【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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すみません、お待たせしました。
ようやく書けたと思ったら文字数がとんでもないことになったので三話構成に変えました。
この話自体は書けてましたが日常編(笑)が終わるまで内容変わる可能性があったので投稿出来ず…それと作者がインフルにかかって40度以上の熱で死んだり治ったと思ったら風邪と花粉症のダブルパンチを受けたりアニメ見まくってたりで書けてませんでしたが、無事に書けたので三週に当たって投稿していきます。
あんまり長くてもあれなので手短に行きますが、今回の話は前・中・後半に分かれ、伏線回収作業に入るので色んな謎と真実に迫り、転と結へと向かうために話は大きく動きます…でもティガニキたちの話(番外編)も重要になるのに長編なせいで死ぬほど書いてねぇな?まあ(無理そうなら消して話だけにすれば)ええか…。
えー何はともあれ、皆様の予想聞かせて欲しいなー(ちら)
あとグリッドマンユニバース最高でした…あれは神(数時間前に視聴終了)





「-友好の証-フュジティブ」

 

 

◆◆◆

 

 第 35 話 

 

 

-友好の証-フュジティブ 

 

×××

 

日常編その②

天海小都音編・前編

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---気がつけば、何処か知らない世界へと居た。

嗅覚も聴覚も、視覚も触覚もなく。

自分が一体何者なのか、何をしているのか、何も分からない。

 

(ここは……)

 

気がつけば、そこにいたのだ。

思い出し、紡絆の両目に映るのは、真っ暗で、眩しくて、白と黒の世界。

白黒に染まり、沿線上には何も広がることも無く、虚無だけが広がる。

 

(俺は、どうなったんだっけ……)

 

そんな中でも、紡絆の精神は乱れることはなく、ただ冷静に脳がここに居る前の記憶をフラッシュバックしていく。

戦いに負け、遺跡を守るために体を犠牲にしたこと。

意識が途切れ、何も出来なくなったこと。

ただ死んだということだけは不思議とないと確信出来て、白黒の世界を紡絆は歩き始めた。

 

(これは、俺の迷い? 違う、迷いじゃない。遠くて、遠くて、果ての先にあるように、どこまでも遠い。これは……なんだ?)

 

とてつもなく遠く、何処までも広がる世界の、中心に存在する、ひとつの点の光。

階段のようなものをひたすら登り、遥か先にあるのが星の輝きのような光だった。

星のような、月の光のような、太陽のような輝き。

それに手を伸ばして、足を動かして、伸ばしても伸ばしてもその光は掴めず。

必死に足を動かす紡絆の足元が、突如として崩れる。

階段が、全て消えた。

まるで、光を手に出来ないかのように。

 

(やっぱり俺じゃ……光には届かないのか。俺には、なれないのか…?ウルトラマン……)

 

落ちて、堕ちて、墜ちて---何処までも堕ちる。

下を見れば、そこにあるのは無数の闇。

どれだけ足掻こうとも、手を伸ばそうとも、全てが崩れる。

白が、光が塗りつぶされ、紡絆の力は失われたように手が落ち、体は自由落下を始める。

そうして世界は、紡絆は闇に包まれ、闇は紡絆を蝕んでいく。

そんな暗闇の中でも遥か彼方にある光は輝き続け、手を伸ばし続けてもただ遠のく。

そうして紡絆は完全に闇へと飲み込まれかけたところで、ふと胸元が虹色に輝くと()()()()()()()()()()()()---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……!?)

 

瞬間、紡絆は座っていた。

椅子に座ったような状態で、知らぬ間にいたのだ。

体を包んでいた闇もなく、落ちたような感覚もない。

ただその場所は何処かの教室で、窓から入る光はやけに強い。

色も少しモノクロで、不思議な空間だった。

 

(喋れない……口がない? 体は動く…痛みはないか。これは魂の状態、なのか?それにここは…知っているような、そんな気がする)

 

口を抑えてみれば、光の粒子が散る。

まるで自分の体ではないようで、精神だけが切り離されたかのような状態。

何よりもその場所は、この場所は、紡絆のよく知る---()()()()()()()だった。

 

(ウルトラマンを感じられない…違う、切り離されてるのか…?

他にも掲示板すら機能しない…。

さっきから起動することなくノイズが走る…でも僅かにこの世界から神聖さを感じる……?移動してみるか)

 

胸に手をやり、目を瞑るが何も感じられない。

普段はウルトラマンの存在が確かに感じられていたのに、だ。

どこを探ってもエボルトラスターが存在せず、脳裏からはノイズが走る。

ただいつもと変わらぬ---否。

いつもとは違い、静かで何も無く、喧噪もなければ物寂しい世界。

ここに居ても何も変わらないと判断した紡絆は、ひとまず窓を見つめた。

例えウルトラマンが居なくともその身体能力は維持されているからか、()()ことが出来た。

神聖さを感じる、ソレを。

 

(あれは……まさか!?)

 

窓を開け、慌てて飛び越える---当然、紡絆の体は明らかに落下したら死んでしまうレベルの高いところから落ちかけた。

 

(うおぉっ!?あぶなっ! 久しぶりに生身か分からないけど死にかけた!)

 

口があれば間違いなく叫んでいたことを心の中で叫びながら、窓の縁を

全力で蹴ることで跳躍し、無事に着地する。

ふぅ、と別に出てはいないが気分的に冷や汗を拭う動作をすると、改めて見渡す。

相変わらず色素は薄く、色彩が機能しているのかどうか怪しい。

けれども外の世界を、紡絆は何度か見たことがあった。

目の前に映る景色、一体どれほどあるのかすら分からないくらいに複雑に絡まりあい、巨木から細い木々まで生い茂っている世界。

ある一点だけはやけに輝いており、それを見て、紡絆は驚く。

 

(ここは、やっぱり…()()。そしてアレは、神樹様…?)

 

そう、何度も守護しようとメタフィールドで塗り替えた、バーテックスと戦うための世界。

何よりも、紡絆の目だからこそ---紡絆ではなくとも、遥か先に見える巨大な光の中に樹木があり、その光が樹木の神々しさを強めている。

さっきから感じられる神聖さは、間違いなくアレだった。

 

(…………)

 

流石の紡絆も目の前に神様が居るとなると驚きで目を見開き、固まっている。

樹海の世界、つまり生身で見たことはあるが、こうして夢で見ることなんて記憶上は今までなかった。

そもそも夢なのかどうかすら怪しいのだが、どちらにせよ何も無いのだ。

どうすればいいか悩み、気がつけば紡絆の体は、神樹様に向かって歩いていた。

黙々と、何も考えることもなく歩く。

距離はとてつもなく遠く、ウルトラマンに変身して飛行すれば一瞬でも、歩くには時間がかかる。

しかし一切苦とも思わず、ただただ歩いて体感では1時間は経っただろうか。

 

(でっかいなぁ…これが俺たちを護ってくれてるのか。いつもありがとうございます)

 

辿り着いて見上げた先には、遠くで見た時よりも大きく見える神樹様が存在している。

紡絆は喋れない代わりに、拝んで感謝を述べた。

紡絆は他の四国民と違い、神樹様を心酔しているわけでもそこまで信仰しているわけでもない。

それでもいつも守ってくださることに感謝はしているのだ。

 

(…………)

 

暫くそうしていただろうか。

ただじっとして見上げ、何をする訳でもなくウロウロとする。

そう、紡絆は別に目的があってここに来たわけじゃない。

他に何も無くて、とりあえず来ただけ。

 

(…なんだろう)

 

だが。

だが、それでも。

 

(…………)

 

体が、勝手に動く。

自身の意志とは裏腹に、紡絆の体は一歩ずつと神樹様へと近づいていき、神樹様は紡絆の存在に気づいたのか、元々気づいているのか。

細い輝く根のようなモノを伸ばし、歓迎するかのように、受け入れるかのように次々と道を開けていく。

足元には地面しかなく、道を阻害するようなものは根のようなモノが全て排除した。

そうして神樹様は輝き、紡絆の体は神樹様の中へと---

 

 

 

 

 

 

 

 

『---ダメだよ』

 

入りそうになったところで、()()()()()()()()()()が聞こえ、紡絆の体は入る寸前で止まった。

 

(……!?)

 

ハッ、とし、意識を完全に取り戻した紡絆は自身の足が神樹様から数歩離れたところで止まっていることを理解した。

いや、正確には移動させられた、というべきか。

誰かに引っ張られたような、そんな感覚があった。

 

『それ以上はダメ---そこから先に進めば、貴方はもう戻れなくなっちゃうから』

 

誰かに腕を掴まれていて、でも知っているような()()()の声で、ただただ不思議な感じがした。

つい最近聞いた声で、だけど何処か違くて、そう、何かが違ったのだ。

知人だが別人。でも別人でも似たような人物を知っているような、不思議な感覚。

 

(この、声は---)

 

知っている声ではある。

だが確認しなければ分からないため、紡絆は自身の腕が握られている背後へ振り向こうとし---何処からか、()()()()()()()()()()が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

『シュアッ!』

 

同時に、点滅するような音と共に突如として空間から現れた銀色の巨大な手が、紡絆の体を包み込む。

後に残された世界には、()の花吹雪が舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「---ぐぅっ!?」

 

体を勢いよく起こし、紡絆は痛みで体を丸めて両手で腹を抑える。

その際に額に置かれていたであろうタオルが落ちるが、それを気にするよりも先に痺れるような痛みが全身を襲いかかり、少ししか見えない視界には、知らない空間があった。

 

「こ、ここは……」

 

どこかの民家と思わしき家。

様々な家具が置いてあり、まさしく田舎にあるような家というのを思わせる構造をしている。

 

(なんだ、今の……?)

