【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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「-満開-フルブルーム」

 

◆◆◆

 第 24 話 

 

-満開-フルブルーム

 

 

困難に打ち勝つ

サザンカ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たに現れたレオ・スタークラスター。

さらに融合型昇華獣ゴルゴレオス、ダークファウスト、ピスケスが存在しており、今居るのはレオとゴルゴレオス、ダークファウストのみ。

対するは勇者五名とウルトラマン。

両者ともに動かず、出方を窺っている。

 

『……シュア』

 

ネクサスがファイティングポーズを取り、レオに注目する。

その瞬間、レオの前方に円を描くように、膨大な数の火球が現れた。

過去に一度あったグランテラ戦に似たような状況だが、グランテラの時とは違ってレオは一斉に火球を生み出した。

つまり---

 

「みんな気をつけて!」

 

『ッ……!? シュワッ!』

 

火球が一斉にウルトラマンと勇者たちに襲いかかる。

すぐに反応したネクサスは避けるために地面を蹴ることで跳躍して、勇者たちは一斉に跳ぶことで避ける。

 

「コイツ、追尾すんの!?」

 

次々と木々を跳びながら火球から逃げる夏凜だが、誘導性が高いのか軌道修正して後ろを追ってくる。

 

「この…うあぁ!?」

 

上空に居る風は足場がなく、ひとつの火球を切り落としたところで追加され、大剣では遅すぎる。

目前に迫る火球を大剣で防御するが、火球はその防御の上から風を呑みこんだ。

 

「お姉ちゃ---きゃあああぁ!!」

 

必死で逃げていた樹は風の悲鳴に気を取られてしまい、殺到した火球に避けられず受けてしまう。

 

「追ってくるなら、そのまま返して……あっ!? ああっ!」

 

追尾を逆手に取ろうとした友奈は追ってくる火球から逃げ、急にUターンすることでレオの方へと向かっていく。

すると後ろから迫る火球は友奈を追尾するために背後から迫る。

だが、レオはそれを理解していたのか友奈は近くで己を追尾する火球と新たに向かってくる火球に挟み撃ちにされて成す術なく撃ち落とされた。

 

「はああぁぁぁぁ! くっ……!」

 

反撃を試みた夏凜はレオの装甲に自身の武器である刀で斬りかかるが、耐久力と威力が足らずに刃は無残に砕け、遅れて追尾してきた火球に彼女の体は呑み込まれてしまった。

 

「みんな……! おのれ…!」

 

四人がやられる姿をスコープ越しから見ていた東郷はピスケスが潜っている隙をついて放つが、東郷の弾丸は意味をなさず、反撃に放たれたレーザーが東郷に直撃してしまう。

 

『ハッ! シュア!』

 

一方で、縦横無尽に空中を動き回り、追尾する火球を次々と避けていくネクサスに迫るのは数えるのが嫌になるほどの量。

空を高速で駆け回るネクサスはエルボーカッターで次々と打ち消し、避けて、火球同士をぶつけることで数を減らしていき、空中で回転するように旋回すると火球を一直線にまとめ、一斉に迫る火球を両手からサークルシールドを貼ることで全て無効化して見せた。

そんなネクサスが見下ろすのは、レオによってやられた勇者たちの姿。

それを見て血が出るのではというくらいに拳を強く握りしめ、ネクサスは空中から加速する。

 

『テヤッ!』

 

『ハアッ!』

 

腕を振り絞り、突き出すネクサスの拳を合間に入ったファウストが剣で受け止め、反撃の蹴りをネクサスは叩き落とし、剣を踏みながら跳び、そのまま足を突き出す下降キックを放つが、実体化したゴルゴレオスがその硬い装甲で防ぐ。

 

『ぐっ……!』

 

即座に固い装甲を蹴り、回転しながらエルボーカッターで斬ろうとすると、透明化したゴルゴレオスによってネクサスの一撃は回避され、そのタイミングで後ろからファウストと前方から突風を起こしながら回転してレオが迫ってきた。

ネクサスは交互に見ながらも対処する方法がなく、その一撃を腕を真っ直ぐ上に突き出すことで防御するが、ガード越しに受けたネクサスは弾かれるように吹き飛ぶ。

 

『ウアッ……!?』

 

合体したバーテックスの力が使えるのだろう。

ライブラの能力を使ったレオの一撃とファウストの一撃は凄まじく、ガードした両腕から痛みが走る。

はっきり言って、このままではまずい。勇者が居ないということは、今は神樹がフリーであり、ネクサスも三体相手となると勝てない。

バーテックスだけなら光線技を放てば倒せるかもしれないが、ファウストとゴルゴレオスは邪魔をしてくる。

仮にどちらかに撃ってもダメージを稼いでない今、倒すまではいかないだろう。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

711:名無しの転生者 ID:pPECYFVun

ちくしょう! 合体なんて卑怯な真似しやがって!

 

 

712:名無しの転生者 ID:PoAEgkkwa

このままじゃガチでまずいぞ! 神樹様の破壊は敗北だ!

 

 

713:名無しの転生者 ID:nGTG+Sg/c

でも融合型だけでも厄介だってのに勇者は戦闘不能状態でレオ相手はキツすぎる…!

 

 

714:名無しの転生者 ID:UaOChacMw

ジュネッスを解放してもこれかよ…!

 

 

715:名無しの転生者 ID:bzWCycWTZ

融合型にダメージを与えられないのが痛すぎる…

 

 

716:名無しの転生者 ID:V1mOlhF6k

ゴルゴレム自体が姫矢さんを肉体的に苦しめたビーストだからなぁ…

 

 

717:名無しの転生者 ID:oK59s8Cw/

透明化が強すぎる。しかも破壊光線はあったけど雷属性まで身につけやがったからな…

 

 

718:名無しの転生者 ID:bxqUpZ/Re

いくらイッチの戦闘センスが高くても相手はそれ以上に強化してくるもんな……

 

 

719:名無しの転生者 ID:J1zRX9xnT

少なくとも分かるのは、このままじゃイッチのコアゲージがダメージの受けすぎで鳴ってしまうということだ

 

 

720:名無しの転生者 ID:dGfKlXMQw

結構なダメージをアンファンスの時に受けてるから……それに友奈ちゃんたち勇者組が狙われるかもしれん

 

 

721:名無しの転生者 ID:fwiZSVEGp

もうファウストを止める止めない言ってる暇はないぞ! 確実にファウストを仕留める選択を取らなければやられるのはこっちだ!

 

 

722:名無しの転生者 ID:Fq2R1rqSS

くっそ! せめてファウストの正体が掴めたらなぁ…!!

 

 

723:名無しの転生者 ID:EfP9LSWEd

イッチも分からないから止めるつもりで戦ってるもんなー

 

 

724:名無しの転生者 ID:ATZUWKq/K

とにかくもうやるしかない! 守り手がいないならその道を防ぐために使え!

 

 

725:名無しの転生者 ID:JQgIoAsAA

もう迷う時間すらない! 元のゴルゴレムは透明化能力は厄介だったが、メタフィールドの展開で潰すことが出来た! 例え融合型になったとしてもそれは変わんないはず!

 

 

726:名無しの転生者 ID:f2qXGl44s

いいか、2分だ。2分で決着つけろ!

 

 

727:名無しの転生者 ID:F8Abc30KR

イッチの肉体的に2分が限界だぞ……いや、下手したら1分30秒くらいかもしれん

 

 

728:名無しの転生者 ID:1nuyruzF3

どちらにせよ、俺らで出来ることはしてやる! 戦いだけに集中しろ!

