【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
そしてついに赤バーから落ちてしもうた、悲しいなあ…正直リアルが忙しくて全く書けてないし最近は読み専になりつつありますが、みんな失踪するのは多分どちらかが理由なんでしょうね、なんて思ったけど関係ない32話でもどうぞ。
失踪は、うん…しないかな、多分。きっとね、小説続けるかなんて評価(やる気)の下がり具合だしね。
とりあえずダイナかっこいいね
左目の機能の消失。
それは紡絆に大きな精神的なショックを与える---
「いやーごめんごめん。ちょっと迷子の案内してたら遅れちゃってさー……って怒ってる?」
わけでもなく、普通の人間なら動揺したり取り乱すだろうに、何も変わらないまま家の中に入った紡絆は、そっぽ向いて不機嫌そうな小都音に謝っていた。
「怒ってない」
「でも」
「怒ってないよ、そろそろ帰ってくるって思って料理を作って、ずっと待ってたのに。料理が冷めてもお兄ちゃんが全然帰ってこなかったから一人で寂しく食べて、食べ終わっても帰ってこなかったことになんて、別に怒ってないよ」
「う………」
わざわざ口に出してまでも言っている時点で紡絆は怒ってるのではと思ったが、強制的に召喚されたとはいえ非は此方にあるのは確かなのだ。
実際戦いの後、ストーンフリューゲルの中に四時間ほど居た紡絆は日付が変わる時間帯に帰ってきた。
しかしそれでも傷は一切回復していなかったが。
「……はぁ」
「ごめん」
「……もういいよ。それより、温めたから食べて。お兄ちゃん何も食べてないでしょ」
ただ謝ることしか出来ない紡絆に対し、紡絆以上に紡絆という存在を知っている小都音はため息を零して気を取り直すように料理に目を向けた。
どうやら照り焼きチキンに味噌汁、炊き込みご飯、マカロニグラタンと言った献立のようで、ちゃんと足りない栄養素を考えて作られたものだった。
「…まあ、お腹空いてるのは否定出来ない。小都音のご飯見たらより空腹に襲われたし」
「そっか…じゃあちゃんと食べること。今回はそれで許してあげる」
「ん、了解」
褒められて嬉しくはあるのかアホ毛を揺らしつつ、小都音はご飯を食べない可能性のある紡絆に食べるように誘導していた。
それで許して貰えるならと両手を合わせていただきます、と言ってから素直に食べる紡絆は、気づいてなかった。
この妹、兄の扱いがとても上手いのである。
321:名無しの転生者 ID:5TLMkR1on
イッチ、平気か?
なんかやけに苦しそうにしてたが……
322:名無しの転生者 ID:bfsIYtwln
まさか作中最強で無敗だったサークルシールドを砕く技が出てくるなんてなぁ。今までも砕かれる寸前まではいってたけど、今回が初だぞ
323:名無しの転生者 ID:Qx4YQ0U5v
でもあれ、砕かれたってよか何らかの力が干渉したっぽいよな? 変な紋章がバリヤーに浮かんでたし
324:名無しの転生者 ID:OJWmrWl/k
見た感じただの融合型じゃねぇよなぁ。あれ、溶解液だろ?
つーことは前回同様怪獣の力があってもおかしくは無い…けど、ウルトラ怪獣って溶解液使うやつ多すぎて特定出来んぞ
325:名無しの転生者 ID:kajTf8GWy
いっそのこと、バーテックスとの融合を融合型昇華獣って呼んでたけどそれだとややこしいからさ、バーテックス+怪獣+スペースビーストってことなら新しいって意味を込めて『ネオ融合型昇華獣』ってのはどうよ?
326:名無しの転生者 ID:I8HUEHRsU
ええやん
327:名無しの転生者 ID:mBV9kdiMZ
今までとは違うってことで区別出来るしな
328:名無しの転生者 ID:1B8SM5cZa
それよりイッチだよ。大丈夫なのか?
ネオ融合型昇華獣が撤退しなきゃイッチ負けてたじゃん。撤退理由も不明だし
329:名無しの転生者 ID:bk7q6cHa1
数日間ビーストもバーテックスも現れなかったって思ったら急に出てきて、体の治ってない状態でさらにダメージ受けた上にスペースビーストとはいえ、人を殺してるからなぁ…メンタル面も心配だ
330:名無しの転生者 ID:bP4oBnlg0
いくらイッチの前世が異星人たちがいたって考えても今回ばかりはな……まぁ、でも戦闘センスの高さと価値観の違いは前世の影響かもしれんね
331:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra
すまん、反応遅れた。
深夜だからもう寝るけど、簡単な報告だけするわ。
まずそのネオ融合型昇華獣ってやつの怪獣の情報遺伝子?だっけ。
組み込まれてる怪獣の正体はウルトラマン80に登場する残酷怪獣ガモスだ。
背中とか鋏型の腕以外は受けた感じからして間違いない。けどあの状況でオーバーレイを避けれた理由は分からん。
星座は冬の大三角であるオリオン座、こいぬ座、おおいぬ座。
それとさんかく座。
神話的にも特別な能力はないみたい。
ただ俺のバリヤーを砕いたあの光弾は、不完全な鏡のような見た目をした存在が撃ってたから、恐らくそいつの影響でネオ融合型昇華獣は撤退したんだと思う。
ついでにあの光弾のせいだと思うけど、左目の視力奪われたわ。あはは、左だけ何も見えねえや。機能停止しちゃった。
おやすみ
332:名無しの転生者 ID:1eumz0P5H
えっ?
333:名無しの転生者 ID:uvFjlkwRx
ガモスか…80を苦しめた敵だな。確かにガモスの溶解液って考えたら強力だわ。あの80先生が受けた瞬間カラータイマー点滅したレベルだし、宇宙の指名手配ナンバー2にランクされているほどにはやばいしな
334:名無しの転生者 ID:AhDsFt2si
おい待て、お前さらっとやばいこと言ってないか!?
左目の視力奪われたって……
335:名無しの転生者 ID:lj84WfQhy
い、いやいや笑って流せるようなことじゃねぇからな!?
しちゃった、じゃねーよ! それで済ませるような問題じゃないから!
336:名無しの転生者 ID:bs1/TMzxG
ただでさえボロボロなのに左目すら奪われたのか?
ちょっと待って、イッチ割とマジで前よりやばくなっていってないか?
337:名無しの転生者 ID:2TeSwMs3/
これ…そろそろ真面目のガチめにやばくないか?
ネオ融合型昇華獣は多分ネクサスの強さに比較して成長したんだろうけど……
338:情報ニキ ID:JoUHou2in
ああああぁあああぁぁあああ!!
そうか、そういうことかっ! 失念してたぁああああああ!
339:名無しの転生者 ID:Ms3rs5tmz
あの光弾は身体機能を奪う力がある?
それってもしかして勇者と同じ状態じゃ……?
340:名無しの転生者 ID:SBb2vaTOk
え、なになに、一旦整理させて。
とりあえず情報ニキから頼むから落ち着いて説明してくれ!
色々と多すぎてわからんのだが、イッチは本当に寝たっぽいから説明出来る情報ニキから頼む!
341:名無しの転生者 ID:PimHsdoGO
ここのスレ、いっつも情報過多してんな
342:名無しの転生者 ID:BWDM5x6Lg
しかしこの情報ニキの慌てよう…さては何か気づいたな?
343:情報ニキ ID:JoUHou2in
そうだよ、そうだったんだよ!
イッチって凄い強いじゃん?
344:名無しの転生者 ID:DzSHG9wIw
んーまあ、確かに万全じゃない割にはいくらネクサスのスペックが上がってるとはいえ上級ビーストであるノスフェル、それも原典より再生速度の上がっていた相手を短時間で三度殺してるからな…
345:名無しの転生者 ID:gDE/vyq3Z
普通に頭おかしくて草。万全のイッチってジュネッスになったらジョー二アス辺りと普通に互角に戦えそうで困るわ
346:名無しの転生者 ID:0uf1qbNL7
で、イッチは(精神面でも)強いのはみんな分かってるけど、それがなにか?
347:情報ニキ ID:JoUHou2in
ほら! >>337のおかげで思い出したんだけど、スペースビーストって成長する存在じゃん? んで、バーテックスも成長するらしいじゃん?
でもさ、じゃあネクサス本編のTLTはどうやってやつらと戦えたのか覚えてる?
348:名無しの転生者 ID:/GFkyrN3e
バーテックスの成長具合も高いが、スペースビーストはどれも強力なうえにビースト振動波があるからでは?
で、TLTやウルトラマンが戦えたのは弱点知っている石掘が居たからじゃね? あと来坊者が味方だったし
349:名無しの転生者 ID:r6IUJIQ5n
TLTは技術やべーからな
350:名無しの転生者 ID:CtJ1CseHs
んー、すまん覚えてねぇわ
351:名無しの転生者 ID:GU23VlENO
確かあれじゃなかったっけ。スペースビーストを抑制するためにパワーバランスが拮抗するように調整してたんじゃなかったか。石掘が弱点教えたりTLTがウルトラマンを攻撃するように指示したのもそれやろ?
