【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
全てが終わり、戦いを終えた友奈たち勇者は検査のため羽波病院というところで入院することになった。
『---昨日の工事中の高架道路が落下した事故の続報です。事故現場周辺で発生した大規模な火災は消し止められ、奇跡的に被害者はいませんでした。事故の原因については現在調査中で……』
検査を終えた友奈が待合室に戻るとテレビから流れるニュースが聞こえる。
そのニュースはあの激戦の上に起きた影響なのだろう。
やはり現実世界に影響は大きかったのか、今流れたニュース以外にも何個かあるが、どれも被害者はゼロだった。
「友奈も診察終わったのね」
「はい、きっちりばっちり血を抜かれて---」
友奈が戻ってきたことに気づいた風がそう呟くと、友奈は返しながら風を見て、明らかな違和感を感じる。
「風先輩、その目は?」
いつもは付けていなかった医療用眼帯があり、友奈はそれが気になった。
「フッフッフ……これは先の暗黒戦争で魔王と戦った際「左目の視力が落ちてるんだって」ちょっとちょっと、せっかくの魔王の戦いで名誉の負傷を受けたニヒルな勇者って設定で行こうと決めてたのにー!」
中二病っぽいポーズを決めて語り出した風だったが、既に真実を知った夏凜に横槍を入れられて台無しになった。
そのことに風は文句を言う。
「視力が……落ちてる? もしかしてバーテックスやスペースビーストから何か……」
「うん? 違う違う。戦いの疲労によるものだろうって。勇者になるとすごく体力を消耗するから。療養したら治るってさ」
「そうなんですか……よかったー」
風の説明聞いて友奈は安心する。
バーテックスの攻撃やスペースビーストの攻撃で受けたダメージが関係しているわけではなく疲労だったからだ。
そのことに友奈が安堵の息を吐くと、近づいてくる音に反応して振り返る。
「私たちも検査終わりました」
「東郷さん、樹ちゃん!」
どうやら終わったタイミングが同じようで、東郷の車椅子を押しながら樹も待合室へと入ってきた。
「樹〜注射されて泣かなかった?」
「…………!」
「…どうしたの?」
風のからかうような言葉に樹は言葉を返さず、ただ首を横に振る。
その行動に訝しみ、風が問いかける。
「樹ちゃん、声が出ないみたいです。勇者システムの長時間使用による疲労が原因で…すぐに治るとのことですが」
「あたしの目と同じね……」
答えられない樹に変わって東郷が伝えると、原因も理由も風と全く同じだった。
偶然……と言われてしまえばそれまでだが。
「……それなら問題はアイツよ」
「………!」
どれだけ取り繕うと、結果は変わらない。
夏凜の言葉に、この場の空気が一気に重たくなる。現実を見るように。
勇者部のみんなは既に聞かされていた。
今、紡絆がどうなってるのかを。あの後、どうなったのかを。
「で、でも生きてるんでしょ? お医者さんもそう言ってたし……」
「仮死状態……ね」
「あのバカ……」
そう、紡絆は
心臓も脈も止まり、いつ目覚めるかも目覚めないかも分からない---そういった一種の仮死状態となっている。
しかし逆に可能性のひとつを聞かされてもいた。
助かる可能性は、限りなく低いと。
出血多量、体力の急激な低下、肉体に蓄積され続けてきたダメージ。諸々が重なり、今の状態。
そもそも死んでいても不思議ではないと言われ、仮死状態ですら奇跡レベルだと。
もし容態が一度でも悪くなれば、紡絆は必ず死ぬ。
死と生の狭間にいるのだから当然といえば当然。
「とにかく病室に行ってみましょう。見ておいた方がいいでしょ」
「そうね……。あ、その前になんだけど……今のうちに渡しとくわ」
空気的に渡せるような状況ではなかったが、流石に大事なことでもあったため、風は置いてあったダンボールを開けて新品の携帯をみんなに配る。
「前まで使ってたのは回収されて、メンテナンスとかで戻ってくるのに時間がかかるから暫くその携帯を使って」
「あれ……あのアプリはダウンロード出来なくなってるんですね」
早速貰った携帯の電源を付けると、特に変わったようなものはない。
ただ勇者に変身する際に必要だったアプリがダウンロード出来なくなっていることを東郷が真っ先に気づく。
「あのSNSアプリは使えなくなってるの。あれは勇者専用であたしたちの戦いは終わったからね」
「そっか……勇者になる必要もう無くなりましたもんね」
長かったような短かったような、もはや過去のものだ。
ただ勇者になる必要がなくなったということは、平和が訪れたということ。
そう考えたら、もうなれないのは良いことなのかもしれない。
「あの……牛鬼は?」
「ごめん。アプリが使えないから精霊はもう呼び出せないの」
「そうですか……ちゃんとお別れしたかったな…」
精霊は勇者システムを介して干渉してくる。
アプリが使えないということは、精霊もおらず、牛鬼も現れない。
一言もお別れのひとつも言えなかった友奈は寂しそうな表情を浮かべた。
「要件はそれだけ。そろそろ…行きましょうか」
「はい、心配ですから」
「………」
話は逸れたが、紡絆の病室へ向かうことを伝えると、東郷が若干表情に陰を落としながら頷いていた。
樹は喋れないため、こくりと頷きつつも心配といった表情を浮かべている。
そして一同は、移動を始めるのだった。
コンコンコン、とドアをノックする小さな音が響く。
紡絆が入院し、色んなものに繋がれ、今も動くこともなければ目を開けることも、心電図すら動いていない。
そんな中、病室内にいる人物は誰が来たのかを察したようで、声を出す。
「どうぞ」
元気の無い、覇気のない声で呟かれたその言葉はドアの向こう側にも聞こえたようで、ドアが開かれる。
予想通りというべきか、勇者部の者たちだった。
勇者部の面々が中へ入れば、紡絆は包帯だらけで目を開けておらず、呼吸器を装着されていて点滴を付けられている。
本当に生きてるのかどうか疑わしく思うほどに酷い状態だ。
そんな紡絆のベッドの横に椅子がひとつあり、彼女は紡絆の手を握ったまま振り返って見ていた。
「皆さんは……無事そうですね。安心しました」
「えぇ、そいつよりかはね……」
夏凜が答える。
その視線の先には、紡絆の姿がある。
彼女はあの戦いのとき、誰よりも紡絆の近くに居た。だからこそ、どれだけ酷い状態なのか---最後に見た、あの時より酷い状態になっているっていうのは簡単に予想が出来た。
「風先輩、目大丈夫ですか?」
「あたしは平気よ。視力が落ちてるだけで療養すれば治るってさ。それより……あんたの方こそ大丈夫なの?」
「平気です」
風の眼帯に気づいて軽い心配だけすると、彼女は再び紡絆の方を見て両手で紡絆の手を握っていた。
「小都音ちゃん……寝てないんだよね?」
「大丈夫です、結城さん。まだ起きれます」
そう、彼女は紡絆の妹である小都音だ。
紡絆が病院に連れて行かれ、入院することが決まったことを勇者部のメッセージで知り、それからすぐに向かった小都音は紡絆の姿に衝撃を受け、少ししてからベッドに寝かされた紡絆の手をずっと握っていた。
一切寝ることも、食べることもせず。
だからこそ、目元には隈が出来ていて、顔色も悪くなっている。