 

色々と頭が混乱していて、思わず頭を抑える。

胸に手をやれば痛いがウルトラマンの存在を感じられて、でもさっきのことは、確かに記憶に残っていた。

 

(うーん……分からん!)

 

そのことに関して深く考えようとしたが、紡絆は一瞬で投げ捨てた。

それよりも何故ここにいるか分からず、ふと違和感のあった体を見れば、全身が包帯巻きにされ、両腕や両足にも巻かれている。

 

「…たすけられた?」

 

状況から察するに、紡絆はそう判断した。

明らかに応急処置されたかのような、治療のされ方。

こんな手当ては、ストーンフリューゲルでは絶対に出来ない。

しかしそうなると、一体誰に助けられたのか。

全く検討もつかない紡絆は、ただぼうっと周りを見渡す。

ちなみにさっき夢のことに関しては、紡絆の頭から既に抜け落ちていた。

 

「---あら、目が覚めたのね?」

「……!」

 

そんなことをしていると、女性の声が聞こえ、そちらの方へ視線を移す。

そこには優しそうな表情で洗面器を持っている女性が居た。

恐らく、この住居の家主だろう。

見た目が若いせいでどれほどかは分からないが、人生経験が豊富そうな雰囲気を持つことから推定50代くらいだろうか。

それでも全然シワもないのだから、普通に30か40代でも通用しそうではあった。

 

「…えっと、お陰様で。ありがとうございます」

 

近くに座り、勢いよく体を起こした際に落としてしまったタオルを取る女性にぺこりと頭を下げつつも、僅かながらに疑問が生じる。

自分がここにいるということは誰かが運んだに違いないが、目の前にいる女性は失礼にあたるだろうが、力はなさそうに見える。

なら、どうやって自分を運んだのだろうか、と。

 

「いいのよ。あの人が連れて帰ってきた時は驚いたけれど……もうじき帰って来ると思うから」

「あ……はい」

 

どう返事するべきか分からずに曖昧に返すが、流石の紡絆も何処か居心地が悪そうな表情をしていた。

 

「どうして何も聞かないのか…みたいな顔をしてるね」

「!?」

 

言われた言葉に、目を見開く。

そう、紡絆には説明出来ない。

申し訳なくもあり、罪悪感もある。

故に居心地が悪そうにしていたが、初対面だというのに当てられたことに紡絆は驚いた。

 

()()()の言ってた通り、随分と分かりやすいもんだ。その怪我を見る限り、訳ありなんでしょう?

そういうのはあたしには分からないし、()()()の方が適しているからね。帰ってきたら話し合えばいいと思うわ」

「そう…ですか。すみません、ありがとうございます」

 

色々と気遣われていることを察した紡絆はただ謝罪と感謝の言葉を述べることしか出来ない。

こんな明らかに大怪我どころか重傷レベルの人間が居れば、訳ありなのは当然ではあるが。

ただひとつ、そんな紡絆でもふと思ったことがあった。

 

「そういえば、今の言葉…まるで俺を知っているみたいだったんですけど……」

「ああ、それは---」

 

そう、普通なら何も知らないはずで、紡絆は初対面だ。

なのに知っているような言い方をしていて、女性が口を開こうとすると、紡絆の耳には慌ただしい足音が聞こえた。

 

「…なんだ?」

「…来たみたいね」

 

近づいて来る足音。

少しして女性も気づいたようだが、その表情は穏やかで警戒も何一つしていない。

 

(…もしかして、子供か? 確かに、それなら俺が目の前の女性を知らないのも納得だ)

 

紡絆は人助けをしてきたが、流石に知り合った子ならともかく両親や祖父祖母までは把握していない。

そういうのは個人情報に入るわけで、相手が勝手に話さない限りは紡絆もわざわざ聞き出したりなどはしないからだ。

だからこそ、人助けした人の中に居たって不思議ではなかった。

そうして足音は収まることなく、ただひたすらに近づいてきて---

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんッ!」

「ヴェッ…!?」

 

紡絆がよく知っている女の子が、飛び込んできた。

状況を理解する前に押し倒され、痛みに顔を顰めるがそれよりも今回は驚きの方が強かった。

 

「ど、どうしてここに居るんだ?」

 

自身の胸に顔を埋める、青い髪の少女。

まるで甘えるように、それでいて不安そうに強く抱きついてくる。

その姿は、紡絆も知っている。

 

「…小都音」

 

そう、目尻に涙を貯めている目の前の少女は、確かに紡絆の妹である小都音だった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

409:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra

…んん?なんだこれ

お、直った。え、今の何? こわっ、ホラーかよ

 

 

410:名無しの転生者 ID:GOetyROKY

イッチ、無事だったんか!?

 

 

411:名無しの転生者 ID:PgmDahTTQ

生きてた!良かった…!

 

 

412:名無しの転生者 ID:jIZ7hd1vH

俺らが聞きたいんだよなぁ…何故か知らんけど、イッチの掲示板だけアクセス出来なくなったんだよ

 

 

413:名無しの転生者 ID:urEE/N+ya

あれ、なんだったんだろうな。前回のスレもいつの間にか消えてんだけど

 

 

414:名無しの転生者 ID:Jub2padFO

本人が死んだらそりゃスレは消えるだろうけど、あれは何か違った感じがするよな

 

 

415:名無しの転生者 ID:6uT0MfVbQ

何者かに干渉された? いや、でもいくらクソ神でも力は本物だぞ。干渉するレベルってなると、同じ神でもなけりゃ無理なんじゃないか

 

 

416:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra

とりあえず何も分からないってことでOK?

 

 

417:名無しの転生者 ID:8o89S3yP1

なんも分からん

 

 

418:名無しの転生者 ID:///FB3g1h

そもそもイッチがやられてからバグ発生してて俺らも分からないから説明求む

 

 

419:名無しの転生者 ID:1ofwX9muO

重傷の状態で重傷を負ったイッチが誰かに助けられたってことしか分かってないからな

 

 

420:名無しの転生者 ID:2UWtS/6l9

いや、ほんとイッチの耐久値が特撮世界の住民と同じになってんな()

 

 

421:名無しの転生者 ID:6thxtRWk2

重傷の状態で重傷ってなんだよ、ただの致命傷じゃねーか

 

 

422:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra

>>418

俺もあんま分からないんだけど、気がつけばネオ融合型昇華獣もメフィストもやられてた。

遺跡守るために身を犠牲にしたら変身解けて外の世界に投げ出された。

夢?っぽいので掲示板もウルトラマンも感じられない世界でなんか…こう、神樹様があってさ、無意識にその中に入りそうになってたら聞いたことのある女の子に助けられた…のかな? それからウルトラマンの手に包まれて、目が覚めた。

そしたら知らない家に居た。

家主と思われる何か知ってるっぽい高齢?の女性と話してたら、小都音に押し倒されて動けない←イマココ

 

【添付:小都音に跨られて動けない少年】

 

 

423:名無しの転生者 ID:SMChJtSOm

なんだこのエロゲーのCGにありそうな画像は…

 

 

424:名無しの転生者 ID:WTPGM5v4e

イッチの顔が見事見えてないからマジでそう見えるの草。でも彼女、泣いてますよね

 

 

425:名無しの転生者 ID:ubL+g+7SU

そりゃ(ようやく会えた兄がずっと怪我を負い続けてマジで致命傷の傷が増えて傷だらけになってきてるんだから)そうだろ

 

 

426:名無しの転生者 ID:weXlaP4ld

>>422

なんで相変わらず情報量多いんだよ

 

 

427:名無しの転生者 ID:+hDw7jKqh

>>422

それ、イッチ取り込まれかけてない?神樹様ってもしかして敵なのでは…?

 

 

428:名無しの転生者 ID:a2HznxpEv

>>422

いや、でもイッチが無意識つってるしなぁ。それにわざわざ人間を守ってるんだからそれはないんじゃないか

 

 

429:名無しの転生者 ID:O6c23T/Ab

少なくとも俺らが最後に知ってるのは、イッチが倒れた後に老人がお前を助けてたで。

でもなんか…気がつけば掲示板閉じられてたからどうやって助けたのかまではよくわからん。

暗転したし

 

 

430:名無しの転生者 ID:pFfF84lc9

つーかイッチがただでさえ見た目やばくね?だったのにより痛々しすぎる…上半身から下半身ほぼ包帯じゃねーか。右肩だけ巻かれてないけど、なんで包帯ぐるぐるに逆戻りしてんだよ

 

 

431:名無しの転生者 ID:Ur7/2MahL

なんか色々きな臭くなってきたな……ごめん、元からだわ

 

 

432:名無しの転生者 ID:MZUk0c7cZ

とにかくイッチが死んだのかと思ったからビビったわ……

 

 

433:名無しの転生者 ID:Q40rlukwo

……なあ、でもさ、やっぱりおかしくね?