352:名無しの転生者 ID:efc290RrO
あーたしかそうだったような。抗体を作るためだったっけ。ビーストやウルティノイドと互角に戦えていたのはそれが理由だったか。
実はザギさんもイラストレーターと同じことを考えていて、ザギさんの方が狡猾だったとはいえ高度な策謀を繰り広げてたってやつな
あれ?ってことはつまり……?
353:情報ニキ ID:JoUHou2in
そう、調整役が居ない!
だからイッチの強さを上回るように成長して、スペースビーストだけが進化していってるんだ。バーテックスは分からんが、スペースビーストは確実。
そしてそれが恐らく、ザギさんが今行っているマルチバースの怪獣の遺伝子を組み込むことだと思う。
そもそもザ・ワンは他の生命体を取り込んで成長する存在だったからな。ザ・ワンの遺伝子が元として作られてるなら、他の怪獣との遺伝子は相性が良いはずだ。
あとは遺伝子問題は解決しても強力な怪獣と融合ならともかく、遺伝子のみを組み込むなら既存のビーストではそのために作られてないから肉体が持たない…。
けど、バーテックスの持つ『御魂』を核として、ジュネッス、ジュネッスブルーと力を解放したネクサスを上回るように成長をしたビーストならば? 学習したビーストなら? それに伴った肉体の進化で肉体に関しては問題なくなるはず。
あとはザギさんが力をちょちょいと注ぎ込んで調整すれば、ネオ融合型昇華獣に至るんじゃないか?
つまるところ、アンファンスでスペースビーストを倒すほどの強さを持つネクサス(正確にはイッチとノア様本人の力が噛み合ってるからだと思われる)を倒すための対抗策として用意されたのが、ザギさんがやれる最大限の進化である他宇宙の怪獣とこの世界の脅威であるバーテックスの力を持つスペースビースト…ネオ融合型昇華獣ってことなんじゃないかと思う。
あっ、でもイッチの視力奪った力は悪いけど分からない
354:名無しの転生者 ID:44ysFzotl
はーなるほど
355:名無しの転生者 ID:YKihp5J44
簡単に言えば、スペースビーストをアンファンスで倒すイッチが化け物すぎて危機感を覚えたザギさんがクッソ良い頭を動かして厄介な存在を生み出す発想を得た…と。んで、付け足すなら本来は次元が違うバーテックスとスペースビーストを融合させるためにバーテックス側の黒幕と手を組んで、それぞれの次元の力を持つ存在へと昇華させたってことだな。分かりやすく言えばダイナやデッカーのスフィア合成獣っすねぇ。
それにしてもイッチが悪いわけじゃないけどイッチのせいみたいになってる()
356:名無しの転生者 ID:+6vfcDkl7
ザギさんが危機感を覚えるほどの戦闘センスって……そりゃ全力で潰しにかかるわ。
自身はまだ不完全なのか、それともノア様の結界の影響で入れないのかは知らんけど普通に考えたら殺りに行くわな。それにノア様本人って考えたらファンたちでも分体と予想されてるギャラファイでも強かったんだからもっと強いよねってなるしね
357:名無しの転生者 ID:mdBXlkmHF
バーテックスがイッチを優先しまくってる理由もそれなのかもな。
バーテックス側の黒幕とザギさんが手を組んでるから情報が流されていて、勇者も厄介だけどそれ以上にイッチが厄介だから潰そうとか…変身前狙ってたし。
ん、待てよ?
じゃあイッチの左目の視力を奪った光弾って、そのバーテックス側の黒幕なんじゃないか? その不完全な鏡のような存在は、黒幕の本体?それとも黒幕が戦うための肉体か?
358:名無しの転生者 ID:+8Gp0VjUW
ってことは、本格的にザギさんとバーテックス側の黒幕がイッチを殺しに来てるってことか!
359:名無しの転生者 ID:Ci5NXPjDB
逆に今まで干渉しなかった理由は出来なかった?
…そうか、考えられるとしたらノア様の結界が弱まっていること…!
あとは不完全ってことは別の見方をすれば不完全の状態で力を行使したなら、消耗で次は無いはず!
360:名無しの転生者 ID:GzEm3O8uu
あくまで予想、予想だがそれが正しければようやくまともな答えを得たことになるぞ!
謎ばっかなのに!謎ばっかしかないけどやっとひとつふたつ解けたぞ!
361:名無しの転生者 ID:ApcMzKGp8
いつ全部答えが出てくるんですかね…でもさ、結局調整は勇者たちにそんな説明したらイッチの情報はどっから出てきたってなるから無理だし、そもそもそんな余裕がない。
あと左目についてはどうするんだよ。治るのか? 例え次が来なくても、失った左目は痛手だぞ!
特に治らなければ一体どう勇者たちや妹ちゃんに伝えたらいいんだ……
362:名無しの転生者 ID:/XL1k2b0I
……なんでこうもイッチは追い詰められるんだろうか。
正直なこと言うとさ、いくらなんでも>>331のように笑い流すのは…なあ
363:名無しの転生者 ID:Iq08ggk4x
ああ、確かに壊れてるっつーか……
364:名無しの転生者 ID:sAdYxYBHD
前世的に元から価値観は壊れってからどちらかというと、自分のことを大切に思ってないというか…以前は純粋に自分より他者優先の自己犠牲野郎だったが、最近は自分のことについてガチめにどうでもよくなってきている?
365:名無しの転生者 ID:XhyG//N5V
でも憐の教えで生きるために戦うって覚悟を決めた人間が、すぐにそんな思考になるか?
366:名無しの転生者 ID:xOsIE/yvk
でも戦いもなかったのに数日経っても肉体は一切回復しなかったから悟ってるのかも…。
確かに体力がなくなってるのもあるだろうけどさ、いくら勇者たちの心を守るために内緒にしてるとはいえ、最近は傍から見ると諦めてるようにも見えるんだよなぁ…なんかこのまま行くとイッチ普通に死にそうだ。
それと>>365イッチのことだから『生きるために戦う』だけで『そのために戦う』って考えなだけだと思うで。
つまり、イッチはその戦いの末に『死なない』とは言ってない
367:名無しの転生者 ID:WgYACzZMe
あのさぁ…イッチ、そういうところなんだよなあ。
自分を大切に思ってないもんな…けど、それがイッチたもんなあ…
368:名無しの転生者 ID:3uHubRRte
結局どう転んでもイッチ以外が曇る要素しかなくね?
むしろ何故母親をもう一度殺すことになって、他人を殺すことになって、左目を失ってもなお曇ってないんですかね…メンタル面最強前作主人公みたいになってるぞ。
これも前世パワー?
