【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
50話で終わります。50話はエピローグなので実質あと二話です。
次の章考えたら鬱ですけどね、こっちとは違ってネクサス面強くするので。シリアスが目覚める。
つーか前回の話、思ったよりみんなドン引きしたのかお気に入り数も割と減っていったの面白すぎるだろ。
安心してください、ぶっちゃけ作者も書いてて自分でドン引きしてました。
えっ、俺得意分野でも無い方でこれなの……?って。束縛や監禁の方が得意なんですけどね、書いたことは無いけど頭の中で書いたことはある。
まさかあんな攻撃型をスラスラと書けるとは。
カタカナ変換したらヤンデレ文になるだろ思考はないので文章考えるのは割と難しいです。カタカナはそれっぽくはなるけど、あれって読み手からすると読みづらいからね。
あ、今回は狂気的な展開はないよ、難易度的には本作において一番狂気的だと思いますけど。
二つの音波が直線上を駆け抜ける。
咄嗟に夏凜と風は分かれるように避け、東郷は転がって避ける。
怪音波と超音波。
タウラスの力とネオ融合型のクロウが使っていたアリゲラの超音波。
イシュムーアが放ったそれは避けられたが、今度は地面が急激に揺れる。
地上にいる勇者たちはその影響を受け、イシュムーアの目が赤く光る。
突如平衡感覚が失われ、足取りが覚束なくなるとイシュムーアとクトゥーラの姿が分身する。
振るわれる触手と爪。
迎撃するように小刀を投げる風と刀で逸らそうとする夏凜。
そして弾を放つ東郷だが、それらは全て当たることなくすり抜けた。
「これは……!?」
「幻影……!?」
「あの時の!これは幻覚よ!」
霧のような能力ではなく、一気に現れた。
しかも入れ替える訳ではなく、ただすり抜けただけ。
唯一過去に経験したことのある風が大声で叫ぶ。
地震は夏凜が倒したカプリコーンの能力。幻覚はガルベロスの力。
視界の情報が頼りにならないからか、夏凜は自ら目を閉じて情報をひとつ消した。
「そこッ!」
視覚の情報を消すことで他の情報をより鮮明に取り込めるようにした夏凜が刀を振り向きざまに飛ばす。
まっすぐ飛んで行った刀はクトゥーラの触手に弾かれるが、場所が把握したため、銃弾が一気に襲いかかる。
しかしノスフェルの爪にエネルギーを纏ったイシュムーアが斬撃と共に全て消し去り、それらは地面を大きく削って破壊していく。
バグバズンと融合した存在の能力。
「くっ……しまっ!?」
そして糸。
精霊バリアは強いが、音波や水球は通していた。
だからこそ、一番厄介な存在と判断されたのか、夏凜に巻きついた糸は致死量ダメージにはならないのもあり精霊による守りが発動しなかった。
ウルトラマンですら引き剥がせない糸は彼女を強く締め付けていく。
そんな彼女を大きく振り回し、投げ飛ばす。
パンピーラの糸。
さらに抵抗出来ずに吹き飛ぶ夏凜に追い打ちをかけるように、雷と火の破壊光線が彼女を地面へと叩きつけ、爆発が起きる。
ゴルゴレムとアリエスの融合型の能力。
「夏凜!」
「まさか…全ての力が使えると言うの……!?」
安否が気になるが、そんな余裕はなかった。
イシュムーアが空を覆った
ありとあらゆる、視力を奪う能力を発動されてしまえばただでさえ暗いこの世界では東郷と風は互いの位置も敵の位置も見失ってしまう。
そうなると攻撃しようにも攻撃することは出来ず、辺りを花粉だけが徐々に集まっていって---
「「ッ!?」」
何をするのか理解した二人が離脱しようとしたとき、その行動を嘲笑うかのように東郷と風の体が急激に重たくなり、地面に縫い付けられる。
過去に存在したバグバズンの融合型としての能力、重力操作。
そしてクトゥーラが口のようなものから黒い黒煙を吐き出し---花粉に煙が触れたその瞬間、大爆発が起きた。
重力操作が解け、爆発を受けて吹き飛ばされる東郷と風。
可燃性のある花粉に爆発性を含む黒煙が触れたことで一気に誘爆した結果、起きた爆発。
地面に大きく穴を開け、煙が晴れると東郷と風は倒れ伏せていた。
しかしその爆発の範囲は広く、自分たちも巻き込むほどだったのだが---イシュムーアは地面から出てきた。
地中を移動する、ピスケスの能力。
一方でそれほど特別な能力を持たないクトゥーラには霧のバリアが発生している。
ネオ融合型になった元々パンピーラだった存在の御魂が持っていた能力であり、御魂の能力すら有しているということだろう。
「 お姉ちゃん…… !」
「東郷さん…夏凜ちゃん……!」
その場を、二人は見ていた。
圧倒的。
勇者の力など歯にもかけない強さを見せる敵の姿を。
「行かなきゃ……行かないと……!」
いつまで見ていても、何も変わらない。
それどころか犠牲がまた出るかもしれない。
だというのに、どれだけ言葉で取り繕ろうとも勇者の力は纏えない。
そしてまた、樹も疲労が原因か今は勇者の力を纏っていない。
そんな二人が向かったところで、無駄死にするだけ。
自分の不甲斐なさにか焦りを覚えつつも唇を噛み締める友奈と、退屈そうに戦場を見下ろすメフィストを何処か悲しげに見つめる樹の姿だけがあった。
精霊のバリアのお陰で死にはしないが、あくまで致死量ダメージを防ぐだけ。
ある程度のダメージは受けるし、意識が消えて気絶する場合だってある。
だが東郷と風は、立ち上がれるほどの力は残っていた。
---いや、残されたというべきか。
風と東郷、二人は気づいている。
もしイシュムーアと呼ぼれる存在が本気を出して攻撃してるなら、間違いなくさっきのでやられていたと。
最初に放った攻撃はスペースビーストのほとんどの部分から全方位に攻撃していた。
でもさっきから使ってるのは、指で数えれる程度の能力。
---弄ばれている。強者が弱者を嬲るように。希望を見せて、踏みにじるように。
だとしても、戦わなければ終わりを迎えるだけで、選択肢などありはしない。
東郷と風は互いに視線を交差させると、それぞれについている花弁を見て、息を吸い込んだ後に迷いを振り切るように叫んだ。
「「満開!」」
二つの花が、荒れ果てた戦場でも美しく咲き誇る。
オキザリスの花とアサガオの花。
黄色と青の光が輝き、風には神道の神官をイメージさせる服装へ。東郷には白を基調とした羽衣も纏った和服へと変化すると同時に巨大な大剣と移動砲台が現像される。
勇者の切り札、満開。
もはや身体機能が失われる恐怖など、二人の脳裏にはない。
敵を打ち倒すための手段なら、使うしかないのだから。
『フン、ようやくマシな戦いになりそうだな』
巨大化したメフィストが、地面に降り立つ。
ただでさえ手の付けられないイシュムーアがいるのに、そこにメフィストとクトゥーラが存在する。
不利でしかなく、勝てる見込みは薄い。
それでも、可動砲台から放たれた砲撃と巨大な斬撃が三体に襲いかかった---
大きな口が開かれる。
食餌に群がるように、次々と集まってはソレは弾かれていた。
感情を持たないはずが、何処か困惑してるようにも見え、辺りをうようよと彷徨っている。
気を逃すことなく、待って、喰らうために。
だが火球が全てを呑み込む。
全てがなくなり、また別の存在が触手を伸ばすも弾かれていた。
---壁の外。結界の外側の出来事。
力無く、無重力空間のように宙を彷徨う一人の少年が、
蹴り飛ばされてまだ少ししか経っておらず、左胸には風穴が空いており、頭からも血を流して、右手は赤いということくらいしか分からないくらい酷い有様だった。
ただ状況は宜しくなく、スペースビーストも星屑も、間違いなく少年、紡絆を喰らおうとしている。
虹色の光が弾いてはいるが、それもいつまで持つか分からない。
僅かに、目が開かれた。
(俺、生きてる…の、か?生きてるのかな……いや、生かされてる……熱い……)
継受紡絆として、人間として心臓を貫かれた今、もう死んでいる。だが死んでいるのは紡絆としてであって、既に
それとも---左胸から発生している
それは定かではない。
だが温感は失っているはずだが、不思議と紡絆はそれが熱いと感じていた。
(……小都音)
朦朧としてきた意識。
いずれ限界は訪れるだろう。けれども、そんな時ですら浮かべるのは自分が生きる道ではなく別の誰か。
(小都音……泣いてた……)
脳裏に浮かぶのは、最後に耳元で囁かれた一言。
そして紡絆が樹海で最後に見た妹の顔。
『ごめんね……お兄ちゃん』
奇しくも、記憶に残っている最後の記憶と最期の記憶は似ていた。
喧嘩別れしたあの日。
彼女の手で殺された今日。
だが最後に見た小都音は今回もまた確かに
(……たすけないと)
それだけで、十分なのだ。
紡絆が生きる理由として、生かされてたとしても、その命を最後まで使うには。
彼女が抱える重圧や過去の出来事。自身の無力さ。そういった色んなものに押し潰され、闇に呑まれたのだろう。楽な道を選んだのだろう。
それでも紡絆を想う小都音としての正常な意識が僅かに残っていた。
でなければ、あの狂気に陥った状態の彼女が泣くはずがない。謝る必要もなく、そのまま紡絆の体を消し炭にでもすればよかった。
脳を破壊すれば良かった。
なのに、やらなかった。
なんで泣いていたのか。それは
(……たすけないと)
力はもうない。
エボルトラスターがこの場にないのもあるが、次に変身すれば死ぬ。変身してもエネルギーは残ってない。
(たすけないと)
だからといって、継受紡絆という人間は止まれない。こんなところで、じっとしていられるような性分ではない。
そんな中、真っ赤な右手がうっすらと、黄金色の光を発する。
901:名無しの転生者 ID:gCGMyQvZl
イッチ!おいイッチ!しっかりしろ!!