 

 

729:名無しの転生者 ID:PO2jrNLmX

こいつらは知識はあっても既に別モノなせいで俺たちに出来ることはないからな

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

『……フッ! ハァアァァァァ……デアッ!』

 

上下に回転しながら吹き飛ぶネクサスはアームドネクサスを交差し、弧を描くように腕を回すと青い輝きをその腕に宿す。

透視能力を使い、地面を見ればピスケスが既に神樹様の近くに居るのだ。

だからこそ辞められない。そもそも、残された手段はこれしかなかった。

唯一の逆転のチャンスとも言える技を使うため、ネクサスは空中で制止するのと同時に上に突き出した。

青い光線は上空へ打ち上げられ、手から光線が消えるのと同時に空中から覆い尽くすように樹海全体を黄金色の世界が包み込む。

位相を光の波紋で褶曲させることで生まれる、神秘な空間。

黄金の光が滝のように降り注ぎ、地表からは水泡のような光が立ち昇っていた。

地面を潜っていたピスケスが飛び出し、突破するために突っ込むが、弾かれる。

神樹様を守るためにも作られた黄金色の世界、メタフィールドの外殻はウルトラマンの身体を構成する物質の組成と同じであり、ウルトラマンの身体そのものから作り出されている。

そんな容易に壊せるほど脆いはずもない。

 

『ようやく使ったか……しかし愚策だな。闇は容易に光を覆う……!』

 

ファウストが剣を真上に突き出すと、神秘な世界が作られる前に、黄金色の空間が赤黒い闇の空間へ覆われ、絶望が広がる死の世界が形成された。

メタフィールドを塗り替え、ダークフィールドへ。

あっさりと敵に利用される形となったが、空間の変化と共にバーテックスとゴルゴレオス、ファウストは()()()()()()()()ことになる。

先程まで居た位置には居らず、世界の変化と共に何処か岩陰にでも隠されたのだろう。

そんな中、ネクサスは三体と一人の敵を油断なく見据える。

メタフィールドが展開されればスペースビーストを抑制、光の力を強化する能力があった。

ダークフィールドはその逆の効果を持つが、それでも全力で戦うことが出来る条件はこれで達成された。

 

『シェア!』

 

両腕を交差し、着地とともに地を駆けるネクサスは物凄い速度でレオの背後を取り、腕を振り絞って全力の一撃を打ち込もうとする。

しかし一撃を与える前に屈しむことになり、頭上を火炎弾と闇の光刃が通り過ぎる。

背後にまだいると認識したレオは振り向くのと同時にレーザーを放ち、ネクサスは宙返りしながら頭上を超え、ゴルゴレオスを蹴って反転。

レオのレーザーを逸らすように僅かに胴体を蹴り飛ばす。

 

『デュア!』

 

『デア……ヘェアッ!』

 

レーザーを逸らすことには成功したが、空中にいるネクサスに対して、浮くことが出来るファウストが足を突き出す。

それに反応して受け止めると、くるりと横に回りながら地面へとファウストを投げ落とし、アームドネクサスを輝かせてさっきと同じように撃ってきたゴルゴレオスの火炎弾を打ち消すと、吹き飛ばされる。

 

『ぐぁ……うぐぅ……!』

 

同じような攻撃をするほど、スペースビーストもバーテックスもバカではない。

打ち消されると分かっていた火炎弾の背後から火炎弾に隠れるようにゴルゴレムとしての能力である小さめの破壊光線を同時に撃っていたようで、それがネクサスを吹き飛ばしたのだ。

背中を打ち付けながら地面に倒れたネクサスは痛みに僅かに悶えるが、状況を見るためにも背中を起こす。

 

『……ファ!? ジュア……!』

 

背中を起こしたネクサスの視界に移ったのは、とてつもない量の火球。

一斉に迫ってきたそれをネクサスは横に転がり、即座に空中へ逃げる。

当然迫ってくるが、ネクサスは囲まれている状況の中でスレスレで躱していき、セービングビュートを鞭のようにしなやかにぶつけることで減らし、迫ってきたらすぐに飛ぶ事で回避していく。

ネクサスはマッハの速度で動ける。

やろうとすれば、光の速度で移動することだって可能だ。

そんなネクサスに火球だけの一撃は当たらない。

 

『……シュア!? ぐっ…デアッ、デェヤッ!』

 

だが、()()()()()()、だ。

ネクサスの足と腹に巻き付く黒いエネルギーと触手が巻き付き、機動力を奪われる。

触手を引き離そうにも力強く、むしろ地上へと引っ張られる---つまりピスケスの仕業。

黒いエネルギーの方に至っては、巻き付かれている部分から光が漏れ出している。

エネルギーの方角を視線で追えば、ファウストが持つ剣から出ており、光エネルギーを吸収しているのだろう。

しかしそれよりも火球が目前にまで迫っていた。

悩む暇もなくネクサスはアームドネクサスを輝かせ、至近距離のパーティクルフェザーを自らの腹部に放つと多少のダメージと共に黒いエネルギーは外れ、触手に引っ張られながらもサークルシールドで己の身を守る。

そして火球はサークルシールドへ次々と着弾していき、ネクサスは動けなくなる。

そこに、火と雷が混じった破壊光線がネクサスの背後から迫ってきて---

 

『ウグッ……アァッ…。ウアァァァアアアァァ!!!』

 

防ぎ切る事も防御することも出来ず、ネクサスの背中に直撃する。

継続的に流される破壊光線。サークルシールドを解除しない限り避けることが出来ず、破壊光線のお陰でピスケスの拘束は解かれたが、サークルシールドを今解除すれば火球がネクサスに当たってよりダメージを受けてしまう。

 

『ぁああああ---デェアァ!』

 

ならば、とネクサスはサークルシールドを解除するのと同時に腕で火球を受け、背部から受ける破壊光線から逃れるべく空気を蹴るように空中で跳躍する。

前は火球。背後は破壊光線。追尾性のある火球ならば左右に置くことだって可能。

そう、ネクサスが離れることができる唯一の場所は()()()()()()

だとすれば、それを理解しているのは()()()()()()()()()()のだ。

 

『ハァァァァァ---ヌアッ!』

 

『---ッ!? ハッ!?』

 

いつの間にか上空を取られていたネクサスに迫る闇の光線。

ダークレイ・ジャビローム。

それだけではなく、追尾してきた火球がネクサスの逃げ道を防ぎ、下からは雷が発射され、上からはダークレイ・ジャビロームの後ろに続くように巨大な三日月型の斬撃が追加で飛んできている。

 

『ぐっ……デェヤァアアアァァァァ!』

 

四方八方見ても必ず何かがある。

正しく八方塞がりとはこのことであり、先に迫ってきた火球を拳で打ち消し、雷を両手で受け止め、強引に両腕を振り下ろして消し去ると回転するように反転して背後の火球を蹴り飛ばすことで火球同士で爆発を起こす。

ダメージ覚悟で爆風の中を突っ込み、次々と避けながらネクサスは上空から迫る一撃に耐えるべくバリヤーを貼ろうとして---

 

 

『フッ……!? ウゴォアッ……!』

 

下方から背中に凄まじい衝撃を受け、ネクサスの肉体が一気に上空へ打ち上げられる。

その正体を見るべく下を見れば、実体化したゴルゴレオスの前に半球状のモノ---バリアがある。

この火球群の中、透明化して近づき、バリアを貼ることで己の身を守りながら頑丈な特徴を活かしつつバリアでさらに威力を高めたのだろう。

現にそれが原因で吹き飛ばされたネクサスは空中の制御が効かないため、火球が四方から迫り、次々と受けては爆風によって飛ばされていく。

 

『シェァ……ゴフッ……!』

 

そしてその先にあるのは、ダークレイ・ジャビローム。

もはや回避することも迎撃することも出来ず、ネクサスはその一撃を受け、三日月型の斬撃がネクサスごと地面へと落下し地響きが響く。

 

『う……ジュアァ……』

 

手を伸ばし、起き上がろうとするが、力が抜けたように地面に背中が落ちる。

身動ぎすることしか出来ず、立ち上がるまでがいけない。

そんなネクサスに無情にも、胸のコアゲージは点滅を始めた。

それだけではない。書き換えられた世界ではあるが、元はメタフィールド。

ネクサスの力が作り出した空間は、海の中で口から出された空気が泡となるように、海泡のようにとぷくぷくと立ち昇りながらメタフィールド(ダークフィールド)に巨大な穴が開き、その先には神樹様の樹木があった。

すなわち---()()()()()()()()()()

 

『ぐぐぐ……ぐあっ…』

 

体を反転させて両拳を地面に付き、どうにかして起き上がろうと四つん這いにまで体を起こすことに成功したものの、突如重たくなった体は再び地に着くことになる。

 

『ここまでのようだな』

 

『………』

 

うつ伏せに倒れるネクサスの上から聴こえてきたのはファウストの声。

ネクサスの背中に足を乗せ、起き上がれないようにしていることから、踏みつけてることが起き上がれなかった理由だろう。

 

『………デェアッ!』

 

『無駄だ!』

 

反撃すべく、死角となっていた腕を動かし、パーティクルフェザーを放つネクサスだが、ファウストは意図も簡単に剣で弾く。

さらに追い討ちというように至近距離のダークフェザーをネクサスの腕に直撃させた。

メタフィールド(ダークフィールド)の歪みが広がっていく。

神樹を破壊しようと迫るレオとゴルゴレオスはそこへ向かうが、流石というべきか崩壊していっているメタフィールド(ダークフィールド)でも進行を妨げていた。

ただそれでも、ネクサスには何も出来ない。

強敵との連戦。幾度ともメタフィールドを塗り替えられ空間を保つ凄まじいほどの疲労。多くの怪我。

過去に戦ってきたバーテックスやスペースビーストの全てが今のネクサスの状況を作り出しており、そもそも既にジュネッスになる段階で限界は超えていた。

いくらウルトラマンでも、人間である紡絆でも疲労やダメージは無視できない。

それゆえの過労。立ち上がる気力すらなく、どれだけ願っても体は動いてくれなかった。

 