 

 

434:名無しの転生者 ID:hFxi3YGNR

他のウルトラ戦士だってピンチになったり死にかけることはあったが……掲示板があんなバグり方する事象、あったか?

 

 

435:名無しの転生者 ID:PepBqMd/G

そもそもこの世界が可笑しい。死のウイルスで四国以外が滅ぶか? ウルトラマンになれるとはいえ、バーテックスがなぜ執拗にイッチを狙っている?

というか、なんでスペースビーストと融合できる?

バーテックスって、本当に十二体なのか?

正直、あの実力があるならウイルスよりもバーテックスが四国以外を滅ぼしたって言われた方が納得出来る。

いくら四国が無事なのが神樹様のお陰でも、ウイルスとなると漏れてもおかしくないだろ

 

 

436:名無しの転生者 ID:n0e7Mdf17

まず神樹様って、なんだって話しなんだよな。

そんな神様居たか?確かに世界によっては『その世界にしか存在しない神』が居るが……

 

 

437:名無しの転生者 ID:mbmNSeGiR

……ん?

 

 

438:名無しの転生者 ID:vDGasZBrB

ちょっと待て……なあ、俺たち何かめっっちゃ重要な情報をスルーしてないか?

 

 

439:名無しの転生者 ID:pkufFqdLv

…神樹様?

バーテックス…スペースビースト…。

ノア…ザギ…あれ?

神樹様の結界、ノアの結界、融合型昇華獣……。『融合』?

 

440:名無しの転生者 ID:2lxYZ9BcN

俺たちってずっとイッチと勇者、ザギやスペースビーストたちのことを考えてたよな…けど、改めて整理すると神樹様…おかしくない?

そんな神様実在しないぞ

 

 

441:名無しの転生者 ID:h4vEnRD0p

…あ、あ……あーっ!

 

 

442:名無しの転生者 ID:oGEgsPCeh

実在しない……『神樹様』は存在するけど『神樹様』という神様はいない…つまり、この世界特有の神…?

 

 

443:情報ニキ ID:JoUHou2in

いや、違う。>>439のお陰で分かったが、もしかして神樹様って神は確かに居ないけど、いない理由は唯一神じゃないからなんじゃないか?

神樹様は『個人』じゃなくて『群体』。

それ故に『個の名』を持たず、『神樹様』と呼ばれる集合体…なんじゃ?

となると地球を守る理由がある神…土着の神の集合体?

だからバーテックスは神樹様と同じ、融合という手段を身につけた…とか? 無論、ザギも関わってると思われる。

そして神樹様とノア様が協力してる前提で考えると、互い互いに対極の存在がいる?

ノア様にはザギという敵が居て、神樹様の敵はもしかしてバーテックスではなく、別の神なのでは?

バーテックスも外の世界が滅んだのもウイルスじゃなくて、神樹様の敵が星座から生み出し、送り込んだ使者…。元々神樹様を滅ぼそうとしてるし、イッチを狙ったということは人類を殺そうとしている? けどそこはイッチのみを限定するのはおかしいか…。

でももし相手が神であるならば……イッチの左目を壊したあの光弾は、その神が『融合型』に干渉して放った、神の呪いなのかもしれない。

スペースビーストにもザギにもあんな力はないし、禍々しい紋章が浮かんでたからな

 

 

 

444:名無しの転生者 ID:qB8pc064d

…ん? それってイッチやばくないか?

 

 

445:名無しの転生者 ID:Jg5PixDe/

ちょ、ちょちょ。待てって!

もし情報ニキの情報が正しいならば、イッチは神の呪いを受けたってことになるぞ!?

解呪不可能じゃん!

 

 

446:名無しの転生者 ID:D3NB21jEJ

でも仮に神樹様がそうだとしたら、敵の神は集合体となった土着の神々と同等の力を持つ存在になる。

それほどの神の力なら、掲示板が不具合を起こしたって不思議じゃない…ってわけか。

掲示板に関しては、もしかしたら別の理由かもしれんが…

 

 

447:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra

なあ、それより俺どうしたらいいの?

 

【添付:目元を赤くなっている小都音がくっついたまま離れなくて困った表情をしている少年】

 

 

448:名無しの転生者 ID:nfRRU3Pqm

おめー全く空気読まねぇな!?

 

 

449:名無しの転生者 ID:zyyhrKRg1

なんでこいつ自分の世界や自分のことで肝心な情報出そうになってんのに身内関連で助け求めてんだよw

知らんがな、妹なんだろ。なんとかしろ

 

 

450:名無しの転生者 ID:9qLkO/rVs

イッチが悪いからなんとも…ヨスガっとけめんどくさい

 

 

451:名無しの転生者 ID:h4vEnRD0p

イッチは放っておいて…これってかなりこの世界の謎に触れたんじゃないか。

つまり神樹様は神の集合体、敵というか黒幕は別の神。

目的は神樹様は人類の守護。敵は人類の滅亡。

神樹様側にはノア様が。

それを裏付けるように四国を守る結界の上か、それとも同時なのか下なのかは分からないけどノアの結界も存在し、神樹様の結界はバーテックスを。

ノアの結界はスペースビーストを対処するために存在している?

敵の神にはザギが付いていて、四国以外はウイルスではなく、バーテックスによって滅ぼされている?

ああ、それとティガニキが地球をナニカが覆っているとか言ってたよな。あれはバーテックスじゃなくて敵の神の力?

大赦は…全部知って隠してそうだな、きな臭いし

 

 

452:名無しの転生者 ID:U/VXAODj/

おいおい…これ、正しかったらガチで超重要じゃねーか。

後は…ザギの目的はノア様だろうし、ノア様がいつ結界を貼ったのか、その理由。

ティガニキとダイナニキたちが戦った敵、先代勇者と満開、イッチ関連だけだぞ、ほとんどの謎

 

 

453:名無しの転生者 ID:ZtTdsaxa/

まあ敵の正体は正確には分かってねぇけどな。神にしたってどれだけ居るって話よ

 

 

454:名無しの転生者 ID:nRehxnWAp

そもそも敵の正体よりも目前の敵の方がやばいというな。ネオ融合型昇華獣のノスファルモス。

攻略が出来てない、もうあれこれ言うてる暇はない。勇者に助けを求めるべきなんじゃないか?

 

 

455:名無しの転生者 ID:SCpfFTysV

確かに、勇者たちのメンタル面が心配だが…イッチが変身できるかも分からん。

もし次にイッチがやられたら、流石にイッチは死ぬだろうな。とっくの昔から体が既に限界なんだから。むしろなんで生きてる

 

 

456:名無しの転生者 ID:zjYRLAu0g

ちなみにイッチは自分でメタフィールド貼れるとか分かんのか?

 

 

457:名無しの転生者 ID:6Nn2e1DZc

前はアローレイの貫通力で無理矢理御魂を引きずり出したが、今回は幻影使われるからな。普通にウルトラマンの光線系は避けられるわ。

勇者の力は必須だぞ

 

 

458:光と絆継ぎし転生者 ID:NEXU_ultra

…ん? ああ、やっと落ち着いた。話聞いてなかったけど…映像に切り替えとく。

気配からしてもしもの時は頼んだわ

 

 

459:名無しの転生者 ID:byDexJbrM

…え?

 

 

460:名無しの転生者 ID:JuO8FLvNX

ちょ…どういうことだ!?

 

 

461:名無しの転生者 ID:bXwLB7OO3

もしもって、俺らにどうしろってんだよ……

 

 

462:名無しの転生者 ID:+RfTb0ibJ

ほうれんそうのうち、『報告、連絡、相談』が不足しすぎなんだよ!

 

 

463:名無しの転生者 ID:1FezI26sj

ああ、もう相変わらず話聞かねぇやつだな!!

 

 

464:名無しの転生者 ID:TmE+CDl/p

既にスルーしてんだろ、これ。

仕方がない、今のうちに俺らが作戦立てるぞ!

 

 

465:名無しの転生者 ID:ipX+BZxey

とりあえずイッチは覚悟しとけよ

 

 

466:名無しの転生者 ID:TKHyQM9YI

安価しろ、後悔させてやる

 

 

467:名無しの転生者 ID:/oKhudXSB

ん、ちょっと待てよ。イッチのこの相手……そういえば明らかに『老人』じゃなかったよな…?

 

 

468:名無しの転生者 ID:mh61lDWNc

あれ?なんか…既視感というか、見たことがあるような…。友好っぽいけど…。

え、うそだろ、え、この地球って…スペースビースト以外にもいるんですか???

