【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
真実はまだ明らかになっておらず。
その真実が、明かされる時が来た。
ウルトラマンという存在。
スペースビーストという存在。
バーテックスという存在。
世界の真実。
そして何より、この世界で最も特異点である人物の過去が---
知らなければならなかった。
絶望を味わい、希望を失い、大切な人が長くないということを知っても、全ての答え合わせをしなければならない。
自身の記憶のない、二年間の記憶。二年前以前の全ての記憶が無い紡絆。
これらは、果たして偶然なのだろうか。
それにしてはあまりにもタイミングが合いすぎていて、あまりにも違和感しかない。
考えないようにしていたことから逃げることはもう許されず、全てに向き合う時が来た。
---今でも東郷は鮮明に覚えている。
初めて目が覚めた時、腕にはリボンが巻かれていて、手の中にはふたつの流星のバッジがあった。
それが何なのかは分からなくて、それでも大切なものだということは理解していた。
朝になると、医者から告げられたのは事故によって二年間の記憶と足の機能が失われてしまったこと。
決して記憶が戻ることは無かったが、母は自慢の娘だと
そして退院して車椅子での生活にある程度慣れた頃、親の都合で引っ越しが決まった。
住み慣れたところを離れ、車椅子の生活を強いられるだけではなく二年間の記憶を失って、誰も知らない見知らぬ場所でやっていけるのかとなると、誰もが不安になるものだろう。
東郷も例外ではなかったが、その不安は友奈と紡絆のお陰でかけがえのない日々へと変わった。
優しくて、明るくて、何も分からない東郷に親切にしてくれた
ちょっと変わった出会いだったとはいえ、誰よりもお人好しで困ってる人が居たら迷うことなく誰かを助けようとする
彼の姿は東郷の目にはとても眩しくて、似た境遇だというのに自分のことより誰かのことを心配して、時々彼の行動には肝を冷やすことは多いが、まるで光のようだと東郷は感じていた。
そして随分前になる。
車椅子で生活するだけではなく、お菓子作りをすることも慣れてきて、初めてぼた餅を二人に食べてもらったときがあった。
東郷は今まで結城さん、と呼んでいたが、その時に毎日食べたいと言ってくれた友奈のことを『友奈ちゃん』と名前で呼ぶようになって、
---そう、この時の私は、二人に出会わせてくれた神樹様に感謝をしていた。
こんな私に、大切な二人に巡り会わせてくれて。
そんな二人と一緒に過ごす毎日。
いつもと何ら変わらぬ幸せで楽しい日々を過ごしていたが、風に誘われたことが日常を変えた。
三人は勇者部へ入ったのだ。
しかし勇者部の創設となると、まだ何も分からないし何も実績がない。
イチから始める活動は大変で、それでも楽しくて、紡絆の頑張りは相変わらず凄かったが、何も出来ないと密かに思っていた東郷はみんなが頼りにしてくれたことがとても嬉しかった。
そうして少しずつ、本当に少しずつ有名になって、知られるようになって、あっという間に一年が経つ。
そうなると後輩が入ってくるわけで、勇者部には風の妹である樹が入ってきた。
彼女を歓迎するにあたって人と接するのが苦手だと聞いていた東郷や友奈はどう不安や緊張を無くそうかと考えて実行して、紡絆も考えていたが、実は樹は紡絆のことを知っていたため避けており、紡絆だけは上手く行かなかった。
まあそんな彼はいつの間にか樹と親しくなっていたのだが……そこは流石というべきか。
そんな感じで五人揃った勇者部だが、東郷は毎日毎日、楽しく感じていたのだ。
でも……運命というのは残酷なものだ。
そんな大切な日々は、長くは続かなかった。
東郷たちは勇者になって、紡絆はウルトラマンになった。
なって、しまったのだ
それからはスペースビーストとバーテックスとの戦い。融合した敵との戦い。
何度も危機に瀕して、紡絆は何度も死にかけて、それでも力を合わせて、敵は融合型へと進化し、ネオ融合型昇華獣へと進化するということがあったが、何とか全てのバーテックスを倒すことが出来た。
