【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
めっちゃ時間かかった……日常編悩んだわ、かなり。
ということで今回から五話くらい超平和な日常編です。終盤入ったら日常編出来ませんからね。平和すぎて平成です(?)
それと予定変更して、次は夏凜ちゃんかも。
最後にアマプラでシン・ウルトラマン見れるから全人類視聴しろ。そしてULTRAMAN(ネクスト)見てネクサスにハマれ
精霊にもみくちゃにされて、数日後。
やはり紡絆の周りには精霊の数が凄まじく、まるで紡絆が精霊たちの主のようになっていた。
全ての勇者の力を使えると言われても不思議じゃないほどに周りは精霊ばかり。
が、流石に前回紡絆を殺しかけたのを反省しているのか、牛鬼のみが紡絆の頭の上に乗っていて、他の精霊たちは周りをふわふわ動いたり時々スキンシップをとるのみ。
何かしようものなら牛鬼が威嚇し、完全に精霊たちの上位関係が決まっていた。
果たして大赦の人が見れば、どんな光景に映るのか。
そもそも誰かスマホがこの場にないのに他の精霊たちが自分たちの主についていかずにこの場に滞在していることへツッコミを入れるべき状況だった。
「うーん……」
そしてその本人たる紡絆。
戦闘も特に訪れることなく、バーテックスやスペースビーストは現れることなかった。
そのため体は回復---なんてすることはなく、敵が現れなくても紡絆の肉体は
紡絆の相談役である彼ら曰く、蓄積されたダメージが回復速度を優に超えていてストーンフリューゲルを使おうが回復する体力が足りてない、という。
事実、紡絆はウルトラマンに変身する力も以前と変わらず少し増えただけで少ないままという実感があった。
あとはうどん二杯でやられていた紡絆だったが、肉体ではなく食欲は回復してきたというどうでもいいことだろうか。
そんな彼は、悩ましげに唸っている。
現状、勇者部の部室にいるのは東郷のみ。
人助け命な紡絆ではあったが、今回は肉体的にそろそろやばいのも理由のひとつで自ら辞退し、考えごとをしていた。
「……紡絆くん? 何か悩み事?」
「ん、ああ……いや、そうだな。東郷って明日辺り予定空いてるか?」
「? ええ、今は依頼も溜まってるわけではないし、これといった予定は組んでないわね」
「じゃ、二人っきりで出掛けよう」
「分かったわ---って、え?」
あまりにもの唐突で、あまりにもの日常会話のように自然に言われた東郷は固まる。
突然のデートの誘いをつい反射で受け入れてしまったが、東郷の内心はそれはもう慌てようが凄かった。
いくら紡絆本人にデートという気がなくても、だ。
(ま、待って。どうしていきなり!?
確かに紡絆くんと出掛けるのは嫌では無いしむしろ嬉しいけど、いくらなんでも突然すぎると言うか心の準備がまだ出来てないというか……明日、明日なのよね? と、とにかく帰ったらまずは---)
「東郷ー……って、無理かあ」
家に帰ったあとのことを考え、計画をすぐさま脳裏で組み立てる東郷はもう周りが見えておらず、呼びかけていた紡絆は諦めたように苦笑し、後でメッセージで予定とか伝えようと考えた。
彼にしては賢い選択である。
(約束、果たせなくなったら困るもんな。このままだと俺、いつまで持つか分からないし)
だがしかし、誘った理由は勇者部の者たちが聞けば間違いなく怒るような内容だった。
まるで後残りを残さないような、そのための行動。
まあ、そもそも秘密にしてる時点でいくら勇者たちの心の安寧のために黙っていてもバレたら間違いなくアウトなのだ。
そんなこんなで、紡絆は思考の渦に入った東郷から視線を外し、今も甘えてくる精霊たちを相手していた。
(そういえば、牛鬼は帰ってきてこうなったって考えたら分からなくもないんだが、なんでこんなに他の精霊も俺に懐いてるんだろうな?)
そのようなことを疑問に思い、一瞬考えてすぐに分からないという決断を出しながら---。
そうして次の日。
今回は約束を果たすために予定を少し考えてきた紡絆は、小都音に出掛けることを伝えてから東郷の家へ向かう。
紡絆はこの日のためにオシャレ---なんかするはずもなく、安定で普通にブライベート用の動きやすい服装だった。
しかし季節はまだ夏なのに薄着とはいえ長袖なのは、理由を知れば悲しくなるだろう。
紡絆の場合、腕も既に見せれないほどには酷い。
「あ……紡絆くん」
ただぼうっとして壁に背中を預けていた紡絆はその声に気づいてすぐに駆けつける。
東郷の服は以前と違って夏バージョンとなっており、水色なのもあって色合い的に涼しそうな夏に相応しい服だった。
「ん、東郷に合ってるな。何だかしっくりする」
「そ、そうかしら?」
「おう、見れてよかった」
若干、東郷は頬を赤める。
しかし紡絆は気づかないまま彼女の背後に回ると、車椅子のハンドルを持つ。
「じゃあ行こう」
「うん、それはいいけど…場所とかは…」
「前回のリベンジだからな。ちゃんと考えてきた」
「覚えてくれてたのね」
「当然だろ?」
「そ、そう……ね」
背後に回っている紡絆には分からないが、東郷は静かに嬉しそうな笑みを浮かべていた。
それは紡絆が約束を忘れることなく覚えてくれたから、だろう。
「よしっ!出撃だ」
それだけを言い、紡絆は走る---のは危ないのでせず、車椅子に力を軽く入れて前へ前進し始めた。
いつも歩く道とはちょっと違う、少しの遠出。
東郷がチラリと背後を見れば、紡絆は
(……この笑顔は安心出来るのだけど)
最近、自分の中で感じてきた違和感。
東郷はそれがなんなのか分からない。
しかし今はもう深く考えるのはよして、彼との外出を楽しもうと思考をやめた。
「紡絆くん」
「んー?」
名前を呼べば、紡絆は反応して首を傾げていた。
言動が完全に一致していて、彼らしいと思わず笑いそうになるのを堪え、疑問を投げかける。
「どこに行くの?」
「まあ……いいか。えっとだな、とりあえずイネスにあるゲーセンに行こうかなと。ほら、それだったら東郷も気を遣わずに済むし、息抜き出来るだろ? ちょっと気になるものもあったし」
「なるほど……」
「で、それからはあんまり考えてなかったんだが……飯食ってイネスのある店に行って、帰るってのが一応のプランだ」
後半がガバガバだったものの、紡絆は紡絆らしく考えてきたようだ。
確かに紡絆はデートと思ってないとはいえ、楽しめる場所なら遊園地やら動物園やらなんやら行くだろう。
カラオケと海、映画は以前行ったことがあるから論外として。
彼ならばプラネタリウムとか自然博物館とかが一番いいかもしれない。
しかし東郷は見て分かる通り車椅子。
仕方がないとは言えども、何も思わないほど彼女の心は繊細じゃないわけがない。
必ず、何かしら思ってしまう。
故に、気を遣った紡絆は学生でも気軽に行けて、基本色んなのがあるイネス---つまるところイオンに行こうと思ったわけだ。
「確かに……たまには、いいかもしれないわ」
「せっかくの休日なんだから目一杯楽しめる場所じゃないとな。あんまり分からないなら俺が教えるし!」
「ふふふ、そうね。じゃあ期待しちゃおうかしら」
人助けをよくしている紡絆だが、これでもゲームはしないという訳ではなく、前世でもゲームを一緒にしていた記憶がある紡絆は割と自信があるようで胸を張って言ってのける。
その姿を見た東郷はただ微笑む。
「よーし、じゃあ日差しが強くなる前に行こう!」
「えぇ」
まだ秋の季節ではなく、太陽の日差しは強い。
紡絆には分からないが、女の子にも色々とあるのだろうと思いながら、紡絆はただ安全運転を心掛けながら前進し、他愛もない話をしながらイネスへ向かう道を向かっていく。
もちろん流石に徒歩だけでは体力的には問題なくとも現状肉体的には問題があり、何より時間がかかるのもあって数分電車に揺れて降り、また歩いたりなどはする必要はあるのだが、そこは紡絆でもどうしようも無いことなので、素直に諦めるしかない。
---そうして暫くし、イネスへと辿り着いた二人。
まあ現代人ならば見慣れているもので、特別感慨深く思うこともないしショッピングモールとは言えど、驚嘆することでもないので、普通に入っていく。
だが、東郷の胸の内だけは違った。
(……なにかしら、なんだか懐かしいような……なにか足りないような、そんな気がする。
気のせい、かしら…ううん、きっと気のせいね)
入るとき不思議な感覚を味わい、違和感があった。
しかし考えても分からず、それが明確に何なのかが分からない東郷にはあくまで曖昧な違和感を感じ取っただけで、その思考はすぐに掻き消される。
「おー!ショッピングモールって感じ」
「ショッピングモールだもの。当然でしょう?」
「あはは、それもそうか!」
前言撤回。
現代人なくせに当たり前なことを馬鹿みたいなことを叫ぶ紡絆は例外だった。
けれどもそんな紡絆に思考は掻き消されたが以前、二人で出かけた時と何ら変わらぬ、似た反応をする紡絆を東郷は微笑ましそうに見つめる。
当の本人は笑うだけなのだが。
「それにしたって、色んな店もあるし上を見上げたら高いし、そこら中から来る香りが食欲をそそってくるな……。ああぁ! そういえばご飯考えてなかった…!」
「大丈夫よ。そう思って、ちゃんと用意しておきました」
「読まれてた!?」
今更ながら思い出す紡絆だったが、分かってたというように弁当箱を取り出した東郷の姿に紡絆は驚く。
分かりやすい、というのは要因のひとつだろうが、目の前にいるわけでもないのに何故彼女はわかってたのだろうか。
まぁ、仮に考えてたとしても弁当があると分かれば紡絆は必ず食べるとは思うが。
「これくらいなら紡絆くんや友奈ちゃんのことはだいたいお見通しよ?」
