【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
実は最新話投稿して起きてから6時間程度で完成していたという余談(修正する時間が無くて投稿できなかった)
あまりにも筆が乗りました。軽く書いてこれとかマジ?なんで一話使ってるんですかね…この小説には何故か愉悦部の方が多いので、お楽しみください。
それ以外の方には言っておきます。この話には過激、残酷な描写が含まれるので閲覧注意です。苦手な人は苦手かも。
一応これでも修正してだいぶ軽くしたんやで。
---いつだって変わらない。
ウルトラマンを宿す。
それは、運命を背負う。
それは、世界を背負う。
それは、命を背負う。
それは、希望を背負う。
手にして、平和を目指して、守った。
多くの命。多くの心。多くの人。多くの日々。
けれども。いつだって、落ちていた。
その手から、零れ落ちていく。
誰かを守って助けて、救って、守って---それでも一番大切なものは、いつも手に出来なかった。
ウルトラマンを宿した者は、やはり、残酷な運命を背負う宿命なのかもしれない---
「あはっ、あははっ、あはは、アハハハハハハ………ずっとずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと---待ってた。お兄ちゃん、ねえお兄ちゃん。私はこの時を、ずぅーっと待ってたんだよ。やっと、やっと殺せる……やっと、終わらせられる……!」
「うぐっ……ごふ……っ!」
引き抜かれ、振り向かせられた紡絆の胸に栓に蓋をするように、ぐさり、と深く突き刺さる。
血が吐き出され、濡れる。
白いワンピースが、紡絆の血で染まった。
けれど構わなかった。
彼女は紡絆を抱きしめて、また血に濡れる。
頬は紅潮していて、瞳に色はない。
濁りきった青い目は、光がなかった。
闇だけが、あった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃんっ、お兄ちゃんッ!好きだよ!好き、大好き!愛してる!ずっと隠してた、ずっと話せなかった!でももういいよね、終わったら関係ないよね?好きなの、お兄ちゃんのこと。愛してるの、妹としてじゃなくて一人の女の子として!
ドキドキするの、傍にいるといつも止まらなかった。溢れるのを我慢してた!この気持ちを抑えるのが苦しかった!はぁ、お兄ちゃん♡お兄ちゃんッ!すきっ♡すきすきすきすきすき---だーいすきっ♡」
---黄金色の瞳が、失われる。
狂気を感じるほどの恋募。
抱いてはならない感情。
矛盾する行動。
困惑を、隠せなかった。頭が、情報が、混乱していた。
「苦しい?苦しいよね、ああ、ごめんねお兄ちゃん。せっかくいつもより綺麗な目をしてたのに、戻っちゃった。でも大丈夫、私は普段のお兄ちゃんも好きだから、どんなお兄ちゃんでも愛してるから気にしないでね。ふふ♡お兄ちゃんの血、お兄ちゃんの体、お兄ちゃんの心も魂も全部ぜーんぶ私のものだよ!ほらお兄ちゃんの血もこうやって私の中になってる。私のになってる!!」
嫌がることもなく、紡絆の流れる血で体を濡らして、舐め取って、動く度に血が溢れる。
もはや全身の力は入らず、その体は徐々に冷たくなっていた。
「……ぁ」
「え?ちゃんと言ってくれないと聞こえないよ。ねえ、なんて言ったの?ごめん、ごめんね。いつもならお兄ちゃんの言葉聞き逃さないのに、騒いじゃった。ダメだよね、反省しなきゃ。でも今は無理なの。なんでかな、分からんないけどずっとドキドキしてる。ねえ聞く?聞いて、私こんなふうになってるんだよ、ずっとなってたんだよ。毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日お兄ちゃんのこと想う度に考える度になってた!」
無理矢理胸に埋めさせるように紡絆の頭を抱きしめては、その鼓動音を聞かせようとする。
---今の紡絆には、聞こえない。声も。何を言ってるのかも。鼓動も。
見ることが精一杯。見るだけが限界。
ただうっすらと、自覚だけをしていた。
---これは、死ぬと。
諦めから来る考えではなく、確信。かつての記憶。前世の記憶。
涙を流す、誰かの姿を。諦めなかった、一人の姿を。最期に見た絶望に立ち向かう、英雄の姿を。多くの、姿を。憧れた、その背中を。
「ねえ、聞こえてる?お兄ちゃん。まだ聞こえてるよね、話せるよね?本当はもっと話したかった。一緒に暮らしたかった。でも仕方がないよね、安心してね。お兄ちゃんが寂しくないように、私がぜーんぶ壊してあげる。ぜんぶこわして、ぜんぶうばって、私だけしか見れないようにしてあげる。必要ないよね、こんな世界。だってお兄ちゃんは苦しむ。お兄ちゃんは傷つく。神樹もウルトラマンもスペースビーストもバーテックスも
まさしく狂気。
普段の姿からは考えられず、間違いなく正常ではない。
言動そのものが、常軌を逸している。
「こ……小都音ちゃん……?」
誰が、呼んだのか。
冷めたように表情が消えた小都音の目が、紡絆から外れる。幽鬼のようにただ首を動かす。
