【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
やっと書き終えました…表現力というか語彙力というか…もっと増やしたいです。
今回の話は次話の繋がり回となり、次回は原作入る前の重要回になるんでより悩んだんですよね…いやほんまラストがどうしようか2週間くらい悩んだ。
やっと次話執筆出来ます。
あとなんか普通にラブコメ感出たような気がするんですけど、別にそんなつもりはなかった…この作品がラブコメならマジでそう書いてたかもしれん。
無論、今回は友奈ちゃん回。
結城友奈にとって、彼は特別だった。
と言っても、そんな男女の特別な関係といった意味ではなく、また別の意味で。
継受紡絆という人間は何処までもお人好しのバカと誰もが評価する。
それは当然友奈も例外に漏れず、紡絆のことはお人好しで頼りになる男の子という評価。
自分がどれだけ傷ついても、自己犠牲で誰かを助けようとするその姿は、まるで物語や御伽噺にでも出ててくるヒーロー、主人公だ。
気がつけば周りに誰かが居て、ただ普通にしているだけなのに好かれる。気がつくと、笑顔が絶えない空気感を作り出す。頼りにされ、誰もが楽しそうに話す。
不思議な魅力がある、そんな異性。
そんなのは---もはや勇者だろう。
そして今は、本当に
そう、友奈はある意味、継受紡絆という人間に一種の憧れに近しい感情を抱いていた。
(あ、寝落ちしてる……)
そんな彼、紡絆は今、睡眠を決め込んだ。
友奈の席は後ろの方で、紡絆は前の席。
授業を聞いていたようだが、途端にうとうとし始めたかと思えば、紡絆は寝始めたのだ。
眠たくなったから従ったに違いない。
(大丈夫かなぁ……)
友奈も心配出来るほどの成績があるわけではないが、紡絆はテストすら微妙。授業は寝ていて、はっきりいって心配になる。
けれどもなんだかんだ乗り越えてるのは、紡絆の凄いところではあるのかもしれない。
(でも流石に起こしにいけないし、もうすぐお昼だからその時に起こした方が良さそうだね。小都音ちゃんに頼まれちゃったし)
既に紡絆の行動は予測されていたようで、彼の妹の手によって手回しは済んでいたようだ。
友奈は小都音に言われたことを思い出しながらふと東郷の方へと視線を向ければ、視線が合う。
意見は同じなのか、東郷は苦笑しながら頷いた。
それだけで理解した友奈は授業を邪魔しないためにも、改めて得意では無い授業と向き合うことにした---
昼休み。
ぞろぞろと集まるモノや教室を出ていく者が居る中、授業が過ぎても紡絆はまだ寝ていた。
こんなふうに寝てるくせに、注意されないのは担当の先生方が慣れてしまったからだろう。
しかしながら先生方とも親しいのは、さすがのコミュニケーション能力と言うべきか。話す度に授業起きるように注意されてたりはするが。
何はともあれ、騒がしくなった教室の中でも睡眠を続ける紡絆に友奈は近づいていく。
「紡絆くん、起きてー!」
「んぇ…あと、七日……」
「一週間経ってるよ!? ほら、ご飯食べないとお腹空いちゃう!」
友奈がゆさゆさ、と優しく紡絆の体を揺らすが、彼は起きない。
まだ寝足りないのか、それとも威力が足りないのか。
「おーきーてー!」
声量を上げて起こそうとする友奈の努力も虚しく、紡絆は寝ていた。
それどころか起きる気配すらなく、どうすれば起こせるか考え始める。
「うーん、どうしたらいいのかなぁ……」
今も机に両腕を置いて額を乗せたまま動かない紡絆からは寝息が聞こえる。
そんな彼を、友奈は机越しの対面に両膝を曲げながら座ると、机に両手を置いて見つめていた。
「むぐう……」
「……何してんの?」
「あっ、夏凜ちゃん!」
どうしたらいいかなーと顔が横に向いた影響で見えるようになった紡絆のほっぺたを指で突きながら悩んでいると、その光景を見ていたであろう夏凜が友奈の傍に来た。
「以前の戦法は通用しなさそうね」
「うわっ!?東郷、いつの間に……」
すると夏凜すら気づいてなかったのか紡絆の横に陣取った東郷は近くに弁当を置いていたが、今回は通用していなかった。
東郷の飯にすら気づかないほどに爆睡中なのだろう。
「全然起きないんだよね。どうしたらいいと思う?」
「うーん…普通じゃ起きないと思うわ」
「だったら手っ取り早い方法があるでしょ」
現状に困った友奈は話を振ると、夏凜には何か考えがあるようだ。
一体何かと聞こうとして、既に夏凜は行動に移っていた。
「起きなさいバカ!」
「いっでぇ!?」
バシンっと明らかに大きな音が紡絆の頭から鳴り、紡絆は頭を両手で抑えながら周りを見渡した。
「はっ……!?ここは一体…俺はさっきまで江戸にいたはずでは…」
「いつの話よ……」
「俺が分かるわけないだろッ!
……というか、みんな集まってどうしたんだ?」
目が覚めたばかりで寝起きに変なことを言っていた紡絆に夏凜が呆れるが、キッパリと何年前なのか分からないと言い切るくらいに開き直った紡絆は気がつけば友奈も東郷も、夏凜もいたことに首を傾げていた。
「あはは…紡絆くん寝てたから起こそうと頑張ってたんだ」
「中々起きなかったから夏凜ちゃんが起こしたのよ。寝たままだとお昼ご飯食べれなくなるでしょう?」
「はー…なるほど。確かにお腹は空いちゃうか。三人ともありがとうな」
納得したように紡絆は頷くと、素直に感謝の言葉を述べた。
「気にしないでいいのよ」
「…ふん」
「うんうん、それじゃあ一緒に食べよ!」
「ん、だなー」
それぞれ違った反応をし、紡絆は欠伸をすると気の抜けたのんびりとした返事をしながらカバンをゴソゴソと漁り、ゼリーを---
「……!?」
取ろうとしたところで、見つかることなく。
逆に何か固い感触を感じ取って持ち上げて見れば、見慣れた包みがあったことに驚愕する。
「どうしたの?」
「い、いや……ゼリーじゃなくて弁当箱が入ってたからさ」
「これは…小都音ちゃんがやったのね。紡絆くんのことお見通しなのよ」
「てか、昼食をゼリーで済ませようとしてるのはどういうことなの…?」
夏凜の疑問は最もなのだが、それに答えてくれる者はいない。
しかしやっぱり紡絆はゼリーで済ませようとしていたようだが、彼の妹はそのことを理解していたらしい。
そもそも重さが違う時点で分かれという話なのだが……まあ、紡絆だから仕方がない。
「ま、いっか。早く食べないと昼休み終わっちゃうしな」
「そうだね」
「ええ、そうしましょう」
「半分くらい紡絆のせいだと思うけど」
「俺、悪くない。睡眠、大事」
「なんでロボットみたいな言い方してるの!?」
「そもそも授業中に寝るものじゃないのよ、紡絆くん」
「だからバカなのよ」
「俺はバカじゃないし寝たくて寝てるわけじゃないぞ。聞いても分からないだけだっ!」
「それがバカなんでしょうが!」
謎に胸を張る紡絆にツッコミが入る。
何はともあれ、いつもの賑やかさになった紡絆たちは昼食を摂ることにした。
ちなみに周りの生徒たちは、突如として騒がしくなった紡絆たちをまたかと言ったような反応で微笑ましそうに見ていたとか。
どうやら彼ら彼女らは立派に耐性を持ったらしい。
放課後になれば、勇者部は部活動が始まる。
バーテックスの出現がまだ分からなくても、新しくまた来るとしても、スペースビーストがいつ現れるのか分からなくとも依然と変わらず。
今日もまた、部活はあるのだ。
