【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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誤字報告ありがとうございます。多分なかったら気づかなかった。
夏凜ちゃんの漢字変換ミスってたんやな…。つーかあんな大量の修正大変だっただろうに本当にありがとうございました。
それと素直になること決めたので、ここでひとつ。
一言でもいいので感想ください(切実) やる気に繋がるんで! マジで! 9評価もください(若干控えめな貪欲)





「-信頼の力-トラスト」

 

 

◆◆◆

 

 第 20 話 

 

-信頼の力-トラスト 

 

 

 

隠された能力

フウセントウワタ

 

 

 

 

 

 

 

 

あの誕生日会を終え、夏凜がSNSグループの招待されて参加したり、左から順に小都音、東郷、夏凜、風、樹、前の方にインカメラで写真で撮っている友奈とみんなの後ろに紡絆が立っていてほぼみんな笑顔を浮かべている写真がグループに送られたりした。

ついでに言うと、グループのトークがなかなかにカオスだったりしたがそれはともかく、時間というものは止まることなく過ぎていき、次の日。

何も変わることの無い日々が続くと思われたはずの日。

眩い太陽に若干目を細めながら、紡絆はいつもの遺跡へと転移させられていた。

周りを見渡してもスペースビーストの姿はなく、ただ神殿殿が目の前にあった。

 

「授業中なんだが…仕方がない、か。ウルトラマン、今回も頼む」

 

授業中に寝ていたらふとエボルトラスターが鼓動し、嫌な予感がしたのも束の間。

慌ててトイレということで教室から離脱した瞬間には紡絆は転移させられていたのである。

だが現れるであろう敵のことを考えれば、今のうちにやっておかねば、危うくなる。

今回はちゃんと頼る選択をしたようで、エボルトラスターから五つの光が放たれ、神殿の中へ消えていった。

それを見届けた紡絆はエボルトラスターではなくブラストショットを手にし、振り向くのと同時に一発放つ。

ズドンという音と共に少しの爆発が起き、紡絆は思わず腕で顔を覆う。

 

「どうせ来るだろうな、と思ってたよ……ダークファウスト」

 

面倒そうな表情でエボルトラスターを取り出しながら、紡絆が睨みつけた先にはファウストが人間大の姿で存在していた。

 

『気づいていたのではなく、予測したというわけか……』

 

「そりゃ一度目は偵察ということでお前が現れなかったことの理由として通る。だが二回目は偵察しようものなら、融合型怪獣の方のデータが逆に俺らに知られてしまって、対策を練られるかもしれない。だったら二回目でファウストと融合型が共に現れ、ウルトラマンを潰せばいい。勇者を消せばいい---そうだろ?」

 

一度目。

能力を全部知ることは出来なかったが、逆に怪獣の方はネクサスの力と新しく援軍としてきた夏凜の勇者の力をその身で受けて知ってしまった。

紡絆たちからすれば、バーテックスの力と花粉が厄介。触手が厄介という情報しかない。

ビースト振動波のことを考えれば、他の勇者とネクサスが過去に使用した技も知られてしまっていると見ていい。

 

『馬鹿のようだが、愚かな訳では無いようだ』

 

「おい」

 

『だが、ひとつ違う』

 

「……ひとつ?」

 

若干イラついたような口調だったが、何が間違えたのか分からずに紡絆は思考するものの、分からない。

自身の予想とはいえ、どこが違ったのか分からないために考えることが出来ないのだろう。

そんな紡絆に対して、ファウストが指指した。

 

『勇者などよりも、お前という一個人の方が厄介だ。確かに勇者は舐めてかかることの出来ない存在のようだが、それはお前の存在故だ』

 

「……どういうことだ?」

 

ウルトラマンが厄介というなら、紡絆は簡単に納得しただろう。

同等の力を持つものを厄介だと感じるのは当然の摂理と言える。

しかしファウストが言ったのは、一個人。人間という一つの個体である継受紡絆の存在を厄介だといった。

 

『奴らの精神的支柱として、中心に存在しているのはお前だ。貴様という光が居る限り奴らは力を増す。

だがそれは、逆に考えてしまえば貴様さえ消せば脅威は一気に減るということ。二度目の戦いを見れば、それは明白だ』

 

お役目の二回目。

バーテックスが三体現れたとき、失うことの恐怖で守るために勇者として覚醒した東郷。死にかけの状態を見て、顔を青染めた友奈。聞いただけとはいえ、信じたくなかった風と樹。

もし見ていたら、二人も同じく青染めていたか、何らかのマイナスな感情を浮かべていただろう。

死んでいたら、間違いなくほとんどの勇者は戦意喪失していたに違いない。

しかしウルトラマンが復活してから、間違いなく勇者の士気は高まった。

正確に言えば、紡絆が無事だったからだ。

他にも部活をするにしても、日常という日々を生きる中でも紡絆は何処へ行っても中心にいる。

居てしまう、誰よりも、何もよりも中心に。

それこそ勇気が人一倍あり、恐怖などを胸の中に無理やり抑え込む友奈ですら紡絆に弱音を話してしまうくらいには。

 

「何を言うかと思えば…バカかお前。

そんな事言われても俺が分かるわけないだろ! 少なくとも今の俺に出来るのは、みんなと協力すること! 戦うこと! 守ることだけだ! 生きてまた明日を過ごすために!

だから、お前が誰かの日常を、明日を壊すために動くなら俺はそれを防ぐ!」

 

『ふん、話すだけ時間の無駄のようだな…。ならば早く光を纏うがいい』

 

「どうせ話し合いで済ませる気がなかったくせによく言うよ……。何はともあれ、ファウスト。俺がお前を()()()……!」

 

会話は不要だというファウストを見据え呆れたように息を吐くとエボルトラスターを引き抜き、紡絆が前方に掲げるのと同時にファウストは両腕を交差して人間大の大きさから巨大化し、紡絆はネクサスへと変身した。

片腕を突き上げた状態で現れたのは何処か和を思わせる鎧のような姿をしたネクサス。アンファンスと呼ばれるスタイルだ。

ネクサスはファイティングポーズを取り、ファウストは構える。

互いに睨み合っていると、突如としてそこに黒い暗雲が現れ、融合型昇華獣となったドラゴレイアがネクサスの背後へ地面へ降り立った。

それに関して予想はしていたのか、来ると思っていたのか、左右で見えるように立ち位置を変えたネクサスだが、ドラゴレイアがいきなり毒霧と花粉を撒き散らし、即座にネクサスは右腕のアームドネクサスをエナジーコアに翳す。

 

『シュアッ! ハァアアアアア---デヤッ!』

 

腕を振り下ろし、その身に紅蓮の鎧を纏ったネクサスは十字を作るようにアームドネクサスをクロスする。

手首に青い輝きの粒子が纏われ、弧を描くように大きく体ごと動かすとエナジーコアの傍で固定した右腕を掲げ、見上げるのと同時に青く輝く光線を空高く撃ち上げた。

全て隔離するように遺跡から光の世界へ。

世界が黄金色の空間に包まれ覆われていく。

 

「間に合った……って、いきなりメタフィールド!?」

 

「紡絆くん、おまたせ!」

 

メタフィールドを展開している合間にギリギリ勇者も入ってきていたようで、五人の勇者が敵を視認しながらネクサスの傍に降り立つ。

 

「これがメタフィールド……」

 

「でも……」

 

「ええ、変わるようね」

 

初めて見た夏凜が神秘に満ちた光景に目を見開くが、樹と東郷はファウストに視線を送ると、既にファウストが両腕を上空へ向けていた。

 

『自ら命を削るとはな……そのまま追い詰めてやる!』

 

『ぐっ……』

 

黄金色の空間が闇の空間へ侵食され、紫色に包まれた。

神秘性は完全に消え失せ、ついに遺跡から禍々しい世界へと変貌する。

何処までも広がる闇のような、滅んだ後の世界のような、そんな錯覚させるような世界に。

 

『シェア!』

 

ファウストを無視し、ネクサスがドラゴレイアに飛びかかる。

制限時間が始まった今、ネクサスにファウストを相手する余裕はなかった。

そんなネクサスに対して、ドラゴレイアは背中の触手で叩き落とそうとして、ネクサスが瞬時に加速した。

 

『デアッ! ヘェアァ!』

 