何の感情も宿していない瞳。
それらが向けられた瞬間、ぞわりと肌が粟立つのを全員が感じ取った。
それこそ
恐怖にも近く、本能が警告していた。
けれど。
それでも、聞かなければならない。今起きたことを。起きてることを。
「なに、して……」
息を吸い込み、勇気を出した友奈の口から言葉が振り絞られる。
友奈---いや、この場の全員が冷や汗を掻き、まるで別人のように豹変した彼女を見て呆然としていた。
「何って……見たら分かりませんか?」
右手が引き抜かれる。
左胸から鮮血を撒き散らし、倒れる紡絆の体を小都音は優しく降ろすと、元の彼女のものに戻った真っ赤に染まった右手で紡絆の頬を優しく、愛おしいものに触れるように撫でた。
「つ、紡絆くん……っ!」
「わ、分からないよ…そんな、こと……したら……!」
返事は無い。
身動きひとつすら取る力が残ってないのか。
顔を真っ青にしながら名を呼ぶ東郷の声すら聞こえてないのだろう。
友奈の問いに、小都音は紡絆を見下ろすと表情を消し---
「ッ!?」
距離があまりにも近く、回避不可能な一撃。
精霊バリアが発動するが、
「ゆ、友奈……!?」
「っ…東郷も……!あんた、何して……!」
それでようやく、今を認識したのだろう。
夏凜も風は吹き飛ばされた友奈と東郷に駆け寄って体を起こす。
樹だけは、信じられないものを見るかのように小都音を見ていた。
血に染まった右手には、薙刀のような、黒い棒状のアイテムが握られている。
何処かエボルトラスターに近く、だけど違う。
---それはダークエボルバー。
「分かりませんか?分かりませんよね、別にいいですけど。分かってもらおうだなんて思ってませんし、どうでもいい。終わったら、それまで。どうせこの世界は滅びる……話しても無意味なんですから」
精霊のバリアを無効化するということは死ぬ可能性があった。
だが小都音は友奈と東郷を撃った。怪我ひとつも無いのは殺傷能力がないようにされていたからか、バリアがダメージだけは防げたか。
どちらにせよ行き過ぎた行動だというのに何とも思ってないような、興味無さそうな目で。酷く冷たい目で見るだけ。
「こ、小都音ちゃ、ん…なんで……?」
「………」
それでも、友奈は問いかける。
分からないから、理解が出来ないから、認めたくないから。
けれども、返答は無い。
「そ、そうよ…小都音ちゃん。このままじゃ紡絆くんが……!」
「貴女がそれを言いますか?お兄ちゃんを傷つけたくせに」
「っ……そ、それは!」
「お兄ちゃんを傷つけて、壁を破壊して、余計な敵と戦わせて、世界を危機に追い込んでいる、貴女が言いますか?」
「………!」
口を開いたかと思えば、東郷を責める言葉。
何も言えない。
小都音の言葉は、全て正しい。
東郷は壁を破壊した。そのせいで紡絆はエネルギーをより消費したし、今現在進行形で世界は崩壊の道を辿りつつある。
改めて罪を突きつけられ、罪悪感からか東郷の瞳に涙が浮かぶ。
「わ、わざわざそんなこと言わなくたって……!」
「貴女もある意味同罪ですよ、風先輩。お兄ちゃんは貴女が暴走したから駆けつけた。お兄ちゃんの体に負担をかけさせた。傷つけた。自分だけが辛い?自分だけが苦しい?だから自暴自棄になって、大赦を滅ぼそうとでも考えましたか?大赦のやり方は確かに滅べばいいとは思います。でも正しいんですよ、
「っ……」
そしてまた、同様だ。
小都音自身も大赦は好きではないらしいが、これら全てを知っていた大赦のことを考えれば非人道的ではあるが正しい。
世界を救うには無数といるバーテックスと無限に蘇るスペースビーストを倒し続けねばならない。
そのためなら、利用出来るものは全部しなければ、抵抗出来ずに滅びるだけだ。
紡絆のように、全を救おうとは出来ない。
だから大赦は一を捨てて、九を救おうとした。少しでも、多くの命を。
少数の命で大勢が助かるなら、人類が生き残るにはもう、それしかないのだから。
「ええ、でも感謝はしてます。特に東郷さんには」
「……ぇ?」
「お陰で
僅かに、目が背後へと向けられた。
憎悪に満ちた目で睨みつけられ、遥か先にあるのは大樹。
この世界を守護する神樹様。
「ま、さか……あんた、ずっと影から……この時を…?今まで紡絆を騙してたの…!?」
「---は?」
夏凜が小都音に問いかけると、ギリっと強く歯噛みをした後に、明確な殺意と共に睨みつけられる。
何より彼女のモノとは思えないほどに、怒りに満ちて、殺意に溢れて、酷く、低い声だった。
---それだけで、体が震えそうになるほどに。
「騙す?私が?お兄ちゃんを?何の冗談ですか?冗談ですよね?冗談って言うなら今なら許しますけど。まさか本気でそう思いました?私がお兄ちゃんを騙すとでも?ふざけないで……ふざけないでよ!私はお兄ちゃんを騙したりしない!そんなことしたらお兄ちゃんに嫌われる!裏切ることになる!そんなの絶対しない!お兄ちゃんの信頼に答えるのが私、お兄ちゃんを愛するのが私、お兄ちゃんの傍にいるのは私、お兄ちゃんの世話をするのが私、お兄ちゃんのためだけに生きるのが私の生きる意味。お兄ちゃんだけが私の支え。お兄ちゃんだけが私の全て…!