そして紡絆は勇者部には行けず、友奈は東郷を勇者部に送ってから次々と依頼を受けていた紡絆を手伝うことを伝えた後に教室へと向かっていた。
本当は東郷や夏凜も手伝うつもりだったが、東郷の場合は彼女が抜けたらパソコンの知識が全くない他のメンバーは何も出来ず、紡絆が居ない状況で友奈が抜けて夏凜も抜けてしまえば依頼が溢れる可能性もあるため、友奈一人で教室に向かっていた。
(何でも一人で引き受けちゃうんだよね…)
歩きながら思うのが、昼食後の紡絆だった。
次々と同級生たちに囲まれた紡絆は普通に話したり、盛り上がったり、依頼をされて引き受けたりしていた。
中には明らかに押し付けたような感じのもあったが、紡絆は全く嫌な顔もせずに引き受けたのだ。
特に日直でもないのに今日担当することになったのが分かりやすいところだろう。
無論、全員がそうなわけじゃなくて、本音はどうあれ大半の人は申し訳なさそうにお願いしていたようだが、そこは紡絆の人徳がある証だろう。
それはともかく、友奈は少し急ぎ気味に教室へ向かうと、ドアの窓から教室の中を覗く。
もしかしたら紡絆が別の場所に行ってる可能性もあっての行動だが---彼は何とも思ってなさそうに机を拭く姿があった。
嫌な顔ひとつせず、何の苦痛とも思わず。
せいぜい、眠気があるのか欠伸をするくらい。
(良かった、まだ居た)
そう思ってから、友奈は良かったと言っていいものなのかと考えたが、すれ違いにならなかったっていう点では良かったと納得すると、驚かせてもあれなので教室をノックする。
「ふああ……んえ?」
「手伝うよ」
が、気づいてなかったらしい。
欠伸をして眠そうに目を擦った紡絆はドアが開く音で反応し、友奈は苦笑しながら近づく。
「勇者部の方は?」
「小都音ちゃんもいるし東郷さんも夏凜ちゃんもいるから、大丈夫だよ。紡絆くん、今日はいつもより依頼受けてたみたいだから手伝いに来たんだ」
「そっか、まあ早く終わらせられることに越したことはないし、助かるかな。ここは素直に任せようか」
「うん、任されました!」
一人でやるより二人で。
時間効率的な意味でもそう判断したのか紡絆は雑巾を絞った後に友奈に渡し、分かれて机拭きを始めた。
太陽がオレンジ色に染まり、教室へと陽射しが入ってくる空間で、そこにあるのは何も無く机を拭く二人の姿。
険悪な空気があるわけでもなく、放課後に思春期の男女が二人っきりという状況なのに変な空気感があるわけでもなく、ただ静けさだけが存在していた。
「…………」
「…………」
会話がなく、ただ机を拭くだけの時間。
さっきまであった騒がしさも人気も、もはや無く。
唯一あるとすれば、運動場から聞こえてくる運動部の生徒たちの掛け声くらいだろうか。
それ以外は静かで、平和で、まるで教室の中だけが別の世界に取り残されたかのような錯覚にすら思える。
(……そういえば、こんなふうに二人っきりになるのは久しぶりかなぁ…)
いつもは誰かがいて、こんなふうに静かに作業する機会の方が少ない。
友奈と紡絆は割と一緒に行動するが、外でやる依頼だとやはり人目はある。
でも今は、誰も居ないのだ。
そう、誰も居らず、紡絆と二人だけ。
---そう意識した影響か、友奈はチラリ、と横目で紡絆を見た。
紡絆の姿は変わらずそこにあり、表情は真剣そのもの。
しかし何を考えているのかは分からず、むしろ何も考えてないのかもしれない。
「友奈」
一言も発することがなかった中、突如として静かに、それでいて柔らかい声音で紡絆が言葉を発した。
「…友奈?」
「ふえっ…な、なにかな!?」
ただ、ぼうっと手を動かしながら紡絆を見ていた友奈は反応せず、二度目の呼びかけでハッと慌てて返した。
「いや、別に大したことじゃないんだけど、黒板拭いてくる」
「あ、う、うん。じゃあ残りはやっとくね」
「頼んだ」
特に訝しむことも無く要件だけを話した紡絆は言葉通りに机を拭くのをやめて黒板の方へと向かっていく。
その背中を見ながらも、友奈は顔を振って両頬を軽く叩くと、気を取り直すように拭く作業へと入る。
そうしてまた訪れる、沈黙の空間。
決して居心地が悪いというわけではないものの、二人にしては珍しい空気とも言える。
普段はどちらかが話したりするはずなのだが、何故かお互い何も喋らない。
ただ作業するだけの時間が過ぎ、紡絆が少しやっていたのもあって、友奈が先に終わっていた。
「ふぅ…」
軽く額の汗を腕で拭い、友奈は紡絆の方を見ると、彼は今黒板を終えたため、箒でチョークの粉を集めている最中だった。
ついでに粉受けの部分も掃除しているらしく、まだ時間はかかりそうだった。
ひとまず自身の仕事を終えた友奈はバケツを両手で持ち上げ、紡絆に声をかける。
「紡絆くん、私洗面台でバケツの水捨てて雑巾洗ってくるね」
「ん? ああ、持っていこうか?」
「ううん、平気! 紡絆くんはそっちやってて」
「分かった」
バケツの水は半分くらいしか入ってないため、友奈でもそこまでの力を入れなくとも普通に持てる。
だから断ったが、そういう気遣いが普通にできるのは、紡絆の凄いところなのかもしれない。
何はともあれ、そうなると友奈は教室から出なくては行けないため、バケツを手に教室から出ていき、紡絆はそれを見送った後に掃除の続きをしていた---
やることは至って単純。
特別難しいことでもなく、そんなに時間が掛かるようなことでもない。
せいぜい歩く時間に少し掛かるだけで、すぐに終わった友奈は教室目指して歩く。
人の気配が少ない校舎。
運動部の人たちが窓から聞こえては来るものの、外を見れば太陽は出ているが何処か雲行きが怪しく、夜には雨でも降るのかもしれない。
「……あれ?」
そう思っていると、ポケットに入れていたスマホが振動した。
それに気づいた友奈は空のバケツを持ったままスマホを見ると、風から来ていた。
内容は簡潔で、雨が降りそうなため、今日は早く解散するとのこと。
事実、天気予報のアプリを開けば降水量が高く、あくまで予報だが雨が降るらしい。一応天気は晴れてるのだが。
そうなると今日は依頼は出来そうにないが、こういう日もある。
まぁ、そもそも紡絆はある意味依頼をしているようなものだが、兎に角にもそうと決まれば傘を持って来てないため、早く帰らなければびしょ濡れで帰ることになるかもしれない。
このことを伝えるためにも友奈は少し急ぎ気味に教室に向かって歩いていき数分。
無論、行きも早ければ帰りも早く。
「つむ……あ」
終わったことを伝えようと声を掛けて教室に入ろうとして、友奈の手が引き戸に置かれたまま止まった。
「…………」
聞こえはしなかったのか返事はない。
しかし静かで、騒がしくもなく、音すら聞こえない教室の中。
ただ普通に入ればいいだけなのに、友奈は開くという行動を取れなかった。
ドアの窓から見えた紡絆は席に着いて窓を見ており、その姿があまりにもの似合っている---わけではない。
似合ってはいるが、友奈が止まった理由はそんなことではない。
紡絆はただ窓を見ている。
対する友奈は教室の外で、珍しく何処か不安そうな表情をしていた。
(なんだろう、
胸の前で不安を隠すように握り拳が作られ、ただ紡絆のその姿に何かを感じる。
その不安は、友奈だけが抱いたものではない。
そしてこれは、今日初めて感じたことでもなく、既に何度も感じられた妙な感覚だった。
(何故か分からないけれど、最近の紡絆くんを見てると、不安になる。それは東郷さんも同じだったみたいだけど、どうしてだろう……?)