「少しくらい休んでもいいと思うわ。小都音ちゃんが倒れたら紡絆くんが起きた時一番びっくりすると思うし……代わりに私たちがちゃんと見ておくから」
「………でも」
「………!」
「……樹ちゃん?」
東郷の言葉に一瞬悩みが生まれる。
正論で、正しいことを言われたからだ。
それでも休もうとしない小都音に樹が近づいて手を握った。
その意味がわからず、首を傾げる。
「どうしたの……?」
「………! ……!」
「樹は声が出せないらしいの。私と同じく勇者システムの長時間の使用によるものだって」
何か言いたいようだということは分かっても、口に出してくれないと小都音には分からない。
ただ樹の行動に疑問を抱けば、その理由は風が語った。
「声が……? それって……!」
目を見開いて驚愕したような表情を見せると、小都音は樹を見て、悲しそうな辛そうな暗い表情を作る。
そんな小都音に樹は眉を下げ、首を横に振った。
大丈夫だと言うように。
「………っ」
それを見た小都音は俯いて唇を噛み締め、握られた手には力がこもる。
小都音は知っている。
戦いの前、樹に夢が出来たことを。それについて兄に感謝されたから。
歌手を目指す---その夢に必要なのは、間違いなく樹が失った声なのだから。
「……なんで。こんな、理不尽……」
小さく、誰にも聞こえない声音で内側の思いが零れる。
思わず口に出してしまったことに気づかず、小都音は空いている手を爪が食い込むほどに握りこぶしを作っていた。
しかし、その怒りは誰にも向けられない。向ける相手がいない。
元を辿ればバーテックスが原因。スペースビーストが原因。力を授けた神樹様が原因。
「とにかく紡絆が目覚めたら教えるから休みなさい」
「そうね…あたしらが傍に居るよりいいでしょうし、樹はついてあげて」
「……!」
小都音の様子に気づく者は居なかったが、このまま起きていれば間違いなく体に悪い。
樹は風の指示に頷き、小都音の手を包み込むように握る。
「樹ちゃん……。……分かりました。兄さんのことお願いします」
何を言っても説得してくるだろうと察した小都音は手を握りながら見つめてくる樹を見て、周りの様子を見て諦めたように息を吐き、樹の手を握り返して立ち上がった。
どうやら折れたらしい。
「任せておいて! あ、それとこれあげるよ、何かは口に入れておかなくちゃ」
「小都音ちゃんはゆっくり休んでね」
「結城さん、東郷さん…ありがとうございます」
「樹、頼んだわ」
「……!」
樹が引っ張り、小都音は引っ張られながら一緒に病室から退出しようとすると友奈が小都音に近づいて片手にジュースとお菓子を渡していた。樹にも同じく渡すと、頭を軽く下げながらお礼の言葉を述べた小都音と樹は、そのまま姉の言葉に笑みを浮かべて頷いた樹に小都音は連れていかれる。
足が縺れるのではというくらいにふらふらとしていたが。
それを見届けると、友奈たちは安心したようにほっとする。
「あの兄妹…無茶するところは変わらないのね」
「似てるところは似てるってことね。家族だもの」
「そう考えると…風先輩と樹ちゃんは似てませんね」
「そんなことないよ。ほら、髪色とか同じだし!」
「それフォローになってないから!? というか、さっきはスルーしてたけど友奈はいつの間にお菓子とジュースを持ってたのよ?」
騒がしくなるのは流石勇者部と言うべきだが、風の問いかけに友奈は思い出したように袋から取り出す。
「みんなの分もあるよ! ほら私たちが暗くなってたら紡絆くんが目覚めた時心配させちゃうかなって思ってみんなで盛り上がれるように買ってきたんだ。でも流石に言い出せる空気じゃなくって……」
紡絆が死ぬか生きるか分からない状態で、妹の小都音もあのような様子。
流石に祝宴会を出来る空気でもなく、控えたのだろう。
それが偶然役に立ったと言った感じか。
そして友奈はどうせなら、とみんなの分も配っていき、最後に机に紡絆のくんの分、と置く。
「バーテックスを全部やっつけて、スペースビーストも倒して、ファウストとの戦いも終えて、本当はそのことのお祝いするつもりだったんだけど……今回は延期かな」
「友奈……」
「……そうね。もし勝手にやったら紡絆に文句言われるわ」
「きっと…大丈夫です。紡絆くんなら、きっと」
友奈たちにできることは、何も無い。
ただ信じるだけしか出来なくて、もどかしくても何も出来ないのだ。
出来るのは、帰ってくると信じるのみ。
「みんな待ってるから……帰ってきてね。そしてみんなでお祝いしよう。約束だよ、まだまだ勇者部には紡絆くんが必要なの。東郷さんに風先輩や樹ちゃん、夏凜ちゃんに小都音ちゃん。私が居て紡絆くんがいる---勇者部はバーテックスが居なくなっても変わらないんだよ」
反応はない。
当然だ。そのようなことを語ったとして、目覚めるのはフィクションだけ。
ここは現実。仮死状態の人間が簡単に生き返るような奇跡、起きるはずもない。
「それまではお預け。だから勇者部で待ってるからね、紡絆くん」
不安なのはみんな一緒だ。
このまま紡絆が目覚めない可能性の方が低いと言われているのだから。
だからこそ、友奈はそれを決して表に出さず、いつもの笑顔を紡絆に向けた---
二人体勢の交代制で紡絆の様子を看病し、帰ってきたお菓子とジュースを消費するためにみんなで食べる。
そのとき
結局紡絆は目覚めず、樹は小都音に付いてそれぞれ帰っていく。
「私たちの退院は明後日みたい。病院にいるのって退屈だから早く学校に戻りたいなぁ。またみんなで楽しみながら部活動がしたいよね」
「そうね……でも私は検査にもう少し長い時間がかかるみたい」
「そっか…一緒に退院出来たらよかったのに」
今は友奈が東郷の車椅子を引き、東郷の病室へと向かっていた。
病院は普通とは違って、消灯時間というのが存在する。
流石にそんな他人の病室に居続けるのは無理なのだ。それも入院してる人間が。
「---友奈ちゃん。体どこかおかしいとこあるよね?」
その時、東郷が突如として鋭い言葉を投げかける。
友奈が触れようと一切せず、決して話そうとしなかったこと。
背後にいる友奈は一瞬驚き、また笑顔を浮かべた。
「東郷さん鋭いなぁ…でも大したことじゃないよ」
「ジュース飲んでたとき友奈ちゃんの様子が変だったから……話して」
「味感じなかったんだ。ジュース飲んでもお菓子食べても、何を口にしても。でもすぐ治るよ、風先輩や樹ちゃんの声と同じじゃないかな。味が分からないなんて人生の半分は損だあ」
「………」
背後にいる友奈は笑顔のままだ。
それは東郷に心配させまいとしているのだろう。
悩み事も、心配事もあるのに、これ以上増やさせないように。
そして暫しして東郷の病室につき、送り届けた友奈は自分の病室へと戻っていく。
それを見届けた東郷はベッドから体を起こしてパソコンを起動し、イヤホンを付ける。
いつも通りに音楽を流し、パソコンを弄ろうとすると東郷もまた違和感を感じた。
「…………」
何度変えても、片方だけつけても、
右耳だけは正常で、左耳だけが異常になっている。
そう、それはあの戦いを終えた
◆◆◆
紡絆の病室。
一切動かない彼の傍にはエボルトラスターとブラストショットがある。