スペースビーストはまだ居るかもしれない。でもバーテックスは全て倒した。
そんな彼女たちに待っていたのは体の機能の欠損。
満開の後遺症の可能性があるというところまでは一人調べていた東郷は推測出来て、いずれ治るという言葉に縋って考えないようにしていた。
彼女たちに会うまで。
『ずっと呼んでいたよ~、わっしー。会いたかった~』
乃木園子と三ノ輪銀。
出会って数日しか経ってないが、あのとき初めて見たはずなのに、東郷は不思議と心が締め付けられているかのように苦しさを感じていた。
園子と銀は東郷のことを『わっしー』と『須美』と呼んでいた。
---きっと、かつての私は彼女たちを知っていたのだろう。
でも、東郷は忘れてしまった。
彼女たちに辛い思いをさせてしまったことに心が深く痛み、真実を伝えられてからというもの、東郷はより色んなことを調べることにした。
自分が思っているよりも大事な過去だとわかったから。
だからなのだろう。
東郷は自分の過去のこと、彼女たちの言葉のことを、紡絆のことを、ひたすら毎日調べた。
---分かったのは私が
精霊の数は一人一体。何故私だけ最初から三体居たのか。
それは総力戦後に帰ってきた端末で半ば確信した。
精霊の数が増えた者と増えてないもの、その違いは満開したかしてないかの違いだった。
満開をした四人は増えて、満開してない夏凜ちゃんだけが増えてない。
さらに私が失った記憶と足は満開の代償ということを考えたら、最初から三体居た私は先代勇者であることが誰でも分かる。
だがここで問題がひとつ。
東郷自身のことや乃木園子と三ノ輪銀、つまり先代勇者のことは分かったのに紡絆のことだけは
だからこそ、東郷は探した。
どこまでもどこまでも、どんなことでも、どんなときでも、どんな細やかなことでも、毎日毎日毎日探して調べて探して調べて探して調べて探して調べて探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して探して---寝る間も惜しんで探して、調べて、そしてまるで情報が規制されているかのように、紡絆---『陽灯』という人物は
それは、どういうことなのだろうか?
情報があるとしても別人で、故意的に消されたかのように全て消えているのはどう考えたっておかしい。
例え何もしてないとしても生きているだけで情報があってもおかしくなく、継受紡絆という人間の過去が陽灯と呼ばれる人物なら多少の性格に変化はあれども、何かがあったっておかしくないはず。
だけど、何も無い。
おそらくそれらのことは大赦が管理しているのだろう、と考える方が妥当だ。
なぜならこの世界で大赦は強い権力を持っている。
紡絆が樹海化した世界に入れることも、ウルトラマンに選ばれることも全部全部大赦は知った上で紡絆を利用した、とそう東郷は判断した。
それは間違ってないと言えるだろう。
大赦が紡絆の存在や樹海に入れることを知ってないと、勇者部へわざわざスカウトしたことが矛盾するし大赦が勇者になれない紡絆を『ウルトラマンに選ばれる』と予め知っていたなら、指名した理由だって辻褄が合う。
なぜなら、先代勇者の二人が紡絆のことを『はるるん』、『陽灯』と呼んでいたのだから。
もし東郷に記憶があればもっと深掘りすることも出来たはずだ。
彼女も先代勇者の一人なら過去の紡絆---陽灯という人間と関わっていたはずなのだから。
それがどんな関係だったかまでは分からなくても、先代勇者のうちの二人が関わっていたなら友達くらいの関係には絶対になっているはずである。
ここまでが東郷の推測と調べることの出来た情報で、紡絆に関してはほぼ全てが今までの情報から整理して出された、東郷の持論。
より詳しいことを聞くには、彼女たちに会わなければならないだろう。
何よりも、東郷は紡絆の状態を知ってから検証した結果や推測を話すために紡絆と風、友奈を呼び出して---紡絆の状態を言われずとも理解した東郷は時間が無いと確信した。