369:名無しの転生者 ID:hiWF3qCBX
確かにイッチは割と前世で色々と失ってそうではある。異星人居るらしいし、殺されたりしたのかもな、家族とか
370:名無しの転生者 ID:Pj5+3csd0
結局のところ、俺たちに出来るのは書き込むだけだ。
瞬間移動の正体…普通に考えたらテレポートだが、ゼットンは違いそうだな。
出来る限りのこと、やっていこう。さっきみたいに話し合えば多少は謎も解決するかもしれない
朝目が覚めたら、紡絆はちょっとした違和感を抱きつつ、体を起こした。
カーテンを開け、少しぼうっと外を眺めると違和感の正体に気づいた。
まだ実感がそこまでなかったが、左目の機能が消失したことを思い出したのだ。
寝てもそれは変わることなく、考えられるとしたら目が赤く染まった際に、焼かれるような熱さがあった時だろう。
「ふわぁあ……いい天気」
欠伸をしながら目を擦り、何よりも先にエボルトラスターを回収した紡絆は服を着替える。
服を脱いで鏡を見れば、映るのはボロボロで酷い傷しかない体。
いつもの如く包帯を取って腹を見れば、穴は空いてないが爛れた上に血が固まっていてグロテスク。
なので包帯を巻き直して今の怪我を忘れることにした。
ただの中学生。
いくらウルトラマンに選ばれたと考えても異常すぎる怪我を負ってしまっている。
どうやら溶解液を受けた際に負った傷は、爛れたままだが見える範囲ではないようだ。
『………』
「んー?」
そして帰ってきたのが深夜なのもあって学校の用意をしてなかったため、用意していたら何らかの気配を感じて紡絆はバッと振り向いた。
しかし何も無く、首を傾げながら用意に戻る。
左目が失ったせいで慣れてない今は少し不便にはなったというか、距離が測りづらいが、ちょっと時間をかけながら紡絆はリビングへと降りていくのだった。
エボルトラスターが光っていたことに気づかないまま---
何も違和感を感じさせないように過ごし、授業を終えた紡絆はニコニコ笑顔で歩いていた。
すると突然速度が上がり、少しずつ早足へとなっていく。
何の苦もなくただ歩く紡絆だが、突然止まることになった。
その理由は---
「なんでついてくんのよ!?」
夏凜が意味不明というように叫びながら振り返ったからだ。
しかしそう言われた紡絆は一瞬不思議そうな表情をし、口を開く。
「え? そりゃあ夏凜の家に行くつもりだからだけど?」
「はぁ?」
さも当然の如く告げてきた紡絆に、夏凜は唖然とする。
「だって俺が作らなければコンビニ弁当ばっかじゃん。本当は小都音にも来て貰うつもりだったけど、予定入ってたみたいだからな」
「そ、それは私の勝手でしょ」
「減るもんじゃないからいいだろ。それともそんなに俺のは嫌だったのか…」
「う……」
そう、紡絆が夏凜の家についていってるのはそれが理由だった。
そもそも育ち盛りの中学生が食べるのなら、コンビニ弁当で済ませるものでは無いだろう。
しかし紡絆の分かりやすく落ち込む姿に、夏凜は言葉が詰まる。
「わ、分かったわよ…好きにしなさいよ」
「よっしゃ、任せろ!」
「………」
一瞬で元気になる姿に何とも言えなさそうな表情になるが、諦めたのか夏凜は呆れたように口元を緩めると、再び歩みを進める。
それに気づいたのか、紡絆はまた彼女について行っていた。
「……そういえば」
「ん?」
「あんた、確かウルトラマンを宿してるから身体能力上がってるんだっけ?」
「一応な。それがどうかしたか?」
思い出したように前を向いたまま聞いてくる夏凜に紡絆は肯定を示す。
今や彼の身体能力は人間を凌駕するのだ。
「たまに変な動きしてるからおかしいと思ってたのよ」
「え、そんなしてる?」
「振り返って見なさいよ、自分の行動」
「うーん……」
夏凜に振り返るように言われた紡絆は、立ち止まって思い出すように唸りながら両腕を組んで考えていた。
彼の脳内に映るのは、事故に遭いそうな人が居たらダッシュして助けた時の記憶。怪我人が居た時に自分よりも身長も体重も大きい人や物を抱えて運んだ記憶。海を走った記憶。年寄りを背負いながら重い荷物を運んであげた記憶。動物のために命懸けで救いに行った記憶。地上から屋上までジャンプした記憶。空に向かって飛んでいく風船を跳んでキャッチした記憶。トラックを飛び越えた記憶。
色んな記憶が蘇っていき、紡絆は小首を傾げる。
「…うん? 別に普通だな?」
「何処がよッ!!」
一般人とはあまりにものかけ離れすぎている価値観。
何処を振り返っても普通ではないのだが、夏凜が知っているものでも絶対に普通ではないのだ。
「あはは、まあまあ。それが誰かのためになってるならいいじゃん! 正しいことに使えてるって思ってるしさ。それより行こうぜ!」
「…私が住んでるとこなんだけど」
夏凜の肩を軽く叩き、前に躍り出た紡絆は駆け足で進むが、自分の家でもないのに先に行く紡絆にため息を吐いた夏凜もまた、紡絆に追いつくために走った。
そうして、紡絆は海を見ていた。
空は茜色に染まり、太陽はまだ出ている。
あと二、三時間もすれば四国は夜になるのだろう。
(はて、どうしてこうなったのだろうか?)
現実を直視するように、紡絆は自身の手のひらに握られた物と、目の前の人物を見つめた。
静けさに包まれたこの場所は今、異様な空気感に覆われている。
ピリピリとした、そんな空気。
一般の人が見たら近づきづらい空間で、紡絆はただ目の前の人物から目を離さない。
はたして、どれだけ見つめ合っただろうか。
「ッ…!」
それが引き金となったのか、かなりの速度で迫ってきた一撃を、紡絆はあっさりと横に逸らして避ける。
当たると思ってなかったのか、流れるように戻し、横腹目掛けて木刀が振られた。
その一撃を紡絆は軽く後方へ跳ぶことで避け、浮いた紡絆にもうひとつの木刀が穿つように勢いよく突き出された。
「おっ……と」
瞬時に空目掛けて後ろへ木刀を投げ飛ばし、自身は地面に背中から倒れ、両手を地面に着いて後方転回を連続で行うことで距離を離す。
そして落ちてきた木刀を右手でキャッチし、水平に振るわれた木刀を右手で受け止めると弾くように相手を押し出した。
「ッ……やるじゃない」
「夏凜も流石だな、でもなんでこうなった?」
そう、対峙しているのは夏凜。
夏凜の家に向かったはずなのに、気がつけばここに居て、木刀を投げ渡されたのだ。
そのままよく分からないまま、何故か戦うことになっている。
「お腹を空かせるのに運動は良いし、ウルトラマンとして戦っているあんたとは一度手合わせしてみたかったのよ」
「ふむ…そんなこと言うが、俺はあくまでウルトラマンによって身体能力が強化されてるだけで夏凜の訓練にはならないと思うけど」
お腹を空かせる、という意味では納得は出来たが、紡絆としては別に戦う理由にはならない。
それにかたや
「紡絆だって剣使うでしょ。バーテックスの生き残りが見つかったんだから、やるに越したことはない。
それに私自身も鍛錬になるわよ、というか紡絆ほど勇者にとって修練の相手に適任な人物なんてそうそういないと思うけど……」
割と正論の答えを言われ、紡絆はなんとも言えなさそうな表情となった。
否定しようにも、彼の頭では何も出来ない。
実際に敵が人類を超越している存在であり、人外な身体能力を持つ紡絆は修練の相手には最適なのだ。
けれども、紡絆は好き好んで戦うタイプじゃなかった。スペースビーストやバーテックスとは分かり合えないから戦うだけで、彼は本来あのファウスト相手にすら倒すのではなく、止めたいと思っていた人間である。
それに紡絆は強化された身体能力は人のために使うようにしてるからこそ、人に向けるのは忌避感がある。
それもウルトラマンの力の一部。
そう認識してるから。
「確かに剣は使うし、こういうふうに試合して動いた方がお腹も空く。
でも、怪我をさせるかもしれないし、木刀なんて握った記憶がないんだが」
他にも紡絆の懸念すべきは、そこだった。
別に夏凜の鍛錬に付き合うことが嫌なのではなく、自身の身体能力のみならともかく、強化された身体能力を使うとなると危うい。
後は紡絆はシュトロームソードは使ったが、木刀なんてこの世界で使ったことがなかった。
「安心なさい、簡単にやられるほど生温い鍛え方はしてないわ。
けどそうね……それなら負けた方が勝った方に言われたことをなんでもするって条件ならどう?」
「いや、それはそれでどうかと---はぁ、まあいいか。
分かった、そこまで言うなら俺も真剣にやる。確かに試合は訓練に良いことには変わりないし」
何がなんでもやってみたいのか、条件を出してきた夏凜に諦めたような表情で紡絆はしっかりと片手で木刀を構える。
この経験もまたウルトラマンとして戦う時の糧に出来ると判断したのだ。
「そうこなくっちゃね。じゃあ、行くわよッ!」
その一声と共に、砂を巻き上げながら駆け出す夏凜は、片方の木刀を突き出す。
素人から見れば凄まじい速さのそれを、紡絆は簡単に防御し、横から向かってきた木刀をしゃがむことで回避する。
「ッ……!?」
そして自身の木刀を攻撃するために構えたところで、嫌な予感を感じ取った紡絆が大きく後ろへ跳んだ。
瞬間、砂埃が舞い、体勢を崩しながらゴロゴロと転がる。
即座に起き上がり、木刀を振り向きざまに横に振るった。
するとパンっと言う心地よい音が響き、またしても別方向から木刀が向かってくる。
二刀流の夏凜は手数が多く、片手の紡絆は手数が少ない。
故に、回避を選ぶしか無かった。
紡絆は持ち前の生身の身体能力を活かし、勢いよく足を上げて空中後方回転することで回避する。
「これは……」
「まだまだよ!」
またしても向かってきた夏凜に、紡絆の目付きが変わる。
さっきまでは余裕を残していたが、加減をして勝てる相手ではないと判断したからだ。
無論、 本気を出すにしても自分自身の本気だが。
「……!」
「…っぶね!」
ギアが上がったのか、より速く振られた木刀に後ろへ下がり、紡絆は反撃として上段から振り下ろすが、夏凜はいとも簡単に流し、もう一本の木刀を斜め下から振り上げる。
紡絆はその一撃を素早く翻すことで防ぎ、夏凜は敢えて右手の木刀から大振りに振り下ろすという攻撃を出した。
それが隙と見たのか、紡絆は左腕を壁にするよう木刀の側面を左腕に添えると半身を逸らしながら剣先を横に逸らし、攻撃を繰り出そうとしたところで、左手の木刀が下段から来ているのが見えた。
咄嗟の判断で強引に木刀を横にしつつ下に向け、打ち合った際の衝撃を殺すことなく利用して後方へ跳ぶことで距離を離す。
「ハッ……!」
「ふっ……!」
砂に手を付いて着地し、片手の木刀を強く握りしめながら低い姿勢で走ると今度は紡絆自ら攻撃に転じ、夏凜が防御して反撃、それを防御して返したり、畳み掛けるように攻撃したり、と。
木刀と木刀がぶつかり合う音だけが響き渡る。
傍から見れば互角な戦いではあるが、本人たちは違う。
(負けるつもりはないけど、流石だッ! いくら得意分野とはいえ、強い……っ!!)
