【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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山場なのもあって出来る限り減らしてなお三話構成です。既に書き終えてます。
見直し甘いかもしれんけど、許してくれ…作者は三日前から40度超え〜38度の熱でしんどいんや……。
感想も次まとめて返します




「-勇者部の誇り-プライド・オブ・ヒーロー」

 

◆◆◆

 

 第 23 話 

 

-勇者部の誇り-プライド・オブ・ヒーロー 

 

 

紫のオダマキ

勝利への()決意(誓い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ファウスト」

 

「残り七体全部来てるんじゃないの、これ」

 

遠く壁のギリギリ辺りに見えるのは、二度目の襲撃の時よりも二倍はいるバーテックスの姿。

夏凜がスマホのマップを確認するとやはり敵を示すアイコンが奥に七つあり、紡絆の視線の先には剣を持つファウストが同じく紡絆を見ていた。

まるで早く来い、と言わんばかりに。

それを見て、紡絆はエボルトラスターを強く握り締めた。

 

「やっぱり、総攻撃…考えうる限り最悪の襲撃パターンね。全く、やりがいありすぎてサプリもマシマシだわ。樹もどう? サプリ、キメとく?」

 

「そ、その表現はちょっと……」

 

差し出されたサプリを、引きつった表情の樹がやんわりと断った。

しかし気にした素振りはない。

動揺を隠すために言っただけで動揺しているのは夏凜だけではなく、皆同じだろう。

三体でも苦戦するどころか追い詰められたというのに、バーテックスが七体。さらに今や剣の能力がウルトラマン特効なのもあり、総戦闘力的にはウルトラマン以上の戦闘力があるファウスト。

それからスペースビーストの出現可能性もあり、はっきり言って厳しい戦いだ。

 

「あれ、何ですぐに攻めてこないんだろう」

 

神樹様による結界の境界線あたりでじっとしているバーテックス達を見て、友奈がそう呟いた。

紡絆や友奈達が樹海に取り込まれてから少しの時間が経過していたが、早々に現れたにも関わらずファウストやバーテックス達はずっと、沈黙を保ち続けていて不気味だ。

 

「さあね。どのみち、神樹様の加護が届かない結界の外へは行ってはいけないっていう教えがある以上、私たちからは攻め込めないしね」

 

そこで一旦会話は途切れ、あたりは重々しい沈黙に包まれた。

それぞれが複雑な表情を浮かべながら遠くの敵を見つめていた時、一足先に変身して偵察に出ていた風が木々の上を跳ねながらこちらへと戻ってきた。

 

「敵さん、壁ギリギリの位置から動きそうよ。

……決戦ね。みんな準備を---って紡絆?」

 

「………」

 

こういう時、明るくいるのが紡絆なはずが、妙に珍しく静かで、深く考えているようだった。

その姿に注目が集まる中、紡絆はふと見られていることに気づき、暗い表情で口を開く。

 

「一つだけ言いたいことがあるんです……」

 

真剣、それもシリアスな雰囲気を出す紡絆に全員がゴクリと息を呑む。

もしかして何かあるのかと。

このタイミングで言うということは、最悪な事態の可能性もある---

 

「……腹減りました」

 

最悪の可能性はなかった。

むしろシリアス全開だった割にまさかの発言にみんながずっこける。

唯一東郷は車椅子なのもあって転けなかったが、目をぱちぱちと瞬きし、復帰が早かったようでくすくすと笑い始めた。

 

「ふふ、紡絆くんらしいわ。そうね、本当はご飯食べる予定だったもの」

 

「まったく…こんな時に何言ってんのよ」

 

「あはは、確かに私も少しお腹空いたかも」

 

紡絆はお腹を抑えながら何かないかとポケットを漁るが、ドロドロに溶けたブラックサンダーしかなかった。

見なかったことにして、紡絆は周りを見渡す。

 

「でもほら、場は和んだろ? 特に樹ちゃん、緊張してるみたいだったし」

 

「紡絆先輩…もしかしてそのために---」

 

「……だったら良かったんだけどなー」

 

わざと言ったのでは、と樹が裏を読んだところで、ぐぅーっとお腹が鳴った。

もちろん発声源は紡絆である。

 

「……ですよね」

 

「うん、マジなんだ」

 

真剣、それも超真面目な真顔だった。

ただそれでも、みんなの緊張は確かに取れており、良い方向へ持っていけたと言える。

 

「はぁ……紡絆に緊張感ってあるのかしら。何はともあれ、勇者部一同変身よ!」

 

「そうね、ひと花咲かせるわよ!」

 

気を取り直すように風がみんなに聞こえるように言うと、夏凜の言葉とともに四人は同時にスマホをタップして勇者システムを起動する。

鮮やかな光が少女達を包み込み、その身に力を与えていく。人の身でありながら人類の敵であるバーテックスとスペースビーストという脅威に戦うための戦闘着。

そう、四人は勇者へと変身することで戦う力を手に入れるのである。

なお、紡絆は見ないように両目を手で覆って視界を塞いでいた。

 

「敵ながら圧巻ね」

 

「逆に言えば、こいつら殲滅すればもう戦いは終わったようなもんでしょ」

 

程よい樹木に紡絆と友奈が真ん中に左右に樹と風、東郷と夏凜がいる形で並んで立つ勇者部。

戦うための準備は紡絆以外が終えると、こちらの準備が整うのを待っていたかのように、七体のバーテックスも動き出した。

それを五人の勇者と紡絆は強い光を湛えた瞳で見つめる。

しかしながら程よい樹木から立って見たとしても、相手の方が遥かに大きく、威圧感が凄い。

まだまだ遠いというのに、これほど威圧感があるとは。

流石七体と一人居るだけある。

 

「あの剣が……嫌な感じしますね」

 

「ザワってくるよね」

 

「分かる。直感で当たりたくないって思ったし。当たったけど」

 

どうやらファウストが持つ剣は離れていても悪寒を勇者たちは感じるようで、警戒心が一番高い。

紡絆だってそれは同じで、光線技を跳ね返すあの剣の性質的に、前と同じ技での対処法しか思いつかなかった。

それでも、一人ではない。

一人では勝てなくても、みんなとなら。

勝ってまた明日を生きるために。

 

「よーし、それじゃあみんな! ここはアレ、いっときましょ!」

 

「アレって何よ? また何か変なことするのあんた達?」

 

変なこと扱いされたが、何故か紡絆も分かってないようで首を傾げる。

そんな中、風を中心に友奈や東郷、樹たちは肩の上にお互いの手を置くことでひとつの輪を作る。

 

「円陣? それ必要なの!?」

 

「気合いは必要でしょ?」

 

「確かに、それは否定出来ないな。ほら行くぞ」

 

「ちょ……し、仕方がないわね」

 

ようやく理解した紡絆は夏凜の手を取る。

すると夏凜が顔を赤めたが、それに気づかないまま空けてくれている友奈と樹の間に夏凜と共に入り、ついに全員で円陣を組んだ。

 

「あんたたち、勝ったら好きなものおごってあげるから絶対死ぬんじゃないわよ!」

 

なんだかんだで、頼れる皆の部長が自身の不安を押し殺して皆をいつものように鼓舞する。

 

「よーし! おいしいモノい~っぱいたべよっと! 肉ぶっかけうどんとか!」

 

明るく、楽しい未来を見据える友奈に気負いはなく、終わった後の出来事を考えているのか既に楽しそうな笑顔を浮かべていた。

 

「いわれなくても殲滅してやるわ。それこそ、あんたたちの出番がなくなるくらいにはね」

 

不敵な笑みを浮かべた夏凜が、いつもに増して強気な言葉を言い放つ。

 

「私も…。叶えたい夢が出来たから、止まれない」

 

そう言った樹は、夢を追いかける者の表情となっており、確かな勇気をその心に宿していた。

 

「頑張って皆を、国を、守りましょう!」

 

護国の誓いと友への思いが、東郷の中で静かに燃えている。

大切な護国と大切な友。自分の中で大切なふたつを守るために。

 

「よーし、勇者部はファイト……って言いたいところだけど、ここは紡絆に任せるわ。その方がいいでしょうし、バシッと決めなさい」

 

「え、俺? ちょ、何も考えてないんですけど!? 特になかったから何も言わなかったのに!」

 

皆がそれぞれ一言言っていたのに、何も言わなかった紡絆が風に指定される。

急に振られて困惑するが、皆の視線が集まり、期待するような目で紡絆を見ていた。

紡絆の言葉は人を動かす。勇気を与える。

この場で適切だろう。

 

「紡絆くん、お願い」

 

「きっと紡絆くんの言葉は皆に深く届くわ」

 

「はい、紡絆先輩はいつだって私たちに力をくれましたから」

 

「ふん、下手なことは言うんじゃないわよ。けど…期待しておくわ」

 

なんかもう雰囲気的に逃れることも断る事もすら出来ず、紡絆は一瞬で諦めた。

こんなに言われて無理と言ってしまえば、格好が付かない。

 

「ほらほら、みんな待ってるわよー」

 

「あーはいはい。わかりましたって! まったく、こういうの考えるのはそこまで得意じゃないんだけどな」

 

はぁ、とため息をひとつ零した後、紡絆は思考するように目を閉じる。

元々考えるのは得意ではないというか、こんなことになるなんて思ってなかったため、何も考えてなかったのだ。

それでも頼りにされ、期待する目で見られていると流石に考えないわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

20:名無しの転生者 ID:sUEQ5epZJ

あれやろうぜ! プライド・オブ・ガイズ!