彼の体は左目だけでなく左腕、温感を失い、吐血するようになっている。原因は分からないが、もう、急がなくてはいけないのは誰の目から見ても明らか。
自分なりの答えを出して、真実を知って、全て知って、出来るなら、紡絆を二度と戦わせない。
そのためなら東郷はなんでもする気だった。
例え彼に恨まれるようなことをしてでも、どんな手を使ってでも。
なぜなら東郷にとっては、彼が居るだけで救われるのだから。自分を救ってくれた、一人なのだから。
そうして今日、東郷は乃木園子と三ノ輪銀が居ると思われる病院へとついに足を運ぶ---
「いらっしゃい、わっしー…じゃなくて今は美森ちゃんか。来ると思ったよ〜」
薄暗い病室。
二つのベッドの前には小型の鳥居が建てられており、壁や天井は不気味なまでに形代や御札で埋められている。
それはまるで
病院内を案内され、通された病室には二人---乃木園子と三ノ輪銀が待っていた。
「わっしーで結構よ。たとえ記憶が無くとも…確かに私は
「流石須美、賢いな。そこまで分かってるってことは粗方自分のことは判って来てるんだろ?」
東郷がここへ来たのは、答え合わせをするため。
だからもう、自分が過去に鷲尾須美という名前で生きていたことも調べがついている。
ただしその答え合わせは見当違いであって欲しいもので、東郷は自身の出した結論を否定して欲しいと願いながら固い表情で口を開く。
「---適性検査で勇者の資質を持っていると判断された私は、大赦の中でも力を持つ鷲尾家に養女として入ることになり、そこでお役目についた」
「鷲尾家は立派な家柄だからね。高い適正値を出したあなたを娘に欲しがったんだよ」
「両親はそれを承諾したのね…」
「あの頃は家格が求められたのもあったけど、神聖なお役目だからなぁ」
逆に言えば今の勇者たちが養子に出されたりしていないのは家格を求める制度が廃止されたから、ということだろう。
両親からすれば神聖なお役目に選ばれた娘を差し出すのは喜ばしいことのはず。
なぜなら神樹様に選ばれた、という名誉ある事なのだから。
「……私は貴女たちと一緒に戦って、散華によって両足と記憶の一部を失った。だから私は次の戦いに回された…」
「大赦は身内だけじゃやっていけなくなって勇者の素質を持つ人を全国で調べたんだよ〜」
そうして調べた結果、勇者部に居る皆の適正値は高かった。
だから大赦から派遣された風が適正値の高い人間を集めた、といったところだ。
まぁ、例外が居るのだが。
「東郷の家に戻されて両親も事実を知って黙っていた。事故で記憶喪失と嘘までついて…引っ越し先が友奈ちゃんの隣だったのも仕組まれたものだったのね」
「彼女は検査で一番高い適正値を持っていたからね。彼女が神樹様に選ばれるのは大赦も分かってたんだ。わっしーが彼女の隣になったのは、はるるんが既に居た、というのもあるよ」
「あいつは唯一樹海に入れる存在。だから適正ある者の近くに居るだけで選ばれる。大赦からしても適正値の高い人間の傍に置いておきたかったんだろうな……あの性格だからお役目で精神的支柱にさせるって目論見もあったらしいけど」
陽灯、東郷たちにとっては紡絆だが、紡絆が適正値の高い友奈と居れば選ばれても対処できる。
樹海に入れる存在を傍に居させることで神樹様に選ばれる可能性を高められるしそもそも一番高いという時点でほぼ確定していたようなものだ。
全部、大赦は計算づくで利用したのだろう。
仮に違ったとしても紡絆だけは確実に樹海化された世界へ行くため、デメリットは少ない。何より、記憶が無い時点で勇者たちに真実が知られることもないから使いやすい。
そして友奈たちが選ばれたなら、今みたいな状況を作り出せるのだから。現に紡絆が勇者部の中心となったお陰で
「……神樹様は人類の味方じゃなかったの?バーテックスやスペースビーストを倒すために私たちは自分たちの身を捧げるなんて……」
「味方だよ。満開して散華すると身体の一部は失う。だけど神樹様は命までは取らないでしょ?