902:名無しの転生者 ID:V0BWylUI7
やっぱり…妹ちゃんがメフィストなのかよ……!
903:名無しの転生者 ID:6xi135lz3
クソッ!間違いなく心臓をやられてる…!何故か知らないけどバリアは貼られているが、イッチが死んでたら意味がねぇ…!
904:名無しの転生者 ID:2T35rw4OZ
待て、よく見ろ!右手が……!
905:名無しの転生者 ID:e/0BvJmlJ
生きてるのか!?いやでも、生きていてももう変身する力は……それに変身したとして妹ちゃんを殺さなきゃいけなくなるんだろ…?結局イッチにとっては辛いことばかりだぞ…!
906:名無しの転生者 ID:5dPkbWyAb
一体どうすればいいんだ……どうしろってんだこの世界…!たった一人で、既に終わってるような世界で…!
何か手段はないのか…!?
907:光■絆■し転生者 ID:N■X■_u■t■■
生き、てる……で、も…ご…めん。い…てた……最…期の…手、段……つか、う……。や…やく、そ…く……や、破る……けど……
908:名無しの転生者 ID:rR7DpunYT
最期の手段!?嘘だろ?おい、嘘だろ……!
909:名無しの転生者 ID:8X827sB2R
何をするつもりなんだ、お前……!?
910:名無しの転生者 ID:/6xZuD/Jg
なんだ……?何が起きて……!?
光が収束していく。
輝いていた右手に、集まった光が象っていく。
徐々に形を作っていったそれは人際強く輝き、辺りの星屑とスペースビーストを吹き飛ばす。
右手に現れたのは短剣---エボルトラスター。
落としたはずのものが、彼の手元へと戻っていた。いや、呼び寄せられたというのが正しい表現か。
(ウル、トラマン……ごめん、もう……持たない。でも……まだ)
体が落ちていく。
纏われていた光は消え、辺りに敵がいないのが救いか。
エボルトラスターを握る力もなく、僅かに開かれた右目が目の前にあることを認識する。
正真正銘最期の力。
浮かぶのは後悔ではなく、これからのこと。
ただ長く付き合わせて、助けてもらって、それでも何も出来なかった相棒への謝罪。
『---』
しかし紡絆が何をするつもりなのか気がついたのか、エボルトラスターから現れたネクサスが、紡絆の行動を止めるように手のひらを突き出して首を振っていた。
それでも、紡絆は少しだけ口角を上げて笑顔を作ろうとしながら、同じく首を横に振る。
(ごめん……君の命は、受け取れない。でも俺は、みんなを救って…小都音を取り返すために……。人間を……守らないと。この世界を、守らなくちゃ……。希望を、作らないと……。だから、だから俺の最期の力を、
『ッ---!』
(……約束、破るな。いっぱい、あったけど……風先輩…樹ちゃん、夏凜、東郷、友奈…先代勇者のふたりと……小都音……後、母さん。怒るかな……怒るだろうな…結局。記憶は取り戻せなかった……でもみんなが生きる世界は、これからの世界は……ッ!)
力が戻る。
右目が開かれ、瞳は再び金色へと変化し、ウルトラマンの姿を掻き消すようにエボルトラスターを勢いよく握ると、同時に全身が黄金色の輝きを解き放つ。
紡絆の体は光へと変換され、右手のエボルトラスターの中へと集まっていく。
(例え全ては無理でも、母さんとの約束だけは果たす!この世界の未来のためにも!だからこれが最期の……最期の---ウルトラマンッ!)
そうして、紡絆の姿がエボルトラスターの中へ消えるのと同時に、エボルトラスターもまた輝く。
形成されるは人型。
水面から、地獄から這い上がるように、水色の光の奔流が爆発し、赤色の光へ変化しながら今度は人間の大きさではなく、それを大きく上回る巨人というに相応しい49mの光の人型へと姿を変化させた。
『シュワッ!』
そして巨人---ネクサスは結界の中へと、凄まじい速度で向かっていく。
胸のエナジーコアは一切鳴っておらず、ネクサスの本来の力が出ているのか速度も早い上に安定した飛行。
なぜならそれは、継受紡絆という人間の全て。
文字通り、
ウルトラマンに近づいたことにか、それとも彼が持つ光の力が成し得たのか。
それは分からない。
けれどもネクサスは、紡絆は全速力で結界の中へと向かう---
触手が焼き払われ、大剣が吹き飛ばす。
満開した勇者の二人。
その力を持ってすれば、
故にクトゥーラを相手に追い詰めることは出来ていたが、東郷が放った八門の砲撃をメフィストは手を翳すだけで防ぎ、イシュムーアに振るわれた大剣は爪撃で防がれる。
そして反撃に放たれた三日月形の光線と熱線を、東郷と風はギリギリのところで避ける。
「くっ……!まだっ!」
『ハアッ!』
一気に撃つのではなく、時間差で連射することで弾幕を作る。
だがメフィストはダークシールドを貼って自らを守り、イシュムーアはまともに食らうが、全て吸収し、全身からそれらを放出する。
---吸収と無効化を持つライブラの能力。それを更に昇格させた力。
「!?」
「やらせるか…ッ!」
自身の攻撃が跳ね返ってきたことに驚き、反応の遅れた東郷に風が大剣を盾にすることで防御し、力づくで上空に逸らした。
僅かな隙。
それを逃すことなく、イシュムーアが巨大な水球を放った。
「私が……!」
収束された砲撃が水球を撃ち抜く。
しかし砲撃を避けるように向かってきていた小型爆弾が東郷と風の周囲で爆発し、悲鳴を挙げながら二人が落ちていく。
花は散り、満開が消える。
代償---散華。
どこが失われたか、それすらも気に出来る暇もなく、メフィストの拳が迫っていた。
「ッ……!」
気がついた頃には拳が叩きつけられ、精霊バリアが発動するも割られてしまい、吹き飛ばされる。
意識が飛びそうなほどに強い衝撃が走るが、戦意で意識を保つ。
そして---
「「満開…ッ!」
『ん?』
二度目の満開。
速攻で攻撃を行い、不意打ちの攻撃をメフィストはあっさりと反応して避けた。
追撃で次々と弾幕が貼られていくが、紙一重でそれを避ける。
『無駄だ。
「私はもう、諦めない…彼が、紡絆くんが!友奈ちゃんが!みんなが……一緒だから!」
「こっちとらねぇ……諦めの悪いバカのせいで簡単には諦められなくなってんのよ!」
『ならば---』
メフィストが起こした衝撃が東郷と風を後退させる。
満開した状態でも吹き飛びそうになるほどで、堪えてそれだ。
力量的には既に、ネクサスを超えている。
『抗う意思を折るだけだ……!』
メフィストが近くにいたイシュムーアに指示を出すように前へ手を突き出した。
すると次々と上空には矢と火球、水球、重力球が浮かび上がり、イシュムーアの頭部と左肩からは熱線、右肩には雷、胸からは電磁ビーム。左腕と尻尾、右足は火球。
それらを放つためにほとんどのスペースビーストの部位からエネルギーを貯めていた。
さっきまでのは本当に全力を出さず、弄んでいたというのが分かる。