マッハムーブによる急激な加速。

触手を追い抜き、ドラゴレイアに肉薄したネクサスはそのまま下から殴り、ドラゴレイアが花粉を放とうとしたところで花弁を掴んで開かせない。

 

「そこぉ!」

 

「おりゃー!」

 

さらに大剣をドラゴレイアの腕に向かって振り下ろす風と足に向かって全力で殴る友奈がネクサスの援護をし、夏凜と東郷、樹が遠距離でファウストの妨害に出る。

ウルトラマンと同等の力を持つファウストに近接で挑むのは分が悪いと判断したからだろう。

 

『デ---ァ!?』

 

僅かに友奈と風を見たネクサスだったが、即座にアームドネクサスを輝かせ、エルボーカッターで切りつけようとすると急激に()()()()()()()()()

 

「うわわわ!?」

 

「ちょ、やば!?」

 

「なっ、こっちにまで……!」

 

「地震…!? いいえ、これはバーテックスの能力…?」

 

「そ、そんな力まであるんですかっ!?」

 

ネクサスは体勢を崩すとまでは行かなかったが、勇者は違う。

あくまで身体能力が強化された人間なので、体勢を崩してしまい、ファウストとドラゴレイアは攻撃のチャンスだ。

 

『鬱陶しいやつらだ……!』

 

先程まで遠距離でネクサスの攻撃を阻止されていたファウストがダークフェザーを。

ドラゴレイアが地面に手をついている風と友奈に勢いよく触手を振り下ろした。

 

『ッ……ぐっ!?』

 

瞬時に察したネクサスがセービングビュートで風と友奈を雑目に()()投げ飛ばし、滑り込むように三人の前に出てダークフェザーを代わりに受けた。

 

「紡絆!?」

 

『フンッ!』

 

『ウァァアアア!?』

 

直撃した胸を抑えるネクサスをファウストが上空に蹴り上げる。

地震はまだ続いており、上空に吹っ飛ばされたネクサスは方向転換してファウストに脚を向けて突撃していく。

 

『デェアアアア---ッ!?』

 

「紡絆くんダメ! 横に避けて!」

 

速度を活かしたその蹴りは当たればダメージが入る---はずだった。

相変わらず揺れの強さで動けてないが、スコープを覗いていた東郷が誰よりも気づいたことで警告を飛ばす。

---いや、その警告は遅すぎた。

 

『ウ……アァッ……!?』

 

「っ……わ、私が!」

 

小さな、とても気づかない小さな霧。

ネクサスの蹴りのコースに設置されたそれはネクサスを一気に覆い尽くし、苦しめる。

すぐに樹がワイヤーを飛ばすが、ネクサスを拘束したまま躱すように横に避けた。

 

『うぐぉ……!? げほ…!』

 

さらにドラゴレイアが花粉を飛ばすと、霧と花粉が融合し、毒と毒のコンボでネクサスをより苦しめる。

 

『こんな簡単な罠に引っかかるか…お前は自分より他人を見すぎのようだ』

 

首を抑えて苦しむ姿のみが見え、そこにファウストが嘲笑の感情を込めながら告げ、ダークフェザーを飛ばす。

ここでひとつ、ラフレイアが持つ花粉にはどんな性質があったか?

あの花粉には可燃性があり、それが霧と融合してしまっている。

それはつまり---

 

『が…アッ!?』

 

上空で大爆発が起き、ネクサスが地面に落下する。

防御不可能な攻撃の威力は高く、受け身をとることすら出来ていなかったため、落下のダメージまでも負ってしまった。

ドラゴレイアのみなら爆発は起こらないかもしれなかったが、ファウストが居るだけで爆発の危険性があるということ。

しかも必ず足場が必要な勇者を無効化しているのが厄介な点だ。

 

「っ……まずは向こうを何とかしないと…!」

 

「と言われてもね……ッ!」

 

空中ならば動けると夏凜が跳躍して刀を投擲するが、ドラゴレイアの触手が防ぐ。

その影響で触手が爆発してもバーテックスのように再生し、ダメージが入っているようには見えない。

 

「だったらッ!」

 

力強い声が聞こえて、東郷と夏凜、樹。そしてファウストが上空を見た。

そこには大剣を巨大化したまま落ちてくる風が居る。

空中だからこそ、地震の影響は何一つない。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「私も居るよー!」

 

「友奈ちゃん…!?」

 

声が響くが、その声の主は東郷たちがいる方向からは見えない位置にいるようで、居ない。

それでも特徴的な声は誰か分かったようで、友奈だ。

 

「風先輩、お願いします!」

 

「任せなさい! 部長の意地見したるわ!」

 

友奈が風をぐるぐると回して投げ飛ばし、投げられた際の遠心力と落下による加速で凄まじい威力があるであろうそれを、ドラゴレイアが反応して触手で己を守る。

 

『う……ぁ……。デ……デェアッ!』

 

このままでは防がれるというところで、残ったダメージを無理矢理抑え込み、ネクサスがパーティクルフェザーを四発連発することで触手の破壊は出来なくとも、触手を弾くことに成功した。

 

「紡絆ナイス! いい加減揺らされて気持ち悪いのよ!  おねんねしろぉー!」

 

ネクサスの援護のお陰で本体に辿り着いた風は狙いを定めたまま落下していくが、そうだとしてもドラゴレイアには花粉があり、ドラゴレイアは花粉を放つ。

だがネクサスと違うところは、勇者には精霊というバリアがある。

犬神が現れて花粉を防ぎ、風は気にせずにその手にある大剣をついに本体に斬りつけた。

速度を上げていたことが吉と出たのか、それとも元々の装甲が柔いのかドラゴレイアの片腕を切り落とし、悲鳴を挙げるドラゴレイアを背後にそのまま地面に風の大剣が突き刺さり、着地に成功する。

そのお陰か、ついに地震は収まった。

 

「どうよ、私の女子力!」

 

『無駄だ』

 

ドヤ顔で振り向く風だったが、ファウストの一言にどういうことかと反応する前に、目の前の光景が語ってくれた。

切り落としたはずの片腕が逆再生でもしたのかと思うほどにくっつき、何も無かったように戻る。

 

「はぁ!? 卑怯な!」

 

「まさか、あの時と同じ再生持ち!?」

 

ようやく切り落としたというのに再生する理不尽さに思わず叫ぶ風と気づいたように声を挙げる東郷。

以前戦った融合型が持っていた能力は、超再生。

しかしそれを持っていたのは御魂のはずであり、考えられることは---

 

 

801:名無しの転生者 ID:4kG3lCRTm

バーテックスとスペースビーストの融合に寄る急激な成長…!

 

 

802:名無しの転生者 ID:vFeRfuKd6

スペースビーストが持つビースト振動波が教え、元々持っていた成長速度で手に入れたってわけか……

 

 

803:名無しの転生者 ID:8BVKCrHgZ

つまり一戦目は偵察だけが目的で退いたわけじゃないのか!

こいつらの場合は能力が噛み合いすぎてて自身の力について行ってなかった! それ故に必要だった超再生を成長の糧で身につけたんだ!

まともに戦ったら勝てん!

御魂を出現させてオーバーレイしかないぞ! ファウストをなんとかしないと……!

 

 

 

 

そう、元々スペースビーストは成長する生物。

それがバーテックスを取り込めば? 少なくとも夏凛のデータは取られており、ネクサスと他の勇者の力はビースト振動波によって取られた。

しかしバーテックスが持つ能力は毒霧であり、ラフレイアが持つ能力は炭化させる花粉、猛毒だ。

その二つを体内に押し留めることが出来るか?と言われると、融合したばかりのドラゴレイアには不可能。

ならそれを超える再生能力を持てばいい話であり、ドラゴレイアは成長の過程として手に入れたはずの力が奇しくも彼らを追い詰める能力になっていた。

もし完全に成長が終わっていれば、超再生はなかったかもしれない。

 

『フン! ハァアアアアア---』

 

ならば、とネクサスが両腕をクロスして突き出し、オーバーレイの体勢へと入った。

確かにネクサスの力であれば、外装を引き剥がすことくらいならオーバーレイで十分だ。

ただし御魂に関しての問題が残ることになるのだが。

 

『バカめ、ノコノコとやらせん!』

 

『グアァアァァァァ!?』

 

地面を蹴り、低空飛行で浮いたファウストがネクサスの腹に脚を突き出し、オーバーレイの準備に入っていたネクサスはまともに受けた。

食い込むファウストの脚。

さらなる力を加えられ、凄まじい衝撃とともにネクサスの体が弾かれる。

 