だって私はこんなにもお兄ちゃんが好き。お兄ちゃんとずっと二人っきりになりたかった。ひとつになりたかった。ずっとずっと昔からお兄ちゃんを愛してきた…!そんな私がお兄ちゃんを騙すとでも!?」
捲し立てるように早口で告げられ、地面が強く踏みつけられた。
見た目からは考えられない衝撃が走り、それは勇者の力を纏っていても踏ん張らないと吹き飛ばれるほど。
衝撃が通り過ぎた後に残るのは、彼女のものと思えないほどの気迫。纏う雰囲気にただ圧倒される。
言葉を失う。
その言葉の数々。
確かな愛情を含みつつも怒りが載っていた。
「……まあメフィストのやつが勝手にお兄ちゃんを傷つけたのは事実です。私は記憶を共有してない。共有されたのはついさっきだから。
知った今は、もちろん許さないけど。その上
一息付くと落ち着いたのか。
怨恨を抱きつつも、興味を無くしたかのように吐き捨てるように告げた。
しかしこの場の誰も、彼女の闇に呑み込まれ、動くことすらままならなかった。
---そんな中、小都音の背後で倒れていた紡絆が残る力を振り絞るようにエボルトラスターを、握った。
背後を見てない小都音には分からず、対面にいる勇者たちだけが気づいた。
まだ生きているということを。
それでも喋りかけるわけにも気づくわけにはいかない。
ウルトラマンに変身さえ出来れば、全てが覆る。
だからこそ---
「ねえ、何しようとしてるの?」
「っぁ……!?」
エボルトラスターが、遠くに飛んでいく。
血潮が噴き出し、右手にはナイフが突き刺されていた。
瞳は一人しか映さない。
一切の熱も感じられず、冷徹で凍えるほどに冷たくて、暗い。
瞳孔は開かれ、吸い込まれてしまいそうなほどに、闇は濃かった。
「ねえ…ねえ、ねえっ!!何しようとしてたの、何する気だったの!?人のお兄ちゃんの体を使ってッ!人のお兄ちゃんの体を操って、操作してッ!これは貴方のじゃない!私のお兄ちゃんの体!私のお兄ちゃんのものなのに!私だけのお兄ちゃんなのに!!どうしてそんなことするの?そこにいるんでしょ、お兄ちゃんの体の中にいるんでしょ!?分かってるんだよ、ウルトラマンは人の体を使わなければ地球には居られない。だからお兄ちゃんの体が必要なんでしょ?でもなんでそんなことするの?貴方が動かなければお兄ちゃんをこれ以上傷つける必要もないのに、お兄ちゃんが苦しむこともないのに!今もそうやって生かして!
紡絆の上へ跨った小都音は胸倉を掴むとひたすら揺らす。
例えそれで吐き出された血を被ることになろうとも、彼女は気にせずに。
そしてすぐに落ち着いたのか、胸倉を離すと紡絆に跨ったまま見つめる。
「はぁ……逆に、気づいてないと思ったの……?私がっ!私がお兄ちゃんのことでッ!!気づかないとでも思ってたのッ!?」
「っ……!?」
失望したように告げると、何かに取り憑かれたように癇癪を起こしながら突き刺したナイフを引き抜くと、再び突き刺す。
悲鳴を上げたくなるほどの痛み。 目を背けたくなる光景。
いや、誰もが目を背けていた。
「お兄ちゃんがこうなったのは貴方のせい。貴方がこの地球に来なければこうはならなかった。ザ・ワンが居なければ世界はこうならなかった。貴方が居なければ
なんで今なの!お兄ちゃんを
狂乱するかのように、突き刺す。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も---抵抗出来ないように。
それこそ、二度と使えなくさせるように。二度と何も出来ないように。
そうして、小都音の動きが止まった。
銀色のナイフは塗装でもしたのかと思うほど赤い鋭利なナニカに変化していて、紡絆の手は、指のひとつすら動かない。神経が切られて、もう感覚はないだろう。
「ハァ、ハァ、ぁ……。あーあ……ごめんね、お兄ちゃん……こんなするつもりはなかったの。本当だよ?私お兄ちゃんのこと愛してるもん、傷つけるのは心苦しいけど…でも仕方がないよね。こうやってお仕置しなきゃお兄ちゃんは諦めないでしょ?言っても分からないんだから、体で教えるしかないもん。
けどこれで分かったよね、これで何も出来ないよね?いいんだよ、お兄ちゃんは何もしなくて何もやらなくて。私が全部やるから、私が全部お兄ちゃんの世話をするからね。いつまでもずぅっと面倒を見てあげる。だからお兄ちゃんを守れなかったウルトラマンもお兄ちゃんを巻き込む神樹もお兄ちゃんを傷つけたバーテックスもお兄ちゃんを殺そうとするスペースビーストもウルティノイドもみんなみーんな殺してあげるから。ふふふ、そうしたら今度こそ、今度こそずっと一緒。いっぱいいーっぱい一緒に幸せになろうね」
小都音がそっと紡絆の頬に片手で触れて、空いている手で髪を撫でる。今も少しずつ色を失いかけ、僅かに開かれた目に、最後まで自分だけを映すように。
触れた体は心底冷たくて、体温を感じられなくて、けれども可愛らしく微笑んだ小都音は立ち上がると、血の気が引いたように見つめる勇者たちを見た。
気圧される---だけど、一人。