(こいつ……何が握ったことがないがないって? 何より、
片方は強さに感嘆し、片方は驚愕する。
しかし、またしても勢いが増す剣撃に紡絆の方は防戦一方になっていた。
当たり前だ、片手剣である紡絆は一回しか攻撃が出来ない。
逆に二刀流を自由自在に、まるで剣舞のように踊り、手数で攻撃する夏凜とでは手数に圧倒的な差がある。
故に、ただ防御に徹することで防いでいる状況で、紡絆が後ろに下がれば追うように夏凜もまた足を動かして距離を離させない。
二刀流による滅多斬りを、下がりつつ全て防御するということをしてみせるが、そうなればよく動いてしまうわけで、砂浜という環境で何度も鍛錬をしてきた夏凜と違い、紡絆は足を取られる。
「うっ!?」
「んなっ……!?」
明らかな隙。
流れるように水平に放たれた一撃は、体制を崩した紡絆は避けられるはずもないのに、倒れるように下がり、木刀が胸をスレスレで通り過ぎる。
その体勢で本来は倒れるはずなのにも関わらず、紡絆は踏み込まれた脚で姿勢を戻せば不安定だったというのに、夏凜の攻撃は悉く避けられていく。
紡絆の繰り出す攻撃は、悪く言ってしまえば素人に毛が生えた程度。
才能もあるとはお世辞にも言えず、はっきり言えば戦闘経験のみで戦えている。
そんな彼と違って夏凜のは鍛え抜いたものだ。
対バーテックスだけではなく、実際に対人戦で身に付けた技術なのだ。木刀で受けられたり、まぐれで躱される程度なら問題は無い。
「避けんじゃないわよ!」
「無茶言うな!?」
だが、可笑しい。
いくら攻撃しようとも、不安定な状況から木刀を使うよりも避けた方がいいレベルで躱しており、すぐに体勢を整えると本当に避けられない部分だけ防御し、逸らしている。
素人には間違いなく不可能なはずなのだ。
なぜなら、夏凜の技は、一つ一つの技を繋げて出している。
一つの技で終わるのではなく、そこからまた次の技を出す。
それ故に、繰り出すまではどのタイミングで、どのように攻撃してくるのかが判りにくい。それに加えて二刀流の利点、攻撃の多様さだ。並大抵の相手では防ぐことすら不可能。
しかし、紡絆はいくら素がウルトラマンによって強化されているとはいえ、既に制御下にある彼は、
しかも---
「や、やばい、タンマ! 流石にきつい!」
「問答無用! あんたに当たるまでやってやる!」
「いや、なんでぇえええ!?」
もはや意地。
体力が有り余っている紡絆は、激しく運動しすぎた影響で肉体ダメージが主に脚に来ていた。
このままではガタが来て強烈な一撃を受けそうだったため、中止を願うように
というか、完全にブチッと切れる音が聞こえたような気がした。
間違いなく堪忍袋の緒が切れた音だろう。
不思議と目元に青筋が立ってるような、漫画にありそうなの怒りマークが見えた気がした。
当然だ、こうも手を出しながら当たることなく避けるということは、止めれる余裕があると。お前では攻撃を当てられないという意味にも捉えられてしまう。
はっきり言って、バカだった。
「---そこっ!」
「ッ!」
そして、そんなバカに限界が訪れた。
前に出していた右膝が崩れるようにガクン、と折れ、完全に倒れそうになる紡絆に、ビュンッと
そのまま遠心力を利用して薙ぎ払われた一撃をなんと紡絆は危うい体勢から受け止め、衝撃が殺せなかったからか紡絆は手が痺れながらも大きく後方へ弾かれる。
すぐさま前のめりになった体を戻し、目の前を睨みつけるように見た。
「いない……!?」
ほんの一瞬だったというのに姿が見えず、止まった思考が動き出す。
すると紡絆は気配を感じて振り向いた。
「遅い! もらったぁあああ!」
そう言って、
思わず見上げてしまい、視線を戻した時には斬り返すように向かってくる木刀が目前に存在していた。
「やば---」
到底間に合わず、防御する武器もない。
ただ避けるしか選択肢はなく、判断したって夏凜の叫びのように遅すぎた。
そんな中だと言うのに、紡絆は不思議と世界がスローモーションへと変わったような気がした。
後ろへ跳ぼうと力を入れる自分の体すらゆっくりとなり、ただその中でも迫る木刀だけが視えていた。
そうして刻一刻と体に近づいてくる木刀を視たまま紡絆の体は---
「!?」
明らかに間に合わないはずの木刀を避け、自分のことだというのに理解が及ばないまま困惑するが、ほぼほぼ無意識に上空から落ちてきた木刀に視線を向け、見つけた瞬間には大きく後ろに跳びながら、キャッチしていた。
目の前の夏凜ですら直撃すると思っていたようで目を見開いていたが、未だに上空に居て足が地面に着いてないということは、自由に身動きを取ることが不可能だということ。
今がチャンスだと判断したようで、夏凜が一気に駆け出した。
「ぐっ……っらぁ!」
「ッ……甘い!」
その状況に紡絆に焦りが生まれ、攻撃範囲内へと入った夏凜は木刀を振るい、紡絆は木刀を咄嗟に突き出した。
だが牙突による一撃は意図も容易く逸らされ、夏凜の体は左側へと回る。
「………!?」
何処へ向かったのか気づいたが、遅い。
地面に着地し、ハッ、と気づいた時には夏凜は両手の木刀を同じ方向に紡絆に向かって水平に薙いでおり、その一撃を紡絆は回避---
「ごふっ!?」
出来るはずもなく、物凄い勢いで吹っ飛んだ。
というか、回避しようと足掻いた際に自ら後方に跳んだせいで大きく吹き飛んだ。
びょーんと飛んでいった紡絆は後頭部から地面に落ち、受け身を取れなかったのか後頭部を抱えながら悶えていた。
「って、だ、大丈夫!?」
「う、うぉおお……っ」
流石にそれはやばいと、夏凜が慌てた様子で木刀を置きながら紡絆の元へ向かう。
間違いなく一般人ならまずい頭のぶつけ方をしていたのだ。
あまりにもの痛みに紡絆は悶えるしか出来なかった。
ついでにただでさえ治ってなかった腹が痛すぎて涙目になっていた。
「ご、ごめん。そこまでやるつもりはなかったわ……」
「い、いや…平気だ」
申し訳なさそうに手を差し伸べてきた夏凜の手を取り、起き上がった紡絆は軽く腹を擦る。
この男、未だ重傷なのに夏凜と互角に渡り合うということをしていたのである。
「はは、それにしてもやっぱ夏凜は強いなー。負けちったや」
「そんなこと言うけれど、ここまで打ち合うことの出来た同年の子なんてあんたともう一人くらいよ。その子は鍛錬を積んでたし、私も鍛錬を続けてきた---そう考えると驚かされたわ」
降参というように両手を上げつつ苦笑する紡絆だが、夏凜は複雑そうにそう語る。
思い出してるのか、はたまた大した鍛錬を積んでもない癖にここまで食い下がった紡絆のことを思ったのか、それは定かではないが。
「以前言ってた子と同じか? 夏凜を打ち負かしたって…人間なのか怪しくなってくるんだけど」
「そうだけど、あんたが言う? 少なくともちゃんと人間よ、つーか私だって人間だっての!」
「いやいや、俺は普通だろ」
「………」
本気で言ってんの?と言いたげに呆れた目を向ける夏凜だが、紡絆は本気で言ってるので首を傾げていた。
普通の人からすると、身体能力云々かんぬん以前に紡絆の行動原理なんて理解出来ないし、身体能力や反射速度に至っては軽く人外の領域に達している他に精神面が強すぎる。
こんな人物がごまんと言えば他生物が可哀想だ。ついでにアホで溢れるので困る。
「うん…なんかもういいわ」
「へ?」
「こっちの話。考えたら頭痛くなってきたから」
「そうか、ちゃんと休まなきゃだめだぞ」
「いや、その言葉に説得力なさすぎでしょ」
はぁ、とため息を吐く夏凜はもう色々と投げやり気味になっていた。
なお、やはりキョトンとした表情をする紡絆だった。
「そうだ、結局俺が負けちゃったし、約束は守んなきゃな。んで、俺は何やればいい? 夏凜のためなら何でもするけど」
「ああ…そういえばそんなこと言ってたっけ……。なんかもう色々疲れたから頭から抜けてたわ」