「うえ、いやー敵わないなあ。けど東郷の手料理が食べられるってのは嬉しいし、いいか。
東郷が作る料理は本当にいくらでも食べれそうなくらい美味しいし毎日食べてもいいくらいだしな!」
「そ、そう……? それは作りがいがあるわね…。ありがとう」
「おう」
他の人が聞けば口説いてるというかもはや告白に近いことを喋ってるのが分かる……はずなのに、東郷は流石に理解してるのかドキッとしながら顔を赤めるだけで激しく取り乱したり誤解するようなことはなかった。
ただ純粋にそう思ったからなのだろう、と。
しかしこれが東郷だから良かったものの、もし風や後輩の樹、まだ日の浅い夏凜ならば誤解していたに違いない。
ちなみに友奈なら恐らく無意識に互いに告白に近い発言をするか互いにダメージを受けるか、といった感じだろうし小都音なら普通に受け入れながら気にせずに抱きついたりするだろう。
「とりあえずゲーセン目指すとしますかっ」
そして今まで見渡すだけで動いてなかった紡絆はフロアガイドの図で場所を確認すると、ようやく動き出した。
自分一人なら確認せずブラブラ探していただろうに、ちゃんと場所を確認して動くのは東郷のためか---
ゲームセンターに辿り着き、中へと入る。
そんな紡絆と東郷を出迎えたのか騒がしくも色んな音や音声だった。
少しやかましく感じるほどの音量。
しかしまだ昼前だと言うのに多くの人間がそれぞれ別の機種で色んなゲームをしていて、娯楽施設らしい光景だ。
これからますます人が増えていくだろうということは想像に容易い。
「さて、何からやろうかな」
「色々あるのね…」
「俺も全部は知らないけど、色んなジャンルがあるからな。何かこれがやりたいとかあるか?」
「うーん、こういうのはさっぱりだから…」
「じゃ、適当に行くか!」
あくまで行き先を考えただけでこれがやりたいとかなかった紡絆は、車椅子を押していく。
周りを見渡せばカードゲームだったりUFOキャッチャーだったり音ゲーだったりカーレースだったり写真を撮るやつだったりメダルゲームだったりなどなど、時間を潰すにはうってつけだろう。
「そうだな、東郷でも出来そうなのって言ったら---」
ある程度は前世の記憶がある彼からすれば初見プレイ余裕だが、初めてやる人には難しいといえる。
そのため考え、紡絆は目的のものを見つけるとそこへ向かった。
今は人がおらず、空いているのですぐに遊べるだろう。
「これは?」
「HUNTER OF THE DEAD。いわゆるガンシューティングゲームかな?迫り来る
東郷の射撃は舌を巻くくらいに凄いから、ゲームでも可能なんじゃないかって」
紡絆が連れてきたのはガンシューティングゲーム。
ゾンビを撃ち殺し、最終的には脱出が目的のゲームだ。
しかし当然ボスのような存在もいるわけで、ヘッドショットや弱点をどれだけ正確に撃てるかが掛かっている。
「ふふ、ありがとう。でもゲームでも出来るかと言われると、分からないわ」
「まあ、それはそれで。とにかく楽しむことが大事だからさ」
あくまで紡絆は楽しむことを重視しているだけで勝つことためにやるわけじゃないのか、そんなことを言いながらお金を入れていた。
するとゲームがタイトル画面から起動し、二人プレイを選択するとホラー感溢れる難易度設定の画面へ移行していた。
最初なのもあってNormalを選択し、物語が始まる。
簡単に言えば金持ちの貴族が開いたパーティーにゾンビハンターの二人が任務で来ており、その理由が貴族がゾンビを使って何かを企んでいるという情報を掴んだためらしい。
そして他の貴族たちを巻き込んだ生き残りのゲームとしてゾンビを屋敷から放たれたため、主人公はそれを防ぐのと元凶を叩く---というストーリーだとか。
世界観的には裏の世界に生きるものはゾンビの存在を知っているというところか。
それからまあ、簡単な操作方法は載っているがチュートリアル戦闘もなしに始まるわけで、いきなり来たゾンビにウルトラマンとして戦ってるのもあるのか紡絆は意外と簡単に対応し、地味に上手かった。
そんな紡絆よりも凄いのが、東郷だ。
彼女は紡絆が多少外す場面があるにも関わらず百発百中と言えるほどに弱点を正確に撃ち抜き、動じることなくノーダメージで進んでいく。
射撃の腕がゲームでも発揮されていることに紡絆は驚くが、慌てて向かってきたゾンビに対処しようとしたら東郷が紡絆にダメージが入る前に撃ち抜く。
フォローもばっちりで、紡絆が一体倒してる頃には五体以上撃ち抜き、徐々にヘッドショットが狙うのが難しくなっていっているというのに、そんなことは関係ないと言わんばかりに撃ち抜いていた。
そんなふうにあっさりと進み、本来ならNormalでも難しいだろうになんだかんだで楽しみながらステージのラスト。
つまりはボスと戦うことになったのだが、二人プレイに相応しく連携が求められる部分が出てきていた。
弱点の同時攻撃、相手の攻撃する箇所を撃ち抜いて妨害、攻撃する人といった感じで分かれる必要も出てくるのだが、そこは流石というべきか紡絆が何とかゲームをやってきた経験で追いつくっていう感じで合わせ、ボスのHPが黄色ゾーンへと入る。
最後の足掻きと言わんばかりに攻撃が激しくなり、ムチのような触手までも出してくる。
ただでさえゴリゴリマッチョな肉体の攻撃はやばそうなのに触手まで出してくるのは、正直リアルに居たら戦いたくないレベルではあるのだが、どれだけ攻撃が激しくなってもチャンスや相手が怯むタイミングがあれば東郷が一度も外すことなく弱点を撃ち抜くため、ボスは無惨にもプレイヤーたちにダメージを一度も与えることが出来ずに殺られてしまった。
ラスボスというわけではないので二回戦目に入ることもなく。
いくら低難易度とはいえ、初心者に完封される哀れなボスの姿があったとか。
ちなみにスコア表示は圧倒的に東郷が上だった。
「いや、想像以上だった……流石東郷だなぁ、すごかった」
「初めてしたけど、結構やれるものなのね。それに面白かったわ。色々と考えさせられて、その場ですぐに戦略を立てなきゃいけない場面もあったし」
「楽しめたならよかったんだけど普通は無理だと思うんだが…。多分東郷が異常に上手いだけだって。ほんと、戦いの時もそうだけど東郷がいるって思うだけで頼りになるというか安心感が違うよ」
「…もう、そんな褒められたら照れるわ」
紡絆に褒められて東郷は満更でもなさそうに笑みを浮かべる。
しかし紡絆が言ってることも最もで、一体どこに初心者で全ての敵にヘッドショットを当てる初心者がいるのか。
弱点が変わっても外すことなく当てるし、いくらNormalと言えども上手すぎるといえる。
むしろ紡絆が邪魔になってるのでは、と思うくらいには彼女がダメージを受けそうになる場面すらなかった。
もしかしたら、いつもは守れる側だからこそ、いいところを見せようと頑張ったのかもしれないが---紡絆がそんなことを察せられるはずもなく。
「東郷、ちょっと一度一人でやってみてくれないか?」
「? ええ、いいけど」
そうして紡絆はちょっとした好奇心で一人プレイに変え、最高難易度を提案して許可を貰ってからそれを選択した。
確かにノーマルはある程度ゲームをしているプレイヤーならノーダメージは難しくともクリアは余裕で出来るだろう。
しかし最高難易度となれば攻撃の激しさも敵の量もHPも違うわけで、果たしてどうなるか気になったのだ。
故に紡絆は彼女の傍で、そのプレイを見ることにした---
ENDと書かれたストーリーを見終わり、スコア表にPERFECTと表示されていた。
難易度が最高だというのにソロプレイで最高ランクを取り、紡絆はその画面を見て目を瞬きさせていた。
「ふぅ……さすがに疲れちゃった」
「マジか……」
あくまで好奇心でやったというのに、幾分か初見殺しと言われる場面があったため危うい部分はあったが、彼女はノーダメージで乗りきったところが、ラスボスなんて蜂の巣にされていた。
どっちかというと予想外な場面から出てきて攻撃してきた雑魚の方が苦戦したしダメージが入る可能性があったくらいだ。
結局は当たる前に雑魚は倒されたのだが。
しかし流石の東郷も疲れたらしく、一息ついていた。
「おつかれ、まさか本当にクリアするとは思わなかったけどいいもの見せて貰ったし、かっこよかった」
いつの間にか買ってきていたのか、紡絆はペットボトルのお茶を差し出しながら東郷にそう告げていた。
「ありがとう。紡絆くんの前だもの、情けないところは見せられないって思ったら…自分でも驚くくらい出来たの」
「そっか、逆に驚かされまくったな。プレイしてる東郷に見とれてたくらいだ。でも俺はガンシューティングゲームが上手いっていう東郷の一面を新しく知れて嬉しいぞ。また新しく東郷のことをよく知れたってことだからな」
「そ、そうね……私も自分の知らないことを知れたわ」
一切の恥ずかしげもなくそんなことを言ってくる紡絆に逆に東郷が恥ずかしくなるのだが、努めて冷静さを保ちながらそう返せば、紡絆はただ笑みを浮かべた。
「じゃ、そろそろ別のに行こうか。今度はもっとこう、のんびりと出来るやつにしよう」
「そんなのもあるの?」
「たぶん! 見たら分かる!」
流石に紡絆は全てのゲームを知っている訳では無いので自信を持って言えないが、ゲーセンからあるだろうと探すことにした。
なければUFOキャッチャーだったりメダルゲームをすればいい、と。
そういった感じで、少し疲労した東郷をさりげなく気遣っていた。
5:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra
ということで安価しよう!!