顔を青くして、揺れる緑の目が、濁りきった青い目と交差する。
「 小都音、ちゃん…… 」
「……なぁに?」
いつもと何ら変わらない、透き通るような優しい声音と穏やかな笑顔が向けられた。
声の出せない彼女にだけは、変わらない態度だった。確かな友愛が、そこにある。
だが、いつも通りで居られるような状況でもない。
「 紡絆先輩が…… !」
「あぁ……うん、死んじゃうだろうね。今は余計なことをするウルトラマンのお陰で生きてるみたいだけど。でもそれでいいと思うんだ。だってそうしたら私とお兄ちゃん、一緒になれるの。私の中で永遠に生き続ける、永遠に居られる。それに苦しまなくて済むようになるんだよ?傷つかないで良くなるし何かを失うこともない。それは樹ちゃんも一緒。
私はお兄ちゃんが好き。でも樹ちゃんのことも好きなんだよ。だからこうするの。世界を滅ぼす---みんなを解放するにはそれしかないから、人の夢を奪って、私のお兄ちゃんを利用し続けるこの世界を、ね」
態度は変わらずとも、小都音を占める狂気は収まることを知らない。
ダークエボルバーが、再び勇者たちに突きつけられる。
疑いのない、明確な殺意。先程のバリアを無効化した力から考えるに、次はもうない。
漂う血の香りが戦場へと場を変質させる。
「さぁ、どうしますか」
「ど、どうするって……」
「はぁ…分かってますよね、決まってるじゃないですか。私は世界を滅ぼす。貴女たちは守る。だったらもう、殺し合うしかない。……ちょうど、
この期に及んでも戸惑った友奈の声に呆れた小都音は位置を示すようにダークエボルバーを軽く振る。
同時に強烈な気配と熱気が、勇者たちの背後から放たれる。
二つの合図でようやく気づいたのか、振り向いた彼女たちが見たのは、ウルトラマンを超えるほどの体長を持ち、太陽を思わせる外見とは裏腹に絶望を体現した最強のバーテックス。
レオ・スタークラスター。
「こ、こいつって、あの時の…!?」
「もう復活してた!?っ……本当に、本気みたいね……」
レオは動かない。
しかし無意識にか戦闘態勢を取る勇者たち。
信じられない光景。認めたくない現実。まだ頭の整理がついてなくても、時間は止まらない。
僅かに、紡絆へと視線が注がれる。
身動きひとつ取らず、呼吸をしてるのかすら分からない。ただ血まみれの地面に、血濡れで倒れてるだけ。
唯一動かすことの出来た右手は、原型を留めているのか分からないくらいに悲惨なほどに刺傷で埋め尽くされている。
「 どうして、そんなに……あの時の言葉も、今までも…全部、嘘だったの……?」
「……樹ちゃん。私、貴女には嘘つきたくない。だから教えてあげよっか。今までの言葉も行動も、嘘じゃないよ。樹ちゃんのことは好きだし夢を叶えて欲しいなって思う。
それにお兄ちゃんのことは愛してるし勇者部の皆さんも嫌いじゃない」
今までの事を思い返すように目を閉じ、語る小都音の雰囲気は柔らかい。
それは、彼女が本当にそう思っているから、嘘では無いからだろう。
だがそれも一瞬。
また、冷たい目をしていた。
「でもね、もう無理なの。お兄ちゃんを救うにはこうするしかない。お兄ちゃんを守るにはこうするしかない。関係のない人間?世界?どうでもいい…きれいごとだけじゃ救えないものはあるから。お兄ちゃんがみんなを選ぶなら、私はお兄ちゃんを選ぶだけ」
(小都音ちゃん……)
「で、でも…まだ、終わってないよ。みんなで、頑張れば……」
何かを言おうとして、樹は口を閉じていた。
声が出せないのもあるが、考えがまとまらないのだろう。
そんな彼女に代わるように、友奈は自身かそれともみんなをか。鼓舞するように、か細い声音で発言していた。
「だからそれが綺麗事なんですよ」
そんな友奈に、小都音は露骨に不快感を露わにしていた。
現実的な考えからして、この世界は終わっている。
みんなで。頑張ったら。
そんな明確な未来図もなく口先だけで解決するなら、何も困らない。
「私は自分の手が汚れても構いません。それでお兄ちゃんがもう苦しまないなら、なんだっていい。どんな罪だろうとどんな罰だろうと…受けていい」
「っ……その気持ちは、分かるわ。私も、さっきまで似た考えを持ってたから…」
「…そうね、あたしもそうよ。だからこそ、取り返しのつかないことをさせるわけにはいかないんでしょうが…!」
対象は違えど、似た考えを持った東郷と風が、僅かながら肯定を示す。
東郷はみんなのため、そして失う恐怖から世界を滅ぼそうとした。
風は家族の夢を奪われ、みんなが傷つけられ、騙されて大赦を壊そうとした。
そして小都音は---ただただ、兄を想っていた。
その愛情が、途方もなく重たくて歪だろうとも。
「取り返しのつかないこと……ああ、それで思い出した。皆さんはファウストの正体、知ってますか」
「ファウストの正体……?なんで今更そんなこと…」
「……!まさか…!」
何かを思い出したように問い掛けられた言葉に夏凜が、みんなが困惑を隠せない。
それでも、唯一知っている東郷だけは気づいた。