「まったく、短時間で忘れるなんておっちょこちょいだなぁ」
誰のせいでこうなってるのか問いただしたいものだったが、そんなことしても無意味なのは百も承知なのでイラつきはしたがやめた。
「それで、何かあるか? 流石に俺でも出来ないものは無理だけど、出来ることならなんだっていいぞ」
「そう言われてもね……」
夏凜自身は別に紡絆にして欲しいこともなければやらせたいこともなく、何もなかった。
そもそも試合に対してやる気を出させようと適当な条件を述べただけなのだ。
しかし紡絆はじぃっとこちらを見つめてきている。
「んー?」
「じゃあ---り」
「んえ?」
若干顔を赤くしながら、夏凜は顔を逸らすが、紡絆は聞き取れていない。
というのもあまりにもの小声すぎて聞こえなかった。
「だ、だから……りょ……り--って」
「………???」
察しの良い者なら分かっても不思議ではないが、そんなの期待するだけ無駄というのを証明するかの如く頭上にクエスチョンマークを次々と生み出す。
「っ〜!だから料理作ってってのが条件!」
「ああー!」
恥じらいを誤魔化すように叫んだ夏凜の言葉を聞いて、紡絆はようやく合点が言ったように拳を手のひらにポンっと置いた。
「なんだ、そんなことでいいのか? いつもと変わらないし夏凜のためなら毎日でも作るけど」
「い、いいのよ。他に思いつかないし、あんたの料理も……その、コンビニ弁当と比べても悪くないし」
「そっかそっか、じゃあとびっきりの作ってやる! だとしたら早速行くゾー!」
「え、ちょっ、ちょっと!?」
自然と、それはもう当たり前であるかのように紡絆は木刀を回収して、夏凜の手を取ると転ばないように気遣って調整しながら走っていく。
友人と呼べる人間が居なかったのもあるが、こうやって異性に握られることもなかった夏凜は顔を赤くしていた。
しかしまぁ、その手から感じる温もりを悪くないと思っている夏凜は紡絆に引っ張られる形で、足を動かしていく---
(……そういえば、さっきの試合。
妙に左の反応が遅かったような気がしたというか、違和感があった。
もしかしたら紡絆もなんかの後遺症が……いや、でも普通だし…まさか、ね)
その際に、あれほど異常な反応速度を持つ紡絆が最後の最後だけは呆気なかったことを思い出した夏凜は自分が感じた違和感を思い返す。
しかし今も普通にしている紡絆を見て、気のせいだと判断した。
もし後遺症があったなら、こうも普通に走ることなど難しいと思ったからだ。
木刀を置いてから買い物へ行き、また夏凜の家へと帰ってきた紡絆は料理を作り、一緒にご飯を食べた。
東郷や小都音に比べれば、その料理たちは人並みだ。
けれども、紡絆だからこそ出せる料理の温かさというのはある。
味は普通であっても、不思議と温かい気持ちになれる---それが紡絆の料理だった。
「それにしたって、夏凜の剣技は凄かったなぁ。純粋な剣技だったら俺は間違いなく勝てないな」
「あんたは反応速度が異常過ぎんのよ。それに素人に負けるほど生半可な鍛え方はしてないもの」
「うん、だから凄いなって思った!」
「ふ、ふん。当然よ」
食べ終わってふと思ったのか、真っ直ぐ純粋な言葉で告げられ、夏凜は顔を赤くしながら腕を組んでそっぽ向く。
「改めて夏凜と出会えてよかったって思うよ。こうやって話せるようになって、夏凜が勇者に選ばれたからこそ、出会えたからこそ、こんなふうに居られる。
そこが俺は嬉しいな」
「きゅ、急ね……そんなこと言うなんて、どうかした?」
「うーんいやさ、これからも勇者としてじゃなくて、勇者部として、三好夏凜という一人の女の子と仲良くしたいって思うんだ。
だから是非ともよろしくって言いたいのかな」
「いや、どうして自分でも分かってないのよ……」
「はは、わかんない。けど、夏凜は勇者部の一員なのには変わりないし、これからも仲良くしたいって思った! 一緒に居ると楽しいし俺は夏凜と過ごす日々は好きだ!」
紡絆に語彙力があれば曖昧な感じではなく、ちゃんと心の内を表現出来たのだろう。
しかし語彙力皆無な彼は上手く言葉に出来ず、ただ自信満々に言い放った。
「っ……まったく。ほんと、バカね」
「ええっ!? なんで罵倒された!?」
「バカなのは事実でしょ」
紡絆が意識がないとき、抱えていた以前の悩み。
友奈の言っていた通り、紡絆は無自覚にも本当の答えを伝えていた。
その言葉を聞いた夏凜からは照れ隠しのように言葉が呟かれ、紡絆は食いつくが、夏凜は姿勢を変えない。
だが彼女の耳は赤くなっていて、努めて冷静さを保っているようには見えるが照れてるのには間違いなかった。
「いや、そんなはずは…。そんな真実は、ミリ単位で違うはず……!」
「それ、ほとんど認めてるようなものだから」
「!?」
「なんで今気づいたみたいな驚き方してんのよ!」
しかし紡絆はまたしても気付かず、むしろ否定しようとして自爆していた。
「……けどまあ、あんたは変わんないわね。不意打ちは勘弁して欲しいけど」
「んん? 不意打ち? よく分からんが…そりゃ、変わんないだろ? なんだ? 変わったってそう思うようなことあったか?」
不意に言われた言葉に、紡絆はただ首を傾げる。
紡絆からしたら自分が変わったかどうかの自覚なんてないし、変わったつもりもなかったからだ。
むしろそんなことを言い出したことに何か不安にさせてしまうようなことがあったのか、と考えるが思いつかない。
なので考えるのをやめた紡絆は疑問を投げかけた。
「……ほら、あの時戦った私以外はみんな何かしらの影響があったじゃない。友奈は味覚、東郷は左耳、風は左目、樹は声帯。
そしてあんたは、意識不明の重体」
「……まあ、確かにウルトラマンが負ったダメージはそのまま俺に還元される。正直死んだと思ってたしなあ」
思い出すように夏凜が告げると、しみじみと紡絆は遥か過去の出来事のように語る。
過去ではあるのだが、結構最近だ。
しかしそもそもとして、今ですら生きているのが不思議---というか限界ギリギリで、生きていられるのは今彼が持つ、心の内に宿す光とウルトラマン、何よりも使命が彼を生かしている。
もしその使命を終えた時、紡絆の体は間違いなく完全に限界に達するだろう。
果たしてその時には、ウルトラマンが宿っているか。世界があるのか。紡絆という人間が生きているのかは分からないが。
「で、夏凜は気にしてるのか? みんな傷を負ったというのに、
「…ちょっと、まだね」
「別に気にする必要ないのになあ……」
こういう時に限って無駄に勘のいい紡絆は、なんでそんなこと気にしてるのか、と不思議そうに見つめるが、それに夏凜は若干イラッとする。
彼が持つウルトラマンの力は大きい。
バーテックス、スペースビースト、融合型昇華獣、ネオ融合型昇華獣。
どんな敵にすら有効打を与えられるのがウルトラマンという存在で、欠点はエネルギー消費の激しさと制限時間、紡絆のメンタルと肉体に左右される点のみ。
最も活躍したのは、誰から見ても分かるようにウルトラマンだった。
その点、夏凜は他の者が満開し、ウルトラマンの援護やトドメを刺したりしたというのに封印くらいしか出来なかった。
それは果たして---
「私は戦うために来たはず。誰よりも鍛錬して、私以外の候補たちの分も背負って、勇者として戦うために。だというのに何も出来なかったなんて、そんなの私は必要なかったようなものでしょ…っ! 戦いに役に立てないなら居る意味なんて……っいったぁッ!?」
以前抱えた悩み、それがまだ僅かに残っている夏凜は俯き、握る拳を震わせながら声音も徐々に小さくなって何処か悔しそうだった---ところで、紡絆は容赦なく頭にチョップした。
しかも、頭を両手で抑えて目尻に涙を貯める夏凜の視線の先にいる紡絆は、校長先生の話を聞いている生徒並に眠そうにしている。
