【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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ゆゆゆいCS版予約始まってましたねぇ。え?特典多いのにどれにした?
無論エビテンで上下巻限定版で買いましたけど(約11万) 全部欲しい人は全部買って、どうぞ(100万円超えるとか)

そんな来年のプライベート資金死亡のお知らせはともかく、そろそろ章が終わるので言っておきたいことがあります。
何故本作を『輝きの章』にしたのか、ってことですね。
輝きの章→紡絆くんと紡絆くんが発現させる形態のこと、でした。初めから決まってたんですよね、その二つは。多分そこまで深読みしてた人は居ない。
あとオリジナル形態に関しては今出てる案で良いなと思ったのもありますが、募集し続けます(規約的に活動報告にて)。
まだ能力がどんなのか分からないと思うので、この話見て考えてくれたらなあと。
案が来なかったらクソザコネーミングセンスを持つ作者が既に持ってる案出しますけど、その案を知りたい人は活動報告載せておくんで見てください。技名も募集しようかな、炎パンチと浄化光線と氷ビームと雷ズドーン。
さて本編ですが、実はこの結末もオリジナル形態(と能力)もこの作品を書くと決めた際に決定してました。ようやく書けた話を、どうぞお楽しみください!
長きに渡った、輝きの章の終幕です!(あと一話あるけど)







「-英雄-ヒーロー」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 第 49 話 

 

 

-英雄-ヒーロー

 

 

愛情の絆

アサガオ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇跡を宿す黄金色のジュネッス。

その力によって全てが巻き戻され、全てがリセットされた。

いや、元通りではないだろう。

ウルトラマンの復活、つまるところ継受紡絆という人間が生き返った証だ。

 

『ならば再び……!』

 

遥か上空に存在する、眩いネクサスの姿。

即座に地上へ振り返ったメフィストが、再び神樹を破壊しようとイシュムーアに指示を出した。

地上にいるイシュムーアと上空に存在するネクサス。

そう、狙うのが早いのはイシュムーアだ。

再び貯められる熱線。

絶大な力が誇るそれは、復活した神へと向けられ---

 

 

 

 

 

 

 

 

イシュムーアが()()()()()

 

『!?』

 

誰も視認が出来ず、何が起きたのかすら認識出来ていない。

それは勇者たちも同様で、ただ分かるのはいつの間にか地上に降りていたネクサスが拳を突き出していた。

それだけ。

上空を見れば、既にそこはもぬけの殻。

その存在が脅威とみなしたのだろう。

次々とクトゥーラが触手を伸ばしていくと、背後から一斉に襲いかかる。

ネクサスは気づいていないのか、何の反応も示していない。

すぐに伝えようと勇者たちが口を開こうとするが、それよりも早く辿り着く。

明らかに間に合わず、ネクサスは拘束される---のではなく、触手が()()()()()()()()()()()()され、姿が消える。

 

『デェアッ!』

 

そして、クトゥーラの背後から現れたネクサスが横蹴りで蹴り飛ばしていた。

しかしすぐに起き上がったクトゥーラが無数の触手を向かわせ、ネクサスが左手を向ける。

すると、どこからとも無く生えてきた木が、枝が分かれるように分裂し、次々と無数の触手と打ち合う。

無数の触手と無数の木々。

いずれは決着は着くだろうが、簡単には決着はつかない。

次の一手を打つようにクトゥーラが()()()から生み出した触手を地面から這わせ、足元を狙う。

ネクサスは気づいていたのか、視線を向けると共に左手を向けると、光の波動が触手の動きを()()させる。

すぐさま右手を上空へ翳せば、手のひらから放出された光が、流星のような軌道を描きながら次々とクトゥーラに光弾が直撃していた。

 

『ハァァァァ……フンッ---!』

 