外に出ていたはずのそれは、ボロボロで捨てるしかない制服の中へいつの間にか入っていて、誰かが置いたのだろう。
エボルトラスターも何も反応を示さない中、そのエボルトラスターは突如として光輝く。
既に消灯時間。
辺りは暗く、誰もいないその部屋だけが光の輝きで照らされる。
『…………』
光が収まるとエボルトラスターが消え、そこにはエナジーコアを点滅させるウルトラマンネクサスが、アンファンスの姿でうっすらと実体化して紡絆を見ていた。
息もせず、脈もなく、目覚める様子が感じられない紡絆を、ただただ見ていた。
『-----』
何かを語る。
しかしそれらは人間に聞こえるものでもなく、意識のない紡絆に伝わるものでもない。
様子から見て取れるのは、ネクサスは両拳を力強く握り締めているということだろうか。
『------』
そんなネクサスは自身のエナジーコアを見つめて手をやり、顔を上げて紡絆を見たネクサスは両手で握り拳を作ることでエナジーコアを輝かせる。
しかしその輝きは保てなくなって一瞬で消え、ネクサスの体はさらに薄まる。
『…………』
ネクサスのエネルギーは残っておらず、体が徐々に実体を保てなくなりながら紡絆を最後まで見つめ、ネクサスの実体がついに消えるとエボルトラスターがブラストショットの側へ落ちた。
何をしようとしていたのか、少なくともそれは誰も分からない。
ただ分かるのは、今のネクサスですら紡絆を救うことは出来ない。
ウルトラマンは、神ではないのだから。
エネルギーがない彼には、干渉する力ですら少ないのだ。
もはや助かる可能性は---紡絆の生きようとする思いに掛けるしか、ない。
二日後。
紡絆は目覚めることはなく、友奈と風、樹に夏凜は退院することになった。
東郷はまだ時間がかかり、小都音は傍に居続けるために病院に居るらしく、戻るのは四人だけだった。
しかし問題は学校に戻ってからで、やることがないのだ。
勇者部の依頼は残ってはいるが、猫の飼い主探しは貰い手が居なければ預かる訳にも行かないし、個人依頼だったり男手が必要な依頼だってある。
特に紡絆があんな性格なのもあり、紡絆に対して依頼する者が多く、個人依頼の割合は紡絆が一番多かった。
子供の相手やら力仕事、専門分野であるならば紡絆に依頼する人は多いのだ。
そして今出来るとしたら剣道部の相手なのだが、それも指名依頼。
夏凜を指名しているものであり、その夏凜は勇者部を欠席していた。
だとしたら残るは文化祭なのだが、これも三人で出来るようなことでもなく、結局出来るものはない。それだけではなく、三人だけでは調子も出なかった。
どうでもいいことを述べるならば、樹がスケッチブックを使うことで筆談するようになったこと、風の眼帯がついに中二病臭くなったことくらいか。
それはさておき、今は夏。そんなのもあってこんな暑い日に出来るのは、だらけるくらいだ。
しかしまだ下校する訳にも行かない。今学校に残ってる人たちの誰かが勇者部に来るかもしれない。
唐突な依頼もあるもので、やれることがないなら待機するしかなかった---まぁ結局下校時刻となって帰ることになるのだが。
学校が終わると友奈たちの足取りは自然と重たくなる。
向かう先は病院で、友奈と樹は中へ入ると、互いに分かれる。
樹は小都音や紡絆の元へ。友奈は東郷の元へ向かい、友奈はドアを開けて覗き込むように体を出して手を振る。
「東郷さんっ。お見舞いに来たよ!」
病室の中では、体を起こしてパソコンを弄っていた東郷の姿があった。
友奈が来たことに気づいた東郷はパソコンの画面が見えないように少し空間を空けながら閉じていた。
「パソコンで何してたの?」
「ちょっと調べ物をね」
「なになに? 何を調べてたの?」
好奇心からか、東郷が何を調べていたのか気になる友奈は東郷に聞いていた。
隠されてしまえば、気になってしまうのが人間の性というものだろう。
「別に大したことじゃないから…」
「いいじゃん、教えてよ〜」
「…もう、調べてたのはね」
仕方がないと言った感じで苦笑した東郷は何を調べてたのか伝えるためにひとつ呼吸を置いて口を開く。
「私たちが暮らすこの国の特殊性および、正しい在り方を神世紀以前からの国家に比較考察して現在の護国現想の源流をヤマト神話との関連性に求めることの意義。そして私たちが今後担う時代の在り方を---」
「…ごめんなさい、私が悪かったです」
まだまだ続きそうな東郷の語りに友奈が音を上げ、頭を抱えながら聞いたことを後悔する。
友奈の頭では理解することが出来ず、キャパオーバーだ。
「…それより来てくれてありがとう」
「東郷さんと話したかったし、紡絆くんの様子も気になったからね。二人が居なかったら学校の楽しさが当社比五割減だよ〜」
「半分も減っちゃうんだね。でも…まだ紡絆くんは目覚めてないみたい。私も気になって聞いたりはしてるんだけど…兆しすら見えないって」
「そっか……」
話題を転換したのはよかったが、やはり空気は重たくなる。
過去に目覚めなかった日はあったが、あのときは生きてるというのは分かっていた。
しかし今回は別なのだ。今回は生きてもいないし死んでもいない。ただ目覚める可能性は限りなく低いと言われているのだから。
それだけではなく、東郷は昨日の夜のことを友奈に話した。
話すべき大切なことだったからだ。
「東郷さんは左耳が聞こえなくなってるんだ…。大丈夫、すぐ治るよ! だってあれだけ目一杯戦ったんだしみんなと同じで疲労みたいなもんなんじゃないかな?」
「そうね、身体がちょっと悲鳴をあげてるのかな」
安心させるように励ますように言う友奈に東郷は微笑んでそう返す。
「そうだね…ってもうこんな時間だ。暗くなる前に帰らなくちゃ。明日もまた来るからね」
「うん、待ってる」
すると友奈は肯定を示し、時間に気づくと立ち上がって病室から出ていき、手を振ってドアを閉めてから帰っていく。
それを見届けた東郷はパソコンを開き、キーボードを打つ。
パソコンの画面に表示されているのは、表。
自分たちの身に起こっている症状の経過と進行についてであり、友奈は味覚、風は左目、樹は声帯、夏凜は不明(異常なし)、東郷は左耳。紡絆は意識不明の重体と書かれている。
発覚は7月8日。でもって今日は11日で、東郷はみんなの分の表に回復の兆しなし、と打っていた。
それから少し考えるように画面を見つめ、傍に置いてあったスマホを手に取ってある番号に電話を掛けると、少ししてから繋がる。
『……わたしだ』
『突然すみません。風先輩にお聞きしたいことがあって…』
『スルーされた……で、なに?』
電話を出る時にふざけていたが、真剣な東郷は流し、ショックを受ける風に多少申し訳なく思いながら本題へと入る。
『満開の後遺症とかそういうことについて風先輩は何か聞いていますか?』
『満開の後遺症? なにそれ?』
『実は---』
東郷は話す。
自分自身のこと、そして恐らく本人が話していない友奈のことを。何よりも、自分の推測を。
『---友奈は味覚がなくなって、東郷は左耳が聞こえない。満開を起こした人は全員……』
『はい』
『…友奈、言ってくれたらよかったのに』
『友奈ちゃんの性格です。特に今この状況ですから…皆にこれ以上心配かけさせないように言い出せなかったんだと思います』