神の力を矮小な人の身で宿せる。神樹様はかなーり譲歩してくれてる方だと、私は思うなぁ」
「まあ、あのバーテックスやスペースビーストを、特に融合型だっけ。神樹様の力なしで倒すのは無理だもんなぁ…。出来るとしたらウルトラマンを宿すあいつくらいだよ」
神樹様は神様であるが、神であっても無限に力があるわけではない。
人にとって神と同義であるウルトラマンもエネルギーがあるように、神樹様は限られた力で四国に結界を貼り、力を貸してくれる。
だけど、そんな神樹様からさらなる力を得るにはそれ相応の代償が必要となる。
その代償が身体機能であり、神樹様が悪神なら間違いなく命を取っているだろう。
何より神樹様が人類から得てるのは、信仰のみに等しい。そう考えたら、神樹様がどれだけ人類に与えてるものが大きいのか。
結界で守ってくださるだけではなく、生活するための恵みまでも与えてくれている。
「じゃあ、ウルトラマンは一体……何なの?どうして紡絆くんに宿ったの?スペースビーストって、一体…?」
「うーん……それを教えるのは難しいね。わっしーは
「……事件?」
「やっぱり分からないか。あたしらも知ったのはつい最近…いや思い出したって方が正しいか」
わざわざ言い直したことにますますと疑問が浮かぶ。
東郷の記憶には五年前に起きた、それこそ大きな事件があったなんて記憶は無い。
それも当然だろう。
そんなものは
「五年前、四国に巨大隕石が落ちてきて甚大な被害を出した事件があったんだ〜
「……表向き?」
表向きということは、そのままの意味。
取り繕うために見せかけでそうしたのだろう。
だが表向きが巨大隕石となると、実際のところは何なのか東郷でも分からない。
そもそも隕石が落ちてきたなら、必ずもっと表沙汰になっているはず。それこそニュースにもなるし四国に住む人たちは今も覚えているはずなのだ。
だがそんな記録はどこにも無い。ネットの中にすらひとつも無いのはおかしいのだ。
「私やミノさん、わっしー。そしてはるるんが二年前に現れ、戦った始まりのスペースビースト、
「え……?も…元々は、一つのスペースビーストからあれほどの数が生まれたってこと…!?それに、ということは……」
「ああ、陽灯は
「ちなみに、わっしーが持ってるバッジの一つは、はるるんのなんだよ〜」
「…えっ?」
まさかの発言に、東郷は固まる。
何気に紡絆が過去にウルトラマンになってるという重要な情報が出てきたが、自分が目覚めた時に持ってた大切な物のひとつ。
そのひとつが実は過去の紡絆が自分に渡していたものだとは流石に予想外だった。
東郷はどちらかというと、目の前の二人から貰ったものだと思っていたのだから。
「あたしらも持ってるから。ほら」
そう言って、銀も園子も
それは東郷と持ってるものと一致していて、本来は過去の紡絆、過去の東郷、園子、銀が持っていたものなのだろう。
「た、確かに…で、でもどうして私に?」
「それを持ってたら、はるるんがわっしーを守ってくれるって思ったから…リボンと一緒に渡したんだ。だってそれ、はるるんの手作りだし」
「守るどころか、また引き会わせてくれるとは思わなかったなー」
手作りという意外な情報が出てきたが、過去に説明された時や砂浜で遊んでいたとき、紡絆は小さなウルトラマンを作っていた。
それを考えると、変なところで変な技術がある紡絆が出来てたって不思議ではない。
「あっ、話が逸れちゃったね。えーと……ザ・ワンが今のスペースビーストの源ってところまでだったかな?」
「え、ええ……」
空気が和んだが、それも一瞬。
さっきの話を思い返すと今まで現れた全てのスペースビースト。