そして両腕を大きく回し、胸元でクロスしたネクサスに光が集うと、一気に払うように両腕を広げる。

半月型のギロチンを思わせる光が無数の触手を切り裂く。

それと同時にネクサスが消えたように急接近し、左腕のアームドネクサスのフィンが鋭利に伸び、右腕のアームドネクサスがソードモードへ変化。

触手を失い、クトゥーラが抵抗するように残る黒煙を吐き出すも、ネクサスは自身の肉体を光で覆うとそれらを無効化しながら展開したシュトロームソードを勢いよく薙ぎ一閃。

回転による遠心力を利用しつつフィンを振り上げながら通り抜ける。

青白い光にクトゥーラが包まれ、ネクサスの背後で爆発しながら分子分解されていた。

それを振り返ることなく。

両腕に備わるアームドネクサスは元の形状へと戻っていた。

(かぜ)に流されて飛んでいく粒子。

分解された粒子がイシュムーアにこっそりと吸い取られる。

その事に誰も気づくことはなく。

然しながら、クトゥーラは確かにこの場では一番弱いが、それでも相手はスペースビーストだ。

だというのにネクサスに触れることすら叶わず、瞬殺された。

間違いなく、パワーアップしている。

本人も力まではよく分かってなかったのか、手を開いては握り、視線をいつもとは全く違うジュネッスになっている自身の肉体に向けていた。

 

「紡絆くん!」

 

自身を呼ぶ声に反応してみればネクサスの元に四人の勇者が合流する。

本来ならば樹を除いて満開を複数回使用した彼女たちは代償として身体機能を捧げ、補助パーツが目立つ部分に追加されてもおかしくないはすが、一向に増えていない。

その理由は、時間を戻したのが原因。

ネクサスが戻した時間は、最終決戦が始まる前。

つまり、満開を使用する前だ。だからこそ満開ゲージは溜まりきっているし、皆は身体機能を新たに失っていない。

ただ既に失ったものは取り返すことが出来ないからか、風の左目も樹の声も、東郷の左耳も両脚も記憶も戻すことは出来ていなかった。

 

「まったく…遅いわよ。どれだけ待たせんのよ」

「それにやっと起きたかと思ったら今度は新しい力に、時間を操作するって……助かったけど、想定を超えてくるというかなんというか…うん、紡絆らしいわ」

 

何処か文句を言いたそうに、それでも隠しきれない喜びがあって、夏凜と風は声を掛ける。

返事が返って来ないことは分かっているが、何か一言でも言いたかったのだろう。

遅刻にも程がある。一度世界が滅びてから目覚めたようなものだ。というか一度滅んだ。

むしろ一言もない方がおかしい。

 

「紡絆くん…もう大丈夫なの?」

『悪い……でもみんなのお陰だ。ありがとう』

「!?」

 

突如紡絆の声が脳裏に響き渡ることに、それぞれ驚きながら頭を抑えると、思わずネクサスを見た。

どうやら、声を発しているわけではなく脳に直接呼びかけているらしい。

 

「え?頭の中に紡絆の声が聞こえてくるのだけど…」

「いやいや、まさか。夏凜、貴女は疲れてるのよ。うん、気のせいでしょ」

『いや、気のせいじゃないぞ。いわゆる精神感応(テレパシー)という力だ』

「はあっ!?」

 

時間操作だけには飽き足らず、今度は精神感応。

流石にこれ以上驚くものはないだろうと高を括っていたのに、風は思わず声を発していた。

というか、東郷を除いて全員が驚いていた。

実際には本来ウルトラマンならば可能で、出来ない紡絆がおかしいだけなのだが、他にウルトラマンがいないため彼女たちはそれを知らなかった、というのもある。

逆に知ってたらできないことに驚いてただろうが。

 

「というか何があったらそうなるのよ。話しなさい」

『えーと話せば長くなりますけど』

「じゃあいいわ」

『うわひどい!話せって言ったの風先輩なのに!』

「はあ……二人ともそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」

『あはは……でも紡絆先輩が無事で何よりです』

 

さっきまでの様子はどこに行ったのか、普段と変わらぬ空気感になりつつあったが夏凜は呆れ返り、樹がスマホを見せると、風も夏凜も、そしてネクサスも同感と言わんばかりに頷く。

 

「いない……」

 

そんな中、東郷が何かに気づいたように呟くと周囲に視線を向けて必死に何かを探るように見回していた。

 

「東郷?」

「いないって……どういう---いや、まさかそういうこと……!?」

 

東郷の様子に気がついた風が呼び、夏凜も同じく周囲を見渡せばなにかに気づいたような反応をし、樹もハッと気がつく。

 

「やっぱり!友奈ちゃんが…何処にもいない……!」

 

その言葉が発せられたのと同時に、ネクサスが振り返った。

合流しないのは意識が戻ってないからと分かる。

それでも居たはずの位置に居ないのはおかしいわけで---

 

『動くな』

『………』

 