『シュアァ!』

 

『ちっ……!』

 

くるりと一回転し、ファウストの体にしがみつき、そのまま上空へと連れて行く。

このままでは埒が開かず、勝てない。

だからこそ妨害を無くすために上空での戦闘を選んだのだが---

 

「紡絆くん後ろ!」

 

『ヘェ……!?』

 

友奈の声に反応してネクサスが背後を見ると、迫ってくる触手を避けることが出来ずに腹に巻き付き、引き離そうとしていたファウストから距離を取らせるように地面へと投げ捨てられる。

上下に回転しながらネクサスは受け身を取りつつうつ伏せに倒れ、ファウストはそのまま着地した。

 

「どちらかを相手……じゃなくて両方とも相手にしなくちゃいけないってわけか……」

 

「でもそろそろ紡絆先輩の制限時間が……」

 

忘れては行けないのが、今戦っている場所はダークフィールド。

そもそも相手に有利な空間であるために不利だというのに、一対一に持ち込むことすら出来ない。

 

『シュ……デェアッ!』

 

すぐに起き上がったネクサスはドラゴレイアを視界に入れながら、ファウストへ走り出した。

 

「とにかくあたしたちは向こうの融合型!」

 

「封印するまでダメージを与えないと……!」

 

ネクサスがファウストの方へ向かったのであれば、こちらが相手をするのは融合型。

風と東郷の冷静な言葉に各々頷き、触手に気をつけながら戦う。

花粉と毒霧を防げる勇者にとって気をつけなければいけないのが融合型怪獣の触手攻撃と怪獣としての攻撃。

東郷の射撃が次々向かってくる触手を撃ち落とし、接近した友奈と風と夏凜がダメージを与え、樹が撃ち落とし切れなかった部分のフォローをする。

それでも、再生能力によってダメージが入ってるように見えない。

 

『シェアッ! デェアァァ!』

 

『ハァァアア!』

 

着々と攻撃はヒットさせている勇者たちだが、一方でネクサスとファウストは互角の戦いを繰り広げる。

ネクサスの右ストレートを躱し、ファウストの足蹴りを同じく足を出すことで対抗。

なら、と回転しながらのエルボーをファウストが一歩下がることで避けた。

 

『デェア!』

 

『フンッ』

 

パーティクルフェザーとダークフェザーが同時に放たれ、相殺される。

小さな爆発。

その隙にネクサスはもう一発パーティクルフェザーを放ち、即座に翻した。

 

「私の手数でも押し切れない…!」

 

「封印するためにもまずは動けなくさせないとだよね……」

 

夏凜は火力というよりかは、手数で押す機動力タイプの勇者だ。

友奈のような一点突破の火力もなければ、風のように巨大化させることも樹のように拘束する力も東郷のような狙撃力もない。

しかし友奈は友奈で、超近接タイプであり、近づかなければ意味が無い。

 

「以前は武器を使う敵だったからそれを利用したけど、今回は…」

 

「地震のような力を使っても動けるのはズルいです……」

 

「武器……相手の武器……相手の力?」

 

今回のドラゴレイアは持っている武器などなく、万事休すか…と思われた時、東郷がなんらかに気づいたように疑問を浮かべた。

 

『シュアァ!』

 

「えっ!? 紡絆くん!?」

 

「っ……紡絆くん! 突っ込むのは良くないわ!」

 

思考する間もなく、ファウストを無視したネクサスがドラゴレイアに突っ込んでいく。

花粉と毒霧を吐き、触手を迎え撃つために構えるドラゴレイアすらも無視してネクサスは粉塵だらけの場所へ一人突っ込んだ。

そうなるとネクサスを巻き込まないためにも突撃するわけにも射撃するわけにもいかず、ただ見ていることしか出来なくなる。

 

『自己犠牲で撃破に向かったか……!』

 

「あんのバカ!」

 

興味深そうな声でファウストが呟き、予想通りの行動に風が思わず愚痴る。

いつものこととはいえ、それでもやめて欲しいとは思うのだ。

特にようやく妹と再会したというのに、ここで紡絆が死んだら一体どうなるのか。

 

『だが、そう簡単にはやらせんぞ』

 

「わ、私たちはどうしたら……」

 

「わかんないわよ。けど、何かするしかないでしょ!」

 

ネクサスと同じようにファウストが粉塵だらけの中へ突っ込み、それを見て行動に悩む樹と両手に刀を持ちながら、ついて行こうとする夏凜。

 

「待って!」

 

「ッ……なに!?」

 

夏凜も中に突っ込む気なのか走ろうとしたところで、東郷が呼び止める。

思わず反応して止まった夏凜だが、霧と花粉のせいであの中は見えず、二対一となっているであろう状況で呼び止めるのはどういうことかと言いたげな表情だ。

そしてその答えは---

 

 

 

 

 

『フッ---シュワッ……!』

 

超高速のバク転で出てきたネクサスが東郷が呼び止めた答えだ。

中からファウストが出てくることがなく、まるでわざと中に入れたような---いや、自分という囮を使い、中へ封じ込める紡絆の作戦だった。

 

『フッ! ハァアアアアア---』

 

そしてネクサスは抜刀するような構えを取り、右手と左手を行き来するように青い稲妻が迸ると、エネルギーが光に変わり、その光がネクサスの手のひらに纏われた。

 

『ぐっ……いい加減邪魔だ!』

 

ぐるぐると凄まじい速度で回転したファウストが凄まじい(かぜ)を発生させることで霧を吹き飛ばしたが、遅い。

敵だと思っていたドラゴレイアは花粉を吐いており、既に周囲一体に撒き散らされている。

 

『デェヤッ!』

 

その隙を逃すことなく光を保ったまま両腕を今度は右胸付近に持ってきて、腕を十字に構える。

放たれるのはクロスレイ・シュトローム。

威力はそこまで高くはないが、ここで再びおさらいするのであれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という問題だ。

可燃性があり、多少の火程度で大爆発が起きるそれに向かって、超人レベルの高熱光線が放たれれば、どうなる?

 

『むっ……!?』

 

光線はファウストに直撃し、問題の答えとして花粉に引火することでファウストとドラゴレイアのいた位置から凄まじい大爆発が起こった。

 

「ちょ---!?」

 

「わあー!?」

 

「と、飛んじゃいそう……!」

 

「なっ、なんて無茶な戦い方すんのよー!?」

 

「花粉を利用した……!」

 

かなり近い距離での大爆発は当然バリアが発動しても風圧が来るようで、勇者たちは吹き飛びそうになる。

風と夏凜は武器を刺すことで耐えているが、友奈と樹が危うい。

一人冷静に分析している東郷はしゃがんでるのもあって風圧が少ないらしい。

 

『ヘアッ!』

 

それに気づいたネクサスが勇者たちを守るために空間を空けながら覆い被さり、爆煙と爆風を防ぐ。

エナジーコアによるネクサスの命の証明が明るさとして効果していて、暗闇になる心配もない。

守ってくれる紡絆にお礼を言いつつも、勇者たちの視線も敵に向いており、爆発の中から飛び出してくる者も居なければ直撃コースだった。

 

「やったか……!?」

 

「お、お姉ちゃん。それは言っちゃだめなやつ…!」

 

爆発が完全に消え去り、煙が徐々に薄くなって見えるようになっていくと、歪なシルエットがネクサスの瞳に移る。

少しずつ、ほんの少しずつ元の形へと戻っているのは間違いなく倒し切れなかったドラゴレイア。

しかしファウストの姿はどこにもなく、風の言う通りに本当にやったのかと考えてネクサスが立ち上がろうとした、その瞬間。

ひとつ、気の所為だと錯覚するレベルで一筋の光が見えたような、そんな気がした。

 

『ハアッ!』

 

『---!? ウワァアアアア!?』

 

否。

気のせいではない。禍々しく、黒く、闇を体現したような()()()を手に持っていたファウストから放たれたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

途中で紫色に変化したが、その技をよく使う紡絆はそれがどんな技か理解しており、退こうとしたのをやめて直撃をその身に受けながら吹き飛ばされる。

避けなかった理由はネクサスが受けなければ、自身の技が大切な仲間を傷つけるところだったからだろう。

 

「紡絆!?」

 