『そうね…あの子らしいわ』
確定ではない。
けれど、満開を起こした者は全員異常を来たしてることから、東郷は後遺症か何かと推測したのだろう。
しかし今は紡絆が倒れ、ただでさえ皆の心に少なからず不安があって。いつも通りとは行かない。
これ以上の心配はさせられないと、友奈は言わなかったのかもしれない。
『風先輩は大赦の方々から何か聞いてないですか?』
『ううん、何も』
『大赦の方々も知らなかったのでしょうか』
『そうだろうね…ごめん、こんなことになっちゃって』
風も知らず、大赦からも聞かされてない。
つまりは大赦も認知してないのだろうという推測に風は肯定を示し、巻き込んだことについての謝罪をする。
『風先輩が悪いんじゃありません。それに体の異常だって…きっとすぐに治りますよ。紡絆くんだって、きっと目覚めます』
『病院の先生も言ってたし、そう…だよね。それに紡絆はあの紡絆だもの。目覚めるよね。けど目覚めたら騒がしくなりそう』
しかし東郷は風を責めることはせず、むしろ励ましていた。
勇者部に所属する者は、皆優しい。誰かのせいにすれば人間は一番楽だというのに、そんなことしないのだから。
そして風の言ったことにイメージ出来たのか、東郷はくすり、と小さく笑っていた。
『とにかく大赦からの返答待ちですね……。そういえば、結局紡絆くんのことについて大赦から何か来たりとかはしましたか?』
『ううん、ウルトラマンだから樹海に入れたのではないか…みたいな推測が来ただけ。特に何もなしよ』
『そうですか……ありがとうございます。それではまた---』
結局ウルトラマンについても、紡絆についても大赦は何一つ知らないということだろうか。
聞くことは聞いた東郷は長く電話するのも憚れるため、電話を切ったのだった。
「998…999…1000!」
またいつもの砂浜にて、夏凜は悩みを吹き飛ばすようにただ素振りをしていて、ようやく目的の回数まで行くと、疲れたように砂浜に体を預けて空を見上げる。
(戦い…終わっちゃった……)
夏凜がここへ来たのは、戦うため。
バーテックスやスペースビーストへの対抗手段として派遣されてきたのだ。
少なくともバーテックスは終わり、ファウストも紡絆が倒した。
スペースビーストのことは謎が多くて分からないが、戦いは終わったに違いない。
夏凜だけでなく、みんなそう思いたいだろう。
「私、これからどうすればいいんだろ……」
もしここに紡絆が居れば、今の彼女の悩みはすぐさま解決しただろう。
しかし今は紡絆がいない。
彼女の悩みの言葉は、ただ虚しく呟かれただけだった。
そんなふうにしていると、夏凜のスマホが通知音を発する。
ポケットから取りだし、携帯をつけた。
「風からか。バーテックスとの戦いの後、体におかしなところ…?」
変なことを聞いてくるものだと思いながら、夏凜は何ともないこと、何かあったのかと打って返すと、すぐさま返信が返ってくる。
『満開を起こした人は、身体のどこかがおかしくなっている』と。
「それって、私以外全員……。友奈や東郷も…」
そう、満開してないのはウルトラマンである紡絆を除いて夏凜だけ。
その紡絆ですら、満開ではないがウルトラマンの新たな力を引き出した。
「…私だけ傷を負ってない。戦うためにここに来たのに、まるで私が役に立ってないみたいじゃない…!」
本当は、そんなことはない。
なぜなら、彼女が居なければ紡絆は間違いなく死んでいたからだ。以前は守ったと言うのに、あの時のウルトラマンはバリヤーを貼れず、そして紡絆は意識を失っていた。
ほんの少しでも彼女が紡絆を背負い、時間を稼がなかったら間違いなく敗北していた。
あの戦いは、誰か一人でも欠けていたら決して勝てなかった戦いなのだ。
ただ、それを言ってくれるような人物はどこにもいなかった。
◆◆◆
時間は少し遡り、紡絆の病室には、変わらず小都音が紡絆の手を握っていた。
大切そうに、離さないように、ただ悲痛な面持ちで。
「お兄ちゃん……」
うわ言のように、小さく呟かれた。
昨日少し眠り、それからまたずっと起きて、紡絆の傍にずっといる。
もはや時間というものを忘れているのではないかというほどに、ただ握って居るのだ。
ご飯すら食べず、水分も必要最低限。
瞳に色はなく、ただ辛そうに。
「……神様ってなんだろうね。お兄ちゃんは悪いこと、してないのに。ずっと、ずっと……」
この世界は神樹様という神が存在する。
崇められ、称えられ、神樹様という神は四国に住むものならば少なからず誰であっても信仰していた。
例外も存在していたが。
「お兄ちゃんは……神樹様にすら、優しさの心を忘れないで、思いやりの心を持ってたのに」
それが、目の前に眠る紡絆という人間だったのだろう。
彼は神である神樹様を、人間同様に心配していたということだろうか。
ずっと守ってきてくれて、ずっと助けてくれて、でもそれはなんの負担もないのかと。疲れてないのかと。しんどくないのかと。辛くないのかと。
それは、慈愛の心。
自尊心の高く、人間を見下す神ならば人間如きというかもしれない。
しかし神樹様という神は人間を愛し、人間の可能性を信じてくれた神々だ。
人間が皆、神樹様に何かを求めるというのに、何かを願うというのに、ただ純粋に気遣い、心配する彼の姿は、果たして神々にはどう映ったのか。
「嫌だよ…また離れ離れになるのは……」
ようやく再会した。
だというのに、再会したら紡絆は死にかけては怪我を負い、今や仮死状態となっている。
止めても無駄だと分かっていて、止めることはしない。
ただそれは、心配しないという意味ではないのだ。心配がないというわけでも不安がないわけでもない。
不安で、本当はやめて欲しくて、でも継受紡絆という人間は決して誰にも止めることが出来ない。
彼は勇者部の活動中でも、戦いでも、何処でも、そうだったのだから。
「私はやっぱり…神様も、ウルトラマンも、バーテックスもスペースビーストも---お兄ちゃんを傷つける者全てが嫌い。お兄ちゃんばかり苦しめる…私はお兄ちゃんにただ幸せに生きて欲しいだけなのに……」
小都音の言葉は、紡絆には届かない。
独り言としてどこかへ流されていき、誰にも聞こえない。
幸せを願っても、現実はこれだ。
ウルトラマンに選ばれた時点で、紡絆の運命は決まっている。
ウルトラマンに選ばれた者は皆、過酷な道を辿るしかないのだから。
戦うしか、道は残されていないのだから。
「………お兄ちゃん」
ただそれは、誰にも知らない。
ウルトラマンに選ばれた者たちのことなんて。ウルトラマンのことなんて、この世界では誰も知らないのだ。
この世界に特撮というジャンルはあれど、ウルトラマンという架空の作品は、ないのだから。
「私は……どうしたらいいの……?」
答えを求めるように、暗い表情で呟かれた小都音の言葉は---その答えは、やはり誰も答えてくれなかった。
あれから友奈とわかれた樹は病院を歩くと、紡絆が入院してる病室に辿り着く。
ドアの前で息を吸い、吐いた。
そうして深呼吸した樹はドアを控えめにノックする。
「……はい」
聞こえてくるのは、昨日と変わらずに気力のない声。
昨日は樹はスケッチブックを持ってなかったため、何も聞くことも伝えることも出来ず、傍に居て手を握ることしか出来なかった。
