【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
気がつけば、何処か分からない、街並みが見える芝生に紡絆は寝転んでいた。
手にあるエボルトラスターを握りながら、ふと目が覚めたように目を開け、体を起こす。
「ここは……東京?」
■■■■の記憶に存在する、懐かしい景色。
だが、有り得ないと否定する。
外の世界は死のウイルスが蔓延しており、もしこんな街があるなら隠す必要もないし誰かが行ってたって不思議じゃない。
「---情けないな」
膝に顔を埋めながら、ため息を吐く。
結局、何も出来なかった。
変身してもやられただけで、一撃も与えることもメタフィールドも、ジュネッスにすらなれなかった。
そのことで、情けないと呟いたのだろう。
「そんなことないだろ? すっげぇガッツだったじゃん」
「……そんな慰めはいらないよ。今度こそ守ろうって、守りたいって思ってた。でも俺はもう死んで---」
「いや死んでないって!」
「……ん? は……? ってえぇえええ!?」
会話していたというのに、少し遅れて紡絆は誰か居ることに気づいた。目の前には笑顔で、人懐っこそうで、オレンジ色のダウンジャケットのようなものを着てる青年が覗き込んできていた。
思わず紡絆は驚いて両手を後ろに着きながら、足を動かして下がる。
「あぁ、ごめん! 驚かせるわけじゃなかったんだ」
「い、いえ……誰、ですか? 見覚えはあるような……それにそれって…!」
そう遠い過去ではなく、それもつい最近見たことのある顔で、何よりも思わず自身の手を見るが、しっかりとある。
そう、青年の手にはなんと、紡絆と同じエボルトラスターが存在していたのである。
「俺は
「あ、はい。継受紡絆です…じゃなくって、死んでないってどういうことですか!? ここ東京ですよね? 俺の世界には東京はもう---」
つい釣られて自己紹介してしまうが、そうじゃない。
紡絆は今抱く最もな疑問を投げかけると、青年は紡絆の隣に座りながら苦笑し、答える。
「ここはあくまでイメージから作り出される空間---ここはさ、俺にとって思い出の場所なんだ」
青年がそう言うと、景色が変わった。
どこかの学舎、海、星空、遊園地、森、夕焼けの街、そしてさっきまで居た場所。
それは紡絆の思い出ではなく、憐と名乗る青年の記憶の数々。
「……思い出」
「そっ、俺は元々アメリカのダラスってところにあるアカデミーに居たんだ。俺はちょっと特別でね、親は遺伝子で、簡単に言うとハイブリッド新生児の一人なんだ。詳しい話は時間が無いから飛ばさせてもらうけど」
「……???」
何やらいきなり難しい単語が飛んできた紡絆は、理解出来ずに首を傾げながら疑問符を浮かべていた。
そもそも親が遺伝子という時点で紡絆の頭はオーバーヒート寸前だ。こんらんしている。
「そんな特別なのもあって、俺は寿命を決める際の遺伝子に致命的なディフェクトを持っていたんだ。唯一の失敗作なんだって。
だから16歳から17歳を境に一気に全身の細胞がアポトーシスを起こして死ぬ---そう聞いたよ」
「……ッ!? それは…辛かったんじゃ……」
よくはわからない。ただ分かったのは、寿命が短いということ。そして目の前の青年は過去を話してくれているということ。
紡絆には人間としての寿命がある。
自ら削ってるとはいえ、平和に生きれば年老いて死ぬ。
ただ目の前の青年には、憐にはそんな未来はなかったのだろう。
「辛かった。すげぇ、辛かったよ。だから誰一人俺の事を知らない場所へ行ってしまえば、俺は自分の未来を忘れていられる。そう思って俺は、東京行きの飛行機に乗った。
初めて来て、そこは居心地がとてもよかった。会う人みんなが好きになれた。
それでも、時々考えてたんだ。俺の命は何処から来て、何処へ行くんだろうって」
紡絆には決して分からない、彼にしか分からない悩み。
生まれて、最初から死ぬ運命が決まっているだなんて、一体どれだけ辛くて、苦しいのか。
「実際に、俺は耐えられなかった。ただ人を心配させて悲しませて、出来るはずもない、直すための特効薬であるラファエルの完成をただ待っているだけ。そんなの完成するより先に、俺は死ぬ。
それが耐えられなかった」
自由もなく、何かをすることも、何かを見ることも、何も出来ない。
ただその場に居て、心配させて、朽ちていくだけ。
「天使は、ラファエルは来ない。だから俺、どうせ短い時間なら、誰も俺が死ぬってことを知らない所へ行こうと思った。そしたら、何でか解んねえけど、俺みたいな失敗作のところに光が降ってきた……」
手にあるエボルトラスターを見つめる憐に釣られ、紡絆も見る。
同じでは無い。でも、同じである部分はある。
なんでか解らないのだ。紡絆も、何故自分が光を継承することになったのか。
なんで、選ばれたのか。
後悔はあった。救えなかった後悔。それでも、それだけで光に選ばれる理由にはならない。
転生者だから? 違う。転生者だったとしても、どんな人間だろうと理由もなくウルトラマンに選ばれるはずもない。
「迷わなかった……自分にもまだ、できることがあるんだと思ったら、すっげえ嬉しかった。遊園地でずっと見てた、子供たちや親やたくさんの人たち。ああいう人たちを自分は守れるって、そう思ったら本当、嬉しかったんだ」
迷わなかった。
紡絆は自分が死ぬ事への恐怖よりも、みんなの居場所を奪おうとするスペースビーストを見て、守りたいと願って手にした。
逆に憐は、限られた時間の中で守れると思って手にした。
方向性は違えど、似ている。
「戦ってれば、死ぬことなんて忘れていられる。運命を忘れていられる。そう思って我武者羅に戦ってきた---でもさ、それは違ったんだよな」
「……違う?」
懐かしそうに話す憐を見ながら、紡絆は真剣な表情で見つめる。
既に答えを得ている、彼の言葉を聞き逃さないように。
「ある人たちに言われたんだ。たとえ死ぬとしても、それまでの時間と思い出は確かに残る大切なものだって。死ぬ気で戦う事と、死んでもいいと思って戦う事は、全く違うことだって」
「………ッ」
「あんたも、思ってたんだろ? 体はもう持たない。けど、
憐の言葉に、紡絆は握り拳を作りながら目を逸らす。
それはつまり図星、ということ。
戦いが始まる前、紡絆はウルトラマンに向かって言っていた。
円陣の際は流石に自分も含めたような発言はしていたが、自身の肉体の具合からして死ぬ覚悟をしながら戦わないと絶対に勝つことも出来ないと察していた。
無論、最初はわざと死ぬために戦ったりはしていなかった。レオバーテックスがスタークラスターへ融合するまでは、だが。
今の自分では敵わない。だから、だから、みんなの未来だけは守ろう、と。
死ぬつもりで、せめて相打ちくらいにはしよう、と。
その結果が、これだ。何も出来ず、敵わず、
「俺は
「………」
憐が指差し、そう言われた紡絆はエボルトラスターを見つめる。
いつもはそれほど重さを感じないというのに、今は物凄く重たく感じていた。
多くの、大勢の人々に受け継がれてきた光の力。
それが手元にあって、無意識に紡絆は次へ紡いだ人々の意志を感じ取っている。
「でも……俺に何が出来るんでしょうか」
再び膝に顔を埋めるが、紡絆の目はどこか遠くを見ている。
消えてしまいそうな、幻想を見るかのような目。
それを憐は優しげな表情で聞いていた。
「どういうこと?」
「力を使う意味は、理由は、既に導いてくれた人が居ました。
でも立ち上がる力は、もうない……足掻いたところで、もう戦える力がないんです。俺は、殺すことが出来ない。後悔したくない。まだ諦めたくない。
メタフィールドが崩壊したところを、その目で見た。
自分自身が、剣に貫かれる寸前のところを見た。
あの後、刺されて変身は解除されていると考えるのが道理だ。
生きていたとしても、もうジュネッスになる力も、メタフィールドを展開する力も、動く力もないということを紡絆は理解して、抗う意思があっても不可能なのだ。
紡絆の意思には関係なく、出来ないものは出来ない。
「---大丈夫」
諦めたくなくても、諦めざる得ない。
そんな紡絆を安心させるような、優しさが込められた言葉が送られる。
思わず紡絆は顔を上げて、憐を見つめた。
この状況を打開するための手があるなら、手にしたいがために。
「紡絆は死んでない。戦う意思もある。なら、俺が言いたいのは、
でも、だからといって、俺たちは時にはやらなくちゃいけない。例え
それが光を得た、俺たちの役目なんだ」
「役目、か……」
そう語る憐の言葉には、重みがある。何故なら彼も、
それは紡絆には知らないが、彼の過去を聞いた紡絆には、その言葉の重さがより理解していた。
命あるものと無いもの。
解決したとはいえ、失う可能性の方が高かった彼の言葉は誰よりも重い。
そして彼の言う通り、ウルトラマンであるならば時に命を奪う覚悟が必要だ。
紡絆の記憶には、元は人間で、被害者で、殺さなければならかった怪獣たちが浮かんでいく。何の罪もないのに
彼の知るウルトラマンも、救いたくても助けられなかった。殺すしかなくて、殺した。
「そっか、そうだったな……。でも
それが俺なんです。■■■■なんです。継受紡絆なんです」
だが過去を見る目。
記憶がなく、今世では少しと前世の記憶しか持たない彼は、まるで過去を繰り返さないと言いたげな雰囲気を纏っていた。