今までの融合型にスペースビースト、バーテックスの能力を持ち、融合型として『究極』と名付けられただけあって複数ではなく全て一斉に発動させることも出来る。
その結果がこれであり、見るだけで冷や汗が流れる。
東郷が全砲門にエネルギーを貯めるが、焼け石に水に過ぎないだろう。
『フッ---』
さらに。
両腕を左右に広げ、大きく下方に回したメフィストの両腕には闇のエネルギーが纏われている。
対する遠距離能力を持つのは、東郷の満開のみ。風は近接攻撃しか持たず、背後には神樹が存在する。
---受けたら終わり。避けても終わり。
いや、避ける選択はない。
受け止めるべく大剣を構えて、砲門のエネルギーを高めて。
全てを賭けた一撃と全てを終わらせる一撃が今---
『!?グッ……!』
突如振り向いて手を上空へ翳したメフィストが、
突然の出来事に風も東郷も、イシュムーアすら固まっていた。
さらに次々と上空にあった矢や火球などといった能力が掻き消され---
『デェヤァァァァァ!!』
一筋の流星が、イシュムーアへと高速降下していく。
しかし上空に存在したものが消された際に位置はバレたようで、イシュムーアは振り向いて上空に首を向け、同じく東郷や風も視線を映す。
その先。
「紡絆……!?」
「紡絆くん……!」
光る右脚を突き出しながら一直線に降下する銀色の巨人---ウルトラマンネクサスがアンファンスの姿で向かっていた。
それを見て驚きつつも無事な姿を見たからか、安堵の表情を二人は僅かに浮かべ、直ぐに引き締める。
そしてイシュムーアは向かってきた対象にキャンサーの反射板を六枚生み出しては盾として使用すべくネクサスに向ける。
ネクサスの蹴りが反射板に直撃する---が、いくら落下速度を加えたとしても簡単に砕けるようなものでもなく、蹴りが止められる。
そこでネクサスが高速で回転し出した。
炎の竜巻が作り出され、反射板を貫いた。
蹴りの勢いは留まらず、そのままイシュムーアへと---
『グワァアアア!?』
当たることなく。
荒れ狂う竜巻が炎の竜巻を掻き消し、ネクサスを吹き飛ばした。
本来なら高速回転することで竜巻を起こすというライブラの能力。
それを放ったのだろう。
地面へ落ちたネクサスへ熱線が放たれ、次々と火球が直撃しては爆発が起きていく。
『シェッ!シュアアアアァァ!』
爆煙の中、ネクサスが飛び上がる。
赤い鎧をその身に纏い、ジュネッスへと強化変身したネクサスは両手を胸の前で揃え、右手を肩の高さまで掲げると右手の指先に歯車状の巨大なプラズマを纏う光輪が生成される。
自身の身長と同じくらいのサイズで形成され、ネクサスはその光輪をイシュムーアへと投げつける。
空中から一直線に向かってくる光輪に対し、それは脅威になると判断されたのかバリアが複数枚展開される。
ひとつ。キャンサーバーテックスの持つ6つの反射板。
ふたつ。円形のゴルゴレムのバリア。
みっつ。ラフレイアの融合型の御魂が持っていた霧のバリア。
よっつ。溶解液を板状に展開したバリア。
まず反射板が溶けたように貫かれ、ゴルゴレムのバリアとぶつかり合う。
火花を散らしつつもバリアが砕けず、その場で回転し続ける光輪と展開されたままのバリアが存在し続ける---青い砲撃が、光輪を後押しした。
思わず目を離し、砲撃の方向を見た。
『……!』
「聞きたいことはある…でも!援護は任せて……!」
思い返されるのは、左胸を貫かれた姿。
明らかに普通なら死んでいてもおかしくは無い。だが、こうやってウルトラマンの姿でいる。
だからこそ、東郷は後回しにして強敵を打ち倒すことに専念しようとしているのだろう。
そのことにネクサスが頷き、そのタイミングでバリアが砕けた。
プラズマの光輪はひとつひとつ、確かに破壊していく。
反射板が溶けたように、光輪にはプラズマが纏われている。当然ながらエネルギー密度は濃い。
生半可な防御手段で防げるほど弱いはずもなく、ゆっくりとイシュムーア本体に近づいていく。
霧のバリアへ向かったところで---消失した。
『ッ……!』
『ハァッ!』
限界を迎えたのと明らかに毒々しい霧の影響だろう。
ウルトラマンの技ですら本体にダメージを与えることが出来ず、僅かに動揺したように固まるネクサスへ首を曲げて見上げていたメフィストが地面を蹴って跳躍。
拳を構えながら加速し、突き出す。
「させるかっての!」
反応が遅れたネクサスが咄嗟に防御態勢へ入るが、その前にメフィストはバックし、宙に浮いた状態で対峙する。
振られた大剣が空を切り、ネクサスが守ってくれた風へと視線を移す。
「避けられた……けど大丈夫!?」
「無事だったの……?」
『………』
ネクサスの方へ振り向いた風と移動台座に乗りながら傍まで寄ってきた東郷が呼びかけるが、ネクサスは何も答えない。
いや、
誰も知らない。
知っているのはウルトラマンと紡絆のみ。
紡絆が今こうしているのも、こうして居られるのは、あと僅か。
空は暗闇に覆われ、光は何処にも射すことは無い。
まるで、彼の命を現すかの如く。
『シュア……』
だとしても、彼は構える。
唯一残された、家族を。
闇に利用された大切な存在を取り返すべく、その拳をメフィストに向かって構える。
『あの状態から生きているとはな……だが貴様からは
『………?』
一人。
何も言われていないのにメフィストは自己完結したように納得を示すと、戦意を保っているネクサスを何処か愉しそうに笑いながら指差す。
『お前は妹を、小都音を救いたいと願っている』
『………!』
的を得た発言だったのか、ネクサスが仄かに俯く。
ますますと、メフィストはせせら笑うようにくぐもり声を漏らした。
『しかし不可能だ。何故か分かるか?』
『………』
「まさか……!?」
「紡絆くん、聞いちゃダメ!」
既にメフィストと小都音の関係性を断片的にとはいえ聞いた東郷と風が今にも語ろうとするメフィストの口を閉じさせようと攻撃を仕掛けるが、砲撃はバリアに防がれ、大剣は地面から飛んできた複数の触手に防がれる。
クトゥーラの触手だが、出しているのはイシュムーアだ。
『彼女の命は既にこの世にはないからだ。あの時の事故を覚えているだろう?あの事故で両親共々命を失っているからな。
あくまで死ぬ寸前にオレが持ちかけた
『……!?』
告げられた真実。
流石の紡絆もこのことにはショックを受けたのか、握られた拳から力が抜ける。
小都音は生きていた訳ではなく、死んでいた。正確に言うと生かされていた。
メフィストという存在の命を、借りることで。
ウルトラマンが人と同化することで同化した人間の命を死なさずに居られるように。
メフィストも同じようなことをしただけで、メフィストを倒しても分離させたとしても、小都音は死ぬ。
けれど果たしてそれは契約といえるのか。死ぬ寸前に持ちかけるなど考える時間なんてあるはずも無い。
---まさに悪魔の契約だ。
『さぁ、選べ!