『今度こそは貴様を倒し、私の一部として取り込む。貴様の光を奪った後は他の連中もそっちに向かわせてやる……!』

 

『ヘェ!?』

 

どういう意味か理解出来ないが、良くない事だということだけは分かったネクサスは抵抗しようとするが、ファウストはネクサスの首を絞め、光のエネルギーが少しずつファウストに吸収されていく。

ファウストの力で抑えられてしまえば今のネクサスに抵抗することも出来ず、唯一ネクサスにできるのはメタフィールドの維持だけ。

それが光エネルギーが減っていってる今、自身をより追い詰めていたとしても、命を削る行為であっても、保ち続ければ死ぬと分かっていても、必死に維持する。

---皆を守るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……神樹様が……紡絆が……そんなの、冗談じゃないわよ……!」

 

大剣でダメージを軽減していた風が、意識を取り戻す。

メタフィールド(ダークフィールド)が崩壊しかけているのは見たものなら誰でも分かるほどであり、何度も何度もゴルゴレオスが突撃しているが、その度に弾いていた。

神樹様は目の先。突破されれば全てが終わり、このままでは紡絆も終わってしまう。

巻き込んだのは自分だというのに、後輩に全て任せて自分は寝ているなんて真似、風には到底できなかった。

だからこそ、立ち上がる。

誰も戦ってないということは意識を取り戻したのは自分だけなのだ。

ならば、動ける自分がやるしかないと大剣を手に立ち上がり---()()()()()()()()()

 

「ッ!?」

 

いつの間に気づいていたのか、レオが振り向いて風を見ていた。

水球に覆われた風は必死に大剣を振るが、水の中で大剣なんて重いものを振り回せば、体力の消費が激しい。

息を止めなければならないのに体力を使うと呼吸が必要になる。

精霊のバリアは身は守るが、音がそうだったように呼吸も同じくバリアが発動しないのだ。

 

『うあぁ……シュワァ……!』

 

手を伸ばす。

エネルギーを吸われながらも風を助けようとネクサスは必死に腕を伸ばすが、到底届かない。

もう呼吸が続かないのか苦しそうな表情を浮かべる姿が見える。

しかしネクサスの腕は下がり、助け出すことが出来なかった。

コアゲージの点滅が早まり、メタフィールド(ダークフィールド)はほぼほぼ樹海を映し出している。

 

(紡絆…! っ……息が……!)

 

自分の方がやばい状況だというのに助けようと手を伸ばしていた姿を、水球の中で風は見ていた。

もはや今のネクサスは絶体絶命というべき状況。だが風も助けに行こうと思っても必死にもがいたり大剣で斬ろうにも変わらない。水なのだから斬れるはずもないのだ。

それに体力自体を立つのがやっとだという現状、息が長く持つはずもなく風も命の危機に陥っていた。

 

(こんなの……こんな終わり方なんて……)

 

苦しい。

けれど、誰よりも苦しいのはボロボロになって、エネルギーを吸い続けられながらも今も原型は留めてないとはいえ、メタフィールド(ダークフィールド)を維持し続けている紡絆だ。

全てが終わる。それを阻止するために、危惧していた通りにまさしく命を賭けてでも神樹様を守ろうとしている。

風が今抱く感情は恐怖ではない。このままでは自分が溺死するというのに、世界が終わるというのに、恐怖よりもこんな所で死にかけている自分自身が許せなくて仕方がなかったのだ。

 

(みんな……)

 

風がバーテックスと戦う本当の理由は世界を救うために非ず、二年前のバーテックスが原因で引き起こされた大事故で死亡した両親の仇を取ること。

しかし最初はそんな自分勝手な理由で巻き込んでしまったが、仇討ちよりも何が何でもみんなを元の日常へと戻すことを望むようになった。

例え自分が傷ついても、死ぬことになっても---だが、今はどうだ?

情けなく水球に囚われ、後輩が限界を訪れかけているのに自分はこうやって何も出来ずに見てるだけ。

失ったのだ。過去に一度、大切な家族を。両親を。

失うことの怖さを風は知っている。

そう、知っている。知っているのに、今度は大切な後輩を目の前で失う羽目になりかけている。

ここで死んでしまえば、もう苦しまずに死ぬだろう。

けれど、その先に待つのは風が大切だと思った人達の死。ここで終わってしまえば、立ち上がらなければ、大切な何かを失う。

例え自分が無事に生還したところで、もう立ち上がることが出来なくなる。

また大切な者を失ってしまう。繰り返してしまう。

故に---

 

(そんなの…させるわけないでしょ!!)

 

強化されるバーテックス、スペースビースト、ウルティノイド。

そんな世界の理不尽に抗う少女にその身を纏う力が応えた。

彼女が身に宿す輝きの心を宿すオキザリスの花は美しく咲き誇る。

樹海から伸びてきた虹色の光が風へと集まり、黄色い光と共に巨大な花が十分に開く。

溜め込んだ力を解放し、凄まじい力を与える勇者の切り札---()()

力の解放だけで水球に囚われていたのが嘘のように打ち消されている。

その身に纏うのは、神秘の装束。絢爛豪華な姿はまさしく神の如し。

 

「お姉ちゃん…まさか……」

 

「あれが満開……」

 

「風先輩……すごい…!」

 

意識を取り戻した樹や夏凜、友奈はその光景を見ていた。

その神秘的な光景を。

満開を使った勇者の姿を。

 

「これなら---ッ!」

 

『ッ!?』

 

すぐさま加速した風は、ファウストに対して大剣を横に振るうと、ファウストはすぐに自身の剣を縦にすることで対応した。

カキン、と弾かれるような音ともに加速して振られたその一撃は少しとはいえ、ファウストをネクサスから引き離すことが出来た。

 

『これが満開……か。なるほど、凄まじい力だ』

 

『……! ジュア……ッ!』

 

ぐったりと倒れていたネクサスは気づき、即座に起き上がろうとする。

エネルギーを吸われ続けたとはいえ、生きている。ウルトラマンの力を奪われなかったということ。

ならば、と根性でネクサスは跳ね起き、アームドネクサスを交差すると高速で地面を駆けた。

 

『デェアッ!』

 

メタフィールド(ダークフィールド)を完全に破壊しようとしていたゴルゴレオスの背後を取り、回転しながら飛び越えるとゴルゴレオスの顔面を一気に蹴り飛ばし、レオに対してセービングビュートで掴むと、引き離すために引っ張っていく。

レオはネクサスの身長体重を優に超える存在。

ぐらつきながらも少しずつ、少しずつだが神樹様から距離を引き離していき---

 

 

 

 

 

『ッウァ……!?』

 

ネクサスが堕ちた。

空を飛ぶ力すら残ってないのか光の鞭は消え、地面に落下してしまう。

コアゲージの点滅はもう速く、時間はない。

ただでさえ消費していたのに外的な要因で減らされていたのだから当然とも言えるだろう。

 

『まだ立ち上がれるとはな……しかしトドメだ!』

 

「させ---くっ!?」

 

すぐに神樹様を破壊されることもなければ、メタフィールド(ダークフィールド)の破壊も防ぐことは出来た。

だがネクサスに力は残っていなく、そんなネクサスに完全にトドメを刺すべくファウストが跳躍し、ネクサスに向かって剣を縦に振り下ろした。

風はすぐに向かってファウストを妨害しようとして、ゴルゴレオスとレオがそれを阻む。

どうにか突破しようにも、容易に無視出来る存在でもなかった。

 

『ハァ、ハァ、ジュっ……!』

 

体力の限界とはいえファウストの存在に気づいたネクサスは気力を振り絞り、体を反転させる。

目前に迫る剣。

それに対してアームドネクサスで防ぐように腕を横にしながら顔を逸らすが、()()()()()()()()()

 

『……なっ!?』

 

『……フッ!?』

 

痛みが来ないことに違和感があったネクサスが見れば、剣が腕に当たる寸前であり、ファウストの剣を持つ腕が震えている。

ファウストも理解出来ないようで、お互いに驚いていた。

それはそうだろう。トドメを刺そうとファウストは剣を振り下ろしたのに、目前で停止している。

一方でネクサスは回避しようにも無理なため、せめてダメージを減らすために腕を盾にしたのに痛みも来なければ、何故か目の前のファウストが止まっていたのだから。

 

『な、んだこれは……!? 動けッ!』

 

『………?』

 

ファウストが左腕で右腕を掴み、動かそうとしている。

しかし、動かない。

こんな危機的状況だというのに呆気に取られたネクサスはただ見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

800:名無しの転生者 ID:w/a2ZMc+9

止まった……? なんで……いや、チャンスだ! イッチ、なにしてやがる!

 

 

801:名無しの転生者 ID:atAKl1DS/

馬鹿野郎! エネルギー吸われてんだから早く離れろ! これ以上吸われたら死ぬぞ!