一歩踏み出そうとしたネクサスの動きが止まる。

その先、空中に浮かぶシャボン玉のような闇の玉が存在しており、その中には友奈がいる。

意識がないため、仰向けになったままで。

 

「友奈ちゃん!」

「友奈!」

 

咄嗟に武器を取り出す東郷と夏凜だが、行動を中止せざる得なくなる。

展開され、闇のエネルギーが纏われたメフィストクローが向けられていたからだ。

攻撃をするよりも早く、友奈に向かってエネルギーが放たれるだろう。

精霊がいるから安心、とはいかない。これがイシュムーアならともかく、メフィストは精霊の守りを無効化できる。

 

「友奈が人質ってわけ……!?」

『そうだ』

「っ……!」

 

人質というのは戦略的には有効だ。

それを気にしないものならば無意味だが、小都音がずっと人質に取られているように、友奈まで人質に取られれば紡絆だけではなく他の者も動けなくなる。

 

「くっ、卑怯な……!」

『卑怯だろうと勝者が全てだ。さぁ、どうする?ウルトラマン。貴様の命と引き換えならばこの女は助けてやってもいいが…選択肢は必要ないか』

『ああ、必要ない』

「紡絆!?あんたまさか……」

 

悩む素振りすら見せず、ただ一歩だけを歩む。

それが選択なのだろう。

咄嗟に風も夏凜も止めようとするが、東郷が二人の腕を掴んで動きを止める。

 

「東郷!その手をはなしなさ---」

「夏凜ちゃんも風先輩も……紡絆くんを信じて。きっと大丈夫よ」

「大丈夫って……あんた何を根拠に---」

「根拠は…簡単です。紡絆くんですから」

『確かに、紡絆先輩はいつも……!』

 

勇者たちを他所に、ネクサスは構えすら取らず、ただメフィストを見ていた。

何もしないというように、無防備に。

それを見たメフィストがエネルギーを貯めていた。

メフィストクローに大量のエネルギーを集め、禍々しい球状のエネルギーを形成する。

密度が今までの比ではなく、今のネクサスでも危ういだろう。

 

『ハアッ!』

『……!シェアッ!』

 

 

メフィストが放つのと同時に、ネクサスの姿が光の粒子となって消滅する。

その事を理解したのか、メフィストはクローから黄緑色の破壊光線を友奈に向かって放っていた。

少し距離はあるものの、ネクサスが守るよりもそれは早く爆発が起こる。

 

『デェアッ!』

『ッ!?』

 

だが。

なんとネクサスは友奈を守ることをせず、一瞬で目の前に現れるとただその拳をメフィストの胸に突き出し、同時に拳から発せられた衝撃波がさらなるダメージを与える。

一回の攻撃で実質二連発の攻撃に怯み、胸を抑えながら後退するメフィストは驚きながら顔を上げる。

なぜならその行動は、他人をどこまでも優先し続ける、自分を選べない紡絆が他人を選ばなかったこと。

 

『バカな……見捨てたというのか!?』

 

ネクサスが身を持って庇う。

メフィストが考えていたのは、そのことだろう。

あの状況で友奈を守るには光線技でも牽制技でも間に合わない。ただネクサスの速度ならば間に合う。

そういった距離だった。

しかし。

 

『さっきも言ったはずだ---この力は守り抜く力とッ!』

 

また紡絆も考え無しに攻撃したわけではなかった。

爆発が晴れる。

そこには友奈を覆っていた闇の玉が光の玉になっており、友奈もまた無傷で無事だった。

何故そうなっているのか、それは至って簡単。

 

『闇の力を()()()()しただと…?』

 

本来エネルギーの限られるウルトラマンの光の力は闇に弱い。

例を挙げるならばメタフィールドがわかりやすいだろう。

メタフィールドを展開したらダークフィールドには簡単に塗り替えられるが、ダークフィールドをメタフィールドでは塗り替すことが出来ない。

無論、ウルトラマンのエネルギーが無限にでもなれば可能になるが、限られている中では闇の力を光に変換するのは困難なはずなのだ。

しかしネクサスは困難なそれを容易にやって見せた。

 

『シェッ!』

 

光のムチであるセービングビュートが球体を包み込み、引き寄せるのと同時に光の球体が晴れる。

ネクサスの右手には、傷一つない友奈が乗せられていた。

人質という手段は使えなくなったということ。

そしてまた、何かに気づいたようにネクサスは神樹の方へ振り向いて見ると、左手を翳す。

()()()()()()()が生まれ、不意を付いたであろうイシュムーアの熱線を防ぎ切る。

 