「ファウストの正体は、私のお母さん。つまり---お兄ちゃんは母親を殺したってことなんですよ」
「……は?」
あっさりと、衝撃的な事実が言い放たれた。
ほとんどのものが知らない真実。
逆に言えば、紡絆はそれを知っていた。
知っていてなお、戦い続けていたのだ。
気軽に話せるような内容ではないとはいえ、事情を知っていた東郷以外は頭を殴られたかのような錯覚に陥っていた。
戦意を削ぐには---十分だった。
「辛いはずなのに。お兄ちゃんは隠してた。苦しいはずなのに、抱えてた。自分の手で母親を殺めても、お兄ちゃんは戦うしか無かった。この世界が、なくなるから。選択肢なんて、お兄ちゃんにはなかった。取り返しのつかないことを、お兄ちゃんは既にやっていた…でもこの世界が無くなれば、もうそんなこともなくなる……!」
「確かに、そうかもしれない…。でも紡絆くんは……この世界が無くなることを望んでなかったはずでしょ…?」
「だから私はお兄ちゃんを選ぶんです。この世界より、お兄ちゃんがこれ以上何もしなくていい世界を---話は、おしまい」
完全に興味を無くしたのか、小都音は目を伏せると振り向いて紡絆の体を抱く。
既に血まみれだからか、これ以上汚れることは無い。
「---。お兄ちゃん」
ただ耳元で囁き、小都音は紡絆に顔を近づけて、そっと触れた。
顔を離せば、小都音はゆっくりと立ち上がる。
もう、会話を出来るような様子でもない。
小都音は明確に勇者たちを敵として、邪魔者として睨みつける。
「じゃあ……こわすね、お兄ちゃん。お兄ちゃんを縛るもの全部---私が終わらせてあげる。疲れたよね、みんなを守るのも。頑張るのも、安心して、何があっても一緒だから。だからおやすみなさい。全部終わったら…楽になれるから…!」
小都音はその手のダークエボルバーをゆっくりと左右に開く。
深く、色濃い闇が溢れ出し、紫電が迸る。
紫色の渦がその体を包み込み、闇のエネルギーが変異させる。
黒い瞳に、赤と黒の体。
所々に銀のラインが入っているだけでなく、背骨や肋骨状のモールドに死神の意匠を入れている他、胸にはネクサスのエナジーコアに似た模様も刻まれている闇の巨人---ダークメフィスト。その、等身大。
何度も勇者やウルトラマンと交戦した、巨人。
その正体が、小都音だったと真実が改めて突き付けられる。
『ふん、やっと出番か……』
紡絆とは違い、人格は入れ替わるタイプなのか。
肩を鳴らしたメフィストは、その手をレオに、その上空へと向けた。
真っ暗な闇がレオの頭上で生まれる。
「何をする気…!?」
警戒するように夏凜が刀を向ける。衝撃的なことが一気に起きていたが、何もしないわけには行かない。
『来い、
---この世のものと思えない甲高い獣の声が、響く。
闇の中、何かが蠢いていた。
今まで感じたこともない異常なほどの威圧感。
恐怖を感じるほどの気配。
姿が露になる。
その姿は、あまりに異質だった。
怪獣型の二足歩行の肉体を持ち、頭部は爬虫類型。
左肩が過去に戦ったグランテラと見たことはないが既に組み込まれているリザリアスグローラーと呼ばれるスペースビーストの頭部。右肩が同じく見たことの無いメガフラシと呼ばれるスペースビーストのものと、ノスフェルの頭部。
尻尾の先端がグランテラの尾。
首筋から尾の先端までの背中全般がガルベロス。
胴体と背中の突起物はかつて存在していたザ・ワン。
胸にはバンピーラの顔があり、腹部にはムンクの叫びのようなクトゥーラの顔。
右腕はノスフェルの腕とラフレイアの花弁。
左腕はゴルゴレムの頭部。
右足膝にペドレオンの頭部、左足膝がバグバズンの頭部で構成されている異形の姿---
「なに、あれ……」
「今まで戦ったスペースビースト…それに見たことないスペースビーストが、ひとつになってる……!?」
見上げた先に見えた姿に、風は唖然として、東郷が答えを導き出す。
そう、ひとつになっている。
これは本来存在するスペースビーストが全て組み込まれることで、
言うならば、強化版ザ・ワン。
『今度こそ完成させろ!やつを喰らい、真の姿を現せ……!』
メフィストの指示に従うように、合体怪獣であるイズマエルが雄叫びを挙げる。
同時に、100mはあるであろう巨体なはずのレオがイズマエルが居る闇の空間へと引き寄せられていく。
「え……!?」
そして次の光景に驚愕と戸惑いが生まれた。
レオ、それもスタークラスターは勇者の満開を持ってしても、ウルトラマン一人の力でも倒しきれない強さを持つ。それほど強力な存在を---あっさりと、
『さぁ、ラストゲームを始めようか。万物を喰らう究極融合型昇華獣---イシュムーア!』
メフィストの声が響き渡る。
その瞬間、闇の空間から凄まじい速度で何かが落ちてきた。
それは、スペースビースト。
さっき見たイズマエルだ。
けれども、変化は僅かにあった。
レオを喰らった影響か、イズマエル本来の姿の背部の上に日輪のようなものが生成されている。
つまり、これがイズマエルの融合型昇華獣としての姿。
完成され、最強であるが故に変化は必要ない。