次にやるゲーム。分からないと思うからみんなの知ってるゲーム名言ってくれたら似たようなのやる。わからないやつは聞くよ。
ただゲーセンに似たようなものがないものでも何とかするから、とりあえず>>25
それとちょっと予定足りないから全部終わったあとにやること>>34
6:名無しの転生者 ID:zWBkn6Dd1
いや唐突スギィ!
何の説明もなく始めるなぁ
7:名無しの転生者 ID:7Zq87zcwn
カードゲームやろうぜ、カードゲーム!
8:名無しの転生者 ID:npznZXvuc
ぷいきゅあ!ぷいきゅあー!
9:名無しの転生者 ID:GS6CMjoA+
フュージョンファイトないやんけ!!
10:名無しの転生者 ID:0GPdMy8Lw
ガンバライジングもないですねえ!似たようなのはあるっぽい?
11:名無しの転生者 ID:EO+KTv8vu
ホラーゲーム
12:名無しの転生者 ID:J9YDswYaE
脱出ゲーム
13:名無しの転生者 ID:5hcOaQMjJ
格闘ゲーム
14:名無しの転生者 ID:O1qEyZUL2
パチ○コ
15:名無しの転生者 ID:g2r2bC9Sh
パズルゲーム
16:名無しの転生者 ID:n+H8/Dvyk
なぞなぞゲーム
17:名無しの転生者 ID:jsiRfWqQj
ボンバーマン
18:名無しの転生者 ID:PtJsKaH72
配管工のキャラや色んなキャラたちがいるレースゲーム
19:名無しの転生者 ID:56x5kiuuC
ブラックジャック
20:名無しの転生者 ID:JcWBC/v5T
UNO
21:名無しの転生者 ID:QBx6ma8Rg
麻雀
22:名無しの転生者 ID:x6/JWu6Tk
スロット
23:名無しの転生者 ID:u3JB7fS42
おい待て、イッチが頭使うゲーム出来るはずがないだろっ!
あ、バイオで
24:名無しの転生者 ID:DnywMNKM8
ばっか!やめろ、今書き込みすると変なのになるだろ!
ギャルゲー
25:名無しの転生者 ID:/4EfYrwBz
太鼓の達人
26:名無しの転生者 ID:AhQnTzKjL
エロゲー
27:名無しの転生者 ID:5Hi8L9PvI
UFOキャッチャー
28:名無しの転生者 ID:BWvtnNLPm
海デート
29:名無しの転生者 ID:Pkhxhx5rF
映画館
30:名無しの転生者 ID:FkmfczPba
水族館
31:名無しの転生者 ID:JGO5gtOX6
動物園
32:名無しの転生者 ID:ikO+HJCvF
ホテル
33:名無しの転生者 ID:oA5Jcc2LO
ファミレス
34:名無しの転生者 ID:alHUE1qo0
その辺、なんかこう有名スポットとか行く
35:名無しの転生者 ID:6nm+KtMZt
ボウリング場
36:名無しの転生者 ID:SG+6JLpV/
あっ……っぶねぇええええええ!
流石に考えろよ、安価するにしても指定が短すぎるだろ!
イッチがピンチな時レベルに速すぎるんだよ!
37:名無しの転生者 ID:rvyFFzDt4
おい誰だよ、何個かとんでもないやつあるぞw
38:名無しの転生者 ID:4P8XHJ/cG
>>26が一番やばすぎる
39:名無しの転生者 ID:RY1ykwZXg
>>32もなんだよなぁ。
ホテルってなんのホテルなんですかねぇ…
40:名無しの転生者 ID:PxsGW7gGT
ギャルゲーとエロゲーに挟まれるって…ワンチャンどっちかになってたのかよ。空気凍りそう、ついでにイッチの性格からしたらヤンデレルート行きそう
41:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra
>>36
それはすまん、こっちの時間的には一般的には仕事だからもっと遅いかと思ってた。まさかこんな早く埋まるとは…もっと空けるべきだったな。危うく死ぬところだったわ
>>25
>>34
飯終わったらやるわ。東郷さんと小都音の飯は美味いからすき
42:名無しの転生者 ID:7xrRMIbaH
俺にもくれ
43:名無しの転生者 ID:7IHRt9eMZ
うらやましい
44:名無しの転生者 ID:rjtyAIVTJ
今までが嘘のように平和だなぁ……
いつものように東郷の作った昼ご飯を食べ、午後もゲームをするために紡絆は目的地を目指して歩いていく。
「今度は何するの?」
「音ゲー、いわゆるリズムゲームだな」
「なるほど……これで叩くのね」
バチと呼ばれる太鼓を叩くための棒を持って納得したように東郷が頷く。
音ゲーならば東郷はシューティングゲームより上手く出来るかと言われれば分からないが、やってみないことには分からない。
「じゃ、やってみよう」
「うん、頑張るわ」
ということで、さっきと同じように二人分の金を入れて安定の二人プレイを起動した紡絆は、和太鼓の形をしたキャラが喋り、曲をどうするのか、難易度の選択などを言ってくれる。
「曲はなにか指定とかあるか?」
「よく分からないから…紡絆くんに任せるわ」
「分かった、じゃあ---」
ホシトハナを選択し、紡絆と東郷は難易度をふつうで選択した。
かんたんではなくいきなりふつうなのはちょっとした挑戦なのだろうが、ここで思い出して欲しい。
紡絆はカラオケで一体何をしたのか、それを考えると単純明快で、いくらタイミングゲーといえど---
紡絆に音感はなかった。
ふつうですらクリア出来ないクソザコ結果を叩き出し、一方の東郷はミスがほぼなく、普通にクリアしている。
「………」
「に、苦手なものは人によっては違うわ。紡絆くんはその、カラオケも苦手だったものね……」
初心者に慰められる経験者の図。
はっきりいって、情けない。
まあ、バチだと慣れてなければ難しいといえば難しいのだが、それにしたって酷すぎる。
「り、リベンジだっ!」
「……そうね」
諦めの悪い紡絆は今度は東郷に任せ、曲を選ばせると……まあ予想通り軍歌になったが、紡絆は何故か難しいを選ぶ。
そして当然の如くクソザコ結果を叩き出す。
それでも紡絆は諦めることなく、もう一度プレイ。
別の曲に変えて、今度は大人しくかんたんに変更。
これなら流石にクリア出来ると思われたのだが、もはやわざと間違えてるのではというくらいにミスである不可を連発した結果、クリアすることは叶わなかった。
それでも、それでも今度こそと難易度を上げたり下げたりしてリベンジ。リベンジ、リベンジリベンジリベンジリベンジ---
「………」
「………」
呆然と画面を眺め、果たして何回したのか、ついに疲労も含めて地面に両手を着いた紡絆。
orz…といった様子が見て取れる。
流石の東郷も何を言えばいいか分からず、苦笑するしかなかった。
本当のことを言うと、紡絆は下手くそではない。
(……俺、前世の頃は音ゲーちょっとは出来たんだけど感覚がおかしい…っ!)