『………ッ!』
「紡絆くん……っ」
「紡絆……」
迷うように俯いて視線を右往左往させる姿を、東郷と風は見ることしか出来なかった。かける言葉がなかった。
二人とも確かに世界を危険に晒す行為と晒す寸前まで行ったが、命は奪っていない。奪ったことは無い。その重さは、誰にも分からない。唯一奪った、紡絆にしか。
そしてネクサスの拳が握られる。
紡絆の脳裏に浮かぶ、ファウストを殺した時の記憶。
メフィストの言葉は否定出来ない。
罪を背負うと決めた紡絆は、仕方がなかったと納得するしかない。背負うしか選択が残されてなかった。
なぜならそうしなければ、世界が、人が、みんなが死ぬかもしれなかった。
故に、紡絆は救えた可能性がゼロではなかった母親の命を奪い、世界を救って見せた。みんなを救って見せた。
全てを救うのではなく、九を助けた。
だとしてもその罪は、永遠と付き纏う。命を奪ったという事実は何があっても消せるものでは無い。
他人ならば、まだ少しは重さが違ったかもしれない。しかし奪ったのは肉親。育ててくれた親。自身を産んでくれた母。赤ん坊の頃から愛情を注いでくれた母親。
与えられた選択は、妹を。小都音を殺せば世界と不特定多数を救える。逆に妹を選ぶということは、メフィストを放置すると同義であり、世界と人類は滅びる。何もしなければ結局、世界は滅びる。
どれを選んでも、どれを選んだとしても必ず何かがある。背負うものがある。
残念ながら、妹も世界も人類も全てを救うという選択肢はない。初めから、はなっからそんなのは存在しない。
何故ならウルトラマンは神ではない。それもまた、ウルトラマンを宿す継受紡絆という存在も神でもなんでもなく、所詮は矮小な存在。
救えないものは、必ずあるのだ。そもそも神の集合体である神樹様ですら、全てを救えてないのだから。
だが答えは出さなければならない。出さなければ、今ここで出さなければ時間経過は紡絆を殺す。
故に---
『……シェア』
迷いを振り切るように、ネクサスが加速する。
拳を握って、ただ一直線に。
そんなネクサスを見てもメフィストは何も構えを取らず、両腕を広げた。
選択を待つように。
そして---
『デェヤァッ!』
『グォ!?……フフフ---ハハハハッ!!』
メフィストの言葉を証明するかのように。
ネクサスは、紡絆は---メフィストを地面へ叩き落とす。
期待通りというように、地面へ落下したメフィストは土煙を発生させながら、ひたすらに笑う。嗤って、哂って、呵って、咲って、嘲って、嘲笑う。
選んだ選択。
継受紡絆という人間は
そこに他人しかないから、自分を選ぶことは決してないのだ。自分が死ぬか不特定多数を選ぶか。悩むことすらなく後者を選ぶ。
自分の手が汚れる方を、どうしようもなく選んでしまう。自分が傷つく方しか、選べない。
誰かを救いたいと願って誰かを助ける少年は---皮肉にも自身にとって大切な存在は、やはり救えない。なぜならそれは『自分』だからだ。
自分にとって大切だからこそ、助けられない。自分を選べないから、救えない。
彼がもう少し、自分と向き合える存在なら。自分を一ミリでもいいから大切に出来たなら、選べるかもしれない。
けれども運命はひたすらに残酷で過酷で哀しくて悲しくて辛くて。
妹を選ぶという選択そのものが、まず存在しないのだ。
なぜなら妹を選んだとしても---世界が消滅する。
全て無に還って無くなるのだから。これは選択と言ってはいるが選択ではない。
実際には強制だ。無慈悲なことに、この道しか残されていない。
それが敵が望んだ結末だろうとも。
それを理解してるから妹を選べないのだ。
『期待通りだ!足掻け、抗え、やって見せろ!世界を救うにはオレを殺すしかない。妹を殺すしかない。その末に貴様が光を保ち続けられるか、闇に堕ちるか見物だ……!』
『……ッ!』
「それが、目的ってこと……!?」
「そのために小都音ちゃんも…紡絆くんも…その家族を……!絶対に、紡絆くんには殺させない。やらせない!」
継受紡絆という存在は良くも悪くも純粋だ。
性質は光。しかしながら決して闇に染まらないわけではない。
故に、敵の目的がはっきりする。
彼の光は強い。眩いほどに強いが故に---闇に染まれば闇もまた深く濃く、強くなってしまう。
母を殺した彼が大切な家族である妹を殺せば。
果たして光を保てるかなど、分からない。
それにそれは、紡絆の理念も信念も破壊されてしまう。
最期に交わした母親との約束---忘れていない彼にとって、どれだけ惨いことになるのか。
『………ヘェアッ!』
それでも、やるしかないのだろう。
ネクサスは空中から見下ろし、空気を蹴った。
それが再開の合図。
雄叫びを挙げたイシュムーアが重力場を作り出す。
『!?』
突如重たくなった肉体が一気に地面へ縫い付けられ、動けなくなる。
立ち上がろうと抗うが、重さは高まるばかりで地面が没落していく。
ただしカウベアードと違ってイシュムーアへと至った際に対象のみに出来るようになるよう強化されたのかメフィストは影響を受けておらず、イシュムーア本体も動けるらしく、重力に支配されているネクサスに攻撃を仕掛けようとしたところで砲撃が次々と炸裂する。
その影響で僅かに軽くなった瞬間、ネクサスは離脱するように転がって反転する。
『シュア---デェアッ!』
立ち上がりながら頭上に両手を伸ばし、胸のコアゲージの前で丸を描いては回転させる。
そして地面に右手を突き出し、徐々に上げて黄金色の竜巻を作り上げると、両手を合わせて叩きつけた。
ネクサスハリケーンが、イシュムーアへと迫っていく。
対するイシュムーアは竜巻を作り上げて放つ。
ふたつの竜巻が暴風を撒き散らしながら中心で拮抗していた。
竜巻と竜巻がひとつになるわけでもなく互いに潰し合おうとしている。
その影響で颶風によって誰も近づけず、それはネクサスやイシュムーアも同様。
『ハアァァァァ……』
だからかネクサスが胸のコアゲージの前でアームドネクサスを交差し、両手に光を練ると両腕を広げて大きく両腕を回し、頭上で再び重ねると右腰付近に両腕を固定。
左手の光が右手に集まり、右手からは冷気。拳は氷に覆われ、神秘的な青白い色をしている。
『デェッ!』
右手を大きく引き絞る。
そして左拳の甲が下に上になるように左腰に固定すると、大きく右足を一歩踏み出しながら同時に右拳を真っ直ぐ突き出す。
対象を凍らせる光線技。
その光線は未だに消えることの無い竜巻へ直撃し、双方の竜巻を凍らせた。
幻想的な、一種の芸術作品のような美しさ。
戦場には似つかわしいもの。
『シュアッ!』
それと同時に動けるようになったネクサスが走り、跳躍と同時に低空飛行で足を突き出す。
両腕を大きく振るい、さらに加速すると蹴りが氷を砕き、崩れていく氷が暗闇の中でもうっすらと輝く。
それすら目にくれず、ネクサスの蹴りが反応出来なかったイシュムーアへと直撃する。
僅かに下がらせることに成功し、着地と同時に駆けると握り締めた右手をまっすぐ突き出し、時間を与えることなく左拳を横から繰り出し、また右手で殴れば膝で腹部を蹴り、手刀を頭に叩きつける。
けれど。
効いている様子は一切なく、ノスフェルの爪が顔面を狙って振られる。
咄嗟に身を横に逸らし、懐へ潜り込むとちょうどクトゥーラの顔の部分を右拳で力強く殴るが、やはり一切動じることすらない。
逆に殴るために突き出していた腕が掴まれる。
掴まれた手を引き離そうとイシュムーアの爪に刺さらないように手を掴んで抵抗するが、ハサミのような腕に変化したイシュムーアが仕返しと言わんばかりにネクサスの腹部に叩きつける。
凄まじい衝撃が通り抜けるように走り、たったの一発でネクサスが吹き飛んでいく。