そう、東郷も時々感じ取った違和感。
紡絆は窓を見ているだけなのに、その視線は何処か遥か先を見ているようで、
別にそんなことはないはずで、何も無いはずで、それでも家族である小都音を除けば、継受紡絆という人間の近くに最も居たのは東郷美森と結城友奈という二人の人間。
そんな二人だからこそ、気づくことすら難しいほんの僅かな変化に気づいた。
(今の紡絆くんは放っておけば、どこかに行っちゃいそうな、消えてしまいそうな感じがして……あの時、みんなで海に行った帰りから感じるようになった…)
紡絆が何を考えているのか、それは友奈には分からない。
ただ口角をあげて外を眺める紡絆は一体何を見て、何を感じて、何を思っているのか。
ただ分かることは、友奈は普段浮かべる紡絆の無邪気な、純粋無垢な笑顔や人を惹きつけるような雰囲気は好きでも、こういう紡絆の笑顔や様子は、好きじゃなかった。
だからこそ---
「紡絆くんっ!」
一歩。
たった一歩を進むだけの勇気を振り絞って、いつもと変わらぬ明るさで紡絆に声をかけた。
「……ん? おーおかえり」
友奈の声に反応した紡絆は気がついたように目を瞬きさせ、すぐに
その笑顔を見て、内心でほっと息を吐きながらも友奈は表に出さなかった。
いつもそうで、声を掛ければ彼は元に戻る。
なんの違和感もない、いつもの紡絆。
だから友奈は、その一歩を進み続ける。
「遅くなっちゃった? 風先輩からメッセージが来てたんだけど、今日は部活はおしまいで帰るように、だって」
「…ん? いや、そこは気にしてな…ああ、ほんとだ。見てなかったなぁ……」
立ち上がった紡絆はスマホを取り出し、確認したようで苦笑いを浮かべる。
---その姿を見ると友奈の中にあった、先程の不安は少し和らいでいた。
「だからほら、帰ろっ!」
「おわっと…分かったって。そんな逃げるわけじゃないんだから」
ただ、ただそれでも、胸の中に残り続けるナニカは日に日に大きくなっているのも確かで、友奈はそれらを隠すように、打ち消すように迷いなく紡絆の手を取って引っ張る。
紡絆はそれに対して何も抱かないまま苦笑いしたままだったが、友奈にとっては違う。
手を繋いでいれば不安は無くなるのだ。こうやって引っ張っていけば、彼はきっと離れることがないだろうと。
少しの気恥しさを感じながらも、友奈の手は彼女が思っているより強く握られていた。
だってこうしていれば、友奈は彼を感じることが出来るのだから。
だが---紡絆にはその痛みは感じられず、ただ手を握られているという感覚程度にしか感じられていなかった。
空全体を覆い、厚さや色にむらが少なく一様で、暗灰色をした雲。
乱層雲に埋め尽くされた空の下を、紡絆と友奈は歩く。
時刻はまだ夕刻であり、真っ暗というわけではない。
しかし晴れているのにいつ雨が降ってもおかしくないほどには空は暗かった。
ちなみに二人で歩いているが、東郷は小都音と一緒に帰ったので二人になっただけである。
「雨、降りそうだね」
「そうだな」
そしてその空を見上げて、友奈が口を開いた。
返ってきた言葉は共感の一言。
続く言葉はなく、無言の時間が生まれかける。
「そっ…そういえば、紡絆くんは傘持ってきてるの?」
「いや、ない」
「私もないや…今は大丈夫だけど、降ったら急いで帰らなきゃ」
「ああ」
なんてことのない会話。
だというのに、友奈は話題が尽きそうになる度に、別の話題を出そうと考える。
そのまま考えながらチラッと横目で紡絆を見れば、彼は目を細めてぼうっと上空を見ている。
それを見ていたら、やっぱり友奈の中には不安が浮かび上がる。
「……紡絆くん」
「……ん?」
気がつけば、友奈は彼の名を呼びながら足を止めていた。
紡絆は止まった友奈に対して気づき、名前を呼ばれたことのもあって、止まりながら首を傾げていた。
「あ…えっと……」
「……?」
止まって、呼んで、そこで終わった。
何を言うか考えていたわけではなく、芽生える不安を無くしたくて、その不安が溢れてしまって、無意識に名前を呼んでしまった。
続く言葉に言い淀む友奈は、胸の前で握り拳を作り、少し俯いたかと思えば、顔を上げた時には何処か覚悟を決めたような表情になっていた。
「紡絆くん。最近…何かあった?」
「…へ?」
何かを考えて発言したわけじゃない。
故に友奈の疑問に、紡絆は素っ頓狂な声を上げる。
そして驚いたように、目を数回瞬きさせていた。
「あ…その、なんだろう…。なんだか紡絆くんが遠くに行っちゃいそうな、そんな感じがして……だから何かあったのかなって」
「いや、特になにかあるわけもなく至って普通だけど……さっきからなんか様子がおかしかったのはそれか?」
「お、おかしかったかな?」
「俺はそう感じたなー」
聞いても特に何ともなさそうに言われ、逆に言葉を返された。
時々無駄に鋭いときがある紡絆だが、今回ばかりは友奈が分かりやすかったのもあるだろう。
「まぁ、けど---」
一度区切り、前にいる紡絆は暗く、それでも大空に広がる雨雲を見つめた後に、振り返るように友奈を見た。
その時の紡絆は何かがあるわけでもなく、ただいつも通りの普通の表情。
唯一違うのは、真剣そのものな所。
「俺は何処かに行ったりしないよ。少なくとも困ってる人や、今の友奈みたいに笑顔を浮かべてない子がいるのに、俺が何処かに行くわけないだろ?」
そう言いながら、彼はニッといつもの笑顔で笑う。
その笑顔は不安を煽るようなものではなく、怖くなるようなものでもなく、人を安心させるような、そんな笑顔。
その姿は、姿こそ---
(……あぁ、いつもの紡絆くんだ)
誰かを思いやる優しさ。
人を置いていくことなく、誰かと寄り添って歩ける強さ。
惹きつける魅力。
紡絆が紡絆たらしめるものは確かに存在して、変わってなくて。
(私、自分でも気づかないうちに不安になってたのかな。紡絆くんといると、私は私じゃなくなって、つい後ろ向きになっちゃう…)
友奈はあくまで勇気を振り絞っているだけで、彼女もただの女の子。
バーテックスとの戦いも、スペースビーストとの戦いも、全部怖くて、それでも勇気を出して戦っている。
自分が弱音を吐いたり、不安になれば、みんなもそうなるかもしれない、と明るく居ているが、友奈も本当は足が竦むほどに怖い。
今回みたいに、異常に不安になる時だってある。
そんな友奈が唯一、弱音を見せられるのが、
否、紡絆の人間性が、友奈の本当の心を引き出しているのか。
「前も言ったろ」
「……え?」
突如として言われた言葉に、友奈の思考が固まる。
そんな友奈を見て何を思ったのか、紡絆は彼女に寄り、その手を取った。