家族を失い、全てを失い---だとすれば、その過去を見る目は、果たして何を見ているのか。
ただそれでも、薄れ、忘れかけていた星人や怪獣たちと歴戦の戦士たちのことを思い出した紡絆は、迷いが振り切られていた。
「うん、ちゃんと頭の中に入れてるならいいってことよ。紡絆がそういう人間なのは、今までの記録から分かってっから。俺も他人にやめろ、とかとやかく言う資格はないしな」
「……みんな同じなんですね、ウルトラマンに選ばれた人間は」
「そうみたいだな」
そう言い、静かに互いに笑い合う。
姫矢准も、目の前にいる千樹憐も、今の継承者である継受紡絆にも、何よりも共通するものがある。
理由はどうあれ、必ず
「っと……時間が無いみたいだ」
芝生から立ち上がって、憐は街並みを睨みつけた。
そこには座ってでも見通せる街並みの空間に、歪なモヤが生まれている。
どうやら、この空間を保つ時間がなくなっているのだろう。
いや---
「……みんな」
この世界ではなく、樹海が不味い状況となっている。
紡絆が意識を失ってから満開した者が二人増えているが、それでもレオとゴルゴレオス、ファウストが優勢。
このままでは満開の力も長く続かず、敗北してしまうかもしれない。
それを見て、紡絆は表情を引き締めながら憐を見つめる。
瞳に、溢れんばかりの光を宿しながら。
「……覚悟は出来てる---って必要ないか。紡絆、最後に俺から言えるのはひとつ」
憐が顔を見れば、年齢に不相応な覚悟を秘めながら、諦める意志何一つ感じさせない瞳で、憐を見ていた。
それこそ、放っておいても飛び出してしまいそうだと感じさせるほどに。
故に、過去の己と同じく今はまだ未熟の少年を導くために、憐は託す。
この世界の未来を、人の笑顔を。受け継がれてきた光を。彼ならば、守り抜けると信じて。
その思いを抱きながら、憐は手に持つエボルトラスターを紡絆に向ける。
すると憐の肉体は
「ん? あれ、ちょっと待って憐! これデジャ---」
似た現象を見たことのある紡絆は驚くが、そんな紡絆のことなど露知らず、青い粒子となったものは青色の光へと変換され、紡絆の肉体の中に容赦なく入っていった。
『紡絆! 光は、人に受け継がれる希望なんだ。だからどうしようも無くなった時こそ、生きるために。俺が最後までウルトラマンとして戦えたように、光を信じろ!』
光の本質が絆であることを伝えてくれた姫矢の時のように、憐もまた紡絆に
それを聞き届け、最後まで笑顔で優しく諭してくれた憐の姿に、紡絆は目を閉じて頭を下げた。
胸を握り締めれば、彼から託された、青い光が輝く。
姫矢から託された赤い光が力強さを感じさせるならば、憐の光は自身に似ていて、それでも違う確かな優しさをと思いやりを感じさせるものだった。
そして紡絆は頭を上げるとエボルトラスターを見つめる---
同時に、世界が切り替わる。
エボルトラスターが手元から消え、紡絆の目の前には和を思わせる鎧のような姿---アンファンスと呼ばれる形態のウルトラマンネクサスが居た。
いつもの青黒く、白い光が所々にある神秘な空間。初めて出会った場所と同じ空間。
『-----』
「……大丈夫。もう、俺は決めたよ。
世界を守るためには、ファウストを倒す…
ネクサスを真っ直ぐに見つめる紡絆の表情は覚悟を決めていて、もはや止まらないだろう。
例え何を言ったとしても、もう背負う覚悟を持っているのだから。
『-------』
「今の俺に出来ることは、そうやって
俺はその気持ちに答えてあげたい。俺は---後悔したくないんだ。だったら、俺が全て背負う。誰かを守るには、その覚悟はいつしか必ず必要になるから……!」
命を奪う覚悟。
決して殺すとは言わなかった紡絆は、ここで初めて命を背負う意志を持った。
奪われることはあった。でも、自ら奪うことはなかった。
紡絆もまた人間。命を奪うということに戸惑いもあれば、奪うことの恐怖もある。
だが、それでもいつしか奪うことになる。奪わなくちゃ行けない時がくる。それが今なのだ。
故に、奪ったその全てを忘れず、背負うといった。
忘れた方が気楽なのに、苦しくないのに、背負わなければ自分が追い詰められることもないのに、自ら険しい道を往く。
『…………』
「ごめん。俺はまだまだ未熟だけどさ……戦って、みんなを守れるのは本当に嬉しいことなんだ。君に無茶させてるのは分かってる。
でも、でも俺はまだ---」
ぎゅっと拳を強く握り締め、紡絆はただネクサスを見ていた。
その先の言葉は、言わずとも分かる。
その表情を見れば、様子を見れば。
『------』
だからこそ、ネクサスは紡絆を見つめ返しながら手を差し出した。
言わなくてもいい、と。
ただ選択を委ねるように手を差し出した。
戦いたくないなら、掴まなければいい。守りたいなら、自分の手で掴み取ることこそ意味があるのだから。
「---ありがとう。
そんじゃあ……行きましょうか!」
当然、今の紡絆にそのような選択など、待つ必要すらない。
少しも悩むことなく、迷いなく手を伸ばして、ネクサスの手を掴む。
その瞬間、紡絆の肉体が赤く輝き始め、黄金色の光が二人を包み込む---
そして、紅蓮の炎を体現するような、情熱の
樹海で勇者とバーテックス、巨人と怪獣が戦っていた。
圧倒的な強さを持つ二体と一人の敵に、満開した勇者が三人居ても、勝てない。
ただ追い詰められるだけだが、勇者は諦めなかった。
どれだけ傷ついても、決して神樹様の方へ向かわせない。
それでも、人間には限界がある。
満開の力もあとどれほど持つのか---少なくとも長く続かない。
そして、戦況は悪化していた。
「っぁ……!?」
満開の力を持ってして、ようやく戦える。
ならば、満開していない勇者はいくら強くても、勝つことなど不可能なのだ。
事実、ゴルゴレオスの一撃が今、友奈を蹴り飛ばした。
防御しても、精霊バリアの上からでも凄まじい威力を誇るそれは友奈を容易に吹き飛ばし、地面へと落ちる。
「友奈!? ぐっ……!」
「友奈ちゃん! この、邪魔を……!」
友奈が吹き飛ぶ姿を見た夏凜は思わず視線で追うが、即座に持ち前の機動力でファウストからの一撃を避け、東郷の射線上にゴルゴレオスが行き先を妨害するように実体化する。
すぐに砲撃が放たれるが、前方に貼られたバリアが防ぐ。
レオの相手をしている風と樹が向かおうにも、複数の能力を使うレオの隙は中々ない。
そもそも、よく持った方だと言える。ここまで戦い続けれたのは、奇跡に等しい。
『よく足掻いたものだ。そこだけは褒めてやる』
無慈悲にも、ファウストが友奈の目の前に降り立った。
助けに行ける勇者はおらず、友奈もダメージが大きいのかすぐには動けない。
『やつの元へ向かわせてやる---ハアッ!』
「っ……!」
目の前にいるファウストが、友奈に対して剣を振り下ろす。
その力に脅威を感じた牛鬼が精霊バリアを貼るが、剣を一瞬受け止めると、今までの強度が嘘のように、
自らを守ろうとしてくれた牛鬼を守るために友奈は即座に胸元に抱きしめ、目前に迫る剣に思わず目を伏せる。
(怖い---死にたくない。私が死んだら、この後はみんなも……そんなの嫌だ! 紡絆くん---)
目を伏せた友奈の脳裏に浮かぶのは、恐怖と隠していた弱音を打ち明けて欲しいと言ってくれた、無茶ばかりする心優しい男の子の姿。
友奈が出来ないことがあったら、紡絆が出来なかったら、いつも手伝ってくれて一緒に悩んで考えてくれた子。
ここまで頑張った。立ち上がってくれると、信じて。終わるような人じゃないと。
だからこそ、友奈は最後まで信じる。
最後の最後まで
『デェアアアアァァァッ!』
『---ッ!?』
希望は、光はやってくる。
物凄い速さで蹴りを放つ光は
くるり、と回転し、片手を地面に着きながら、光が着地する。
影を照らし、勇気を与えるような明るい光が、辺りを照らした。
何の痛みも来なくて、むしろ暖かさを感じた友奈は違和感で目を開ける。
さっきまであった剣はなく、そこには赤い光を身に纏い、瞳には光を。胸のコアゲージには青い光を宿している---ウルトラマンネクサスが確かに存在していた。
157:名無しの転生者 ID:rTgAWCJP+
生きとったんかワレェ!
158:名無しの転生者 ID:VYUmPzVrc
スレは建てておいたぞ!
159:名無しの転生者 ID:xxEeUNP7j
エネルギーが回復してる…! さっき光が集まってたのが原因か?
160:名無しの転生者 ID:gYgF9SjEc
それだけじゃない。イッチの動きが良くなってる! 二度目のバーテックス襲来時に復活した時と同じくらいだ!
161:名無しの転生者 ID:8eipCUwRw
まさかウルティメイトバニッシャーもなしに復活するとは…!
162:名無しの転生者 ID:2cALtrTVp
けどメタフィールドは貼れるのか!?
163:名無しの転生者 ID:a8ic6NngG
イッチの肉体がボロボロなのは多分変わらないはず……回復したといっても、長くは持たんと見るべきだ!
164:名無しの転生者 ID:RwD38AUdE
いいか、無理する必要はない!
バーテックス優先で、状況が変化したらファウストと融合型の相手だ!
165:名無しの転生者 ID:l2I1qX6Yh
考えた結果、それが一番効率も良い!
もし融合型とファウストが残っても撤退する可能性はあるからな…!