『ウッ---!?』
地面へ落下しても止まれず、大きく削りながら少ししてようやく止まれる。
受けた部分を抑えながら悶えつつ顔を挙げると、既に鋭利な切っ先が迫っていたことに遅れて気づく。
メフィストがメフィストクローを展開して、仕掛けてきていた。
起き上がろうにもダメージが響いているのか起き上がれず。
切り裂かれる直前で自分から頭を地面に倒すことで回避すると、突き刺そうとしてくる攻撃をなんとか首を動かすことで避けていく。
「紡絆!---ッ!?こいつ、まだ……!」
「紡絆くん…風先輩……!」
ギリギリで回避しているが、このままではいずれやられるであろう姿を見た風が援護に回ろうとするが、今まで姿を現さなかったクトゥーラが突如出てきた。
イシュムーアが隠していた、というべきか。
急に現れたことに驚きつつ対処する風だが、このままではネクサスの助けには行けず、東郷もまた避けるだけで精一杯。
『デェアッ!』
『グッ……!』
トドメを刺すべく捉えたメフィストがクローを刺そうとした。
両手でメフィストの腕を掴み、当たる寸前で受け止めたネクサスに対し、メフィストは押し込もうと体重と手で支える。
急激な重さに僅かに先が当たり、それでも耐えていた。
『ッ!』
そして足を動かしたネクサスがメフィストの腹を蹴るようにして背後へ投げ飛ばす。
投げ出されたメフィストは受け身を取り、転がるようにして起き上がるとネクサスは既に勢いをつけて右拳を振り下ろしていた。
『フンッ…!』
『ゥグッ……!』
ネクサスの攻撃を身を逸らして避け、流れるように外から打ち込まれる左拳をメフィストが腕で防ぐと、両肩を掴んで引っ張り、腹部に膝蹴りを食らわせる。
その影響で動きが止まり、下を向いたネクサスが顔を挙げた瞬間には頭突きを与える。
『ハッ、デェアッ!』
『ウッ……グ、シュッ!アアアァッ……!?』
反撃に出ようとネクサスが飛び蹴りを放つが、逸らすように避けられる。
それだけではなく、側面に移動したメフィストはネクサスの背中を回し蹴りをし、数歩前へ進むネクサスが振り向きざまに右腕を後方へ振るうが、懐へ潜ったメフィストが拳を胸に打ち付ける。
そこから右横腹を蹴り、思わず右横腹を抑えたネクサスを今度は反対側の横腹を蹴り、回りながら後ろ蹴りで吹き飛ばす。
あっさりと肉体が吹き飛ばされ、岩場に背部をぶつける。
構えを解くメフィストの姿が瞳に映り、ネクサスは岩場に手を付きながら起き上がっていた。
本来の戦闘力ではメフィストとネクサスの実力はほぼ同じ。基本的には戦闘の流れを掴んだものが勝ち、ネクサスは何度も逆転をしてきた。
だが闇の力で強化されていると本人が言っていた通り、その強さはネクサスを凌ぐレベルに至っている。
さらにその他にもイシュムーアという強力な相手が存在し、もはや
『デェェアッ!!』
『ダアッ!』
ネクサスが駆け込む。
対するメフィストはその場から動かず、突き出された拳を首を動かして避けると肘を打ち付け、後頭部を抑え込んで叩きつける。
衝撃で地面が砕け、顔面を蹴り上げて転ばせる。
地面に両手を付きつつネクサスは体を起こし、立ち上がれてないネクサスにメフィストクローを展開して振り下ろし---
『!シェアァッ!』
『グォ……!?』
地面から手を離したネクサスが素早い身動きで両手から放つボードレイ・フェザーがメフィストの胸へ直撃し、距離を引き離す。
『ハァァァァァ……シュッ!』
その間に立ち上がったネクサスは両腕を下方で交差する。
交差した両腕は光に包まれ、そのまま胸の前で両腕を広げていくと稲妻のようなエネルギーが行き来する。
両腕をV字を描くように頭上に掲げ、そのタイミングで胸を抑えていたメフィストが気がついた。
オーバーレイ・シュトロームを放つ動作を既に終えているからか、それとも間に合わないからかメフィストは自らの光線技を準備しようとしない。
戦況をひっくり返せるかもしれない、またも無いチャンス。
故に、ネクサスは
44:名無しの転生者 ID:gupZ+Ufc+
やめろイッチ!お前妹を殺す気か!?
45:名無しの転生者 ID:47YA67Pw6
奴らの目的はお前に妹を殺させることだ!そしてお前を取り込むこと!冷静になれ!
46:名無しの転生者 ID:vjRl0a31D
だがイシュムーアとやらはイズマエルの強化版のような存在だ…メフィストもいるのに対処するのは……!
47:名無しの転生者 ID:a93DsZlFG
とにかく絶対にやるんじゃねぇ!これ以上お前が背負う必要はないだろ……!
48:名無しの転生者 ID:WEyj3Ahcl
ひとまずメフィストは置いておけ!二人が危ない!
49:名無しの転生者 ID:Kd/oLtB7p
妹ちゃんのことはどうにか方法を考えるしかない!意識が残っているなら救える可能性はあるが……とにかく後回しだ…!
『デェ---ッ……』
L字に組もうとした腕が、止まる。
保たれていたエネルギーは消失し、光線を撃つための力がなくなってしまう。
戦いの場だと言うのにネクサスは動かなくなり、メフィストを見たまま組もうとした腕を途中で止めていた。
彼の脳裏に浮かぶのは、今や唯一となってしまった家族の一人。
世界や人類のためにはやるしかなくて、やるべきだというのに。
ネクサスは踏ん切りを付けることが出来なかった。
ここに来て、躊躇をしていた。
『………』
『………ハアッ!』
『ウワァアアアアア……!?』
互いに身動きひとつせず、ネクサスは力なく腕を降ろした。
まるで分かっていたかのようにメフィストが駆け出すと、ネクサスにメフィストクローを突き出す。
構えを解いていたネクサスは反応出来ず吹き飛ばされ、メフィストがなんからの合図をした。
その瞬間、吹き飛ぶネクサスの背後から飛んできた爆弾が背中に直撃し、周囲でも爆発が起きる。
ヴァルゴの爆弾がネクサスを傷つけ、爆煙が消える頃には片膝を付いていた。
けれども、ネクサスはメフィストに対して光線技を撃つ動作も撃とうとする気概も感じられない。それどころか、間違いなく迷っていた。
分かっているのだ、本当は殺すべきだと。
それでも継受紡絆という人間は、諦めたくなかった。諦めていたなら、メフィストを殺してただろう。
だが残された唯一の家族を、大切な人と約束したことを果たしたいと。それだけは叶えねばならないと。一種の呪いとなって残り続ける思いは、ここに来て救いたいと願い続けてしまっている。
諦めたくないと、心が叫んでいる。
だからこそ---
『ッ!』
ただ拳を強く握りしめ、振り向きざまに両腕を交差する。
ネクサスの姿がブレ、メフィストの前から姿を消していく。
取り乱すこともなく冷静にネクサスの姿を目で追ったメフィストは、イシュムーアの方へと高速で向かっていくのを見ていた。
メフィストを倒すことは出来ない。だからこそ、融合型を打ち倒す選択をしたのだろう。
---その行為をメフィストは見逃した。
勇者やウルトラマンからすれば神樹を守りつつ全ての敵の撃破。何より、メフィストの変身者である天海小都音の奪還。
メフィストや融合型、スペースビーストからすればウルトラマンの殺害と神樹の破壊。
勝利条件はそれで良く、だから見逃した。
まるで勝敗が分かっているように。
だがただで見逃すのは癪だったのか、メフィストクローを収納してダークレイ・フェザーを放つために腕を立てたところで、青い砲撃と大剣が襲いかかった。
咄嗟に避けると、ネクサスと入れ替わるように現れた満開した勇者が二人。
そしてネクサスは、イシュムーアとクトゥーラを相手しようとしていた。
『なるほど……そう来たか』
「時間は稼がせてもらうわ」
「返してもらうわよ、うちの部員を……!」