「あ……」
「別に弱音を吐いたっていい。何かあるなら、言ってくれたらいい。友奈も普通の女の子だろ。俺には特別何か出来るような力はないけど、こうやって手を伸ばすことはできる、掴むことは出来るんだ」
握られた手。
伝わる体温はとても心地よく、陽射しの光を浴びているような錯覚を覚えるほどに温かい。
手を伝わり、胸につっかえる憂いが浄化されていくように、友奈の心にも響いていく。
「……すごいなぁ」
無意識に、呟かれた言葉。
その声はあまりにもの小さく、紡絆には聞こえていないようだったが、それは友奈の本心だろう。
(影が差し込んでも、紡絆くんは簡単に照らして、誰かに勇気を与えれる…それって本当に
もしかしたらウルトラマンも、紡絆くんだからこそ選んだのかな)
友奈の見つめる先には、誰よりも前を歩いて、共に歩んで、誰かを笑顔にさせることの出来る、とても眩しくて強い男の子がいる。
在り方は変わることなく、まるで物語に出てくるようなヒーロー。
困ってる人や悲しんでる人が居れば、打算無しで手を伸ばして人助けする少年。
「友奈?」
「……ふぇ?」
そうして、ただじっと見ていた友奈は、紡絆の呼び掛けに我に返る。
どうやら思い耽ていたせいで話は聞いてなかったらしいが、紡絆が何を言っていたのか友奈は聞いていなかった。
「……まぁ、いいか。
「………?」
紡絆の言葉が理解出来ず、ただキョトンとする。
なんの事かと状況を理解するように見て、違和感のあった手を見た。
そこには、強く握られた手がある。
それも、紡絆からではなく友奈から。
「え、あ…こ、これは、その……」
「…ん?」
その事に自覚したからか、友奈はさっきまで手を取ることに気にしていなかったのに、何故だか無性に顔に熱が集まる。
紡絆は不思議そうにしているが、すぐに笑った。
「たまにはいいんじゃないかな、こうやって繋いで帰るってのも。俺は友奈と居られるの楽しいし、それで安心出来るならなんだっていいからな。
どうするかは任せるけど」
そう言う紡絆は別に気にした様子はなく、恥ずかしがってる様子は微塵もない。
ただ本当に任せる気なのか、紡絆の手に力は入ってなかった。
「………」
悩むように手と紡絆の顔を友奈は見る。
自身の手とは違くて、ゴツゴツとして固く、力強くも優しさを感じられる手。
(こ、こうやっていると、
普段はそんなことを考える友奈ではないが、こうやってふとした時にただの気が合う友達ではなく、
故に、僅かながらそのような思考に至るが、友奈はじっと下から覗くように紡絆を見つめる。
「……うん、たまにはいいよね。友達でも、手を繋いで帰るもんね」
「そうだな…いや、そうなのか? すまん、それは流石に分かんないや」
誰に言っているのか、よく分からなくなって言い訳がましい発言をする友奈に紡絆が反応するが、紡絆に分かるはずもない。
「えっと…だから紡絆くん、その……良かったら、このまま帰っても…いい? も、もちろん嫌ならいいからね!?紡絆くんが嫌なら無理にってのも嫌だし、こうやっていると不思議と安心出来るから居たいだけで別に他に理由がある訳でもなくって、男の子の手ってこんなんなんだなーとかもう少し繋いでいたいって思ったわけじゃなくって---」
「い、いや俺は全然いいけど。じゃあ、このまま帰ろうか」
「あっ……う、うん」
慌てるように捲し立てて次々と紡がれる言葉に友奈自身よく分かってないが、それ以上に理解することに思考を完全停止させた紡絆は全く力の入れてなかった手に少しの力を入れる。
すると二人の間には手が繋がれ、改めて自覚すると友奈は顔を赤くしながら珍しくも俯きがちに弱々しく頷いた。
「…雨、夜になるまでは降らなさそうだなー」
「そ、そう……だね」
上空の天気は曇ったまま。
しかしながら友奈の心を表すかのように、真っ暗なわけではなく、確かに明るかった。
そんな下を、二人は手を繋いで歩く。
男女の違いはあれど、同じ学校の制服を着て、鞄を持って、少しの身長差しかない二人が手を繋いで歩く姿は、周りから見れば恋人にしか見えないが、そのことを指摘する者は居らず、せいぜい通りすがりの人が微笑ましく見たくらいだろう。
(きっと、大丈夫。だって、紡絆くんはこうやって近くにいるもん。凄く温かくて、安心出来て、ちょ、ちょっと恥ずかしいけど、たまには甘えたって…いいよね。うん、不安が無くなるから手を繋いでるだけだし、他に理由なんてないし…でもやっぱり、私にとって紡絆くんは
自分が自分らしく、
誰かに伝えたこともなければ、特に本人に伝えるには恥ずかしくて言えないが、密かに憧憬を抱く相手。
その感情を改めて抱きながら、友奈は自分が気づかない内に寄り添うように体を寄せていた。
---当然、普段が鈍感過ぎる紡絆は一切気づかなかった。
家に帰れば、紡絆を迎えるのは当然ながら小都音だった。
しかし玄関先でエプロン姿で出迎えた小都音は、紡絆をじーっと見つめる。
それもどこか、探るような視線。
なんだか家族とはいえど、妙にむずむずというか、とにかく落ち着かない紡絆は苦笑して口を開いた。
「……ちゃんと弁当は食べたからな?」
「うん、どうしてそこだと思ったのか私でも分からないけど、ゼリーは持って行ってたよね?」
「………」
どうやら見当違いだったらしいが、にこやかな笑顔を紡絆に向けながらも確かに怒っている小都音の表情を見て、紡絆は思い切っきり視線を逸らした。
見込みを誤った上に、自爆する紡絆である。
「おにいちゃん?」
「…ごめんなさい」
にこにことしているのに、何故か逆らうことの出来ない威圧感を感じた紡絆は、素直に謝った。
たまに勇者部の中では東郷相手にもあるが、何故こうも何も言えなくなる時があるのか紡絆は不思議だった。
「謝ってもどうせやるでしょ。お兄ちゃんのことはお見通しだよ」
「流石だなぁ…」
「やっぱり反省してない……」
「あはは」
ジト目で見つめる小都音から逃れるように、紡絆は体ごと背けた。
笑って誤魔化そうとしているが、誤魔化せるはずもないだろう。
「……はぁ、もういいよ。それより結城さんと帰ってきたの?」
そんな紡絆に対して諦めたのか、ため息を吐いた小都音が話を変えるように紡絆に聞く。
「ん?ああ、一緒だったし」
「そっか。だったら、もう大丈夫だね」
「え、なにが?」
「んーん、何も分からないお兄ちゃんは知らなくていいの」
「さらっと貶されてるような…」
「気のせいじゃない?」
「そうか、気の所為か」
あまりにものちょろい紡絆だが、考えても分からないため思考放棄したようで一緒にリビング歩いていく。