そう、紡絆はあくまで
しかし紡絆の肉体はウルトラマンによって強化され、反射速度、つまるところ反応速度は人として無意識にやってしまうのだから、制御が出来る部分では無い。気になるものがあったらつい反応してしまうのと同じ現象。
だがそれでも普通ならばミスることはないはずが。紡絆だけは違うのだ。
簡単に言えば、紡絆の反応速度が異常に高すぎるせいで良の部分が出るよりも早く腕が動き、ちょっとタイミングが早い状態になってしまっている。
それに気づかない紡絆は例え何回やろうとも、ミスを連発する。
何気にウルトラマンに強化されている弊害が出ている、と言うべきか。
「ぐぬ…悔しいが仕方がない。あんまり居座ってもあれだし、そろそろ移動しよう」
「私はいいけど……」
「ゲームは一時間したら休憩しろって言うからな。ちょっと休憩して、またその辺のゲームやってから最初の目的に行こうと思うんだ」
「そういえば、イネスの店に行くって言ってたけど…ここじゃないわよね。その店は?」
「ああ、それはだな……行ったらわかる」
音ゲーは目と腕に疲労が溜まってしまう。
それ故に流石に切り上げた紡絆は、最初の目的だったある店に向かうために一度休憩を挟み、メダルゲームと、ついでに東郷が目を輝かせて見ていた戦艦のプラモデルを弱いアームだというのにUFOキャッチャーで一発取りするとかいう何気にとんでもないことを成し遂げてから、その店へと向かう。
「ここは……」
初めて訪れた店。
そう、そのはず。
けれども何処か懐かしく、瞳に熱いものが溜まっていくのを東郷は感じていた。
そこにまるで、大切な思い出があったかのように。
「前一人で来た時に美味しくてさ、でもこの店もう潰れるみたいだから……最後に約束を果たすついでに来ようって思ってたんだ」
お店を見ながら紡絆が語るのは、ジェラート屋だった。
理由は分からない。
ただ売上が厳しくなって畳んでしまうのか、移動してしまうのか、それとも単純にやめたくなったのか。
そんなのは常連でも働いてるわけでもない紡絆には分からないのだ。
だからこそ、最後の思い出作りのために来た…というべきか。
「東郷はどうする?」
「………」
「とうご---どうかしたのか?」
話しかけても返事がなく、ただ東郷は寂しげに、悲しそうな目をしていた。
それを見て、その表情を見るのが嫌だった紡絆は、前に行ってしゃがむことで彼女の背に合わせ、正面から手を握る。
すると東郷は気がついたように紡絆を見る。
「…ッ!? ご、ごめんなさい。私ったら……」
「別にいいけど、何かあったら言ってくれよ?もし悩みがあったり、辛いことがあったなら、俺がこうして居るからさ!」
眩い笑顔を浮かべ、彼の笑顔にはなにひとつの曇りがない。
ただ不思議と安心出来る方の笑顔で、東郷はそっと手を握り返していた。
「…うん。ちょっと、知らないはずなのに懐かしく思っちゃって」
「……そっか、失った記憶の中に来たことがあったから思い出してるのかもな。それが辛いことか嬉しかったことか、楽しかったことかは分からない。
なら今は美味しいものでも食べよう。そうしたらきっと、悲しくても良い思い出に変わるよ」
「…ええ、そうしましょう。紡絆くんも……あ」
「……ん?」
記憶に関しては紡絆も失ってはいるが、深くは言えない。
だからこそ、それがどうであれ、新たな思い出作りをしようと言いたいのだろう。
そしてふと、何かを思い出したように東郷は固まった。
相変わらず何も分からない紡絆は首を傾げるが、東郷は頬を紅潮させると、慌てて手を離して握っていた手を自分の手で隠すように覆っていた。
「???」
しかしこの男、何も分からない。
時々鋭さを発揮する割にはこういうことに関してあまりのもの鈍感すぎてラノベ主人公のように気づかないままひたすら疑問符を浮かべていた。
「つっ、紡絆くんは何味にするの?」
「おぉ?そうだなー俺は普通に…うん、メロンとこの…なんだ、DXブルーNEXTウルトラ青春時代味ってのに挑戦しようかな。なんかすごそう!」
「そ、そう……」
慌てて話を転換したお陰か、紡絆は気づくことはなかった…というか多分気づくことは絶対なかったが、今のうちに東郷は冷静さを取り戻す。
その際に紡絆が変な味を頼む気満々だったが、まあ本人はワクワクといった感じで好奇心に満ちてるのだからいいだろう。
名前からは全く味が予想も出来ないのだが。
「東郷は?」
「私は……」
無論、何にするか聞けば聞かれることは当然であり、何にするか聞かれた東郷は一番最初に目に止まったのは宇治金時味。
けれども紡絆に当てられたのか、東郷は宇治金時ではなく、別のを選ぶことにした。
「そうね…このしょうゆ味がいいわ」
「分かった、じゃそれで買いますか」
特に何かを思うわけでもなく、紡絆は注文すると、お金を払ってから受け取って東郷にしょうゆ味を差し出してから自分が頼んだものを持つ。
ただ値段が他のより高いのもあって、DXブルーNEXTウルトラ青春時代味は高さも量もかなりあり、色とりどりな…それこそ虹の如く色んな味が詰まっている。一番目立つのは銀、赤、青だろうか。
むしろよく落ちないな、っていうレベルだった。
「はー美味しそうだなぁ」
「…落ちないか心配になるわね」
「大丈夫大丈夫、いざとなれば口に含むから」
それはそれで味がとんでもないことになりそうなのだが、落とさなければいい話なので問題はないだろう。
今はそれよりも、食べることが最優先。
席に座り、手を合わせる…のは流石に危なくて無理なので、口でいただきますといった紡絆は早速DXブルーNEXTウルトラ青春時代味を口に含む。
「予想よりも美味い!」
「本当ね、こんな美味しいお店が無くなるなんて、残念で仕方がないわ」
うんうん、と頷きながら色んな味が楽しめ、味を合体させたり普通に個別で食べたりと楽しみを見出しながら笑顔を浮かべて食べていく。
紡絆の姿を見てるだけで、やけに美味しそうに思えるくらいには彼は美味しそうに食べていた。
だからか東郷は口角が自然と上がり、紡絆に見とれながら自分のしょうゆ味を口に含んでいく。
「……んぇ?」
ゆっくりと味わうように食べていた紡絆はふと視線に気づき、東郷と視線が合った。
暫く考え巡らせ、何を思ったのかハッと気づいたようにその手に持つジェラートを東郷に差し出す。
「え?」
「ほら、東郷も食べてみたらわかるって! 見た目より全然ちゃんとしてるから!」
「え? え?」
ニコニコ、とただ純粋な笑顔で差し出している紡絆だが、東郷はジェラートと紡絆を見つめ、混乱した。
しかし紡絆を見ても彼はただ笑顔で居るだけで気づいている様子なんて欠片もなく、東郷は悩んだ末に、おずおずと言った感じで口を開く。
「じゃ、じゃあ一口だけ……あむ」
髪を耳にかけて抑えながら豪快にではなく、女の子らしい小さな口で一口だけ含むと、東郷は顔を離した。
「美味しいだろ?」
「そう……ね」
口元を抑えて食べる東郷の返事を聞いて、紡絆は満足そうにまた食べていく。
だが東郷の耳は真っ赤になっており、紡絆はやはり気づかない。
この男、無能すぎた。
(あ、味が分からない……。だ、だって今のって……)
もう中学生。
それほど年齢が上がれば今の行為がなんだったのか普通は分かるもので、理解している東郷はただ恥ずかしさが込み上げてくる。
今も普通に食べている紡絆が異常なだけで、彼は間違いなく気づいてなかった。
これは世間一般で言う、間接キスと呼ばれるものだと。
自覚すればするほどに顔に熱が集まっていく東郷は、誤魔化すように自身のジェラートを口に含んでいくのだった---。
DXブルーNEXTウルトラ青春時代味を食べ終えた紡絆としょうゆ味を食べ終えた東郷だが、紡絆は東郷が残り少ないしょうゆ味を食べている間に溶けないように敢えて頼んでなかったメロン味を追加で購入し、いざ席に着いてメロン味を食べようとしたところで、ふと座らずに止まった。
「紡絆くん?」
「ちょっと行ってくる!」
座らない紡絆に何かあったのかと呼びかけるが、彼はそう一言だけ言い残し、紡絆はメロン味のジェラートを手に強化された身体能力を活かしてどこかに走っていく。
あまりにもの速さに思わず目を数回瞬きさせる東郷はすぐに視線で追うと、紡絆は既に転んで泣いている幼い男の子と慰める母親の元へ居た。
何かを話し、紡絆は男の子の頭を撫でると手に持っていたメロン味のジェラートを差し出す。
すると男の子は泣きやみ、母親が何かを言っているようだが紡絆は首を横に振って、頭を下げていた。
視線を下げてみれば、男の子の転んでいた近くには紡絆が持っていたジェラートと同じ味のものが無惨にも落ちており、無くなってしまったから泣いていたのだろう。
笑顔になって手を振り、東郷の元からでも聞こえるほどの大きな声で感謝の言葉を述べる男の子と申し訳なさそうに紡絆に頭を下げて男の子の手を繋ぎながら離れていく母親の姿を、紡絆は手を振っていた。
東郷からは見えないが、彼がどんな表情を浮かべているのか考えなくても分かる。
だからか、結局何も変わってない姿に自然と嬉しくなって、東郷は微笑んでしまう。
その後、紡絆は男の子が落としたであろうジェラートを片付け、軽く掃除してから戻ってきていた。
「ごめん、一人にさせちゃって」
戻ってきたと見れば、彼はすぐに東郷に対して謝罪した。
「ううん、別に謝るようなことじゃないわ。
おつかれさま、紡絆くん」
「そっか……」
謝るようなことでもないのに謝る紡絆に東郷は気にしてないというように首を振り、紡絆は別に苦でも思ってなさそうに頷いた。
(結局のところ、紡絆くんはいつも変わらないのね…困ってる人が居たら助けて、誰かを笑顔にする。
そんな彼の姿を見ていると、私も嬉しくて安心が出来て、彼は彼のままなんだなって思えちゃう)
ただじっと見つめ、何も言わない東郷に紡絆はきょとんとするものの、考えても分からないからか、紡絆は再び車椅子を動かすために背後に立ってハンドルを握る。
「それじゃあ時間も時間だし、そろそろ帰ろうか」
「そうね、もう気がつけば夕方なのね……」
「だなー」
あまり出るのが遅くなれば、夜になってしまう。
夜になれば当然危険も多くなってしまうため、そうして紡絆たちはイネスを去っていく。
帰りは行きと変わらず、同じようなルートで戻っていくと、既に空は茜色に染まっていた。
あとは帰宅するだけだが、紡絆はちょっとだけ寄り道することにした。
「ゲーセンってあんまり経験ないと思うけどさ、楽しかったか?」
「ええ、普段来ないところだから新鮮さもあったし…なにより紡絆くんと一緒だから」
「それはよかった」
まだ季節的にも暑いが、強い夕陽に照らされる帰り道を急ぐわけでもなくゆっくりと車椅子を押しながら歩いていく紡絆は東郷の返答に嬉しそうに顔を上げたまま笑みを浮かべる。