当然、あのような様子だった小都音が何かを喋るわけもなく、会話は一切なかった。
しかし今日は違う。今日こそは、自身に夢のきっかけをくれた友のために、樹は勇気を出して部屋へと入る。
「…樹ちゃん?」
『小都音ちゃん』
誰が入ってきたか確認するためにゆっくりと振り向いた小都音は、入ってきた人物を認識すると、樹はスケッチブックを取り出して見せていた。
「…あ。そっ……か。喋れないんだっけ……」
思い出したように、小都音の表情がさらに暗くなる。
それにどう言えばいいか分からず、樹は苦笑するしか出来なかった。
大丈夫だと言えば、解決するようなものでもない。
今の小都音は精神的に追い詰められていて、生半可な言葉では痩せ我慢と思われて余計に辛くさせるだけ。
だからこそ、樹は何も言えなかった。
もし樹が姉である風がこうなってしまえば、どうなるかなんて想像出来ないのだから。
「……」
今にも泣きそうな、辛い顔。
自分のことではないのに、いくら友達とはいえ、他人のためにそんな顔を出来るのは、流石兄妹と言うべきか。
『紡絆先輩は?』
「……まだ、全然」
視線が樹から紡絆へと戻ると、動くともなければ呼吸すらしていない。
昨日と変わらず、紡絆はただ目を閉じてるだけだった。
樹も釣られるように紡絆を見て、一瞬だけ悲しそうな辛そうな表情を浮かべ、近くの椅子を持って小都音の隣に座る。
小都音は横目でそれを見て、再び紡絆を見つめた。
「……樹ちゃん」
「?」
「………ありがとう」
突然感謝された樹は、意図が分からずに困惑したような表情だった。
それを見た小都音は弱々しく笑うと、口を開く。
「昨日…ずっと傍に居てくれたでしょ…? お兄ちゃんのためにも…今日も、来てくれて…だから、ありがとう」
「………!」
それを聞いて理解した樹は、スケッチブックに書いてそれを見せる。
『小都音ちゃんは友達で
紡絆先輩は先輩だから』
「…そっか。私、樹ちゃんみたいな友達が居て……幸せだね。きっと…兄さんも樹ちゃんみたいな後輩が居て、誇らしいんじゃないかな」
『そ、そんなこと……』
照れたようにスケッチブックで顔を隠す樹を、小都音は小さく笑ってからそっと頭を撫でた。
『小都音ちゃん?』
「ん。私の友達は可愛いなーって……」
『恥ずかしい…』
その姿にくすくす、と小都音は弱々しくも笑い、少し疲れたように息を吐く。
仮死状態の兄。喋ることの出来ない友人。
そんな状況で辛いというのに、樹に心配させないように少しでも明るく振る舞う。
それに気づいていても、樹は言わない。
友達の気遣いを、無碍にしないために。少しでも元気になってもらうためにも。
「……ねぇ、樹ちゃん」
互い互いに友を思いやっていることに気づくことはなく、小都音は隣にいる樹の手を握る。
すると、樹も握り返した。
『どうしたの?』
「……少し、過去話を聞いてくれるかな」
スケッチブックを置いて書き、片手で見せる樹。
やりづらくなったことに少し申し訳なさそうにしつつも、小都音は樹の問いかけにそう答えると樹は頷いた。
「…ありがと」
小さくお礼を言う小都音に樹は気にしてないと首を横に振る。
すると小都音は何処か遠くを見るような目で、紡絆を見た。
「……私ね、昔はこんな性格じゃなかったの」
それは、過去の記憶。
決して紡絆の前では言わず、誰にも喋ることのなかったこと。
もし話してしまえば、今の紡絆に影響を与えるかもしれなかったから---いや、話していたら、記憶がなくとも紡絆は
小都音や家族のために。
しかし押し付けるようなことは、小都音も家族も望んでいなかった。
だから過去に関することは家族だということや以前まで住んでいた家といった大事なこと以外は話すのは少なかった。
「昔---ずっと昔。私は今みたいな性格でもなくて、樹ちゃんみたいだったんだ」
「……?」
「人見知りで、恥ずかしがり屋で、気弱で引っ込み思案。いつも兄さんの後ろに隠れて、ずっとくっついてた。その背中をただ見てた。
だからなのかな…もちろん兄さんに風先輩のことを聞いてたから勇者部に案内して貰うために近づいたのもあるけど、樹ちゃんと話したいと思ったのは…友達になりたいと思ったのはきっと親近感があったからなんだろうね。貴女は、前の私に似てたから。今では…友達になれて良かったって思ってる」
「…!」
今からは全く想像のできない姿。
今の小都音は普通に誰とでも話してるし、仲良くしてるようにも樹の目には映っていたのだから。
それだというのに、自分の過去に似ていて、友達になれて良かったと嬉しいことを言ってくれた小都音に樹も頷きながら泣きそうな嬉しそうな笑顔を浮かべる。
それに微笑みで小都音は返すと、また言葉を紡ぐ。
「……それでね、兄さんは凄いの。私が困ったら、泣いてたら絶対に駆けつけてくれて…うん、私にとって兄さんはヒーローだった。ずっと、ずっと」
そう兄のことを語る小都音は懐かしそうで、何処か嬉しそうでもあった。
彼女がどれだけ紡絆のことを思っているのか、好きなのかを分かるほどに。
「でも兄さんがこんなふうに倒れるのは、昔もあったんだ。一度目は、
その時は無事に目覚めたけど、私が変わったのはそれから少しして。
私も兄さんの力になりたい。兄さんを支えたい。兄さんに何かしたいって思ってお母さんにお願いして家事を教えて貰って……私は今みたいになったの」
「…………」
今も昔も、紡絆は人助けしていたのだろう。
その姿を樹は不思議と想像出来た。
そして小都音が変われた理由は、倒れた兄の姿を見て、思うことがあったのだろう。
自分も変わらなきゃ、と。
その思いだけは、樹もあった。同じ状況にはなったことはなくとも、姉にばかり負担をかけさせていたから。
「けど、兄さんは記憶を失ってた。私も、お母さんもお父さんも原因は分からないんだ。傍に居なかったから。分かるとしたら兄さんだけ…私が知ってるのは兄さんといた時の過去だけなの」
成長した姿を見せることも、出来るようになったことも、見せることが出来なかったのだ。
なぜなら紡絆は---何も覚えておらず、何が出来ないのか何が成長したのかすら知らないのだから。
記憶を失った理由は、誰も知らない。
唯一知っているのは、神と…記憶を失う前の紡絆のみ。
「そして……私や両親が事故に遭う前日。私は何度も何度も自分を顧みずに誰かを助ける兄さんに危機感を覚えて、怒って、喧嘩しちゃった。初めて、しちゃったんだ。
嫌いだって。もう知らないって。勝手にしてって。本当は大好きなのに、私はただ兄さんの幸せを願ったから……。
その後、私たちは事故に遭った…きっと兄さんは後悔して、苦しんだと思う。こう見えても、兄さんは完璧じゃないから。表に出さずに、心の中や誰も居ない時には、後悔が溢れてたと思う」
後悔するような表情で小都音は語り、手を繋いでいる樹は力が痛くない程度に僅かに強くなったのに気づく。
喧嘩別れすることになってしまったのだから、小都音も後悔しているのだろう。
そして小都音の言葉は正解だ。
本人は一切気にしていないように周りに振舞っていたが、後悔は何度もしている。でなければ、わざわざ仏壇にヒヤシンスの花を飾るはずがない。
まぁ、その後悔は決して誰かを責めるのではなく、自分だけを責めていたが。