 

 

21:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

なにそれ

 

 

22:名無しの転生者 ID:h40POjAM0

情報ニキー

 

 

23:情報ニキ ID:JoUHou2in

ウルトラマンメビウスという作品で行われた作戦のひとつ。

まず磁場フィールド内に誘導することでバリアの檻で怪獣を閉じ込め、そこで撃破するって作戦。

その怪獣は死んだ際には直径100㎞の爆発を起こすとされ、本当は1200mmシンクロトロン砲で撃破、爆殺させるのが本来のボガール殲滅作戦だったが、当然失敗。

で、現れるであろうウルトラマンを犠牲にしてでも人類が生きるために倒す作戦だったが、GUYSという組織がそれを否定し、希望を模索した結果、GUYSの誇りにかけていつも助けてくれたウルトラマンを救うという決断の元に行われたメビウスの中でも名シーンのひとつ。

その時、メビウスは自身が餌として見られてるのを知っていて自ら誘導役に挙手して磁場フィールド内に入るわけだが、もうひとりのウルトラマンと共闘して撃破し、GUYSがメテオールで空けた穴から脱出に成功した。

名シーン中の名シーンだぞ!

 

 

24:名無しの転生者 ID:DQzYQVORG

MADでも入ってるシーンだからな。あの話と22話の日々の未来はメビウス語る上で外せん

 

 

25:名無しの転生者 ID:dSnA5gP+E

まぁ、この世界にGUYSはないからもじる感じにはなるけどな

 

 

26:名無しの転生者 ID:v6WJNYydG

でもやっぱやりたいよね、やれ

 

 

27:名無しの転生者 ID:Nd0u8yEbD

どうせ何も考えてなかったんやろ?

 

 

28:名無しの転生者 ID:TmzqFqUI0

ほらほら、早くしろよー

 

 

29:名無しの転生者 ID:Nnf4xLM94

待たせちゃ怪しまれるぞー

 

30:名無しの転生者 ID:vYSXyxmDZ

それに何時襲われるか分からんからな

 

 

31:名無しの転生者 ID:1jWLdlqST

やっちゃえよ、ほら!

 

 

32:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

ええい、ままよ!

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

すぅーと深呼吸して空気を吸い、息を吐いた紡絆は表情を引き締めて後頭部をガシガシと掻いた後に皆の顔を見る。

誰も不安のような表情を浮かべておらず、誰もが未来を見ているようだった。

 

「俺から言えることはひとつ。俺一人じゃ全て相手にしても勝てない。俺じゃなくたってそれは皆同じだ。相手がどれだけ強いのか、俺たちは知ってる。でも、みんなが力を合わせれば俺たちの力は何倍にだって膨れ上がるはずだ」

 

一人で足掻いても勝てなかった戦いがあった。

全てを背負おうとして挑んだものの、返り討ちにあったことがあった。

全滅する可能性があった時や、精霊がいなければ何度も死んでいたであろうダメージを受けた。

けれど、その全てを糧に、その力(精霊)も含めて今があるのだ。

それなら、今までそうして来たように、これからも。

 

「皆それぞれ、まだまだ楽しいことも、やりたいことも、夢も、思い出も、後残りはいっぱいあるはずだ。そのためにも必ず倒そう。どれほどの強敵だったとしても、俺は決して諦めない。

だから生きて、みんな無事にまた明日を生きよう。いつも通りの日常に帰るために!」

 

紡絆は一人、開いた手を前に突き出す。

ここに誓うために。

決して諦めないという誓い。

 

「もちろん! まだまだ依頼も残ってるしお出かけや遊ぶ予定もまだまだ残ってるしね!」

 

また一人。

友奈が紡絆の手に自身の手を重ねる。

無事に帰り、勇者部の、元の日常へ必ず戻るという誓い。

 

「そうね、それに紡絆くんのお腹のためにも必ず勝たなきゃ。だから私は何があっても信じてるわ。紡絆くんを、友奈ちゃんを、みんなを」

 

さらに一人。

東郷が手を重ねる。

大切な人たちを信じて、必ず勝つという誓い。

 

「ほんとね。文化祭の準備だってあるんだから負ける訳にはいかないわ」

 

ここに一人。

今度は風が手を重ねた。

まだ少し先の未来だけれども、それでも大変で楽しくなる未来を必ず掴み取るという誓い。

 

「うん、私もまだまだ頑張らないといけないから……小都音ちゃんにも話したいことたくさんあるもん」

 

もう一人。

風の上に樹が手を重ねる。

夢見る少女は、夢を追いかけるためにも、友の元へ戻るためにも現実に必ず帰るという誓い。

 

「バーテックスを倒してお役目を終える。それだけよ。けど…こういうのも、あんたたちといるのも悪くはないかもね」

 

最後に一人。

夏凜が手を重ねた。

口では素直ではないが、纏う雰囲気や様子でわかる。本当は悪く思ってないことを。

必ず打ち勝ち、皆との居場所を、自身を受け入れてくれた勇者部へ帰るという誓い。

ここに、それぞれ別の思いと誓いが確かに築き上げられた。

この場の全員が思っていることは、つまるところ『必ず勝つ』。

理由はどうあれ、必ず勝って、戻る。

一人も欠けることなく、全員で。

負けられない戦いだったのが、より負けることの許されない戦いへ切り替わっただけだ。

 

「みんな違う。でも結論は同じのはずだ。

みんなを守るために、世界を守るために必ず勝とう。勇者部の誇りにかけて!」

「勇者部の誇り…いいね!」

「素敵な言葉」

「もちろん、必ず勝つわよー!」

「はい、終わらせましょう…!」

「勇者部の誇り、か…確かに、いいわね」

 

なんだかんだ言っておいて、こういう場では本当に適切なのだろう。

紡絆の言葉は受け入れられ、みんな笑顔を浮かべる。

もうすぐ戦いというのに、一人ではないと一緒だと手を伝って心へ響き、温かい光を浴びてるような錯覚に陥る。

 

「じゃあ……作戦名はPRIDE(プライド)OF(オブ)HERO(ヒーロー)!」

 

「「「「おーっ!」」」」

 

「お、おーっ!」

 

流石言うべきなのか、紡絆の分かりやすさが吉と出たのか。

一人だけ慣れてないせいで一歩遅れたものの、長くいる勇者部の面々は何も言われていないのに綺麗に揃え、紡絆の合図とともに全員が一気に手を降ろし、重ねった手は離れるが思いは確かに繋がった。

 

「……くっ!」

 

が、もう一人はやはり外国語はそこまで好きじゃないらしい。

日本語だと良いようだが、英語は好きでは無いのだろう。

まあ勉強したくないという意味でテストで唯一低いレベルなのだから。

 

「そう言えば、なんでヒーローなの?」

 

「勇者はヒーロー。ウルトラマンはヒーロー。Braveよりしっくり来るかと思ってな。あと語呂」

 

「へぇ、考えたのね」

 

「紡絆が頭使って良い答え出すなんて珍しいじゃない」

 

「おい後輩になんてこと言うんだこの人」

 

繋がった……はずである。

それはともかく、準備は整った。

あとは紡絆が変身するだけであり、紡絆は両手で喝を入れるようにパンっと心地よい音を顔を叩くことで鳴らした。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「すっげー痛い。けど、これくらいやらないとな!」

 

赤くなってるのを見て何処かの先輩と違い、健気な後輩は心配するが、紡絆は癒されつつ笑うと、地面を踏みしめている両足を滑らせるように少し開く。

そのままエボルトラスターを握ると鞘の部分を左腰に固定し、鞘の部分を左手で握ったまま、柄を右手で掴む。

抜刀するように前方に引き抜いたエボルトラスターの剣身は横に向いており、一瞬だけ輝く。

紡絆はそのままその剣身を左肩に当てると右腕を伸ばして剣身を空に掲げた。

その瞬間、エボルトラスターを中心に紡絆の体も黄金色に輝き、人際眩い光が放たれると、紡絆の体はネクサスへと変わっていた。

青い光の中、水が弾け飛ぶように爆発し、青から赤へと変わる光の中をネクサスが片腕を突き上げながら飛びだす。

 