「さてっ! 暗くなる前に今ならまだ間に合うから、最後に一つだけ行きたい場所があるんだが、いいか?」
「もちろん、任せるわ」
「よっし、じゃあ行こう」
少し急ぎ気味に、それでも安全第一に車椅子を紡絆は押していく。
もう少しで太陽が完全に沈んでしまうが、その前に行きたいのだろう。
紡絆は数分かけて目的地へと走っていき、流石の彼も歩くことすら厳しい時があるくらいには肉体ダメージが残り続けてるからか体力の消費が激しいが、何とか一時間経つことなく辿り着く。
上を見てみれば、目的地に向かうためには大量の階段を昇る必要があった。
しかし周りには誰もおらず、流石にわざわざ来ようと思っていた人間は居なかったらしい。
「ここって……」
「今ならまだいい景色が見れるからな。ということで、ちょっと失礼」
「えっ? つ、紡絆くん!?」
四国民ならば分かるであろう場所に来て、階段を見上げた東郷は理解したようだが、車椅子でとなるとなかなかに難しい。
それに暗くなってしまえば危ないし時間がないため、人が居ないことを良いことに得意の身体能力を活かせるように紡絆は東郷の前へ行ったかと思えば彼女を抱える---お姫様抱っこで。
「は、恥ずかしいわ。それに重たいでしょうし……」
女の子の憧れ、と言えば聞こえはいいだろう。
しかし人一人分の体重を人間が支えるとなるとかなりキツイ。体重が軽くても、人を抱える時点で疲れはする。
何よりも東郷にとって、体は密着する上に顔が近く、途方もない羞恥心が襲ってくる。
「別に東郷は重たくないって。むしろ軽いよ。大丈夫、すぐ終わるから!」
「す、すぐ終わるって……。うう……わ、分かったわ」
「おう、しっかり掴まっててくれよっと……ッ!」
一言残し、東郷が首に腕を回したことを確認した紡絆は階段を見ると、両足に力を入れて一気に跳躍する。
一体階段をいくつすっ飛ばしたのか、ぴょん、ぴょん、とうさぎのような足取りで跳躍を繰り返し、紡絆はあっさりと階段を昇り終える。
跳躍数はたった四回。
たったの四回で、270はある階段を昇り終え、三次元で言う高屋神社---有名スポットの一つである天空の鳥居に辿り着いた紡絆は東郷を抱えたまま、背後へ振り向く。
「あ………」
そうなるとさっきまで見ていた階段を振り返るわけで、とても小さくなったかのように見える街並み。
水平線に沈んでいく太陽。
その太陽の光は海に反射され、キラキラと夕陽の色を写す。その光景はとても綺麗に思えて、とても幻想的に見えた。
「やっぱり、思ってた通り。この時間帯がいいな」
「………」
目を細め、沈む太陽を眺める紡絆の瞳には果たしてどれだけの距離、どれだけの景色が映っているのか。
少なくとも彼自身も綺麗だと感じてるようで、口角が自然と挙がっていた。
そんな幻想的な景色だというのに、東郷はちらりと自身を抱える紡絆の姿を見つめる。
未だに慣れたわけでもなく恥ずかしくないわけではないが、ただ景色よりも紡絆から目が離せなかった。
(これほどくっついて景色を眺めるなんて、胸がドキドキする……でも、不思議。男の人が苦手って訳では無いけれど、こうしていると安心出来て、ああ、ここに彼は居るんだなって、近くに居るんだなって思えて、嬉しい…それはきっと紡絆くんだからで、はしたないかもしれないけどこうして居たいって思う…。
それに彼に抱えられてると、彼のイメージ通り、光のように暖かい)
嫌な感じもなく、ただ胸に込み上げてくる暖かな感情を感じながら、東郷は紡絆を見ていた。
実際彼は別に邪な考えがある訳でもなく、ただこの景色を共に見たくて行動しただけなのだろう。
事実、紡絆は---
(はへー綺麗だなー。最近は何かと大変な状況だったからなあ……前の世界でもある情報が流れてパニックになってたし。
まあ、前世の世界には
とても楽観的な思考で街並みを眺めていた。
果たしてこの状態の彼の何処に邪な考えがあるといえるのか。
そうして僅かに保っていた太陽は沈み、街に光が照らされる。
次々と建物や街灯の光が点灯し、高い場所から眺める街はとても輝いていた。
明かりが灯される瞬間なんて、こんなふうに見れるものではない。
人々の暮らしが分かるような、人類が進歩してきた技術は人工的な明かりとはいえ、自然に負けないほどに輝いている。
例えスペースビーストやバーテックスが存在していたとしても---人は負けないのだ、と。
自然と、紡絆の目は遠くを見るかのようになっていた。
「………」
無意識に、東郷は首元に回していた腕に力が入り、体がより密着する。
さっきと打って変わって、東郷の表情には明らかに不安があった。
(……最近見せるようになった、笑顔。その中でもふとした時に見せる表情が……怖い。まるでどこかに行くような、行きそうな、そんな不安に駆られる。でもこうしたら、こうしていたらきっと……)
こうしていれば、感じてられる。こうしていれば、近くに感じられて、傍に感じられて、温かくて、確かな存在を確かめられる。
故に恥じらいを捨てて、東郷は抱きつくようにしていた。
何があっても、離さないと言うように。
しかし些細な力の変化に気づくともなく、一分くらいだろうか。
紡絆は眺めるという行動をやめ、東郷に視線を向けた。
「帰ろうか」
「……うん」
「じゃ、また離さないようにな!」
いつものように、先程の様子が嘘のように元通りの紡絆の様子に東郷はほっ、と胸を撫で下ろし、言われた通りにすると、やはり紡絆は凄まじい身体能力を活かして着地していた。
そしてそっと東郷を車椅子に座らせる。
「綺麗だったなー」
「うん、普通は見ることが難しいし登るのも大変だから……紡絆くんのお陰」
「一人で見るより二人、二人で見るよりみんなで見た方がより感動出来たりするものだからな、気にしないでいいって。
まあ、流石に腕が足りなくて抱えられないから一人しか連れていけないけど」
いくら超人的な力を持っていても、所詮は腕が二本しかない。
安全面を考慮すると一人しか無理で、やるとしたら一人を降ろしてまた次、また降ろしては次って言う感じだろうか。
勇者部全員となると六往復は最低でも必要になる。
それに気づいた紡絆は割と大変だ、と苦笑した。
「ふふ…確かにみんなで見れたらいいと思うけど、紡絆くんが大変ね」
「ま、みんながそれで笑顔になれたりするならやれって言われたらやるけどな」
「紡絆くんが言うと本当にやりそうなのよね……」
時間が時間なのもあって、感想を述べたり、会話らしい会話をして帰り道を歩いていた。
「…今日一日、楽しかった」
その時、ふと東郷が一言漏らす。
もうすぐ家に辿り着く頃で、思い返したのだろうか。
後ろにいる紡絆からは表情が見えないが、声から察するに楽しくはあったのだろう、と思い込むことにした。
「そっか」
「紡絆くんと居られて、最後にあんなにいい景色が見られたから」
「そうだな、俺もみんなと居ることはあってもこうして東郷と長い時間一緒に居て、二人っきりで景色を眺めたり出かけるなんてことするのはそうそうないしな」
「そうね、そうよね……」
大半は依頼に時間を取られるのが勇者部。
無論いやいやとやってるわけではないのだが、華のある中学生からすれば遊ぶ時間は間違いなく少ない。
「……ねえ、紡絆くん」
「ん?」
東郷は顔を向けないまま、自身の膝の上で不安を隠すように震えている手を強く握る。
決して後ろを向くことはないまま、紡絆の名を呼ぶ。
「まだ治ってないけど、きっとみんな……治るわよね」
「当たり前だろ」
即答。
未だに傾向は見られず、夏凜を除く勇者たちの身体機能は失われたまま。
なのに何処にそんな自信があるのか分からないが、その言葉は東郷に安らぎを与える。
それだけが聞きたかったのか東郷はそれ以降静かになったが、紡絆は気遣って下手に話しかけることはせず、居心地が悪いわけではないが二人は無言のまま家へと辿り着くまで会話がなかった。
「紡絆くん、ここでいいわ」
「そうか? 別に中までも……」
「ううん、大丈夫。小都音ちゃんも待ってるだろうから、行ってあげて」
家の前へと辿り着くと、今度こそ東郷が口を開き、紡絆の提案に首を振って遠慮していた。
そこまで言うならと紡絆は素直に頷き、車椅子から手を離す。
「今日はありがとうな。楽しかった」
「私の方こそ、紡絆くんと出かけられてよかったわ」
「なら良かった。じゃあまた明日、学校に登校する時だな」
「うん」
もう夜なのもあって、帰ったら夜食だろう。
あまり話しても互い悪いと思っているのもあるが、どうせすぐに会えるのだ。
特に引き伸ばすわけでもなく紡絆は東郷に背を向け、自身の家へと戻るために歩を進める。
「………」
去っていく背中。
その背中を見ていたら、何も無いと分かっているのに東郷は不安に駆られて、俯いてしまう。
分からない、けれど怖くて、嫌で、不安なのだ。
いつ命を落とす可能性があるか分からないのがウルトラマンである紡絆と勇者である東郷たち。
バーテックスの生き残りもいるということはスペースビーストの生き残りが居ても不思議ではない。
だから不安なのだろうかと東郷は思う。
だから、だから最後に---
「紡絆くんっ!」
「ん?」
不安で力強く拳を握り、それでも顔を上げて大きな声で彼の名を呼ぶと、紡絆は何も変わらないまま振り向いて首を傾げていた。
「また、また一緒に……みんなと一緒に出かけたり、こうして一緒に出かけましょう!」
距離が離れているし東郷は歩けないため、外とはいえど大声で言うしかないのだが、知り合いである友奈と小都音にもしかしたら聞こえてるかもしれないと思うと恥ずかしくなる。
まぁ、家に居る者に聞こえるほど大きな声では無いので、彼女たちがベランダにでも出てない限りは本当は聞こえなかったりはするが、紡絆は東郷に
それを見届け、東郷は胸に手をやりながら紡絆の姿が消えるまで家に入ることなく見ていた。
(……きっと、気のせい。大丈夫、彼は光で、私にとって希望だから。居なくなったりなんて、絶対にしない。
だから…また楽しいと思うことを共有したいわ、紡絆くん)
思い返せば、終わってしまったことに寂しい気持ちがないわけではないが、次もまたあるだろうと東郷は見えなくなった彼が居た場所を最後に見て、自身も家の中へと入っていった---
そうして東郷と分かれ、家に辿り着いた紡絆は家にいるであろう小都音に帰ってきたことを知らせるようにインターホンを鳴らそうとした、その瞬間。
指が触れるギリギリのところで止まり、紡絆は顔を上げて振り向く。
「……ッ!? 来るッ!」
察知した紡絆に知らせるように彼が常に持っているエボルトラスターからドクン、と鼓動のような音が鳴り、紡絆の体が光に覆われる。
強制イベントとも言えるそれは紡絆の体を完全に覆い尽くすと、彼の姿はこの世界から消えた。
---スペースビーストの、出現。
「おにいちゃん?