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからしばらく経ち、ようやく解放された紡絆は小都音から状況を聞くためにも、改めて口を開こうとして、先に小都音が口を開いた。

 

「聞いたよ、お兄ちゃんトラックに撥ねられたって。それから階段から転げ落ちて酷い怪我を負ったってことも」

「……へ?」

「…違うの?」

「い、いや、そ、そうなんだよ」

 

小都音の言葉を聞いて、思わず家主の女性に視線を向けると小さく頷かれたため、動揺しつつも話を合わせる。

どうやら虚構をでっち上げたらしい。

そうでもしないとこの怪我が説明出来ないのだから仕方がないのだが、紡絆があまりにも嘘をつくのが下手すぎた。

 

「そう……本当に、気をつけてね」

「……ああ」

 

明らかに見破られているような様子だが、紡絆は無事に誤魔化せたと思い込んでいた。アホだった。

そして何より、その注意にはなんとも言えなさそうな表情で返すことしか出来なかった。

 

「そ、そういえば結局…小都音はどうしてここが分かったんだ?」

 

話題を転換するように、最もな疑問を投げかける。

このままではボロが出るかもしれないため、正解かもしれない。

しかし、紡絆の疑問も当然だろう。

なぜか小都音は、ここに駆けつけることが出来たんだから。

 

「…あれ、言ってなかった?」

「……ん?」

「あはは…忘れてたっぽい?」

 

それに対する返答に、見覚えのない紡絆は首を傾げる。

そんな紡絆の反応を見て、自身でも気づいたのか小都音はうっかりしていたかのような様子。

 

「この街に引っ越してきてたみたいで、この人は私がお世話になっていた人だから」

「…ふぁっ?」

 

偶然…いや、必然か。

運命とは凄まじいもので、まさかの答えに、紡絆が完全に固まった。

一瞬の沈黙が辺りを支配し、ギャグアニメのように木魚をぽくぽくと叩いた後に、チーンといったイメージ効果音と同時に、紡絆は再起動した。

 

「と、ということはもしかして……でも、どうやって…」

「電話番号渡しててね、それで連絡もらったんだ。讃州市に来てたのは驚いたけど」

「ふふふ、本当はサプライズの予定だったもの。ただよく小都音ちゃんには貴方のことは聞かされてたものだからねぇ…すぐわかったよ」

「あ、そうだったんだ…って!もうっ!…や、やめてよ。それは言わないでって言ったのに!」

「あら、ごめんなさいね」

「もーっ…恥ずかしい…」

 

元から疑ってはないが、やけに親しげにしているところから、小都音の言葉が本当だと改めて理解させられる。

 

「…あっ。えっと、申し遅れました。今更ながら妹…と、この度自分もお世話になりました。反応からして知っていると思いますけど、継受紡絆です。兄妹お世話になった身としてはどうお礼すればいいか…」

 

そうして何も言ってなかったということを思い出すと、紡絆は痛みを強引に押し殺して姿勢を佇ませて感謝と自己紹介を述べる。

そんな紡絆の言葉にも、女性は軽やかに笑うだけだ。

 

「これはご丁寧に…あたしは天海麗花。

気にしないでいいんだよ、貴方のことはあの人が勝手にやっただけだから。小都音ちゃんに関しては私たちも楽しかったし、ね」

「えへへっ」

「いや、でも…」

 

そう言われてはい、分かりましたと答えれるはずもなく、渋る紡絆。

だが事実、麗花の言葉に嘘ひとつないことを証明するかのように、今も小都音を撫でる麗花の表情はまるで孫娘を世話するようなもので、小都音の反応も相まってよりそう見えるのだ。

いや、本当の家族ではなくとも、それに近い関係性が築き上げられ、結ばれているのだろう。

 

「そうねぇ…どうしてもって言うなら、今日一日泊まってくれたら、それでいいわ」

 

そして紡絆の様子からして引き下がらないと察したのか、妥協案を出すように麗花がそのようなことを告げる。

明らかにメリットがない、条件。

 

「それはそれで、こちらに利益しか……」

「怪我人を放り出すわけにもいかないし、小都音ちゃんや貴方---紡絆くんのことも聞けて少しだけど一緒に過ごせる。それだけで嬉しいのよ。

それにこの歳になると、時折人寂しくなる時もあってね、助けると思って…どうかしら」

 

過ごしてきた時間が、あまりにも違う。

前世を含めても所詮は50代にも満たぬ紡絆と今世だけで紡絆を超える麗花では生きた年も違い、彼女の言葉は道理にかなっている。

そもそも重傷な怪我人を放り出す方が、善良な人物にとっては心苦しいだろう。

 

「……分かりました、じゃあ、それでお願いします」

 

故に、紡絆は渋々と引き下がった。

実際にここで放り出されでもしたら危ういのは理解しているし、人助け命な紡絆にとって、そう言われるとあまりにも弱い。

 

「じゃあ今日はお泊まりだね」

「そうなるな…」

「自由にくつろいでて。あたしはそろそろご飯の支度をするところだし、それに---」

 

立ち上がった麗花は一度言葉を区切り、視線をどこかへ逸らす。

紡絆も小都音も、それに釣られるようにそこへ向けると、ドアが開く音が響く。

 

「あの人が帰ってきたところだから」

「!?」

 

自身すら気配を感じられなかった紡絆は目を見開く。

強化されている自分ですら分からなかったのに、麗花は分かっていたが、それは何となくそんな気がしたのだろう。

そこはどうでも良く、問題なのは()()()()()()()()()()()という点。

 

(…忍者?)

 

が、アホな紡絆はそのことに警戒心を抱くわけではなく、間違いなく、それはないと断言出来る存在を思い浮かべていた。

 

「それじゃあゆっくりしておくんだよ。あの人はここに勝手に来るだろうから。話はそこで、ね」

「あ、はい…」

「あ、待って麗花おばさん。私も手伝う!」

 

頭を振り、麗花に頷く紡絆だが、小都音は一度紡絆と麗花を見て、察したかのように部屋を出ていく麗花を追っていく。

 

「あら…いいの?」

「うん、お兄ちゃんは話があるみたいだし、まだまだお料理を勉強したいもん」

「じゃあ、お願いね」

「はーい。……あっ。お兄ちゃんはちゃんと休んでてね。無理したら怒るよ」

「わかった。ありがとうな」

 

去る前に会話をしていたようで、最後に部屋を覗くようにして小都音はそれだけ告げてきた。

流石に気遣ってくれたことを察した紡絆は、お礼を述べる---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

襖が閉められる。

先に行く麗花を見送った小都音は襖に背を預けて唇を強く噛み締める。

 

「………」

 

なぜ兄があのような怪我を負ったのか。

車に轢かれたから?階段から落ちたから?

事故に巻き込まれたから?鉄骨やコンクリートで怪我したから?

---違う。

紡絆とは違い、小都音の地頭は良い。

だからか、怪我した()()()()()を知っている。

正確には、予想が付くのだ。

元々、あんな大雨の中で傘もささずに出かける方がおかしい。

第一、紡絆が誰かを庇う以外で交通事故に遭うなんてこと身体能力や反射速度の高さからしてありえない。

それに、小都音は記憶を失う前の紡絆を知っているというのもあるだろう。

 

(……やっぱり、お兄ちゃんは嘘つき。左目、見えてないことも…隠してる)

 

何よりも彼女は、記憶を失った後の中では、一番居たであろう友奈や東郷ですら知らない真実を、紡絆の隠し続けていることをあっさりと看破して見せた。

そのことは、それだけは紡絆は誰にも気づかれないように自然で有り続けたのに、だ。

唯一気づきかけたのは、手合わせをした夏凜のみ。

 

(なんで、なんでお兄ちゃんばかり……。どうしてお兄ちゃんがこんなことになるの?)

 

兄の前では、ただいつも通りの自分であり続ける彼女。

だが、唯一の家族となってしまった大好きな兄がもはや死ぬ寸前まで来てしまっている。

あれだけの傷で生きてるのは、はっきり言って普通の人間じゃないからだ。

ウルトラマンを宿してなければ、紡絆はとっくに死んでいる。

逆を言えば、ウルトラマンを宿してもなお、今死にかけている。

 

(どうすれば、いいんだろう……お兄ちゃんは、やめない…人助けするお兄ちゃんはいつもかっこいい。優しくて、温かくて、安心出来て、でも怖い。他人ばかり気にして、自分を気にしなくて、大事にしなくて……()()()もそうだった)

 

強く、拳が握られる。

その拳は震えていて、それは失うことへの恐怖なのか、怒りなのか、悲しんでいるのか、どれかは定かでは無い。

 

(やめさせなきゃ……戦わせないように、何もさせないようにしなきゃ、死んじゃう…誰が?)

 

今も、たった一枚先にいる兄。

背にある襖を開ければ、辿り着ける。

けれどもその襖が遥かに高い壁のようで、手を伸ばしても届かないようで、まるで先々を歩む紡絆と後ろに着いていくことも出来ない小都音を示しているかのように、小都音は決して開けることも振り向くことも出来ない。

 

(しぬ、お兄ちゃんが…しぬ。死ぬ?死ぬって、何…?居なくなる?私の前から…消える?お兄ちゃんの声も、匂いも、笑顔も、感触も、体温も、全部、全部消える…何も、残らない…?やだ、そんなの、やだ……。いやだよ、いやだいやだいやだいやだいやだ---いやだっ!)