 

 

802:名無しの転生者 ID:ThSJ2HeG+

なんだ……ファウストの様子が可笑しい……。何が起こってるんだ……???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハッ!? ウンンンンン---シュ、ぁ……』

 

チャンスということに気づき、ネクサスは離れようと立ち上がろうとするが、地面に膝が着き、ネクサスの肉体が赤く輝いた。

同時に世界を覆っていた()は消え失せ、空間が樹海へと戻ってしまう。

すなわち、メタフィールド(ダークフィールド)の完全崩壊。

メタフィールドを保てなくなったということは、ダークフィールドはメタフィールドを上書きしてネクサスが維持しているようなもの。

メタフィールドが保てなければ、自分でダークフィールドを作り出せないファウストには世界を保つことは出来ないのだ。

 

『ハァ、ハァ……あぐ……』

 

一方で、姿は保っている。

ネクサスとしての姿は保っているものの、その身に宿していた赤き輝きの光は消えており、銀色の肉体でエナジーコアが鳴っている---アンファンスへと戻っていた。

そんなネクサスはただ右腕を伸ばす。

何かを求めるように。

 

『…………』

 

だが---現実は非常だ。

ネクサスの瞳が暗転し、伸ばした手は停止する。

コアゲージの音が遅くなり、その体が光に包まれた。

光は徐々に小さくなり、樹海の地面にウルトラマンの姿から戻ってしまった紡絆が倒れている。

意識がないのか、身動きひとつ取る事なく。

そんな紡絆に脅威が迫る。

 

『今度こそ……終わらせてやる……!!』

 

チャンスは逃した。

反撃することが出来なかった。ファウストから離れることが出来なかった。

距離が離れていなかったため、ファウストは既に紡絆の間近くにいた。

倒れ、意識のない紡絆に対して容赦なく振り上げられる剣。

 

「くっ……退きなさい!」

 

満開してもなお、足止めを受けていた風は一閃し、無視して向かおうとする。

間に合わない。

 

「夏凜ちゃん……!」

 

「無理……! 振り下ろす方が早い…!」

 

友奈や樹も止めようと走るが、機動力に一番長けている夏凜が前に躍り出て走っているものの、風と同程度の距離が開いている。

夏凜の言う通り、着く頃には紡絆は既に真っ二つだ。

肝心のウルトラマンも限界が訪れたからか、普段は貼ってくれるバリヤーすらない。

そんな中、ついにファウストが剣を振り下ろす---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うぐ……!? またか……!』

 

はずが、頭を抑えたファウストが剣を落とし、その剣は紡絆の真横にスレスレで突き刺さった。

忌々しそうに頭を抑えながらファウストは後ずさっていた。

一体何が起きてるのか分からないが、チャンスだと夏凜が誰よりも早く駆ける。

 

『ええい、邪魔をするな……ッ!!』

 

「それはこっちのセリフだっての……!」

 

「夏凜! 紡絆は任せる!」

 

ウザったらしそうに邪魔する何かを振り払ったファウストは、風と夏凜に向かってダークフェザーを放つ。

二人は軽々と避けると、夏凜は先程と同じく駆け、風は空中で反転してレオに対して大剣を構えていた。

しかし忘れてないだろうか。

今、勇者たちは端末を扱うことが出来ない。マップすら機能せず、だとしたら---()()()()()()

 

「なっ……!?」

 

地鳴りと共に地面が揺らぎ、土埃を撒き散らしながら現れるピスケスの落下地点は、紡絆の場所だ。

バーテックスは知っていた。ウルトラマンは勇者などよりも厄介な存在であり、自分たちを誰よりも害することの出来る、単体で簡単に殺すことの出来る存在だと。

逆を言えば、弱点も知っている。

ウルトラマンが制限時間を持っていること。ウルトラマンは()()()()()()()()()こと。

ならば、変身が解けた後の存在を狙えばいいわけであり、有利だというのに積極的にネクサスに攻撃しなかった理由はそれだった。

レオは目立つ。融合型というだけでゴルゴレオスも同じく。そしてファウストは、目を逸らせない存在。

もしピスケスが地中に潜るという特性を使いまくってたなら、間違いなく警戒されたネクサスにやられていたはずだ。

そんな道中はどうであれ、現に今、存在を忘れられていた。気づかれなかった。

迫る巨体。いくら生身が強化されていても、変身していない紡絆がバーテックスのような存在に押し潰されてしまえば精霊バリアもないことからミンチへと変わってしまう。

 

「っ…やめろぉぉおおおおお!」

 

手を伸ばす。

しかし夏凜が辿り着くのにも一手足りない。

もう少しだというのに、届かない。

絶望が広がる。それでも、世界は、時間は止まってくれない。

必死に駆ける夏凜の目の前で今、ピスケスが紡絆を踏み潰そうとして---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な青い砲撃が、一瞬でピスケスを吹き飛ばした。

紡絆に迫っていたピスケスが視界内から消え、誰もが砲撃の方向を見つめた。

そこにあったのは、巨大な青い光。

不退転の心を胸に、聖なる衣を身に纏う一人の勇者---

 

「もう……絶対に許さない……!」

 

「東郷さん!?」

 

そう、東郷美森の満開した姿。

紡絆の危機的状況の中、ほんの少しの誤射もタイミングのズレも許されないというのに正確にピスケスを撃ち抜き、紡絆を救って見せたのだ---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間は遡り、東郷が満開する前。

東郷は意識を取り戻した後、見ていたのだ。

紡絆のエネルギーが吸われてしまっていたところ。限界だと言うのに立ち上がり、世界を守るためにレオを引き離そうとしていたところ。

ついに限界が訪れ、メタフィールドが崩壊したところ。ジュネッスからアンファンスに戻ってしまったところ。

変身が解けて、動けなくなったところ。殺されそうになっている紡絆にみんなが駆け寄ろうとしていたところも。満開した風が紡絆を助けようとしていたところも。

ただただ見ていることしか出来なかった。

自分に足が動かせることが出来たら、駆け寄ることが出来た。遠距離攻撃を持ってるのだから、救える可能性が一番あった。

 

(このままじゃ、紡絆くんが殺される……彼が居なくなるなんて、耐えられない。そんなの、絶対させない……。やらせない……!)

 

救ってくれた。

いつもいつも、どんな時だって辛いとき、悲しいとき、傍に居てくれた。

温かくて、安心出来て、居てくれるだけで嬉しくて、東郷にとっての希望の光。

 

(紡絆くんばかりに救われて、今何も出来なければ私は後悔する……自分で自分を許せなくなる……)

 

誓ったのだ。かつて初めて勇者になった日のこと。

三体バーテックス襲撃の際、紡絆が死にかけていたの見て、守ると。

傷つけさせないと誓ったのだ。

だがどうだ?

今、再び紡絆は死にかけてしまっている。

それは何故か。

一人で戦うことになってしまったから。力が足りなかったからだ。

東郷だけでも無事なら、援護は出来た。こんな辛い状況で孤独に戦わせることもなかった。

 

(紡絆くんは最後まで頑張ってた…きっと、私たちを信じてくれて。私はこのまま見ているだけ? 友奈ちゃんも風先輩も樹ちゃんも夏凜ちゃんも、みんなが紡絆くんに駆け寄ってるのに、何も出来ずに見てるだけなの?)

 

東郷の目から見ても、間に合わないだろう。

でもみんな必死に助けようとしている。

対する自分は、立ち上がることすらしていない。足が不自由なのもある。

しかしそれが理由で寝ているだけでいいのか。足が動かせれないという理由で失っていい命なのか。

 

(違う)

 

東郷美森にとって、救ってくれた彼の命は自分の命よりも大切な命だ。

彼は望まなくても、命を賭けてでも守りたいと願う。見ているだけは嫌だと心が叫ぶ。

 

(違う……守りたい。今ここで彼を守ることも出来ないなら、私は紡絆くんの傍にも、友奈ちゃんの傍にも居られない。みんなの居場所の中に居るなんてことを自分が認められない……!)

 

大切な親友を傷つけられた。仲間を傷つけられた。大切な人を傷つけられた。

故に、東郷は願う。

壊すための力でも、復讐する力でもない。

守り抜く力を。護国を、友達を、大切な人たちを救うための力を。

その願いに、勇者としての力が応える。

東郷の勇者服。

その胸元にある朝顔の刻印が強い光を放ち始めた。

戦いの中で蓄積されてきた力が解放の時を待っている。

迷う必要などない。

ここで何もしなければ、待つのは後悔のみ。

力はここに与えられた。可能性は与えられたのだ。

 

(約束を果たすためにも、世界を守るためにも、みんなを守るためにも、私は---ッ!)