『まず手始めに---闇に染めろ』
「……!な、なに!?」
「これは……!」
「樹海を……!?」
イシュムーア。
そう呼ばれた怪獣の体から、黒煙が発生し、それは瞬く間に広大な樹海全域を覆い尽くし、暗黒の世界を作り出す。
光を一切通さず、ただ夜のような暗闇の世界。
目で見える程度の明るさしかなく、これが現実世界だったならば何も見えなかっただろう。
『貴様らに与えられた選択は二つ。逃げて世界が滅ぶのを待つか。それとも足掻くか---どちらにせよ、
「っ……」
改めて、突き付けられる。
あれから、紡絆は一度たりとも動いていない。
心臓を貫かれて、かなり経っている。
いくらウルトラマンを宿す紡絆でも心臓を貫かれると長く生きることは不可能。
もう脈も止まって、彼の意識は既にこの世界にはないのかもしれない。
「紡絆……っ。あたしが巻き込んだから……」
「風……今は後悔してる暇じゃないわよ……!あいつは、何かがやばい…!それに紡絆なら、紡絆はきっと……生きてる。私より長くいるあんたらが信じなくてどうすんのよ!紡絆は約束を破るようなやつじゃないんでしょ!?」
その言葉が、なんの意味も成さないその場を取り繕うだけのものでも。
ここに居続けるのはまずいと、何かが訴えかけてくる。
それは本能か。
「っ…そうね……ありがとう、夏凜。とにかく今はこの場から一旦離れて---」
「……友奈ちゃん?」
どちらにせよ距離を置くべきだと判断し、指示を出そうとしたところで、東郷の声が僅かに聞こえる。
それに反応するように風も夏凜も視線を東郷が見ている先に向けると、友奈が座り込んでいた。
勇者の力は失われ、桜色の衣服へと戻っている。
今まで声を発することもせず、呆然と力なく倒れている紡絆の姿を見ていた。
『---フンッ!』
「ぁ…紡絆くん……ッ!」
触れようとして、確かめようとして、だけど触れられずに。
本当に死んでいたら、死んでたら、触れたら肯定してしまうが故に中途半端に伸ばされた友奈の手。
メフィストはそれを見て、さらなる絶望を与えるかのように容赦なく紡絆の体を蹴り飛ばした。
宙へ浮き、地面に落ちたかと思えば衝撃で浮いては砲弾のような速度で紡絆の体は
触れることの出来なかった手が、気力を失ったかのように地面へ着く。
『---そう怒るな。どうせやつは死んでいる。仮に生きていたとしても、壁の外で喰われるだけだ』
僅かに動きの止まったメフィストが誰かに告げるように独り言を漏らす。
すると自由になったのか手のひらを頭上へ掲げていた。
『ラストゲームに相応しいステージにしてやろう。終焉の地をで、な』
世界が、変貌する。
太陽が黒煙に染められた世界。
そこからさらに、どこか珊瑚に覆われた岩のようなものだけがある暗黒の世界、ダークフィールドに近くも違う世界。
異形の海---またの名を、終焉の地。
かつてとある英雄がひとつの戦いを終わらせた、戦場。
その世界に神樹のみを残して樹海の世界は消え去っていた。
そして何より、そこにももう一体のスペースビーストがいる。
イシュムーアの腹部の部位となっている触手を持つ異形のスペースビースト---クトゥーラ。
そのクトゥーラは触手を伸ばし、イシュムーアからはグランテラの尾、左腕からゴルゴレムの口吻、右足膝のペドレオン。リングのように存在するレオの日輪から火球。左肩のリザリアスグローラー、そして口から放たれる熱線が一斉にその場を襲う。
「なっ……退くわよ!」
「樹!」
「友奈ちゃん!」
咄嗟にその場を離脱し、勇者の力を失われていた友奈を近くにいた東郷が。
メフィストを見つめていた樹を風が抱きしめて離れる。
爆音が轟き、凄まじい衝撃となって勇者たちを吹き飛ばす。
咄嗟に刀を投げる夏凜と小刀を投げつける風、片手銃を放つ東郷だが、イシュムーアの目の前に巨大な壁が生成され、跳ね返される。
さらに吹き飛ぶ勇者たちを狙うように、上空から大量に
「---!?」
かつて見たことのあるもの。
反射板と矢。
キャンサーとサジタリウス---つまりバーテックスの力。
精霊のバリアが発動し、想定外の出来事に動けなかった全員が容赦なく地面に叩きつけられた。
「ぅ、ぐ…なに、よ……あれ……!!」
「い、樹……平気…?」
「友奈ちゃん…大丈夫…!?」
精霊が居なければ間違いなく今ので串刺しだったと思うとゾッとするが、起き上がった夏凜は文句を言いつつ、風は樹を。東郷は友奈を心配していた。
「……った」
「え……?」
樹はバリアがあるからか問題なく起き上がると返事をするように頷いたが、友奈は一応怪我は無いものの両手を地面に着いて、虚空を見つめて、何かを呟いていた。
「……友奈?」
「まも……かった…」
「…友奈ちゃん?」
「友奈……?」
全員の視線が、友奈へと集まる。
様子のおかしい彼女の姿を。
それでも、友奈は気づかず。
ただひとつの方向---紡絆が居た場所を見ていた。
「私…約束したのに……さっき、守るって……言ったのに……紡絆くんを…まもれなかった……。助けられて、ばかりで……守ることが出来なかった…ッ!
