【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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誕生日おめでとう俺(30日)
昔はわくわくだったのに今となれば誕生日になっても俺誕生日なのかって思うだけになりました。それほど大きくなったということか…。
まぁ私の誕生日なんてどうでもいいので小説について話すと、今回は(思ったより進まずに)きついなと思ったので二話構成となります。
その次は総力戦で難関とも言えますね、たぶんクソ時間かかるかと。
ということで誕生日プレゼントとして感想ください()




【速報】俺氏、無事また病院の天井を見る【知っている天井だ…】

 

ピーという電子音だけが響き渡る部屋。

それ以外特に音もなく、巻かれた包帯が真っ赤に染まってながらも仰向けに死体のように眠っている人物の隣で一つ、独りでに輝くものがあった。

大きな、とても大きな石柩。

そこから優しい光が眠っている人物を優しく包み込み、蓄積された肉体のダメージを光が可能な限界まで癒すと石柩は拳銃のような物の中に消え、また静かになった。

 

「んん……?」

 

傷を癒されて少し経つと、その人物は目を開けながら頭を抑える。

全快したわけではないが意識を取り戻すまでは回復したのだろうか。

その本人は寝起きで朧気になっている視界の中でぼーっとして鮮明になるのを待つ。

 

「……知らない天井だ。いや、じゃないな……ここ最近めっちゃ見たことある天井だ」

 

視界が回復すると、見覚えしかない天井を見て、またかといったようにため息を吐いた。

といってもため息を吐いても何も変わらないため、少し慌てて周りを探るように顔を横に向けると二つのアイテムがあった。

それを確認して安堵の息を吐く。

ついもう2ヶ月ほど前にとても大切なものとなった短剣型のアイテム。

当然エボルトラスターであり、入院着に身を包んでるのも紡絆である。

 

「……そっか。ありがとう、ウルトラマン」

 

そんな彼は起動してもいないはずなのに最後に覚えてる記憶から考え、短時間で意識が回復したことに気づき、自分の意志ではなく自身に宿るウルトラマンがストーンフリューゲルを召喚してくれたのだと理解して感謝を述べる。

返答するように、エボルトラスターは一度鼓動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

1:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

 

【速報】俺氏、無事また病院の天井を見る【知っている天井だ…】

 

事の発端→【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】

 

【悲報】 気がつけば別世界に飛ばされたんですが…【どうして】

 

【朗報】亡くなったと思っていた家族が生きていた【妹】

 

 

2:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

・継受紡絆(俺)

ウルトラマンに変身できなければちょっと身体能力が高い人間。なおかつ記憶喪失転生者。前世の記憶と二年間の記憶しかないけど、星が好き(らしい)。

勇者部所属だが、なんかよく病院にいる気がする

 

・ウルトラマン

俺に宿る光の巨人。

いつも力を貸してくれてるけど、いつも俺のせいで無茶させてる気がする。

ネクサスと呼ばれてるらしく、俺はこのウルトラマンを知らないというか昭和しか知らない。でもザ・ウルトラマンは実は知ってる。

 

・三好夏凜

ツンデレ。

でも頼りになるし、一度立ち上がれたのは夏凜のお陰だった。

これからも仲良くしたいと思っている。

 

・天海小都音

妹(らしい)。

家族の記憶もないからね仕方がないね。

でも料理上手いし家事も出来るし可愛いぞ、うちの妹。

たまにめっちゃベタベタに甘えてくる。

 

 

 

 

で、俺なんで病院に居んの?

 

 

 

3:名無しの転生者 ID:Ds0EzkcK5

スレ立て乙〜

 

 

4:名無しの転生者 ID:loGxCrm94

当の本人が覚えてないの草

 

 

5:名無しの転生者 ID:LuHNmZJWJ

そもそもイッチがどこまで覚えてるのか分からんし。倒した記憶はあんの?

 

 

6:名無しの転生者 ID:Npi/5uZyJ

>>2

イッチの妹ちゃん可愛いよな。羨ましい

 

 

7:名無しの転生者 ID:e9H3XTzny

美少女だしな。イッチの周り美少女しかおらんやんけ

 

 

8:名無しの転生者 ID:SvZ/zftun

主人公かな?

 

 

9:名無しの転生者 ID:1eHAfy/RJ

ウルトラマンに選ばれてる時点で俺ら目線からしたら主人公なんだよなぁ

 

 

10:名無しの転生者 ID:cgy6D8bVw

>>2

なおほぼ病院行き、または重傷になるレベルで厳しい世界

 

 

11:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

覚えてるのは御魂にオーバーレイぶつけたとこだな。その後は知らん。

なんか勝ったような記憶はあるというか俺がここにいる時点で勝てたんだろうけど

 

 

12:名無しの転生者 ID:q2kZem3H2

あー…

 

 

13:名無しの転生者 ID:SxM55MXhZ

んー、まぁ…今回は仕方がないわな

 

 

14:名無しの転生者 ID:2mT+f74sa

敵が強すぎるんよーダメ押しと言わんばかりのファウスト強化はやばすぎるっピ!