 

かつて紡絆と交した、また一緒に出かけるという約束。勇者部の誓い。依頼。文化祭。

まだまだ終わらせる訳には行かないことばかり。守りたいものは多く、勇者部としての日常をまだ過ごしたいと東郷は思う。

その約束を枯らしてたまるか。かけがえのない仲間たちを信じて、自分たちの道を貫く。

ならば、命に勇気を灯せ。この戦いを切り開くために。

だからこそ、東郷は今---

 

 

 

 

 

 

 

Pull the trigger(引き金を引く)

愛情の花言葉を持つ胸元にある朝顔の刻印がより強い光を放つ。

白混じりの虹色の光が東郷の体を包み込み、スミレ色の光とともに巨大なアサガオの花が花開いた。

同時に放たれる砲撃は、今まさに紡絆を踏み潰そうとしていたピスケスに直撃し、吹き飛ばす。

それを確認した東郷は紡絆が無事なことに安堵するが、それは一瞬のみ。

すぐに俯き、表情を引き締めて怒りを表に出していた。

 

「もう……絶対に許さない……!」

 

「東郷さん!?」

 

皆が驚いているが、無理もない。

二人目の満開。

もはや絶望しかなかったところに救いが伸びたのだ。

それにもうひとつ、東郷の満開は、風とは明らかに違う変化が起きている。

風が大剣だったのとは違い、東郷のは移動台座(大艦巨砲)

 

「我---」

 

八巻のようなものを取り出し、俯いていた東郷がゆっくりと顔を上げた。

それと同時に起き上がるのは左右四対、八門の砲塔。

先程の八巻は額に巻いたようで、そこには日の丸が、熱く赤く燃えている。

 

「敵軍ニ---総攻撃ヲ実施ス!!」

 

東郷が宣言するのと同時に右手をすっと天へと挙げる。

瞳の中に宿るのは、静かな怒り。

大切な人たちを傷つけたモノへ害する、護るための力を今、向けた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紡絆---ッ!?」

 

一手足りず間に合わなかったが、東郷のお陰で紡絆の元へ一番速く辿り着いた夏凜は武器を捨てて近づくが、驚いたような表情と共に口元を手で抑える。

 

「酷い…怪我……」

 

生きてるのか生きてないのか、いや---死んでるようにしか見えない。

頭から血が流れているのか、顔半分は真っ赤な血に染まっており、両耳も血まみれになっている。

表は分からないが背中の制服は焦げているようで真っ黒になっていて表も似た感じだろう。

しかし腹部の位置と思わしき部分から流れる血が地面に溜まりを作っていて、所々に怪我を負っていた。

最悪を考えてしまうほどの負傷だが、顔を近づけると荒いが息はある。

そのことに夏凜はホッとした。

 

「夏凜ちゃん、どう……あっ」

 

「紡絆先輩……!?」

 

無事を確認すると、後から先に辿り着いた友奈は紡絆の惨状を見てか、一瞬だけ顔を青くするが、二度目なのもあってかすぐに首を振って冷静になり、駆け寄る。

しかし一番最後に辿り着いた樹は、血の気が引いたように地面へと座り込んでいた。

 

「大丈夫、生きてる。とにかく友奈は樹を。こいつは私が運ぶわ! ってあっつ……!」

 

「う、うん!」

 

この場はまだ危険地帯。

だからこそ運ぼうとしたのだが、まるで火にでも触れたかのように熱い。

恐らく、高熱---それも本来人間では耐えられないレベルの熱が出ているのだろう。

ウルトラマンに強化されている紡絆だからこそ、生きてると言うべきか。

 

「樹ちゃん、大丈夫?」

 

「あ…だ、大丈夫です。それより紡絆先輩を安全なところに連れていかないと……!」

 

「うん、ここは危ないから……大丈夫。紡絆くんは簡単には死なないし、まだ負けない。絶対に立ち上がるよ!

だからこの戦いを終えて、みんなで帰ろう」

 

「はい……!」

 

生きてることが分かったからか、樹は慌てて立ち上がる。

友奈は変わらず鼓舞し、その姿を背中に紡絆を背負いながら見ていた夏凜は頼もしさを改めて実感して笑みを浮かべていた。

何はともあれ、保護することは出来た。

後はこの場から離脱するだけで、友奈と樹が護衛するように周囲を警戒しながら夏凜は紡絆を背負ってその場から離れていく。

そんな友奈や樹、夏凜たちを復帰したピスケスが地面を潜り、再び巨体による体当たりを敢行するべく近づいてくる。

 

「こいつまた……!」

 

「大丈夫だよ! 私たちは私たちに出来ることをやろう!」

 

「そうですよね、きっと……!」

 

紡絆を何としてでも殺したいのか、満開した勇者すら無視して突撃してくる姿に夏凜は苦々しい表情を浮かべるが、友奈の声に従って止まらず走る。

 

「そう……そこまでして狙いたいのね。けど、触れることも許さない!」

 

聞こえてはいないはず。

それでも、そんな友奈たちに応えるように、自身すら無視するピスケスに八門の砲塔が一斉向けられる。

すると砲塔の先端に青い光が集まっていき、最大火力をぶつけるタイミングを見極める。

そのタイミングは、すぐにやってきた。

勇者であろうと関係ない。

紡絆ごと押し潰そうと土埃を巻き上げながら地面からピスケスが飛び出し、狙う。

東郷は焦らず、冷静に両目でしっかりと見て---手を下ろすのと同時に放たれた砲撃はアサガオのようなエフェクトと共にピスケスへ直撃し、今まで通用しなかったのが嘘のように外殻を完膚なきまでに破壊して御魂のみが残った。

 

「どうやら封印は必要なかったみたいね。これで---終わりよ」

 

再び東郷が手を向け、二発目の砲撃は御魂の中心を撃ち抜いて今度こそピスケスは倒された。

その証明として御魂から生まれた虹色の光は、天へと還っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

---夢を見ていた。

懐かしい、とても懐かしい街並み。

少し違うが、それでも発展具合はとても似ていた。

空に届くのではと思うくらい高い高層ビル、マンション、何処にでもあるような家に大勢の人々。交差点、車やバス、電車の音。空を飛ぶ飛行機や信号の音。

小さな子供たち、笑顔、なによりも---遊園地。

笑顔で、元気に、みんなが楽しそうにしている。

次々と場面が変わっていくが、その遊園地は何処か居心地が良くなるような場所。

場面が変わる。

学校のような場所だが、讃州中学ではない。

何処かの寄宿学校---アカデミーと思わしき場所。

 

「………?」

 

自分が何故ここにいるのか、何故生きているのか、紡絆は理解出来ずに辺りを見渡していた。手にはエボルトラスターがあり、それだけだ。

紡絆が覚えているのはただひとつ、ここに来る前戦闘し、敗北して、メタフィールドは完全に崩壊したということ。

レオを引き離すことには成功した。ゴルゴレオスも吹き飛ばした。

神樹に対する脅威はすぐには迫らないだろう。

しかし樹海に居ないということは、死んだのだろうか。ファウストが近くに居たことは知っている。

なら、殺されていたって不思議ではない。

それに、さっきから変わりに変わっていた光景。

それは紡絆ではない■■■■は知っていた。

■■■■の記憶に眠る、日本。

その中でも一番人口が集まっていたある都道府県---東京。

四国しかないこの世界ではもう見ることは叶わないと思っていた場所だった。

しかしここは知らない。継受紡絆という人間も、■■■■という人間も、似たような場所は知っていても居たような記憶はない。

 

(……いや、分からないならどうだっていい。もし死んでなかったとしても、俺にファウストを倒すことは出来ない)

 

暗い面持ちでため息を吐く。

融合型を相手するだけでもキツいというのに、ファウストも相手できるのか。

そもそも()()()()()()()

あのファウストの様子を思い出せば、嫌でも分かる。紡絆ですら、分かるのだから。

 

(変身者がいる……倒すと、殺すことになる。仮にここから戻って、どうする? 殺すのか? そもそも俺に……変身する力は残っているのか?)