納得を示したメフィストは、敢えて乗ることにしたのかダークレイ・フェザーを放った---
『フッ---!』
クトゥーラの触手を避けていき、接近するとショルダータックルからの肘打ち。そして左手でアッパーカットで宙に浮かせると、前蹴りで一気に吹き飛ばす。
それを見ながらアームドネクサスを十字に交差した後。左手で右腕を上から下に撫でるように添えると、その右手に炎が纏われる。
振り向くように回転し、イシュムーアに対して炎の拳を叩きつける---はずだった。
『シュ……ァアアアア!』
拳を前に突き出したネクサスへ、蛇のような頭が九本生み出されると、炎の円柱と九つの頭から放たれた火炎放射が互いに与えんと衝突した。
力は同等……なんかではなく、ネクサスの突き出した腕が少しずつ戻されていき、炎の円柱が呑まれていく。
明らかにネクサスが押されている状況で、さらにグランテラの尻尾とゴルゴレムの管状の口吻であるゴルゴレムプロセスからネクサスの背中に火球が直撃し、僅かに怯んだ瞬間にネクサスの体が炎に呑み込まれ、吹き飛んでいく。
『グゥッ……デェアッ!』
だが、跳ねるようにして起き上がり、着地と共に足を踏み出すと、胸から高熱光線---コアインパルスを放つ。
吹き飛んだ際にエネルギーを貯めていたようで、突然放たれた必殺技にイシュムーアは反応が出来ない。
バリアを生成する暇すら与えず、コアインパルスが直撃し、大爆発が起きる。
「……っ?もしかしてやった…?」
「なら後はスペースビーストとメフィストだけ---ッ!?」
『……フェッ!?』
爆風が東郷や風、メフィストの元にも届き、互いにネクサスとイシュムーアの方向を見た。
明らかに光線技が当たり、倒したようにも見える。
だが爆煙の中から、熱線が放たれた。
咄嗟に両腕を前に突き出してサークルシールドを展開して身を守るネクサスだが、熱線が収まるのと同時に驚愕する。
コアインパルスはスペースビーストですら倒すことの出来るほどに高火力だ。
だがその威力を持ってしても、
しかも右肩は一瞬で再生する。
再生力からして、その再生を見せるためにわざと受けたのだろう。
超再生---そして御魂の能力。元々備えているノスフェルの再生力。
「そんな……」
『ヘェアッ!ハァァァァァ……デェアアッ!』
絶望が漂う。
それに屈することなく、下方で両腕をクロスさせたネクサスはゆっくり上げつつエネルギーを溜めていき、肘を腕の外側を向けるように曲げて、最後に両腕を斜め上に広げてからL字に組むことで膨大なエネルギーの奔流を解き放つ。
最強技のひとつ、オーバーレイ・シュトローム。
幾度も強敵を打ち払い、絶望を塗り替え、何度も勝利へ導いたネクサスを代表する必殺技。
命中させた相手を内部から分子分解することで直接内部に大ダメージを与えて撃破するという特性を持つ光線。
その光線が、イシュムーアへと直撃する。
流石に究極の名を冠するだけあって尋常ではない耐久力を持つが、それすらも無視して内側から分解を表す青い粒子が溢れる。
全身が青い粒子へと変換されていき、さらに威力を込めるとイシュムーアの肉体は後退していき、さっきまでの耐久力が嘘のように爆発する。
爆煙の中を
『無駄だ』
『!?』
「なっ……!?」
容赦なく吐き捨てられた言葉が響くのと同時に光っていた小さな
分子レベルで分解したはずなのに、敵は驚異の再生能力で復活した。
僅かに見えたのは人の指サイズくらいでしかない大きさの御魂。
この『究極型融合昇華獣』という存在はスタークラスターのように大きい訳ではなく、真逆。
御魂を限りなく凝縮し、とても小さな形へと変化させている。
ならばその小さな御魂に入っているのは、一体どれほどのものなのか。
融合してるスペースビーストやバーテックスで考えれば12体×12体+α。
単純計算で
『ウッ…!?ガ……アアアアアァッ!?』
そして胸のパンピーラの顔から放たれた電気を纏う糸が驚きのあまり動けないネクサスの両腕を左右の腰に固定させ、拘束する。
全身を襲う痺れ。それに抗うように身を捩るが、簡単には外れるはずもない。
「再生!?しかもあんなに小さな御魂なのに……そんなの卑怯でしょ……!」
『卑怯?そもそも最初から勝ち目があると思ったか?奥深くに存在する
「紡絆くんの技は表面だけだったってこと……?あの技でも装甲を剥がすだけ…違う、そもそもあの時と違って避けようとも防ごうともしてなかった……。脅威って思われてないということ…ッ!」
余裕の現れか、メフィストがわざわざ答えてくれた。
それによって東郷は最初、光輪を投げた際のことを思い出す。
あの時はバリアを貼っていたが、それは脅威を感じたということ。逆に言えば、オーバーレイ・シュトロームは継続的に流されるだけで貫通力は低い。何よりさっきのは、表面を分解しただけだ。
自身の御魂には傷が付けられない、そう思われていた。何より一番の理由は、敢えて食らうことで
例えウルトラマンであろうと勇者であろうと、殺すことは出来ないと。抗うことが無意味なのだと。
『グッ……デェアッ!』
それでもまだ、まだ諦めていないのだろう。
ネクサスの全身が輝き、青い光が降り注ぐ。
赤い鎧は青く染まり、その際に生じた光が糸を弾き飛ばす。
ジュネッスからジュネッスブルーへ。
速度を重視する形態になったネクサスがイシュムーアに向かって構えを取る。
そんなネクサスに対し、次々と火球や火炎弾が放たれていった。
避けるように地面を強く蹴り、後ろへ跳ぶと何発かは地面を削ったが、追尾してくる。
上空へ高く舞い上がり、左右に身を逸らしていくことで避け、通り抜けた火球や火炎弾は跳ね返るようにして再び向かってくる。
上と下。
上下同時に向かってきたが、空気を蹴るように当たる寸前で後方回転し、上下に迫ってきた火球や火炎弾を互いにぶつけて破壊し、下方から追加するようにまた火球が撃たれる。
『デヤッ!デヤッ!』
身を逸らしつつ直線ではなく斜め左右に移動しながら避けていき、避けきれない攻撃はパーティクルフェザーを数発放って相殺した後に高速で空中を駆け回る。
しかし今度は追加はされず、むしろ追尾式ではなく操っているのかネクサスの軌道に合わせてくる。
ジュネッスブルーの速度に合わせられる程の精密な操作と反応速度。
どれもこれも、全てを上回ってくる。
誘爆させようとしてもフレーム単位で合わせてくるせいで出来ず、撒こうと動いていたネクサスは空中で止まることになった。
『……!』
視線を張り巡らせ、逃げ場がないことを悟る。
今までの行動も、迎撃出来ていたのも全部、このためだったのだろう。
いつの間にか、火球と火炎弾に囲まれている。
避けれていたのではなく、誘導されていた。確実に逃げ場を殺すための場所を作るために、そこへネクサスを連れていくために。
つまり、やろうと思えばネクサスを墜落させることは出来ていた。
そして、周囲に存在する火球と火炎弾。
何よりイシュムーアの両手から作り出す青白い光球がネクサスへ一斉に襲いかかる。
動いたということはズレもあるはずで、素早く抜け道を探すが、どれも統制の取れた同じ速さで動いている。
バラバラではなく、円形の線をそのまま縮めているかのような、巻き戻ししてるかのような動き。
例えひとつの火球を破壊したとしても穴が開く前に別の火球がそこに入り込み、完全に詰み。
少しでもダメージを減らすために両腕を交差するが、守れるのは前のみ。
後ろは守れず、ダメージを覚悟したところで---。
「させるかぁぁぁ!」
「………ッ!」
周囲で爆発が起きる。
ネクサスに影響はなく、周りを見渡すと巨大な大剣が火球を一気に破壊し、連射される砲撃が撃ち落としていく。