「……まぁ、でも…程々にして欲しいけどね」
「何か言ったか?」
「お兄ちゃんは相変わらず人たらしだなーって」
「???」
小声で呟かれた言葉は聞こえなかったらしいが、全く脈略もなければ意味のわからなかった小都音の発言に紡絆はただ頭の上で疑問符を浮かべまくっていた。
しかしながら、兄に対して妹の察し能力は高いらしく、何があったのかおおよそ予想出来ているような様子ではあるが---ともかく。それからリビングへと向かった二人。
いつものようにご飯を食べ、いつものように過ごし、時間が過ぎていく。
窓を見れば雨雲があったから予想出来たが、雨が降っていた。
「凄い雨だね…」
「…ああ、大雨だな」
小雨ではなく、大雨。
じぃっと窓を見ていたら、凄まじい量の雨粒が見えてどれほど降ってるのかが分かる。
もし部活をしていたら、本当にびしょ濡れで帰ることになっていたかもしれない。
少なくとも傘を持たずに外に出れば、すぐにびしょびしょになりそうだった。
「お兄ちゃん?」
「………」
ただ窓を眺める紡絆が気になったのか、小都音が声を掛ける。
しかし紡絆からは反応がなく、少しして彼は顔を上げると小都音の方へ振り向く。
「小都音、俺ちょっと外行ってくる」
「え?」
「帰り、遅くなると思うから気にせず寝ておいてくれ」
制服からエボルトラスターとブラストショットを取り出し、ズボンのポケットに入れた紡絆は上着だけ取ると、言葉を聞く前に玄関へ急いで走っていく。
「ちょ、ちょっと待って、お兄ちゃんっ!」
慌てて小都音は玄関先へ向かい、靴を履こうとしていた紡絆の腕を取って止めるが、紡絆は視線を向けながら首を傾げた。
「こんな時間に、何処に行くつもり…?」
「大丈夫だって。コンビニに行くだけだから」
訝しげに、それでいて心配といった表情で向けられる視線に、紡絆はいつもの笑みを浮かべると、小都音の手を優しく解いて頭をぽんぽんと撫でる。
「あっ……」
そうして、彼女の言葉を聞くよりも早く、
その姿を小都音は見ているしか出来ず、伸ばされた手は空を切っていた。
「……嘘つき」
果たしてそれはどの意味が込められた言葉なのか。
悔しさか、それともまた別の感情なのか。
唇を噛み締めつつ俯きながら呟かれた言葉は、誰かに届くことも無く、一人となった家の中に消えていった。
ただ分かるのは、小都音の手は、紡絆に届かなかった。
雨が降る中。
紡絆は必死に走っていく。
しばらくして辿り着いたのは、人気のある場所ではなく、全く人気もなければ雨音しか聞こえない、少し開けた場所。
「……来る」
“ドクンッ︎︎ ︎︎”
紡絆の口から発せられた言葉と同時に、エボルトラスターが小さく鼓動した。
そのタイミングで彼の体は輝く。
人気のない場所へわざわざ来たのは、誰にも見つからないためだろう。
それは判断として正しかったようで、暫し待つことも無く、一瞬で紡絆の体は現実世界から別世界ともいえる、真っ暗な遺跡の世界へ転移させられた。
もはや見慣れ、それでいて決して来て欲しくはなかった現実。
ただし、そこにスペースビーストの姿は何処にもなかった。
「……?」
普段は戦闘が始まると言うのに、またしても気配がしない。
エボルトラスターも鼓動することなく、周りを見渡す紡絆だが、無論何も無い。
あるとすれば木々や古びた岩くらいか。
「---ッ!?」
ただ警戒しながら周りを見渡していると紡絆は嫌な予感を感じると共に、横へ転がった。
瞬間、さきほど紡絆がいた位置が爆発し、紡絆は巻き込まれながら吹っ飛ぶ。
「くっ……なんだ…!?」
『フッ……よく避けたな』
土埃が舞う中、独特なシルエットが映り込み、聞こえてきた声を、紡絆はかつて聞いたことがあった。
迷いなくエボルトラスターを握りしめ、そこを睨む。
「……メフィスト?」
以前の戦いでは現れることがなかった、ファウストに次ぐもう一人の闇の巨人。
死神に似た見た目をするその巨人は、右手から三日月形光線---ダークレイフェザーを迷いなく放つ。
「くそっ!」
すぐさま後ろへ跳ぶことで回避を試みるが、衝撃波は回避出来るはずもなく、後ろへ跳んだ影響もあって紡絆の体は大きく離されるが、体勢を崩しつつも着地すると、エボルトラスターを構える。
「っぁ……!?」
生身では対抗出来ないと分かっている紡絆はすぐに変身しようとエボルトラスターを引き抜こうとするが、左肩から我慢できないほどの痛みが走り、思わず左肩を抑える。
『フンッ!』
「うっ……!?」
展開されたメフィストクロー。
身体能力に大きく差があるようで、一瞬にして接近された紡絆は唇を噛み締めながら痛みに耐え、振り下ろされたメフィストクローを両腕で防ぐ。
その際にエボルトラスターがどこかへ吹き飛ぶが、追う余裕などない。
なぜなら人間の身では耐え切ることが出来ずに膝を着き、力が込められると体が海老反りになりつつある。
「う、ぐぅ……!」
『どうした、光を纏わないのか?』
期待するような、余裕の見える様子でメフィストはクローを押し込もうとする。
それを両腕で防ぎながらもギリっと紡絆の歯から音が鳴る。
「なんで……」
『……ん?』
「ど、して……ッ!」
『………!』
足に力を入れ、崩れそうな体勢から少しずつ立とうとする。
生身でメフィストの一撃を両足と両腕の力で押し返していく紡絆の姿にメフィスト自身も少し驚いたように力を込めていた。
「俺は……戦いたくない…!」
『…なんだと?』
力の差は互角。
しかしメフィストからは、紡絆の言葉を聞いて明らかに不快となった。
それを示すように、押し返していた紡絆の体は、最初よりも押されていた。
『何を言うかと思えば…くだらないことを。戦いたくないだと? ならば、貴様は死ぬだけだ!』
「……がはっ!?」
足を上げたメフィストに反応するが、両腕が塞がっている紡絆に防ぐ術はなく、腹部に蹴りを受けた紡絆は勢いよく吹き飛ぶ。
そして地面に落ちると転がり、止まると腹を抑えていた。
『言った筈だ。これはデスゲームだと…!
貴様が死ぬか、オレが死ぬか。それだけに過ぎん。ファウストのやつは
「……! お前…あいつは、仲間じゃなかったのかよ…!」
『敗者に存在価値など必要ない』
死者を冒涜するような発言。
自分のことでもないのに、紡絆の握り拳が血が滲むほどに強く握られ、歯ぎしりしていた。
「……あいつも、ちゃんと生きていた…敵同士だったけど、確かに生きていた…!
それを悪くいうのはおかしいだろ…!
お前の言う通り、ファウストは、母さんは俺が殺した。その罪は、決して消せない!
でもこうして話せるなら、そんな悲劇は起こす必要は、する意味は無いだろ!