 

トドメを刺せた筈。

けれど、殺されなかった。止まった。

それは中にいる変身者がうっすら意識を取り戻し、ファウストの制御権を一時的に奪ったから。

そう考えるのが妥当であり、それがどうであれメタフィールドも完全崩壊し、ジュネッスになる力は恐らく残っていない。

変身したとしても、アンファンスで勝つなんて不可能だと理解していた。

 

(だけど……諦める訳にはいかない。俺は戻らないと、約束を破ってしまう。それでも融合型に勝つには……)

 

分からない。

皆と協力したって、透明化の能力は無効化できるのはメタフィールドのみ。

一時的に止めることは出来ても、再生されて終わりだ。

 

(考えても分からん。とりあえず……どうやって戻ろっかなこれ)

 

改めて、目の前を見る。

現実逃避するために考えていたが、戻る方法が分からない時点で前提として終わっているのだ。

やっぱり死んだのかな、と物騒なことを考えていたら、目の前の光景に変化が訪れた。

いつの間にか教室内に居り、慌てて周りを見渡すと、ある箇所が目に止まった。

一人の青年が、窓を眺めている。ぼやけていて誰かは分からないが、青年とだけは分かっていた。

 

『お前---鳥ばっか見てんだな』

 

さらに、変化が起きた。

窓を眺めていた青年が振り向き、紡絆も釣られて見れば、そこにも一人の青年がいる。

しかし窓を見ていた青年とは別で、ぼやけてもいない。

ふと見て感じた印象は、明るく人懐っこそうという印象。

 

(……誰だろうか)

 

『いつもその窓から、飛んでいく鳥ばっか見てる』

 

紡絆は首を傾げるが、彼らには見えてないのか紡絆を置いて話が進んでいく。

目の前の光景では、人懐っこそうな青年がぼやけている青年へそう言いながら近づいていた。

どうやら、二人は知り合いのようだ。

 

『鳥は自由でいい---なんて、つまらないことを考えてるわけじゃないよ。第一、鳥は自由なんかじゃない。飛ばなければ餌も取れないし渡りも出来ない。飛ばなきゃ行けないから、飛んでるだけだ』

 

『そう、鳥は別に自由なんかじゃねぇの。ただ飛んでるだけの鳥の中に、勝手に自由を見ている。自分が自由になりたいから。俺はそうだよ』

 

窓の外には、何匹ものの鳥が海の方へと飛んでいく姿が見え、その言葉を最後に再び場面が変わった。

夜だろう。月の光に照らされ、少し明るい。

ある一部屋にて、ぼやけている青年が眠っている。

そこへ一人の青年が入ってきて、彼をそっと起こすように触れていた。

ぼやけている青年は眠りから覚め、青年へ声をかける。

 

『■! なんで?』

 

『しっ。ちっちゃな自由を試そうかなっと。一緒に行く? 日帰りだけど』

 

大きな声を出すぼやけている青年に、もう一人の青年は静かにするように自身の唇に人差し指を立て、問いかけに答えると誘っていた。

 

『本気で抜け出す気なの?』

 

『森を抜ければ、ルート45に出る。ヒッチハイクをすれば、夜明けには海に出ることが出来る』

 

ぼやけている青年は体を起こして疑問を投げかけると、もう一人の青年は自分なりの計画を伝えていた。

そのアカデミーは厳しいのだろう。

ほんの少しの沈黙が、辺りを満たしていた。

 

『……君と僕は、海まではたどり着けない。僕達は見つかる』

 

『それって、幾つもある未来の一つなんだろ?』

 

その言葉から察するに、ぼやけている青年には未来を見通すことの出来る不思議な力を持っているのだろう。

しかしもう一人の青年は前向きに答え、窓に取り付けられているブラインドを紐を次々と引っ張ることで開けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光景が変わる。

二羽の鳥が地平線の彼方へ向かっていくのが見え、場面はアカデミーの中庭に移る。

そこにはぼやけているが白衣を着た三人の男性に連れられてきた人懐っこそうな方の青年がいた。

抜け出したのがバレて、捕まったといったところか。

ぼやけている青年はその未来を知っていたように芝生に座って待っていたが、もう一人の青年が駆け出し、白衣を着た人たちから抜け出した。

座っていた青年は立ち上がると、もう一人の青年を白衣の人たちが後ろから向かって来る中、右手を掴んだ。

まるで握手するようなことをすると、青年は白衣の人たちに連れられていく。

今度は抵抗をしていなく、ぼやけている方の青年は振り返るが、何も言わない。分かっていたように。

しかしさっき握手した時に感じた感触を確かめるように閉じた右手を開いて見て、驚く。

そこにあるのは、一つの貝殻。

()()()()()()()()貝殻だ。

つまり、未来が変わった。いや、変えた。

先程の青年は、行動することで先の未来を変えて見せたのだ。

それを最後に、紡絆はその世界から弾かれた---弾かれる直前、思い出したのは過去に言われたひとつの言葉。

 

『過去は変えられないが、未来なら変えることが出来る』

 

それは自身を導いてくれた、兄のような一人の英雄の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつ見ても妙な散り方……それにしても何故紡絆くんにここまで執着して……」

 

天へと昇っていく光景を見て違和感しかないが、そんなのを気にしていたって意味は無い。

今問題なのは、紡絆を狙ったことだ。

満開した勇者が二名いる。バーテックスをあっさり倒せることから、ウルトラマンと同レベルとまでは行かなくとも、一緒に戦えるようになるほどの戦闘力はあると言っても過言ではない。

しかしながら、狙われなかった。紡絆の近くに他の勇者も居たのに、狙わなかった。

まるで、紡絆を殺すだけではなく、別の目的もあるように。

 

「……執着?」

 

そう考えたところで、先程自分が言った言葉を東郷は再び呟くと、ハッとしたように神樹の方へ振り返った。

端末は使えない。情報が遮断されているなら、目視で見るしかない。

 

「見つけた……! でもいつの間に……! さっきのも罠だと言うの!?」

 

紡絆の最後の抵抗のおかげで、そこまで気にしなくていいと思っていた。問題は紡絆に執着するピスケスの対策---当然、勇者たちもそれを防ごうと躍起になる。

だがそれを逆手に取るように、晒し台にされた人間が動き出してるような、全高3mといった他のバーテックスに比べるととても小さな人型バーテックス---双子座の名を冠する、ジェミニ・バーテックスが250m/hという猛スピードで神樹へと向かっていた。

すぐに東郷が狙いを定めて放つが、ジェミニはアクロバティックに軽やかに避け、速度を維持していた。

 

「こいつ…小さくて速い…! このままだと神樹様に辿り着かれる!」

 

東郷の満開した姿でも、捉えきることが出来なかった。

こういう時、いつも頼りになっていた紡絆はダウンしていて、マッハムーブを使うこともメタフィールドの展開も変身してない彼には不可能なのだ。

大した強さはない。レオに比べれば、ファウストやゴルゴレオスのような強さはない。

しかし、メタフィールドが無くなった今、一番の脅威はジェミニになっていた。

バーテックスたちとは違い、勇者の敗北は神樹様に辿り着かれることなのだ。

 

「っ……!」

 

皆に焦りが生まれる。

レオを引きつけるだけで精一杯な風は援護に向かえず、東郷は狙い撃っているが当たらない。

友奈と樹と夏凜は紡絆を運ぶのとファウストを警戒するので必死で、向かう余裕なんてなかった。

まさしく絶望的な状況。

けれどひとり、立ち止まる者が居た。

 

「樹ちゃん!?」

 

「樹! 何してんのよ!?」

 

慌てて友奈と夏凜も止まると、樹に声をかける。

立ち止まったら危険しかない。

だが、神樹様が今危ない。

 

(紡絆先輩……ずっと独りで頑張ってた。こんなボロボロになって…それなのに。それなのに私はあまり何も出来てない。私はお姉ちゃんやみんなと……紡絆先輩に胸を張って並んで歩けるようになりたい)

 

横目でチラッと見れば、夏凜に背負られてから身動きひとつしてないボロボロな姿。

守ろうとした。

みんなを、世界を。ボロボロになってでも。

もしここで、バーテックスが神樹様の元へ辿り着けば、命を懸けてでも守り抜こうとした紡絆の頑張りは水の泡だ。

 

(みんなを守りたい。こんな私に出来ることは…私がやりたいことは……!

私は今、誰よりも、何よりも……この人を守りたい…ッ!!)