…あれ?おにいちゃんの匂いがしたような気がしたんだけど……」
惜しい、と言うべきか。
あと一歩早ければ会えたというのに、エプロン姿の小都音がドアを開けて首を傾げていた。
料理をしていたら紡絆の匂いを感じ、中断して来たのだろう。
「……うーん、もうお兄ちゃんが外に出て半日は話してないから寂しくてそう思っちゃったのかな。流石にもう帰ってくると思うし、料理作って待っておかなきゃ。
はぁ、お兄ちゃん早く戻ってこないかなぁ……」
気のせいだと思い込むことにしたのか、小都音はため息を吐きながら寂しそうに、それはもう凄く寂しそうにアホ毛も眉も気分もただ下がりのままドアを閉めていた。
鍵を閉めてからすぐに兄のために料理をしようと意気込んで戻って行ったので、心配はいらないだろうが。
世界が変わり、遺跡へと召喚される。
時間は繋がっているのか、遺跡は真っ暗で、今回召喚された場所は開けた森の中だった。
いつもはストーンフリューゲルのようなオブジェクトのある遺跡殿の近くに召喚されるのだが、何故か森の中に召喚された紡絆は首を傾げる。
はっきりいって、夜の森は真っ暗で明かりもなく、鬱蒼としていて、ただただ不気味だった。
(スペースビーストの気配が感じられない……でも召喚されたということは来るはず。一体何が---ッ!?)
ビースト振動波をキャッチするエボルトラスターも静まり、いつものような怪獣特有の鳴き声も聞こえない中、紡絆は何かに気がついたように前へと飛んだ。
前転するように受け身を取りながら今度はちゃんと持っていたブラストショットを手にしていた。
ワンテンポ遅れて紡絆が居た場所から衝撃が響き、何者かの襲撃を受けたというのを紡絆の頭でも理解出来る。
獣のような唸り声が背後から聞こえ、犯人を突き止めるために振り向きざまにブラストショットを構えた。
「!? なんで……」
驚愕したように紡絆は目を見開き、構えていたブラストショットを無意識に下げてしまう。
紡絆の目の前に居る、いや襲撃者は人間。
海のような水色の髪を持ち、彼の妹である小都音をもっと成長させ、双碧眼に髪型をロングにしたかのような、そんな外見を持つ女性。
それは紡絆の記憶に深く残る姿形と一致していた。
つまり間違いなく---
「母さん……」
そう、それこそ、死んだと思われていた紡絆の母親だった。
まるで生気のない瞳を紡絆に向け、彼女は構える。
紡絆はそれを見て戦意喪失---することはなく、ブラストショットを強く握りしめる。
「ッ!?」
さらに一人だけではないようで、何処からか跳んできた男女が紡絆に襲いかかった。
すぐさま気配に気づいて避け、紡絆は回し後ろ蹴りで逆に吹き飛ばす。
「うっ……誰だ!?」
体の不調で一瞬怯んでしまったが、睨みつけるように叫ぶ先には、三人の人間が存在していた。
一人は紡絆の母親。もう二人は紡絆の記憶に存在する人間ではなく、恐らく夫婦とは思われるが不明。
『---!!』
「これは……!」
返事がわりにか、三人が一斉に雄叫びを挙げると、なんと腕が鉤爪に変質する。
同時にエボルトラスターが鼓動し、紡絆は正体を見破った。
人間と同じ外見を持ち、特徴的には同じ。
しかし変化した腕、違和感、何よりもその身に纏う気配と、死んだはずの母親が存在する。
つまりは---
「スペースビースト……か」
スペースビーストに、他ならなかった。
一番の証拠はエボルトラスターが鼓動したことだろうか。
紡絆はその姿を見て、一瞬目を伏せた。
それを隙と見たのか、一斉に飛びかかってくる。
146:名無しの転生者 ID:f5GPhBASZ
ザキさん、なんてクソ野郎だ!
母親を殺して日も浅いのにすぐに持ってくるか!? 残る男女は誰か分からないが、巻き込まれて殺された人か…? 少なくとも母親だけは間違いない…!
抵抗する気ないのか、イッチ!
147:名無しの転生者 ID:OQ4oBeAWH
母親ってことを考えると仕方がねぇだろ! 二度も殺せってのは酷すぎる!
でもイッチ、そいつらはもう人間じゃ---
ズドンッといった大きな音が周囲に何発も響き、飛びかかってきた母親の心臓、そして見覚えのない二人の心臓を青白い光の真空波動弾が貫く。
ただ体の左半身を後ろに逸らしながら右腕を真っ直ぐ伸ばし、母親の腕は紡絆の顔面すれすれで静止していた。
力を失い、前へ倒れる母親の体を、鉤爪を避けて紡絆は正面から支える。
躊躇や迷いは、最初から微塵たりともなかったのだ。
少ししてバタン、と二人の人間---いや、スペースビーストは倒れ、間違いなく死んだ。
それを一瞥すると、紡絆は母親をゆっくりと降ろしながら拳を握りしめ、腹から声を出すように叫ぶ。
「出てこい、スペースビーストッ! 母さんはもう俺が殺した……それは変わらない!
俺を殺したいならこんなことしても無駄だ!」
『-----!』
「ッ!?」
怒りに近い咆哮が聞こえ、思わず耳を塞ぐ紡絆だったが、彼の言葉に応えたのかスペースビーストが霧の中から姿を現す。
身長50mはある肉体に、ハダカデバネズミ辺りを怪物化させたような醜悪な姿を持つスペースビースト。
そのスペースビーストの両腕にはさっきの人たちと同じ鋭い鉤爪があった。
つまるところ、三人の主みたいなものなのだろう。
スペースビーストの姿を捉えた紡絆はブラストショットを収納してすぐさまエボルトラスターを取り出し、鋭い目を向ける。
「…………」
『---ッ!』
スペースビーストの鉤爪が紡絆に向かって振り下ろされる。
紡絆は二度も殺した母親と誰かは分からないがこの手で殺した人間二人を再び一瞥し、最後まで死体を見ていた。
果たして何を思っているのか。
それは誰にも分からず、紡絆にしか知り得ない。
そうして鉤爪は紡絆の肉体へ直撃---
『シュワッ!』
する直前に紡絆の体は光になり、徐々に大きくなりながら両腕を交差して鉤爪を防いでいた。
そしてネクサスの本来の身長である49mまで巨大化すると、ネクサスはスペースビーストを跳ね除け、腹部を蹴り飛ばした。
『…………』
吹き飛ぶスペースビーストの姿を見つめ、ネクサスはすぐさま振り向いて握りしめた拳を地面に向けて殴る。
凄まじい衝撃音が響き、巨大な穴が形成された。
『……デアッ』
そっと、これ以上傷つけることも壊さないようにしながら母親の死体ともしかしたら知り合いかもしれないし見知らぬ人かもしれない二人の男女を掘った穴に入れる。
『シェア』
そうして確認したネクサスはエナジーコアに手をやると、地面に向かって差し伸べるように手を向けた。
ネクサスの腕から伝う優しい緑色の光が地面に伝導し、大きく空いていた穴は綺麗さっぱりと、何事も無かったかのように復元された。
それを見届けると頷き、ネクサスはさっき吹き飛ばしたスペースビーストの方向へ振り向く---
『---!』
『ぐあっ!?』
その瞬間、ネクサスは胸に鉤爪の攻撃を受けていた。
回るように後退し、胸を抑えながら横に転がって追撃で振り下ろしてきた鉤爪を避ける。
『……シュアッ!』
痛む胸を抑えるのをやめ、両腕を強く握りしめてファイティングポーズを取る。
不意打ちを受けたとはいえ、大打撃になった訳ではなかった。
互いに攻撃のタイミングを探るように移動しながら、敵からは決して目を離さない。
そうしていると、やけに長文というか愚痴の含まれている解説が脳裏に流れてきた。
180:情報ニキ ID:JoUHou2in
ウルトラマンネクサスEPISODE.11からEPISODE.17にかけて主人公と視聴者をクリスマス、正月というめでたい時期であるにもかかわらず陰惨な鬱展開を延々見せ付けてお茶の間の空気を淀ませる惨状を展開したみんなのトラウマ!
そいつの名はフィンディッシュタイプビースト、ノスフェル!
上級ビーストであり、こいつの持つ長い舌は人間を捕食するものだ!
さらに両腕の鋭い鉤爪はウルティノイドにすら致命傷を与え得る威力を持つ上、殺害した人々をビーストヒューマンとして蘇生させ、自らの傀儡とする能力がある!
更に額から光線を発して人間を体内へ生け捕りにする事も可能で、 最大の特徴は強力な自己再生能力!
ウルトラマンの必殺技を受けて絶命しても、口腔内の再生器官を破壊されない限りは何度でも復活することが可能!
しかもピンポイントで再生器官を破壊してから、細胞を分子レベルで消滅させる必殺技でトドメを刺さなければ短時間で再生してしまうという厄介な敵だ!
そしてビーストヒューマン。
人々の死体にビーストの細胞を植えつけた存在で、簡単に言えばゾンビ!
特に言うことは無いが、腕をノスフェルと同じ鉤爪に変える他、身体能力が強化される。
こいつを操れるのはノスフェルかウルティノイドで、恐らくノスフェルが操っていたのだと思われる!
181:名無しの転生者 ID:oc2WKFQg7
ビーストヒューマンの件については心配する必要はなかったようだが……許せんよなぁ!?
182:名無しの転生者 ID:r8lKUIfJd
てめぇ、よくもトラウマ再発させやがって!
殺ってやれ、イッチ!
死体を操るなんて…しかも母親を使うとはな…!