「紡絆……くん?」
『………シュア』
驚いたように目を見開く友奈に、安心させるようにこくり、とネクサスが頷く。
そんな彼はすぐにレオを見つめ、ファイティングポーズを取ると加速して真っ直ぐに右腕を突き出すと、レオを一気に殴り飛ばした。
加速による強烈な一撃でレオの体は少し離される。
「紡絆!?」
「紡絆先輩……! 良かった……」
『デヤッ……フッ!』
一度だけ風と樹に視線を送ると、ネクサスは再び加速。
即座にゴルゴレオスを斬りつけようとしたところで、ネクサスの存在に気づいたゴルゴレオスは透明になって避ける。
「紡絆……! まったく、やっと起きたの?」
「心配したわ---紡絆くん、後ろ!」
ゆっくりと会話する隙もなく、実体化したゴルゴレオスがネクサスに襲いかかる。
東郷は即座に警告を出すが、それよりも早くネクサスは振り向き、片腕には青い輝きを手にしていた。
予測し、対策していたのだろう。
『ヘェアッ!』
一瞬にして展開されたメタフィールド。
黄金色の空間が世界を覆い尽くし、神秘の荒野の世界が創り出される。
所々にあるオブジェクトの中に敷き詰められている光は、宝石のようで、まるで命の輝き。
『ハァ---シェア』
『なぜ……何故動ける…戦える…!?』
一体どういうことか。
メタフィールドが完全に崩壊する程に肉体もエネルギーも力尽きていたというのに、嘘のように展開し、動いていて、今も構えている。
エネルギーを吸い取ったというのに、回復しているのだ。
ファウストには到底理解出来ない。
当たり前だ。理屈なんかじゃ、説明出来るようなものではない。誰かの思いこそが、ウルトラマンに力を貸す。
諦めない心が、勇気と力を与える。
だが、メタフィールドはネクサスに有利な空間で戦えるというもの---そんなものは、例のごとく許さない者が居た。
暗雲がメタフィールドに生まれると、メタフィールドを塗り替え、闇の世界へと塗り替える---ダークフィールドG。
「次から次へと……忙しないわね」
「でも---大丈夫。今度こそ、終わらせる」
「そうよ、こんな戦い終わらせましょう」
「うん…皆さんで帰るためにも」
友奈を除く勇者が、ネクサスに合流した。
それを一瞥し、ネクサスは小さく頷きながら敵を見据えた。
敵も起き上がり、今にも襲いかかってきそうだ。
「遅れました…!」
「友奈ちゃん…大丈夫?」
「うん、紡絆くんのお陰で平気!」
そんな中、遅れて跳躍し、地面に降り立った友奈はいつもの笑顔で返す。
それを見てネクサス以外が安堵の表情を見せるが、風は気を引き締めて口を開く。
「友奈も平気そうね。なら勇者部、行きましょうか…!」
『デェアッ!』
誰よりも速く、ネクサスが地上を走る。
迎撃すべくゴルゴレオスが前に出て、ネクサスに突進をしかけた。
それを往なしたネクサスは後ろ蹴りでゴルゴレオスを蹴り、ファウストへ向かって跳躍するのと同時に右拳を突き出す。
『また同じことをするだけだ……!』
それに対し、ファウストは剣を振るう。
ネクサスの拳と振られた剣ならば、当然切れ味が悪いわけでもないファウストの剣の方が強い。
だからこそ、ネクサスは寸前で右拳を戻し、僅かに身を逸らしながら左拳を突き出した。
すなわち、フェイント。
まんまと引っかかったファウストは左拳による一撃を受けることになる。
『デェア、シュアァァ! ヘアッ!』
『ぐぅううう---ッ!?』
後退するファウストに、追撃するように再び軽い跳躍と同時に右拳を打ち付け、地面を滑りながらファウストの足をスライディングで轢くと、地面についていた足が急に浮遊感を与え、体勢を崩しながらファウストの肉体が浮く。
その瞬間、ネクサスは足を掴んで回り始める。
『ハアァァァァ---ジュアッ!』
突風が起こるほどの高速回転。
それによって誰も寄り付くことが出来ない状態にしたネクサスは、ハンマー投げのように投げ飛ばす---ジャイアントスイング。
即座に左腕のアームドネクサスに手をやり、手刀の構えでファウストに向かってパーティクルフェザーで追撃。
「やらせない!」
そこへ、ゴルゴレオスが背後から駆けていくが、遠距離から放たれた砲撃がゴルゴレオスの側面に当たり、体勢を崩しながら勢いはそのまま地面を滑る。
『! ハッ!』
「任せて! うぉおおおお!」
地面を蹴り、ネクサスは空中で一度回転する。
その間に、滑っていくゴルゴレオスに友奈が拳を握りしめ、跳躍しながらオーラを纏って放つ一撃は、ゴルゴレオスの水晶を貫いて破壊した。
『シュワ! テアァ! フン、ハァッ!』
そして空中から落ちてくるネクサスがゴルゴレオスに跨り、次々と手刀を叩きつけながら停止した瞬間には、両拳を合わせて一気に叩きつけた。
部位破壊に、強烈な一撃を受けたゴルゴレオスは悲鳴を挙げ、ネクサスはゴルゴレオスの背を蹴って回転。
地面へと着地する。
「後はこっち---って」
「な、なに、あれ…!?」
レオを相手しようとしていた夏凜と樹、そして風は足を止める。
レオは見ていた。
勇者がネクサスに釣られて強くなっており、さらに復活したネクサスさえ、さっきに比べて強くなっていると。
それはそうだ。中身がボロボロで力も弱まっていたネクサスは、どれだけ頑張ったとしても本調子の力は出ないし出たとしても一撃受けるだけで大ダメージだ。
しかし今は今まで受けてきたダメージを感じさせない---いや正確に言えば、
そのアドレナリンが大量分泌されると、痛みを感じるセンサーである感覚器が一時的に麻痺した状態になり、本来感じるべき痛みを感じにくくなるのだ。
それは興奮状態、緊張、不安や恐怖で出るもの。
故に、今のネクサスは
ならば生半可の一撃では受けたとしても倒すことは出来ず、また動きの良くなっているネクサスに勝つことは難しい。
だからこそ、レオは決着を付けるべく自身の必殺技とも言える技を使う。
単体で火球を放つのではなく、次々と火球を生み出しているかと思えば、すべての火球がレオの頭上を目指して移動していた。
その収束点に浮かぶのは、煌々と燃える巨大な炎球。
「何よ、この元気っぽい玉……!」
『……シュ!? デェ---』
冷や汗を掻きながら空元気な笑みを浮かべる風だが、それも当然と言える。
その炎は、今までの火球がただの火の粉に見えるほどの莫大な熱量を持ち、物凄い威力を誇っているのは見るだけで分かるのだ---それこそ、正しい表現をするならば、火球でも炎球でもなく、太陽と言えるほどに。
それが、ダークフィールド内の空に顕現している。
ただし、狙いは勇者ではなく、ネクサス。
それに気づいたネクサスはファウストやゴルゴレオスに警戒するのを辞め、太陽に向かって跳ぼうとする。
望むなら、受けて立つと言わんばかりに。
「紡絆はそいつらの相手をしなさい!」
『ッ……!? シュワ、ヘア……!』
そんな紡絆を静止するような声が響く。
思わず足の力を抜き、跳躍するのをやめたネクサスは風を見て、何か言いたげな様子だが、風はそれに対して笑みを浮かべた。
「ここは部長の見せ場ってもんでしょ? あんたは心配せずに相手して……必ず勝ちなさい!」
『…………』
アレを止めるとなると、怖いはず。
それを表に出すこともせず、安心させるような笑みを見たネクサスは悩み---振り向いてファウストとゴルゴレオスに対して構えた。
そう、間違っていない。満開の力をもってしても戦うのがやっとな勇者と、ジュネッスにならずとも戦え、ジュネッスになれば互角以上に戦えるネクサスならば、ネクサスが相手した方が良い。
それにいくらオーバーレイが強くとも、融合したバーテックスは未知数。
勇者たちですら、封印の儀をしなければ勝てるかどうかも怪しいのだ。
「来るわよ!」
「お姉ちゃん……!」
「勇者部一同! 封印開始!」
ネクサスに向かって、ゆっくりと太陽が向かう。
その間に入り、風は自身の武器である大剣を斜めに構えて腹で受け止める。
しかし見た目通りの火力に受け止めきれず、風の体は空中から少しずつ地面に近づいていた。
『……ジュ。フアッ!』
一瞥し、信じてネクサスは走り出す。
自身の役目は、二体の相手。バーテックスの封印は、勇者たちがやってくれると。
「あたしがコイツを防いでる内に早く!」
「う、うん!」
「はい!」
「了解…!」
「ったく、私にも良いところ残しておきなさいよね!」
風の指示に友奈は急いでレオの元へ動き、樹は場所を変えるために移動して、東郷は空中戦艦の方向転換を。
一足先に辿り着いた夏凜は剣を地面に突き刺して、取り囲む位置に着いた満開している東郷と樹は腕を伸ばして手のひらを突き出し、友奈は満開ゲージが描かれている右腕を立てて封印の儀を執り行う。
すると少ししてレオの巨体が光に包まれ、その光が遥か上空へと昇っていく。
「よし、流石勇者部……! ッ……!?」
封印の儀が成功し、喜ぶのも束の間。
レオの瞳が赤く輝き、風が防いでいた太陽は一気に膨れ上がり---空間全体を震わせるような轟音が樹海の中に轟いた。
ただでさえ凄まじい質量を持つ炎が爆ぜたのだ。
眩い光と爆風が全員に襲いかかるが、勇者たちは封印をやめない。
『グヌゥ……
『ハァァァ---ハッ!』
頭を抑え、動きの止まったファウストの腕を掴み、右側へとネクサスは投げ飛ばし、すぐに背後にネクサスが拳を振り抜いたところで、ゴルゴレオスを吹き飛ばす。
そして、即座に振り向いた。
「お姉ちゃぁああぁあぁぁん!!」
「風先輩…!」
「そいつを!」
樹と友奈の声に反応したネクサスは風が居た場所を見る。
炎は消失した。
しかし至近距離で受けたということは、ダメージは計り知れない。
心配する声を打ち消すように、風は叫ぶ。
「そいつを倒せぇえええええええ!」
自分よりも御魂を破壊するように叫んだ風は
『シェ……!』
ネクサスは即座に風に向かって手刀の構えで空気を切り裂くように振ると、落下地点で空気の壁がクッションになる。
勇者服は解除されてないということは、精霊のバリアは残ってるだろうが無事なことに安堵すると、ネクサスはふと頭上をゆっくりと見上げた。
「倒せって……あれを?」
他の勇者たちも見上げ、言葉を失う中。夏凜がそんな言葉を溢す。
封印は成功した。成功はしたのだ。
御魂は確かに上空に現れていた。
だが、相手は四体が合体した最強最悪のバーテックス。そんな化物の御魂が、普通であるはずがない。
上空に鎮座するのはもはや見慣れてしまった逆様の四角錘。
しかし、問題はそのサイズだった。
まるで空全体を覆いつくすかのような黒い巨大な四角錘が、茫然と見上げる勇者達をあざ笑うかのように佇んでいた。
「何から何まで…規格外すぎるわ」
東郷の呟きに応えるものは居ない。
ただ同感しか得られないだろう。
“大きい”というのは、ウルトラマンやスペースビースト、闇の巨人、バーテックスのように。ただそれだけで脅威となる。
だが、このあまりにも規格外なその巨体から感じる威圧感は、それらを優に圧倒し、確実に勇者達の戦意を削り取っていた。
あれだけの巨体に対してどうすればいいのかイメージが全く湧いてこない。
ようやくここまできた。だと言うのに、ただ絶望が広がる。
その上---
「あの御魂…出てる場所が…宇宙!?」
夏凜の言う通り、この巨大な御魂は惑星規模の大きさを誇り、更には遥か上空……そんな言葉すら陳腐に思える程の遥か彼方、宇宙空間に存在していたのだ。
これまでとはあまりにもスケールが違いすぎる。
「大き…すぎるよ…。あんなの…どうしたら……」
「最後の最後でこんな…畜生!!!」
樹の声に絶望が、夏凜の声に悔しさが滲む。
何度も何度も襲い来るピンチを、何度も何度も乗り越えてここまで来た。
その末にようやくたどり着いた先に待ち受けていたものに今、勇者達の心は打ち砕かれようとしていた。
『シュワッ!』
しかしそれでも、折れない心は確かにまだ残っている。
目の前のゴルゴレオスをかかと落としで地面に張り付けたネクサスは頭を抑えながら跨るファウストを一度見て、すぐに跳躍して勇者たち全員が見える空中で止まる。
ネクサスの目の先にあるのは、遥か彼方にある惑星規模の御魂。
『ハアァァァ---テヤッ!』
抜刀するような構えを取り、エネルギーを両手に纏ったネクサスは真っ直ぐに見据え、必殺の光線を放つ。
クロスレイ・シュトロームが巨大な御魂に対して放たれ、光線は真っ直ぐ宇宙へと辿り着く。
『……ンッ!? シュワアァァァ---!』
おかしい。
何かがおかしかった。違和感を感じて威力を高めれば、ネクサスの体が押されていく。
まるで光線技が何かに返されているように。
そして、クロスレイのエネルギーが途切れる。両手を降ろし、警戒するようにネクサスが見つめると---
『ッ!? グアァァァァァ!?』
物凄い質量を持つビームがネクサスを一瞬で地面へと叩き落とす。
轟音と共に爆発が起きるが、ネクサスはすぐに起き上がり、上空を睨みつける。
寸前のところでサークルシールドを貼ったが、あの巨大御魂は迎撃機能があるようだ。
それもいくら離れているとはいえ、ネクサスの光線技が通用しないレベルの強さで。
それに対する解決策は紡絆には浮かんでいるが、ネクサスが目線を地面に埋まって何とか抜け出したであろうゴルゴレオスに移す。
そう、問題は融合型だ。勇者の妨害にでも出られれば、封印が壊されるかもしれない。
「---大丈夫!」
ネクサスですら通用せず、絶望が深くなる中。
静かになったダークフィールド内に一つの声はよく響いた。
力強いその声に、皆の視線が集まっていく。
「さっきの紡絆くんを見たでしょ? あれも御魂なんだからいつもと同じようにすればいいんだよ。ただ大きくていつもより厄介なだけ!