『その時の紡絆先輩は友奈さんや東郷さんも無理してないか心配してたってお姉ちゃんが言ってた』
「…うん。みんな優しいから、兄さんのことを気遣って、止めようとも深く聞かないようにしてたんだと思うな。それで、話してないことも何個もあるけど今に至る…って感じ」
まだ全部ではないようだが、話は終わりといったように小都音は儚げに笑うと、口を閉じた。
正直、樹には何も言えない話だ。特に、スケッチブックでしか伝えられない樹には。
確かに樹は両親を失ったが、姉は居た。
大好きな姉は無事で、何ともない。ずっと一緒だった。
しかし逆に小都音は今も大好きな兄は記憶を無くしていて、両親は他界している。
それに紡絆の性格からして、自分をどれだけ危険に晒したのか。
想像することは容易い。
樹も、勇者部のみんなは、戦いで無茶をし続ける紡絆を見て、日常でも無茶をして人助けする姿を何度も何度も見てきたのだから。
例えば交通事故に遭いそうな人が視界に映ると、迷いなく向かう。
危険が迫っていたら自分を犠牲にして庇う。
本人に言えば、大丈夫だと思ったからと答えるだろうが。
「…ごめんね。暗い話しちゃって」
『気にしてないよ。でもどうして私に?』
そう、樹はそこが気になった。
こういった話をするなら、正直樹は姉の風や友奈の方が向いてると思っている。
傍に居たのが樹だから、と言われてしまえばそれまでだが。
「樹ちゃんには…少しでも話しておきたくて。私の、大切な友達だから……」
「……!」
嬉しそうな、照れたような様子を樹は見せると、樹は少し急ぎ気味にスケッチブックに書き、また見せた。
『私も小都音ちゃんのこと大切な友達だと思ってる』
「そっか」
急いで書かなくてもいいのに、早く伝えたかったのか。
真偽は分からぬが、可愛らしい姿に小都音は軽く微笑むと、また口を開いた。
「樹ちゃん。ちょっと…ごめんね」
一言断って、樹に持たれかかるように頭をこてんと樹の肩に置いて預けると紡絆のことを見る。
樹は僅かに驚いたようだが、樹もまた紡絆のことを見つめた。
「少し…休みたいから。後はお願いできる?」
『任せて』
「うん…お願い」
スケッチブックに書かれたのを見て、小都音は後を任せると目を閉じた。
流石に限界だったのだろう。
紡絆のことでも、樹のことでも、他のみんなのことでも、精神的に傷ついた小都音の疲労は凄まじいはず。
紡絆とは違って、頭がいい分思考してしまう。
それこそ、もしあの場にいたならば原因を突き止められたほどには。
もしもの話をしても仕方がないが、そんなこともあって心配し続けるのも人間は疲れる。
最低限な飲み食いしかしていない小都音は特に。
そのため、小都音は軽い仮眠を取る事にした。
樹はただ友達のお願いを聞き届けるために、小都音の手を優しく握り続けながら紡絆のことを見ていた。
(……きっと、大丈夫ですよね。紡絆先輩。小都音ちゃんも私も、みんなも……帰ってくることを願って、待ってますから)
樹もまた不安ではある。
けれど、きっとまたいつもの笑顔で、何事もなかったかのように帰ってくると、ただ信じていた。
そう信じようと、紡絆の手に少し触れて、勇気が出ずに引っ込めていた。
そして何事もないまま時間は過ぎるが、変わったことがあったと言えば友奈が最後に来て、小都音が寝てることに気づいて小さな声で多少話し、小都音が起きてから樹と友奈はそれぞれ帰っていくのだった---
7月16日。
何も変わらず、勇者部の部室ではHTMLの本を借りた友奈がたどたどしい姿でパソコンを使っている。
この数日間、友奈も風も樹も時間があれば病院へ行くくらいで、何も変化は起きていない。
「……やっぱり三人だと調子でませんね」
『かりんさんずっと来てないですね』
「SNSにも返信がなくて夏凜ちゃん授業終わったらすぐに帰っちゃうし……」
「そっか…」
場が少し暗くなってしまう。
ここまで欠席してるとなると、もう来ないつもりだろうか。
「私、夏凜ちゃんを探してきます!」
じっとしていても仕方がない、と友奈はパソコンを弄るのをやめて立ち上がる。
そして風たちが何かを言う前に、それだけ言い残した友奈は走っていく。
学校を出て外へ行き、夏凜が住んでいるマンションへ向かうとインターホンを鳴らした。
返事はない。
留守かと思い、マンションを出て街を走って探す。
(夏凜ちゃんって普段どこにいるんだろう……夏凜ちゃんが行きそうな場所…紡絆くんなら、知ってたのかな。ううん、ダメだ。紡絆くんばかりに頼ってちゃ!)
こうやって考えれば、夏凜のことを友奈たちはあまり知らない。
紡絆はある程度関わっていたからこそ、知っているが。
何処に行きそうなのか、何をしているのか。
それを知っていたのは紡絆だけだったのだ。
なぜなら勝手に家に入って夏凜に料理を作っていたのが紡絆だったのだから。
思わず、いつも頼りになる紡絆のことを考えてしまったが、頭を振って分からないなら足で探すと言わんばかりに友奈はただ走っていき---友奈が夏凜を見つけたのは夕方になる頃合だった。
そこは、いつも夏凜が鍛錬していた砂浜。
「夏凜ちゃーん!」
「…友奈?」
夏凜を見つけた友奈は、手を振りながら近づいていく。
自身を呼ぶ声に反応し、夏凜がそこを見れば友奈が向かってきて、何かに躓いた。
「っておうっ!?」
「ちょっ!?」
気づいても遅く、友奈の体は砂浜にダイブすることになった。
小石に足の爪先が当たったのだろう。
両手で受け身を取ったお陰で顔面から行くことはなかったが。
「何やってんのよあんた」
「いたたた…夏凜ちゃん、そこは駆けつけて受け止めてよ〜」
「いや無理でしょ…無茶言わないで」
そう言いつつ、友奈に近づいた夏凜は木刀を片手で持って空いた手で手を差し伸べると、友奈が掴めば起き上がらせる。
「…で、何しに来たの?」
「勇者部へのお誘い! 夏凜ちゃんが最近サボりにサボって欠席してるから、このままじゃ罰として腕立て伏せとスクワット3000回と腹筋10000回させられることになるんだけど…」
「桁おかしくない…? 特に腹筋」
要件を聞く夏凜に友奈は答えるが、罰があまりにもの桁がおかしかった。
数百回なら夏凜も出来る自信はあるが、数千回は難しい。
思わず突っ込むが、友奈は気にした様子はない。
「でも今日来たら全部チャラになります。さぁ、来たくなったよね?」
「…ならない。もともと私正式な部員ではないし、それに…もう行く理由がないのよ」
「理由って?」
それが夏凜が勇者部へ行かなかった事情なのだろう。
行く意味を無くしたから。
その理由とやらを聞くために、友奈は問いかける。
「私は勇者として戦うためにこの学校に来た。勇者部に居たのは他の勇者やウルトラマンと連携を取った方がいいからで…そもそも勇者部はバーテックスを殲滅する為の部でしょ。なのにそのバーテックスが居なくなった以上……もう、意味ないじゃない」
「違うよ」
理由は聞いたが、勇者部の存在意義に関しては友奈は即座に否定した。すると夏凜は俯きがちだった顔をハッと上げる。
初めは確かに、勇者を集めるために作られた部活かもしれない。
しかし今までの全てが否定されるわけでもないのだ。