『シュワっ!』

 

一度空中で回転したネクサスが両足と片手を地面に着く所謂スーパーヒーロー着地で現れると、ネクサスは立ちながら相手を見据える。

人数差でも不利で、戦力でも不利だろう。

それでも、立ち向かうしか彼ら彼女らには選択はないのだ。

 

『さぁ、来い』

 

遠く離れているファウストが手のひらを上にしてクイッと指を曲げることで挑発する。

それに対して、ネクサスはファイティングポーズを取った。

 

『デェアッ!』

 

誰よりも早く、ネクサスがファウストを見据えながら走っていく。

しかし七体のバーテックスの中、他のバーテックスよりも速いスピードでファウストを守るように突出している敵が一体。

ナメクジやカブトガニに近い姿を持ち、電気椅子をモチーフとしている牡羊座の名を冠したバーテックス、アリエス・バーテックスだ。

 

『出陣!』

 

「よし、殲滅!」

 

「私たちも!」

 

「「はい!」」

 

法螺貝を鳴らす義輝と凄まじい速度で走っていったネクサスを合図に、遅れて先頭を行く夏凜とそれに続く友奈、風、樹。

東郷はその場で狙撃態勢に入り、遠方からの攻撃を狙う。

 

「侵攻速度にばらつきがある…?」

 

取り出した端末で敵の位置を確認した東郷が、そう呟いた。

『獅子型』と書かれた一際大きなマーカーを殿として、残るマーカーがそれぞれのスピードでこちらに近づいてきていた。

残念ながらファウストの姿は映ってないが、距離が近いのを考えると『牡羊型』と書かれたマーカーの後ろ辺りか。

だが、大勢で攻めてきた割にはその利を生かそうとしていないように見えるその行動に、東郷は内心で首を傾げる。

二度目の戦いのとき、あれほどまでに厄介な連携攻撃を仕掛けてきたバーテックスが今更そんな稚拙な戦闘を行うだろうか? いくらファウストが居たとしても、奴らはスペースビーストと共闘してウルトラマンを全力で殺しに来ていた。

今更個々の力で戦ってくれるほど甘い存在なのかと言われると間違いなく違う。

しかし今考えていても答えは出ない。相手の意図が読めない以上、まずは適宜対応していくしかないだろう。

僅かな逡巡の末に意識を切り替えた東郷は、警戒を常にするよう心構えしながら端末を消すとスコープを覗き込む。

 

「獅子型のあいつは…。なるほど、明らかに別格ね。でも、まずは…」

 

まるで自分自身がボスだというように獅子型は中央の後ろに居り、表示されるマーカーも人際でかく、見た目に関しても獅子の顔を象ったような姿に日輪のようなオブジェクトが備わっており、その姿はさながら太陽をも思わせる。

 

『シュアッ!』

 

スペック的な意味でも一番速いネクサスが、一番近いアリエスと接敵する。

ネクサスが拳を握りしめ、対するアリエスは頭の触覚部分からエネルギーを貯めていた。

それが何なのかと考える暇もなく、アリエスから放たれるのは放電。

すなわち、雷撃。

直撃すれば間違いなくダメージは受けるであろうそれを、ネクサスはアームドネクサスを輝かせ、振り払うように凪ぐ。

一発では無理だと考えていたのか連発する度に、ネクサスは次々と薙ぎ払い、時に逸らす。

 

『ハァァァァ……デアッ!』

 

そしてアームドネクサスをクロスさせながら雷撃を受け止め、近づいた瞬間にはネクサスは拳を突き出すことで、アリエスを吹き飛ばす。

 

『ぐ……っ』

 

追撃を、と言ったところで打ち消し切れてない雷撃の蓄積による影響と以前のダメージに動きを止めてしまった。

全く役にも立ってないと思われていた雷撃は、蓄積という形でネクサスにダメージを与えていたのだ。

 

「一番槍は奪われたけど、勇者としての一番槍はもらった---ッ!」

 

怯んだネクサスにさらに雷撃を与えようとチャージし始めたアリエスだが、その隙を埋めるように空を跳び、走る勢いはそのまま全身の捻りを加えた右の一刀をアリエスの顔面に夏凜が叩き込む。

勇者の中では機動力に優れる夏凜だからこそ、間に合ったこと。

そして渾身の一撃は、バーテックスの顔面を大きく切り裂きその頭部を大きく損傷させた。そこにすかさず、青色の弾丸が突き刺さる。

刀を振った勢いのまま上下反転した姿勢でそれを確認した夏凜は、その狙撃手がいるであろう位置を一瞥して口角を釣り上げた。

 

『っ……フッ! デェ---ッ!?』

 

顔を振るい、意識をしっかりと保つネクサスは勢いよく斜め下に腕を振り下ろし、抜刀するような構えを取ることでエネルギーを循環させ、さらなる一撃を叩き込もうとした。

しかし、光線はやめることとなり、その理由はアリエスの上空から降り注ぐ闇のエネルギーが答えだ。

 

「させるか! 融合する前に叩く! 封印開始---ッ!」

 

一瞬の判断。

融合型なんて出されれば、ほかのバーテックス相手など不可能。

だからこそもうひとつの刀を地面に突き刺し、一人で封印の儀が可能な夏凜が封印を執り行うと、アリエスの肉体に降り注ぐエネルギーが一瞬途切れた。

神樹の力ゆえか、それとも偶然か。

何はともあれ、ネクサスは即座に駆け、封印の範囲を超えないようにしながら暗雲からアリエスの肉体を離す。

 

「すごいよ夏凜ちゃん!」

 

「紡絆もナイス! 融合される前に倒すわよ!」

 

そうして封印の光に包まれたバーテックスは、すぐにその下半身ともいうべき部分から、核たる御魂を出現させた。

しかし、そんな易々と終わるような相手ではなく、出現した御魂は超高速で自転運動を始める。

 

「何…回ってんのよ!」

 

すかさず夏凜が、残っていた左の刀を御魂に向かって投擲する。

夏凜の技量と勇者の膂力によって投擲された刀は重心を軸に回転しながら直進し、御魂へと直撃する---が、そのまま弾かれてしまった。

 

「ちっ!」

 

『ヘェアッ!』

 

自分の武器が粉々になるその光景に、思わず夏凜から舌打ちが漏れる。

ならば、と今度こそネクサスが光線技を放つために御魂へ振り向き、動作を取る。

その瞬間、御魂は己の存在を無視してネクサスへ高速回転しながら突撃した。

 

『ぐっ!?』

 

自分はどうなってでもウルトラマンを殺しに来た姿勢にネクサスは驚き、すぐに両手で御魂を掴む。

しかしドリルのように回転する御魂と受け止めるネクサスの両手から火花が散り、威力の高さ故か、ネクサスが徐々にバーテックスの集団の方へと追いやられてきている。

 

「紡絆くん!」

 

『……ッ! デヤッ!』

 

即座に受け流すように空中に投げ飛ばし、両手から伸ばしたセービングビュートが御魂を掴み取る。

多少回転が緩くなり、そこを跳んできた友奈の拳が勢いを殺すのと同時にヒビを入れ、ネクサスは一気に地面に叩き落として割って見せる。

いえーいと明るくハイタッチするフリをする友奈と流石に出来ないため、頷くネクサスを遠くから見ていた東郷は静かに微笑んだ。

例え変身していても、彼は変わらないのだから。

しかし、すぐに表情を引き締めなおす。幸先はいいがまだ一体。他に六体も控えているのだから油断はできない。

それにしても---

 

「今の敵の動き…まるで叩いてくれと言わんばかりの突出。何故あえて突っ込んできたの……?」

 

何かがありそうだと怪しんでいると、先程壊した御魂から七色の光が天に還っていくが、暗雲がその光を飲み込んでいくという異質な光景を既にネクサスが見ており、東郷もスコープで覗く。

 

『ヘェ……!?』

 

そして、ネクサスは見た。スコープでは捉えきれない距離。

だがウルトラマンの視力を持ってすれば地球から宇宙を見ることが出来るほどだ。

だからこそ、ネクサスは警戒心を高めるしかなかった。

闇が濃くて何かは分からない。それでも、()()()()()()()()が七色の光を吸収していたのだ。

バーテックスの能力を吸収しているかのように。倒したはずなのに、融合型へと進化しているような、そんな様子を感じさせるような。

少なくともいい予感はせず、嫌な予感しか感じない。

 

「紡絆?」

 

「紡絆先輩、大丈夫ですか?」

 