 

 

15:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

簡単に言うと、あの後イッチが今まで見た事もないオーバーレイ・シュトロームの出力で御魂を宇宙に吹っ飛ばしてアンノウンハンドの補給を防いで消滅させたまでは良かったけど、ウルトラマンの肉体ですら宙に浮くほどの出力だったからエネルギー切れによって変身が解けたイッチは出力に耐えられず吹っ飛んでいったわけだ

 

 

16:名無しの転生者 ID:/qDOruFVl

で、その後現実世界で樹ちゃんが居なくなったということはお前も居ないってことを察した妹ちゃんが探していたらしく、血だらけになってたイッチを見つけると連絡して連れていったわけだな。ちなみに勇者部は遅れて戻ってきてすぐにイッチに駆け寄ってたが

 

 

17:名無しの転生者 ID:4uW1ZrZDo

樹ちゃんとの百合百合はよかったけどお前妹ちゃんどころかみんな顔青染めてたからな?

 

 

18:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

はへ〜…全く意識なかったゾ。俺そんな重傷やったんか

とりま小都音には謝らないとな……いやまあ、 本人が既にいるからなんですけど

 

〔添付:隣で腕を枕にしながら寝息を立てて眠っている小都音の写真〕

 

 

19:名無しの転生者 ID:QES05m29B

は? 天使かよ

 

 

20:名無しの転生者 ID:vsPv/deaE

可愛いなぁ……

 

 

21:名無しの転生者 ID:Wjj9/wTgM

ネクサスじゃなけりゃ素直に喜べるんだけどね…でも今は(可愛いから)ヨシ!

 

 

22:名無しの転生者 ID:AS/f/sJuO

>>18

おめーはいっつも重症じゃん

 

 

23:名無しの転生者 ID:TSlt0mdUE

それは否定せん

 

 

24:名無しの転生者 ID:Ln+zKiEt4

イッチは転生者のくせに覚悟決まりすぎなんだよなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事情を理解した紡絆は傍で眠る小都音を優しく撫でながらスマホで時間を確認する。

まだ一日も経っておらず、早朝のようで学校にもまだまだ間に合う時間帯。

流石に制服は捨てられたのか、近くには新品の制服がある。

紡絆はこれで何枚目かな、といったどうでもいいことを考え出していた。

 

「んぅ…? おにーちゃん……?」

 

「おはよ」

 

そんなことを考えていたら、寝惚けているのか目を擦りながら小都音が顔を上げてじっと紡絆を見つめる。

紡絆は特に何か言うわけでもなく、いつも通りに話しかけた。

 

「うん、おはよう……」

 

「おう」

 

「……ってお兄ちゃん!?」

 

「あべらぁ!?」

 

違和感すら感じさせない平常通りの姿に小都音も思わずいつも通り返してしまったが、すぐに気がつくと紡絆のお腹に勢いよく抱きつき、全快してない紡絆は叫びそうになったのを堪えて再び頭を撫でる。

 

「あっ…ご、ごめんね」

 

「や、傷治ってるから大丈夫大丈夫」

 

寝起きの人間にする行動ではなかったと反省したような様子で椅子に座る小都音だが、紡絆は気にしてないと笑う。

 

「……本当に?」

 

「ほんとほんと。それより学校の準備しないとな。風呂にも入りたい…腹も減った……」

 

「もう…そんな簡単に退院は出来ないよ?」

 

「大丈夫だ。ここの人たちとは顔見知りだし、多分またかみたいな顔されるだけだから」

 

「お兄ちゃん……普通の人はそんな入院しないからね」

 

既に何度か入院しているが、入院する意味あるのかこいつというほどの回復速度を発揮する紡絆を見て、慣れたのかもしれない。

しかし小都音からすると信じられないような話であり、冗談にしか聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の眩しい射線が紡絆を襲いかかる。

それに対して紡絆は真っ向から太陽を見つめ、両目を抑えた。

ウルトラマンの強化によって生身でも少し人間離れしている紡絆にとって太陽の光は眩しかった。

 

「……はぁ」

 

そんな紡絆の隣では、小都音がため息を吐く。

今の紡絆の行動にではなく、まさか一日も経っていないのに本当に退院できるとは思ってなかったのだ。

軽い検査をしたら問題ないと判断されて多少の運動制限で解放されるなんて普通はないはずなのだが、慣れた様子で解放された。

つまりこの兄(紡絆)は自分が居ない間にも何度か入院したというわけで、小都音からすれば嬉しくもないニュースだ。

 

「大丈夫か?」

 

「私は大丈夫だけど、絶対に無茶な行動は許さないからね」

 

「あはは、すると思うか?」

 

「うん絶対する」

 

「………」

 

笑い飛ばそうとしたようだが、小都音のジト目に紡絆は目を逸らした。

するつもりだったらしい。

 

「もう過ぎたことは怒らないけど、お兄ちゃんに何かあったら私は辛いし…生きていけないよ」

 

「それは悪かった……けどな、小都音を一人にして死んだりなんてしない。例えどんなことがあったとしても、俺は必ず生きて帰ってくるから」

 

辛そうな面持ちで俯いて裾を掴む小都音を安心させるように紡絆は手を乗せる。

反省はしているというのは声音で分かるのだが、嘘でも戦わないという選択もなければ無理をしないという約束すら出来ないのは、紡絆の人間性が理解できるだろう。

 

「……約束だからね。嘘ついたらどうなるか分かんないよ」

 

「それは怖いなぁ……」

 

冗談に聞こえない声質に紡絆は苦笑するしかない。

 

「ほら、早く行こ。朝ご飯作ってあげるから」

 

「おっ、それなら早く帰らなきゃな!」

 