ネクサスの光線をそのまま返ってきた原因を究明すべく射線を追って見れば、そこには刀身がギザギザの形で本来剣は鍔が真っ直ぐなはずなのにぐにゃりと円を描くように途中で止まって歪んでいる剣を持っているファウストの姿があった。

イメージしやすいのはアルファベットの『e』の横部分を無くして途中で止めた感じだろうか。

それが左右対称にあり、より不気味さを増していた。

 

「なにあれ、本人と同じで不気味ね……あんなのあったの?」

 

「い、いえ、初めて見ました……」

 

初めて見た夏凜が聞くが、これは紡絆を含めて全員初めて見たものだ。

今まで武器を持ったことなんてなければ剣を使った姿を見たことがない。

 

「あっ、再生が終わるよ!? 紡絆くんも吹き飛んじゃったし……!」

 

「紡絆が心配だけどひとまず離れるわよ!」

 

「いえ、逆に動いたらバレます!」

 

予想外のことで驚きしかなかったが、ひとまず追撃を受けないように距離を離す指示を出す風に東郷が逆に止める。

そのことに流石に困惑した。

 

「どうしてよ東郷?」

 

「そうか……よく見なさい。あいつ、視界がまだ回復してない」

 

気がついた夏凜の言葉に全員がドラゴレイアに注目すると、開いた花弁の中にある触覚がまるで斬られたような跡が残っていてきょろきょろと周りを見渡している。

それこそ再生途中に傷つけられたように。

 

『ほう……相変わらず厄介なやつだ。

まさか吹き飛びながら一点に集中させた技で傷をつけ、仲間を守ったか』

 

極々小さな光刃。

パーティクルフェザーの範囲を縮ませ、狙いをより正確に放ったものがドラゴレイアの目のような触覚を潰したのだろう。

しかし再生を完了させているドラゴレイアには聴覚はまだあり、動く先の音と気配でバレてしまう。

だから止めた。

それでもほんの少しの時間稼ぎにしかならないのだが。

 

「紡絆先輩があの一瞬で……? でも結局私たちの攻撃じゃ、封印までは……」

 

「それは違うわ。樹ちゃん、さっき紡絆くんが答えを見せてくれたでしょ?」

 

「答え……あっ!」

 

勇者の攻撃力では封印に行く迄の威力が足りない。

紡絆自身もドラゴレイア相手に苦戦するため、はっきり言ってタイマンになったところで勝てるかは五分もない。

御魂を出現させる方法がネクサスにはないというのもある。

ならせめて作戦を伝えようとかなり無茶な突撃をし、事実ドラゴレイアに回復されたとはいえ、一度大ダメージは与えた。

後は同じだと対策は取られると考え、別の方法で勇者部が実践すればいいだけだ。

 

「だとすればそれが出来るのは……」

 

「……私か東郷ってわけね」

 

「そう、夏凜ちゃんは刀。私は銃。

爆発を引き起こせるのはそれだけだもの」

 

攻略に必要なのは火を使える技があるかどうか。

当然そんな超能力は備わってないが、火の代わりに爆発を起こせばいい。

誘爆さえさせれば封印出来るレベルまでダメージが入ることはさっき証明されたのだから。

 

「だったら私たちはチャンスを作るってことだね!」

 

「頑張ります…!」

 

「それじゃ行きますか…って言いたいところだけど、どうやらあちらさんも再生を終えたみたいよ。総員警戒!」

 

作戦会議を終えたところで、ドラゴレイアが動き出した。

再生した触手を向け、花弁を向けて毒霧と花粉を、剣を持つファウストから放たれる斬撃。

それらが一気に押し寄せる。

 

『ハアッ! シュワッ!』

 

「っ……散開!」

 

くるりと回転しながら着地してみんなの前に出た瞬間にダメージが残っているのか胸を抑えたネクサスだが、彼は両手からみんなを守るために青色に輝く円形状のバリヤー、サークルシールドを貼り、全ての攻撃を防ぐ。

何か言いたそうではあるものの、このチャンスを逃せば紡絆の頑張りを無駄にすることになるので風は指示を出す。

その指示に従うように一気に勇者たちが離れ、ネクサスはそれを見て今も残り続ける斬撃を見た。

 

 

880:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

ウルトラマンネクサスという作品や他の外伝作品でもファウストがこんな武器を持っていたところなんてなかった!

分かっている能力はイッチの光線技を反射する力のみだ。気をつけろ!

 

 

881:名無しの転生者 ID:18YrTauW0

ただのファウストじゃあ、はっきり言って弱いからな……厄介な武器を追加してきやがった!

 

 

882:名無しの転生者 ID:jMYMFcRfB

イッチ、制限時間が近いぞ!

 

 

 

 

『ぐうぅ……ッ!』

 

コアゲージが鳴り始め、サークルシールドを維持していても斬撃が消えることはなく、むしろその逆。

サークルシールドが()()()()()

青かったものが赤くなり、徐々に押されていく。

その現象を紡絆は見たことがあった。勇者も見たことがあった。

この場の誰もが一度は見た。夏凜ですら知識で知っているだろう。

なぜならそれは、()()()()()()()()()()()()

 

『うぐぐぐ---デェヤ!』

 

つまり---サークルシールドが灰色に染まる。

割られる、と確信した紡絆はサークルシールドを解除し、即座にクロスしてアームドネクサスを輝かせる。

光刃を放つことはせず、そのまま受けとめる判断をした。

 

『うが……あぁああああぁ!!』

 

地面を削りながら後退させられ、地面に生えている岩が壁になることもなく、バリヤーで受け止めていたはずなのに斬撃の勢いは一切衰えない。

何個も、何十個の岩盤を砕きながらネクサスがさらにクロスした両腕に力を込めた。

 

『ヘェアアアァァアアア!』

 

気合い。

根性で両腕を振り下ろし、斬撃を打ち消す。

 

『ハァ、ハァ……』

 

ふらつくネクサスの体だが、足で地面を踏みしめてネクサスは走る。

 

「紡絆くん、平気!?」

 

『……! シュア』

 

近くにいた友奈が心配した様子で声を掛けてきた。

ネクサスは頷き、パーティクルフェザーをファウストとドラゴレイアに放ってからほんの一瞬だけ視線が交差する。

それだけで理解したように、ネクサスは全力で地面を蹴ることで空を飛んだ。

 

『逃がさん!』

 

当然そうなれば、空中戦が出来るファウストがネクサスを追う。

そしてドラゴレイアは空中戦が出来ないからこそ、届く範囲にいる間に撃ち落とすために攻撃を仕掛ける。

今、間違いなく融合型怪獣の思考にある脅威はウルトラマンのみ。己に大ダメージを与えた唯一の存在であり、勇者よりも殺さないといけないと判断したのだろう。

 

『フッ---デェア! シュワ!』

 

放たれる触手をひとつ。

掴み、それを軸にして回転しながら迫ってくるもうひとつの触手を蹴り飛ばし、三つめを高速軌道で回避しながらエルボーカッターで切りつけ、四つめを肘と膝で挟み込んで押しつぶさんとする。

 

『フンッ!』

 

『シェア!』

 

そこに斬りかかってくるファウストだが、ネクサスは挟んでいた触手でガードするように両腕で掴んで向ける。

そうなれば、ファウストは触手を斬り---いや、()()()()()

 

『フヘェ!? がは……!?』

 

予想もしなかった現象に回避出来なかったネクサスは空中から地上へ叩き落とされる。

その勢いを活かし、隙の出来たドラゴレイアに拳や剣、ワイヤーや銃撃が次々と襲いかかっているのも見てネクサスも突撃する。

自ら叩き落としたファウストにその速度に追いつくことは出来ず、ネクサスは拳を突き出す。

 

『デェアッ!』

 

ネクサスの拳が突き刺さり、ネクサスはそのまま()()()()()ドラゴレイアの攻撃を凌ぐ。

そうなると、ドラゴレイアは残った手段として花粉と毒霧を放つ---のだが、そこをネクサスが強引に花弁を掴んで閉じた。

本来放たれるはずだった花粉と毒霧はドラゴレイアの中で溜まることになり、ネクサスはすぐに東郷に視線を送る。

 

「……っ!」

 

そのサインに気づき、東郷はすぐに狙撃銃で真ん中を狙う。

僅かな隙間でしかないが、その銃弾は真っ直ぐに飛んでいき、花弁の中へ入るコースだ。

 