『!?』

 

失敗した際の保険すら作っていたのだろう。

手段を選ばず明らかに神樹を狙い、世界を破壊する選択をした。

それですらネクサスが防いでみせたことに、メフィストが動揺する。

その間にネクサスが再び消え、勇者たちと合流する。

 

「え、いつの間に!?」

「友奈は!?」

『フッ』

 

またしても一瞬で現れたことに味方ですら驚いているが、夏凜の言葉に無事を知らせるため屈んだネクサスが手の甲を地面に着きながら拳を広げると、友奈が乗せられている。

 

「よかった…友奈ちゃんは無事みたい」

「ん……」

 

ネクサスの手のひらの上に乗り、無事を確認した東郷が皆に知らせると誰もが安堵の表情を見せた。

そして友奈が僅かに動き、気配で気づいたのか視線が集まる中ゆっくりと目が開かれる。

 

「……東郷、さん……?」

「…!友奈ちゃん!」

 

一番最初に友奈の目に映ったのは、覗き込んでいた東郷の顔だった。

意識を取り戻して脳が覚醒していないのかぼやける視界で首を動かせば、何故か視線は高いが皆の顔が見える。

勇者の力を纏って、無事に喜ぶ顔が。

 

「そうだ、紡絆くんは!?」

 

そこで自分が何をしていたのか気づいた友奈は慌てたように体を起こした。

突然起き上がったことに傍に居た東郷が僅かに驚くが、次第に優しげに微笑む。

 

「友奈ちゃん、大丈夫よ」

「え?」

「あんた、まだ寝ぼけてんの?」

「そっちよそっち」

 

誰も慌てることもなければ、呆れる者もいるが皆の様子に困惑した友奈が風が指差す背後に振り返る。

そこには、全身が輝く黄金色のジュネッスとなっているネクサスが頷いていた。

 

「紡絆…くん?」

『シュア』

 

まるで現実じゃなくて夢でも見ているかのように、信じられないといった表情を浮かべる友奈は自身の頬を軽く抓る。

 

「いたっ……夢じゃない…本当に、本当に紡絆くんなの?」

『ああ、友奈のお陰で、みんなのお陰で帰って来られた』

「よかった……よかったっ、よかったあぁぁぁああ!」

『!?』

 

喋れないはずの紡絆が喋れていることに疑問を思うことも無く、無事だと理解した時には友奈が飛びついた。

勇者の力を身に纏ってないのにそのような行動に出る友奈に割と、かなり焦ったネクサスが右手を動かしかけて東郷がいることを思い出して、慌てて左手の人差し指を友奈に向けて光の膜を作り出すと、身体能力も強化してしまうのか割と速い速度で顔面に直撃する。

等身大ならば受け止めることが出来ただろうが、巨大化してるネクサスには不可能なのである。

しかし自身でやっておいて痛かったのか、弾かれるように首が上へ向いたネクサスは空いている左手で顔面を抑えていた。

 

「わ、わあぁ!?ご、ごめんね、紡絆くん!私、もうダメかと思って、それで嬉しくて……!」

『い、いや気をつけてくれ』

「って、紡絆くんの声がちゃんと聞こえる!?なんで!?」

「おっそ!?」

「なんで今更!?」

 

光の膜が存在していたお陰で無事に着地できた友奈が自身の行動で若干のダメージを受けたネクサスの姿に申し訳なさそうにしたかと思えば、遅れて声が響くことに驚いていた。

そして忘れずツッコミを入れる風と夏凜だった。

 

「でも……ごめんね。私、約束したのに…守れなかった」

『約束を果たせなかったのは俺もだ。それでも友奈は俺の願いを叶えてくれた。俺を助けてくれた。友奈だけじゃない。みんなが俺の元に届けてくれたから、俺は死なずに居られたんだ。だから気にする事はない。お互い様だろ』

「紡絆くん……うん!」

「この二人が揃うと戻ってきたって感じするわねぇ」

「騒がしくなったの間違いでしょ」

「え、ええ!?」

「あら、そうは言っても夏凜ちゃんだって嬉しそうじゃない」

「ばっ……そ、そんなことは…!」

「そうなの?夏凜ちゃん?」

「う……そ、それは」

「素直になりなさいよ、このこの」

「っ、あーっ!もう!嬉しくないなら反応しないわよ!」

「夏凜ちゃーん!」

「ちょ、抱きつくなー!!」

 