駆けつけ、一箇所に集まった勇者たち。

一向に動こうとしないネクサスを訝しげに見つめる夏凜と心配した様子で問いかける樹に、ネクサスはハッと周りを見渡し、また上空を見た。

釣られるように敵が近いというのに全員が見上げると---

 

 

『ジュ……!? ハアッ!』

 

飛んできた斬撃に反応したネクサスがパーティクルフェザーを二発放ち、防いでる合間にパーティクルフェザーを蹴ることで斬撃を蹴り返す。

しかし蹴り返した斬撃はあっさりと防がれ、凄まじい波動の渦を感じる。

 

「ちょ…何か危なそうなんだけど……!」

 

『デアッ!』

 

暗雲が拡がり、凄まじいエネルギーとともに()()()が降りてくる。

そのエネルギーを防ぐために友奈たちの前に立ち、サークルシールドを展開する。

お陰で吹き飛ばされることはなかったが、ナニカは降りてきた。

そのナニカは地面に着地するなり、土煙を発生させ、全く気配が読めなくなる。

サークルシールドを解除するが、最後まで見ていなかったネクサスはナニカが降ってきたしか分からない。

いや、それは勇者たちですら同じだ。

暗雲が消えたということは、間違いなくナニカは来た。

新手のバーテックスかと思い、風がスマホを取りだした。

 

「なっ……使えない!?」

 

「えっ!? あ、ホントだ!」

 

「っ…どうやらこっちもね」

 

「私もです…!」

 

スマホを見てみれば、さっきまで表示されていたはずのバーテックスのマーカーすら消え、着くだけ着くが、連絡手段は途切れた。

似たような事象や現象を考えるなら()()の時や()()()()()()に近い。

しかし何もいない。何も見えない。ネクサスですら、東郷ですら、夏凜ですら、誰も気づかず、誰も感じれず、誰も分からない。

だが紡絆だけは違った。

知っているのだ。電気を食らう怪獣が居ることを。透明になれる力を持つ怪獣が居ることを。

脳が否定する。この世界は別だと。

次元そのものが違うのだから居るはずがないと。

でも---()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ! まさか!?」

 

東郷が何かに気付く。

先程の暗雲は何かは分からないが、振り返って見たのだ。

アリエスの行動は、はっきり言って異常だ。

なぜなら集団戦において突出するというのは各個撃破のチャンスをみすみす敵に与えるようもの。

相手が突出してくるのであれば、まずはそこに戦力を集中させて迅速に撃破。その後の展開を非常に有利にすることができる。

それが普通であり、厄介な存在を消すチャンスは誰であって見逃すはずがない。

しかし()()()()()()()()()()()()()()()

東郷が答えに行き着き、スマホを取り出して連絡すると、通じない。

 

「しまった……! なら、あれは連絡手段を奪うためのもの…!? つまりみんなを一点に集める為の罠…!!」

 

アリエスの行動は完全に理解したが、未だによく分からなかった暗雲の行動に仮説を立てる東郷。

確かにそれは合っているのかもしれない。

それでも、遅すぎた。

この場に必要なのは正解不正解どちらではなく、()()()()時点で意味が無いのだ。

仮説があっていても関係ない。間違っていても関係ない。

何故ならもう---手遅れなのだから。

 

『ガッ……ウアアアァァ!?』

 

悲鳴が響く。

忍び寄ってきていた牡牛型バーテックスの大音量の怪音波が、一か所に集まっていた勇者達へと叩きつけられており、ネクサスは誰よりも前にいて、誰よりもバーテックスの近くに居り、誰よりも---耳が良すぎた。

例え人間の小声でも、ちょっとした物音でも聞こえるほどウルトラマンの素のスペックは人類を超越している。

離れていても勇者たちが苦しむほどの怪音波をネクサスが間近くで受けるとなると、予想は容易。

両耳を抑えたネクサスが倒れ、苦しむ。

 

「な…何よこの気持ち悪い音は……っ!?」

 

「こ、これくらい、勇者なら……あ、ぁ……っ!」

 

「あ、あたしらでもこれって……!」

 

牡牛座の名を冠したバーテックス。牛の角のような部位があり、コケが生えているその姿はまるで巨大な石のオブジェを思わせるバーテックス。その見た目から、ファラリスの雄牛をモチーフとしているのだろう。

名をタウラス・バーテックスと言い、体についているベルから耐え難いほどの怪音波で攻撃してきている。

音による実体のない攻撃故に、彼女達の精霊バリアは起動せず、自分たちですらキツいということから、風は紡絆のことを心配していた。

 

『ハアッ!』

 

『あぐっ……!』

 

そして厄介なことに、ファウストが斬りかかってくる。

動けないネクサスはパーティクルフェザーを飛ばすために耳から手を離し、やはり近すぎるのもあって放つ前に耳を抑えてしまう。

迫る剣と音による同時攻撃。

だが---()()()()()()()()

 

『ヘェ!?』

 

突如として動けなくなったネクサスの体。

両手が塞がってるなら両足で対抗しようとしたのだが、両足に凄まじい痛みが走り、動けない。

 

『グアアァ!?』

 

当然、そうなればネクサスは肉体で受けるしかなく、剣による攻撃を直撃で受け、手が地面に着く。

その瞬間、ナニカに蹴られた。

 

『グア、ウウッ……!』

 

吹き飛ぶネクサスは、自身が吹き飛びながら崩れ落ちそうな勇者たちを見て、空中で回りながらタウラスへ突っ込もうとした。

 

『ッ……!』

 

その前に立ち塞がる、何者かが居た。

ナニカは分からない。しかしネクサスは無意識に止まり、サークルシールドを展開する。

その瞬間、凄まじいエネルギーの奔流がネクサスをはじき飛ばした。

 

『シュワ……!』

 

サークルシールドのお陰でダメージはないが、近づけない。

まるで()()()()()に妨害されているようだが、その()()()が先程のエネルギーを放った影響でついに姿を現した。

()()から捉えられる印象は()だ。

岩のような配色と融合型らしき白色の肉体に、全身の赤色の部分に存在する黄色の発光点。

さらに幾つか生えている水晶と管状の口吻が特徴的で、アリクイにねじれを取り入れた印象を受ける。

さらに申し訳程度にアリエスと融合した証にアリエスの触覚が頭に着いており、力強さを感じさせる()()()()---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

358:名無しの転生者 ID:OPTrK9Yjv

っそだろ……!?

 

 

359:名無しの転生者 ID:5USXGknSP

おい…マジか? マジなのか……! よりによって、このタイミングで来るのか……!?

 

 

360:名無しの転生者 ID:uf5boU6KA

やりやがったっ! 最悪だ! やっぱり気づかれてる!

 

 

361:名無しの転生者 ID:mtEw0uCPQ

くそ、イッチの肉体が限界なのを知って、この総攻撃かよ! 強化されたファウストだけでもキツイってのに今も厄介な音! さらに融合型の出現だと!?

 

 

362:名無しの転生者 ID:/4aIRWtO8

まずいぞイッチ! そいつだけはネクサスにとって、今のイッチにとって宿敵にも程がある…!

 

 

363:名無しの転生者 ID:DoHpznJcp

いくらボロボロだったとはいえ、こいつは姫矢さんと三度も渡り合った敵!

 

 

364:情報ニキ ID:JoUHou2in

インビジブルタイプビースト、ゴルゴレム……!

体長55メートルで体重5万トンあるスペースビースト!

管状の口吻、ゴルゴレムプロボセスを伸ばして人間を捕食するほか、口吻から吐く火炎弾、全身の発光点から放つ雷に似た破壊光線を武器に持つ!

さらにゴルゴレムプロボセスのリーチはかなり長くまで伸び、相手の背後を突くこともできる程の伸縮自在の器官だ!

加えて前方にバリアを展開出来る上に、溶岩石のような甲殻はTLTが持つスペースビーストに大ダメージを与えられるストライクチェスターのストライクバニッシャーですら通用しないなど、純粋な防御力も高い!

そして何より最大の特徴は、背中にある水晶のような発光器官による別の位相へ移動して透明になる能力。

この状態ではあらゆる攻撃がゴルゴレムの身体をすり抜けて無効化されるため、ほぼ無敵となり、唯一対抗出来る力はネクサスが持つメタフィールドのみという……!

 

 

365:名無しの転生者 ID:drCuQdQxu

つまり、メタフィールドを展開しない限り絶対に勝てない敵だ!

 

 

366:名無しの転生者 ID:gDhTonSkp

しかも死角をカバーするし、簡単に言えばグロテスクな飛竜フ〇フル!

 

 

367:名無しの転生者 ID:oPQzWKscZ

前半に来いよバカヤロー!