俺たちは話し合えば分かり合うことだって、きっと---ッ!」
『黙れ』
一瞬。
強化された紡絆ですら見えない速度で、メフィストが紡絆の首を絞め上げながら木に勢いよく叩きつける。
背部に受けた衝撃で酸素が肺から抜け、首を絞められているのもあって呼吸が出来なくなるが、紡絆は真っ直ぐな瞳で見つめていた。
『貴様の目も、言葉も、在り方も、全て不愉快だ。忌々しい。
分かり合えるだと?光である貴様と闇である我らが分かり合えるはずもない。なぜそうして諦めない?なぜ今もオレをそんな瞳で見ている?』
締め上げる力が強まり、空中なのもあって足がぶらつく。
メフィストの手を両腕で掴んで緩めようとするが、紡絆の力を悠々と超えている。
その程度では効果もなく、それでも紡絆は苦しそうにしながらも見ている。
「ず……っと、かん、がえ……てた! 俺が、得た…ひか、りのい……み!」
『…………』
「わ、わっ、か……らな、い。い…いまも…! それ、でも……それでもッ!」
『ッ!?』
紡絆の力が、強まる。
浮いていた体は徐々に地面に近づき、紡絆はメフィストの腕を引き離していく。
「救いたい……これ以上、誰かを失いたくない!もう目の前で、誰かを死なせたくないんだっ! ファウストを殺して思った!分かり合えたんじゃないかって!闇も光も関係ない!人間だけじゃなく、お前たちも!みんなが笑顔になれるように、誰かの幸せを、守りたい!」
そうして勢いよく腕を振り下ろし、メフィストの拘束から逃れた紡絆は横に転がる。
『…ハッ、何を言うかと思えば、そんな理想を振りかざして、何になる? それを叶えたいならば、戦うしかない。戦わなければ、貴様の守りたいものが失われるだけだ』
鼻で笑い、ただ嘲笑う。
メフィストに背を向ける紡絆の拳は握られていて、一体何を思っているのか。
「お前だって、生きてる…考えも、感情も、言葉も話せる…なら、それなら…!」
『バカバカしい。オレたちにとって、貴様という存在は邪魔でしかない。いや、そうだな---貴様にとっての絶望は、
「………そうか」
悟る。
会話を交わし、ほんの少しでしか無かったが、理解してしまった。
光である紡絆の道と闇である彼らの道は同じになることはなく、それぞれ逆方向で異なる。
悔しそうに、辛そうに、紡絆は俯く。
道が繋がることも、思いが届くことなど決してない。
分かり合うことなど出来ず、最初から殺し合う関係にしかなれない。
それこそ、定められた宿命。
ウルトラマンを宿した、紡絆の辿るしかない道。
『話す必要はもうない---戦わないならば、貴様は死ぬだけだ』
「ああ---そうかよ、分かった……どうやっても、分かり合えないんだよな…。だったら俺は---」
背後から迫る、ダークレイフェザー。
生身で受ければ間違いなく死ぬそれは気づいてるのか定かでは無いが、紡絆の手には吹き飛ばされたはずのエボルトラスターがいつの間にか握られていた。
「お前を止めるために戦う!これ以上誰かを殺させない、犠牲にさせない!それが---俺として、ウルトラマンとして出来る、分かり合うことの出来ないお前たちに出来る、唯一のことだ!」
殺すために放たれた一撃が迫る。
しかし、振り向いた紡絆の表情からは迷いなどなく---否。
最初から彼に迷いなどない。
ただその道があるのかどうか、聞きたかっただけ。
それが無意味だと悟ることになってしまったが、彼の覚悟を示すように既に鞘の抜かれたエボルトラスターが横向けに向けられていた。
『シュアッ!』
同時に光に包まれ、巨大化したネクサスがアンファンスとしての姿で片腕を突き上げながら
光に照らされたその雨は、別世界だと言うのに何を現しているのか。
まるで紡絆の心情を表すかのように、
『戦う気になったか…それでこそやりがいがある! 貴様の光を得て、全てを滅ぼしてやろう…ハッ!』
決して混じり合うことのない道。
互いに進む道が違い、互いに迷いも戸惑いも、考えが変わることの無い彼らは戦うしかない。
それを示すように、雨の降る遺跡には巨大化した二人の光と闇の巨人が対峙していた。
『……フッ!?』
だが---これは殺し合い。
止めるために戦う紡絆と殺し、世界を滅ぼすために戦う闇の陣営には関係ない。
1対1など生ぬるいことが出来るはずもなく、生み出された暗雲からノスファルモスが現れた。
『シュ……デアッ!』
アームドネクサスを胸元で輝かせ、腕を振り下ろす。
雨粒が弾き飛び、ネクサスの姿が変わる。
銀の姿から、青の姿へ。
貫通力と消費エネルギーの低さと速度に特化した、本来は違う紡絆だからこそのジュネッスブルー。
『フン……ハァッ!』
『シェアッ!』
メフィストクローを構えるメフィストと素早く駆けるネクサスが交差する。
互いにダメージはなく、振り向くメフィストと向かってきたノスファルモスを捌き、後ろ蹴りで軽く怯ませたネクサスの視線がぶつかり合った。
『…………』
『…………』
場の膠着。
見つめ合う彼らは動かず、互いに攻め手を探していて---最初に動いたのは、ノスファルモスだった。
例の如く三体の幻影を生み出し、ネクサスに接近する。
『!』
どれが本物かは分からない。
一瞬にして囲まれたネクサスは見渡し、即座に空いている空中に逃れるように跳躍した。
『デェアッ!』
『ぐっ…!?』
その考えは読まれていたようで、明らかに誘い出されたところをメフィストが両脚で蹴り飛ばす。
しかし明らかに空いていたのは空中のみ。
ネクサスも予想していたのかガードに成功し、空中で回転すると大きく回る。
放たれた溶解液はネクサスに直撃せず、ネクサスは遠回りしながらメフィストに拳を真っ直ぐに突き出す。
だがあっさりと防がれ、反撃に放たれたクローを下がることで避けるとアームドネクサスが輝き、振り抜こうと---
『ぐあぁ!?』
したところで、背中に青い光線が直撃し、その隙を逃すメフィストではなく、上空から首を締めながら地面に叩きつけていた。
地面に叩きつけられた際の痛みに悶える隙もなく、締められる。
『う……ヘアッ!』
メフィストの腕を掴んだネクサスは捻るように拘束を外し、拳を叩きつけて引き離すと右腕から形成したシュトロームソードを腕に添えながら振り向く。
するとシュトロームソードに溶解液が直撃し、それらを切り裂くとパーティクルフェザーを放ち、背後から放たれたクローをシュトロームソードで跳ね除ける。
『ハアアッ!』
『ヘェアッ!』
互いに腕を戻し、シュトロームソードとクローが同時に突きつけられた。
光と闇が膨張し、ネクサスとメフィストの体を吹き飛ばす。
『ウウッ……!』
『っ……ヘェッ!?』
メフィストは吹き飛んだ際に後転で体勢を戻し、元のアローアームドネクサスに戻ってしまっているがネクサスは後退していた。
復帰の早いネクサスがメフィストよりも早く攻撃に転じようとしたところで、背後から両腕をがっちりとホールドされる。
『シュアっ、デェアッ!』
すぐさま力を入れ、拘束を逃れようとするネクサスだがノスファルモスの力は強く、拘束が外れない。
『---ダアァッ!』
『ウアッ…!』
そんなネクサスに走るメフィストがクローを突き出し、抵抗していたネクサスは背後から突如力が消えた影響で自ら前進することになり、クローの一撃を胸に受ける。
ダメージによって体が反転してしまうネクサスだが、そこにノスファルモスの爪が襲いかかり、左腕で防御するもののあまりにもの力に防御が剥がれ、メフィストから強烈な回し蹴りを受ける羽目になる。
『グァッ…!?』
己の力を超える、ネオ融合型昇華獣とダークメフィスト。
真正面から戦っても勝てないと判断したネクサスは胸を抑え、アームドネクサスを交差した。
『……ん?』
周囲を見渡すノスファルモスと、動きを止めるメフィスト。