ここが何処なのか忘れてるんじゃないかというくらいに騒がしくて、それでも何処か楽しそうで嬉しそうで。

集まってワイワイとして、友奈が抱きついたり夏凜が顔を真っ赤にして困ったような表情を浮かべたり、風がニヤニヤと楽しそうに見ていたり、東郷が笑顔を浮かべつつも何処か怖い雰囲気を纏ってたりと。

少しずつ、前までの日常を取り返しつつある。

けれども。

 

『でもまだ……』

『ああ、まだだ。樹ちゃん、小都音の意識はメフィストの中にまだあるんだろ?』

『はい、たぶん……いえ、絶対に残ってます…!』

 

足りないものがある。

今纏われている形態のお陰で気づいていたのか、それとも届けられた際に知ったのか、樹に聞くと彼女は確信を持って告げた。

曖昧ではなく、断言して。

それに頷いたネクサスが立ち上がり、メフィストとイシュムーアを睨む。

敵は既に準備を終えているのか、いつ戦闘が始まってもおかしくはない。

ただ何もしなかったのは、最後のチャンスを与えたのか。それとも神樹を守るように形成されたままの花弁が邪魔で無意味だからか。

どちらにせよやることを定めたネクサスが、紡絆が皆に声を掛ける。

 

『みんな、頼みがある』

「頼み…ね。真剣な話のようね、話してみなさい」

 

何一つ巫山戯る様子が見られない姿にその話の重大さに気づいたのか風が代表して聞くと、ネクサスはひとつ頷いて言葉を紡いでいく。

 

『俺は小都音を救いたい。でも俺一人じゃ救えない。だから力を貸して欲しいんだ。方法はひとつの賭けに近いが、上手く行けば救えるはずだ』

「そんなの当然だよ!でも方法って?」

「そもそも失敗する可能性もあるってわけ?」

『ああ、説明する時間はない。ただ言えるのは失敗すれば俺は二度と帰って来られない。でも』

「諦めたくない、でしょ?」

『………』

 

東郷が先を読んだように告げた言葉に、ただ沈黙で返す。

それは肯定とも同義であり、二度と帰って来れないことから危険な行為なのだろう。

 

「私たちはどうすればいいの?」

『…あいつを、融合型を抑えて欲しい。それだけだ』

 

手段は何であれ、必ず障害となるのはイシュムーアだ。

ウルトラマンの力を持ってしても敵わないほどの敵。

その敵を抑えて欲しいということがどれだけ困難なことか。

戦って、負けた紡絆もそれは分かっているはずだ。

それでも、難しいことを言っていることを自覚しながらも彼は頼むしかなかった。

 

「聞いたわね?」

「ええ、私たちの役目はアイツを抑えること。やってやろうじゃない」

「任せて、紡絆くん」

『…いいのか?』

 

それだけで十分だというように、それぞれ戦意を漲らせる。

しかし相手は満開を持ってしても勝てる敵でもない。

それも分かっているはずなのに、紡絆は不釣り合いにもそのようなことを問いかけてしまう。

 

「良いも何も、小都音は部員の一人だし樹の大事な友人だからね。妹が助けを求めてるんでしょ、だったら助ける役目は兄である紡絆しかいないわ」

「……仲間なんでしょ。それだけで十分じゃない。それに放っておいたらあんたは勝手にやるでしょ」

「貴方が私を助けてくれて、変わらず向かい合ってくれたから私は頑張れるのよ。だから今度は私の番。小都音ちゃんと紡絆くんがお話出来る時間くらい、稼いでみせる。守ってみせるから」

「うん、みんな同じなんだよ。紡絆くんが小都音ちゃんを助けたいって思うように、私たちもそうしたいと思ってる。だから紡絆くんはただ前を見て、いつも誰かを助けるように、今度は小都音ちゃんを助けてあげて」

『小都音ちゃんを取り戻せるのは、きっと紡絆先輩だけなんです。だから助けてあげてください。誰かの中に光を灯せる、そんな紡絆先輩だからこそ、可能だと思いますから』

『---』

 

聞かれるまでもない、そういったように次々と述べられ、無作法だったと反省しつつも紡絆は頼もしさを感じて、覚悟を決める。

 