 

 

368:名無しの転生者 ID:5tAFiDLiJ

いくらイッチでもこいつは……

 

 

369:名無しの転生者 ID:GyiQVcPrK

一応水晶を破壊すれば位相移動ができなくなる……ただし再生能力が高いから壊されても約480秒で再生する!

更に破壊されるごとに耐性をつけて再生時間を短縮する適応力までも備えるぞ…!

 

 

370:名無しの転生者 ID:xwuDZdaH8

いつもの融合型って言うよりかは純粋に取り込んだって感じか…一体どれだけ本編より強化されてるか

 

 

371:名無しの転生者 ID:3gddmhnyD

こっちはただでさえ融合型を防ぐ防がないでも御魂を壊さないといけないのにそれが相手の強化に繋がるのは辛い…

 

 

372:名無しの転生者 ID:aLYP+tUs1

メタフィールドの展開は、イッチの限界が近くなる…!

 

 

373:名無しの転生者 ID:p6bBrAneg

ウルトラマン来てくれー! ベリアルでもいいからー!

 

 

374:名無しの転生者 ID:tGNVIQlvl

ウルトラマンが欲しい…(切実)

 

 

375:名無しの転生者 ID:5LCZzlJtC

>>372

そう、それだ。この狙ったかのようなタイミング…間違いなくイッチのことはザギさんにバレてる…!

純粋に何処からか覗いてるのか、擬態してるのか乗っ取ってるのか情報を盗んだのかどれかは分からんが

 

 

376:名無しの転生者 ID:XytXB9NFc

>>373

これ以上イッチに対するオーバーキルはNG

今ベリアル来たら死ぬわ!

 

 

377:名無しの転生者 ID:DbCM7Lixu

待てよ、アリエスって能力不明では?

 

 

378:名無しの転生者 ID:Oye3GGD6G

うーん…雷撃使ってたことくらいか?

 

 

379:名無しの転生者 ID:3Rpt42XO3

うえぇ、さてはまだ能力残ってんの…?

 

 

380:名無しの転生者 ID:NmetOKzRP

ん? ちょっと待て…確かゴルゴレムって

 

 

381:名無しの転生者 ID:XgneCMVmT

あれ… 雷に似た破壊光線使えなかったっけ?

 

 

382:名無しの転生者 ID:Nq7XaElEs

あっ…

 

 

383:名無しの転生者 ID:+PYpv+bdd

うっわ(ドン引き)

 

 

384:名無しの転生者 ID:91HaqtNeX

だからアリエス突っ込んできたんかぁ!

 

 

385:名無しの転生者 ID:rP1+FYqHj

そりゃそうか! 普通相性良い奴を融合させるよな! 前回はそれでイッチ追いつめられたし!

 

 

386:名無しの転生者 ID:yqt+zPEtF

それにあれは…レオかな?

あいつは融合させるには惜しいだろうからな。バーテックス側の戦力的に。

仮に合体させるならゴルゴレムを超えるスペースビーストだ

 

 

387:名無しの転生者 ID:dyta7wXAa

ってかもしかしてゴルゴレム→雷

アリエス→雷撃

その二体の融合によって連絡手段というか携帯の機能が奪われたのでは?

 

 

388:名無しの転生者 ID:2fp/72Wsd

まぁ何もいないのに現れたから透明系だろうなとは思ってたが…こいつが存在する限り連絡は不可能、か

 

 

389:名無しの転生者 ID:9douvD9jT

どちらにせよ、イッチがピンチだ。多分耳殺られた

 

 

390:名無しの転生者 ID:tdzNJaJOZ

今回ばかりはマジでやばいな…! 普段は余裕なくてもこっち見れる余裕があるイッチが何も喋らねぇ!

それにあれほど近くてあんだけ痛みで悶えてたってことは出血はしたかもしれん…!

 

 

391:名無しの転生者 ID:Um1X5j2jr

まあ多分俺らの情報を聞くだけなのと耐えるので精一杯なんだろ。はっきり言って能力が厄介だわ強いわでスペースビーストの中でも上位に位置するぞゴルゴレム!

それにバーテックスの鐘によるダメージはどうか見えんが、出血は起こってても不思議じゃないからな…!

 

 

392:名無しの転生者 ID:P4bYAO4Ne

とにかくファウストを抑えつつゴルゴレムとスペースビーストの撃破するしかないか…!

 

 

393:名無しの転生者 ID:znh3i1jsy

融合型なのにゴルゴレムって普通のタイプとややこしいしもうなんの捻りもないゴルゴレオスでいいや。融合型らしい名前でいいだろ

 

 

394:名無しの転生者 ID:62o5ij7bJ

Go〇gle検索掛けたら古代ギリシア語か。元はクリーオスだし、ただ他の言語だと変な名前になるしいいんじゃないかな通常個体と差別化さえ出来たら。

 

 

395:名無しの転生者 ID:xDBkQITgd

名前はどうでもいいが>>392無理じゃね? 詰んでない?

 

 

396:名無しの転生者 ID:aqp659u41

俺たちに出来るアシストはやるしかないな…

 

 

397:名無しの転生者 ID:qxzHZKG+q

勝たなきゃ世界も全部終わりだ! 根性見せろイッチ!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インビジブルタイプビースト、ゴルゴレム。

アリエスの力を取り込み、昇華した融合型昇華獣ゴルゴレオスと名付けられた敵。

音による攻撃は続いており、タウラスに近づこうにも行けない。

 

『デェヤッ!』

 

なら少しでも怯ませばいいとネクサスはゴルゴレオスに突っ込んでいき、掴もうとしたところで()()()()()

 

『ヘッ…!?』

 

通り抜けてしまい、ネクサスは困惑しながら振り向く。

その瞬間、透明化で回避したゴルゴレオスが実体化し、既にネクサスの胸に蹴りを入れていた。

 

『ぐあっ……デアッ!』

 

怯ませるつもりが逆に胸を抑えて怯み、悪寒を感じたネクサスはしゃがみこんだ。

すると、ネクサスの頭上を何かが掠める。

ビュン、といった風を切るような音が聞こえ、ネクサスはしゃがんだ状態から地面を蹴り、回転して後方に蹴りを叩きつける。

 

『ジュ… あああぁぁ!?』』

 

その蹴りは容易に防がれ、反撃にと掴まれて地面に叩きつけられ、そこへ迫るネクサスに集中された怪音波にネクサスはまた両耳を抑えた。

 

「紡絆くん……! あのベルだけでも止めれば!」

 

一部始終を見ていた東郷は後方にいるため、鐘の影響を受けておらず、一人で二体と一人の相手をする羽目になっているネクサスの援護をすべく銃口をタウラスへ向ける。

音さえ止めれば、他の勇者も復活する。音に耐えながら捌くのだけで精一杯な紡絆を援護に行けるだけの戦力ができる。

発生源はタウラスの頭上でゆったりと前後に揺れるベル状の部位なのだろう。

だからこそ、狙うべきターゲットを見定めた東郷が、静かな怒りを込めながら狙撃銃の引き金を引き絞る---

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

突如として引き金を引き絞る寸前で東郷の目の前に巨大な頭部が地面から染み出すように姿を現した。

イカやクラゲに近い姿をした魚座の名を冠したバーテックス。ピスケス・バーテックス。

 

「まさか地中を…!?」

 

その通り、地面に潜航し、その中を泳ぐ能力を備えた新手の敵は、今の今までその存在を地中に隠し続けて接近していたのだ。

そしてその名の通り水面を跳ねる魚のごとく地面から飛び出した魚型バーテックスは、飛び出した勢いのまま東郷の頭上を越え、大きく地面を揺らしながら再びその中へと潜航する。

 

「くっ…これじゃ狙撃が…皆…!」

 

銃弾を無力化する姿の見えない敵が潜むこの状況では、東郷は狙撃を行えない。

地面の揺れもあるが、呑気に狙撃させてくれるとも思えない。

スペースビーストは成長していく生き物であり、ウルトラマンと勇者に対抗するべくスペースビーストとバーテックスの二種族は融合という技を見つけた。

勇者たちが成長するならばバーテックス側が。ウルトラマンが強くなるならスペースビーストやウルティノイドが。

当然成長するバーテックスも勇者がどういう力を持ち、何に弱く何に強いのか、知り尽くしているのだ。

ウルトラマンは単体で脅威であっても今の勇者など個人は取るに足らない存在だと。

なら個人戦にすればいい。合流させず、援護させなければいいだけの話。

あとはこっちも連携し、近接組を潰せば戦えるのは一人だけになるのだから。

 

『シュア……デェア! ヘェアッ!』

 