そして夏凜が言ったことは、夏凜の本音ではない。でなければ、あそこまで楽しそうにみんなと過ごすはずがないのだから。
「前も言ったよね。バーテックスが居なくても、勇者部は変わらないって。
だって、勇者部の活動内容はバーテックスと戦うじゃなくて、誰かが困っていたり悩んでたりしたら、勇んで人助けする部活なんだから」
「でも…私は戦う為に来たから……もう戦いは、終わったから。だからもう、私には価値が無くて……あの部に、居場所も無いって思って……」
「勇者部五箇条一つ、悩んだら相談!」
それは夏凜が抱えていた悩み。
戦うという目的のために来た彼女は、役目を終えてしまった。
だからこそ、何をすればいいのか分からない。燃え尽き症候群のようなものだ。
なら、友奈は言ってあげなくてはならない。
今言えるのは、今行動出来るのは他に居ないのだから。こういう時、頼りになっていた彼は…今は居ないのだから。
「戦いが終わったら居場所が無くなるなんて、そんなことないんだよ。夏凜ちゃんが居ないと部室は寂しいし、私は夏凜ちゃんと一緒に居るの楽しいし、みんなもそうだと思う。特に…紡絆くんが居たら、絶対にそう言うよ」
「……あ」
離さないと言わんばかりに夏凜の腕を両手で掴み、友奈は笑顔で夏凜に伝える。
すると夏凜は何かを思い出したかのような反応をした。
それは、もう過去の出来事。
共にベランダで星空を、街を眺めた夜のこと。
『夏凜はもうひとりじゃない。俺たちがいて、夏凜には
だからさ、俺は友達として仲間として、夏凜のこと凄く頼りにしてる。
これからもよろしくな!』
既に答えは言っていた。
言われていたのだ。紡絆は過去に言っていた。
それは
それに夏凜は、今更ながら思い出して、気づいた。
自分の居場所は元から---手の届く範囲にあったことに。
「それに私、夏凜ちゃんのこと好きだから。ううん私だけじゃなくて東郷さんや風先輩、樹ちゃんに小都音ちゃん。そして紡絆くんも…みんな夏凜のこと好きだから」
「っ……ば、バカ」
真っ直ぐぶつけられた好意に、慣れていない夏凜は顔を真っ赤にする。
しかしそれでも、答えは見つかった。
悩んでいたことの答えは、本当に単純で、簡単だったのだ。
ただ夏凜が答えに辿り着けていなかっただけ。思い出すだけで---それだけでよかったのだから。
(本当に……バカ。今傍に居ないくせに、どうしてあんたは私が欲しい答えをくれていたのよ……紡絆。だから、だから無事に目覚めないと許さないから…)
夏凜はそのことに、心の中で呟く。
今も生きるか死ぬか分からない紡絆のことを思って。
ただ一言。答えを教えてくれていた彼に、感謝の言葉を伝えたかったから。
そしてその後、夏凜は友奈と一緒に駅前のシュークリームを買って帰り、友奈の味覚がなくなってることが知られたりはしたものの、巻き込んだことに謝る風に友奈と樹は自分で望んだということで謝罪を受け取らなかった。
それから少しだけ騒がしくなった部室で時間まで過ごし、解散すると夏凜はメールを大赦宛に打っていた。
『バーテックスは殲滅され、任務は終了しました。今後の私の処遇なのですが、讃州中学に残ることを許可してもらえないでしょうか』
そういった文面を送信し、勇者という役目も関係なく、ただの中学二年生の少女として勇者部で過ごすという日常を。
脳裏に浮かぶ六人と、自分を含めてまた七人で。
戦いに関係なく、これからも一緒に居られるなら、それは---
「悪くない」
きっと忙しくて楽しくて、馬鹿やって、とても大変だけど、笑顔の花がたくさん咲く様子が、簡単に想像出来た。
そんなことを考えていれば、以前とは違うSNSアプリから東郷の退院日が決まり、明日になったという報告がひとつだけあった---
◆◆◆
懐かしく、もう昔のこと。
そして、全ての始まりで、
初めて継受紡絆としての意識が芽生えたとき。初めて継受紡絆の記憶のひとつとして残ったとき。
初めて継受紡絆として自我を持ったとき。
初めて---大空を見たとき。海を見たとき。とても綺麗で、透き通っていて、美しかった。
そう、まるで自分のように。何も分からない、何も知らない---真っ白な自分の頭の中のようだと。
なぜなら、気がついた時には何もかも分からなかったから。
自分が何者なのか、何をしていたのか、何があったのか、自分はなんだったのか。
ただ不思議だった。
そう、分からない。泣きたくなるほどに胸に穴が空いたかのようなぽっかりとした違和感があって、不思議と悔しくて、どうしてか、後悔の念があった。
何故か体はボロボロで、傷ついていて、寒かった。
痛くて痛くて、叫びたくなるほどに痛かった。
けど、そんなことは出来ない。何も出来ない。息をするだけで精一杯で、呼吸を途絶えさせないことだけで精一杯で、声に出す余裕がなかった。
それでも、記憶もないのに、何もしなければ死ぬという確信だけは持っていた。
不思議だった。
生きなければならないと、まだやることがあると、死ぬ訳には行かないとまるで使命に駆られるように、ただ上を目指していた。
体は沈む。
口にはしょっぱい塩水がたくさん入ってきて、体は重たくて、喉も乾いて、体力も削られていって、抵抗するのが難しいほどの激流で、それでも紡絆は足掻いた。
何故足掻くのか、何故ここまで死にたくないと、生きろと何かが叫ぶのか。
生きなければならないと思ったのか。
分からない。分からない。分からない分からない分からない---自分はなんなのだ。自分は何をしていたのだ。何故自分はここまで傷を負ってるのか。何故自分はこんなに痛みを感じてるのか。なんで自分は---
そう、分からない。ただただ分からないの五文字で終わること。
思考の大半が分からないという感情が占め、意志のほとんどが生きねばならないという生存本能だけがあった。
足掻いて足掻いて、足掻いて足掻き続けて---ボロボロな紡絆は、体力も失われていた。
必死に溺れないように抵抗していたが、目指すべき場所も、目的も、全て分からず。
その場で足掻くだけ。
だとすれば、人間には限界がある。
体力という限界値があるのだ。
口の奥からは、鉄の味があった。心臓がうるさかった。頭が痛かった。首が痛かった。肩が痛かった。腕も手も痛かった。胸が痛かった。お腹が痛かった。足が痛かった。
全身が痛くて、痛くて、体力も限界で、けれど
でも、無理だった。
瞼が重たくて、体中痛くて、頭がボーっとしてきて、心が折れて。
もう頑張った、もういい。何も出来ない。ここで終わり。何も分からないまま、全部終わって、死ぬんだと---完全に限界を迎えた紡絆は目を閉じて、全てを諦めて、投げ出して、力を失った紡絆の肉体は海の中へ無惨にも、理不尽にも沈んでいく。
ただ、ただそれでも---心は折れたはずなのに、生きることを諦めたというのに、投げ出したというのに、全部全部諦めたはずなのに、紡絆は最後の最後まで残る全ての力を振り絞って、うっすらと開いた瞳で右腕を天に突き出していた。
大空へと。太陽へと。
そう、諦めたはずなのに、紡絆は諦め切ることが出来なくて、渾身の力を振り絞った。
しかし、所詮は現実。
首まで沈み、頭まで沈み、それでも太陽があった場所を見て、手を伸ばして---やはり、無理だったと紡絆は思った。