『…任せた!』

「ふん」

「まっかせなさい」

「任されました!」

「よぉーし!」

 

ようやっと役者が出揃った。

ネクサスを中心に左右に分かれ、並び立つ。

その隣に立つ友奈が、ネクサスを見つめる。

 

「紡絆くん、 私は…ううん私たちは信じてるから。頑張って!」

『…ああ、必ず救い出す!』

 

気合いの籠った表明を聞いて、それぞれが笑顔を浮かべると、友奈が改めて勇者の力をその身に纏う。

準備は整った。

そしてまた、敵も同じく準備を終えていた。

無数の火球や火炎弾、矢に重力球。

広がるのは数えるのが嫌になるほどの絶望的な光景。

それらの絶望を翻すように---

 

『満開!!!』

 

端から全力で立ち向かうためにも出し惜しみはせず、五つの巨大な花が咲き誇る。

それぞれ別の天衣に別の武装。

まさしく最後の戦いに相応しい光景だ。

 

『やれ……!』

『シュア!』

 

合図と共に、イシュムーアが攻撃を放ち、ネクサスが駆ける。

左手に光を集め、上空に手を翳して手の先から青い鏃型光線が矢を撃ち落としていき、両腕を重ねて突き出すと、菱形の破壊光弾を連射する。

さらに砲撃とワイヤーが続くように一気に破壊し、ネクサスが両腕をコアゲージの前で交差すると消える。

 

『デェアッ!』

 

そしてイシュムーアの背後へ現れたネクサスが黄金色の光に纏われた拳を叩きつけて強引に距離を引き離すと、即座に振り向く。

その背後では体勢を建て直したイシュムーアが爪にエネルギーを貯めて振り下ろそうとして、巨大な大剣と四つの刀が左右の爪を同時に弾き、口に貯めた熱線が発射されるが巨大な拳が顎を打ち上げて逸らす。

僅かに逸れた熱線がネクサスの頭上を通り過ぎた。

 

「邪魔は絶対にさせない!」

 

攻撃を全て阻害され、イシュムーアの攻撃対象がウルトラマンから勇者へと切り替わり熾烈さが増す。

攻勢から防勢になってしまうが、それでもイシュムーアの意識がウルトラマンから逸れた。

そうなると一対一となるわけで、ネクサスとメフィストは互いに向き合いながら構えていた。

 

『確かに厄介な力を発現させたようだが、結果は変わらない。貴様に妹の命を奪えるか?』

『………』

『出来ないならば、大人しく世界が滅ぼされる様でも見ているといい…ハアッ!』

 

闇の球体を放ち、それらは上空で一気に拡散する---ダークレイクラスター。

降り注ぐ闇の光弾。

それらに対して赤、青、銀、金の光球を自身の周りに浮かび上がらせる。左腕を右から左へ戻しながらカード状のエネルギーを平面に次々と生み出すと右手で回収するように重ね、手裏剣を打つように素早く上空に投擲する。

さらに両腕を左右に伸ばすと周囲に展開された十字架形の光が発射されるのと同時に四つの光球からは一斉にエネルギーが吐き出され、無数の光弾を全て相殺して上空では巨大な爆発が起きていた。

 

『これ以上、妹の体を好きにはさせない。誰かを傷つけさせたりしない、手を汚させたりしない!』

『ハッ、言ったはずだ!貴様に妹は救えない!命を奪うしかないのだ!俺から分離させれば、小都音は死ぬのだからな……!』

『悲劇しか生まない結末はもう懲り懲りだ!いい加減俺の妹を、小都音を返してもらうッ!』

 

黄緑色のコアゲージから発せられた光が右手に集まり、真っ直ぐに突き出された手のひらから放たれた光のリングがメフィストを拘束する。

 

『ッ!?』

『ハァァァ……シュワッ!』

『な、何を…!?ぐっ…やめろォォオオオオ!』

 

身動きを封じられたメフィストは光のリングを外そうと体を動かすが、外されるよりも早くネクサスの全身が輝きを放つ。

全身を光が包み込み、ネクサスの体が徐々に光の粒子へ変換される。

それを見たメフィストが激しく抵抗を始めるが、光の粒子は一直線に黒く染まったメフィストの胸のランプへと入っていった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い光の奔流が凄まじい勢いで流れている。

色は濃く、どこにも光がないようにも感じられる世界。

 

(やっぱり入れた……!だったら後は小都音を……!)