勝てないわけじゃない。例え勝てなかったとしても、ぜったいぜったい諦めない!
勇者って、ウルトラマンだって……そういうものだよね」
『……フッ』
立ち上がったネクサスに友奈が視線を送ると、友奈の言葉を肯定するように、そうだと言うようにネクサスはただ優しげな雰囲気を纏いながら頷く。
それに友奈は笑顔で応えた。
きっと、紡絆も笑顔なのだろう。
「友奈ちゃん…紡絆くん」
「友奈……紡絆…」
「友奈さん……紡絆先輩……」
そうだった、と三人は思い出す。
二人はいつもこうだ。
どんな状況だろうと、諦めない。押し潰されそうに、追い詰められた時に、もう無理だってなった時に、みんなを励ます。勇気を与える。
さっきのネクサスの行動は、喋れないなりのそれを示すひとつなのだろう。
もし本当に倒すことが目的ならば、クロスレイではなくオーバーレイを選ぶはずなのだから。
ただし雲の下からだとオーバーレイを撃ったとしても撃破出来なければ、もう撃てなくなってしまう。
故に、クロスレイを選んだといったところか---まぁ撃ち負けたが。
「友奈ちゃん行こう。今の私なら友奈ちゃんを運べると思う」
「うん! 二人は封印をお願い!」
「早く殲滅してきなさいよ!」
「任せてください!」
宇宙に鎮座する御魂を破壊すべく空中戦艦に友奈が乗り、封印を二人に託すと、夏凜と樹は友奈と東郷を見送る。
すると東郷は方角を宇宙へ変え、物凄い速度で向かっていった。
『……デアッ!』
それを地上から見上げたネクサスは今度こそこの戦いを終わらせるために、決着をつけるべく、ゴルゴレオスとファウストに向かって走っていく。
なぜなら維持は問題ないというのに、
---封印する時間は、もうあまりない。
だからこそ、ネクサスは駆ける。
頭を振るい、忌々しそうに剣を構えるファウストがネクサスに攻撃をしかけ、ゴルゴレオスが合わせる。
もはや躊躇する理由もなければ、覚悟は決まっている。
『ハッ!』
『デェア、シュアッ! デェアァァァァ!』
振るわれる剣を避け、ファウストの腹に蹴りを入れると、ネクサスはゴルゴレオスの顎を掴み、肘で挟むと走りながら自分ごとゴルゴレオスを倒し、上空へ蹴り飛ばす。
『テェアァァァァ!』
『デェヤァァァァ!』
互いに全てをぶつけ合うように、長きに渡った戦いを終わらせるべく、ファウストの蹴りとネクサスの蹴りがぶつかり合い、互いに吹き飛ぶと、今度は拳を打ち合い、また吹き飛ぶ。
ならば、とファウストの剣が闇のエネルギーを纏い両手で斜め後ろに構え、ネクサスは俯きながら十字にクロスしたアームドネクサスが光り輝いていた。
『ハァァァ---』
『ハァァァ---』
この一撃で決着をつけるように、全力を込めながら互いに動くタイミングを見極めている。
ほんの数秒にも満たぬ、刹那の時間。
ファウストは真っ直ぐ見つめ、ネクサスは顔を上げる---その瞬間、上空へ打ち上げられていたゴルゴレオスが地面に落ち、轟音を響かせた。
それと同時に二人は動く。
「デェヤアァァァァァァ!」
「デェア……シェアァァァァァ!」
目にも止まらぬ速さで、ファウストとネクサスの位置が変わるように交差し、ファウストは剣を振り抜いて真っ直ぐ伸びており、ネクサスは右腕のアームドネクサスが胸元で構えて停止していた。
それは交差する瞬間に、互いが自身の武器を振り抜いた証拠だった。
つまり、倒れた方が負けたということ。
決着の瞬間と言うように、妙な静けさが辺りを包み込み、沈黙の空間が生まれる。
それを先に壊したのは---
『……ッ! ウアァ……ッ』
ネクサスの方だった。
ダメージを負った横腹を抑え、地面に膝を着いてしまう。
『フ……フハハハハハ---』
一時はどうなるかと思ったが、自分の身には何も無く、勝ちを確信したファウストは笑いながらトドメを刺すべく、振り向いた。
膝を着いたまま背を向けるネクサスにファウストは剣を構えて---ピキっ、と嫌な音が鳴る。
『---ん?』
確信を持って笑声を挙げていたが、怪訝そうな言葉を発し、音の発生源である手に持つ剣をファウストが見つめると、音はより強くなっていき、一気に歪みが広がって剣が斜めに折れた。
『なん……グッ!?』
剣が粒子となり、天へと昇っていく。
ただ打ち勝ったと思っていたファウストは、己の武器が破壊されたことに驚いていた。
さらに、突如胸に感じた痛みにファウストが手をやりながら膝を着く。
俯いて痛みの箇所を見てみれば、光の傷跡が出来ており---それはつまり、交差時にネクサスが武器とファウストにダメージを与えたということ。
あの時、剣を水平に振るったファウストに対し、ネクサスは左のエルボーカッターを剣に当て、その後、回転しながら右腕のエルボーカッターでファウストを斬ったのだ。
『……シュアっ! ハアァァァ---』
故に。
ダメージの正確な量はネクサスは少なく、起き上がるのと同時に振り向き、ネクサスは両腕のアームドネクサスを前に突き出して交差する。
ネクサスの両腕が輝き、両腕を広げていくと、磁力のように雷のようなエネルギーが反発している。
『ま……まだだ! ハァァァ---』
オーバーレイの体勢へ入ったネクサスを見て、ファウストが立ち上がりながら自身も技を放つべく握り拳を作りながら密着させた両腕を突き出し、離してゆく。
闇のエネルギーとも言えるものが、ネクサスと同じく反発していた。
『シュッ!』
『フン---ヌゥ!?』
そしてファウストな左腕を左腰に、右腕を頭上に構えるとダークレイ・ジャビロームを放つ体制に入り---突如として頭を抱えた。
明らかなチャンス。
怪訝そうに思いながらも、ネクサスは両腕をV字型に伸ばし、光線を放つべくファウストを見据え、L字型に組もうとしたところで---
『---撃って!』
そんな声が、聞こえた。
声の発生源を探すためにオーバーレイを撃たずに周りを見渡すが、聞こえてきたのはネクサスが見つめる先、ファウストからだ。
『貴、様……!』
『っ---早く! 早く撃って!』
『---フッ!? シュ……』
忌々しそうに声を漏らすファウストは行動出来ないようで、気のせいかと思っても声は再び響く。
抵抗している間に、ネクサスに光線を撃たせようとする
それによって思わずL字型に組む直前で、ネクサスは止まって、躊躇いが生まれていた。
『邪魔を、するなあぁぁああ!』
『う……ッ!?』
『…………』
怒りの込められたファウストの叫び声。
女性の呻き声と共に、気配が薄まっていく。
もう時間はない。
恐らくファウストの動きが時々止まったりしているのは、変身者である女性が止めてくれたから。
しかし意識の優先権はファウストのようで、彼女も奪うことが出来るのはそう長くはないということだろうか。
悩み、悩んで---ネクサスは答えを出した。
組もうとしていた腕を、動して---
『………ウワッ!?』
横から放たれた、極太な雷撃の破壊光線がネクサスの左肩へ直撃し、ネクサスは片膝を着きながら左肩を抑える。
左肩を抑えるネクサスの右手からうっすらと見えるのは、左肩全体が真っ黒に焼かれた跡。その影響か、ネクサスのコアゲージが点滅を再び始めた。
それを気にせず、片膝を着いたまま攻撃された箇所を一瞥すると、すぐに記憶の中にある光線の発生源を辿って場所を見ればゴルゴレオスが既に突っ込んできている。
『クッ……シュアアアァァ!』
『鬱陶しいやつ---グオォ!?』
左肩の痛みを無視し、立ち上がったネクサスは突っ込んでくるゴルゴレオスの頭を上から下に右拳で叩きつけ、側面に回ってファウストに向かって蹴り飛ばした。
その蹴り飛ばされたゴルゴレオスはようやく意識を封じ込めたらしいファウストを巻き込んで倒れる。
『ハァ、ハァ……』
流石に効力が切れたのか、アドレナリンによって感じなかった痛みが急激に走り、ふらつく。
それでも、ネクサスは足を踏みしめて倒れない。
何故なら、倒れたらもう二度と立ち上がれないからだ。
『………!』
それを見て、武器を失ったファウストにとって今のネクサスを倒せる一撃はダークレイ・ジャビロームしかなく、すぐさま発射体制へと入ろうとしたところで、突如としてファウストがゴルゴレオスを掴んだ。
『なんだと……!?』
いや、ファウストが驚いているということは、ファウストではない。
変身者である女性がファウストの制御を
ゴルゴレオスも困惑しながら拘束を解こうとするが、これでもファウストはウルトラマンと同等レベルの力。
簡単には解くことが出来ず、むしろ締め付けられる。
『ヘェ……!?』
ゴルゴレオスが暴れる度に締め付ける力が強まり、必死に動かせないようにするファウストを見てネクサスは呆然と見つめていた。
『っ……お願い、もう長くは持たない……撃って! 早く!