それはザ・ワンと呼ばれる存在から生まれたということであり、紡絆が今代の勇者の元へ派遣されたのも、ウルトラマンに過去になっている、というのもあるのだろう。
この世界で唯一、ウルトラマンになったということは再びウルトラマンを宿す可能性が最もある。
逆に言うと、大赦ですらウルトラマンを宿した理由を知らない、ってことだ。
しかしそれはあくまで二年前。
五年前とは関係ないはずである。
「けどね、ザ・ワンもウルトラマンも、その前から居たんだよ。四国で起きた事件は巨大隕石なんかじゃなくて、宇宙から飛来してきた
「……え?ええ…っ!?」
「あたしらも直接見たわけじゃないしあくまで大赦の調べた情報を見ただけ。けど、あいつは間違いなく死んで、生き返ってる」
驚きの連続で、さらなる衝撃の事実を伝えられた東郷はただ混乱する。
宇宙?死んだ?でも生き返った?そう言われて、すぐさま理解できるはずがない。
だが銀が一枚の紙を渡すと、そこの紙には紡絆のことが書かれていた。
重要な箇所を挙げるならば、意識不明の重体と
だが突如として症状が回復、意識を取り戻したとある。
「……多分、その時なんだろうね。はるるんはね、ウルトラマンのことを
「じゃあ…その時から、紡絆くんはもう…?」
「戦うことが決まってたんだろうな。樹海に入れる可能性も、その時にウルトラマンを宿したから、ってのが近いかもしれない。実際にどうかは分かんないけどな。
で、あたしらもザ・ワンと何度も戦い、最終的にはザ・ワンは倒された、んだと思う。でも……陽灯はウルトラマンとして走り切った代わりに、記憶を失った。生きてたのも奇跡なレベルの重傷だったらしいし、どんな戦いになったかまでは分からない。あたしらが知ったのも、満開を使用したあとだからな」
「厄介なのは
次々と予想もしていなかった真実が伝えられる。
かつてウルトラマンとしてスペースビーストと戦い、記憶を失った紡絆。
彼が目覚めて記憶がなかったのは、おそらく戦いの影響なのだろう。
そして今の現状は、全てたった一体のスペースビーストが生み出した悲劇。
これに関しては、
でも不思議としっくりと来る。
なぜなら東郷は
「紡絆くんの場合は戦いの影響で…?それなのになんで、どうして紡絆くんがまた……なぜ紡絆くんにまたウルトラマンが宿ったの…?」
「そこはウルトラマンに聞かないとね〜。けど彼も、はるるんを巻き込みたくなかったと思うんだぁ…」
そう語る園子は何処か悲しげで、過去を偲ぶように目を細めた。
深く、感情の籠った表情で。
「はるるんはね……それはもう、背負いすぎたの。人の希望も、地球の未来も、命も、罪も、人の醜悪も、全部全部背負って、人の身では余るくらい、とーっても大きなものを。でも彼は諦めなかった。彼には善悪なんかなくて、ザ・ワンにすら
それよりも、昔も今も、彼は
スペースビーストにすら手を伸ばす、それは今まで戦ってきたことから分かる通り、どれだけか
だが紡絆自体が
それが初のスペースビーストとなると、尚更。
故に園子の言葉は東郷も不思議と納得してしまう。
紡絆という人間がどういう存在なのか。彼は誰かを救うことに限っては、あまりに狂気的だ。
誰が止めてもするし、人を助ける際に自分の命なんて二の次、というよりは無いに等しい…いや、間違いなくない。
そんな彼がウルトラマンという大きすぎる力を持てば、さらに背負うだろうということは彼の存在を知るものからすれば簡単に予想がつく。
「でもウルトラマンはひとりじゃ戦えないみたいでね、地球に長期間滞在するには人に宿る必要があるらしいんだ。そしてはるるんに再び宿ったのは彼がこの世界で