183:名無しの転生者 ID:BDYH/056I
あれ……でもオーバーレイの影響で母親の死体は普通ないはずじゃ…。あっそっかぁ。イッチの精神を追い詰めるためにわざわざ死体として蘇らせることで曇らせようとしやがったのか…。
恐らくザギさんがあの時死体だけ回収したのか、再現したのか…どっちかはわからんが。
どちらにせよ、これでイッチを追い詰めようとしてるのは確定したっぽいな…とりあえずそいつは爆発したりとか特にはしないから容赦する必要はねぇ!
ぶっ飛ばせ!
こくりと頷き、ネクサスが走る。
それと同時にネクサスの頭上に光が降り注ぎ、ジュネッスブルーへとタイプチェンジしていた。
手加減する必要もなければ、近くに遺跡がない今は塗り替えられることが確定しているメタフィールドの展開はする必要もなく、ネクサスはスペースビースト---ノスフェルへと飛びかかった。
『---!』
『フッ---デェアァ! チェア…シュワアァ!』
『!?』
迎撃するように振るわれる鉤爪だが、ネクサスは一瞬で加速し、突然目の前に現れるとノスフェルの胸を殴り飛ばし、休む暇も与えないように蹴りを加え、流れるように下降からアッパーカットをすると顔面を横から殴り、回し蹴りを横腹へ加える。
そして怯んだノスフェルに向かって真っ直ぐ腕を立てると、右腕に光を集め、振り絞った一撃を腹部へ与える---ジェネレードナックル。
反撃することすら許さない怒涛の連撃と高威力の拳を受けたノスフェルは立ち上がるが、ふらついている。
『---!』
『……!』
気を取り直すように頭を振るったノスフェルは走り、ネクサスに向かって己の武器である鉤爪を突き出す。
しかしネクサスはそれを左腕のアームドネクサスで容易に弾き、肘と膝で挟むようにノスフェルの右腕を押し潰す。
『---! ---ッ!!』
『デェヤアアアァァァ!』
悲鳴のような声を挙げるノスフェルに、さらにネクサスはジャンプと同時に両足で首を挟み込み、横に倒す。
さらに素早く立ち上がると、左腕を掴んで回すように投げ飛ばした。
重力に引かれ、轟音と共に舞う土煙。
『デアッ!』
迷いなく土煙の中へ突っ込み、視界の悪い空間の中、正確にノスフェルの位置を見極めたネクサスは倒れるノスフェルを上空に蹴り上げる。
打ち上げられたノスフェルを見上げ、高速で追いつくと至近距離でパーティクルフェザーを放つ。
そして至近距離で大ダメージを追ったノスフェルに円を描くように高速移動しながら蹴り飛ばし続け、再度高く打ち上げると高速の殴打で突き落とした。
反撃の許さぬ、素早いジュネッスブルーだからこそ出来る芸当。
『フッ! ハァァァ……』
悶え苦しむノスフェルに対してネクサスは地面に着地すると、右腕のアローアームドネクサスをエナジーコアに翳す。
するとアローアームドネクサスの形状が変化し、光の剣が形成された。
形成したシュトロームソードを左側の首元に添えるように構え、ノスフェルに向かって走り出した。
『!?』
『デェアァァァッ!』
弱っているノスフェルはゆっくりと起き上がるとネクサスの行動に気がづいたようで、自身の鉤爪を斜め上から振り下ろす。
だが遅い。
すれ違いざまに一閃。
突き出された右腕のシュトロームソードは消え、元のアローアームドネクサスへ戻る。
『-----!』
悲鳴を挙げながらノスフェルの上半身と下半身は真っ二つに分かれ、爆発した。
圧倒。
唯一ダメージとしてカウントされるのは不意打ちの一撃のみで、ノスフェルは何も出来ずにやられた。
ネクサスはゆっくりと振り向き、変身を解くために両腕を交差した---
『ハッ!?』
瞬間、爆発したはずのノスフェルが瞬時に再生し、いつの間にかネクサスに向かって鉤爪が下方から振り上げられていた。
無意識にか、ネクサスの体は大きく下がり、ノスフェルの攻撃は空振る。
『ヘェアッ!』
隙のできたノスフェルに下がりながら少し吃驚しただけのようで、即座にネクサスは左腕を勢いよく斜め下に払い、抜刀するような構えを取ってから纏ったエネルギーを解き放つ---クロスレイ・シュトローム。
真っ直ぐ放たれた光線技は直撃し、爆発するが---やはり復活した。口腔内の再生器官を破壊しない限り再生するのが特徴なノスフェルには弱点を壊すしかないのだが、しかしそれでも再生速度が異常すぎる。
『---!』
『ぐ……っ!?』
狙う箇所は分かっていても、破壊するのは難しい。
真っ直ぐ突進してきたノスフェルを受け止め、背中を仰け反らせながら勢いよく頭を戻すことで頭突きを受けさせる。
瞬時に駆け、ネクサスの左腕には炎が、右腕には光が纏われる。
『!!』
『シュアァ!』
警戒するように反撃に振るってきた鉤爪に向かって、ジェネレードナックルをアッパーカットの要領で放つことで破壊し、部位破壊という大打撃に後退するノスフェルの口内に、くるりと回って突き出される炎の拳が正確に突っ込まれる。
すると拳から火柱が発せられ、火炎の柱はノスフェルを燃やし尽くすように貫通して夜空を照らしながら消える。
『………ファッ!?』
弱点である口腔内の再生器官の破壊。
今度こそ終わりかと思われたが、倒れるノスフェルの上空には暗雲が立ち込め、紫色のエネルギーが勢いよく降り注ぐ。
凄まじいエネルギー量に右腕で顔を覆うように守るが、エネルギーの降り注ぐ衝撃波によってネクサスはノスフェルから離された。
ノスフェルの体は黒い稲妻のようなエネルギーが循環し、紫色のオーラが吸収されるように入っていくと、起き上がりながら体が変化していく。
例の如く融合型に見られる白い体---ではなく、以前戦ったクロウのように別の色へと変化していた。
ピンク色のような紫色のような体の色から、青緑をメインにシマシマ模様のように白色が入っている。さらに背部の亀裂のような部分は貝紫色で、その背部はまるで貝殻のような、それこそタカラガイの殻に似たような見た目へと変化していた。
そして両腕は鉤爪から鋏に変わっており、ヤマアラシのように体と尾の上面に棘状に変化した硬い長毛が生えている。
見た目の元は変わらずノスフェルだが、別のものと融合したような外見を持つ融合型昇華獣。
何よりも、やはり体には星座が刻まれていた。
(ここで有名なオリオン座……! それにおおいぬ座とこいぬ座も…… いや、冬の大三角とさんかく座か!?)
中心より下におおいぬ座の1等星、シリウス。
左上にこいぬ座の1等星、プロキオン。
右上にオリオン座の1等星、ペテルギウス。
天の川を挟んで輝く3つの1等星を結んで出来る大きな三角形のことを冬の大三角と呼ぶ。
小さな三角定規型の星座をさんかく座と呼び、メインは冬の大三角なのだろう。
神話上予測出来るものはなければ、どちらかというと融合型昇華獣ではなく、ネクサスが強くなったことに対抗するべく進化したクロウと同じく新たな融合型昇華獣と呼ぶべきか。
そんな相手に最大限の警戒を持って、ネクサスは両拳を握ってファイティングポーズを取る。
一方で融合型はただ佇むだけで、不気味さだけが漂う。
『ヘェア!』
一切動こうとせず、構えもしない融合型を見て最初に動いたのはネクサスだった。
持ち前のスピードで地面を駆け、ストレートパンチを繰り出すネクサスに対して、融合型は何もせず動かない。
となると当然当たるわけで、ネクサスのストレートパンチは融合型の胸を打つ。
殴られた衝撃で後ろへ下がり、すぐさま肘打ち、流れるように中段前蹴りで蹴り飛ばしてから飛び膝蹴りで融合型を押し倒す。
『デェア、シュアッ! ハァッ!』
そのまま連続で痛烈な打撃を見舞い、数撃与えた後に融合型の背中を頭上まで抱え上げ、真っ直ぐ前に投げ飛ばす。
空気抵抗に逆らうことなくただ地面に落ちる融合型に、ネクサスはトドメを刺すべく胸のコアゲージの前で握り拳を作った両腕を交差する。
『シュッ! シュアアァァァ……』
光がエナジーコアを中心に両腕へ伝わり、両腕を左右に広げると大きく両腕を頭上で回しながら、アローアームドネクサスと左腕のアームドネクサスが上になるように交差する。
そうして交差したまま右腰付近で両腕に輝く光を固定すると、左手の光は右手に集まり、ネクサスの右拳が氷に覆われる。
『デェヤッ!』
左拳を腰に固定し、大きく右足を一歩踏み出しながら同時に右拳を真っ直ぐ突き出すと、氷の光線が一直線に突き進み、融合型に直撃した。
冷気が空間を覆い尽くし、融合型の姿が見えなくなる。
最後の最後まで何もせず、本来なら勝ったと思えるはずなのに、紡絆は全く安心出来ず、警戒する。
そして---その時が来た。
『……!?』
氷霧に覆われた場所から、
それが
しかし大きさはそれほどではないが、赤く丸い形をしている光弾のようなもので、攻撃だということだけが分かったネクサスは瞬時に回避行動を取ろうとしたのか跳躍するため、両脚に力を入れる。
『シュ---!?』
いざ跳躍しようとしたところで、紡絆の頭が最大限の警報を鳴らす。
故にそのまま跳躍することはなく、紡絆の行動が止まった。
---否、紡絆の中にいるはずの
(だったらッ!)