あなたを殺すことはしたくないの……!』
『…………』
懇願するような声で、ファウストは…いや、女性はネクサスを、紡絆を真剣な目で見ていた。
その視線を受け、紡絆は考えるように俯く。
女性の言葉は間違っていない。アドレナリンが切れたネクサスは、一撃でも受ければ立ち上がる力を失う。
しかもゴルゴレオスの一撃で、意識は既に消える寸前とも言えるだろう。
しかし、しかし、だ。
紡絆は今まで以上に悩んでいた。
これが正しいことなのか。
女性の意志を尊重すべきだ。今、ここで殺して止めてあげることこそが
ほんの一瞬でそんな板挟みな思考が生まれ、光線技を撃つことが出来ない。
何よりも、
この声は、ファウストの正体は---
『---私に構わず撃って!! 最期の、お願いを---叶えて』
『ッ! シュッ! ファアアアアア---』
声に勇気づけられたように、バッと顔を挙げたネクサスは、覚悟を決めたように迷いなくファウストとゴルゴレオスを見つめると、大きく腕を回しながら左腕を突き出し、同じく大きく腕を回しながら右腕を左腕に重ねるように突き出す。
すると下方でアームドネクサスを交差することになり、青い光を纏いながらゆっくりと回すように両腕を上に突き出すように構えて引き離し合う。
エネルギーが反発し合い、それは威力の高さを物語っていた。
『わかっ……ているのか!? そんなことをすれば、お前も、貴様も、必ず後悔する……!』
『…………』
『ハアァァァ---』
動けないファウストは、最後の抵抗とも言うように女性とネクサスに向かって言葉を発するが、女性は無言に。
ネクサスは気にすることなくV字型に腕を伸ばし、両腕には高出力の光が纏われていた。
『や、やめろぉおおおおおぉ!』
『デェヤアアアァァァァ!!』
悲鳴が響くのと同時に、ネクサスはその高出力の光をL字型に腕を組んで放つ、長きに渡った戦いを終わらせる究極の一撃---オーバーレイ・シュトロームが放たれた。
迫る光線に、瞬時にゴルゴレオスが前方にバリアを貼るが、ネクサスの全てと紡絆の思いが籠ったその一撃は、容易にバリアを打ち破り、ゴルゴレオスに直撃する。
ゴルゴレオスが暴れて抵抗するが、容赦なく肉体は青白く光輝き、ゴルゴレオスの肉体を分子分解していく。
『フッ---シュアアアァァァァ!』
『グッ……オォオオオオオ!』
光線の威力を高め、既に分解されかけていたゴルゴレオスの体は完全に分子分解された。
さらに継続的に流されるエネルギーは止まることを知らず、ゴルゴレオスが居なくなって掛けていた体重と込めていた力を失い、その影響で前のめりに体制を崩したファウストへ直撃する。
地面を足で踏みしめ、オーバーレイに耐えるという諦めの悪い抵抗をするファウストだが、そのファウストの肉体ですら青に黄金色が混じった色に輝き、分子分解が起きていた。
『ッゥ……デェアーーーーッ!!』
『お……覚えていろ……! 貴様が、お前が……殺した……!』
『……ッ!?』
ファウストの全身が発光し、もはや助かる術はない。
もう必要ないと理解したネクサスは撃つのをやめる。
するとオーバーレイ・シュトロームの継続的に流されたエネルギーが消え、ネクサスは両腕を下ろしながらファウストをただ見つめた。
『ふ、フフフ……ハハハハハハ---グアァァァ!』
『……! シェア…!』
最後に、最期に罪を認識させるように嘲笑い、ファウストの肉体は、ついに粒子となって風に流されていく。
ネクサスは、紡絆は急いで地面を駆け、
しかし何も無く、ただ粒子はダークフィールド内に流され、消えていく。
掴み取った手のひらを開けば、残った一つの粒子もスッと消えてしまった。
何も残らず、紡絆はただ俯く---
『---ありがとう。ごめんね、あの子のこと、お願い---』
『………! シュア……』
バッと顔を上げ、流された粒子の方向を紡絆は見つめた。
最後に聞こえた、たった一つの感謝と謝罪。そして託された物。
それが何なのか、紡絆にはしっかりと伝わり、安心させるように頷く。
そして粒子はネクサスの目でも見えなくなってしまい、確かに消滅した。
つまり---長きに渡った、ファウストとの戦いは今、幕を閉じたのだ。
あれほど長く、苦戦したというのに、呆気なく。
『…………』
ただ、ただそれでも---膝を着いたネクサスが、
ウルトラマンの力を得ても、助けれなかったことに。自分は
そんな紡絆を慰める者も、悪くないと、仕方がないという言葉を投げかけてくれる者は誰も居なかった。
300:名無しの転生者 ID:gaqY66Xey
イッチ………
301:名無しの転生者 ID:Izd3h2e4Q
……終わったはずなのにな
302:名無しの転生者 ID:P+Cmevz/k
よく分からんがこの報われ無い感……流石ネクサスというべきか
303:名無しの転生者 ID:btfEWbL8p
結局正体は誰だったんだろうか……イッチは知ってるっぽいけど、声が聞き取れんかった
304:名無しの転生者 ID:Dut2ppy36
さぁ……けど、まだ終わってない
305:名無しの転生者 ID:nTgFqmfMx
イッチ、気持ちは分かる……とは言えん。でもまだ友奈ちゃんと東郷さんは御魂を破壊しにいってるんだぞ
306:名無しの転生者 ID:kXyT5JF+6
辛いってのは見てれば分かるけど……休ませてくれる暇はないようだ
307:名無しの転生者 ID:s4YYsH2jR
イッチ、ゴルゴレオスは倒したけどまだ御魂が残ってる……!
308:名無しの転生者 ID:HtRh24hSV
戦いは終わってない! 後悔するのも泣くのも全部終わってからにしろ! このまま放っておいても問題はないと思うが、友奈ちゃんや美森ちゃんに危機が迫ってもいいのか!?
309:名無しの転生者 ID:fUGJt90ho
いいってならそこで蹲ってろ! それでもお前が守りたいと願うなら今立ち上がれ!
310:名無しの転生者 ID:X1/Esx+8n
全部終わったあとに俺たちが話くらいは聞いてやる! 転生者のよしみでな!
311:名無しの転生者 ID:zMLvswiC3
頑張れ、あと一息だ!
312:名無しの転生者 ID:cIOwj/699
お前が選んだ選択は、間違ってないんだからな
313:名無しの転生者 ID:0v54j7Kzq
あの場合はああするしかなかったんだ
314:名無しの転生者 ID:crG5s69Ve
誰もお前を責めちゃいねえ。今はこれ以上後悔しないように動け!
315:名無しの転生者 ID:si+p0vrQ9
御魂は恐らく、レオの御魂と合流して力を強める気だ!
316:名無しの転生者 ID:Ga7EfzVM3
見た感じ、バーテックスとスペースビーストが融合出来るなら核たる御魂が融合出来ないはずがねぇ!
仮に復活でもされたら頑張りが無駄になる!
317:名無しの転生者 ID:HkSe2sP3B
制限時間も恐らく僅か!
318:名無しの転生者 ID:op+5gJnIu
オーバーレイを撃った今、あの御魂を壊せる火力はコアインパルスくらいだ……エネルギー残量的に恐らく破壊は出来ん。
せめて友奈ちゃんたちを送り届けろ!
319:超古代の光の転生者 ID:TIGA+1996
立つんだ! 君の守りたい者のために!
