何を考えているのかすら分からなかった。

 

「………」

 

「………」

 

話すことがなく、互いに何も言わない状況に耐えられなかったのか、夏凜が何処か悩ましげな、苦悩を表に出しながら悲哀感を漂わせて再び口を開く。

 

「……ねぇ、紡絆。悪いけど私の話を聞いてくれない?」

 

「……ん? いいけど」

 

そう言われると、流石にエボルトラスターを見続けるのは失礼だと思ったのか紡絆は手摺の部分に背中を預け、首は上にしながらも目線は夏凜を見ていた。

逆に夏凜は腕を手摺に置いて交差し、顔を真っ直ぐ遠いものを見るように街並みを見つめる。

 

「……私にはね、年の離れた兄貴がいるの。その兄貴は勉強もスポーツもなんでもこなせる完璧超人で、人望も厚くて認められていた」

 

ポツポツと夏凜が語り始めたのは、紡絆の知らない夏凜の話。

会った時からの夏凜は知っているが、紡絆は過去の夏凜は知らない。

 

「親の期待も、周囲の期待も賞賛も全部その兄貴に向けられていてね、褒めてもらったことはおろかロクに優しい言葉をかけてもくれなかった。一番勉強が出来ても、運動が出来ても、ね。むしろ兄貴の邪魔をしないように言われたくらいよ。

それでも兄貴は褒めてくれていたけれど、それさえ皮肉や憐れまれているようで気に入らなくて悔しくて」

 

「……そっか」

 

自嘲するような笑みから、悔しそうな表情に。

紡絆には『大切にされてるんだろうな』という何処か他人のような考えで家族と最初は接していた人なので、正直真反対ともいえる。

 

「そんな兄貴でも絶対になれないのが、勇者。

本来、勇者となる為には過酷な訓練が必要なのよ。それに選ばれる必要があるから候補であるライバルだって大勢居た。

私は自分を高めて勇者になることが最重要で……勇者になることだけが、私の目的で。私は勇者候補生として健康面を気をつけながら訓練して、努力し続けて掴み取ったからこそ今ここに居るの」

 

「………」

 

「ライバルたちの中でも、私より努力した人が居たわ。健康面に気をつけて、馴れ合いを捨てて、慣れてない二刀流で私を打ち負かして、それでも選ばれなかった子も居た。勇者になるために文字通り全てを捧げて。

だから……私は---」

 

「その先は言わなくていい。完成型に拘ってたのも、夏凜の態度にも合点がいったから。

夏凜はそいつらの想いも背負って、勇者として戦わなくちゃいかないから、か。だから馴れ合いを拒んでたんだな」

 

馴れ合いを拒んでた点は否定しないのか、夏凜は目を逸らす。

紡絆は横目でそれを見ると、ふぅ、と一息吐く。

そのまま紡絆は夏凜に向き直り、それに気づいた夏凜も紡絆の方へ向いた。

 

「夏凜はさ、勇者として居るならそれは正しいことだと俺も思う。ウルトラマンだって変身者である俺の身体が追いつかなかったら強さを発揮出来ない。勇者だって修行した方が素の実力も上がると思う」

 

「まぁ……それはそうでしょ」

 

「でも勇者部は何もお役目のために生きて、部活してる訳じゃないんだ。

お役目は大切だけど、そもそもの問題として俺も夏凜も、勇者部のみんなだってまだ学生だろ。人生にそう何度も経験することのない学校生活。それを謳歌するのも俺たちにとって大切で、お役目のことばかり考えていても心が押し潰されるだけだ。

別に鍛錬を否定するわけじゃなくって、俺はそこは大切にすべきだと思うけどな」

 

どこか優しげな声音と面持ちで紡絆はみんながいるであろう場所を見つめる。

カーテン越しなために見えないが、今も騒がしく何かを話しているだろう。

 

「……それは……」

 

「誰かの笑顔がいい。誰かの力になりたい。誰かに喜んで欲しい。みんなが幸せでいて欲しい。

この笑顔を守りたい。友達を守りたい---だから勇者部は戦う。だから勇者部はバーテックス相手に戦ってこれた。スペースビーストと戦ってこれた。勇者部の根本的な強さってのは、そこなんだ」

 

真剣な表情で紡絆が語る。

勇者部が今まで戦ってこれた理由を、負けなかった理由を。

一人では勝てなくても、二人なら、二人で勝てないなら、三人で。

そうやって繋がれた絆が彼らに力を貸す。

どんな強敵にも負けない強さを授ける。

 

「守りたい思い…友情、か……そう、それがあんたたちが戦ってこれた、今も戦う理由なのね」

 

「夏凜の通りお気楽集団かもしれないけどさ、確かな勇気を持っている。今までも、これからもずっと勇者部の絆は途切れさせない。誰にも壊させない。

みんなを守るためにお役目をこなす---そしてその中には、夏凜も居るんだ」

 

「わ、私も……!?」

 

理解したように頷く夏凜だったが、紡絆の言葉に驚いたように声を上げた。

そんな紡絆は体を街の方へ向け、手摺に腕を置きながらただ前を見つめる。

 

「そう、俺は夏凜に期待してる。頼りにしてる。褒められる部分も多々ある。誰も期待してない? 賞賛してくれない? 