 

守られるだけではなく、共に歩むために。手に入れた夢を追いかけるためにも、いつも他人ばかりで自分を気にしない人のためにも、樹は守る力を欲した。

蘇る記憶。

想い出胸に抱いて、目を閉じる---心の中に、未来はあるのだ。

青空がある限り、時は(かぜ)を運ぶように、勇気がある限り、夢が叶うように、いつも傍にある。

だからこそ、思いの丈を叫ぼう。

そうすれば、簡単に世界は終わらないのだから。抗うことをやめない限り、きっと。

---樹の想いに応えるように、背中の鳴子百合を模った刻印が光り輝く。

懐かしく、暖かいたくさんの虹色の光が樹を包み、大きな鳴子百合が若草色の光を発しながら花開く。

 

「私たちの日常は、絶対に壊させない!」

 

光が収まった時、森の妖精とでもいうような姿だった樹の勇者服は大きく姿を変えていた。

羽衣を羽織るその姿は、神官や巫女を思わせる。

まさしく、夢の守り手。

これこそ、樹の満開。

 

「そっちに、いくなああああああああああ!!!!」

 

命懸けで保った世界を守るために、今も神樹様へ走り続けるジェミニを見据えながら樹は叫ぶ。

それに呼応して、背後に背負った円環から若草色の光の線があふれ出した。

それは、樹が普段武器とするワイヤーに違いない。

しかし、その量も質も段違いであった。

どこにワイヤーがないのか見極める方が難しいほど、空間全てをからめとるように広がる光の線が、ジェミニへと殺到する。

それから逃れるように必死に走りながらも神樹様の元へたどり着こうとするジェミニだが、樹のワイヤーはジェミニの速度を追い抜く。

さらに放射状に広がり全方位を取り囲んだワイヤーはジェミニの身軽さを持ってしても回避等許すはずもなく、糸に捕らえられたジェミニは、見た目通り刑の執行を待つ罪人のように執行人である樹の元へと引き寄せられる。

もはや逃げ出したところで、さっきの繰り返しになるだけ。そもそも逃げ出すことなど許すはずもない。

 

「おしおきっ!!」

 

開いて突き出していた右手を閉じ、樹の動作に従うようにワイヤーは一気にジェミニを締め付け、細かいブロック状にバラバラに引き裂き、分解した。

 

「えいっ」

 

そしてジェミニの中にあったであろう小さな御魂を、再生される前に樹はワイヤーで下から串刺しにして破壊する。

すると倒した証として虹色の光が天へと昇っていく。

 

「樹ナイス! ってやば……!?」

 

「来るよ!」

 

「分かってる!」

 

レオを引き付けていた風は一瞬気を取られ、その隙にレオは火球を一気に放出する。

狙いは邪魔をしてきた風---ではなく、()()()()を狙う。

すぐに反転した友奈は火球を壊すのではなく、逸らし、誘爆させるが火球の量が多すぎて一人では捌けない。

夏凜も当たりそうな火球だけは片手で斬っているが、夏凜の強みである機動力は下がってしまっている。

ギリギリ避けるので精一杯で、このままでは紡絆だけがやばい状況だ。

 

「くっ、この……!」

 

「多すぎて防ぎきれない…!」

 

「させない!」

 

完全に包囲され、防ぎ切るのは不可能かと思われたが、遠くから放たれる砲撃とワイヤーが次々と消し去っていく。

いかんせん数が多く、満開した東郷と樹でも消し去るには数秒が必要。

その数秒があれば---

 

「しまっ…!?」

 

誰にも気づかず、透明化していたゴルゴレオスが実体化し、即座に反応した夏凜が地面を蹴るのと同時に火炎弾が樹海へ直撃した。

そうなるといくら勇者であろうとも、直撃を避けても空中では爆風で吹き飛ばされる。

 

「夏凜ちゃん大丈夫!?」

 

「私は平気! けど紡絆が……!」

 

近くにいる友奈が心配して声をかけるが、夏凜は無事地面に着地していた。

そう、あくまで夏凜は、だ。

爆風の際、意識のない人間が掴まっていられるかと言われたら不可能。吹き飛ばされる際の衝撃で離れてしまったのだろう。

紡絆は友奈や夏凜と離れた場所へ飛ばされてうつ伏せに倒れている。

しかも、よりによってファウストの近く。

 

『っ……無駄だ。今度こそ……!』

 

未だにファウストの様子が可笑しく、頭を抑えているがファウストは拳を振り上げる。

 

「させるかっての……!」

 

そこに風が大剣を振るい、ファウストは回避するがダークフェザーを風に飛ばし、風は大剣ごと少し弾かれてしまう。

さらにまたしても透明で接近していたゴルゴレオスの口吻が紡絆を捕食しようと接近していた。

誰もが遠く、ゴルゴレオスの方が早い。

このまま紡絆は口吻に捕まり、そのまま食べられる未来が想像でき---

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何?」

 

間に合わないと分かっている。それでも、守ろうと駆け寄っていた夏凜の足が、止まる。

口吻は変わらず接近しているが、止まった理由はひとつ、変化が起きていた。

紡絆の肉体が光り輝いているのだ。エボルトラスターは倒れた際に手から離してしまったようで、今手元にはない。

だが、遠くにあるエボルトラスターは鼓動し、同じく光り輝き始めた。

時間が遅くなったかのような錯覚。

それでも口吻は迫り、一際強く輝くのと同時に、口吻が紡絆の体を覆い尽くした。

 

「そんな……!?」

「嘘でしょ…紡絆…!?」

「紡絆くん……!」

「紡絆先輩………!」

「っ……ここで終わるようなやつじゃないでしょ…!」

 

みんなが声を挙げる。

しかしゴルゴレオスは一切の躊躇をせず口吻を上げると、咀嚼するように上へ向いている。

口吻があった位置には、何一つ残ってはいない。せいぜい、血くらいだろうか。

その真実に絶望が広がる。

一度助けることは出来たのに、失ってしまった無力感。

それが場を支配し---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場を支配しかける前に、光は、強く輝く。

絶望を無力感を、その全てを打ち砕く光。

口吻が光に包まれ、ゴルゴレオスは何処か慌てたような、驚いたような奇声を挙げる。

そして---

 

『シュアッ!』

 

その瞬間、口吻を破壊しながらアンファンスとしての姿でネクサスが落ちるように地面へと着地した。

土煙を発生させ、煙が晴れると両足でしっかりと立っている。

その姿に、辺りを占めていた絶望が希望へと変化する。

 

 

 

 

 

939:名無しの転生者 ID:1ktqJPP2Y

だが……

 

 

940:名無しの転生者 ID:gbSqmoB/X

あぁ、何も変わっちゃいない。イッチが死ぬという最悪の未来と危機はなんとか脱した。それだけだ。

 

941:名無しの転生者 ID:xsi/9wgg8

メタフィールドが無ければ、ゴルゴレムの能力は突破出来ない……

 

 

942:名無しの転生者 ID:nJBSYvi2H

それに、よく見ろ。今のイッチは……!

 

 

943:名無しの転生者 ID:nc8C36ZYI

無事なのは良かった。ただ、ただそれだけなんだ……!

 

 

944:名無しの転生者 ID:J9/LNJKkt

くそっ! どうすりゃいいんだよこれは!?

 

 

945:名無しの転生者 ID:5VoOtFnV/

俺たちにできるのはイッチにアドバイスと新しくスレを作って知識を与えるだけ……作戦を考えるだけしかない…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「紡絆くん……?」

 

『………』

 

様子がおかしい。

変身した。無事だった。口吻を破壊した。

ただ、ただそれでも友奈の呼び掛けに一切答えない。

一度も勇者たちの元を見ずに、ネクサスはふらふらしていて、ついに膝を着いた。

 

『ァあァ……ハァ、ッハアッ……』

 

「っ……待って。ウルトラマンの瞳が……!」

 

気がついたように声を挙げる夏凜の言葉に従うように、全員がウルトラマンに注目した。

よくよく見てみれば、いつも輝いている白い瞳は光っていない。

さらにエナジーコアの輝きもうっすらで、エネルギーが残っていない状況だというのに無理矢理変身したのだろう。

かつての、姫矢准のように。

 

『既に変身する力はないはず……なぜ立ち上がれる?』

 

『………』

 

立ち上がりながらも、呼吸するだけで精一杯なのかファウストを見て、何も答えない。

問いかけに答えることが出来なかった。

 

『まぁいい---さっきのようなことはもう起こらん……!』

 

「待ちな---っ!?」

 

素早く剣を地面から抜き、ネクサスに向かうファウストを風は足止めしようとするが、口吻のダメージから復帰したゴルゴレオスが立ち塞がることでファウストは風を通り過ぎる。

邪魔というように大剣を振るうが、満開の力を持ってしてもゴルゴレオスの装甲は打ち砕けずにはじかれる。

 

「風先輩! こうなったら……」

 

「無理そうよ…!」

 

「バーテックスの方が……!」

 

友奈と夏凜、樹が向かおうとすれば、レオが立ち塞がる。

満開した勇者は3人の中では樹のみ。そして満開した風ですら時間稼ぎしか出来てなかったことを考えるに、厳しいだろう。

 

「紡絆くんには近づけさせない!」

 

唯一離れている東郷だけがフリーであり、東郷はすぐに砲撃を放つ。

ファウストもそれに気づいたのか、体を逸らして砲撃を避けると、東郷から見てネクサスに隠れる位置へファウストが動き、撃てなくなる。

 

「紡絆くんを盾に……!」

 

そうなってしまえば、東郷には撃つことは出来ない。

すぐに位置を変えるが、それよりも早くにファウストがネクサスの元へ辿り着いて掴みあげている。

 

『ぁ……ウァァ……!』

 

『……ハアッ!』

 

ネクサスの足が地面から離れ、ファウストの腕を掴むことも抵抗することも無く、ただされるがままでいると、ファウストはネクサスを全力で蹴り飛ばしていた。

 

『ウァァァアアァァアアア!』

 