瞬く間に囲んでいた攻撃は消え失せ、それを壊した風と東郷は浮いたままネクサスの隣まで寄ると、ネクサスが光刃を左右から放った。
二人に放たれた闇の光刃と守るように放たれた光の光刃が互いに相殺し合い、戦闘が一度止んだ。
地上から見上げるイシュムーアとメフィスト、復活しているクトゥーラ。
対する上空にいるのはネクサスと戦艦母艦に乗る東郷と巨大な大剣を持つ風。
「マズイ……あたしらの攻撃じゃ足止め程度にしかならない」
「でも同時に壊せばいい……なら、紡絆くん。あの弓の技は打てる?」
『………』
律儀に待ってはくれているが、いつ敵の気が変わるか分からない。
それにこのままでは拉致が開かないのも確かで、東郷の言葉にネクサスは自身のコアゲージを見た。
まだ青く、エネルギーは残っている。
本来ならオーバーレイを一度使用した後なら紡絆の肉体的には割とギリギリになるのだが、まだ技は使える。
それも自身の生命力が無くならない限り、だが。少なくともまだコアゲージが鳴ってないということは多少の無茶ならば通る。
逆に言えば無理をしなければ勝てる相手ではなく、平気だと言うように東郷へ顔を向けて力強く頷いた。
「だったら一緒にやりましょう。私なら紡絆くんの攻撃に合わせられる。行動に合わせることができるから……!」
何処からその自信が来るのかは定かでは無いが、彼女の表情に一切の不安要素は見られない。
真剣で、けれども紡絆は何処か懇願するような感情が込められているような気がした。
この状況になったのは自分のせいだと思っているからなのだが---流石に彼はそこまでは分からなかった。
「じゃあ防御はあたしに任せなさい。この武器じゃ遠距離だと無理だしね」
役割は決まった。
たったの数分。それだけでまともに戦えば勝てないと理解させられるほどの実力と能力を敵は持っている。
だとしても戦うしか道はなく、メフィストは倒せなくともイシュムーアやクトゥーラは倒せるのだから。
そしてまた、メフィストたちは戦意を喪失してないということを理解したらしく、戦場となった空間で殺気が充満する。
『---シェアァッ!』
最初に動いたのは、ネクサスだった。
胸のコアゲージにアローアームドネクサスを装備している右腕を翳し、その手に光の弓を形成する。
アローモードへと変化させ、同時に東郷の戦艦母艦に備わっている八つの砲門がそれぞれエネルギーを充填し、丸を描くように巨大な青いエネルギーを貯めていく。
当然、敵もただ見てる訳では無い。
邪魔するためにか、イシュムーアは物量に優れる火球を発射し、メフィストが三日月状のダークレイ・フェザーを。クトゥーラは触手を伸ばす。
「大量ね……けど、勇者部部長の、先輩としての底力を見せてやろうじゃない!」
大剣は質量は大きいが、小回りは効かない。
それは満開の力を持ってしてもあまり変わらず、だがこの場においては小回りの効かないデメリットよりも大きいという部分がアドバンテージへと変わる。
ひと薙するだけで火球が一気に爆発し、誘爆で触手の数が減る。
ダークレイ・フェザーだけは突き抜けてきたが、少し遅れて触手が加速した。
薙いだ大剣を戻す際に切り裂き、連続でX字に動かして触手を切り裂いていく。
その間に通り抜けたダークレイ・フェザーに対し、最後の触手を大剣の腹で叩きつけると、即座に大剣を大きく振り上げた。
「つっっ……!」
強引に振り上げた影響か、それとも数発のダークレイ・フェザーを受け止めた影響か。
痺れるような痛みが両腕に走る---
『ハァァァァァ……』
しかし僅かな時間稼ぎは幸を成す。
弓から発せられる虹色の光がネクサスにかかっており、同時に彼のコアゲージの点滅が始まってはいたが限界まで引き絞られていた。
エネルギーは最大。
もはや残るエネルギーは少ない。
『デェアッ!!』
それでも、抗い続ける斬撃のような衝撃波のような弓矢がネクサスの腕から放たれた。
アローレイ・シュトローム。
威力だけならばオーバーレイ・シュトロームに匹敵か、それを超えゆる破壊力を持つ矢。
流石に不味いと理解しているのかその場から離れるメフィストとクトゥーラ。
ネクサスが狙ったのはもとよりイシュムーアであり、真っ直ぐ飛んでくる光矢に対してイシュムーアは自身の首を九本増やし、花粉を解き放つ。
徐々に押されていくのは弓矢。
アローレイを持ってしても破れない技---
『デア!ハアアアァァァ……!』
その弓矢を、クロスレイ・シュトロームが足りない威力を上げる。
まともに当てるならば相手の強さから考えると威力不足でしかない光線技ではあるが、後押しするように使った場合は別。
押されていた光矢を押し戻す。
『フッ---シュア!』
さらにイシュムーアの熱線や火炎放射を上回り、一気に威力を高めた光線が弓矢と共にイシュムーアへと向かっていき、イシュムーアは迎撃が不可能と見たのか攻撃をやめていた。
「いまっ……!」
同時に今までの比ではない最大出力の砲撃が追従する。
並の融合型ですら間違いなく倒されるしかない場面。
仮にネクサスの技を防いだとしても消耗はするし、彼女の自信の通り、完璧に合わせて撃ってきた。
だからこそネクサスの攻撃を防いだところで、東郷の砲撃が着弾する---ただし、
『究極』とは最終到達点。
バーテックス、スペースビースト。双方の存在が極限に合わさった結果生まれた存在。
そしてザ・ワンの細胞は未だ成長途中。
『!?』
なればこそ、ネクサスの必殺技が当たる直前で
驚愕したようにクロスレイを照射するのをやめて注視するネクサス。
遅れてやってきた東郷の砲撃---それすら
理解不能。未知の能力。
否。
防いだのは前方に掃射された
無重力光線---メガフラシが持つ能力。
その力はウルトラマンの光線技やビーム兵器を無効化するという、ネクサスと東郷にとって非常に相性が悪い能力。
「そんな力まで……!?」
『シュッ---!』
まるで何者かに何かを聞いたことを理解したように頷いたネクサスが加速した。
一瞬で地面に降り立ち、イシュムーアの背後を取ったネクサスは右手のアローアームドネクサスをソードモードへ変化させ、光の剣であるシュトロームソードを展開すると横に一閃---消えた。
剣ではなく、イシュムーアが消えた。
すぐさま周囲を見渡し、ふと感じた気配に振り向きざまに剣を横に振るう。
当たらない。
またしても別の場所から気配を感じ、剣で攻撃してもやはり当たらず、次々と伸びてきたクトゥーラの触手を切り裂いていく。
そして、今度は回し蹴りを放った。
背後から現れるイシュムーア---
『ヘェッ!?グッァ!?』
やはりすり抜け、爪が振り下ろされたタイミングですぐさま右手を輝かせたネクサスが拳を叩きつける---ジェネレード・ナックル。
だがその攻撃は、軽々と受け止められていた。
引き抜こうにも相手の力の方が強く、同時に雷撃がネクサスを引き離す。
咄嗟に食らった際に吹き飛ばされた衝撃を利用し、再び展開したシュトロームソードで、継続的に流される雷撃を振り払う。
追撃を避けるためか、横へ転がり、イシュムーアが居た位置へ振り向いた先。
『グワァアアアアア!?』
黒煙を撒いてきたイシュムーアの攻撃をバリヤーを展開しようとしたネクサスが、背後から黒煙に包まれる。
自身の肉体から火花が散るほどに装甲にダメージを受けていく。
イシュムーアとクトゥーラ。いつの間にか囲まれていた---いや、誘い込まれた。
イシュムーアの持つ幻影、幻影と入れ替わる力。ゴルゴレムが持つ透明化。ガルベロスが持つ幻覚。
四つの力が連続して働いた結果、ネクサスは
イシュムーアにはそもそも当てることが出来なかったのは幻影と透明化の力だった。
そしてまた、風や東郷にすら幻覚は作用していた。
「くっ……紡絆!」
「こっちが本体…!」