ただ、ただそれでも今は全てを忘れて、日常へと帰る。

紡絆の腕に自身の腕を絡めた小都音はくっつきながら家の方角へ歩いていき、紡絆は突然の行動に僅かに驚きながらも特に抵抗せずに一緒に歩んでいく。

特にこのままでは朝飯すら抜く退院したばかりの病人を養うために帰る選択をしなければならないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂に入って朝食を食べ、学校の準備をした紡絆は小都音と一緒に外に出る。

時間的に間に合う時間帯で、意外と余裕だった。

鍵でドアを閉めた後は登校するために学校へ行く道を歩くのだが、見覚えのある背中を見て紡絆は小都音の手を取ってから軽く走る。

 

「おーい! 友奈ー、東郷ー!」

 

空いている手を振りながら呼びかける声に気がついた友奈は車椅子を一度止めて振り向くと、驚いた。

 

「えっ、紡絆くん!?」

 

「紡絆くん……? もう大丈夫なの?」

 

「おはよ。全然大丈夫というか、普通に帰された」

 

「おはようございます。結城さん、東郷さん」

 

「あ、うんおはよう」

 

「おはよう。あれほどの怪我してたから少し心配だけど……」

 

普通に挨拶を交わしてきたため、友奈と東郷もそれに応えたのだが、紡絆本人は全然平気そうな様子で体を伸ばしている。

 

「一応無理はしないようには言ってるんですけど、兄さんのことなので無理かと」

 

「…それもそうね。紡絆くんに無理しないでって言ってもいつも無理するんだもの」

 

経験上紡絆は無理をしないように言ったとして、無理をしなかった試しがない。

まぁ、自身がボロボロなのに人助けしてるやつなので無茶しかしないのだろうが。

 

「本当に平気なの?」

 

「平気平気。痛いとこあったら牛鬼に噛ませておくから」

 

「紡絆くん、流石に精霊にそんな力はないと思うわ…」

 

唾でも付けとけば治るみたいな理論を言う紡絆だが、もちろん精霊にそんな力がないし仮にあったとしても主でもない紡絆に効果などあるはずもない。

何はともあれ、他愛もない話へ移行しながら紡絆たちは登校するのだった---。

 

 

 

 

 

 

62:名無しの転生者 ID:3Y62Tftur

で、本当のところは?

 

 

63:名無しの転生者 ID:X1b4dDMEo

素直に吐けよ、楽になるぞ

 

 

64:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>62

多分あと一回ダークフィールド内に入れられるかメタフィールド展開したら全面的にキツいしやばい。

肉体ダメージが残ってるのもあるが、疲労面が全然回復しないな。体力とはまた違った感じで、肉体の回復も遅くなってるっぽい。

そもそもメタフィールドをあと一回貼れるかどうか……ただ一ヶ月か二ヶ月、それほどあれば回復すると思う

 

 

65:名無しの転生者 ID:tdIC6lYfq

HP(怪我)はある程度回復してるけどSP(疲れ)は回復してないみたいなもんか。ただMP(エネルギー)の問題上回復も落ちてると

 

 

66:名無しの転生者 ID:5KDrEFERh

>>64

後半姫矢さんみたいな感じか…

 

 

67:名無しの転生者 ID:asLQdTbly

ワンチャン次がラストかもしれんな…ジュネッスになれるのは

 

 

68:名無しの転生者 ID:VJALgADyR

融合型が居る中、ジュネッスになれないのはきちぃぞ

 

 

69:名無しの転生者 ID:bVqrBHa/L

どちらにせよ、長く休む暇がないからな…長くて一週間二週間とかそれレベルだからウルトラマンとして戦うには回復が追いつかないんだろう。特にイッチは毎回ボロボロのギリギリ勝利だし、流石にストーンフリューゲルじゃ無理だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第 21 話 

 

-勇気のおまじない-グッド・ラック・チャーム 

 

前編

 

刺激

ライム

 

 

 

 

 

 

勇者部の部室にて、春の勇者部活動と書かれた記事を神妙な目で見つめる友奈。

彼女は悩ましげに記事を見ていた。

 

「うーーー…ん……この写真は…ここで!」

 

そして勢いよく持っていた写真を記事の空いているスペースに叩きつける。

どうやら写真を何処に貼るのか悩んでいたらしい。

 

「うーん、バッチリだ!」

 

そんなふうに納得したように腕を組みながら頷く友奈を紡絆は東郷の隣で見て苦笑すると、パソコンの方へ画面を移す。

 

「お、まだこんな時間なのにこんだけアクセス数増えてるのか。すごいなぁ」

 

かつて居た世界人口70億と比べると、万単位なんて少ない。

だがこの世界は人口は億も行っておらず、その中で万単位のアクセス数は凄いだろう。

それほど勇者部が知られていることの証明でもあり、彼らの活動が無駄ではなかったと実感することも出来る。

 

「みんなのお陰よ。あとは子猫の写真と学校の連絡先を載せて…」

 

「もちろん東郷もな。っと完成か、流石」

 

ホームページの更新を見ていた紡絆は手際よく完成した東郷の腕と出来栄えに感心したように見ていた。

ちなみにいつも通り牛鬼は紡絆の頭の上で寝転んでいる。

 

「あ〜……ん、もうっ! ストーリーが思いつかん!」

 

一方で演劇ということが確定したため、一番と言っても過言ではないほどに必要なストーリー、つまりは脚本を書いている風は行き詰まっているようだ。

第一話なのにラスボスが登場するようなサブタイトルなのだから言わなくても分かるだろうが。

 