視界から消えたネクサスに対して、メフィストは冷静に上空を見つめた。
『シュアァァ---デュアァ!』
メフィストたちを見たまま空中で上昇しながら下がるネクサスは前傾姿勢になると両腕を交差し、両手で三日月型の光刃を発射する。
一度放った後、ぐるぐると空中旋回しながらさらに連続で発射していくと地上へ三日月形の光刃が迫る。
ボードレイ・フェザー。
それらに対してメフィストは連続側転で躱し、ノスファルモスは幻影を生み出すことで回避する。
『ハアッ!』
全てを回避し、両腕を広げて赤黒い光弾を形成したメフィストはその光弾に左掌をぶつけ、上空に光弾が放たれた。
『フッ---!?』
空中旋回していたのもあって、元の体勢へ戻るのと同時に接近してきた光弾を避けようとネクサスは動き出すが、それらはネクサスの上空で拡散。
ジュネッスブルーの高速スピードで次々と避けていくものの、青い光弾と網のように拡散した溶解液がネクサスの動きを止め、拡散した光弾が落ちることなく元の形へと戻るように中央へといたネクサスに一気に襲いかかった。
『シェ---ウアァアアアッ!』
当然逃げ場を完全に消されたネクサスに避ける術はなく、目の前をサークルシールドで防御するが、上下左右、後ろから光弾が直撃し、回転しながら物凄い速度で頭から落ち、轟音を響かせる。
『う……アァッ……!』
一体でも苦戦するネオ融合型昇華獣がいるのに、メフィストがいればボロボロなネクサスには手も足も出ず、コアゲージが赤く染まり、点滅が
勇者もおらず、独り。
勝てる見込みもない戦い。
それでもネクサスは立ち上がる。
『デェア!』
『ウグッ……!』
ふらふらになりながら立ち上がるネクサスに、ゆっくりと歩んだメフィストがクローを縦に振り下ろした。
アームドネクサスでガードし、ノスファルモスの突進に吹き飛ばされ、地面に落ちるよりも早くに幻影から入れ替わり、ネクサスの吹き飛ぶ先に存在したもう一体のノスファルモスがネクサスを吹き飛ばし、キャッチボールするかのように次々と吹き飛ばしていく。
ただひたすらにダメージを負い、持ち前のスピードすら、ノスファルモスには通用しない。
例え抜け出せても、素早いメフィストの動きに翻弄され、崩された状態を整える前にやられてしまう。
そして、ノスファスモスの爪とメフィストのメフィストクローがネクサスの胸を切り裂き、火花が散る。
『---ウワッ……ェヤアアアアァァ!?』
反撃することも叶わず、さらなる連斬に怯むネクサスにノスファスモスの頭突きとメフィストの蹴りが炸裂し、ネクサスの体を吹き飛ばした。
『…………』
着地することすら出来ずに地面を転がり、うつ伏せに倒れたネクサスが動かない。
近くには例のオブジェクトも存在し、着地したメフィストは見下していた。
『その程度か?』
せめて紡絆という
彼が一人ではなく、勇者を連れてきていれば、変わっただろう。
---もはや希望はなく。
『……ァ…シェ…。デェアアアアアアッ!』
だが、ネクサスは立ち上がり、さっきよりも高速になったコアゲージに右腕を翳す。
同時にアローアームドネクサスにエナジーコアの光を投影してアローモードを形成した。
光の弓を引き絞り、虹色の輝きがネクサスの体を覆う。
『ハッ! ハァァァ---』
対するメフィストはつまらそうに見つめ、両腕を交差した後に左右に広げると両腕を下に大きく回した。
闇のエネルギーが纏わり、右顔付近に前方に向けた右腕を左拳で覆うと、右腕のメフィストクローを後ろ側に横に構えたまま十字となった左腕から赤黒い光線が放たれる---ダークレイ・シュトローム。
そしてネクサスから放たれたのは、超高速の光の弓。
アローレイ・シュトローム。
互いの技がぶつかり、光と闇の稲妻が辺りに響き、中心でエネルギーが収束---膨張し、大きな爆発が起こる。
そして---ネクサスの瞳から、光が消え失せた。
825:名無しの転生者 ID:zjyy4tlJ
い、イッチ!? おい、しっかりしろ!
ダメだ、エネルギーが消えた……。だから勇者を連れてこいって言ったのに…!
826:名無しの転生者 ID:tRrnFX/+F
ったりめぇだろ!本来なら次に継承してても可笑しくないレベルなのにここまで連戦だぞ!?持ってた方がおかしかったんだよ!
休んでも回復しないし、マジでやべぇ! このままじゃ世界が滅びる!イッチだけじゃなく、ノア様も限界なのか…!?
827:名無しの転生者 ID:E9LmNPQ7i
くそっ!せめて勇者が居てくれたら!そうしたら御魂を引きずり出せるのに…!
って、おいちょっと待て!なんか掲示板もおかしくないか!?
828:名無しの転生者 ID:8fcsjHd33
え、なにこれ、何がおきてんの!?こんな現象見たことないぞ!?
829:名無しの転生者 ID:cJ6B5zhit
おいイッチ!立て!頑張ってくれ!
く、くそっ、バグってんのか!?映像が、きえ
830:名無しの転生者 ID:YXD4hntmR
ちょ、まっ、な、んだ、これ。文字すら化け鬆大シオ繧後う繝?メ???シ繧?縲∫ォ九▲縺ヲ縺上l?√♀蜑阪@縺九◎縺ョ荳也阜繧貞ョ医l繧九d縺、縺ッ縲√>縺ェ縺?s縺?窶ヲ窶ヲ縺薙?縺セ縺セ縺倥c縲∝?驛ィ邨ゅo縺」縺。縺セ縺??ヲ?
---雄叫びを上げるノスファルモス。
地面に手を付きながら、頭を抑えて見つめるメフィスト。
視線の先には、コアゲージを鳴らしつつも倒れたネクサスが存在していて、瞳に光はなかった。
『---なんだ?』
勝利を喜ぶように、ノスファルモスがトドメを刺すべく歩いていく。
それを背後から見ながら、何故か安心出来ないメフィストは、訝しげに見つめていた。
何も無い。
ネクサスは力尽き、もはや立ち上がる力はないだろう。
だというのに、胸の内には不安だけがある。
そしてその不安は---まさに的中しようとしていた。
『ハアッ!』
ネクサスの瞳が戻り、物凄い速度でノスファルモスが吹き飛ぶ。
その事実に唖然としていたメフィストはすぐに我を取り戻し、ダークレイフェザーを飛ばした。
『フッ---デェアッ!』
アームドネクサスを輝かせ、ジュネッスへとタイプチェンジしたネクサスがダークレイフェザーを縦に切り裂き、一直線に走る。
『なっ……フッ! ダアッ!』
『ジュワッ!シェアアッ!』
驚く暇もなく、接近を許してしまったメフィストはクローを突き出すが、ネクサスはそれを流し、肘打ちで胸を打つと、反撃で繰り出された蹴りを叩き落とし、流れるような動きでメフィストの腹に深く腕が突き刺さる。
その状態でアームドネクサスにエネルギーが行き渡り、エルボーカッターが一気に切り裂く。
思わず腹を抑え、体を丸めてしまったメフィストが顔を上げた瞬間には、顔面に放たれたクロスレイ・シュトロームがメフィストの体を一気に吹き飛ばした。
『!』
怒ったかのような獣のような声の叫び。
ノスファルモスがネクサスを囲む。
幻影の三体。
一斉に攻撃を仕掛け、誰が本物か分かりづらいように動いていた。
ネクサスは構えを解き、首だけを動かして視線を彷徨わせる。
『………』
一番最初に前方から放たれた溶解液。
足を一歩後ろに動かすことで避け、突撃してきたノスファルモスの一体をスルー。
ネクサスの体をすり抜け、幻影が新たに生まれる。
そして背後から放たれた青い光弾を半身を逸らすことで避け、振り下ろしてきた爪に反撃することなく、背後のノスファルモスも消えて新たに幻影が生まれる。
最初に生み出した残る一体。
斜め横からダイブしてくるが、ネクサスはそれを無視した。
---すり抜ける。
『フッ!シュアッ!』
最初に生み出されたのは全て幻影に入れ替わったようだが、既に左右からは新たに生まれたはずのノスファルモスが同時に襲いかかった。
するとようやくネクサスが構え、瞬時に腕に炎を纏い、拳を