一方でネクサスは怪音波の範囲からある程度離れたお陰でマシになり、ゴルゴレオスに攻撃を仕掛ける。

しかしすり抜ける。すり抜ける。すり抜ける。すり抜け---そして火炎、雷撃といった攻撃で反撃を受け、そこへファウストの斬撃や打撃が飛んでくる。

例え攻撃の際に実体化すると考え合わせて攻撃しても当たらず、隙を見つけてパーティクルフェザーを放てば、展開されたバリアに防がれた後にダークフェザーが代わりに放たれてくる。

 

『ハァ、ハァ……』

 

エネルギーの消費は少ない。

エナジーコアも鳴っていない。

ただダメージが蓄積され、攻撃は当たらず追い詰められて行くばかり。

それにタウラスの元へ急がねば友奈たちが不味く、東郷の方にもバーテックスが向かったのを透視能力でみていた。

 

『随分苦しそうだな。諦めてしまえば楽なものを』

 

『………』

 

ファウストの言葉を聞いてもなお、ファイティングポーズを取り、ゴルゴレオスに勢いよく空中で回ってキックを繰り出すが、やはりすり抜け、背後を取られる。

ゴルゴレオスがネクサスを潰すために口吻を首元を噛み付こかせようとし、ネクサスは即座に体をずらして避ける。

 

『バカめ。時間を掛ければ掛けるほど勇者がピンチになっていくだけだ!』

 

『ぐっ……フアッ!』

 

次々迫る口吻を避け、アームドネクサスで斬りかかってきたファウストの攻撃を止めてゴルゴレオスに蹴りを繰り出すが、やはり透明化で避けられる。

ならば攻撃か通じる方に、と拳を握り、ファウストの剣をアッパーカットの要領で殴ることで大きく仰け反らせるとネクサスは勢いよく足を突き出した。

 

『グワッ……あぁああああ!? アアァァ…!』

 

その瞬間、透明化を解除したゴルゴレオスの口吻がネクサスの足に噛みついた。

悲鳴を挙げるネクサスの足がミシミシと食いこんでいき、嫌な音が少しずつ鳴る。

すぐにネクサスが手刀で叩きつけると、口吻は離れていくが、放たれた雷撃がネクサスの腹を貫通して吹き飛ばした。

 

「ううっ……紡絆くんが……っ!」

 

「このままじゃ、まずい……っ!」

 

仲間のために立ち上がろうとする友奈と状況を冷静に分析した夏凜が刀を取り出す。

しかし怪音波がより強くなり、流石に感情だけではどうにもならないようで、膝を着いた。

 

『く…アッ……シュワ…ッ!』

 

腹を抑えながら立ち上がるネクサスだが、血のように光が漏れている。

それでもネクサスは構え、友奈たちを見たあとに手を力強く握り、タウラスを見つめる。

 

『面倒だな……』

 

『ッ……?』

 

圧倒的に劣勢。

いくらアンファンスとはいえ勝ち目すら一向に見えないというのに、樹海も少しずつダメージが入っているというに諦めない姿に何処か呆れを含む声音だった。

 

『ならば、貴様にとって()()()()()状況にしてやる!』

 

『……!』

 

まさか、とタウラスではなくゴルゴレオスの方へ視線をやれば、口吻からは火炎を。全身の発光点からエネルギーを集め、触覚からはビリビリといった凄まじい力を感じる。

さらにファウストが剣を掲げ、赤黒いエネルギーを纏った。

即座にサークルシールドを展開する準備に入るが、()()()()()()()()()()()()()()()

片方は前に。片方は後ろに。

つまり、友奈たち四人の勇者と東郷一人を狙った勇者だけを狙った一撃が双方から放たれる---

 

 

 

 

 

 

『フンッ!』

 

『ジュワッ……!』

 

判断を誤り、通常では間に合わない。そこで賭けに出たネクサスは一瞬でクロスレイ・シュトロームを放ち、ファウストの斬撃を消し潰した。

そして光線の勢いはそのままフルバーストを放ったゴルゴレオスの一撃の元へ凄まじい速度で追いつき、勇者たちを守るように前に立つ。

迫る二属性の攻撃。クロスレイはチャージすることも出来なければ、パーティクルフェザーでは消しきれない。

サークルシールドでは背後ががら空きなネクサスに怪音波が炸裂し、勇者共々消し炭だ。

東郷の方は既にバーテックスがいるとはいえファウストの一撃は防いだ。

だが、ゴルゴレオスの一撃はそれこそジュネッスの力に匹敵し、チャージしていたことから分かる通り、ゴルゴレオスにとっても必殺の一撃なのだ。

ファウストが言っていた。避けれない状況にしてやる、と。

それはつまり、今の状況だ。動けない勇者は直撃すればタダで済まないし精霊バリアでも防ぎ切れるとはいえない。

防御しようにも手段はなく、迎撃も不可能。

もはや受けるしかなく、爆発が起こる---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ。どうしたら……!」

 

共に戦うどころか、足を引っ張っている。

指示を出そうにも、頭が痛ければ吐き気もある。不快でしかない音によって耐えるしかない状況だ。

今、紡絆は自分たちを庇って強烈な一撃が直撃していた。

心配ではあるが、この状況が続けば紡絆は何も出来ずに殺されるのだろう。

そう、分かりやすく言えば、自分たち勇者は人質だと風は理解していた。

ウルトラマンがどれほど強くても、中身は継受紡絆という一人の人間なのだ。

誰一人見捨てることすら出来ない超がつくほどのお人好しである紡絆なら危機となれば己を犠牲にしてでも守るし、ここに居るのが誰であっても庇うだろう。

故に敵にとっては絶好の攻撃チャンスであり、倒せなくてもダメージを累積させることは可能。

どちらにせよ音を止めることが出来ないと何の解決にもならなく、ついに第三陣である水瓶型と天秤型も攻撃圏内へと到達することで遂に二体のバーテックスが前線へと現れた。

三体のバーテックスが居並ぶ光景に、皆の心に絶望の二文字がよぎる。

 

そんな最悪な状況の中、耳を抑えつつ樹は不快感に涙を浮かべながらも、自分の心の中に苦しみとは別の感情が膨れ上がっていくのを感じていた。

誰もが苦しみ蹲る中、ゆっくりと樹が立ち上がる。

膝はガクガクと震え、額には脂汗が滲んでいる。

苦しくないわけじゃない。気持ち悪いし頭も痛いし、はっきり言って苦しくて苦しくて、嫌になる。

でも、それ以上に許せなかった。

今の樹を突き動かしているのは偏にその感情だった。

不快感を塗りつぶすほどの感情。

膨れ上がった感情の名前は『怒り』だ。

理不尽な苦しみに対する怒りも、大切な人たちが傷つけられていることに対する怒りも当然ある。何も出来ずに蹲るだけで大切な人に庇わられるだけの自分に対する怒りもある。

しかし、今一番樹が許せないのは---

 

「違う……!」

 

それほど期間があったわけではない。

いつもと違う場所で皆と過ごした。それほど長くいたわけではないが、時間が経つのが早いと感じるほど楽しくて、音楽は樹に思い出という暖かいものを形で与えていた。

 

「こんなものは……!」

 

テストの日、誰よりも早く駆け寄ってくれた小都音に言われたことが頭に浮かぶ。

 

『兄さんの言ってた通り、樹ちゃん歌上手だったよ。ね、その歌声を活かせる歌手とか目指すのいいんじゃないかな? 樹ちゃんにピッタリだし、私応援するよ?』

 

『か、歌手だなんて…私には…』

 

『なれるよ、絶対。うん、そんな確信があるし……きっと兄さんだって私と同じことを言うと思う』

 

『……じゃあ、小都音ちゃんさえ良かったら---』

 

自分のことのように嬉しく語って、夢を与えるひとつのきっかけの言葉を言ってくれて、約束を交わした日のことを。

あまり話さないクラスメイトたちですら褒めてくれて、それが凄く嬉しかった。

自分でも、音楽だったら人を笑顔に出来るのだと。

いつも真っ直ぐ人にぶつかって、誰かを笑顔にするあの人に近づけると。

 

「音は…音、楽は…ッ! 苦しめるためにあるんじゃない……!」

 

音楽は聴いている者の心を癒し、考えさせ、時に誰かを救う。

その人の歩んできた人生を伝えることの出来る立派なもの。感動させたり悲しむこともあれば、胸が苦しくなるような歌もあるかもしれない。

しかしその先にあるのは耐え難い苦痛ではなく、救済。感動だ。

 

『歌って人と人を繋げるものにもなったりするんだ』

 

『夢を追いかける心を忘れない限り、信じれば夢は叶う』

 