『無駄だ!』

 

だが、ファウストがその銃弾を切り裂く。

無常にもチャンスを打ち消したファウストはネクサスに剣を向け、振りかぶった。

 

「やらせないっての!」

 

「止まって……!」

 

風と樹の大剣とワイヤーがファウストの動きを鈍らせる。

風が剣を持つ手に大剣をぶつけ、樹がワイヤーで剣を止めようとしているのだ。

 

『邪魔だ』

 

「うそ、効いてないんだけど!?」

 

「わっ!?」

 

しかしファウストが腕を横に振るい、風が大剣でガードしながらバリアと共に吹き飛ばされ、力を込めて振り下ろすだけで樹も吹き飛ばされる。

 

『ッ……!?』

 

迫る剣と手を離せばダメージを負うことになる花粉と毒霧。

どちらを選ぶべきか迷い、ネクサスは脚で迎撃に出ようとして---

 

「夏凜ちゃん、そっちお願い!」

 

「分かってる!」

 

友奈が剣を殴りつけてギリギリのところで逸らし、夏凜がドラゴレイアを連続で切り裂いて行動を止める。

 

『ジュワッ!』

 

それを見て、ネクサスは側転で距離を引き離した。

互い互いに攻め手に欠けていて、決着のつかない戦い。

ファウストがネクサスを狙っても勇者が。

ネクサスがファウストを狙ってもドラゴレイアが。

逆もまた然り---それならば、()()()()()()()()()()()()()()

 

『埒が明かないか……ならこれがお前の最期だ』

 

『ヘエッ……!?』

 

何か奥の手を出してくるのではとネクサスが警戒し、両拳を作ることで胸のコアゲージでクロスする。

白い光が纏われ、それがどれだけの威力を込められた必殺技なのか分かる。

一方でファウストは両拳を前に突き出し、左右に拡げていくと闇の稲津のようなエネルギーを往来させる。

 

『ハアァァアア---』

 

『ハァッ! ハァァァ---』

 

拡げた両腕を紫色のエネルギーを纏いながら戻し、左拳を腰に構えながら右拳を上に掲げるファウストと、左腕を上から左に、右腕を下から右に同時に回していき、最初とは真逆で右腕が上に、左腕が下になることでエナジーコアを囲むようにZのような形を作るネクサス。

二つの強大なエネルギーが今、ぶつからんとしていた。

 

『目の前で守るものを守れなかったことを後悔しろ…! ハァッ!』

 

『フアッ!?』

 

左右の同時に両拳を突き出すことで放たれるファウストの光線技---ダークレイ・ジャビローム。

ネクサスは放つはずだったコアインパルスの動作をやめて、光線技の軌道を見た。

あからさまに()()()()()光線。

それは、ネクサスに当てるものではない。

 

「私じゃ迎撃が間に合わない……! 避けて!」

 

「夏凜ちゃん!」

 

「ッ!? こいつ……!」

 

東郷と友奈の声が夏凜に聞こえる。

その動きで回避すると判断したのだろう。

ドラゴレイアの霧が光線技を消し、勇者たちの視界を奪う。

気配ですら読むことの出来ない、濃霧。

そして、ファウストの光線技は容赦なく大爆発を引き起こした---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウ、ガァ……。ぐあぁ……』

 

爆風の中、()()の姿が見える。

ピコン、ピコンと音を鳴らし、ドクンドクンと心臓の鼓動のようにも聞こえるコアゲージ。

その姿を、夏凜は呆然と見ていた。

 

「つ、紡絆……!?」

 

ギリギリ。

あと少しでも判断が遅ければ、直撃していた一撃を、ネクサスが迷いなく飛び込んで胸で受けた。

 

『------』

 

フーといった(かぜ)の音しか聞こえず、酸素を吐き出してる時のような音。

何も聞き取ることも感じ取ることも、誰もネクサスの言葉が理解出来ない。唯一理解出来る東郷すら分からない。

ただひとつ、分かることがあった。

バタン、と凄まじい音を立てながら背中から倒れた巨体。爆煙を散らし、ネクサスの姿が全員に伝わる。

どんな暗闇も照らす光の巨人の瞳が消え、コアゲージが鳴る音だけが聞こえるようになったところが。

つまり---ウルトラマンとしては生きているが、紡絆としての意識が消えたという証拠。

 

『……見捨てていればそうはならなかったものの。愚かなやつめ』

 

このまま時間か過ぎれば、制限時間がきて死ぬだろう。

そんなネクサスに、紡絆に対して呟かれた言葉に怒りを顕にする者が居た。

 

「……ッ! よくも……よくも紡絆くんを……私の大切な人をッ!!」

 

普段は冷静な判断をする東郷が、誰よりも早く復帰し、誰よりも攻撃的に銃弾を放ちまくる。

ファウストはそれを片手を突き出し、ダークシールドで防ぐ。

 

「紡絆くん、夏凜ちゃん!」

 

「友奈、横!」

 

「っ……あぁ!?」

 

いつもからは考えられない東郷の様子に驚いてる暇もなく、友奈が二人に駆け寄ろうとするが、風の言葉に反応しても間に合わず、拳のように丸められた触手に殴り飛ばされた。

直前でガードに成功していたが、ウルトラマンですらダメージを受けるそれは凄まじい威力だ。

当然、その程度のガードを打ち破る。

 

「樹!」

 

「うん……!」

 

心配ではあるが、ドラゴレイアを放っておけばまだ生きてはいる紡絆の方へ行ってしまう。

足止めをするために風と樹は攻撃を仕掛ける。

それを二本の触手で防ぎ、地震による揺れで風と樹は動きを封じられた。

 

「なぁ!? 厄介過ぎんでしょ……!?」

 

「よ、避けれない…!?」

 

不味いと思うのも束の間。

今度はハンマーのように作られた触手二本によって風と樹がハンマー落としのようになぎ払われる。

 

「友奈ちゃん! みんな……!」

 

はっと我に返った東郷は皆を心配するが、銃撃が止んでしまった。

攻撃のタイミングを逃すような相手ならともかく、そんな相手などではない。

 

『フン』

 

「っ……!?」

 

鬱陶しいと言わんばかりに発射速度の早いダークフェザーを東郷に向けて放つ。

回避しようとする東郷だが、勇者の中でも東郷は機動力に欠ける。

精霊バリアによって守られたが、衝撃によって飛ばされた。

 

『………』

 

勇者ですら敵わず、ウルトラマンですら意識が無くなった。

ウルトラマンに至っては死人のように静かになって。

残る勇者は夏凜のみしかいない。

 

「……どうして……どうして私を庇ったのよ。あんた一人なら、避けられたでしょ……なんで……!?」

 

そんな夏凜はネクサスの傍に寄って、意味がわからないと言いたげな表情で告げていた。

確かに夏凜を庇うことなく、ネクサスがあのまま光線技を放てばファウストは避けられなかった。

それに勇者には精霊バリアがあり、死ぬまでは行かないかもしれない。戦力的な意味ならば、庇うべきじゃなかった。

無論、それがどうであれファウストはネクサスが庇うことを想定して放ったのだが。

 

『…………』

 

そして意識のない紡絆は当然だが、既に誰もこの場にもいないために夏凜の声に答えるものはなく返ってくるのは沈黙。

夏凜は俯きながら唇を噛み締めていた。

 

「起きてよ……起きなさいよ! バカ紡絆!

こんなところで終わるようなあんたじゃないでしょ! やっと、ようやく出来た…こんな私に歩み寄ってくれて、()()になってくれたのはあんたが、紡絆が初めてなのよ……。お願いだから……また馬鹿みたいに騒いで…バカみたいにお節介を焼いて…ばかみたいに明るい笑顔を振り撒きなさいよ!」

 

『………』

 

深く、深く感情の込められた言葉。

あまり長く居ないとはいえ、こんな姿は誰も見たことがない。

だが夏凜にとって初めてのことばかりで、初めて友人と言ってくれた相手。

自分がどれだけ酷いこと言っても厳しいことを言ってもぶつかってくれて、怒ることなく接してくれた相手。

その相手が死ぬ可能性が出てきているのだ。

だからこそ、その想いは強いのかもしれない。

それでもネクサスは、紡絆は応えることが出来ない。

 

「守りたいって言ってたじゃない……! かけがえのない日常を、みんなの毎日を守りたいって…!