 

自然と足に力が入らなくなり、その場へと座り込んでしまう。

小都音の表情は暗く、いつもの様子はどこにもない。

迷子の子供のように、否。

事実、迷子の子供なのだろう。

 

(私にはお兄ちゃんしか……お兄ちゃんだけが生きがいなのに…。お兄ちゃんだけがお兄ちゃんだけが光なのに、希望なのに…わたしの()()なのにッ!なんで奪われなきゃいけないのっ…なんで私から奪うの…!どうして私から全て奪っていくの…!?私は、どうしたらいいの……どうしたら、お兄ちゃんを止められるの……?)

 

瞳から光が消え、頭を抱える。

その心はイヤイヤと我儘を言って泣きじゃくる子供のようで、整った髪が乱れていた。

---そう、紡絆は強い。

人として、ウルトラマンとして、強い。あまりにも、強いのだ。

スペースビースト、闇の巨人(ウルティノイド)、バーテックス。それら全てと自分自身を投げ売り、人々や世界を守るために迷いなく戦える精神を持つ者など、この世界では彼一人だろう。

だが、周りはどうだろうか。

後遺症や戦闘の影響で精神的に間違いなく弱っている勇者部。

無事なのは、紡絆が居るからだ。

かつてファウストが言っていた。

紡絆は精神的支柱になっている、と。

本来ならばそうはならない。ならないはずだった。

けれども、紡絆という人間の影響力はとても大きく、彼はあまりにもに中心に居すぎて、他人からすれば、周りにとっては眩しかったのだ。

日陰を簡単に照らし、色んな人を巻き込み、眩い光で全てを照らす人物。

その中でも一度兄を失い、両親を失った小都音は、この世界で間違いなく一番影響を受けている。

それこそ---紡絆に依存するほどに。

 

(……お兄ちゃん、大好きな、お兄ちゃん。お兄ちゃんが戦うのは、世界のため…人のため…?誰のせいなんだろう…バーテックス、スペースビースト?ウルトラマン?

…違う、神樹様が、いけないんだ。神樹様は私からお兄ちゃんを奪う。大切な友達になった、樹ちゃんの声も奪った。みんなの大切なものを奪った……)

 

神樹様はこの世界に恵みを与え、人々が生活出来るようにしてくださった神様。

一方的に悪いとは言えないが、紡絆や樹、勇者部が戦うことになったのは大赦の指示。

それは、神樹様の信託といって差し替えない。

なぜなら大赦は神樹様を崇め、信仰しているのだから。

小都音はそれを、知っている。よく知っている。

 

(……ねぇ、お兄ちゃん。私、どうしたらいいのかな……)

 

憎しみを宿したところで、何も変わることがない。

怒りを抱いたところで、何もない。

小都音に勇者システムは存在せず、ウルトラマンの力もない。

逆に言えば、勇者システムがあれば反旗を翻しているとも言えるが。

だが何も無い、何も無いからこそ、行き場を彷徨い続ける感情は溢れ続け、留まり続ける。

 

(いっそ、お兄ちゃんを……閉じ込めたら…ずっとずっと、私の元に置いたら……そうだ、お兄ちゃんが何も出来ないようにすれば私とお兄ちゃんは---)

 

考えては、踏み込んではいけない領域の思考へと持っていかれる。

少しも発散することの出来ない感情は、日々強まっていき、歪んでいく。

兄だけでなく、友人と大切な部活の人たち。

思い出の中から変化していく彼と彼女たちの姿を思うと、ますます押し潰されそうになる。

ただ一人の少女が抱える悩みにしては、彼女にとってはあまりにも大きすぎた。

 

 

「…小都音ちゃん?」

「………!」

 

ずっと来ないからだろう。

帰ってきたと思われる麗花に声をかけられ、小都音はハッと顔を上げる。

思考を埋め続けていた深く暗い闇が晴れ、瞳が正気を取り戻す。

 

「…大丈夫?」

「…うん、大丈夫だよ麗花おばさん」

 

心配した様子で声をかけてきた麗花に小都音は笑顔を浮かべてそう返し、立ち上がると髪を整える。

 

「ちょっと、考えごとしてたみたい。うん、大丈夫。それよりも、お兄ちゃんお腹空かせちゃうよね、早くお料理しよっ!」

「……ええ、そうね」

 

明るさを取り戻したのか小都音は麗花に近づくと、手を握って笑顔を向ける。

そんな小都音を変わらず心配するような目を向けながらも、何も言えない麗花は小都音と一緒に歩いていく。

義理の家族のような存在。

互いに家族とは思っている。

ただそれでも、本当の家族ではないのだ。

血の繋がった家族を失った悲しみは、他人である麗花には共有することなど出来やしない。

だからせめて、気分転換でもさせようと。

 

(……いけない、お兄ちゃんは頑張ってるもんね。私は、大丈夫…お兄ちゃんは、私を置いていったりしない。いつもそうだから。ぜったい、ぜったい……)

 

ただ、間違いなく言えるのは彼女の心は、()()()()の心は不安定になっているということだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

感じられるようになった気配がひとつ、ゆっくりと近づいてくる。

気配的には縁側の方から来ていた。

家の構造が分からないが、去っていく気配と近づいてくる気配の速度からしてそっちの方が早いのだろう。

紡絆はなんか脳裏で色々と話し合ってるけど全く理解出来てないので流し見するような感じで欠伸をしていた。

 

「……んー?」

 

そしてふと、何かを感じた。

胸に手をやり、やっぱり分からない。

さらに考えるのをやめた。

この男に考えるという思考はないのだろうか。

間違いなく、日に日にバカになっている---いや、平常運転だった。

 

「………!」

 

暇と思いつつ座ったままぼうっとすると、気配が感じ取れる。

縁側へと視線を向けると、カーテンにシルエットが映った。

杖のようなものに手を置いた、背中の曲がった影。

 

「……む?」

 

そうして縁側から扉が開くと一人の老人が入ってきて、はてと首を傾げる。

紡絆と視線が合い、空間を沈黙が埋め、先に老人が上から下まで紡絆を見た後に、頷いて口を開く。

 

「…うむ、元気そうじゃのう」

「お陰様で。ありがとうございました」

 

明らかに包帯巻き巻きの人間を見てどうしてそう思ったのか、良かったと言わんばかりに何度も頷く老人に紡絆は笑顔で返す。

うむ、と相槌を打った老人はよいしょとジジイ臭いというか見た目通りの動作で紡絆の対面に座り、一息付く。

 

「………」

「………」

 

そうして無言が辺りを占め、また見つめ合う二人の姿があった。

何かを探るような視線を受け、紡絆はすまし顔で過ごしている。

警戒することもなく、敵意を抱くわけでもない。

 

「……御託はいらぬ、か」

「……ん?」

「分かっておるのだろう、ワシの正体が」

 

観念したように息を吐いては顔を伏せ、老人が口を開く。

紡絆はそれを見て、頷いた。

 

「ならば---」

 

目の前から老人が消え、紡絆は驚くことすらなく目を閉じていた。

一瞬で姿を消し、新たに出現した気配は背後。

しかし、後頭部に何かを押し付けられる感覚がある。

 

「なぜ警戒しない、ウルトラマン」

「………」

 

敵意を剥き出しに、声が変わる。

明らかに老人ではない声。

だが紡絆は傍にエボルトラスターも、ブラストショットも傍に置いたまま手を伸ばすことすらしてなかった。

自身の正体を看破した相手というのに。

 

「あなたからは殺気も悪意も感じられない…今も俺を殺せたのに、どうして殺さなかった?」

「……… 」

 

相手は何も答えない。

続けろということなのだろう。

紡絆は目を開け、天井を眺めながら紡ぐ。

 

「俺はファウストを殺したことがある。言い訳しない、そうするしかなかったから。でも敵意もなく、悪意もなく、共存出来る道がある相手に対して一方的に武力を行使するのは、それこそ血を吐きながら続けるマラソンになるだろ。そんなの、悲しいだけだ」

「……ふむ」

「それに、手段を間違えてる。

貴方はウルトラマンを知っている。だったら、ウルトラマンには変身するためのアイテムが必要なのはわかってるはず…けれども俺を助けた割には奪わなかった。とても聞き及んでいた貴方のような宇宙人がやるはずがない---そうじゃないのか」

 

ようやく紡絆が振り向き、その影響で空いている片腕で抑えられている突き出されたもうひとつの黒い腕が紡絆の顬に向けられることになる。

それでもなお紡絆の目は、真っ直ぐだった。

 

()()()()()()()

 

黒いずんぐりとした体型と、()()()を持ち、耳の尖った悪魔のような顔が特徴。

紳士的かつ慇懃無礼な態度とIQ1万という桁外れの知性で知られ、ウルトラマンと同等以上の戦闘力を持つと言われている悪質宇宙人。

その名を、メフィラス星人。

彼は手を降ろし、腰を下ろした。

 