なぜなら紡絆の体は完全に沈み、腕も見えなくなり、指先すらも海底へと、海の中へと消えていき、生存は絶望的で、生きることを断念せざる負えなくて、ついに紡絆の意識も、肉体と共に誰も知らぬ海の底へと---
『
沈む前に、誰かに引き上げられて、そのような声が頭の中に聞こえたような、そんな気がした。
その人の手は太陽のように、光のようにとても暖かくて、月の明かりのように安心出来て、勇気を貰えるような、そんな手。
そうして、気がつけば助かっていた。生きていた。海岸に居た。
瞬きするほどの短い時間だというのに、どこを見ても海岸が見えなかったほどの沖に、海の中へ居たはずのに、そんな短い時間で地上に寝転がっていた。
分からなかった。何故助かったのか。
ただそれでも助けられたということは理解していて、紡絆は助けてくれた人を見ようと、朧気な意識でその人が居る場所を見た。
「……り」
分からなかった。
その人の顔も、特徴も、姿も、何もかも分からなかった。
お礼を言いたくて口を開こうにも、動かなくて、思考が固まっていて、考えることも出来なくて、その人を見て思ったことが口に漏れていた。
その人は振り向いたように見えて、口を開いたような、そんな気がした。『あきらめるな』と。
さっきと同じ言葉を繰り返して、伝えてくれて、瞬きすると、その人は光の中へ消えた。
まるで夢のような体験であったけど、助かった自分という証拠が現実だと知らせてくれる。
そう、結局その人の正体は分からなかったけれど、きっとその人は---
何故ならその人は---
そうして、今度こそ紡絆は、完全に意識を手放した。
紡絆の病室で、ピーという音が鳴り響いた。
エボルトラスターが鼓動し、うっすらと輝く。
「う……ううんぅ……?」
傍で手を握り続けながら、眠っていた小都音はふと目覚めた。
違和感があって、いつも聞こえない音が聞こえて、寝惚けている意識を覚醒させるために目を擦って、周りを見渡した。
何も変化はない。
何も変わってない---いや、よく見てみれば、心電図の表記が変わっていた。
「……え?」
一気に眠気が吹き飛び、意識が完全に覚醒した小都音は目を疑った。
心電図に、ちゃんとした波があったのだ。
今までは真っ直ぐ線が伸びてただけだと言うのに、動いている。
すぐに紡絆へと視線を向け、小都音は紡絆の手を指の間に自身の指を入れて手を握る。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……っ!」
返事はない。
必死に呼びかける小都音の言葉に、紡絆は何も反応を示さない。
今まで変化もなかったのに、ようやく変化が見れた。
「お願い…起きて、起きて……! 私を一人にしないで…もう離れないで……!」
その希望に縋るように、小都音はただ紡絆に呼びかける。
なりふり構ってられず、目覚めることをただ願って、何度も呼びかける。
それでも、紡絆は目覚めない。
「お願いだから…一緒に居てよ…。お願いだからもう…私だけを残して行かないでよ、お兄ちゃん……っ! こんどこそ…ずっと一緒に…また、いつもみたいに…笑ってよぉ……!」
色んな思いが小都音の中に巡り、その感情が爆発する。
小都音の瞳から、雫が落ちていく。
それは涙。
瞳から落ちていくそれに気づいても、一度流れた涙は止まることを知らずに次々へと落ちていき、小都音の涙が握った手へと落ちた、その瞬間---奇跡は起きた。
「ぁ……っ!?」
赤と青。
紡絆の肉体からふたつの光が溢れ、それは何処までも眩しくて、思わず目を閉じてしまうほどの光。それでも不思議と痛くはなくて温かい光。
ほんの数秒にも満たぬ時間、赤と青の光が発せられたが、突如として光は消え、小都音は恐る恐ると目を開けた。
「おに……ちゃん?」
何があったのか分からず、不安な表情を隠せないまま小都音は兄を呼ぶ。
目を開けることも返事もなく、胸が締め付けられるような痛みが走り、また瞳に涙が貯まる。
そして---ピクリ、と握っていた手から感触が返ってきた。
「……え?」
弱々しくも、ゆっくりと、小都音の手が優しくぎゅっ、と握り返された。
力は入ってないと感じられるほどにとても弱くて、気のせいかと錯覚してしまうくらいの、力。
ただ、手から感じた温もりは---本物だった。
「おに……ちゃん……。お兄ちゃん……!」
再び小都音の目からは涙の雫が落ちる。
それは悲しみや苦しみでも、辛さからでもなく、たった一つの感情。
そう、それは喜び。
たった一つの奇跡が起きて、握り返されたのだ。
それから少しして紡絆の瞳が、ゆっくりと開けられた。
もはや絶望的だったというのに、意識を取り戻した。
そんな久しぶりな紡絆の視界に初めて移ったのは、たった一人の家族の、たった一人の女の子の涙。辛そうで、嬉しそうで、喜びのあった表情。
まだ体に力も入らなくて、意識を保つだけで精一杯だったが、紡絆はそれを見るのが、何より嫌だったのだろう。
そんな辛そうではなく、純粋な喜びだけがあるような、もっと別の表情の方が似合ってると、そういうように、紡絆は笑って---
「た……だ、い……ま……」
帰ってきたことを知らせるように、安心させるように、いつもと何ら変わらぬ笑顔で、小都音に向かってそう呟いた。
いつもと、全く変わらない明るさで。
「遅い…遅いよ……おかえりなさい、お兄ちゃん…っ!」
それに対して、小都音は気づいていたのか。
文句を言いながらも、涙を流しながらも、帰ってきたことを喜ぶように、笑顔でまたそう返した---
〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
死ぬことはなく蘇ったが、ぶっちゃけウルトラシリーズ最終章レベルで瀕死。
どうやら本人が覚えていて掲示板で話した内容とは過去が違うようで……?
〇ウルトラマンネクサス
紡絆を救おうとしたが、何も出来ず。
ちなみに瀕死。
エネルギーも体力も最終章コスモスやメビウスレベル。
〇天海小都音
樹ちゃんと百合百合してたけど、樹ちゃんは過去の自分に似ていたらしい。
一部過去の話をしたが、謎は多い。
兄とは違ってメンタルは普通だが、全く曇らない兄とは違ってめっちゃ曇ったし未だにあくまで問題をひとつ解決出来ただけで何も変わってない。
少なくとも紡絆が意識を取り戻すまでは瞳に光はなかったとか。
〇三好夏凜
紡絆が答えを与えていたことに気づかないままだったが、無事に勇者部へ戻ってきた。
番外編(スパイラル)
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はよ書け
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先にゆゆゆ編完結はよ
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まだゆゆゆネクサスの難易度上がるってマ?
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スパイラルでシン・ウルトラマンも書いて♡
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戦闘シーン早くするんだよ