明らかに両サイドを狙うべきなのに、迷いなく放たれた一撃。
それはなんと、真っ直ぐに突撃してきたノスファルモスの腹部にその拳が突き刺さっていた。
その戦い方は---正しく、
炎の円柱がノスファルモスを貫き、風穴を開けながら彼方まで吹っ飛ばしていた。
『………ぐぁっ……!』
それを見据え、追い打ちをかけるべく両腕を輝かせ、交差した。
トドメの一撃であるオーバーレイ・シュトロームの動作へ入り、突如として膝が崩れ落ちる。
限界を迎えたようにネクサスの体は倒れ、ジュネッスブルーへとタイプチェンジしながら片足を着いていた。
『………ッ!?』
そして次に、ネクサスは周りを見渡していた。
その瞳は白く輝いており、輝きは失われていない。
ただどこか困惑しているようにも見える。
『な、んだ……何が、起きた…!?』
『!』
理解が追いつかない様子でメフィストが立ち上がっていたが、その体はふらついている。
明らかに違った、ネクサスの姿に狼狽えながら。
そのことに反応したネクサスは構える。
『ぐ……デェアッ!』
先程のダメージが大きく響いているようでメフィストは崩れ落ちそうになるのを耐えると、最後の抵抗と言わんばかりの行動に出た。
右手のメフィストクローを横に向けるとクローが黄緑色に輝く。
光が収まると、メフィストは横にしたメフィストクローを前方に構えた左腕の前に添え、素早くメフィストクローを右腰に添えるのと同時に左腕を横にしながら胸元で構える。
するとエネルギーが収束し、メフィストは真っ直ぐにクローを突き出した。
それによって黄緑色の光弾が放たれる---メフィストショット。
その狙いはネクサスではなく、その背後だった。
そう、遺跡のオブジェクト。
ストーンフリューゲルのような形をした、遺物。
『シュワッ! グアアアァァァアッ!?』
『ヌグァ……!』
瞬時にそれに気づき、ネクサスはパーティクルフェザーを飛ばしながら横へ飛び、己の体を犠牲にするように両腕を広げて守ろうとしていた。
咄嗟に放たれたパーティクルフェザー。光粒子エネルギーの刃と黄緑色の光弾が僅かに上下にズレ、互いの技がぶつかり合うことなく通り過ぎる。
相殺が叶わなかったメフィストショットは守ろうと飛び込んだネクサスの胸へ直撃し、その威力はネクサスの体を簡単に吹き飛ばした。
そこでネクサスの体が光り輝く。
それと同時に光粒子エネルギーの刃がメフィストの横腹を切り裂き、メフィストが地面に膝を着いた。
そしてネクサスの体が遺跡のオブジェクトに当たる直前---ネクサスの姿は遺跡から消え失せ、メフィストも消える。
その場の遺跡には、ウルトラマンも、ウルティノイドも、回収されたのかネオ融合型昇華獣も、全て消えていた。
つまり---彼らの戦いは、相打ちだった。
弾かれるように、紡絆の体が大きく吹き飛ばされる。
突如として空間に穴が開き、紡絆は遺跡に来る前の場所ではなく、砂浜に体をバウンドさせ、転がっていく。
ようやく止まれた紡絆は自身の唯一見える視界が赤く染まってることに気づくものの、意識は朧気だった。
「ま、だ……た、たた…か……え………る」
目の前に落ちるエボルトラスターに手を伸ばし、その手がエボルトラスターに乗せられると、そこで紡絆の意識が完全に途切れた。
エボルトラスターはうっすらと鼓動し、消沈する。
---ザーザーと土砂降りと言えるほどに降る雨。
ここまでの雨ともなると海の近くなのもあって人はおらず、人の気配はしない。
ただ時間だけが過ぎ、血だらけの少年を雨が濡らす。
治療してくれる人なんて出くわすはずもなく、奇跡が起きて怪我が治ることも起きることもなければ、ウルトラマンが現れる気配もない。
なおかつ、意識のない彼は動くことも出来ない。
そうして、ただ、ただ時間だけが過ぎ、雨が流れ続ける血を洗い流していっていった---
「……ん?」
そんな土砂降りだというのに、一人。
砂浜に近づく者が居た。
年齢は倒れている少年と比べると、圧倒的に老いており、外見上は60代か70代くらいだろうか。
時刻は23時を過ぎ、そんな時間にいるのは明らかに普通ではなく、明らかに怪しい。
杖を着きながら、その老人は倒れた少年にゆっくりと歩み寄り、見下ろした。
「この少年……」
血だらけだというのに、不思議と老人は驚いた姿を見せない。
それはまるで、血を見ることに
ただ穴が空くのではという程に見つめ、少年のことを射抜くような視線で見続けて、少しして驚いたように目を見開く。
「ほぉ……そうかそうか…。ああ、すごく、似た懐かしい気配を、光の輝きを感じるかと思えば---死なせる訳にはいかんだなぁ……」
懐かしそうに、眩しいものを見るかのように、遠くにいる友人に思い馳せるかのような、似た人物を知っているかのような笑みを浮かべると、その老人は今までの動きが嘘のように、俊敏な動きで少年とエボルトラスターを回収していた。
「
何処か敬語と老人語が混じり、声も若い声と老人の声が同時に響く。
果たしてどちらが本当の老人のものかは分からない。
それはともかく、老人は何かを理解したような様子で、少年を見る。
その時、近くに海があるからかたまたま近くに堕ちたのか、それは定かでは無い。ただ雷鳴が轟き、老人と少年を照らすかのように真っ暗な砂浜が光に照らされ、影が生まれた。
帯電する水海。
その影響か、映る。
その影は---異質。
例えるならばそう、人類が空想し、考え、生み出したフィクションに出てくるような、エイリアン。宇宙人を彷彿させるような、そんな影。
そしてそれら全てを証明するかのように老人は、紡絆を抱えたまま一瞬にして姿を消していた。
その芸当は決して人間が出来ることではなく、辺りに残ったのは、何も無かった。
そう、血だらけの少年も。エボルトラスターも。老人と杖も。
何もかもなく、この場の誰もが、老人以外と紡絆の存在を知れる
〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
普通なら一話か二話は最低でも使うレベルのことを全く悩まないクソ強メンタル。
しかし精神はいくら強くとも肉体は等の昔に限界を迎えているため、戦闘でも支障が出て敗北を喫したようだが、なにやら起きたようで……?
〇結城友奈
原作と違い、こちらの友奈は紡絆という存在がいるため、普通の女の子らしさが出ている。
例:赤面したり異性と認識したり、弱音を見せたりなど。
が、実は紡絆の前しかその姿は見せていない。
ぶっちゃけかわいい。
ちなみに紡絆に対しては一種の憧れを抱いているようだが…?
もしかしたら紡絆の様子に気づいたのは、そんな彼女だからなのかもしれない。
〇天海小都音
よく出来た妹。
色々と察したりしたが、大雨の中、エボルトラスターとブラストショットだけを回収した上に傘も持たずにコンビニに行くとかいう明らかな激クソヘタクソな嘘を聞いて理解したので止めようとしたが、彼女の手は届かず、その結果紡絆は……。
〇ダークメフィスト
本質が光ではなく、闇なので紡絆の和解の意志を拒んだ。
本人はウルトラマンとの戦いをゲームとして楽しんでいるようだが、目的はやはり遺跡の破壊とウルトラマンを殺すことのようだ。
だが紡絆という存在は闇の存在からすると忌々しくも邪魔な存在らしい。
(メンタル強すぎて精神攻撃が全く効かないんだから)多少はね?
〇老人
紡絆を見つけ、一緒に何処かに消えた老人。
見ただけで紡絆がウルトラマンの変身者と一瞬で見極めたらしいが、何やらウルトラマンのことを知っているようだ。
その正体は……。
〇掲示板
謎の現象に巻き込まれたやつら。
神の作った機能だというのに、神の機能に不具合が出たと思われるが…?
そのため、紡絆が倒れた後の戦闘は彼らは知らず、紡絆が現実世界へ帰ってきたところしか知らない。