「あー…あんた何食べてんの?」

 

そんな風が目をつけたのは、夏凜だった。

ドアに背中を預けながら一つ一つ袋から取り出して食べている。

食べてるだけなのに様になってるのは、流石というべきなのかもしれない。

 

「何って…煮干」

 

「学校で煮干を貪り食う女子中学生なんて夏凜ぐらいね」

 

「健康に良いのよ」

 

ブラックサンダー(黒い稲妻)も美味いぞ。俺が食べようとしたら食われるけど」

 

確かに煮干には様々な栄養が取れるようにされているが、紡絆が言ったことは普通に考えて健康に良くない。

というか、一応怪我人なのに何故お菓子を食べようとしているのか……。

 

「なんか兄さんが餌付けしているみたい」

 

「俺は困ってるんだけど」

 

そう言いつつ、袋から取り出したブラックサンダーを食べようとして、牛鬼にかっさらわれる紡絆。

負けじと次々と開ける紡絆だが、牛鬼も対抗する---まさに乱世。

ここにブラックサンダーを賭けた戦いが始まっていた!

 

「なんかやってる紡絆は放っておいて、それなら夏凜のことはにぼっしーって呼ぶ」

 

「ゆるキャラに居そうな名前付けるな!」

 

「くっ、この……! あ、じゃあかりりん!」

 

「懐かしい呼び名もダメに決まってるでしょ!」

 

一応聞こえてはいるのか、牛鬼と可愛らしい戦いを繰り広げながら懐かしい記憶を持ってきたが、ダメと言われてしまった。

 

「あ、そういえばにぼっしーちゃん」

 

「待って、その名前定着させる気?」

 

どうやら友奈は風が呼んだ方を選んだらしく、その名で呼んだのだが定着させられかけてることに若干の危機感を覚える夏凜だった。

 

「それより飼い主探しのポスターは?」

 

「そんなのもう作ってあるわ」

 

「わーありがとう!」

 

「流石三好さんですね」

 

未だに戦いを繰り広げている紡絆と樹以外が夏凜が作ったらしいポスターを覗く。

文もしっかり書かれており、得意げな表情から自信満々なのだろう。

問題は猫の絵なのだが---

 

「なにこれ……」

 

「えっと……妖怪?」

 

「えー……と。ど、独特な絵ですね?」

 

「ね、猫なんだけど!?」

 

苦笑気味な風と東郷、小都音だが、猫というには言われてみたら分かる。

特徴は捉えてる、といった感じの絵でしかなく、初見で猫かと当てるのは中々に難しかった。

 

「夏凛は絵が下手なんだなぁ」

 

「な、なによ。じゃあ、あんたが描いて見なさいよ!」

 

「落書き程度のならいいぞ、ほら」

 

予め描いていたのか、争うのをやめた紡絆はページを開いてからノートを差し出した。

ちなみに明らかに授業用のノートである。

 

「え……」

 

「猫だ! かわいい〜!」

 

「猫ね」

 

「完敗だわこれ」

 

「ふふん」

 

「や、なんで俺じゃなくて小都音が得意げなんだ?」

 

絵を見た瞬間絶句する夏凛だが、紡絆のはよくアニメで居そうな可愛いらしい白猫だった。

しかも夏凜とは違ってちゃんと猫として認識されている。

そもそもゆるキャラとはいえ、ウルトラマンを書けるやつが下手くそなはずがない。

といっても、プロは目指せるわけでもなくそこら辺にいる多少は絵を描ける程度だが。

 

「………はぁ」

 

そんな時、ふと聞こえてきたため息。

騒いでたのが嘘のように静かになり、みんなの視線がため息を吐かれた方へ向けられると、なんと樹だった。

そんな樹の目の前にはタロットカードが並べられており、占いを全く分かっていない勇者部の人たちにはわからない。

 

「樹?」

 

「え? な、なに…?」

 

「どうしたの、ため息なんかついちゃって」

 

姉である風が心配といった様子で聞く。

急に自身の家族がため息なんか吐くと、誰だって家族なら心配してしまうだろう。

 

「あ、もしかして歌のテスト?」

 

「テスト? 去年そんなんあったっけ」

 

「今日音楽のテストに向けて練習があったの。樹ちゃんお世辞にも上手く歌えてなかったらそれかな、と」

 

「そうなの、樹?」

 

「あ、うん……それで本番でうまく歌えるか占ってたんだけど…」

 

同じクラスの小都音は思い立ったようで、それは当たっていたようだ。

その確認のために聞いてきた風に顔を向けながら、暗い面持ちで話す樹は言葉を区切り、視線をタロットカードに移す。

それに釣られるように全員がタロットカードを見た。

 

「……死神の正位置。意味は破滅、終局……」

 

「不穏でしかないな」

 

「まぁ、ほら占いって当たるも八卦、当たらぬも八卦って言うしきっと大丈夫よ」

 

「こういうのってまた占えば全く違った結果が出るもんだよ!」

 

風と友奈の励ましを受け、樹はもう一度占う。

全員が注目する中、めくられたカードに描かれていたものは無情にも死神の絵。

めげずに再チャレンジすると、死神。三度目の正直ということでリベンジでもう一度占うが、残念ながらことわざには二度あることは三度あるという言葉もある。

そう、無常にも死神の絵であり、全く嬉しくもない死神のフォーカードが完成した。

 

「だ、大丈夫だよ! 死神のフォーカードだからこれはいい役だよ!」

 