惜しくも逃がしたのか、生き残っていた御魂が突如として地面を突き破り、宇宙に向かって逃げていく。
おそらく、オーバーレイの直撃を受けた際に分解されるより先に地面の中に御魂を隠したのだろう。
それに気づいたネクサスは立ち上がり、ふらつく体に鞭を打って、今も封印する樹と夏凜の方を見つめた。
二人とも真剣で、必死に封印を維持している。
次に宇宙の方向を見れば、友奈を乗せた東郷の空中戦艦が宇宙へ辿り着いている。
『………シュワッチ!』
御魂はまだ破壊されてない。
逃した敵を追うべく、戦いを完全に終わらせるためにも、ネクサスは地面を蹴り、宇宙に向かって飛んでいく---
宇宙へ辿り着いた友奈と東郷。
どうやらダークフィールドに覆われていても宇宙は変わることなく、後ろを見れば地球が見えた。
本来であるならば青く、美しい海の星。樹海ではそうではないが、守りたい場所に変わりは無い。
しかし本来は感動を覚えるはずのそれは、目の前の圧倒存在感を放つ無粋な物体のせいで台無しだった。
地上では今頃どうなっているのか、紡絆は、みんなは大丈夫なのかそんな疑問はあるが、今は目の前を何とかしなくてはならない。
ここまで順調…というのがむしろ怖く、いつもの傾向から考えれば、必ずレオは何かをしてくる。
そう思い、東郷は警戒していると狙撃手として一番優れた目を持つのもあり、視界の中に何かを捉えた。
真正面に聳える御魂の正面中心、そこに何かが見えた気がしたのだ。
とても小さくて、何かは分からない。
警戒心を高めつつ目を凝らしながら尚も距離を詰めていくと、それが何か次第にはっきりと見えてきた。
何かの正体は御魂と同じ色をした、立方体のブロック。大量のそれが二人の方へとまっすぐ向かってきていた。しかもかなりの速度で発射されており、一つ一つが自分たちの体より大きい。
もしそんなのがぶつかってしまえば勿論、無事で済むはずがない。
「御魂が攻撃!?」
「大丈夫。一個たりとも通さない!」
東郷が八門の砲塔を構え、空間を駆け抜けた。正面からやってくる無骨なデブリたちに八門の砲塔から放たれる弾が衝突し、真っ暗な空間に爆炎の花を咲かせていく。
「っ…」
第一波を退けた東郷が苦悶の声が漏らす。
思っている以上に満開は消耗が激しく、今は何とか持ちこたえているがいつまで持つかはわからない。
そもそも既に満開状態でかなり時間が経過しており、持っているのが不思議なほどだ。
だからこそ一刻も早く御霊の元へとたどり着かなければなければ…誰も到達できなくなってしまう。
「東郷さん…?」
そんな東郷の異変を、友奈は決して見逃さない。心配そうに見上げる友奈に東郷は淡く微笑むと、友奈の手を強く握りしめて改めて敵を見る。
第一波を突破したというのに、もう二波が来ている。
しかも御魂に近くなったのもあって、その密度は高く、唇を噛み締めながら東郷は前方へと砲撃を加え、自在に動く砲塔で取りこぼしを丁寧に処理していく。
そんな大量にブロックが舞う中、地上から何かが迫ってきていた。
「下から何かが来る……! あれは……御魂!?」
「ということは、紡絆くんが勝ったんだ……! でも、どうして御魂がっ?」
「まずい……!」
迫ってきていた正体に気づき、友奈の疑問に東郷はすぐさま御魂の目的を理解した。
あの惑星規模の御魂に取り込まれることで、強化しようとしているのだと。
すぐ東郷は迫ってくる御魂を優先しながら砲撃を放つが、今まで向かってきていた全てのブロックが御魂を囲い、東郷の砲撃を防ぎながら加速して空中戦艦を抜き去って見せた。
「速い!?」
「くっ……! せめて一撃を…!」
強引に振り向き、壊すことは出来なくても妨害するための一撃を放つ。
だが、壁状のブロックがそれを防ぎ、御魂はレオの御魂の中へ吸い込まれる。
その瞬間、今まで放たれていたブロックの他に、雷撃と火球が混じって降ってくる。
「そんな!?」
「まだ来るなんて……!」
諦める訳には行かない。
優先事項をブロックにしながら相殺しきれない火球を避け、雷撃を砲撃で相殺しては威力が足りてないブロックの破片を二撃目で破壊していく。
数が多く、それでもどうにか突破していくと---
「東郷さん、後ろ!」
「---追尾!?」
今まで避けていた火球が大きくなっており、Uターンして来ていたのだ。
背後を見て、前方を見る。
細かなブロックではなく、巨大なブロックと化したものが降ってきており、逃がさないようにブロックを囲むように放たれている雷撃。
後ろからは、追尾してくる火球。
このままでは二人とも辿り着けず終わってしまう。
(せめて友奈ちゃんだけを……!)
この一撃を受ければ、間違いなく満開が消えてしまう。
だが二人ともやられ、勝算がなくなるよりかは、一人でも行かせるべき。
しかし東郷の満開は長くなく、例え辿り着いたとしても満開は保てないし御魂を攻撃する力も残っていない。
故に、友奈だけを行かせようと東郷は視線を送り---友奈は、こんな状況だというのににこやかに笑いかけ、握っていた東郷の手を、両手で握っていた。
「友奈ちゃん……?」
「大丈夫だよ。信じよう、私たちが信じれば、きっと応えてくれる」
安心させるように確信した表情で優しく言ってのけた友奈に、東郷は目を見開き、まさかと地上を見つめた。
何かが来ている。
ただそれは絶望なんかではなく、暖かく希望を灯してくれる輝き。
それに気づいた東郷も、嬉しそうな疲れたような笑みを浮かべていた。
「えぇ、そうね……きっと、大丈夫。彼はいつだって---私たちの希望だもの」
迫る。
勇者を殺そうとする一撃が。勝敗が決まる一撃が。全てを無に還し、絶望を与える必殺が。
なぜだろうか、二人は相手はただの御魂だというのに、勝利を確信したように笑ったような、そんな気がして---友奈と東郷は爆風に呑まれた。
翔ける。
こんな状況だと言うのに、追い込まれているかもしれないのに、不思議な感覚だった。
空を飛ぶのは、初めてではない。何度も何度も飛んで、戦った。
だというのに、紡絆は高揚感を覚えていたのだ。
まるで、
(友奈……東郷……!)
それでも、今は目の前のことを見なければならない。
自身の気持ちに蓋をし、全ての思いを封印し、戦いへ集中する。
戦いたくない、もう休みたいという思いが生まれては、意志が捩じ伏せる。
体が否定する。それ以上は死ぬぞ、と。
関係ない。今動かなければ後悔する、と感情で打ち消す。
今、ネクサスの瞳を通して、紡絆は状況を理解していた。
東郷はなんとか第二波を防いでいるが、長くは持たないことは誰でも分かる。
だが、これが全力なのだ。
今、ネクサスが出せる全力の速度で空を飛んで、まだ宇宙へ辿り着いていない。
大気圏を突破していない。
当たり前だ、飛行するネクサスはぶらぶら、いつ堕ちても不思議でもなければ、コアゲージはいつ止まっても不思議ではない。
それを分かっていて、アンノウンハンドは解かない。
(意識が消えそうだ……。でも……それでなんの意味がある? ここで倒れて、何も出来ないままなんて終われないだろ!)
何かが叫ぶ。
お前の思いを貫けと。絆を信じろと。光を心に灯せと。
今動かなければ、後悔する。
力がないならパワーを振り絞れ、
この思いを届かせるために、紡絆は意識を無理やり浮上させる。
(守りたいんだろ……! お前はウルトラマンだ! だったらウルトラマンとして、継受紡絆として、託された物のためにも……世界を、みんなを守れ! 知識をくれ、手伝ってくれた大勢の人たち。その人たちにも、それが俺が返せることだ!)
翔ける。
何処までも暗く、光すらも閉ざす暗闇の中を、ネクサスは少しずつ速度を上げながら飛んでいく。
しかし必死に仲間の元へ向かうネクサスに、現実が立ちはだかる。
やられたと思わせておいて、隠れてレオの元へ向かったゴルゴレオスだったものの御魂が、なんとレオと融合し、惑星規模だった御魂が一回り大きくなる。
レオに、それもスタークラスターを超えるほどの進化体にでも戻ろうとしているのか、周囲に巡る目に見えるオーラが赤く染まっていた。
それだけじゃない。
ネクサスの瞳は、捉えていた。東郷と友奈がいるであろう場所へ放たれた火球が通り過ぎ、徐々にひとつにまとまっていくのを。
巨大な御魂のようなブロックを囲む雷撃が、落ちてきているところを。
集まっていた火球が、突然Uターンして東郷や友奈たちの方へ向かったのを。
まさしく、絶体絶命。
ネクサスはまだたどり着けず、それを受ける方が速い。
だからこそ---
思い出す。
継受紡絆という人間にとって、とても大切となった、心に残った言葉を。
『紡絆。光は……絆だ。誰かに受け継がれ、再び輝く』
『紡絆! 光は、人に受け継がれる希望なんだ。だからどうしようも無くなった時こそ、生きるために。俺が最後までウルトラマンとして戦えたように、光を信じろ!』
恩人と言える二人の言葉。
それを思い出した紡絆は、願った。
(姫矢さんと憐の言葉…! 光……そうだ、俺は、俺は---みんなを救いたい。姫矢さんも言っていた! 光は絆だと。だったら---ッ!!)
力を。守るための力を。今ここに、願った。
もっと速く。
どんな存在をも追い抜く力を。信じる光の力を。導く絆の力を。高く飛べる力を。
何より---思いを届かせる、
それは、奇跡。
それは、軌跡。
それは、繋がり。
受け継がれ、語られ、託され、紡がれてきたが故に起きた、究極の奇跡。希望への道標。
ネクサスが消える。
いや、正確な表現をするならば、
空を飛ぶネクサスの頭上から降り注ぐ水のような光がネクサスを覆い、彼は青い光へ姿を変えながら想いを届けるために
一秒---成層圏を抜け、中間圏へ。
二秒---中間圏を超え、熱圏へ。
三秒---友奈と東郷を乗せる空中戦艦を見つけ、外気圏、大気圏を超えながら宇宙空間に躍り出ると、火球すらも抜き去る。
全てを抜き去ったネクサスに気づいたのか安心したように、信じて見つめてくる二人に応えるべく、ネクサスはさらに加速した。
四秒。火球が直撃するより早く空中戦艦を両手で抱え、青い光が戦艦を守るように包み込む。
そして迫り来る火球や雷撃に対して、ネクサスは掠ることも直撃することもなく、間を潜り抜けるように回転しながら雷撃を避け、壁状のブロックへ突っ込み、背後から迫る火球がブロックに当たることで爆発が起きるが、その爆風の中を翔け抜ける。
『………!』
だが、そんなのは敵も気づいていた。
全てを避けきったネクサスに対して、放たれる極太の雷を纏う破壊光線と融合したレーザー。
「…ッ!? 紡絆くん!」
対処しようとする東郷に、青い光に包まれたネクサスは両手をそっと離し、戦艦をその場に待機させると首を横に振る。
そしてネクサスは当たればタダでは済まないその一撃を、ネクサスの光線技と同等だと思われる一撃を受け止めるべく戦艦の前に立つ。
「まさか受け止める気!? いくら紡絆くんでも---」
「ううん、きっと大丈夫!」
『シュアァ!』
ボロボロな姿を見ていた。
既に変身出来てる時点でも可笑しい姿を見ていたからこそ、東郷は最悪の事態を考えて、止めようとする。
しかし友奈がその考えを打ち消すように叫んだ。
友奈だって確信はない。心配だ。
ただそれでも、不思議と大丈夫だと思った。
そしてその答えは、ネクサスが実践する。
なんとネクサスは
ネクサスが貼ったであろう青い光の膜が戦艦ごと友奈と東郷を包み込んでるお陰で二人に被害はないが、目の前で爆発したことに緊張が渦巻く。
『シュアァァァ…ハッ!』
残るエネルギーの残留を凪ぐように払うと、ネクサスを包み込んでいた光は消え、その姿を現した。
それを見た御魂が、驚愕し、焦っているようにも見えるが、友奈と東郷はそれどころではなかった。
「えっ!? 紡絆くん……だよね?」
驚いたような表情をしながら、確認するのは友奈。
さっきまでは青い光に包まれ、姿は見えなかった。
ただウルトラマンが来た、と。紡絆が来たということだけは理解していたのだが、友奈と東郷の目に映ったのは、見知らぬ姿をしている巨人だった。
形状はジュネッスと同じ。だが右腕のアームドネクサスは全く別の形状へと変化しており、何よりも目立つのは、色。
今までのジュネッスは、情熱を体現する赤。
しかし今のネクサスは---
「青い……ウルトラマン?」
青空のような、透き通るような海のような体色をしたネクサス。
変化したアームドネクサスは、アローアームドネクサスと呼ばれるものであり、
思いを貫く、光の力。
410:名無しの転生者 ID:Rs5q8JUD5
ファッ!? 今度は憐ジュネッスやんけ!? どうなってんの情報ニキ!!