 

ここは闇の巨人と言われるメフィストの体内。

まるで予想通りといった考えだが、其の実自身の肉体を光の粒子にするという、一歩間違えれば死ぬ大変危険極まりないことを行うことで侵入した。

しかもこの世界は闇そのものであり、ウルトラマンとの繋がりをほぼ絶たれ、敗北した後にいた暗黒の世界よりもさらに危険さを増している。

全身を光の膜が守るお陰で紡絆は入っても無事だが、それがなければウルトラマンと繋がっている今の紡絆ですら弾かれるか呑み込まれるだろう。

なぜなら継受紡絆という存在が適応出来るのは光であって、闇ではない。本来の暗黒適能者ではない彼にはこの世界は危険が多すぎる。

 

(勢いが強すぎる……!何処だ?みんなが力を貸してくれたんだ、絶対に見つけないと……!)

 

流れに逆らうように、泳ぐように前へと進もうとするが、体は全く進んでくれない。

それどころか光の膜が徐々に闇に染まっていく。

どこを見ても闇で、視界は殆ど見えていない。

この中からたった一人の人間を見つけるのは至難の技であり、相変わらずその瞳が金色になっていても見つけられるような特殊能力はないらしい。

掻き分けるように探すが、何処にも姿形が見当たらない。

ただ奥へ、奥へとゆっくりと進んでも、無数に広がっているのではと錯覚するほどに奥深い。

 

『---』

(……どうしたんだ、ウルトラマン?)

 

奥へ進みながら見つけられず、手を焼いていると背後からふと気配を感じて声に反応した紡絆が背後を見れば、うっすらとネクサスが現れていた。

 

『-----』

(この世界ではいくら俺や君でも見つけられない?俺たちの力は封じられる……?)

『---』

(縁があるものが必要?触媒……?でも記憶が無い俺が、そんな小都音と俺を繋ぐような思い出の品なんて持ってるわけ……)

 

ネクサスの語りかけに紡絆は考えるが、ポケットを探ろうが何も無い。

あるのはゼリーくらいで、役に立たないだろう。

なんなら全てのポケットがゼリーで埋まっていた。やっぱり役に立たない。

だが時間が無いのも確か。

光の膜は半分くらいが闇に覆われ、奥に行くたびに侵食は強まっている。

しかし傍にウルトラマンが居るから焦りはなく、紡絆は『みんな』に呼びかける。

何か、方法はないかと。

 

 

114:名無しの転生者 ID:gtNwJTmfn

いや、そう言われても記憶が無いとな…

 

 

115:名無しの転生者 ID:MFT93suhi

何かあったか?

 

 

116:名無しの転生者 ID:Ww3psOjVP

そもそもこっちも驚きの連続で頭が動かないというか……

 

 

117:名無しの転生者 ID:GXN5WhKPJ

うーん……あとちょい少し時間があれば考えが色々浮かび上がるだろうけどなあ

 

 

118:名無しの転生者 ID:SrzqTcYV+

縁があるものだろ?となると彼女がずっと持ってたものとか、写真とか……?

 

 

119:名無しの転生者 ID:xYEakwkpQ

思い出自体ではダメなんだよな?それに写真は流石にないだろ。あっても燃えてるだろうし、やっぱり物に残るものになるのか…ん?

 

 

120:名無しの転生者 ID:84r1fWtEB

待て、物?しかも妹ちゃんが持ってたやつ?思い出せ、あるじゃん!あるじゃねぇか!とっておきの!!

 

 

121:名無しの転生者 ID:hmHXZaOqY

あー!あれだ!おいバカ!あれ!えーとどこだ!確か箱に入れてたよな!?

 

 

122:名無しの転生者 ID:rb0oxMXuM

胸だ!胸ポケット探れ!!

 

 

 

 

 

「---これかっ!?」

 

ネクサスの姿が消える。

答えを導き出したように、奥へ進むのをやめて振り返り、吹き飛ばされないように背中で闇の奔流を受け止めると紡絆は慌てて胸ポケットに手を突っ込んで取り出す。

すぐに中身を取り出して箱をポケットに突っ込むと、手のひらに置いたソレを見つめる。

ソレは---ひとつのペンダント。

太陽と月が一つになった、変身する前に小都音から貰った()()()()()だ。

 

「ぐ…うっ……!?」

 

時間が無い。

光の膜が薄まり、息苦しくなる。

これが最後のチャンスだろう。

紡絆は胸もとでペンダントを握りしめ、目を閉じる。

 

(頼む……これしかない!俺を導いてくれ……!!)