「あのさ、人にバカバカ言うけど、夏凜も俺と同類じゃない?」
「っ……そんな戯れ事を ---」
「俺は真剣だ」
紡絆は真剣な表情で見ており、いつものようなお調子者のような様子も、のほほんとした雰囲気もなく、至って真面目だった。
その姿に、夏凜は圧倒される。
そうして、ふと紡絆は表情を和らげた。
「俺さ、覚えてないんだ。あの時、一度復活して、ただ力も入んなくてさ。何も出来ないままやられて、剣で刺される---それまでしか記憶がなかった」
「………」
表情が和らいだかと思えば、思い出すように目を細め、何処か遠くを見つめる。
コロコロと表情が変わって、表情が忙しそうだが紡絆の話したことに関しては、夏凜も他の勇者たちも分かっている。
彼女たちは倒れたあとの紡絆を知っているから。
「もう一度復活した時には意識はあったけど、その前なんだろうな。
うっすらとなんというか…分かるんだ。誰かが俺を守ってくれてたってこと。それ、夏凜だろ?」
「……一応」
確信しているかのように目を向けられ、夏凜は目を合わせずに答えた。
確かに守っていたのは夏凜ではある。
けれどもそれは他の勇者たちの力があってこそであり、最終的には守りきることは出来なかった。
「なら役に立ててるじゃん。夏凜がいなきゃ俺はもうここには居なかった。夏凜が居なきゃあの戦いに勝つことは出来なかった。夏凜だけじゃない。みんなが居てくれて、支えてくれて、守ってくれたからこそ俺は戦えた。最後まで走り切ることが出来たんだ。
だからさ、俺は夏凜にすっげー感謝してる」
懐から取り出したエボルトラスターを握りしめ、紡絆はただ笑顔を向ける。
そう、紡絆はあの場で、あの中で戦った者がみんな活躍したと思っている。
誰かが欠けていれば、ひとつでもピースが欠けていれば間違いなく誰かは犠牲になった。
世界はもっと悲惨なことになっていた。
---まぁ、間違いなくその犠牲の一人は紡絆になるだろうが。
「元々ウルトラマンの力は俺だけの力じゃない。夏凜や友奈、東郷、風先輩、樹ちゃん。そして小都音。多くの人たち---みんなの諦めない力が俺に力をくれる。立ち上がれる力をくれる。だから俺は戦えるんだ。
ジュネッスブルーの力に至れたのも、みんなのお陰だから」
俯くように手に握るエボルトラスターに視線を落とすが、そう語る紡絆は何処か嬉しそうで、誇らしげで、幸せそうにも見える。
ウルトラマンの力は、多くのモノに受け継がれ、今、紡絆の元へ宿った。
ウルトラマンは一人で戦ってきたわけではないということを、紡絆はよく知っている。
彼をそう、導いてくれた人がいたから。
「だから、だからさ。俺は何度でも言うよ、夏凜が居てくれて、出会えてよかったって。それに傷を負ってないのは良いことだし、それほど夏凜の実力があるってことだろ? ならそんなこと気にすんな、俺は出会えて共に戦った時からずっと、夏凜のこと頼りになる仲間だと思ってるからさ!」
そして紡絆はただ、太陽のような笑顔を夏凜に向けて、そう告げた。
何の恥ずかしげもなく、嘘もなく、詰まることも無く、本心からただそう告げて見せた。
対する夏凜が見せる表情は驚きと、嬉しさと、照れ臭さ。
何より---
(……敵わないわね。こいつは変わらない、変わることがない。前と同じ---いいえ、前よりも強くて、揺らぐことの無い優しい光を持ってる。
けど悪くなくて、嫌な感じがするわけでもない。
ただ残り続けていた無力感が消えて、暖かい気持ちだけが感じられる……。まったく、私も毒されてきた、ってことでしょうね……こいつには、紡絆には敵わない)
ただ、ただただ眩しくて、熱くなって、隠すように俯く。
夏凜は以前、紡絆に誰もが惹かれる理由を知った。
そして今は---気がつけば自分も彼に惹かれてしまっているということを、惹かれていたということを自覚していた。
感じたことのない、胸の中に宿るポカポカとした温もり。人の優しさが齎した、人情。
その感情は幸福感か、与えられた優しさ故の温もりか、それともまた---自分のしらない別の感情か。
それは夏凜も分からなかったが、不思議ともう、釈然としない心の片隅にあった胸の痞えが下りていた。
本音を話すしか能がなく、本質をそのまま表へと出す紡絆だからこそ、人を巻き込み、気がつけば虜にさせる。多くの人を魅了する。
そうして、みんなが紡絆の元へ集まるのだ。
確かな優しさを持ち、強さを持ち、勇気を持ち、誰よりも何よりも、お人好しのバカ。
それこそ、その在り方を持つのが、継受紡絆という少年だった。
「ほんと……ばか」
「え?」
顔に集まる熱を抑えるように、呟かれた小さな言葉。
それが聞こえた紡絆は困惑した様子を見せる。
「…あほ、バカ、マヌケ、おたんこなす」
「え? ええっ!? なんで?俺なんかいった!?」
突然の罵倒の連続に紡絆は予想してなかったようで、狼狽えていた。
「すっとこどっこい、大ボケ、小ボケ、紡絆!」
「ちょっと待て、それはただの俺の名前だよな!?」
「う、うるさい。こっち見んな!」
「それは理不尽だっ!?」
顔を上げた夏凜は腕で口元を隠すようにしながら顔を逸らしている。
意味が分からないと言いたげに結局見ずに視線を変える紡絆だが、納得の行かなそうな表情だった。
しかし夏凜も夏凜で熱いまま収まらない熱と緩みそうになる頬を耐えるので精一杯で、気にしている余裕はなかった---
時刻は過ぎ、既に夜となっているため、結局夏凜が落ち着くまで見ないようにしていた紡絆は、今は家へと帰るために玄関で靴を履いてから振り返る。
「じゃあ俺は帰るけど、また来るからな」
「はいはい」
諦めたのか、それとも認めたのか適当に返事をする夏凜に気にした様子もなく、紡絆は一つ頷くとドアノブに手を乗せる。
「……ねえ」
「ん?」
そして捻るという動作をしようとしたところで、呼びかけに反応して顔を向け、きょとんと小首を傾げる。
「紡絆は本当に何ともないの? あれだけのダメージを負ってるんだし…それに今日組手をしたとき、
投げかけられた質問は、他の勇者たちと同様に紡絆も何らかの後遺症が残ったのでは、というもの。
その質問に対し、本人たる紡絆はドアノブを握ったまま固まり、内心でビクッとしたが、表には出ていなかった。
だが黙っていても意味はないため、紡絆は笑顔を取り繕いながら夏凜に向かって口を開く。
「…何ともないって! 確かに怪我は残ってるけど、大したもんじゃないよ。むしろ俺が一番元気って自信を持って言えるけどな!」
「…そっ、ならいいけど」
「心配してくれたのは嬉しかったぞ、ありがとうな」
「べ、別に…それより暗いんだから気をつけてとっとと帰りなさいよ」
「はーい。じゃあな」
本当にそれだけだったのか、夏凜は紡絆を見送る。
ドアが閉まる音が聞こえ、夏凜は鍵を閉める。
「気のせい…かしらね。反応が遅れることなんて、有り得ないことじゃないし」
嘘下手な紡絆がまともに嘘をつけるはずがないと、さっきの様子からして判断したようで咄嗟に反応が遅れただけだと、偶然だと思うことにした夏凜はちょっとした違和感を持ちながらもリビングへと戻っていく。
---もしこの質問を投げかけたのが夏凜ではなく、友奈か東郷、小都音だったならその違和感に気づけただろう。
確かに継受紡絆という人間は分かりやすいほどに嘘が下手だし、表情に出やすい。全力で嘘をついて隠し事をしても、いずれ簡単にボロが出てしまう。
ただ夏凜が聞いたのは
だからこそ、紡絆は後遺症がないという本当の言葉を述べることが出来た。
もしこれが
そうして道中を考えるように俯きながら歩く紡絆は、クソ焦っていた。
(あ、あぶねえ……! 話しそうになったああ!
話したらどう説明すればいいか分からないし内緒にして戦ってたってバレたらみんなに怒られる!特に小都音と東郷がやばそうだもん…!