411:情報ニキ ID:JoUHou2in
ええい、知るかー! こっちも混乱しとんじゃい! ひとまずイッチのなんかこう、真木さんレベルで意味の分からん適合率が影響してるんだとは思うけどさ!
正直孤門の時は特別使えただけでこんな情報ないしノア様単体ならともかく、デュナミストと一体化した状態であれ以降なったという情報もない! ただ確信して言えることはひとつ!
この力があれば、勝てる!
412:名無しの転生者 ID:25Xmute7P
いっけー! イッチ! 絶望を打ち消してやれ!
413:名無しの転生者 ID:iQe9TrMyx
これが絆の名を持つ、ウルトラマンの力か……!
414:名無しの転生者 ID:YIiRt04vZ
何より、人間とウルトラマンの絆だ!
『---シュア』
二人の言葉に答えるように、ネクサスは体半分だけ振り向き、こくりと頷く。
御魂が何をしているか分からない。警戒しながら友奈と東郷を見つめると、東郷は安心したようにふらついた。
「東郷さん!?」
「ごめん…安心したら力が抜けて…ちょっと疲れちゃったみたい」
すぐに支える友奈だが、紡絆も心配しているのか僅かにネクサスの手が伸びていた。
流石に巨体故に支えることは出来ないからか、すぐに引っ込めていたが、ネクサスは鳴り続ける自身のコアゲージを見て、敵を見て、友奈と東郷を見た。
『デアッ』
「紡絆くん? どうかしたの?」
「……長くは持たない。自分が連れていくって言ってるわね」
東郷の言葉に、肯定を示すように頷く。
事実、コアゲージの点滅具合からして、もう何秒持つか分からない。
それでも、この中で可能性が高いのは友奈をネクサスが連れていき、御魂を破壊すること。
『シュッ』
「もう十分すぎるほど頑張った、ありがとう……? もう、まだ終わってないわ。友奈ちゃん、私はここで待ってる。だから紡絆くんと一緒に……行ってくれる?」
「うん、ありがとう東郷さん。ここまで連れて来てくれて……だから今度は、私の番! 見ててね、やっつけてくるよ!」
「うん……いつも見てるわ、二人のこと」
やるべきことは決まった。
ネクサスは戦艦の前に甲を下にして左手の手のひらを僅かに曲げながらそっと添える。
乗れ、ということだろう。
「わっ……全然安定する…。ウルトラマンの手って、乗り心地がいいんだ」
『ショア……』
「行ってらっしゃい、二人とも。絶対帰ってきて」
ネクサスの手に乗った友奈は親指に両手を置きながら、全くバランスの崩れないことに驚く。
手に乗るということは、乗る者がバランスを崩しても不思議ではないのに立っているだけでも問題なく、飛行するなら何処かに掴む必要はあるかもしれないが、普通に居る分には全然問題なかった。
まぁ、ウルトラマンの手は小学生の子供すら乗せても問題ないのだから、不安定じゃないのは当然だ。
「うん! 紡絆くん、いこう!」
『シュワッ!』
ネクサスと友奈の視線が交差し、東郷に向かって同時に頷いた。
そして上空に存在する御魂を見据えると、友奈の声に従うようにネクサスは飛ぶ。
向かってくるネクサスに対して、大量の火球が放たれる。
どうやら混ぜても避けられると判断し、放ちやすい火球を物量でぶつけてくるようだ。
一撃でも受けたら終わりなネクサスのことを考えれば、理に適っている。
『ハァ---シュアッ!』
逃げ場はないかと思われる火球群。
その中をネクサスは紙一重で躱していき、追尾してくる火球を一箇所にまとめ、パーティクルフェザーのたった一発で打ち消す。
二波。
相変わらずの物量だが、時々雷撃も混ぜて放ってくる。
(……すごい)
そんな状況の中、感心してる場合でも気を取られてる場合でもないのに、友奈は感動を覚えていた。
普通に考えて欲しい。
宇宙を飛んでいる。ウルトラマンに乗って、それも普段は経験出来ない速度で飛んでいるのだ。
そんなの見惚れない方が難しいといえる。
もしこれが本来の宇宙ならば、星々が見えてもっと美しかったはず。
残念ながら、樹海の世界には星々はないらしい。
もっと飛びたい。もっとこうしていたい。そう思っても、戦況は止まってくれない。
『シュア、シュア! デェアッ!』
避けることをせず、火球とレーザーをパーティクルフェザーだけで打ち消し、放たれた雷撃をネクサスは右腕でガードしながら突っ込んでいく。
少しずつ接近すると、急に雷撃の威力が落ちて、ネクサスは止まりながら右腕を払うことで打ち消す。
もはや御魂は目前。
生半可な威力ではただやられると察したのだろう。
だからこそ、御魂は最後の賭けに出る。
己の全力を持ってして、ウルトラマンと勇者を蹴散らせるために、余力を残さない全てを出し尽くした。
大きな、とても大きな太陽。それに纏わりつく雷と
それらを囲む水球はさらに温度を上げ、まるで引き出せる融合した全てのバーテックスとゴルゴレムの特徴を最大限に生かした合体技とも呼べる。
「紡絆くん、もうここまでで大丈夫だよ。あとは私に---」
『フンッ……!』
任せて、と言おうとした友奈の言葉を、ネクサスが首を横に振ることで止める。
友奈の満開はどんなものかは分からないが、少なくともあの合体技は御魂の全てを使った一撃。
間違いなく、
ならば、ネクサスもそれに対抗しなければならない。
空いている右手で友奈を一度覆い、バリアのような球状の青い光で友奈を覆うと、ネクサスは右手を降ろし、左手で右肩に友奈を移動させる。
「あっ……紡絆くん……。もう、分かった。でも無理しないでね?」
『フッ! ハアァァァァ……』
この状況でも頑固な紡絆に、友奈は苦笑すると諦めて託す。
似ているからこそ、分かる。言葉が通じなくとも、自分だったらどうするか考えれば、簡単に分かるのだ。
もし友奈が紡絆の立場であるならば、自分も同じことをするだろう、と。
当然、無理しないでなんて言葉が意味が無いことも知っていれば、仮に止めたとしても勝手に行動するだろう。
---その通り、やはりネクサスは残るエネルギー全てを振り絞る。
握り拳を作った両腕を胸元で強く握り締め、エナジーコアからエネルギーが溢れる。
これからすることは、死ぬ可能性が最も高い危険な行為。本来は成すことが難しい、出来ないとすら思われる無茶ぶり。
そんなことを、迷いなく行った。
失敗すれば死。エネルギーが先に尽きても死。成功しても---変身が解けて死。
だったら、今出来る全ての手を使わなければならない。みんなが生きるために、自分も生きるために。
それを大前提に、後は運任せ。
『へアッ! シュアァァァァ……』
右手のアローアームドネクサスを光り輝くコアゲージへと翳すと、エナジーコアの形をした光が一瞬現れ、光が収束することでアローアームドネクサスはエナジーコアを投影する。
するとアローアームドネクサスは光の弓を形成し、アローモードと呼ばれる形へと変化する。
ネクサスは光の弓を引き絞り、それと同時に光の弓から剣が伸びることでファイナルモードを形成した---が、コアゲージの点滅が加速した。
それを気にせす限界まで弓を引き絞るネクサスと、御魂が破壊の一撃を完成させたのはほぼ同時だった。
勝負は一瞬。
かたや光のエネルギー。方や四つの属性を使った合体技。
それがぶつかる時、勝つか負けるかの違いでしかない。
果たして、何秒経っただろうか。
一分にも二分にも感じられる---だが、実際には指で数えられる程度。
『デェアァァッ!』
先に動いたのは、御魂だった。
巨大な一撃を
対するネクサスは、引き絞った弓を勢いよく後ろに引き、不死鳥のような光の矢を発射した。
これこそ、現状持ちうるネクサス最強必殺技---『オーバーアローレイ・シュトローム』。
勝負は本当に一瞬。
太陽と不死鳥がぶつかり、勝ったのは---
不死鳥だ。
不死鳥のような形状に相応しく、太陽をあっさりと貫き、爆発させながらもなお御魂に迫る。
だがネクサスの肉体も青く輝き始め、爆風が迫る前に一瞬だけ友奈に視線を送る。
『ッ……シュワッ!』
それに気づいた友奈は頷き、ネクサスは右肩に乗る友奈を球状のバリアごと掴んで一気に全力で腕を振るって投げ飛ばした。
同時に、ネクサスの光は完全に消え失せ、
「紡絆くん!!」
意識がないのか、紡絆は答えない。
爆風の中をバリアによって守られながら突っ込んでいる友奈には紡絆が見えない。それでも、無事だと信じて見上げた。
御魂は力尽きているのか、迫る不死鳥に対して残ったレーザーで対抗することしかせず、友奈は目を閉じる。
ここまで、仲間の力を借りた。
風には封印する時間を稼いでもらった。
樹と夏凜には封印を維持してもらった。
東郷にはここまで連れてきて貰った。
紡絆には強力な一撃を破壊してもらって、御魂まで飛ばして貰った。
決して、1人では辿りつけなかった場所。
みんなの思いを背負って、友奈はここに居る。
なら今度は---
「私の番! 満開!」
目を開け、覚悟を決めた友奈は唯一自分だけが残っている切り札を切る。
その友奈の決意に応えるように、地上から伸びてきた虹色の光が友奈の体を包み込み、青い光が消えるのと同時に桜色の光とともに巨大な山桜が花開く。
光が晴れると、友奈の勇者服は大きく姿を変え、体の両側に新たな武器が現れた。
友奈の満開は全勇者共通の背部のリングに加え、左右にある巨大なアーム。
何をも貫き、脅かす困難を真正面から打ち破るための、一点突破する友奈らしい満開。
友奈は加速し、紡絆が残してくれた不死鳥の矢の後ろに着く。
そしてついに矢がレーザーを破り、御魂へと突き刺さる。
ネクサスの最強必殺技は伊達ではなく、あれほどのエネルギーを突破するどころか、御魂の中をぐんぐんと貫いていき---エネルギーが消失した。
まだ半分も行っていない。
だが、十分すぎる成果だ。
「そおぉぉぉこだああぁぁぁあ!」
紡絆の破壊した跡を、巨大な拳を叩きつける。
一撃ごとに損傷は拡大し、友奈は両腕を打ち付けながら奥へ奥へと進み始めた。