深く後悔が含まれた声音が、辺りに響く。
ついさっき、ほんの数分前に宣言した。
ほんの数分前まで隣に居て、誰よりも近くにいて、守れる位置にいた。
仕方がない。誰も反応出来なかった。ウルトラマンを宿す紡絆ですら気配に気づけなかった。それでも---無力感が場を支配する。
あの場で助けることの出来たのは、間違いなく友奈か東郷だったのだ。
なのに、目の前で刺される場面を見て、何も出来なかった。
東郷と違って、ちゃんと立っていた友奈は特に動けたはずなのだ。
でも、無理だった。
全員、この場にいる皆が思っていることでもあるだろう。
動かなかったのは、同じなのだから。
『………小都音ちゃん。紡絆先輩…』
そしてまた、その不安も恐れも後悔も伝播するように、空気が重たくなる。
そんな中、樹が一つの影を見た。
岩場に突っ立ってこちらを見下ろしているメフィストの姿。
その背後にはクトゥーラとイシュムーアがゆっくりと歩いてきている。
完全なる、絶望。
さっきの星屑が無数といただけの状況が優しく見えてくる。
いつも空気を変えてくれた人物はもう居ない。そして残る一人も、誰かを見る余裕が無い。
「……風先輩。樹ちゃん。夏凜ちゃん。……本当にごめんなさい。だから、私が---」
「…何言ってんのよ、東郷。私も行くわよ」
こんな時ですら、時間はなかった。
もう少しで敵は攻めてきて、神樹を破壊しようとするだろう。
だからこそ東郷は一人、この状況を作り出してしまったのもあって行こうとしたが、夏凜がその腕を掴んで止める。
「樹、友奈をお願い出来る?」
「……!でも……」
「この状況で誰かが一人になるのは危険だからね。そんなことしたら、間違いなく狙われる。あいつらはあたしらに任せて、二人は少し休んでなさい」
「…………」
風の言葉の裏に、気遣いがあることを気づいた樹はそれ以上何も言わず飛び去っていく二つの影を見送った。
小都音のことで、樹もまた思うところがあったから。
十全に戦えるかと言われれば、無理だろう。それどころか間違いなく足を引っ張る。
それを理解してるから、樹はこの場に残った。
「…友奈ちゃん。私、信じてるから。紡絆くんのこと、友奈ちゃんのこと。二人が救い出してくれたから…私、まだ勇者でいられる。やれることがあるから……だから、待ってる。諦めないから、絶対」
「…東郷さん……」
そして残った東郷は先程されたように、今度は友奈の手を握った。
僅かな温もり、そして震え。
果たしてそれは、どちらの震えだったか。
顔を挙げた友奈の前には優しく微笑む東郷の姿があって、彼女はすぐに表情を引き締めてその場を離れる。
伸ばされた手は、今度も届かない。
ただ遠ざかっていく背中を見て、友奈はスマホをタップしても勇者の力を纏えない自分に、唇を噛み締めた。
こんなことしてる場合じゃないのに、と。
そんな友奈に何かを言ってくれるものは居なくて、樹は友奈の傍で座り込んで背中を摩っていた。
「お待たせしました」
「東郷…もういいの?」
「はい。命を懸けてまで紡絆くんが守ろうとした世界……彼が生きた証を壊させる訳にはいかないですから。せめて、それだけは…守らないと」
「…そうね、こうなったのはあたしのせいでもあるし……でもここで立ち向かわないと二度と前を向けない」
東郷と風が、何故戦えるのか。
それは罪滅ぼしと言えるだろう。
紡絆が実の妹に手をかけられるショッキングな光景を見ても戦う意思を保てたのは、それだ。
もし何事もなく、ただ普通に見てしまったなら友奈同様勇者の力を保てたかと言われると無理だったかもしれない。
「…夏凜ちゃんは?」
「
「……うん」
そして夏凜は、ただ信じている。
友奈を、樹を、何より紡絆を。
いつもピンチになって死にかけて、それでも必ず帰ってきた男の子を。
今こうして
『話は終わったか?』
「……!」
声が聞こえてきた瞬間、三人は緊張と共に戦闘態勢へと入った。
それぞれの武器を手にし、メフィストを見た。
未だに巨大化はしていないが、イシュムーアとクトゥーラがいる。
必要ない、そう判断されているのかもしれない。
「随分律儀ね。わざわざ待ってくれるだなんて」
『最後くらい慈悲を与えてやっただけだ。どうせこの世界は滅びる。外の世界、何よりウルトラマンがいないこの地球に未来はない』
刀を向けられても、微秒だにしない。
ただ真実だけを述べるように淡々と答えるだけ。
「っ…小都音ちゃんを返して」
「そうよ、人の妹を利用してまであんなことを……!」
『ふん、返せ、利用だと?何を誤解している?』
「誤解ですって?どういうことよ!?」
風が怒鳴るように問いかける。
メフィストからは、嘲笑うかのような笑い声が漏れていた。
『ククク…返すも何も、俺の存在がなければ小都音という少女は死を迎える。俺は助けただけだが?そして俺は彼女の心にある闇そのものだ。その闇の器にこの身が与えられたにすぎん。兄を想う愛情。憧景。執念。周囲への嫉妬、軽蔑。ウルトラマンや神樹、スペースビーストやバーテックスに対する嫌悪。憎悪。怨恨。敵愾心。そして生と力への渇望---』
「何が、言いたいの……!」