「さ、流石に死神のフォーカードはどうかと…樹ちゃんの占いは当たりますし」

 

「ポーカーならフォーカードは強かっただろうけど、タロット占いで考えるとダメな役だな」

 

全員がまさかの展開に唖然としていると、友奈が励まそうとする。

しかし小都音と紡絆は流石に無理があると思ったようだ。

事実死神のフォーカードで樹は落ち込み、それを見兼ねた風は黒板の前に立つと黒板に“今日の勇者部の活動、樹を歌のテストで合格させる”と書き記す。

勇者部は困っている人を助ける部活、それは部員も例外ではないのだ。

 

「歌が上手くなる方法かぁ…」

 

「まずは歌声でアルファ波を出せるようになれば勝ったも同然ね。良い歌や音楽というモノは大抵、アルファ波で説明がつくのよ」

 

「アルファ波…そうなんですか!」

 

「マジかよ、アルファ波すげー!」

 

「んなわけないでしょ!」

 

自分のことだからか冷静に考えられない樹はともかく、純粋が故に騙される…というかただ間抜けな紡絆はどうなのだろうか。

そんな紡絆は置いておいて、間髪入れず東郷のシュールなボケにツッコミをかます夏凜。

 

「樹は一人で歌うと上手いんだけどね。人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」

 

「確かに、樹ちゃん歌上手いからな」

 

「あれ、兄さんはなんで知ってるの?」

 

家族である風は樹が歌っているところを聴いていても不思議ではない。

しかし普段会わない紡絆が知ってるのは友奈や東郷がこのことをしらないということからおかしいわけで、小都音の疑問は当然だ。

 

「え? あー、えー…と。ほら、なんか樹ちゃんの声っていいじゃん。だから上手そうだなーと思ってさ」

 

「……ふーん」

 

何故か言葉を濁し、誤魔化す紡絆だが、下手くそ過ぎる嘘のつき方に小都音は怪しむ。

が、言いたくないと察したようで一つ息を吐いた。

 

「でも人前で歌うことが緊張するなら、習うより慣れろだよね!」

 

思いついたようにポンと握り拳を手のひらに着いて、友奈がそう言った。

その言葉で理解したようで、今日の活動を終了してぱぱっと外出の準備をする勇者部だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イエーーーー! 聞いてくれてありがとー!」

 

なんだかんだ妹のためとはいえ、自分も息抜きがしたかったのか、真っ先に曲を入れた風が歌い終える。

そう、ここはカラオケボックス。習うより慣れろの言葉通り、少数で親しいものしかいないが人前で他人の目を気にせずに歌うことが出来る場所。

樹は曲を聴きながらタブレット操作していて、東郷はマラカスで盛り上げ、友奈はプラスチック製のモンキータンバリンを振り、夏凜は飲み物を飲んで、紡絆はぼうっとしながら頭の上で暴食の限りを尽くす牛鬼に食べかすを落とされている。その後処理を小都音がしていた。

しかし真っ先に風がやったとはいえ、この盛り上げ方などは場を暖めるには必要な娯楽施設らしい楽しみ方であり、盛り上がる。

なにより暗い雰囲気より楽しそうな方が樹も歌いやすいはず。

 

「ねえねえ夏凜ちゃん、この歌知ってる?」

「……一応知ってるけど」

「じゃあ一緒に歌おう!」

「な、なんで私が? 別に楽しむためにここに来たんじゃないんだから」

「そうよね~? あたしの後に歌ったんじゃ……ゴ・メ・ン・ネ~♪」

 

ニヤニヤした顔で指差したモニターの画面には先程の風の歌について92点という好記録で評価コメントも良いことしか書かれていない。これをわざわざ夏凜に見せ付けたということは明らかな挑発なのだが、外野から見ててもウザイだろうな、と紡絆は点数に感心しながら思っていた。

 

「……友奈、マイクを寄越しなさい」

「へ?」

「早く!!」

「はっ、ハイィ!」

 

しかし夏凜はそんな簡単な挑発に乗り、友奈と二人でポップな歌をデュエットで歌うことになった。

歌っている姿は挑発されて参加した割には楽しそうで、きっと楽しいのだろう。

 

「夏凜ちゃん上手じゃん…!」

 

「フッ、これくらい当然よ」

 

スピード感ある曲だったからか、友奈と夏凜は疲労したようで息を整えていた。

点数を見て見ると、風と同じく92点。

 

「あ、次は樹ちゃんね。行ける? 無理なら先兄さんに歌わせる?」

 

「う、ううん大丈夫!」

 

緊張している様子の樹を察して小都音が心配して気遣うが、樹は大丈夫だと言いながらマイクを持って立つ。

しかし端から見てもだいぶ緊張しているのが伝わってくるほどで、樹はそのまま様子で曲のイントロが流れると、歌詞の通りに歌い出した。

綺麗な歌声ではある。けれどもその声はかなり上擦ったり噛んだり音程を大きく外したりで、全然活かしきれていなかった。

やはり人前だと緊張でまともに歌えなくなってしまうみたいで、その歌の間は失敗ばかりで終わってしまった。

 

「………はぁ…」

「やっぱり堅いかな」

「誰かに見られてると思ったらそれだけで…」

「重症ね…」

 

親しい人達の前ですら緊張してしまう以上、クラス全員が見てる状況で歌うのはもっと難しいはず。

これより大人数が見るのだから。

 