「ほぉ…見事だ。それにワシを知ってるか」

「まぁ…俺の知るあんたとは違うけど、似た存在と出会ったことがある」

 

それが口なのか口元の発光体が光り、意外そうな反応をしながらメフィラス星人は若干背中を曲げて座っていた。

宇宙人の割に、地球人というかジジイ臭い。

しかしそう語る紡絆は、何処か嫌なものでも思い出したかのように苦虫を噛み潰したような表情だった。

 

「そういうお前さんは…マルチバース出身、か」

「そういうことになる…かな。俺の場合は説明が難しいから。あんた…メフィラス星人は違うのか?そもそも一体なんの目的でこの地球に?」

 

人間と宇宙人。

その割には殺伐としたわけでもなく互いの空気感は平穏で、紡絆の疑問は最もだった。

それに関しては聞かれると思っていたのか、メフィラス星人は何処か哀愁を漂わせる。

 

「メフィラス星人はワシらの種族だ。ワシの名はイレイズ。

しかし…それにしてもそうか、お主は地球人だから知らんのか」

「イレイズ?それが名前か…で、なんのこと?」

 

何も知らない紡絆。

何かあったのだろうかと疑問符を浮かべるが、前世はあっても彼は地球人だ。

 

「ベリアル……と聞けばわかるか?」

「…ベリアル? ああ、光の国が生んだ初めての悪のウルトラマン…だっけ、聞いたことはあるけど、詳しいことは知らないな」

 

知識として随分前に聞かされたのを思い出し、引っ張ってきた情報を伝えるとメフィラス星人のイレイズは頷く。

 

「ああ、今宇宙ではベリアルの残党が大暴れしておってな。現に---ベリアルに着いたワシの親友…同胞は、やつを復活させるために暗躍…いや、やつのことだ。ベリアルのやつはもう復活しているのだろう」

「確信しているのか?」

「ベリアルのカリスマ性は高い。そもそもやつが銀河帝国を作り上げれたのは偉大なるカリスマと強大な力だ。その者には当然、弱者と強者は集う。優秀な者たちも、な」

「へぇ……てか、帝国?」

「かつてウルトラマンゼロという光の国の若き最強戦士と多くのウルトラ戦士。

レイブラット星人の血を継ぐ者と人間たちが、無限牢獄の封印から解かれ光の国をほぼ壊滅に追い込んだベリアルとぶつかり合い、ウルトラ戦士たちはなんとか勝利をその手に掴んだ。

だがベリアルは生きており、やつは光の国への復讐を兼ねてアナザースペースを含む全宇宙制覇を目的として一大帝国を作ったのだ。それはウルトラマンゼロと彼の仲間であるウルティメイトフォースゼロが企みを打ち砕いたわけだが---ん?」

 

知らない情報を紡絆が聞いていると、突如として傍に置いてあったエボルトラスターが反応して輝く。

それに気づいたのか、イレイズは言葉を区切っていた。

紡絆も意外だったのか目を瞬きさせ、小首を傾げる。

 

()()()()()()…ウルティメイトイージス?」

「なぜそれを…いや、ウルトラマンゼロの持つ、次元を超える力のことだろう。ワシが最後に知った情報ではウルトラマンコスモスとウルトラマンダイナの力を得たらしいが…それは良い。

問題はその後だ。さっきも言ったがワシの同胞はベリアルを復活させるためにそのウルトラマンゼロの肉体を狙うことにしたらしくてな…そこから先はワシも知らん。

だがワシがこの地球に来たのは、帝国が滅ぼされた後にベリアルの残党に追われ、追っ手から逃げていたら宇宙船を破壊されて偶然不時着したのがこの地球…というわけだ」

「なるほど…イレイズは目的があってきた訳じゃなかったのか」

 

わざわざ何も知らない紡絆に宇宙で起きていたことを説明してくれたが、色んなことを含めてイレイズが地球へ来たのは本当に偶然だったのだろう。

 

「でも侵略とか企みをしなかったのか? いつ不時着したのかは知らないけど、イレイズは地球に慣れてるように見える……その時にはウルトラマンはいなかったはずだ」

 

過去にウルトラマンが居たという証言はなく、イレイズは宇宙人と思えないくらいに地球に染まっている。

明らかにメフィラス星人の知能と技術を使えば、ウルトラマンのいない星など侵略出来ても可笑しくない。

だからこそ紡絆はそう聞いたのだが、イレイズは遠い目をしているように感じれて、懐かしそうな様子を漂わせる。

 

「……最初は考えたよ。だがワシがベリアルの残党や同胞から逃げてきたのは、戦うことが嫌になったからに過ぎん。何よりも…地球人を愛してしまったんだよ、ウルトラマン」

「………」

「ただ宇宙船が不時着したなら問題はなかった。だがワシは致命傷に近い傷を負っていて、命からがら宇宙船で逃げたら撃墜されたのだ。明らかに助からないと判断されたのか追っ手は地球には来なかったが……その時、麗花に出会って救われたのだ。本来の姿でも懸命に接してくれた彼女に、な。軽く、地球単位では40年ほど前かのう」

「……そういうことか」

 

頭の良くない紡絆でも、そこまで聞けば分かった。

目の前の宇宙人は戦いから逃げて、命を狙われて、死にかけたところを麗花に出会ったことで地球人を愛するようになったのだと。

一体それまでにどんな経緯があったかまでは分からないが、イレイズが地球を侵略しなかったのも、自分を襲わなかったことについても、戦いを嫌ったからだと。

ウルトラマンと同じく、人を好きになったからだと。信じてくれたからだと。

 

「この宇宙の地球人は、四国以外が滅んでいるというのによく生きておる。今は神樹とやらのお陰で瀬戸際で生きているようだが、必死に諦めることも無く毎日を生きている。

それがよりワシの心に変化を齎したのかもしれんな……。まぁお主がいると分かったから侵略しなくて正解じゃったな、ハハハ」

「い、いやそれは流石に笑い事じゃないような気がするなぁ……」

 

一歩でも間違えたら、少しでも起きたことがなければイレイズがこの地球を侵略してたのかもしれないと思うと、流石の紡絆もぞっとする。

しかも40年前となると紡絆は生まれてないしウルトラマンが居たのかすら知らない。

もしかしたら、完全にこの世界は滅んでたのかもしれない。

 

「それで、ワシは宇宙人だが地球人として生きてきた。

ゆえに愛した人間を出来る限り助けることにしたのだ。

まぁ…情けないことに娘を()()()救えなかったが。

ああ、心配しなくとも後悔はしておるが人間に対する思いは変わっておらんしウジウジしていたら娘に嫌われるからのう。仮に復讐で侵略でもしたらあの世で幻滅されるわい。その方が耐えれん」

「そ、そうか…それは何と言ったらいいか分からないけど……」

 

さらっと重たいことを告げてきたイレイズに頬を引き攣らせるが、彼自身がそう言うならと踏み込まないことにした。

といっても、紡絆も両親を喪ってるのでアレなのだが、もしイレイズが復讐心で侵略していればやっぱり地球は滅んでいただろう。

紡絆はこの地球は何度危機が訪れかけているのか考えたくなったが、今もなってるので考えるのはやめた。

 

「それにしても二年前……か」

「…どうした?」

「いや…なんか二年前って色々あるんだなーってさ。俺の友人に記憶を失った友人がいるから…」

「……何?」

 

自身の言葉を拾ったイレイズが訝しげに---しているような気がして、紡絆は首を傾げる。

何かおかしいことを言ったかと。

 

「これは…偶然か? いや、しかし……どうにも妙に違和感が…どうなっておる…?記憶の齟齬が…」

「…イレイズ?」

「いや…気のせいじゃろう……いずれにしても、娘を喪ったのもあってお主の妹を引き取った後の日々は存外悪くなかったのう。どうじゃ、ワシらの家名も名乗ってるようだしワシらが預かっても---」

「いや話が急に変わりすぎだろ!なんでそうなった!?」

 

いつもは引っ掻き回す紡絆が後手に回っている。

目の前のイレイズ、もといメフィラス星人はカッカッカッと笑うだけだ。

やはりおじさん臭い。

 

「くっそ、ギャップが凄すぎるだろなんだこのメフィラス星人……。俺のイメージとまるっきり違うぞ、慣れる気がしねぇ…はあ」

 

色んなメフィラス星人のことを前知識で知っているだけあって、今までに見たことの無いタイプに紡絆が困惑しているどころか、呆れてため息を吐いた。

ここまで紡絆を引っ掻き回すのは彼だけでは無いだろうか。

 

「さて半分冗談のことは置いておいて…」

「半分は本当かよ……それはもう妹に聞いてくれ」

「ハハハ…ああ、一応言っておくが、この地球にはワシ以外にもベリアル軍から逃げてきた宇宙人は存在する。もしかしたら怪獣も眠っているかもしれんな」

「……マジ?」

「うむ、しかし怪獣は知らんが、宇宙人はワシみたいなやつらだから人間と共存してるだけじゃよ。仮に一人でも暴れれば、ワシらはそいつを全員で抑えるだろう。特に、お主のようなウルトラマンがいると分かればより、な」