それはもう終わりだ。これからは俺が、みんながその感情を向けることになるからな。

それはもう、何処までも大変だぞ?」

 

これから先のことを考え、紡絆が夏凜に顔を向けて笑いながら告げる。

何処までも騒がしくて、何処までもお人好しで、何処までも忙しくて楽しくって、それはそれは、とても大変な日々になるだろう。

それを考えたのか、夏凜は僅かに頬を引きづらせた。

 

「夏凜はもうひとりじゃない。俺たちがいて、夏凜には勇者部(ここ)という居場所があるんだ。

だからさ、俺は友達として仲間として、夏凜のこと凄く頼りにしてる。

これからもよろしくな!」

 

一度目を伏せた紡絆は、体を夏凜に向けながら満面な笑みで彼女に手を差し伸べる。

一方で、彼女はその手と紡絆を交互に見ていた。

 

「……やっぱりあんた達は馬鹿よ。他のやつ等の事ばっかり考えて、別に望んでもないのにそんなこと言って」

 

「望む望まないじゃなくて、俺がやりたいから、俺が言いたいから言ってるだけだからな。それとも、夏凜は嫌か?」

 

眉を下げ、残念そうな表情を僅かに浮かべる紡絆だが、夏凜はため息をひとつ入れると、何処か表情を和らげていた。

 

「……ふん。ったく、しょうがないわね。そこまで言うならやってやろうじゃない。あんたたちだけじゃ頼りないから、この完成型勇者である私が力を貸してあげるわ」

 

言葉では偉そうな言葉だが、夏凜は頬を赤めながら紡絆の手を取った。

それに気づいてるのか、照れ隠しだということを察したのか紡絆は笑い---

 

「おう、頼りにしてる」

 

ただそう返事して、夏凜は困ったように、照れたように顔を逸らした。

 

「そ、そういえば、紡絆の戦う理由とかは聞いてないんだけど?」

 

誤魔化すように夏凜はふと思ったことを話として振る。

実際、紡絆が話したのはあくまで勇者部であって紡絆自身とは一言も言ってない。

 

「あー夏凜も話してくれたし俺だけ話さないのは狡いか…。ただ俺の場合話せることがないんだよな。

俺、失ったあとの約二年間の記憶しかなくってそれ以前の記憶が微塵たりともないんだ」

 

「それは妹の方から聞かされたわ」

 

「そっか。まぁ戦う理由って言われてもな……守りたいと思った。

この街並みも世界も、大切な人たちも、ただそう思った。だから俺は戦う。

光を宿った理由は分かんないけど、かけがえのない日常を、みんなの毎日を守りたいと思ったから、かな。勇者部も、無論夏凜のこともな」

 

単調な答えだが、夏凜は横目で紡絆を見て、納得する。

紡絆の瞳の奥にある、確かな輝き。揺るぐことの無い光。

判らないはずなのに、確信出来てしまうような光の強さ。

 

(そう、そういうことだったのね……。だからみんな惹かれるわけか。

紡絆の中にあるのは、揺るぎのない芯の強い一筋の光……紡絆自身がそうであるように、嘘偽りない本質そのものだからこそ誰もが惹かれて、みんなが紡絆に集まる……)

 

当の本人は既に星空を見て、星に手を伸ばしていたが、触れただけ。

それほど長く居るわけでもないのに、夏凜は理解した。

小都音が言わんとしていたことを。

誰かのために本心で行動する彼だからこそ、誰もが彼に惹かれていく。

人柄に触れ、本質に触れれば触れるほど惹かれるのだろう。

それと同じく彼が心に宿す光は、ウルトラマンも惹き付けたのかもしれない。

 

「紡絆くんー? 夏凜ちゃーん?」

 

そんな中、部屋の中から友奈が呼ぶ声が聞こえる。

それに紡絆と夏凜は反応し、互いの顔を見た。

 

「二人とも何してんのよー早く来なさい」

 

「兄さん兄さん、まだ遊べるものあるよー?」

 

「食べ物もまだ残ってるわ」

 

「まだまだ続きますよー」

 

友奈の声に続いて、次々と向けられた声。

本人たちは自覚はないだろうが、その発言は確かに勇者である夏凜ではなく、三好夏凜という一人の女の子を受け入れていると言えるだろう。

 

「どうやらまだまだ誕生日会は続くらしいな、これからはもっともっと楽しくって騒がしくて、全部がかけがえのない思い出に変わるぞ。それにほら、主役が行かなきゃ始まらないだろ」

 

「ちょ……っ!?」

 

ポンっと軽く背を押すと、まるで引き込まれるように夏凜がベランダから消えた。

服装からして恐らく友奈が引っ張ったのだろう。

 

「紡絆くんも早くー!」

 

「はいはい、今行くよ!」

 

再び催促するように声を掛けられ、紡絆は急いで戻ろうとして、手元を見た。

手にあるエボルトラスターがドクン、と鼓動が鳴り、静かに光が消沈していく。

何故鳴ったのか分からずに一度首を傾げて疑問が浮かぶが、特に転移する訳でもスペースビースト振動波というわけではなさそうなので紡絆は懐にエボルトラスターを収納しながら、皆の元へ戻って行き、誕生日会を最後まで楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---またここに新たな絆が紡がれた。

絆は繋がる度に彼らに大きな力を授け、彼らに希望を与えるだろう。

どんな脅威にも負けない、理屈を超えた力を。

協力することで生まれる、強さを。

一人では決して成しえないことを為せるような。

 

 

 

 





〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
なんか最近前作主人公感が漂ってきた人。
ぶっちゃけこいつネクサスに選ばれるだけあって精神力強すぎる。
メンタルぶっ壊れんの?こいつレベル

〇三好夏凜
紡絆の本質に真に触れてしまった子。
落ちたな(確信)

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