「あ、私の曲」

 

そんな反省会をしていると東郷が歌う曲のイントロが流れ始めるや否や小都音と夏凜、何故か静かな紡絆を除く三人がキリッとした表情で立ち上がり、ビシッと敬礼をする。

夏凜は突然の行動に驚き、小都音は目をぱちぱちとさせていた。

しかし誰も答えることなく東郷が古今無双を歌い始める。そして歌が終わるまで、誰1人体勢を崩すことはなかった。

 

「え、えっと……何? さっきのって一体……」

 

「東郷さんが歌う時はいつもこうだよ? 私達」

 

「そ、そうなの……」

 

「あはは…東郷さんらしい曲でした」

 

困惑が見えるが、夏凜だけじゃない。

普通に誰が見ても困惑するし驚くだろう。疑問よりすぐに褒める言葉を言えた小都音の適応力が高いだけなのかもしれない。

 

「さて、次は俺だな。話は戻るけどさ、大丈夫だって樹ちゃん」

 

「紡絆先輩…?」

 

「ほら手本見せてやる。あんまり歌いたくはなかったんだけど」

 

珍しく静かだった紡絆が話を戻し、何処から来るのか自信満々に言い放つと樹を一度撫でてから立ち上がる。

マイクを手に取り、紡絆が後頭部を掻くとみんなの方へ向く。

それと同時にイントロが流れた。

手本を見せる、そう言った紡絆に期待が集まる中、曲の始まり同タイミングで紡絆は歌い始め---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な?」

 

曲が終わると、反応はそれぞれだった。

意外そうに見つめる者。困惑する者。戸惑う者。驚く者。呆気に取られる者。ニコニコとした笑顔を浮かべる者。

表示された点数は、まさかの7()5()()

カラオケでの最低点数は68点であり、それ未満は表示されることはない。

 

「え、ええと…」

「その、良いと思うわよ……?」

「べ、別に点数なんて気にするものじゃないしね!」

「わ、私も全然ダメでしたから!」

「なんというか……あんた下手くそだったのね」

「ちょ…バカ! いくら紡絆でも傷つく---」

 

必死にフォローする勇者部の面々だが、それは返って紡絆を傷つけることに思い当たらないのだろうか。

まぁ、当の本人はあははーと気にせずに笑ってるのだが。

 

 

205:名無しの転生者 ID:eaowsj8D6

イッチ…それはないよさすがに。カラオケやめたら?

 

 

206:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

無茶言うな。こっちとら記憶喪失な上に俺の生きていた頃の西暦の曲が無さすぎて歌える曲がないんだよ…!

 

 

207:名無しの転生者 ID:lYGEuwbKG

あー、確かに歌詞分かってなさげだったな

 

 

208:名無しの転生者 ID:AEGsz3ClV

むしろ何あったら歌えたんだよ

 

 

209:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

赤いスイート〇とか?

つーかいいんだよ! 今回は上手く歌うことが目的じゃないんだから!

 

 

210:名無しの転生者 ID:zGY77cfO/

有名だけどもう古くて草

 

 

211:名無しの転生者 ID:lBZRTOfn5

ん? どゆこと?

 

 

212:名無しの転生者 ID:m+a8pbz2l

そういえば昭和や平成の曲は消えてるのか…? アニソンも俺らが知ってる曲ないならきついなぁその世界からしたら遥か昔だもんな

 

 

 

 

「まぁ、下手くそなのは分かってたから歌う気はなかったんだけど俺が言いたいのはさ、別に緊張してもいい。恥ずかしがってもいい。

ただ歌うことに夢中になればいいんじゃないかって思うんだ。

歌うことに緊張する人なんて、人前で緊張する人なんて世界には大勢いるからな」

 

例えば新人アイドル。

初めてテレビに出て、初めて歌って、その前に絶対に緊張するはずだ。

人によっては歌っていても緊張する人だって。

初めから何もかも出来る訳では無い。けれど、ひとつのことに夢中になれば、楽しむことが出来れば緊張は和らぐのではないか、と言いたいのだろうか。

 

「でも意外ね。紡絆くんは歌も全然平気そうだったのに」

 

「スポーツは行けるけど、歌とスポーツは違うからなぁ」

 

「兄さん、こう見えてダメなところ多いんですよ。そういう所も良いんですけどね、えへへ」

 

「確かに…前言ってた通りね」

 

兄自慢はともかく、確かに紡絆は歌は下手だった。練習すれば上手くなれるとは思うが、彼は何でも出来る人間ではなく、才能があるわけでもない。

それでも樹のために、自分の出来ることで伝えるために歌ったのだろう。本音は間違いなく歌いたくなかったろうに。

だから夏凜は以前小都音に言われたことに改めて納得していた。

まぁ、そもそも紡絆自身記憶喪失で、曲をまったく聴くことすらしてないのだから興味を持っていたら結果は違ったのかもしれない。

 

「結局は簡単に出来ることではないんだけどね。ゆっくりやっていこう。俺たちはいくらでも樹ちゃんを手伝うから」

 

「…はい!」

 

「うん」

 

樹の返事に微笑ましそうに頷いた紡絆は席に戻り、牛鬼がすぐに頭に乗る。

 

「そういえば小都音ちゃんまだ歌ってないよね。一緒に歌う?」

 

「どちらでもいいですよ。知ってる曲なら歌えますから」

 

「まぁ、小都音はテスト問題無さそうだしなー」

 