「………まあ、暴れたら止めはするだろうな」

「ほぉ……」

 

他にいることに驚きはしたものの、苦笑いを浮かべながらも、紡絆は決して殺すとは口にしなかった。

だからか、イレイズは意外そうな声を漏らしていた。

 

「…なんだ?」

「いや、なるほど…なに、お主のことを理解出来たような気がしてな」

「……んん?」

「お主は真っ直ぐだ。嘘も付かず、差別すらせず、宇宙人であろうと和解しようとする。必要な優しさを備え、時に必要な覚悟を持ち、歩み寄ることの出来る勇気もあれば、お主の胸の中にある確かな光は眩いほどに輝いてある。きっと周りに与える影響も大きいだろう」

 

ほんの少し、長くいたわけでもなく、長く話したわけでもなく、短い時間でイレイズは紡絆の本質を理解し始めているどころか理解していた。

紡絆がわかりやすいのと、メフィラス星人の頭脳を持ってすれば造作もないことかもしれないが。

まぁ、それにしては二人の距離感は友人のように近くなっているのだが、さすがはコミュ力お化けの紡絆か。

 

「え、急に何?別にいつも通り普通にしてるだけなんだが…」

「元から戦うつもりはなかったとはいえ、お主の素がそれだからこそ、ワシは警戒すらしなかったのかもしれんな…ただ」

「…ただ?」

 

妙に不穏な空気感をただ漂わせるイレイズに紡絆は何が言われても良いように身構える。

 

「…いや、なんでもない」

「ないのかよ---ッッ!」

 

が、無駄に終わった影響で前のめりになり、傷が痛みを発して顔を顰める。

すぐに隠すように表情を取り繕うが、無意識に左肩を抑えていた。

 

「…さて、ワシのことはいいだろう」

「あ、ああ…最初から心配してなかったけど、戦う気がないのは分かったし、企んでるわけでもなさそうだからな」

「ならば……お主、()()()()()いる?」

「……?」

 

話を変えるように、紡絆に対して疑問を投げかけるイレイズ。

紡絆はその質問が理解出来なかったようで、どう答えばいいか分からないといった様子だ。

 

「何と戦っている?」

「……ああ、そうか」

 

それでようやく理解した紡絆は、宇宙人だからいいかと説明していく。

メフィラス星人の頭脳なら、役に立つかもしれないので間違った判断ではないだろう。

バーテックスの存在、スペースビーストの存在、闇の巨人(ウルティノイド)、ウルトラマンの結界や遺跡のこと、勇者の存在、満開のこと、神樹様のこと、樹海のこと、融合型昇華獣、ネオ融合型昇華獣、嘘の下手な紡絆はそれらを包み隠すことなく話した。

 

「……なるほどのう、神樹とお主のウルトラマンの結界…それがこの地球を守ってるモノか。バーテックスとやらとスペースビーストが現実世界へ現れない理由も…それ、と。新たに侵略者や宇宙怪獣が来ないのも、バーテックスやスペースビーストがいるのにお主以外にウルトラマンがいない理由もそれだろう」

 

ぶっちゃけ紡絆の説明はかなり下手だったが、イレイズは理解したように頷き、掲示板の人たちと同じ結論に至っていた。

あれだけ苦労したのにすぐにそれに行き着いた彼がどれだけ優秀か分かる。

 

「しかし…お主は光の戦士としての素質自体は、地球人と思えないくらいにある。ウルトラマンに関してはワシのよく知っている光の国のウルトラマンたちやネオフロンティアの戦士ではないようだが…お主を見ていて分かることが…言いたいことがある」

「……うん?」

 

明らかに色々知っているイレイズが意味深げに拳を軽く胸にぶつけた。

コツン、と軽くだが硬い、腕の感触。

それだけで紡絆は口に出しそうになって、唇を噛み締める。

 

「ウルトラマン、もう変身してはならない」

「………ッ」

「お主の体はとうに限界を迎えている---今のでも相当痛かっただろうし、その左目…見えてないのだろう?」

 

流石、というべきか。

いつの間にか気づかれていたようで、イレイズから逃れるように視線を逸らす。

だがそれは答えを言っているようなもので相変わらず嘘は下手らしい。

 

「このまま変身し、戦えばお主は一回…持って二回で死ぬ。

特にそのネオ融合型昇華獣とやらと、な。無理をしなければ三、四回ほどは()()()()()()()()問題ないだろう。なにより肉体が回復していないことにも気づいているはず」

「それは……なんでかは分からないけど、メタフィールドをあと一度なら展開出来るくらいの余裕はある…と思う」

「メタフィールド…噂に聞く不連続時空間か…。例え戦えたとしても、お主は戦いをやめた方がいい。勇者とやらに任せるべきだ」

「……いや、それはできない。スペースビーストは俺が倒さなくちゃいけない…そんな気がするんだ」

 

この場合、イレイズは全て正しい。

彼の言った通り、紡絆は限界だ。メタフィールドを貼れるとは言っているが、貼れても崩壊寸前の空間。

はっきり言って、確証もないのに使命感のように戦いから身を引かない紡絆の方が間違っている。

 

「そうは言うがな…その左目から感じる強烈な、それこそウルトラマンですら無力化出来ないほどの毒…いや祟り(呪い)か。お主の肉体が回復しないのはそれによって回復を妨げられているからだぞ。それも、初ではなさそうだ」

「呪い? それに初じゃない…?」

「ああ、何らかの力が作用しているように見える。今はお主の中のウルトラマンが抗っているようじゃが、そのウルトラマンですらもエネルギーをかなり消費して残り少ないように感じる…拡大してないのは彼のお陰か。

ただ左目から感じる呪いとは別で、体内にナニカが蓄積しておるな…こっちは、毒か?いや、それもあるが…ダメージを受け続けたから、か?」

「体内に…? けどそうか、ウルトラマンが…ずっと…。なんだ、そうだったのか…」

 

今まで紡絆の体は、決して回復するということがなかった。

以前まではストーンフリューゲルを使えば、連戦に次ぐ連戦によって効果は薄かったが多少回復した。

しかしバーテックスの総戦力戦の後、目が覚めてから傷が治らなくなったのだ。

それには2つ理由があったらしい。

ひとつは以前受けた、自身の左目を破壊した謎の光弾、呪い。

イレイズ曰く、その呪いが原因だという。そしてまた、呪いが広がらない理由はウルトラマンのお陰だと。

そしてもうひとつは()()()()と言っている。

振り返るのは、最初の戦いだろうか。

あの時、紡絆の身に起きたこと。

彼は一度、()()()()を注入されている。あの時はコアファイナルで吹き飛ばしたと思われていたが、完全に除去ができてなかったのだろう。見えないほどに蓄積され、気づかないぐらいに溜まっていた可能性は十二分にある。

それに毒霧を直接吸い込んだり、別のネオ融合型から毒を食らったこともあるのだ。

その他には融合型昇華獣にはバーテックスの力が備わっており、毒だけでなくその他にも色んな攻撃を許容値を超えるレベルで何度も受け続けたのが原因だった。

正しく、塵も積もれば山となる---それをバーテックス側は実践して見せたのだろう。

故に、紡絆の肉体は自然回復の機能は完全に潰されたと見ていい。

分かりやすく言うならば、何度も受け続けた致命的なダメージで回復機能が低下し、呪いによって完全に破壊された。

紡絆はその事実よりも、ウルトラマンが自身を今も守り、負担をかけていることに申し訳なさ半分、助けてくれてることに嬉しさ半分といった感じだった。

 

「それでも……戦うのか?」

「ああ」

 

もう一度、問いかけるように言われた言葉。

だが紡絆は迷うことすらなく、即答した。

 

「何故だ。何故お主をそこまで駆り立てる…ウルトラ戦士はいつもそうだ。か弱き命のために自身の命を投げ売り、救おうとする。時に敵とも和解を目指し、自身の犠牲を厭わない。誰かのために戦う理由など、なかろう。もっと自分を大切にすべきだ。

戦いが嫌になったワシには、お主の戦う動機が理解ができん」

 

それは、彼の本音なのだろう。

今までとは声質が変わり、理解の及ばないことに困惑しているように見える。

 

「さぁ…どうだろう。誰かを助けたい思いは当然ある。

でも俺は生きてきた記憶がない。

ただ元から人助けが好きらしいから。でもさ、他のウルトラマンも俺も…別に理由なんてないんだと思う。

俺も彼らも戦う理由は、純粋に『守りたいと思った』からじゃないかな。それが我儘だろうと理想だろうと、それを成すのがウルトラマンだ。

少なくとも、俺はずっとそのために戦ってきた。

今もこの世界を救うためにも、俺は戦いたいと思ってる。

けれどもしかしたら、俺は求めてるのかもしれない」

「…求めている、とは?」

「俺が得た、光の意味。ウルトラマンの答えを。

だってそうだろ、この光は…ウルトラマンの光は俺が得なくたってよかったはずだ。俺の元に来なくたって、よかったはず。でもウルトラマンは俺の元に来た。

それは…彼が俺を選んでくれたんだ。その意味を知りたい、どうして俺だったのか。偶然かもしれないけど…。

でもそれは戦いの先にあるような、そんな気がするんだ」

 