しかし最後の御霊はただでは終わらない。
「固い……ッ!」
あれほど簡単に進めていたことから、どれだけネクサスの技の威力が高かったのか感じさせられる。
それだけではない。差し迫った危機に対して、先ほどまで緩やかだった修復能力を御魂が一気に活性化させたのだ。
御魂四つ分、+α融合型分だと考えれば、その修復速度はとてつもない。
御魂の中へ侵入していた友奈を空間全体が押しつぶそうとし、目の前に空けた穴に至っては修復されていた。
そんな状況で全身に加わるとてつもない圧力に、友奈は苦悶の表情を浮かべ、押し潰され---
「ゆ……勇者部、五箇条! ひとぉぉーーーつ! なるべく!! 諦めない!!!」
全身の力を総動員し、押しつぶそうとする圧力を跳ねのける。
その影響から修復力が一時的に硬直した隙に、一気呵成に更に奥へと突き進む。
友奈は、みんなから託されているのだ。
こんなところで諦める訳にはいかない。
例え暗闇であっても、ずっと光は傍にある。
押し潰されかけた時、青く輝く光が暗闇を照らし、彼女に勇気を与えてくれた。
入れ替わるように消えたはずの、紡絆が残してくれた光は、友奈の中に残って、支えていた。
入り口は塞がれ、本来ならば暗闇。だが青い光は、暗闇を照らしてくれた。
「更に、五箇条! もうひとぉぉーーーつ! なせば大抵!! なんとかなる!!!」
何度も拳を振るい、亀裂が広がると太陽の光が辺りを照らす。
傍にあった青い光は限界を迎えたように、役目を終えたように消失するが、明るくなったということはゴールが近いこと。
御魂全体に亀裂が入っているが、友奈はそれを知らぬまま残る全ての力を右腕に込め、突き出すと中心に太陽のような御魂が存在していた。
友奈は迷いなく全力の拳を叩きつけ---惑星規模の御魂は幻想的な虹色の光を撒き散らしながら消滅する。
(やった……)
ついに戦いが終わった。
だが友奈の体力も限界で、満開を維持する力はさっき全部叩き込んだ。
山桜の花びらが散り、友奈の肉体が一瞬輝くと友奈は元の勇者服に戻って堕ちていく。
そんな引力に引っ張られ、自由落下する友奈をふわり、と優しく受け止めるものがあった。
衝撃が走ることも無く、安心したような表情で友奈は横を見る。
「お疲れ様、友奈ちゃん」
「…美味しいとこだけ取っちゃった。でも、よかった……」
もう力は入らないが、友奈の隣には紡絆が居て、その先には東郷がいる。
少なくとも今は全員無事だったのだ。
見た感じ、どうやら紡絆は変身解除されて地球へ落ちたわけじゃなく、東郷が紡絆を受け止めてくれたらしい。
「なんとか……最後の力でこれだけ残したの。けれど一体どれだけ持つか……」
「大丈夫。神樹様が守ってくださるよ。それに私たちにはウルトラマンもいるんだから」
「……そうね。そうだったわ」
助かった理由はひとつ。朝顔の花が開いた状態で友奈と東郷、紡絆を乗せていたから。
満開が解けた際に東郷が力を残したお陰で今助かったということ。
しかし満開状態ほどの力はなく、どれだけ持つかすら分からないが、きっと大丈夫だと二人は思った。
そうして、朝顔の蕾となって三人を包み込む。
まもなく大気圏へ突入するが、不思議と友奈と東郷には不安も恐怖もなかった。
蕾が途中で燃え尽きたら、三人は間違いなく死ぬ。形を保てなくても、終わりだ。
賭けに近いが、これが一番生存率を高める最適解であることは間違いない。
(もし、万が一ダメだったとしても……2人となら、怖くないもの)
口には出さず、東郷はそう思う。
死にたくはない。もしひとりであったなら、怖かったかもしれない。でもここには大好きな最高の友人がいるのだから。
そして友奈は神樹様に願う。三人が無事にみんなの元へ帰れることを。
それぞれの思いがある中、ついに蕾が大気圏へ突入し、東郷と友奈は意識を失ったままの紡絆の手を握りながら意識を手放す。
そこで精霊バリアを持たぬ紡絆を守るために、勇者を守るために紡絆の胸もとに置かれたエボルトラスターが輝き、蕾を赤と青の光がうっすらと包み込んだ---
ウルトラマンの変身も解除され、ダークフィールドが既に消えたため、樹海となった世界に燃え上がりながら猛スピードで落下するアサガオの蕾があった。
それを見つけた樹は蕾の軌道上に、幾重にも重なって網のようになったワイヤーで蕾を受け止めようとする。彼女はまだ満開の力が残っており、それで大切な人たちの命を救うべく力を振り絞る。
だが大気圏外から落ちてきて大きすぎる衝撃を宿した蕾は樹が張り巡らせたワイヤーを容易に千切り、その後に張られるワイヤーをも引き千切り、引き千切る。
「ものすごい衝撃……! もしこのまま落ちたら…!」
「絶対に助けてみせます!」
今動けるのは自分だけであり、樹は諦めずにワイヤーを貼り続ける。
友のために、大切な人のために何個作り出したか分からないほどワイヤーが引き千切られても、何度も何度も絶えずワイヤーを張り巡らせる。
「止まってえええええっ!!!!」
樹の叫びに呼応するかのように伸びるワイヤー。何度目かは分からないが、遂にワイヤーが蕾の勢いを殺し、網にくるまれた蕾を地面に激突する直前で受け止めた。
樹の気合と頑張りが止めたのだ。
「ナイス根性! すごいわ、樹。見て、あんたが止めたのよ!?」
「夏凜さん……行ってあげてください」
「わ、分かったわ!」
「お姉ちゃん、私、頑張ったよ……。サプリ、キメとけばよかった……かな…?」
蕾の中から出てきた東郷と友奈、そして紡絆に駆け寄る夏凜を見て、樹は満足げに微笑み、鳴子百合の花びらが散り、満開が解けた影響で元の勇者服へ戻ると、その場に崩れるように倒れ込んだ。
「紡絆! 友奈! 東郷!」
夏凜が叫んでも、三人は微動だにしない。
焦りながら周囲を見回す夏凜。
しかし目に入るのは倒れ付した風と樹。満開をしていない己だけが立っているという現実。
彼女の脳裏には満開の代償という言葉が過り、嫌な予感だけが増していく。
「三人ともしっかりしろよ! 起きろよぉ……!」
誰も返事しない状況に思わず涙ぐむが、咳き込む声に夏凜はハッとして顔を上げる。
そこには色濃い疲労は見て取れるが、笑顔で夏凜を見つめる友奈と呻き声を上げながら目を開ける東郷が居た。
「大丈夫だよ……夏凜ちゃん」
「はぁい…なんとか生きてます…」
「ケホッ…ケホッ…」
さらに風も無事だったようで仰向けに倒れたまま声に出し、樹も生きてることを知らせるように手を振りながら咳き込む。
「な、何だよみんなもう……っ。さっさと返事しろよぉ……!」
代償という考えや二度と起き上がらないのでは、と不安が一気に安堵に変わり、思わず夏凜の目から涙が溢れ、夏凜は手で拭っていた。
そんな中、戦いが終わったことを証明するように樹海が解除される---
樹海が解除され、勇者たちと紡絆はいつもの讃州中学の屋上へと戻ってきた。
みんなの無事を万感の思いで眺めていた夏凜のポケットが小さく震える。戦闘を感知した大赦が連絡をかけてきたのだ。
それに気づいた夏凜は通話ボタンを押し、端末を耳に当てると今までで一番誇らしい気持ちで大きく息を吸い込んで、告げる。
「三好夏凜です。バーテックスと交戦、負傷者多数、至急霊的医療班の手配を願います。なお、今回の戦闘で12体のバーテックスは全て殲滅しました! 私達、讃州中学勇者部が!」
そう高らかに、誇らしげに大赦に告げた夏凜の顔には、晴れ渡るような笑顔が浮かんでいた。
長きに渡る、長かったようで短かった戦いがようやく終わった。
それも、人類の勝利という結果で。
そう、誰も死なず、誰も失わず、生きて明日を過ごせる。世界を、みんなを守りきったのだ。
これで大赦から言われた勇者部のお役目はおしまい。ようやく彼女たちはいつも通りの日常へと戻ることが出来る---
〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
他に続いて三代目適能者の力を受け継ぐ者。
(流石に)死んだ(心肺停止)
一応言っておくと、戦闘中も生きてた方が可笑しい。
ゆゆゆネクサス完ッ! にしたら胸糞悪いので続きます
〇ウルトラマンネクサス
ジュネッス・ブルーの力が解放される(紡絆が憐から託された)のと同時にスペックが全体的に急上昇。
なので二度目の復活後は紡絆の体調関係なく強くなっている。
そもそもの問題として、元からスペックは高い。
〇ダークファウスト
ついに消滅。
変身者は女性で、紡絆はどうやら正体に気づいたようだが……?
〇
紡絆を新たに導いたヒーロー。
彼が居なければ、紡絆は間違いなくファウストの、女性の命を奪えずに詰んでいただろう。
番外編(スパイラル)
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はよ書け
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先にゆゆゆ編完結はよ
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まだゆゆゆネクサスの難易度上がるってマ?
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シン・ウルトラマンはいいぞ。見ろ
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スパイラルでシン・ウルトラマンも書いて♡
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シン・ウルトラマン見ました
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投稿ペースを早めて
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戦闘シーン早くするんだよ