実際問題、樹とは違って小都音は相談しようともしてなかった。

それはつまり、人前で歌うことに抵抗がないのだろう。

そのように会話をしながら曲を入れてると、風はスマホをみてからお手洗いということで離席していった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が居るであろう部屋から離れ、水を出しながら風は俯く。

そんな彼女の頭の中には、カラオケの最中に大赦から来た連絡が思い返されていた。

その時、目の前のドアが開くと誰かが入ってくる。思考の海に沈んでいた風は驚きで僅かにびくっと反応する。

 

「---大赦から連絡?」

 

腕を組みながら背中を壁に預けて聞いてくるのは、夏凜。

どうやら風の様子に気づいて追ってきたのだろう。

 

「私には何も言ってこないのにね……。ま、内容は大体想像つくわよ。バーテックスの出現には周期がある。でも今のヤツらの襲撃には当初の予測から大きく外れてるわ。これからの戦いに何が起きても不思議じゃないほどにね」

 

「……最悪の事態を、想定しろってさ」

 

大赦に居た夏凜だからこそ、メールの内容を予想することが出来る。

その答えとして風は来たメールの文をそのままに伝える。

 

最悪の事態。

簡単に思い付くのは、勇者の敗北かウルトラマンの敗北。ないしは世界が滅ぶこと。

とは言っても、今の連絡はそういう意味ではないだろう。

だとすれば残るバーテックスが全てやってくることなのか。スペースビーストの複数出現か。

 

「怖いの?」

 

「………」

 

夏凜にそう言われ、風は何も返さない。

ただ洗面台に置く手を力強く握るだけだ。

 

「あんたは統率役には向いてない。私ならもっと上手くやれるわ」

 

「…これはあたしの役目であたしの理由なのよ。後輩は黙って先輩の背中を見てなさい」

 

蛇口を閉めて、風はそれだけ呟くと手洗い場から出ていく。

それを見て、夏凜はそっぽ向いた。

不器用だが、先程の言葉は夏凜なりに心配した態度なのだろう。代わりにやる、という意味の込められた。

ただ、ただ一つ。それでも夏凜は思ったことがあった。

もしあいつ(紡絆)ならもっと上手くやれたのだろう、と。

そう考えたところで、随分毒されてきたらしいと首を振り、どちらにせよ自分には無理なことだと結論付けてため息を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~楽しかった!」

 

「歩いて帰るの、久しぶりね」

 

夕暮れの中を、勇者部の7人と一匹は川沿いを歩いていた。

久しぶりに皆で存分に歌った友奈は、上機嫌で東郷の車いすを押しており、紡絆は若干疲れた様子で牛鬼を抱えながら歩いている。

あの後も…というかあの後風と夏凜が帰ってくると、小都音がカラオケで100点を出したらしく、ただでさえ盛り上がっていたカラオケがより盛り上がったのだ。

ちなみに兄である紡絆は悲惨な結果しかなかったのは余談だ。

というか、勇者部の人たちが歌手のように上手すぎるだけで、樹ですらちゃんと歌えたらもっと点数は高いことは考えなくても分かる。

 

「でもカラオケはあんまり樹ちゃんの練習にはならなかったかもしれませんね。逆に私がプレッシャー与えちゃったかも……」

 

「た、楽しかったから大丈夫だよ。皆の歌が聞けてたし、小都音ちゃんのお陰で私、もっと頑張ろうって気になりましたし!」

 

「ならいいんだけど……」

 

まさかの満点を取ったの自分でも予想外だったようでプレッシャーを与えたのではと申しわけなさそうにする小都音に気にしてないと樹は伝える。

そう、あの後も一度出来なかったからと言って諦める訳にもいかず、数回チャレンジした樹だったが、結局大きな改善を得ることはできなかった。

しかし歌自体には変化はなかったものの、本人の意識を少しでも上向きにできたということは確かな成果と言えるだろう。

 

「うむ、精進するといい」

 

「それ、兄さんが言えることじゃないよ?」

 

「ふ…ほぼ曲知らんからな!」

 

何故か上から目線な紡絆だが、小都音に物申されるとドヤ顔で言ってのけた。

正直ドヤ顔する意味はないというか、使うタイミングが違うし全員からツッコミを入れられる紡絆。

そんな紡絆を主軸となった喧噪を聞きながら、風は集団の少し後方を黙って歩いていた。

頭に浮かぶのは大赦からのメッセージ。

カラオケの場では表面上は何とかいつも通り過ごせたものの、『最悪の事態』という言葉は依然風の心に重くのしかかっていた。

みんなを巻き込んだ自分。だからこそ、いざとなったら自分が---

 

「お姉ちゃん?」

 

「え? 何?」

 

そう考えたところで、呼ばれて返事する。

が、会話なんて聞いてなかったために何のことを話していたのかすら分からない。

 

「樹の歌の話よ」

 

「風先輩何かあったんですか?」

 

「相談なら乗るけど、抱え込んでも良くないですよ。吐きたいなら素直に吐いちゃってください」

 

事情を分かっている夏凜はともかく、友奈と紡絆は善意で何かあったのかと聞いている。

その姿は風に嬉しさを与えるのと同時に誤魔化さねばならないという罪悪感を与えていた。

 

「あ、あはは、なんでも。それと、そう言ってくれるのは嬉しいけど紡絆が言っても説得力皆無だから」

 

「え、酷い!」

 