あれは嘘だったの!? 本当なら立ってよ、あんたが倒れてたらそんなこと出来ないでしょ!? 私の友達なら…居なくなんないでよ……!!」

 

何処か涙声のように聞こえるように本心を叫び、夏凜は俯く。

ようやく出来た、初めての友達。これからだって言うのに、ここで終わってしまうのか、と。

 

 

 

 

 

960:名無しの転生者 ID:Ndp2/y1X6

おいイッチ! 起きろ!

 

 

961:名無しの転生者 ID:qmxFVOee5

お前、女の子にこんな言わせていつまで寝てやがる!

 

 

962:名無しの転生者 ID:etBuakF6q

ウルトラマンなら立て! 守りたいものを護れよ!

 

 

963:若きルーキー ID:mebius∞18

最後まで諦めず、不可能を可能にする……それがウルトラマンだ!

 

 

964:名無しの転生者 ID:krKqUQS8r

お前はこんなところで終わるようなバカか!? 違ぇだろ! 足掻いてもがいて、打ち勝て!

 

 

965:名無しの転生者 ID:wPVcj5mM5

自分を信じて、仲間を信じて、光を信じろ!

 

 

966:名無しの転生者 ID:68SO2FOoQ

頑張れウルトラマン! 気合いを入れろ!

 

 

967:名無しの転生者 ID:fk295SfEH

死ぬなー! がんばえー!

 

 

 

 

 

988:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

そんな言われなくとも聞こえてるよ……

 

 

989:名無しの転生者 ID:NZ+92ZnmD

イッチ! 生きてた!

だったら反撃開始だ!

 

 

 

 

 

 

『-----』

 

「え……?」

 

ピクっと僅かに動き、その気配を感じ取った夏凛は釣られるように顔を上げた。

確かに動いた気がしたはずで、しかしネクサスの瞳は消えたまま動いてはいない。

 

『残念ながらもう声は届かないようだな。

どうせなら貴様も一緒に苦しませず殺してやろう』

 

「ッ……!」

 

ファウストが剣を掲げると、ダークフィールド内に満ちる膨大な闇の力が集まり、闇のエネルギーを形成する。

夏凛はそれを見て、覚悟を決めたように刀を握りしめると前に出た。

 

『トドメだ!』

 

そしてファウストが剣を振り下ろし、斬撃が放たれる。

先程とは比べものにもならないエネルギーの込められたその斬撃を前にして、夏凜は逃げない。

 

「う……夏凜ちゃん、危ない!」

 

「ッ……夏凜!? 避けなさい!」

 

「夏凜さん……!?」

 

「夏凜ちゃん無理よ……!」

 

「私は完成型勇者よ! 逃げる訳には行かないでしょ!」

 

意識を失ってたのか、ダメージがあったのか気がついたように夏凛に向かって叫ぶ友奈、風、樹、東郷。

それを聞いてもなお、避ければネクサスが、紡絆が殺される。

だからこそ夏凜は逃げようとせず、刀を構えて---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『---デェア!!』

 

巨人が斬撃を()()()()()()()()

瞳に光を取り戻し、コアゲージの音を鳴らしながらも大地にしっかりと足を踏みしめて。体を赤く輝かせながら。

夏凛の背後から守るように、掴んだ。

それに気づいた夏凜が振り向き、驚愕しつつも隠しきれてない喜びの交じった表情でネクサスを見ていた。

夏凜だけではない友奈も東郷も風も樹もみんなが驚き、喜びと安堵を隠しきれていない。

 

「紡絆……!?」

 

『なんだと!?』

 

『シュワッ!』

 

掴んだ斬撃をそのまま返すようにネクサスは遠心力を利用するように回転しながら投げる。

それをファウストが剣で受け止めると弾こうとして、弾かれる直前でネクサスが縦にパーティクルフェザーを放ち、十字になったパーティクルフェザーと斬撃を強引にファウストに直撃させた。

 

『ぐおっ!? ば、バカな……!』

 

ファウストが思わぬダメージに怯む。

さっきとは違って、斬撃を意図も簡単に投げたのだから、驚くのも無理はない。

 

「紡絆くーん! 夏凜ちゃーん! 大丈夫ー!?」

 

「全く、二人して心配させちゃって!」

 

「皆さん、ご無事で何よりです…!」

 

「樹ちゃんもね。でも紡絆くん無事で良かったわ」

 

すぐに合流した勇者たちとネクサス。

ネクサスは東郷に顔を向けて、頷く。

 

『……シュア』

 

「そう……夏凜ちゃん」

 

「な、なに?」

 

先程までの自分に気づいたのか若干恥ずかしげに返事する夏凜に東郷は真っ直ぐ見つめて伝える。

 

「『聞こえてた。だから立ち上がれた。やっぱり頼りになる』---だって、紡絆くんがそう言ってるわ」

 

「そ、そう……ってか分かるの、こいつの言ってること」

 

「他ならぬ紡絆くんのことだもの。それと『俺はずっと前から友達だと思ってる。嘘なんかじゃない』とも言ってるわね」

 

『…フッ』

 

最後のは東郷も伝えはしたが理解出来てないようで、首を傾げているがネクサスがその通りと言うように頷いた。

正直言葉を理解出来るだけでも凄いというかさらっとおかしなことを東郷が言っているが、誰もツッコミを入れることは無かった。

 

「は、はぁ!? な、なんのことよ」

 

そう言いつつも理解しているのか顔を真っ赤にして顔を逸らす姿に何かは分からないが夏凜と紡絆を除く者たちは理解したようで、苦笑していた。

自分たちの知らぬ間に恐らくこのバカ(紡絆)が何か言ってたんだろうな、と。

 

「まぁともかく! 紡絆も無事復活したし反撃と行きましょうか!」

 

「ですね! でもどうやって封印すればいいのかなぁ……」

 

『……フム』

 

話を戻した風だが悩ましげに呟かれた友奈の言葉に紡絆が肯定する。

その間も制限時間であるコアゲージが鳴りっぱなしでそろそろやばいのだが。

 

「紡絆先輩の制限時間もやばそうですし、早くしないといけませんしね……」

 

「そうね……私に作戦があるわ。と言うより、もうこれしかないの」

 

「……何よそれ? 言ってみなさい」

 

「じゃあ、作戦だけど---」

 

いつもの調子を取り戻した夏凜の言葉を聞いて、皆を見渡してから東郷はひとつの作戦を語った。

一回のみの、一度っきりしか通じない作戦を。

 

 

 

 

 

 

 

『最後の会話は楽しんだか?』

 

『デェヤッ!』

 

素直に待ってくれていたらしいファウストに向かって、戦闘開始の合図のように気合いの籠った声でネクサスが殴り掛かる。

それを剣で防ぎ、ファウストが繰り出す蹴りをネクサスが地面に倒れて避ける。

 

『一人で来るとはな……!』

 

『ハアッ、シェア!』

 

振り下ろされる剣。

避けるネクサス。

次々へと振るわれる剣をネクサスが避け続け、時に反撃に出る。

そのせいでファウストはネクサスに釘付けになり、逆もまた然り。

コアゲージの点滅を気にしながらも、ネクサスは一瞬だけ視線を勇者たちへと送った---

 

 

 

 

 

そしてその勇者たちなのだが、夏凜はひとり。

敵から隠れた場所で突っ立っていた。

語られた作戦はあんまり変わらない。

ただ東郷自身が自分では撃っても妨害されるということで、近接で機動力が一番ある夏凜が鍵になったということだけ。

 

「ほらほらー、その程度だと当たんないわよー!」

 

「えりゃ! うわわ!」

 

「えぇぇい!」

 

ドラゴレイアを相手に次々とパンチしたり斬ったり蹴ったり縛ったり銃撃したりとダメージを与えながら攻撃を避ける---ヒットアンドアウェイで翻弄していた。

脅威はないがいい加減ウザったらしくなり、地震による攻撃をしようとしたら勇者たちが自身の肉体に乗り、そうなれば無意味なために発動も不可能。

でもって触手による攻撃は避けられ、銃撃が襲い掛かり、対処される。

まるでさっきと違う動きにドラゴレイアに混乱と困惑が見える。

バーテックスとスペースビースト。ふたつの個体の知能を持ってしても意味不明。

何故勇者たちがここまで強いのか。厄介となっているのか。急な成長をしたのか。

 

『……夏凜ちゃん準備を』

 