そう締めくくった園子の表情は微妙な表情で悲しそうな、嬉しそうな、そんな相反する感情。
ウルトラマンがいなければ、紡絆という人間は園子や銀、勇者部と出会わなかったかもしれない。
出会いをくれたことに対する嬉しさ。一緒に生きて行けたことに対する喜び。
色んなを抱えることになってしまったことに対する悲しみ。途方もなく大きな、定められた運命を背負うことになった残酷さ。
そういった様々な正と負を思ったからだろう。
「紡絆くんは、過去にも……今も、そんなものを…私たちと同じくらい……いえ、私たち以上に……」
「…だろうな。あいつは……母親を殺してしまってるし」
「……!?」
「あっ、ミノさん。それは…」
「え?やべっ……!?」
話すつもりはなかったのだろう。
園子に言われたことで銀は慌てて口を抑えるが、東郷は強いショックを受けたかのように目を見開いていた。
手遅れだ。
「どう……いう、こと…?紡絆くんはそんなこと…それに母親に会ったような様子も……!」
「……仕方がないね。本人が言ってないから私達も黙っておこうと思ってたんだけど…」
「ごめん……」
申し訳なさそうな表情を浮かべる銀だが、こうなれば隠し切れる問題ではない。
というか、話さなかったら確実に追求してくるだろう。
「ほら、あたしらは知らないけどさ、須美たちはファウストってやつと戦っただろ?」
「ええ……まさか…っ!?」
「そう、そのファウスト…正確には『ファウストの正体』が陽灯…いや
「ウルトラマンが人間を必要とするように、似た存在の
ただ……それが、
それが、彼女たちが知るウルトラマンとスペースビースト、紡絆についての全ての真実。
隠された、もうひとつの真実。
過去に一度死んで生き返るようなことがあり、陽灯という人間としてウルトラマンとして戦って記憶を失う。
それから重傷を負って目が覚めると記憶がなくて、皆がよく知る紡絆として生きて、またウルトラマンに選ばれて戦ったかと思えば、何度も死にかけて、自分たちが知らないだけで本当は母親を殺していた。
「紡絆くんは、それを……」
「知って、やったんじゃねぇかな……だって、ファウストを倒したのは陽灯なんだろ?そうするしか、世界は守れないし誰も守れない。資料を見た感じ、光線を撃つのを躊躇ってる様子があったからな」
「っ……そんな、こと…あって、いいの…!?あんなに、あんなに誰かのために行動して、誰かを助けて、誰かを笑顔にして、誰かに希望をあたえてっ……!
多くの人のために行動してきた彼が…あまりにも、あまりにも報われないじゃない……!」
「…………」
東郷の言葉に二人は何も言えない。
そう、彼女の言葉は正しい。
報われない。紡絆という人間は、報われてもいいほどに色んな事をやってきた。もう傷つかなくてもいいくらいに戦ってきた。これ以上何も背負わなくてもいいくらいに抱えてきた。
困った人が居たら助けて、泣いている子が笑顔を取り戻して、解決して、危ない目に遭っていたら救助して、誰かを思いやって居場所を与えて、どんな時だろうと誰かに笑顔と希望を与えるような、光を体現する存在。
彼は見返りを求めてもいいのに求めず、それどころか一体どういうことなのか真逆なことが起きていた。
関係性がとても良く、仲の良かった家族を殺させるような過酷な運命を世界は彼に背負わせていた。
継受紡絆という人間は、家族を愛していたのに。近所では仲睦まじい姿に微笑ましそうに見られるほど、よかったのだ。
そんな愛していた人物すらも、唯一血の繋がっている家族という存在すらその手で殺させた。
でも彼は、
なぜならそれが、
「母親のことだけじゃないっ…!