例え彼らが優しさで聞いてくれても、風は答えることは出来ない。

なぜなら、巻き込んだのは彼女自身であり、彼女彼らの日常や平穏を奪っていいものではないのだから。

 

「でもそうねぇ…樹はもう少し練習と対策が必要かな」

 

「アルファ波を出せるように」

 

「いい加減アルファ波から離れなさいよ」

 

カラオケに居た時と同じ提案をする東郷に呆れたような夏凜のツッコミが入る。

そもそもアルファ波を出せるようにするにしても、期間以内に出来るのだろうか。

 

「あはは」

 

「あ、じゃあ目を閉じるとか?」

 

「覚えてる曲ならともかく知らない曲は無理かと」

 

本番のテストは毎日聴いてる曲でもない。

教科書を見ながら歌うために、目を閉じて出来たとしても歌えないだろう。

そもそも人前に立つと緊張するなら意味がないので、意味ないといえる。

結局思いつかないため、無理なことをいつまでも考えていても意味ないからか談笑に戻る。

それを見て風はほっと胸を撫で下ろしたが、樹と珍しく黙っている紡絆はその姿を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラオケが行われた翌日。

勇者部の部室で、異質な存在感を放つものが机に置かれていた。

普段はお目にかかれないような大量の健康食品の数々。

ドラッグストアにでも行かない限り、これほどの量を見ることはそうそうないだろう。

 

「喉に良い食べものとサプリよ」

 

その数々の物を持ってきたのは、夏凜だった。

いやむしろ夏凜以外に持ってくるはずがないので絞るのは簡単なのだが、これを学校に持ってきたというのは色々な意味ですごい。

いくら樹のためとはいえ、うら若き中学生が持ってくるものでは無い。

 

「いい? マグネシウムやりんご酢は肺に良いから声が出しやすくなる。ビタミンは血行を良くして喉を健康に保つ。コエンザイムは喉の筋肉の活動を助け、オリーブオイルとハチミツも喉に良いの」

 

「詳しい……」

「つまりどういうこと?」

「最初に言ってた通り、喉を良くするものばかりってことだね」

「夏凜ちゃんは健康食品の女王だね!」

「夏凜はアレよね。健康のためなら死んでもいいって言いそうなタイプよね」

 

部員たちが五者五様の感想を漏らす中、健康食品の種類もそうだが、それらの効果等の説明を噛まずにスラスラと言える彼女の知識量も凄いだろう。

恐らく樹のために喉に効くものを探して選んだのだと思うと、彼女の優しさが健康食品の量から垣間見える。

 

「さ、樹。これを全種類飲んでみて。ホラ、グイっと」

 

「い、いや一個でも十分じゃないか? 知らんけどさ」

 

「そ、そうよ。全種類は多過ぎじゃ? 夏凜でも無理でしょ!? 流石の夏凜さんだって……ねぇ?」

 

残念ながら紡絆はサプリとかは使ったことがない人間なのでどんな効果があるかは分からないものの、嫌な予感がしたので後輩のために止めようとする。

それに賛同する風だが、わざとらしく両手で口元を隠しながら、夏凜の名前を強調して無理だ無理だと煽っていた。

そうなると---

 

「いいわよ……お手本を見せてあげるわ!」

 

「結城さん、扉開けておいてあげてください」

 

「はーい」

 

「やめた方がいいんじゃないかなぁ…」

 

「わ、私もそうした方が…」

 

「と言っても、止められないと思うわ」

 

当然、風の煽りにカチンときた夏凜は手本を見せると行動する。

その前にどうなるか察した小都音が近くにいた友奈にドアを開けるように言い、風を除く三人は苦笑気味だ。

しかし東郷の言葉通り止まるはずもなく、次の瞬間には夏凜はざらざらとサプリを次々に口に放り込み、その後に液体の健康食品で流し込んで行く。

これだけの量でも相当だと言うのに、りんご酢やハチミツはともかくオリーブオイルで流し込むということすらやってのけた。

そんなことをやってしまえばどうなるか、想像は全然難しくない。

案の定、顔を真っ青にした夏凜が口を抑えながら部室から全力で飛び出して行くのをみんなが見ていた。

 

「樹はビギナーだしサプリ飲むなら一つか二つにしましょう」

 

「はい」

 

「…無理しないようにな」

 

先程のことがなかったように笑顔で言う夏凜とこれから飲む樹に対して紡絆はそれだけ告げ、樹はサプリを飲んで歌う。

---が、その程度で解決するなら困ることもないわけで、結果はカラオケの時と同じだった。

 

「うーん、喉よりもリラックスの問題じゃない?」

 

「私もそう思うな。樹ちゃんは緊張してるように見えるから、それさえ解決出来れば問題ないと思うよ」

 

「次は緊張を和らげるサプリ持ってくるわ!」

 

「やっぱりサプリなんですか!?」

 

その姿を見ていた風と小都音は気がついたように言うと、夏凜は頷いて樹に向かいながらそんなことを告げた。

別の方法から離れることなくサプリということに樹がツッコミを入れるが、結局今日も解決することは無かった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編(スパイラル)

  • はよ書け
  • 先にゆゆゆ編完結はよ
  • まだゆゆゆネクサスの難易度上がるってマ?
  • シン・ウルトラマンはいいぞ。見ろ
  • スパイラルでシン・ウルトラマンも書いて♡
  • シン・ウルトラマン見ました
  • 投稿ペースを早めて
  • 戦闘シーン早くするんだよ
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