胸に手をやれば、紡絆は感じられる。

いつも傍に居てくれている、光を。

受け継がれて、継承されて、未来へと導かれた希望の輝き。

 

「……お主は、眩しいな」

「へ?」

「お主は多くの人を導き、希望を与えてきた。光を与え、誰かを照らしてきた。

自覚はないようだが、ウルトラマン…お主は希望なんだ。小都音にとっても、きっとお主の周りでも……な」

 

誰もが紡絆を例外なく『光』と例えた。

彼の本質がそう成すというのもあるだろうが、紡絆の手によって多くの者が小さいことから大きいことまで、彼によって助けられたことが多いのは事実。

そしてそれは---目の前のイレイズにも、該当するのかもしれない。

 

「その様子だと、誰が何を言っても引き下がらなかろう。戦いは好まないとはいえ手伝ってやりたいが、ワシには結界や樹海とやらには入れん。

だから、託そう---お主に絶望を覆す、未来への向かうための片道切符を」

 

イレイズが膝に手をやり、もう片方の手で床を押すようにして立ち上がるとそのようなことを言った。

紡絆は座ったまま見上げ、意味が分からないため首を傾げた。

 

「…一度だ。

一度だけ、お主を全力で戦えるようにする。その怪我の影響で、まともに戦えんのだろう。もはや地球人が負っていい傷を、限界を超えているからな」

「まぁ…でも、どうやって?」

「ほれ」

 

ひょい、と何かを投げられ、紡絆は両手で慌ててキャッチするが、バウンドして落としそうになるのを必死にキャッチして、焦ったように額を腕で拭った。

あんなこと言った割に、扱いが乱雑すぎる。

 

「なんだこれ」

「一度っきりのドーピング剤みたいなもんじゃ。そうだな…お主らに因んで、ベータリベラシオンカプセル…とでも名付けよう」

「へえー」

 

形としては明らかに見たことのあるような変身アイテム型のペンライトみたいな感じだが、カプセルというだけあって物凄く小さい。

紡絆は投げ渡されたそれを興味津々に見ていたが、飽きたので見るのを辞めた。

 

「ベータというだけあって試作品に過ぎんが…それを使えばお主は傷を無視して全力で戦うことが可能になる。

しかし…」

「デメリットがあるってわけか」

「うむ、三分じゃ。それ以上は効果が持たない上、効果が切れれば受けたダメージは倍になって返還される。諸刃の剣と言えるようなもの…ここぞという時にしか使ってはならない」

「…ウルトラマンと同じ、制限時間」

 

これほど重傷な紡絆ですらも全力で戦えるようになるだけで凄いが、相応のデメリットがあるだけあって、使い勝手は悪いようだ。

強大な力を得るには、いつも犠牲になるものがある。

それを表すかのようだった。

 

「ただし、お主の場合は三分も持たん。恐らく一分か二分。

その呪いがどのような存在にやられたか分からぬが、上位の存在のはず。故にどれほど影響を与えるか未知数…」

「大丈夫、十分だ」

 

ドーピング剤---ベータリベラシオンカプセルを大切そうに握りしめ、傍に置いてあるエボルトラスターを紡絆は握る。

 

「ウルトラマンに悪影響は?」

「ない。あくまで直接投薬するお主のみだな」

「じゃあ…問題ないな。イレイズ、あんたは信じられる。だから信じて使わせてもらって---絶対に勝つ。あんたが愛してくれた人間を、地球を守るためにも」

 

紡絆も立ち上がり、確かな光を宿した瞳で真っ直ぐにイレイズを見つめる。

イレイズは少し眉を曲げ、眩しいものを見るかのように見て、ふと笑った。

 

「ワシの分も背負うということか。お人好しじゃな」

「よく言われる」

 

同じく紡絆は笑い、その手を伸ばした。

イレイズは固まったように紡絆とその手を見て、はてと疑問符を浮かべる。

 

「友好の証…ってやつだ。それに感謝してる」

「…そういうことか、礼は良い。ワシにとってもこの地球は大切だ。

正直、最初はただウルトラマンを宿すだけの少年かと思ったが、お主を気に入った。だから生きて、また話し相手になってくれればな」

「そっか…死ぬつもりはないよ、答えは見つけてないし…俺はまだやらなくちゃいけない『依頼』が多くある。それに俺も、イレイズには特に隠す必要も無いから話しやすいしな、追求されたらすぐボロ出るし」

「お主はあまりにも分かりやすいからのう…だが、いくら全力で戦えても一人では勝てない戦いもある。それだけは忘れてはならん」

「…うん、分かってる。だから俺は---」

 

その続く紡絆の言葉を最後まで聞いて、メフィラス星人のイレイズは安心したように笑い、紡絆の手を握る。

宇宙人と地球人。

種族が違えども、分かり合うことは出来る。

それを示すかのように、新たに紡がれる絆によって、光はより強まる。

相対する敵はあまりにも大きく、脅威で、深く、深淵のような闇。

それでもなお、紡絆の中の---否、紡絆の光は決して闇に負けることなく、弱々しくも輝き続ける。

こうして、ここにウルトラマンを宿す人間と宇宙人であるメフィラス星人は確かに、分かり合うことが出来たと言えよう。

イレイズが好戦的じゃなかったとはいえども戦いに発展することも無く、無事へ---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真偽さん、紡絆くん。ご飯出来たけど大丈夫?」

 

互いの信頼を分かちあっていると、ノック音が聞こえた後に襖の奥から麗花の声が聞こえてくる。

 

「…しんぎ?」

「地球での名だが、気にせずともいい。

---ちょうど話しは終わった。すぐに行く」

 

聞いたことのない名前が聞こえた紡絆はそれに反応するが、イレイズが代わりに答えた。

すなわち、人間として生き、人間として過ごすための名前なのだろう。

 

「お兄ちゃん早く来てね、真偽おじいちゃんも!」

「ああ、分かった。俺も行く。先に行っててくれ」

「はーい」

 

どうやら二人ともいるらしく、今度は明るい小都音の声が部屋に聞こえて来るが、紡絆はすぐにそう答えた。

すると返事とともにまた離れていき、紡絆はイレイズを見ると、彼の姿は人間としての老人へと戻っていた。

 

「…一応聞くが、そんな老人の姿にする意味は?擬態なんだろ?」

「…言っただろう。人間として、と。それにこっちの方が合っているんでな」

「やっぱりそうか」

 

宇宙人としては、そこまで老いているわけではないのだろう。

しかし人間として過ごしてきた時間、宇宙人として人間の年齢を換算すると、若者よりも老人の方が本人的には合っているということだろうか。

やけに動きはジジイ臭い時があるので、確かに合ってそうだった。

 

「とりあえず、今は飯食べにいこう。イレイズ…いや、真偽さん…かな」

「…名は好きに呼べ」

「そうする、イレイズ」

 

紡絆はどうやら彼の本当の姿の名前を選んだらしく、そう呼んで先に廊下に繋がっているであろう襖の方へと向かう。

その姿をイレイズは見て、僅かながらに不安を覚える。

 

(…彼はあまりにもの真っ直ぐで、純粋すぎる。眩しすぎる光は、時に毒になる。

故に、闇に染まればそれはどれほどの脅威となるか……。だがもし、その輝きを保ち続けられたなら先に続く未来は---きっと。

しかしもまあ…自分ではなく、ウルトラマンの心配をするとは…自己犠牲もここまで来るともはや病気だな。いや自己が存在しないか…。

せめて彼の未来に、幸あらんことを)

 

隠していたが、紡絆の在り方に危機感を覚えたイレイズは希望に満ちる明日ではなく、暗雲に包まれながらも陽が差し入る、どちらに転ぶか分からない空を見て、ため息をひとつ零す。

果たして続く道は、希望か。それとも絶望か。

それらは誰にも分からず、唯一イレイズに分かることは、全ての命運を握る鍵は彼の仲間とウルトラマン。

何よりも目の前にいる、底無しの明るさを持ち、年不相応な覚悟と精神力を持つお人好しな少年であるということ。

 

(…それにしても、二年前…か。ワシら…いや、()()()()()()()は何か、大事なことを忘れてるのではなかろうか。

娘を失ったのと彼の友人の記憶の喪失。

言わなかったが、妙な違和感がある…果たしてこれは、偶然か?)

 

考えても分からず、ただ所持している記憶に齟齬が起きないようにまるで作り替えられたかのような、そんな違和感だけを胸にイレイズは一度目を伏せ、歩いていく。

---果たしてそれに気づけたのは彼が宇宙人だからか。

そして---今日のご飯は何かと明るく歩む少年は気づいているのか。

少なくとも、傍から見れば紡絆の姿は間抜けな程に呑気だった。

 

 

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