紡絆くんは身体機能を失ってる…!左目も左腕も、温感も、失って、ボロボロになって、もう、命を失いかけるくらいに酷い状況になってるのに!そんなの、おかしいじゃない…どうして紡絆くんだけそこまで背負わなくちゃいけないの…彼が、彼が何をしたのっ!?」
「…待って。はるるんの身体機能が…失われてる?」
知らなかったのか、園子が東郷の言葉を止めると、彼女は驚いたような表情を浮かべており、銀も同じような様子だった。
つまり、二人は知らなかったことで、東郷も意外だったのか『黒い衝動』はあったが、僅かに落ち着きを取り戻す。
「…ええ、本人が言ってたわ」
「…どういうことだ?ウルトラマンに散華のような力は…」
「…スペースビーストの能力?ザ・ワンの持つ特性から考えたら『満開』の力を再現すれば……あるかもしれないけど……」
流石の二人も困惑した様子で顔を見合わせていたが、答えが出るような様子はない。
これに関しては、実際に紡絆ですら分かった訳では無い。
唯一答えを導き出せたのは、紡絆の『友人』であり、人類を超越した頭脳を持つメフィラス星人のイレイズのみ。
彼だけが、
「…ごめんね、それは分かんないや」
「力になれなくて、ごめんな」
「いえ……逆に良かったわ。今日話を聞いてたら、二人が本当に紡絆くんを思ってるって、分かったから……」
「当たり前だろ?本当なら殴ってでもあいつを止めたいよ。出来たら苦労しないんだけどな。殴っても動くだろうし」
「例え記憶がなくたって…彼は私たちにとっても
冗談かと思うほどの言葉だが、本気を物語っている銀の笑顔や何処か意味深な言い方をする園子の真意までは分からなかったが、何処か
でも、昔を懐かしむ空気などでは無い。
「さて、本当はこのまま話してても良いんだけど……」
「いつまでも出来るわけじゃないからね。わっしーには今、二つの選択肢があるよ」
「…選択肢?」
平常は保っているが先程、いや今まで以上に重たい空気が場を支配する。
何処か辛さを隠しきれない園子の様子に東郷は酷く嫌な予感を感じ取る。
そう、まるであのとき---紡絆が初めてウルトラマンだと明かした時と同じくらいに。
いや、今までの経験以上だ。
「一つはこのまま昔話に花を咲かせて、少しでも幸福感に浸かって帰ること。こっちを選ぶなら、それはもう私たちのこと、はるるんのことをたっくさん話すよ。はるるんに関しては、恥ずかしいことから、かっこよかったところまでぜーんぶ。ふふん、とくに『あの』はるるんが二度と嫌だ、というくらいのとっておきがあるんだから。写真付きでね。あっ、小さいはるるんの写真もあるよ」
わざとなのかもしれない。
何処かおどけた様子でそう告げるのは、きっと
そうすればきっと、今まで通りには行かなくとも多少はマシになる。
ただし、その先に待つのはまだ残ってる可能性のあるスペースビーストとの戦いだろうし、紡絆の問題は間違いなく何一つ解決しないまま---それどころか今も彼がとてつもなく重たいものを背負ってるのに、過去にも背負っていたということを知っておきながら見て見ぬふりをしなければならなくなる。
東郷と違って、満開の代償でないということはいずれ記憶は蘇るかもしれないからだ。
「…もうひとつは?」
「辛くて悲しくて、光も希望もない
「正直、あんまりおすすめはしないけどな。知って欲しいとは思うけど、こればかりは…あまりにも
真実。
この場合はウルトラマンや紡絆、勇者のことでもないのだろう。
かつて満開をし、散華を繰り返した先代勇者ですら希望がないと、絶望というほどの真実。
それは、
何度何度も満開を繰り返した勇者ですら、勇者は決して死ねないということすら度外視して語る、絶望というたったの二文字で表現するほどのもの。