「分かってるわ」

 

だんだんと攻撃が乱雑になってるのを見て、東郷がスマホで声を掛ける。

夏凜は返事しながら一本だけ刀を持ち、気配を殺しながらチャンスを伺う。

 

「友奈! 樹! そろそろ来るわよ!」

 

「はい! でもまだまだッ!」

 

「準備するね…!」

 

攻撃を続ける友奈と風に東郷の援護射撃がドラゴレイアを襲う。

どれだけ攻撃しても避けられ、妨害され、ここで初めてドラゴレイアは理解した。

勇者という存在が脅威であることを。

ならば、その脅威を消し去るには生半可な攻撃では消せない。

一度仇になったとはいえ、あのウルトラマンですら苦しめた自身の技とも呼べる攻撃で消し去るべく、ドラゴレイアがついに毒霧と花粉を吐き出した。

 

「来た!」

 

「樹ちゃん! 東郷さん! お願い!」

 

「はい!」

 

風と友奈はすぐに地面を蹴ることで逃れるために離れ、樹のワイヤーがドラゴレイアに巻きついて閉じようとすべく力が込められる。

当然ドラゴレイアは開こうと抵抗するため、樹とドラゴレイアの力量勝負となるのだが体格差から考えても圧倒的に勝つことなど不可能。

しかし、流石というべきか花粉に当たらないギリギリの射撃がドラゴレイアに襲い掛かり、抵抗を弱める。

 

「私だって……私だってぇぇえええ!」

 

人間の底力というのはバカには出来ない。

ドラゴレイアに巻き付くワイヤーの量が増え、凄まじい力で花弁を無理矢理閉じた。

それでもなお、ドラゴレイアは抵抗する。

 

「樹ナイス!」

 

「で、でも長くは……!」

 

「大丈夫! 私たちには頼りになる仲間がまだもう一人……ううん二人居るから!」

 

風と友奈が樹を支え、抑えるために少しでも手伝う。

手伝いながら響く励ますその声は、彼女たちにもまた力を授ける。

なぜなら彼女もまた、紡絆と同じく勇気を与える者。

 

『シュ---デヤッ!』

 

『何をやっている?』

 

東郷の援護射撃は流石にもう不可能なようで、ドラゴレイアに襲いかかるものはない。

抵抗し続けるドラゴレイアだが、東郷はタイミングを考え、そのタイミングをネクサスが作る。

ファウストを相手していたネクサスはファウストの剣を避けるために後ろに跳躍して距離を離し、近くの岩を斬って掴むとファウストに投げつけた。

それを悠々と回避するが、理解出来ないといった様子が見える。

まるでヤケになったようだ、と。

 

「っ……今よ、夏凜ちゃん!」

 

東郷が声を発すると同時に、岩場に隠れていた夏凜が走り出す。

刀を手に持ち、凄まじい速度で接近していく。

長く感じる時間の中、夏凜の脳裏にはある記憶が蘇る。

 

『そう、俺は夏凜に期待してる。頼りにしてる。褒められる部分も多々ある。誰も期待してない? 賞賛してくれない? 

それはもう終わりだ。これからは俺が、みんながその感情を向けることになるからな。

それはもう、何処までも大変だぞ?』

 

笑いながらそんなことを言って、今も人に期待して、頼りにして信じて託した紡絆のことを。

初めて友達と呼んでくれた人のことを。

 

『私の銃ではもう防がれるわ。だから夏凜ちゃんしかいないの』

 

『そっか。さっきので東郷はバレたけど近接ならまだ可能ってことね…』

 

『あ、確かに…夏凜さんなら近接でもいけるもんね』

 

『頼りにしてるよ、夏凜ちゃん!』

 

どいつもこいつもお人好しで、紡絆が言っていたように頼りにしてるといわれなくても理解してしまうほどに感情をそのまま向けながら作戦を話したこれから先の日常の一部となった者たちのことを。

 

(…悪くない。そんな自分がいる。

だったら、ここでその期待に答えられないなら何が完成型か。勝つための道を作るのが今の私の役目!)

 

紡絆と出会い、勇者部と出会い、夏凜の中で間違いなく変化が起きた。思い出も、部活という大変でも楽しくなるであろうことも、大切な友人たちも、これから全て大切で大事でかけがえのないものになる。

全部、全部全部含めて。

それを改めて理解し、夏凜の纏う雰囲気が変わる。

そんな夏凜は刀を構えながら跳躍した。

トドメを刺すべく、今も抑えられている花弁の僅かな隙間を睨みつけるように。

そこでドラゴレイアが、ついに()()()を切る。

高い知能が理解させた。これを受ければ、自身はやられるのだと。

だからこその切り札。

本来ウルトラマンを倒すための力を、ドラゴレイアは解放した。

花弁の中から少しずつ漏れる毒霧によって花粉が急激に直線に固定されていく。

花粉を毒霧が包み込む感じで固定され、なんだ、と考える合間もなく、花弁から僅かに強引に開かれた箇所から凄まじい熱量を持つ火炎が放たれ、直線上に凄まじい爆発を次々と連鎖させていき、夏凜に襲いかかった。

 

「夏凜ちゃん!」

 

「っ……甘い!」

 

全くの違う性質の攻撃に驚く夏凜だったが、友奈の声にハッとすると空中で体を曲げ、()()()()()()()()()を蹴ってスレスレで回避しながら前へ進む。

 

「今度こそトドメぇ!」

 

そして、投げられた刀は真っ直ぐ寸分の狂いもなく飛んでいき、花弁の中に突き刺さって爆発を引き起こした。

同時にワイヤーが外れ、地面に着地した夏凜は再び跳躍。

 

「封印開始!」

 

作り出した刀を投げ、友奈や風、樹に東郷も一斉に封印の義を行うと、ついに切り札と自身の力の爆発によってボロボロになったドラゴレイアから御魂が吐き出された。

切り札を外したドラゴレイアに抵抗する術はなかったのだ。

ならば---

 

『!? なぜ---』

 

『ハアッ!』

 

『グォオオ!?』

 

ネクサスもそれに応えねばならない。

御魂を吐き出すことになった姿に驚いたファウストの隙をついて、ネクサスがファイティングポーズを取るとすぐに蹴り飛ばした。

何故岩が飛んできたのか、それは何かあると思っていたネクサスが投げ飛ばした岩が今になって夏凜の元へ辿り着いた。

ただただそれだけであり、その計算は()()がしていたことをファウストは知らない。

勇者は空を飛べない。自由が効かない。なら()()()()()()があれば?

一度っきりとはいえ、一度は回避ができる。

後は信頼さえあれば。

 

『ハァアアアァァァ---』

 

そして倒れたファウストに対してネクサスは空高く両腕を伸ばし、降ろしてコアゲージの少し下で左腕と左手の甲を下に。右腕と右手の甲を上にすることで手のひらで小さな丸を描くようにすると、ゆっくりと両腕を反転させてZ字のような形を作る。

 

『シュアッ!』

 

コアインパルスのような動作だが、違う。

ネクサスは右腕を斜め下の地面に向かって突き出し、同時に左手を腰に添えながら甲を下にする。

突き出した右腕を少しずつ上にあげて行くと、地面から黄金色の巨大な竜巻が発生し始め、その竜巻は49mあるネクサスをも超える。

 

『デェヤッ!』

 

その竜巻に対して、手刀の形で両手の手のひらを合わせると左耳まで勢いよく振り上げ、竜巻に突きつけた。

その瞬間、ネクサスから放たれるのは巨大な竜巻状のエネルギー波---ネクサスハリケーン。

一度くるりとその場で回り、凄まじい速度でファウストへ接近する。

 

『グッ……ヌォオオ!?』

 

ネクサスハリケーンはネクサスのエネルギーそのものと言っても良く、その力はファウストの肉体を簡単に巻き上げる。

ただし、これはあくまで拘束するための技に過ぎない。

 

『フッ!』

 

ネクサスが左拳を上向きに突き出す。

するとダークフィールド内に満ちる闇がネクサスの左腕を覆っていく。

 

『シュアァァ……』

 

闇に覆われた左腕が青く輝き、ネクサスが右腕を後ろに交差して胸の前に持っていくと、その間に覆われていた闇は完全に光へと変換された。

 

『シェアッ!』

 

胸の前に持っていった両腕をネクサスが上空にいるファウストに向かって突き出すことで放つ青い光球型の技---スピルレイ・ジェネレード。

 