顔を見合わせると、行動を見ていると聴いていた通りの人で、話すことが出来なかった。

恥ずかしくて逃げて、話したくても話せなくて、傷つけてるんじゃないかと申し訳ない気持ちがあっても改善出来なかった。

それでも初めて、ちゃんとした会話が出来た時があった。

その言葉通り、今がある。音楽が、歌があったからこそ自分は繋がることが出来た。

持つことが出来た夢へ向かう勇気を確かに与えられた。

故に---

 

「音楽は誰かと誰かを繋げて幸せにしてくれるものっ! こんな苦しめるだけの音は間違ってる……だから、止まってぇー!!」

 

全てのきっかけをくれた音楽を、そのようなことに使われることに納得が出来ず、怒りが浮かび上がり、体を縛り付けるような不快感もそれ以外の何もかも振り払うように、樹は右腕を突き出した。

樹の怒りに呼応するように、突き出した右手の手首、そこに現れた鳴子百合型の装飾から若草色の光のワイヤーが一斉に飛び出す。

飛び出したワイヤーは、わずかに螺旋を描きながらもタウラスの鐘へと直進していく。

だが---

 

『防がせて貰おうか……!』

 

「ッ……!?」

 

突如上空に現れた黒い影。

ファウストがタウラスの元へ向かい、樹のワイヤーを斬るために剣を構える。

それでも樹はワイヤーを伸ばすしかなく、この一撃を防がれてしまえば音の妨害はもう無理になってしまう。

ワイヤーと剣。果たしてどっちが強いかなど答える必要もなく、無惨に樹のワイヤに対して剣が振り下ろされたー--

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閃光が翔ける。

勇気を出した一撃に応えるべく、心優しい少年は大人しくてオドオドしているにも関わらず、秘められた勇気を持つ少女の行動を無駄にさせないためにその輝きは一層強まる。

 

『デェヤアアアァァァッ!』

 

情熱を体現するネクサスの光。

消耗を減らすために変身することはしていなかったネクサスの戦闘形態(第二形態)、ジュネッス。

凄まじい速度で爆煙の中から出てきたネクサスを墜落させるように、透明化で近寄っていたゴルゴレオスが実体化とともに火炎弾を放つ。

さらに二つの巨大な水球を備えており、顆粒を束ねたような姿で大量の水に覆われている水瓶座の名を冠したバーテックス。アクエリアスがついに動き出した。

このままでは不味い思ったのかネクサスの進行方向に大量の水玉を配置することで行動の阻害に出る。

しかしマッハの速度でネクサスは見極めながら水玉と火炎弾を避けていくため捉えきれず、そのままネクサスはワイヤーが斬られる寸前でファウストの剣を横蹴りで逸らした。

 

『なに……!? ならばこれ---ぐっ!?』

 

あの攻撃を受けてもなお立ち上がれた姿に驚いたような声を出していたが、ファウストは即座に斬撃を放とうとして、ネクサスはファウストの体にしがみつきながら地面へと加速して落ちていく。

そうなるとワイヤーが通り過ぎ、樹か放ったワイヤーはタウラスの鐘を字搦めに巻き付いて停めさせることに成功する。

 

『離せッ!』

 

『ぐわっ…! ぐぅ……ッ!?』

 

ファウストは抵抗するように柄の部分で何度もネクサスの胴体を打ち付け、地面に落ちる寸前で怯んだネクサスを踵落としで蹴り落とした。

そこにゴルゴレオスが跳んできて、ネクサスを踏み潰す。

一度、二度潰したところで、三度目をネクサスは転がることで避けるが、口吻がネクサスの足に巻き付いて触覚が光ると、雷撃を与える。

だが、忘れてはならない。

さっきの行動で()()()()()()()()のだ。ならばもうネクサスは一人ではない。

 

「樹ナイス! 夏凜と友奈は紡絆をお願い!」

 

「分かってるわよ!」

 

「はい!」

 

紡絆のフォローと樹のお陰で動けるようになった風は即座に指示を出し、それと同時に夏凜は刀を手に地を駆け、即座にゴルゴレオスに斬りかかった。

しかしカキン、と金属同士がぶつかったような音が鳴り、弾かれる。

見た目通りの硬さを持つゴルゴレオスに威力が足りてない。

 

「やっぱりダメか!」

 

「夏凜ちゃん! 私も!」

 

「友奈……!? なら遅れるんじゃないわよ!」

 

「うん!」

 

夏凜に追いついた友奈が拳を握り締め、今も雷撃によってダメージを与えられているネクサスを救出するため、本体を狙うのではなく口吻を狙う。

 

『デェヤッ!』

 

『あぐ……シュア…ッ!』

 

そうはさせまいと地上へ落ちてくるファウストにネクサスが何とか腕を振るい、パーティクルフェザーを一発放つことで邪魔をし、作り出したその少しの時間はチャンスだ。

隙を逃さず、先に辿り着いた夏凜が口吻を×字に切り裂き、即座に友奈が振り絞った全力の拳を打ち付けた。

 

『ぐぐぐ---ハアァアアアアア…デェアッ!』

 

思わず、と言った感じで離される口吻だが、ネクサスは口吻を逃さずに掴み、ゴルゴレオスの体を持ち上げると一気に背後へ投げ飛ばした。

 

『ハアッ、ハアッ……』

 

ドガーンと地面に落ちたゴルゴレオスが初めて痛みに悶えるが、ネクサスは膝を着く。

痛み分け---と言いたいところだが、ネクサスの方がダメージが多い。

 

「紡絆くん上!」

 

「こんのっ!」

 

上空から加速し、迫るファウスト。

夏凜が即座に刀を投げるが、横に構えたファウストの剣に当たった瞬間、()()する。

 

「はぁ!?」

 

意味が分からないと言いたげな表情で思わず叫ぶ夏凜。

状況は変わらず、剣を振り下ろしてきたファウストの一撃をネクサスは回避しようにも動くことが叶わないため両腕を交差することで防ぐ。

しかし鍔迫り合いに持っていくことはせず、ファウストはそのままネクサスの顔面に蹴りを入れ、吹き飛ばした。

地面を転がりながら樹木にぶつかり、ネクサスは両手を地面に着く。

 

『……ッ』

 

全身が軋むような痛み。

コアゲージが鳴らないのだけが救いだが、バーテックスはまだ居て、融合型はようやく一度ダメージを与えただけ。

ファウストは剣によって強化されているのか、素のスペックでネクサスを超えている。

しかもネクサスは全力が出すことが出来ないのだ。ウルトラマンのスペックで全力で活動すれば樹海内がどうなるか想像に容易い。

もし光線技を神樹様の方へ撃てば傷つけるし、地面に当たってしまえば現実世界に影響が出てしまう。

 

(やるしか、ない……!)

 

唯一勝つ方法。

その選択を取ればどうなるか分からないが、この状況を打開するために行動しなければ始まらない。

目の前に迫る剣による一撃を弾き、前転で回避しながら起き上がるのと同時に回し蹴りを放つと、迫っていたゴルゴレオスが即座に透明化で回避した。

瞬時にバク転で距離を離し、ネクサスは両腕のアームドネクサスを十字にクロスする。

そして---

 

「いい加減っ---しつこいのよぉおおおおお!」

 

風は巨大化した大剣を横一文字に思いっきり振りぬいた。

怒りを込めたその一閃は、アクエリアスとタウラスの二体のバーテックスを中央から纏めて両断した。

御霊はまだ無事なものの、体を上下に分断されたバーテックス達の行動が停止する。

 

「一体逃した……!? 紡絆避けなさい!」

 

『ジュ……ウグッ!?』

 

ファウストとゴルゴレオスに気を取られていたネクサスは声に反応し、振り向く。

十字架と天秤を合わせたような姿をしている天秤座の名を冠したライブラ・バーテックスがいつの間にか存在していた。しかも暗雲からエネルギーが注ぎ込まれている。

すぐにエネルギーは消えたが、ライブラは高速回転し、ネクサスの体ですら油断すれば吹き飛ぶほどの竜巻を起こしてネクサスに突っ込んできた。

それは、()()()()()()。突風を起こすことは出来ても、竜巻のように突っ込む力などない。

つまり成長---あの一瞬のエネルギーは成長を促進させたと見ていい。

それに対してネクサスは避けない---いや、避けることが出来なかった。

ここに来て今までの度重なるダメージが足を引っ張り、体が動かない。

 

「だったら私が……!」

 

タウラスを捕まえる必要がなくなった樹がワイヤーでライブラの動きを阻害しようとするが、捕まえる前にワイヤーが竜巻によって弾かれてしまう。

夏凜が刀を投げたとしても無効化され、友奈は近づけず、風はまだ空中だ。

 

「紡絆くん……!」

 

『……ァァアアアアッ!』

 

体が拒否する。

これ以上の負荷は良くないと紡絆の脳や筋肉が否定するが、それらを無視して満足に動かすことは出来ないのか震えるせいで時間がかかりながら両腕を突き出し、水面のような青い光のバリヤー、サークルシールドを貼る。