前者を選んでも、誰も責めない。
ただいつも通り、以前と同じく自身の過去から逃げて、無闇に知る必要のない真実に目を逸らし続ければいい。
誰も耐えられないと思い切って言うほどなら、それは東郷には耐えれないはず。
幼い身体で途方もなく重たいものを背負い、ウルトラマンという大人でも苦悩するというのに子供の身で抱えきれない責任感を抱え、例え母親を自らの手でそうするしかなかったとはいえ殺してもなお、闇に屈することなく輝きを保ち続けた紡絆だからこそ耐えれる、というくらいにヤバい代物ということだろうか。
そんな人間自体が奇跡のようなものではあるが。
しかし人というのは、甘い蜜を用意されてしまえば、酷く魅力的に見えてしまうものだ。
だけど、ここで逃げ帰っても何も変わらない。
ただ消費し続ける、後が長くないであろう大切な人が苦しむ姿を見るだけ。
脳裏に浮かぶ、今日の紡絆の姿。
あんなに血を吐いて、苦しそうで、はっきり言って
それでも東郷の知る彼なら、逃げることなく必ず前へ進むだろう。
既に実感はある。
知ってしまえば、耐えられないということくらい。でもこれ以上知ったところで、今更と言われれば今更だ。
既に自身の心が悲鳴を挙げていると気づいている。
だとしても、東郷美森は---
「後者を……進むわ。きっと、紡絆くんならそうするだろうから」
どんな絶望があろうとも、抗うつもりで---それが、どんなものなのかを、無知とはどれほど恐ろしいものかというものを知らず。
なぜなら東郷美森は全てを『知らなくちゃいけない』のだから。
〇継受紡絆/
何も知らない人。
五年前、つまり小学生の頃にウルトラマンとザ・ワンが
そして二年前に途方もなく大きなものをその身で抱え、ザ・ワンとの激闘の末に世界を救った英雄。そりゃ強い。
その影響で記憶を失い、肉体は傷だらけだったことから死闘だったことが窺える。
でもやっぱり前世があっても無くても昔から命投げ出してたしあのザ・ワンにすら手を伸ばすやべーやつだった。
名前は『遡る』という意味で『過去』を連想させたかったのと特撮作品には切っても切れない『月』と『太陽』の漢字が入れたかったのもあってこの名前。
ちょうど作者が名前を考えてた時に雪下の誓いを見てたのもある。
〇ウルトラマンネクサス
かつての友人である紡絆を再び巻き込むことになってしまったウルトラマン。
紡絆の中にある『光』に共鳴し、引き寄せられたのだと思われるが実際は不明。
だがしかしどんなときも諦めず足掻き、決して希望の光を枯らさない紡絆は遅かれ早かれウルトラマンになっていただろう。
〇ザ・ワン
元々の紡絆くんのクソ強メンタルを作り出した原因だと思われる。
融合型の存在もネオ融合型の存在も、スペースビーストの存在も全部こいつのせい。
〇東郷美森/鷲尾須美
かつての先代勇者の一人。
彼女が目覚めた時に持っていた流星のバッジは過去に陽灯くんが作成し、園子と銀から紡絆のバッジが渡されたので二つ持っている。
何気に紡絆の知らないところで紡絆の全てを知った上、世界の真実と実は紡絆が母親を殺してたことも知った子。
『知らないといけない』という使命感で動いてるだけで、もうとっくにメンタルは瀕死。
この後の真実を目の当たりすれば…。
〇乃木園子
かつて共に戦った先代勇者の一人。
流石に紡絆が身体機能を失ってることは知らなかったが、友を思う心は変わらない。
何気に紡絆(陽灯)くんが本気で嫌がるという二度とないであろう過去を知っているらしい。
〇三ノ輪銀
園子と同じく共に戦った先代勇者。
同じく身体機能に関して知らなかったが、口を滑らせて紡絆の母親のことを話してしまった。