『ぐぬぅ……光である限り通用せん…!』

 

ネクサスハリケーンによる効果を受けながらもファウストは強引にネクサスに向き直って剣を掲げ、スピルレイ・ジェネレードに対して振り下ろした。

確かにファウストの剣はネクサスの光線技を跳ね返すウルトラマン殺しの剣を持ってるといっても過言ではない。

だが所詮それは()()()()()()()()()

ここは何処だ? ここは闇が濃く、闇の力を増大させる闇の空間と言われるダークフィールド。

今放った技は光ではあるが、元を辿ればその力の根源は闇。

闇のエネルギーをネクサス自身の光エネルギーに変換させて放つのがスピルレイ・ジェネレードの特徴。

光だけの力ではなく闇も混ざったこの技を防げるはずがない。

 

『うぐぉ……グアァアアアアア!?』

 

現にファウストは光球を斬り裂くことも出来ず押し負けて直撃し、空中で大爆発が起こった。

爆煙で見えない中、空中落下していくファウストの姿をネクサスが捉えた。

 

『シュア…』

 

『ハァッ……ハァッ……。チッ……!』

 

ファイティングポーズを取り、いつでも戦えるように構える。

スピルレイ・ジェネレードには今のネクサスではエネルギー不足によって撃破するまでの力は込められておらず、ファウストは体勢を整えると息を荒くしながら霧のように消える。

そう、倒すことは出来なかったが、撤退させることに成功した。

それなら残るは---

 

「紡絆!」

 

「紡絆くん! トドメをお願い!」

 

声に反応して、ネクサスが跳躍して御魂の近くへ着地すると頷いた。

御魂を見据え、長き戦いに終焉を打つために。

 

「ここまでやったんだからちゃんと決めなさいよ!」

 

「紡絆先輩お願いします…!」

 

「紡絆くんあと少しだけ頑張って!」

 

『シュワっ! フンンンンン---』

 

樹のワイヤーが御魂を掴み離さず、託されたネクサスは光エネルギーによって白く輝かせた左腕を前方に突き出し、右腕を左腕に重ねることで下方でアームドネクサスを交差する。

反発するほどに凄まじいエネルギーの奔流を感じさせる青白いエネルギーを纏いながらガッツポーズをして両腕を互いに引き離し合い、V字型に両腕を伸ばした。

 

『デェアアァァアア!』

 

今まで以上に気合いの込められた声を発しながら、L字型に組んで放たれるネクサス・ジュネッス最強光線技---オーバーレイ・シュトロームを御魂に向かって放つ。

瞬間、御魂が今まで見せたことの無い能力である霧のようなバリアを発生させるが、その程度で止まるなら最強光線技とは呼べまい。

あっさりと貫き、御魂本体へ超高火力の一撃が命中する。

御魂が青白く輝き、誰もが勝利を確信した一瞬---そこに介入する者がいた。

御魂の上空に暗雲が立ち込み、今も量子分解されかけている御魂に闇のエネルギーが降り注がれる。

 

996:名無しの転生者 ID:vasNOkulP

ザギさんのバカヤロー!!

 

 

997:名無しの転生者 ID:AwWG8HJKq

おま、そこで介入するか!? ふざけんなよ!?

 

 

998:名無しの転生者 ID:Z0c4kgWN0

頑張れイッチ! オーバーレイは一度しか撃てない強力な技だ! やれ! 絶対負けるな!!

 

 

999:名無しの転生者 ID:8UnuR+akU

ここで打ち負けたら詰みだぞ! エネルギーを使い切ってでもぶっ倒せぇえええええ!

 

 

 

 

「今度は何よ!? まだあるの!?」

 

「えっ、再生してる!?」

 

「そんなのあり!? ずるでしょ!?」

 

「このままじゃまずいわ……!」

 

『グッ……ウウウゥゥ---ハァァァァ!』

 

オーバーレイ・シュトロームの出力を超えるほどの膨大なエネルギーが分子分解を防ぐ。

それでも光線技を放つのをやめるわけにはいかず、ついにネクサスのコアゲージが凄まじい速度で点滅し始めた。

 

「もうエネルギーが…!」

 

「私たちで援護に回るわ! あのエネルギーから引き離すわよ!」

 

風の号令に全員が頷き、行動に移す。

オーバーレイを避けるためには斜めに打ち上げるしかない。

そのために風と友奈が接近し、風が大剣を横にすることで友奈が乗る。

 

「後は頼んだ!」

 

「はい!」

 

友奈の返事と共に風が思い切り剣をスイングし、加速した友奈が拳を握りながら御魂を殴り飛ばす。

足りない。

 

「東郷!」

 

「夏凛ちゃんもお願い!」

 

「出来る?」

 

「もちろん、紡絆くんを助けましょう。紡絆くんは合わせて!

樹ちゃんは二回目の攻撃が当たる直前でワイヤーを解いてくれる?」

 

「分かりました!」

 

『うぐぐぐ……シュア』

 

光線を保ちながら頷き、夏凜が二本時間差を開けて刀を投げ、東郷が一発狙撃銃による銃撃で御魂に放ち、一度目は同時に直撃する。

まだ足りないと理解していたのか、さらに時間差で飛んでいった刀を東郷が撃つことで一度目に与えた箇所に突き刺さり、投げるようなワイヤーの解除と共に爆発によって斜め上に飛んでいく。

それほどやって、暗雲の位置から離すことに成功するものの、凄まじい速度で闇が移動してエネルギーを補給しようとする。

このまま補給されればドラゴレイアが復活するほどのエネルギーが集まってしまう。

 

『っ---デェアアアアァァ!!』

 

だからこそ、放たれるのは限界を超えた最強光線。

チャンスを逃すまいとネクサスは己の力を全て出し切る。

オーバーレイ・シュトロームの出力が上がり、範囲が増える。エネルギーの波が増大し、その力は地面にしっかりと足を踏みしめているネクサスの足すらも浮かせ、補給させようとする闇の雲の速度が追いつかないほどの速度で御魂が宇宙目掛けて飛んでいき、途中で青白く輝いた。

時を同じくして、ネクサスの体も光り輝く。

 

『シュアァァァァ---あぁぁぁぁああああああッ!』

 

自身の出力に耐えられずネクサスの肉体が完全に浮き、光線技を解除する隙もなく吹き飛んでいくが、御魂が分解された。

同時にネクサスのコアゲージが停止する直前で光に包まれると、オーバーレイを放った際の出力に耐えられないまま物凄い上下回転をしながら紡絆が吹っ飛んでいく。

世界が遺跡へ戻る中をボロボロな紡絆は回りながら限界を迎えたのか目を閉じ、意識を失った---

 

 

 

 

 

 

 

 

 





〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
『他人を見すぎ』というのは的を当てているが、より正確に言うなら、『自分より他人を優先しすぎ』
ちなみに今回新しく使った技は分かってた訳ではなく、復活した時に頭の中に流れてきた。
もしここで2つの技を使うことが出来なければ、はっきり言って詰んでた。
なお変身者はボロボロで吹っ飛んだ模様。
今回のオーバーレイ・シュトロームはFER見たいに凄まじいエネルギー。
つまりやべーパワー。

〇三好夏凜
そりゃ夏凜ちゃんからしたら紡絆に対する思いは強いよねって話というか正直この子だけ赤嶺に狙われるレベルでメンタル弱いから…(なお農業王)
だが彼女のお陰で打ち勝ち、真の意味で仲間になったといえるだろう。



〇魔人の剣
ファウストが持つ禍々しいオリジナル魔剣。
■■■の力と■■■■■の力が込められた一級品であり、その力は作中最強のサークルシールドを割る寸前にまで持っていったり、光(光線)を跳ね返したり、持つだけで闇の力を増幅、コズミューム光線のようにすり抜けさせることが出来る万能機能があり、実は()()()()()()()()
闇の力というよりかは、正確に言うならば能力の本質は呪力、つまり()()()である

番外編(スパイラル)

  • はよ書け
  • 先にゆゆゆ編完結はよ
  • まだゆゆゆネクサスの難易度上がるってマ?
  • シン・ウルトラマンはいいぞ。見ろ
  • スパイラルでシン・ウルトラマンも書いて♡
  • シン・ウルトラマン見ました
  • 投稿ペースを早めて
  • 戦闘シーン早くするんだよ
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