『分からないか?さっき語っていた言葉は嘘偽りない本音だ。俺はただ待ち続け、限界まで膨れ上がった闇に俺自身の闇を付与して増大させただけ。力を
まさか
くぐもるような笑い声が楽しそうに。貶すように。罵るように。暗黒の地に響き渡る。
英雄の物語というのは、いや物語には常に悲劇というものがついてくるもの。悲劇が起きるからこそ、成長にも繋がる。でもどうしようもない出来事だって起きるのだ。
紡絆の場合が、これだった。彼の場合、英雄にはなれなかった。彼では
それだけの話。
「そんなの結局言いようじゃない!小都音ちゃんを利用したのは変わらない…そうやって貴方たちが何度も何度も紡絆くんやその家族を…!許せない……許さない…!絶対に!」
『憎しみで戦うか?闇を感じるが---所詮は人の器で収まりきる程度か』
「違うわよ、紡絆やみんなが正しい道に戻してくれた。だから今度こそ守るために戦うだけ…!」
「大赦の勇者じゃない。勇者部の勇者として---ねッ!!」
それが戦いの開戦となったのか。
刀を持つ夏凜と大剣を構える風がメフィストに斬りかかり、東郷が短銃で狙う。
メフィストはそれらを見向きすらせず後ろへ跳ぶ。
『だったら、ウルトラマンのいない人類がこいつらに勝てるか見物させてもらおうか…!』
手を前へ突き出したメフィストに従うように、クトゥーラとイシュムーアが入れ替わるように前へ出る。
「上等ッ!」
「勇者部の底力見せてやるわ…!」
「今度こそ紡絆くんにはもう何も失わせない…!」
敵は強大。
それでも戦うしかない。
刀と大剣。そして狙撃銃。
それぞれ異なる武器を持つ勇者。
そして最強のスペースビーストにして最恐であり最凶の究極融合型昇華獣。
何処か神話生物を思わせるスペースビースト。
人類と世界の存亡をかけた、最後の戦いが幕を上げる---
〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
前世では何者かに殺されたらしく、死を確信。
吹っ飛ばされて場外へ。
〇ウルトラマンネクサス
適能者の命の危機を察したため、強引に体のコントロールを奪い、紡絆の体を動かしたが察知されて変身が出来ず。
〇結城友奈
誰よりも守れた可能性があり、なおかつ約束を果たせなかったことへの精神的ダメージにより勇者の力が解除された。
〇天海小都音/ダークメフィスト
暗黒適能者の一人。
ただし今まで自分がメフィストだということは知らなかった。
兄に対する想い、友への想い。
なんなら変わることはなく、ただそれが歪められ、記憶を(メフィストと)共有化された際に溜め込んでいた闇が解放されただけ。ただし、それとは関係なく以前からウルトラマンのことは知っているような口振りで…?
彼女が憎むのは勇者部でも兄でもなく、ただ世界と神と、この世界にやってきたイレギュラーな者たち。
それでも彼女は何があっても兄を選ぶ。兄が苦しまない世界を。悲しまない世界を。傷つかなくていい世界を。たとえその末に、全てがなくなろうとも。
〇ダークメフィスト
ウルトラマンの結界、壁の外が壊されたため自由に干渉が可能へ。
闇の強化(暗黒適能者との完全な融合)により、勇者の精霊バリアは無効化出来るらしい。
終焉の地というかつての地を再現した。
ただ変身時に小都音の意識はなくなる。
〇クトゥーラ
ゴミ扱いされたスペースビースト。
終焉の地に居るため、参戦。
〇アイツ
アイツ。小都音がこうなったのも記憶を共有化させたのもクトゥーラを操ったのもこいつ。
〇イズマエル
全てのスペースビーストがひとつに集約した最強のスペースビースト。
〇イシュムーア
究極融合型昇華獣。
姿はイズマエルと変わらず、背部の上に日輪のようなものが生成されている。つまりスタ〇ゲイザーガ〇ダム。
今までは
今までは地球外でのウルトラ一族(兄弟含む)排除係だった。
『全てのスペースビーストとバーテックス』の力を有する。
イズマエル→元ネタと思われるイシュエル。元ネタではないけどイシュタル(女神)、イシュタール文明(オーブ)→イシュ
ムーア→イズマエルと『融合』したムルロア→ムーア
ふたつ合わせてイシュムーア。
〇宇宙大怪獣ムルロア
昭和なので知らない人もいると思うので軽く解説。
本編では「ちょっと強い」程度の扱いだったが、かつてあのウルトラマンタロウを相手に圧勝し、ウルトラベルを使わせたという見た目に反して強豪。
口から放つ強力な溶解液「ホワイダースプレー」に加え、体からアトミック・フォッグという毒性の黒煙を放出する。
ちなみにアトミック・フォッグで地球全体を暗黒に陥れるという宇宙大皇帝や超古代の邪神、破滅をもたらす天使の眷属といったラスボス級のようなことをした。
こいつに弱点なかったら絶対やばかった。(地球ではほとんど視力がない。光源、特に太陽光を嫌う)
が、実は元々は宇宙にある「ムルロア星」という星に住んでいた宇宙生物。地球のヨーロッパの某国が開発した終末兵器「トロン爆弾」の実験によって、故郷の星を破壊された上、その影響で突然変異して巨大怪獣となったという人類の過ちで被害者。