それに元々スペースビーストとの戦いは
夏凜に聞かれた際、紡絆は嘘では無いとはいえ全部話しそうになってしまったのだ。そこに危機感を覚え、話さなかったことに安堵する。
もし話してしまえば巻き込むことになる。
いや、間違いなく関わってくるだろう。
果たして身体機能を失った原因が勇者に長時間なったことか、それともダメージの受けすぎか、満開が原因か、どれか分からないのだ。
共通点は満開をした四人だということ。
それから考えるなら普通は満開が原因だが、本当のところは分からない。
じゃあ、どうすればいいかと言われれば、満開ゲージを貯めさせない、疲労させない、変身させない、戦わせない。
その手段を取ればいいだけであり、紡絆は自分のことを視野から抜けている。
実の所、あくまで彼が教わり、受け継いだのは
そもそも紡絆が自分のことを大切にするような人間なら自分の命が失われる可能性のある場面で迷わず助けたりは出来ないだろう。
ただまあ、それは結局自分のことを考えてないので、傍から見れば一人背負い込んでいるようにしか見えないのだが---当然導かれた紡絆にそんなつもりはないし、彼はもう一人ではない。
「……ッ?」
その時、紡絆は違和感を感じてバッと顔を上げた。
瞬間、世界は変化を遂げた---
苔の生えた歴史的建造物。
よく分からない石像。
鬱蒼と茂っている木々、真っ暗な夜の世界。
神聖さを僅かに感じられる、ストーンフリューゲルのような形をしたオプジェクト。
それは、遺跡の世界だった。
あまりにもの急。
予想外のことに驚く暇もなく、連続で来たということにまたか、と紡絆が思いながら振り向けば、ゆっくりとネオ融合型昇華獣へと至ったノスフェルが降り立っていた。
それを見た瞬間には紡絆は慣れた様子で迷いなく、エボルトラスターを引き抜く。
『シュアッ!』
ネクサスに姿を変え、地面に降つと同時に足から崩れ落ちる。
片膝を着くネクサスに対して、ネオ融合型昇華獣は雄叫びに近い声を挙げていた。
残酷怪獣ガモス、フィンディッシュタイプビースト・ノスフェル、冬の大三角、さんかく座の力を宿すネオ融合型昇華獣。
もはや消耗など気にして戦える相手ではなく、強引に立ち上がったネクサスは一息付くように息を吸ったような動作をし、胸に添えた左腕のアームドネクサスが輝く。
『シュッ!』
それをさせまいと、ネオ融合型昇華獣から溶解液が吐き出される。
瞬間、空間が波を打つように揺らめいて、ネクサスの身体が
既に見た攻撃だからか、滑り込むように懐へと潜り込み、その身を照らす光が消えた直後に、ネクサスはアームドネクサスで腹部を一気に斬り裂いて通り過ぎる。
『ハッ! ハァァァァ---』
大したダメージになってないのは予想通りだからか腕に青白い粒子のエネルギーを纏い、大きく弧を描くように体を動かし、立てた右腕を真っ直ぐ伸ばした。
すると青白い光線が空に向かって放たれ、光が拡散---
『シュワっ!』
神秘の世界が作り出され、メタフィールド内へと戦いの場を変えたネクサスは駆け出し、握った拳を叩きつけ---
『ヘエッ!?』
ネクサスの拳は空振るどころか体ごと貫通し、振り向くとそこにはネオ融合型昇華獣が確かに存在している。
『シェア!』
再び振り向きざまに手刀で狙うが、その一撃は挟型の手によって挟まれて止められる。
もう片方の腕を伸ばし、同じように叩きつけようとすればまたしても挟まれ、両腕が使えなくなった。
『デアッ!』
しかしネクサスのジュネッスは力が上がるのもあって、強引に両手で握りこぶしを作ってから伸ばすことで顔面を殴り、ネオ融合型昇華獣は若干怯むが、お返しと言わんばかりに鼻から放たれた青い光線によってネクサスは吹き飛ばされる。
『っ!?ッ!』
吹き飛びながら後転し、立ち上がるのと同時にパーティクルフェザーを放つ。
するとさっきと同じく、まるですり抜けたかのように、実体を持ってないかのようにネオ融合型昇華獣に当たることなく外れた。
『!?』
それは冬の大三角にも、さんかく座にも、ガモスにも、ノスフェルにも持ってない力。
過去に戦ったゴルゴレムが近いが、メタフィールド内だというのに実体を持ってないことから別の能力だろう。
『ぐあああぁっ!?』
そして、目の前に居たはずなのに突如としてネクサスの
全力でやられたからか、ネクサスは横に吹き飛ぶが、その際に紡絆が過去の戦いで受けた傷が広がる。
ゴルゴレオスとの戦いで、焦がされた左肩。
ネクサスの姿では焦げてないが、赤い光を発していて凄まじい痛みを感じる。
それでも立たねば何も出来ないからかネクサスは左肩を抑えながら立ち上がる。
しかしその体はふらついており、コアゲージの点滅と共にメタフィールドから光の泡が立ち登り、崩壊の兆しが起こっていた。
『ハアッ、ハアッ……シュッ!』
気合いを入れ直すように両腕を勢いよく振り下ろし、助走をつけながら地面を踏切ると、その反動で跳躍しながら片脚を突き出す。
するとネオ融合型昇華獣の
『ファッ!?』
その光が何なのか分からないまま脚を突き出しながら突っ込むが、ネオ融合型昇華獣の体をすり抜け、ネクサスが着地して構えるとなんと左右に二体、分身していた。
警戒しながら左右を見て、左側のネオ融合型昇華獣がネクサスに対して口から溶解液を吐き出した。
『シェッ!』
その一撃を大きく前に転がることで避け、左腕のアームドネクサスに右手を添え、右腕を真っ直ぐ突き出すことで溶解液を吐き出したネオ融合型昇華獣にパーティクルフェザーを放った。
が、その一撃はすり抜け、右側に居たネオ融合型昇華獣が挟型の手が開き、現れたノスフェルの爪をネクサスの背後から斬り裂く。
『ウグォ……!?』
ノスフェルの爪による一撃はウルトラマンの装甲を大きく傷つけ、ダメージによって前進しながらネクサスは振り向くと、今度は前と左右に三体居て、分身している。
『!?』
驚き、警戒するようにそれぞれ順番に構えながら見つめる。
そんなネクサスに対して目の前のネオ融合型昇華獣が爪を振り上げる動作に入り、ネクサスはアームドネクサスを輝かせてエルボーカッターで目の前の敵を斬り裂く---消えた。
そして左側のネオ融合型昇華獣が左からタックルし、ネクサスの体は吹き飛ぶ。
『ぐっ……!?』
正体不明の能力。
透明かと思えば、分身。
しかし本体と思って攻撃すれば、分身にすり変わる。
『……! デェアアアッ!』
ならば、とネクサスは短い動作でクロスレイ・シュトロームを放つ。
適当に放たれたクロスレイはまたしても三体に分身していたネオ融合型昇華獣の一体に直撃し、すり抜ける。
それは予想通りだったのかネクサスは無視し、光線を保ったまま体ごと動かして今度は左へ。
それも分身なのかすり抜けるが、そうなれば残るは一体のみ。
そのまま回転するように背後にいる一体に、ついにクロスレイによる一撃が---
『ウワアァアアア!?』
当たることなく、さらに背後に現れたネオ融合型昇華獣が溶解液を背中に与えた。
溶けるような凄まじい痛みに悶える暇もなく、抜け出すように横へ転がり、セービングビュートを飛ばす---やはりすり抜ける。
同時に目の前にネオ融合型昇華獣が現れ、エルボーカッターで攻撃しようとしたら、右側から爪による一撃を再び食らう。
『グオッ!? フエエッ……!?』
攻撃を受けた影響で回るように足が動き、足に力を入れて顔を上げれば、またしても敵は三体存在する。
一体を攻撃してももう一体から攻撃を受け、ネクサスの攻撃はただ一方的にすり抜けていた。
『ハアッ……ハアッ……』
ついに膝を着き、遺跡の世界が写し出される。
エネルギーの消費の方が早く、理解できない攻撃を前にしてネクサスは力を振り絞って、賭けに出た。
腕を前に突き出し、アームドネクサスを交差する。
『シュアアアッ!』
マッハムーブ。
ネクサスが超高速で地面を賭け、三体のネオ融合型昇華獣に次々と攻撃をしかけた---しかし、
『!!?』
全く攻撃が当たらず、体力が厳しくなったのかマッハムーブによる加速をやめるネクサスは目の前に起きる現象に理解出来なかった。
ただ分かるのは、攻撃をしようとしたら、
そして別のネオ融合型昇華獣にやられる。
どれだけ速度を引き上げようとも、力を強くしても、当たらなければ意味がない。
だが---それだけの能力を携える敵など、限られていた。
故に、継受紡絆という人間だからこそ得られる知識が、彼に正体を伝えてくれる---
803:情報ニキ ID:JoUHou2in
この霧のような能力…次々と現れる分身…青い光線…それに貝殻のような背中に両腕のハサミ! バーテックスの影響かと思ってたけどそういうことか! 誤解してた!
イッチ、わかったぞ!
ネオ融合型昇華獣が持つ最後の能力というか遺伝子!
そいつに入っている遺伝子はウルトラマンティガ38話に登場する蜃気楼怪獣『ファルドン』!
武器は腕の鋏と背中の亀裂から発生させる光と鼻から放つ青色破壊光線!
さらに蜃気楼怪獣の異名通り、自分の幻を複数映し出し翻弄するんだ!
つまりそいつらは幻影!
しかし幻影よりも厄介なのは、”実体と幻が一瞬にして入れ替わる”という能力……!
804:名無しの転生者 ID:gxyxthx1c
まずい…!ティガのスカイタイプですらダメージを与えられなかった敵だぞ!
805:名無しの転生者 ID:GMwMlkJNu
ちょ、ま…途中から見たことある能力だと思ったが、うっそだろおまえ!?
806:名無しの転生者 ID:eurRvQdU2
おいおい、ふざけんなよ!?
なにとんでもない能力持ちにとんでもない火力(ガモスの溶解液とノスフェルの爪)ととんでもない能力(ファルドンの幻影と実体の入れ替わる力)にとんでもない身体能力(融合型昇華獣を超える力に冬の大三角とさんかく座による猛強化)してんの!? とにかくとんでもねぇの付けるんじゃねえよ!
これ単体攻略出来るもんなのかよ!?
807:名無しの転生者 ID:zqIJKRcGC
や、やばみ…! このままじゃ負けるぞ、イッチ!
やっぱり相手の強さがおかしすぎるというか調整してないせいで成長速度が異常すぎるんだよぉおおお!
808:名無しの転生者 ID:ajfKHYxlW
おいバカ、メタフィールド切れ!
エネルギーが持たない、死ぬぞ!!
あー!!これどうしたらいいんだよっ!! ジュネッスが通用しないんですけどっ!?
809:名無しの転生者 ID:NqNBro6l6
ファルドン、ガモス、ノスフェルに冬の大三角、さんかく座…これがネオ融合型昇華獣!?