ぶつかり合うネクサスのバリヤーと竜巻と化したライブラ。

凄まじい勢いで地面を削りながら押されて行くのは、ネクサスの方だった。

 

『ぐぅぁぁああ……デェアァァァ!』

 

威力が高いのか突き出していた両腕が徐々に体の方へ持って行かれていくが、気合いを込めて再び突き出すと、さっきに比べて勢いは衰えたものの依然とネクサスが押されており、そこへ赤黒い三日月型のエネルギーが飛んできた。

その三日月型のエネルギーはギリギリライブラに当たらず、ネクサスのサークルシールドに直撃する。

その瞬間、当たった部分から少しずつ()()()()()()()()

 

『う……ううっ…がはっ!?』

 

バギバキといった音が鳴り始めるとサークルシールドにヒビが入り、亀裂は広まっていく。

あと少しで砕ける---そのとき、横から腕を弾かれたネクサスは竜巻の一撃をまともに受け、風圧に乗って回転しながら上空に一気に打ち上げられた。

ネクサスの腕が弾かれた原因であるゴルゴレオスは雄叫び声のようなものを挙げ、竜巻に火炎弾が何発も放つ。

攻撃しても打ち上げられるだけでネクサスに当たることはない---しかし目的は当てることではないようで、竜巻に打ち上げられた火炎弾は地面に次々と落ち、樹海を傷つける。

 

「っ……うわっ!?」

 

「くっ、こうされると近寄れない……!」

 

さらに駆けつけていた友奈たちにも降り注ぎ、精霊バリアによって守られているが動けず、ピスケスが潜ってようやく援護に回れるようになった東郷も同じく妨害されていた。

 

そして竜巻という暴風の中、ネクサスは冷静だった。

吹き荒れる風に身を任せ、鎌鼬のような空気の刃が肉体を傷つけるが、人間体ならまだしもその程度でやれるほどウルトラマンは弱くない。

打ち上げられた時、バリヤーを失ったネクサスは寸前でライブラの攻撃を両手で止めていたのだ。

そのため、既に竜巻を発生させるだけ発生させておいて(かぜ)の中を移動するライブラを目で追う。

無論何もしていなかったわけではない。

この中、パーティクルフェザーを牽制として連発したが、全て無効化された。

すなわち、ライブラの特殊能力のひとつは遠距離攻撃の無効化。生半可の火力では吸収されて終わりだ。

もう少しで竜巻の効力は切れる。火炎弾は直撃していないが、早く消さなければ地上が危うい。

ただ焦って行動してもチャンスを無駄にするため、竜巻の力が消えるタイミングを狙って来ると予想し、腕を振るい、抜刀するような構えを取った。

 

『ハァアアアア……ゥッ?』

 

何かが迫る。

荒れ狂う(かぜ)の中をネクサスの下から何かが迫っていた。

クロスレイの動作を取っていたネクサスは思わず下を見ると、高速回転しながら迫ってくるゴルゴレオスが居た。

 

『へエッ!?』

 

気が付けば、火炎弾が収まっていた。

つまりさっきの火炎弾の本当の目的はネクサスに来れないと、遠距離攻撃をしていると見せかけるための貼った罠、といったところか。

 

(こいつ、さっきの御魂の能力……!?)

 

そして気が付く。

この力は先程見たような力であり、方向性は違えど似た能力をライブラとアリエスは持っていたということ。正確に言えば、成長によって連携するための力を手に入れたところか。

その両者はバーテックスしか出来ない連絡手段でもあるのか上下挟み込むように突撃してくる。

さらにライブラは重りの鉄球のような部分が外れて巨大化し、それがライブラにとって足と言える磔の下の鋭利な部分に突き刺さることでより重さを強めていた。

重ければ重いほど、エネルギーというものは増える。純粋な威力を上げるための行動と言えるだろう。

それでも迷ってる暇はなく、ネクサスはアームドネクサスを輝かせるとぐるぐると凄まじい速度で回転し始めた。

目には目を歯には歯をの如く回転には回転で対抗しようとしているのか、回転しながら両手で三日月型の光刃を放つ---ボードレイフェザー。

次々と刺さっていく光刃は無効化され、片方はダメージを受けると感じたのか透明化した。

その瞬間、ネクサスは降りるのではなく、敢えてライブラへ突っ込みながら両腕に光エネルギーを集める。

 

『デェアッ!』

 

放たれるのは、至近距離のクロスレイ・シュトローム。

撃つのと同時に回転が止まり、竜巻は霧散した。

しかしネクサスはライブラの重りによる一撃を受けて地面に落下してしまう。

それでも光線を放ち続け、ついにはライブラの鉄球を壊し、足から頭まで光線が貫くと一歩遅れて轟音が鳴り響いた。

敵の一撃に光線の勢いがそのまま落ちたため、背中を強打したネクサスは痛めながらも堕ちていくライブラを見つめていた。

取り逃した一体は御魂はまだとはいえ戦闘不能にし、二体は風がダウンさせた。

残るはピスケスとただものでは無い雰囲気を見せるレオ。それからファウストとゴルゴレオスだ。

 

「紡絆平気!?」

 

『……ショア』

 

即座に東郷を除いて駆け寄ってくる勇者たちを見て、ネクサスは立ち上がりながら頷く。

コアゲージはメタフィールドを形成していないお陰か未だに鳴っていない。

 

「紡絆くん無事みたい!」

 

「ひやひやしたわ……全く。とりあえず後ろのアイツと厄介なやつらが来る前に三体まとめて封印よ!」

 

「お、お姉ちゃん! バーテックスの様子が……!」

 

変身解除や最悪の事態にならなかったことに皆が安堵の息を吐き、風は胸を撫で下ろしていたが樹の声に全員がバーテックスの方を見た。

 

「何かがおかしい…! バーテックスが……戻っていく」

 

「い、一体何が……」

 

「嫌な予感がするわね……」

 

下半身から頭まで貫通して半分になっていたライブラは再生しながら後退していき、既にほぼ再生を終えているアクエリアスとタウラスも同じく後退していく。

三体が向かう先にいるのは、これまで何をするでもなく悠然と佇んでいた獅子型バーテックスのレオの元。

いや、まるで引き寄せられているようにも見える。

そして一定の距離まで辿り着いた瞬間、 レオの中心から炎が生まれ、灼熱の球体と化すると一気に他のバーテックスたちの全身を包み込んだ。

まるで太陽だ。

しかし光の象徴であるウルトラマンの温かな光とは違って、触れるだけで大火傷をしてしまいそうな破滅の太陽と言うべき光だが。

やがて炎は収まり、その中から遂にそいつが姿を現した。

 

「合体……? こんなの聞いたことないわよ!?」

 

獅子型をベースに、中央にライブラの中心部、本体下部にはアクエリアスの水球が取り付き、両サイドにそそり立つのはタウラスの角だろうか。そして何よりも、元の獅子型よりも明らかに巨大化している。

威容を備えるその怪物の名は、『レオ・スタークラスター』。49mはあるウルトラマンですら小さいと、ウルトラマンが大きいと感じるほどに大きくその放たれる威圧感は誰もが気圧されるほどであるが、そもそもそのような能力があることは想定するべきだったのだ。

スペースビーストとの融合を可能としているやつらが、同じバーテックスならば出来たって可笑しくない。

しかし融合型だけでも未だに一度しかダメージを与えていないのに、三体と融合したレオはどれほどの力があるのか。

乗り越えてもその度に強力な一手を出してくる敵に絶望感が全員に少し募る。

 

「で、でもまとめて四体は倒せるよ!」

 

「友奈の言う通り、まとめて封印開始よ!」

 

絶望感を打ち消すべく、友奈が全員に聞こえるように声を張り上げると風は同調した。

絶望感はあるが、逆に考えてしまえば封印の儀が出来れば殆ど勝ちなのだ。

数が減ったと思えば、多少は気は楽になる。

 

『………』

 

ただ、ただそれでもネクサスだけは最大限の警戒と共に、何処か迷いを振り切ったような、覚悟を決めたように拳を握っていた。

もう生半可な覚悟や気持ちでは融合型や合体したバーテックス、ファウストを相手にするなら勝てない、と---

 

 

 

番外編(スパイラル)

  • はよ書け
  • 先にゆゆゆ編完結はよ
  • まだゆゆゆネクサスの難易度上がるってマ?
  • シン・ウルトラマンはいいぞ。見ろ
  • スパイラルでシン・ウルトラマンも書いて♡
  • シン・ウルトラマン見ました
  • 投稿ペースを早めて
  • 戦闘シーン早くするんだよ
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