今まで紡絆に任せていたネクサスが、
今更光線技や最強技を使おうにも発射速度の方が上。
それでいて回避が不可能となれば、すぐに可能なシュトロームソードで斬るしかない。
そう判断した紡絆はエナジーコアに手を翳し、シュトロームソードを形成したネクサスは叩き斬るために光弾から決して目を離さず警戒する。
『---!!』
『で……ッ!?』
そして氷霧が消えると、融合型昇華獣の姿が見えた。
(速すぎるッ!?)
気がつけば鏡のようなナニカは消えていたが、ネクサスの目でも追うことが難しいほどの高速。
真っ直ぐに向かってくるそれは、迎撃するのは難しく、ネクサスの警告通りジュネッスブルーの速度を凌駕している。
『ハァッ!』
刹那の判断。
回避も不可。迎撃も不可。
シュトロームソードを振り下ろすよりも先に直撃すると判断した紡絆は、シュトロームソードを解除して両腕を前に突き出した。
寸前のところで貼られた揺れる水面の様な青いエネルギーシールドで己の身を守る。
『ウッ!? ぐ、ぐぐぐ………ッ!』
しかしバリヤーによって守られたネクサスのサークルシールドに光弾が直撃すると受け止めたはずの光弾は勢いを留まることを知らず、必死に脚に力を入れてもなお、体は背進していく。
全力を込めてどれだけ腕を突き出そうが光弾の力が減衰することはなく、視界上にある光弾から
『ヘッ!?』
そうして、ネクサスのサークルシールドが
その紋章がサークルシールド全体に燃えるように行き渡り、木が焼け、枯れるように
そう、まるで
つまるところ、ファウストの持っていた剣と同じ性質がある---否、これはまるで別物だった。
異常なほどの威力。尋常ではないほどのエネルギー。
『ウ……ぐっ……! アァ、グッ……ウゥ---アァアア!?』
それほどの力がある光弾。
コアゲージの点滅が始まっても未だに決して衰えることがない光弾が光り輝き、紋章が全体に行き渡ったその瞬間、なんとあのサークルシールドが完全に砕けた。
吹き飛ばされるようにネクサスの両腕が大きく弾かれ、数歩下がりながら大きく仰け反ってのめり込む。
『---ッ!?』
バリヤーが破壊された際に、勢い余って俯く形になってしまったネクサスが顔を上げれば、禍々しい紋章のある光弾が至近距離にまで接近していた。
『シェッ---ぐああぁアアアッ!?』
咄嗟の判断で身を逸らして回避を試むネクサスの
そしてあったのかすら知らなかった川に大きく吹き飛ばされたネクサスは背中から落ち、水飛沫が周囲を舞った。
『うあぁ……があぁぁ!?』
水飛沫はすぐに消え、ネクサスの姿が見えるようになると直撃した左目を両手で抑え、苦しんでいる姿がある。
苦しさのあまり体を動かして誤魔化そうとしているのか、仰向けからうつ伏せに変わり、両腕が地面に着いて四つん這いになると水面に落ちたのもあって、ネクサスの姿が水面に映し出された。
そこには
『ハァッ……ハァ……。ぁ……?』
左目の光が
特に大きな影響はなく、あるとすればコアゲージの点滅が突然加速しただけ。
ならば、と融合型昇華獣の方へ振り向き---
『シュア---ウアアァァ!?』
いつの間にか背後へ立っていた融合型昇華獣が、ネクサスに向かって
口から吐き出されたそれは水のように、ホースのように吐き出され、突然の攻撃にネクサスは全身に浴びる。
大きく苦しみながらネクサスの青い全身に白い液体が付着し、
噴射が止まり、溶解液が止まるとネクサスのコアゲージが凄まじい勢いで鳴り始めて膝を着きそうになるが、ネクサスは堪える。
『うあっ!?』
しかしそんなネクサスに対して目から放たれた三日月状の光線が襲いかかり、流石に耐えきれなくなったのか地面へと倒れてしまった。
その連続攻撃を、
だが知っていても対処出来るはずもなく---
『---!』
勝利の雄叫びのようなものを挙げる融合型昇華獣は、軽い足取りでネクサスに近づいていく。
ネクサスは起き上がろうとするが力が入らずに、地面へと伏せていた。
それを見てトドメを刺すため、鋏型の腕からノスフェルの時と同じ鋭い鉤爪が現れる。
『---!!』
『…………』
コアゲージの点滅音と心臓のようなエナジーコアの音だけが響き、一切身動きの取らなくなったネクサスに融合型昇華獣は大きく腕を振り上げ、抵抗も出来ないであろうネクサスに、勢いよく振り下ろす。
そうしてネクサスの体は、鋭い鉤爪に貫かれ---
『デェアァアアアアッ!!』
『!?』
貫かれる、その寸前。
ネクサスの全身が光り輝き、青い肉体から赤い肉体へと変化した。
ジュネッスブルーから、ジュネッスへのタイプチェンジ。
すぐさま横に転がり、振り下ろされた鉤爪は地面へ突き刺さる。
驚いたようにネクサスと鉤爪を見る融合型昇華獣は、引き抜こうと引っ張るが、全力で勢いよくした影響か、抜けない。
『シュ! ハァァァ---』
後先考えず、ネクサスは両腕を交差した。
青白いエネルギーが両腕に纏われ、コアゲージの前で流れる電流を引き離すように両腕を左右に分けるとV字を描くように両腕を上げる。
『ヘェアッ!』
そして両腕がL字型に組まれた瞬間、凄まじいエネルギーの光線が融合型昇華獣へと放たれた。
ネクサス最強技のひとつ、オーバーレイ・シュトローム。
当たれば即死のそれは、爪が抜けないまま動けない融合型昇華獣に直撃する---
『!? う……ハァッ、ハァ……』
明らかに避けられなかったはずなのに、オーバーレイを外したことに驚きを隠せないが、驚愕よりも先にエネルギーが失われ、ネクサスの体が輝く。
するとジュネッスからアンファンスへと戻ってしまったネクサスは片膝を着きながら、警戒するように周りを見渡す。
そして、捉えた。
音も、速度も、姿も、何もかも見えなかった。
それこそ、
『……ッ!』
もはやエネルギーが残っておらず、両腕を着くネクサスだが、両腕のアームドネクサスを輝かせる。
せめてもの抵抗。
残されたエネルギーを全て注ぎ、相討ちを狙うつもりだった。
『---!』
『………?』
しかし融合型昇華獣はどこか苦しそうに声を漏らし、最初から何もいなかったかのように、白い霧に包まれて消えた。
明らかなチャンスだったというのに、見逃された…はずはない。
恐らく、何らかのダメージがあったと見るべきか。
『あ……アァ……』
だが運に助けられたのは事実。
それを認識した瞬間、保っていた力は失われ、ネクサスの体が輝くと元の継受紡絆という一人の人間の姿へと戻ってしまう。
「……くっ」
森の中、ネクサスから戻って倒れていた紡絆はなんとか体を起こし、苦しそうに両目を閉じたまま大量の汗を掻きつつ背中を木に預ける。
息も絶え絶えで、悪運に助けられた紡絆は息を整えながら両目を開けて空を見上げた。
視界にあるのは真っ暗な夜空。
ブラストショットを左手で手にした紡絆は全身が輝くのを感じながら空に向けてブラストショットのトリガーを引こうと---
「………?」
そうしたところで、猛烈な違和感に気づいた。
空に上げる左腕、手は爛れたように皮膚が焼けているが、溶解液の影響だろう。
しかし、やけに---
「……あ」
そして、気がついた。
空いている右手を見つめ、特に影響はない。
しかし片目を閉じて右目で夜空を眺めたら映るが、もう片方の目、左目だけで見れば---
「なにも……みえ、ない……」
映るのは、ただ真っ暗な世界。
何も無く、何も捉えられず、感じられず、ただ
それがどういうことか、理解出来ないほど紡絆は馬鹿では無い。
体が完全に光りに包まれ、世界が変わる。
ただ眩しさに両目を閉じた紡絆は、戻っていく感覚と共にため息をひとつ零した。
そう---自身の
○継受紡絆/ウルトラマンネクサス
(誰も彼の日常編とは言っていないので)相も変わらずボロボロな上についに身体機能を失う(しかも目は開くので他人には気づかれないというイヤらしさ)
なお、彼はため息ひとつで済ませた模様。
○ウルトラマンネクサス
彼が紡絆に警告出すレベル。
万全である彼なら余裕で弾いてた(確信)
○東郷美森
(勇者たちの日常編なので)紡絆とデートすることに。
懐かしいような感覚を感じたり、知らないはずなのに知っている場所に来たように感じたようだが……?
最近よく遠くを見る時がある紡絆に居なくなるのでは、と不安になっているものの、約束を取り付けることでまた『次』を用意した。
かしこい。
○ノスフェル?
通常だと不意打ちの一撃以外ノーダメでボッコボコにされた上に短時間で3回殺されたので融合型昇華獣へと至るが、クロウと同じく『新たな』というべき融合型昇華獣。
冬の大三角という有名すぎる星座の影響であらゆるスペックが大幅に上昇している。
さらに紡絆も知っている目から光線、溶解液といった攻撃方法を使い、瞬間移動のようなものや霧のようなものを使えるようだが……?
しかし明らかなチャンスだというのに何故か苦しんで撤退した。
○ビーストヒューマン
(ザギが精神的に紡絆を追い詰めるために再現したと思われる)母親にビーストの細胞を埋め込み、襲わせたが紡絆には効果がなかった。
もう二人の人間は、 別に父親というわけでもなく巻き込まれた人間と思われるが、紡絆曰く見覚えもないので不明。
○禍々しい謎の光弾
紡絆の左目の視力を停止させた光弾。
放たれる前に
実は一発限りの攻撃で、本来は両目を破壊するつもりが紡絆の反応速度が高すぎて左目しか無理だった。
人間でいう弱点に当てなければ意味が無いという欠点がある(例えば腕の機能を停止させるならネクサスの腕を貫く必要があるが、目は露出してるので当たれば簡単に消せる)