あっさりと吹き飛ばされ、ネクサスは背中から地面に落ちる。

苦しそうな声を漏らしながらも、瞳が回復することは決してなかった。

 

『う……あぁ……ぐぁ……』

 

いくら変身したとはいえ、意味が無い。

ただ、ただ意識があっても意志がなければ意味が無いのだ。

みんなが駆けつけようと、東郷がファウストに攻撃しようと、満開の力を持ってしてもファウストは止められない。

接近したファウストは容赦なくネクサスを蹴り上げ、呼び寄せた剣を真っ直ぐに構えた。

打ち上げられ、落下するネクサス。

そこに剣を構えるファウストは、そのまま容赦なく突き出す気だろう。

それでも、ネクサスにエネルギーを回復させる力なんてない。

 

(流石に---む……り……)

 

さらに変身者である紡絆がついに限界が訪れたのかネクサスの体は脱力し、意識が遠のく。

最後に映ったのは、必死に融合型とバーテックスに抵抗する勇者と自身に剣を突き出すファウストの姿。

必死に起きろという声と、避けろという声。脳裏に直接響くそれにすら答えることは出来ず、ネクサスはそのままファウストの剣に貫かれる---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カキン、と金属音が響く。

大きく弾かれ、体勢を崩す。

誰もが行動をやめ、金属音の方へと視線が集まっていた。

 

『………!?』

 

ファウストが驚いたように、剣と相手を見ていた。

右腕に輝くエルボーカッターが防いだ---というのは分かる。

しかしどういうことか。

本来なら避けられる距離でも防げる速度でもなく、貫かれる運命を辿るだけだったはず。間に合わないはずなのだ。

だと言うのに、消えていたネクサスの瞳の光が輝いており、エナジーコアがうっすらと赤く輝く。

 

『ヘェア! シェア---ウアァ!』

 

『ぐおぁ…!?』

 

握り拳を作った状態で左腕の肘を曲げ腕を上に、開かれたままの右手は、胸元に右腕を水平に伸ばす。

普段とは別の構えを取るネクサスは、すぐに走り、ファウストの腹に拳を打ち付け、流れるように肘打ちを胸に与えると、一気に蹴り飛ばした。

驚いていたファウストはまともに受け、ネクサスは両腕をクロスして放つ三日月の光刃---ボードレイ・フェザーを追撃に与えると、両腕を大きく広げたままの姿で輝いていた瞳は再び消え、ネクサスの体はうつ伏せに倒れる。

 

985:名無しの転生者 ID:/IXdFIAVu

イッチ!?

 

 

986:名無しの転生者 ID:Ibbx+zupD

なんだ今の……?

 

 

987:名無しの転生者 ID:tViEX4p71

おいイッチ! 起きろ! まだ終わってないぞ!

 

 

988:名無しの転生者 ID:n4VmUzpRN

変身していた時点で可笑しいが、意識がない状態で動いたってわけか…? それにしては動きが……

 

 

989:名無しの転生者 ID:6er403Xtq

しっかりしろイッチ……!

 

 

990:名無しの転生者 ID:ObWIWRIFm

どちらにせよ、イッチが目覚めないと他はともかくゴルゴレオスの攻略が不可能だ! メタフィールドがなければやつは攻略出来ない……!

 

 

991:名無しの転生者 ID:XgSrvtZ51

くそっ! せめてウルティメイトバニッシャーがあれば……!

 

 

992:名無しの転生者 ID:/5Tjw1G6F

ないものを望んだって仕方がないだろ! でもイッチが目覚めたところでエネルギーがなければ何も……

 

 

993:名無しの転生者 ID:eTQkvI/ZA

あのファウストの様子は気になるが、イッチは多分今意識がない……!

 

 

994:名無しの転生者 ID:LwuJstTs0

残りは……ひとつ、か。この状況を脱するには……頼るしかない。とびっきりの奇跡を……!

 

 

995:名無しの転生者 ID:o5jKUvCM4

可能性として考えられるのはコアファイナル! 奇跡を起こす力と言っても過言じゃあない!

今のイッチが復活するには、この状況を打開するためにはもう残された手段はそれしかないか! それが起きなければ、この世界は、ウルトラマンは負けて終わる……!

 

 

 

 

 

 

 

今度こそ動かなくなったネクサス。

変身は解除されていないが、ウルトラマンではなく紡絆が力尽きたということだろうか。

一瞬だけ、少しだけ蘇っていたが、最後の気力を振り絞ったのかもしれない。

どうであれ、ウルトラマンが、紡絆が動かなくなった事実は変わらない。

もはや、とうすることだって---

 

「---まだ」

 

否。

例えそうであろうとも、どんな状況でも、掴める未来が遠くても。絶望に覆われたとしても。

 

「まだ終わってない!」

 

立ち上がる。

周りを励ますように、自身の心を叱咤するように友奈が叫ぶ。

光は、繋がり、光は受け継がれ、光は決して消えない。それぞれが持つ輝きは、闇に負けるはずがないのだ。

 

「約束したんだ……紡絆くんは絶対大丈夫! だから私は、私に出来ることをやる。紡絆くんをいつでも信じてる!」

 

かつて星空に輝く夜空の下で交わした約束。

紡絆は、約束を破るような人間ではない。

どれだけのことがあろうとも、何があっても最後には守っている。

みんなを信じる紡絆は、最後の最後まで頑張った。

信じることを信じる。単純にそれだけで、心の祈りは決して変わらない。

希望と勇気を働かせて、かよわくて儚い人たちが安心出来る世界にするためにも、立ち上がられねばならない。

 

「私は勇者……どんな困難な状況でも諦めない! 勇者は挫けない! 勇者は---ヒーローは必ず、立ち上がるから! だから私は、今私に出来ることをする!!」

 

誰かのために、自分のために、生命(いのち)の限り、生きるとき。

内側から込み上げてくる力を、思いを信じて、今こそ地球(人間)の力を、生き抜く力を生命(いのち)の限り、使うとき。

 

「---友奈の言う通り、紡絆はいつも立ち上がった! だったらあたしらが出来るのは信じて、戦うだけ!」

 

「流石友奈ちゃんね……そう、紡絆くんが居たって同じことを言うはず。紡絆くんは簡単に諦めるような人間じゃないものね」

 

ひとりと、またひとりと、繋がりあった絆が闘志を繋げていく。

光が繋がる。思いは繋がる。希望の光が決して消えないように。次に、また次へと託されていく。

 

「はい……紡絆先輩だったとしてもきっと! 皆さんで、元の場所へ帰るために……!」

 

立ち上がり、また立ち上がる。

信じる心がある限り、絶望に打ち負けることなど決してない。

きっと彼は立ち上がると信じている。

 

「……えぇ。まったく。そうだったわ。あのバカは無茶苦茶だけど、簡単に諦めるようなやつじゃない。もしそうなら、今頃私はあいつと関わってないわ」

 

全員が立ち上がり、敵を見据える。残る三体の、強敵たちを。

奇跡は、神が起こすものではない。

かつて絶望に覆われ、希望を失われ、()()()()()()()()()()終わりへゆく運命しかないと思われた世界があった。

その世界には光の巨人が居たのだ。

紡絆とは別の、全く別の宇宙のウルトラマン。

巨悪に立ち向かい、邪神の名を持つ怪物に敗北した。

もう終わりかと思われたとき、奇跡が起こった。

いや、人間が起こした奇跡だ。

かつて紡絆が言われた一人の言葉。同じ境遇で、別の選択を取った戦士の言葉だ。

人は誰でも光になれる。その通り、子供たちの力や人々の力がウルトラマンへ宿り、巨悪を打ち倒すことが出来た。

故に、引き寄せているキセキ---ヒカリ。

 

「勇者部、ファイトォー!!」

 

「「「「「オーーーーッ!!!」」」」」

 

立ち向かう勇者部の、みんなの諦めない光が、それぞれの心に宿る信じる光が樹海を駆け抜け、ウルトラマンのコアゲージへと集まる。

さらに人間の想いに、神樹様が答えたのだろうか。

辺りに満ちる光の残留エネルギーがネクサスが倒れている地面から伝っていく。

元はネクサスの光。散らばった光を神々が集め、それを戻しているに過ぎない。

当然、それで復活するなんてご都合主義も瞳に光が戻ることも、紡絆が回復するなんてことはない。

ただ、ただそれでも---ネクサスのコアゲージにうっすらと光が灯っていた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編(スパイラル)

  • はよ書け
  • 先にゆゆゆ編完結はよ
  • まだゆゆゆネクサスの難易度上がるってマ?
  • シン・ウルトラマンはいいぞ。見ろ
  • スパイラルでシン・ウルトラマンも書いて♡
  • シン・ウルトラマン見ました
  • 投稿ペースを早めて
  • 戦闘シーン早くするんだよ
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