いやいや、いくらなんでも盛りすぎだろ!?
810:名無しの転生者 ID:GoISfQSoA
確かにピンク色のような紫色のような体の色。
青緑をメインにシマシマ模様のような白色が入っていて、背部の亀裂のような部分は貝紫色…。
しかもタカラガイの殻に似たような見た目。
両腕が鋏で、ヤマアラシのように体と尾の上面に棘状に変化した硬い長毛…。シリウス、プロキオン、ペテルギウス、さんかく座の星の配列…。
こうやって言われてみたら全部の特徴が入ってやがる!
くそっ、なんでここまで分かりやすいのに俺たちは気づかなかった!? 絶対にテレポート、分身、瞬間移動のどれかって認識してたからか!
ここまで特徴あるって考えて、名付けるならネオ融合型昇華獣、ノスファルモス……!
811:名無しの転生者 ID:qJZPqLTIf
ちくしょう!
これも作戦のうちか!?
悩むこと多すぎたしイッチに関してのことで頭がいっぱいだったんだ!
俺たちがもっとちゃんと特定してたら…!
812:名無しの転生者 ID:I7Qapi/Hj
いや、でも分かるかっ!
誰が三体融合してるって思うんだよ!
それもファルドンの能力見たわけじゃねぇのに!
813:名無しの転生者 ID:CjawI84HN
とにかくイッチがやばい!助けて、助けて勇者!助けてノア様ー!
814:名無しの転生者 ID:Vvzk2W0nR
あっ、やば
蜃気楼怪獣ファルドン。
とある次元地球で度々蜃気楼となって表れて「幻の怪獣」と噂になっていた怪獣。
人の心の闇が生み出したと推測され、かつてのウルトラマンティガを追い詰め、その世界の防衛組織すら手も足も出ず、決死の特攻によって正体を見抜くことで何とか勝てた相手。
その能力を持つ、ネオ融合型昇華獣、ノスファルモスと名付けられた存在。
例え分かったとしても翻弄され、何度目になるのかネクサスの体は大きく空中に投げ出された。
『ぐあぁ……。う……ぐぅ……!』
受け身を取ることすら叶わず、落下によるダメージを受けながら体を起こすネクサスは、手を地面に着きながら見上げる。
やはり三体存在し、どれが本物か---いや、そもそも本物などいない。
実体と幻を入れ替えられる力を持つファルドンの能力は、遠くに一体配置してしまえば容易にネクサスを攻略できるのだ。
攻撃するタイミングで、入れ替えるだけでいいのだから。
そしてたとえ攻略する方法があったとしても今のネクサスに為す術はない。
『ハアッ、ハッ……あぐ…!』
限界を現すようにコアゲージが高速で点滅を始めた。
黄金色の泡が立ち登る量が増え、メタフィールドが消えていく。
完全なる崩壊が始まり、神秘の世界は遺跡の世界へ。
メタフィールドを保つことの出来なくなったネクサス---敗北するのも、時間の問題だった。
もし彼が万全ならば、違ったかもしれない。
しかしただでさえダメージは残っていて、回復もしていない。
そして敵は強力な力と身体能力を持ち、ネクサスは左目が見えない。
これはもう、流石に諦めるしか---
『……ッ!!』
否。
どんな状況だろうとも。
どんな状態でも。
どれだけ傷ついても。
どんな困難でも。
継受紡絆という人間に、
もはやエネルギーはなく、それでも立ち上がる。
ノスファルモスは余裕があるのか、幻影を出しながらトドメを刺すべく近づいてくる。
それを見ながらも、ネクサスの、紡絆の闘士は消えてなかった。
(まだ、まだ終わってない! 攻略出来なくていい、撤退させるだけでいい!
たったそれだけでいいんだ。神樹さま、ウルトラマン、力を貸してくれ……ッ!)
諦めない意志。
それが奇跡を起こしたのか、はたまた本当に力を貸してくれたのか---ネクサスの全身が黄金色に輝き、残る全ての力を、引き出した。
『シュアッ!ハアァァッ……』
エナジーコアの前で交差し、白色光に輝く。
ネクサスは両腕を丸を描くように大きく動かすと白色光が収束し、左腕が下に、右腕が上になるように丸い形で固定する。
そしてノスファルモスがバラバラに動き出した。
どれが本物か、偽者か。
分からない。
ただ、ただそれでも---
『フッ---デェヤッ!』
ネクサスは右脚を大きく踏み出し、両腕を大きく左右に振るいながら胸から光線技を放つ直前で、ネクサスの体がブレた。
突然居なくなったネクサスの姿にノスファルモスは固まり、警戒するように見渡す。
そのお陰ですぐに上空へ居たネクサスの存在に気づくが、遅かった。
ネクサスの持つ、エナジーコアから黄金色の光線---コアインパルスが放たれている。
相手を分子分解させる能力を備えるネクサスのもうひとつの技。
その一撃は二体のノスファルモスに直撃し、当然の如く実体は幻と入れ替わり、幻は消え、新たに生み出される---それよりも先に上空のネクサスの体が青色に輝いていた。
『シュ---ハアァッ!』
一瞬の隙。
幻を生み出されたのと同時にネクサスは
やった方法は作戦でも何でもなく、策を練ったわけでもない。
コアインパルスによってまとめて消し去った瞬間、ジュネッスブルーにタイプチェンジしてマッハムーブを使用。
それで強引に一撃を与えた---といった脳筋戦法。
それだけだった。
たったそれだけ。それだけだが、ネクサスは限界を迎えたようにアンファンスへと戻り、片膝を着く。
『……グッ』
倒せるほどの一撃ではなかった。
本当に与えることが出来ただけだと思っていたが、一撃を受けたノスファルモスは地面に落ちると何故か大ダメージを受けたように悶えている。
『………?』
その事に疑問を感じ、よくよく見てみれば、ノスファルモスには
それは、前回放ったオーバーレイ・シュトロームの一撃が掠っていた証。
さらにノスファルモスに干渉した何者かの謎の光弾による負荷の影響と考えるべきか。
つまり、ネクサスに傷が残ったままであるように、ノスファルモスは回復する前に襲撃に来たということになる。
だがそれだけでただの拳が大ダメージに繋がるはずもなく---紡絆は自身の手が、何らかのエネルギーを纏っていた、そんな気がした。
そしてノスファルモスは追い詰めていた側だというのに自身を霧で覆い、何故か撤退する。
(……当たったのは、ダメージが残ってたお陰……か?さっきの感覚は、キミのおかげなのか…?ウルトラマン…。
どちらにせよ、運に助けられた……でももう、限界が、近い…)
撤退させたのは、諦めなかったお陰ではあるが、奇跡に等しい。
果たしてそれは神樹様が力を貸したのか、ウルトラマンが力を貸したお陰か、それともまた別の要因か。
何はともあれ、ついに限界が訪れ、ネクサスの体が完全に力を失い、瞳からは輝きが消える。
光に包まれ、ネクサスの姿は元に戻っていた---
〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
決して諦めない意志によって賭けに近い行動で何とか撤退させたが、限界が近いことを悟る。
でもボロボロなのに生身でも人外じみた行動してる。
そんな状況なのにメンタルが強すぎるっピ!
ちなみに現在の変身可能時間はアンファンスで三分間。メタフィールド展開制限時間は1分未満(ジュネッス保つのが1分ちょい)ゾ…(なお特撮特有の守られない制限時間)
〇ウルトラマンネクサス
割と最近エボルトラスターが鳴ってる光の巨人。
果たしてその理由は…?
〇三好夏凜
まだ完全に悩みが消えてた訳ではなく、友奈と話した際は勇者部を『自分がいるべき居場所』として認識したが、紡絆本人の口から直接聞いたわけではなかった。
しかし今回紡絆のお陰で完全に吹っ切れた。
今の彼女は強いぞ!!
〇ネオ融合型昇華獣
スレ曰く、『ウルトラマンネクサス』という作品には『スペースビースト』『TLT(防衛組織)』『ウルトラマン』という三勢力の力が拮抗するように調整する存在が居たが、ゆゆゆネクサス世界には調整する役回りの存在がいないため、だんだんとネクサスの強さを上回るように強くなっていく。
しかしあくまで『マルチバースの怪獣遺伝子』を素体である『既存のスペースビースト』に強引に組み込む形になるため、既存の肉体が持たない。
故にバーテックスの特性である『御魂』を核として新たな存在へ昇華させることで肉体崩壊を免れているのでは、という推測。
つまるところ、ゲームで言う1種の裏技、バグである。
〇ネオ融合型昇華獣ノスファルモス
あのウルトラマン80を追い詰めた残酷怪獣ガモスの溶解液、ウルトラマンティガを苦しめた蜃気楼怪獣ファルドンの鋏、青色破壊光線、幻の具現化、実体と幻が一瞬にして入れ替わる、ノスフェルの爪と能力、冬の大三角とさんかく座による身体強化を持つ存在。
はっきり言って、ウルトラマン一人で何とかなるレベルではない