幻覚が解除されたのか、正確な位置を把握した二人が攻撃を仕掛ける。
大剣を振り下ろし、砲撃を放ち、全て暗黒のバリアに防がれる。
『フン……』
「っ、小都音ちゃん……!」
「いい加減にしなさいよ!あんたの兄が傷ついてんのよ!?それで本当にいいの!?」
『説得しようとも無駄だ。既に意識は無い』
「だったら目を---」
『う、ァ……ア、アアアァァ…ッ!』
風の言葉が最後まで呟かれる前に、黒煙に包まれていたネクサスが両膝を着いて、地面へ倒れ伏せていた。
「紡絆くんッ!」
力尽きたように伏せたネクサスの元へ向かおうと東郷が次々と青いエネルギーを撃ちながら動くが、再び放たれた虹色の波動が無情にも全て無効化する。
そして東郷に向かって、イシュムーアが猛烈な風圧を発生させると移動砲台ごと東郷を吹き飛ばした。
「東郷!?このッ!」
すぐさま大剣を手に動く風だが、背後へ振りかぶって振り下ろそうとした大剣が停止する。
思わず視線を背後へ向けると、複数の触手が大剣に巻きついて離さない。
散々やられていたクトゥーラが仕返しをするように、防いだ。
しかも振り解くどころか、逆に引っ張られるほどの力で。
さらに抵抗していた風へ三日月状の光刃と青色破壊光線が直撃し、地面へ落ちていく。
冷静さを僅かに欠いた結果、招かれたのがこの状況。
戦況は、あっさりと傾く。
精霊のバリアがあることから落下をしても風と東郷は無事だろう。しかしこの融合型相手には、どう足掻いても勝てる要素が見当たらなかった。
虹色の波動は光線技を無効化し、やろうと思えば透明化と幻覚だけで完封できるはずなのだ。
けれどしない。
なぜなら生きているから。ウルトラマンという存在は希望であり、その光はどんな状況でも輝く。
故に、敵は徹底的に折る。勝てる見込みを少しでも持たせて、希望を抱かせて、本当はそこに絶望しかないのに。
『ッ……!』
勝てない。
自分の全てを変換してもなお、全力を出せても勝てないと思わされるほどの強さ。
例え倒したところで、イシュムーアの再生能力は決して破れない。
御魂が無事だったとはいえオーバーレイ・シュトロームで分解されても
すなわち、やろうと思えば再生が上回ることが出来る可能性だってある。
『---シェッ!』
だとしても。
寝そべっていたネクサスの手が、地面に着いていた手が砂を巻き込んで握りしめられる。
迷うように僅かに視線を逸らして、次に東郷や風が居るであろう場所を見て、樹や友奈がいるであろう場所を見て、何より。メフィストを捉えて。
そうして起き上がったネクサスが、イシュムーアへ向いたまま再びコアゲージに右腕を重ねた。
形成されるのは光の弓、そして光の剣。
ファイナルモードを形成したネクサスがついに、最期の力を振り絞る。
背後でクトゥーラが動き出す気配がするが、それすら無視した。
メフィストが動こうとも、視線のひとつもやらない。
弓を引き絞り、コアゲージが限界まで早鐘を鳴らして、紡絆は選んだ。
自分の命と引き換えに、目の前の巨悪を討ち果たす選択を。
『ハァアアア---デェェェアアアアアツ!』
放たれるは、不死鳥の光矢。
放った際の衝撃が周囲の動きを停止させる。
この技はかつて『最強』と謳われたスペースビーストを打ち破ったことがあり、現状紡絆が持ちうる、ネクサスの最強の必殺技。
全てのエネルギーが込められた、オーバーアローレイ・シュトローム。
文字通り最期の必殺技。
その技は、能力を使わせるよりも早くたどり着く。
数秒先の未来。間違いなくイシュムーアは貫かれるだろう。能力を使わせることなく、再生すらさせない。
だが、不可能なはずの反応をイシュムーアはやってのけた。
何も能力をしようとせず、敢えて受け入れるように両腕を広げている、
当然そうすれば、不死鳥の光矢を阻害するものはなく、今度こそ全身を完全に消滅させる---
『ッア……?』
はず、だった。
例え御魂があっても、不死鳥の矢は間違いなく貫く。
相手が
直撃したはずの不死鳥の矢。
イシュムーアは---
前提が違ったのだ。
さっきまでの攻撃も、さっき分解されたのも、全部全部わざと。これが
イシュムーアの本気。
オーバーレイだろうとも
『ぐ……ハッ!』
ネクサスの持ちうる
唯一残った左腕で剥がそうとすると、いつの間にか発生していた霧のような鎖が動かそうとしたネクサスの腕を防ぐ。
点滅音と共に鼓動のような音が響く中、拘束を解くために藻掻くネクサスへ、イシュムーアがトドメの一撃を作り出す。
それは尻尾。
ただの毒ではなく、全力で警報を鳴らすほどのオーラ。
それはかつてのものと同様
『っ!ッ!』
確実にウルトラマンを殺す一撃が、ネクサスへ向けられる。
ネクサスの全身を輝き、そして---
『ガアァアアアアア!?』
エネルギーが無くなった影響でアンファンスに戻ったネクサスの心窩が貫かれ、針が突き抜ける。
拘束が解かれ、凄まじい速度で山壁に叩きつけられる。
磔にされたように動かなくなったネクサスに毒が回り、侵食が始まり、呪いが行き渡り、抉れ、肉を裂くような音が響き、
苦しみ、悶え、痙攣し、コアゲージの点滅が遅鈍になり、最後の最後で弾かれるように空へ
けれども。いくら抵抗しようとも力は一方的に失われていく。
目の光を失い、呆気なく
そうして、終焉の地にて。
希望の象徴であったウルトラマンネクサスは敗北を喫し、光であった存在は闇を打ち倒すことも出来ず命尽きた。
世界は、絶望と闇に覆われる。ウルトラマンの体も、人の心にも、世界にも、それはまた---神にすら。
もはや抗う術も希望も、何一つなく。
滅亡へのカウントダウンが始まった---
○継受紡絆/ウルトラマンネクサス
元々最後の手段として残していたのが生命力を引き換えにすること。
なのでこの時点で、紡絆くんの体は消滅してます(意志だけがウルトラマンに宿っている状態)。なお実は左半身の身体機能は完全に消滅してたり。
アキメネスの『あなたを救う』とは紡絆くんからウルトラマンに向けてのことですね、はい。
○ウルトラマンネクサス
紡絆が何をするか気づき、自身の命と引き換えに紡絆を助けようとしたが紡絆が断ったので出来なかった。
紡絆くんのお陰で実はフルパワー。
○天海小都音/ダークメフィスト
死ぬ前に持ちかけられた契約によって助かったらしく、彼女には選択はなかった。
何故なら悩む時間はなく、契約をしなければ兄と会うことは叶わなかったのだから。
故に、『悪魔の契約』を結んでしまった。
メフィストの命で生きているため、メフィストがやられたら彼女も死ぬ。
○究極型融合昇華獣イシュムーア
スペースビースト、バーテックス、御魂、ネオと通常融合型のあらゆる能力が使用することが出来る他に、一つ一つではなく全能力を一斉に発動することすら可能。
素のスペックも再生力もあまりにも高く、勇者の満開やウルトラマンを相手にしても打ち倒すことは敵わない。
学習能力も半端なく、何回か受けたことのあるオーバーアローレイすら無傷というほどの強さを持つ(逆にプラズマの光輪は1回しか受けてないので油断せず警戒している)
御魂は超小型で凝縮されている。
嬲っていただけで、本来ならネクサスを瞬殺出来ただろう。
故に、完成させてはならなかった。
完成すれば、勝ち目がなかったのだから
○メフィスト
どれを選んでも、何をしても最終的に紡絆が辛い目にあうか世界が終わるということしか起きないという、まさに悪魔の所業。
○掲示板
復活したけど有能。
でも何も出来ない。
○スコーピオンの尾
(今回は天の神の力付きとはいえ)ウルトラマン絶対殺すマン。
勇者特効を失ったかわりにウルトラマンキラーを持ってるんじゃないかって言うくらいに殺ってる(二度も殺ってる)