 

貰った花の栞は、ウルトラマンを見つけだす際に消滅している。

だからこそ、紡絆は唯一残っていたペンダントに賭けるしかなく、ただ念じる。

小都音はあの時、ずっと渡せなかったと言っていた。

つまりそれまで彼女の()()()だったはずなのだ。これで無理ならば、もう手段はなく。

紡絆の全身が輝き、闇に呑み込まれる寸前で転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何が起きたかを確かめるべく、目を開ける。

視野が回復していく中、脳が認識するのと同時に紡絆は目を見開いた。

 

「ッ!?」

 

気がつけば勢いは消えて、光の膜は消滅している。

体が重力に引かれるように自由落下しており、紡絆は辺りを見渡していた。

景色は何も変わってなく、どこもかしこも紫色が掛かった闇の世界。

 

(ここは……上手く、いったのか…?)

 

手のひらを広げれば、ペンダントが残っている。

それでも失敗したのかもしれないし、弾き出されたのかもしれない。

姿を確認するまでは安心出来ず、ペンダントを収納すると暫くして落下していた肉体が勢いよく地面に着地する。

 

「っと……」

 

予め下を見ていたお陰で両足を曲げて着地したが、ウルトラマンを宿してなければ足は砕けていただろう。

改めて自身に宿るウルトラマンにお礼を告げながら、首を左右に動かして何も無いのを確認した後、ふと何かを感じとって振り返る。

そこには闇に囚われている小都音の姿があった。

両手首には拘束具のように闇が絡みつき、手が力無く垂れていて、それによって吊るされている影響で浮いている。

意識がないのか俯いていて、動く様子は見られなかった。

 

「小都音---ッ!?」

 

すぐに駆け寄ると、見えない壁に勢いよく弾かれる。

空中で体勢を整え、即座に取り出されたブラストショットを二発放つと壁が僅かに実体化する。

 

「見えたッ!」

 

壁に対して右肩から突進し、弾かれる。

ただの壁ではなく反射も含まれているのか突進のダメージが倍になって跳ね返ってくるが、起き上がるとまた突進し、弾かれ、突進し、弾かれ、突進しては弾かれ、時に拳や頭突きを加えるが、どの攻撃も全て反射されてしまう。

何度も転んで、吹き飛ばされて、血が額や鼻から、肩や両拳から零れていた。

果たしてそれは、何回繰り返せばそれほどの怪我を負うのか。

少なくとも数十回は超えているだろう。

 

『---』

「ダメだッ!俺がしなきゃ、意味が無い…!君の力じゃなくて、俺の力で!君の力はこの先に必要になる!だからっ!」

 

それでも金色の瞳は未だに諦めの色が見られず、血で赤く染まった拳を強く握りしめる。

ウルトラマンの力を使えば、壁を壊すのは容易い。しかし紡絆は自分の力でやることに意味があること、後々ウルトラマンの力が必要になると気づいてるからこそ、今は使えないと判断していた。少しでも可能性を高めるために、消耗は避けなければならない。

だからこそ、紡絆は駆ける。

 

「ウウウウウゥゥゥゥ!グゥアアアアアア!?」

 

()()()()()を壁に全力で叩きつけ、壁が倍にして跳ね返そうとする。

それを耐えながら拳を突き出し続け、反射に抗う。衝撃が直接跳ね返り、拳から腕へ。

鳴ってはならない音が響き渡る。

骨が砕けていくような音。

凄まじい痛みに思わず絶叫を挙げるが、その腕を光が覆っていく。

 

「さっきから俺の!俺たちの道を!家族との繋がりが!そんなちっぽけな壁で隔てると思うんじゃ---ねぇえええええええええッ!!」

 

空いている左拳に、右腕の光が伝わる。

金色のオーラを纏った紡絆が左拳を全力で叩きつけた。

それと同時に大きくヒビが入り、一気に割れるような音ともに崩壊していく。

その際に両拳に破片が突き刺さり、右腕が使い物にならなくなったかのようブラブラとして力が入らなくなるが、振り抜いた際に崩れた体勢を強引に立て直すと、気にすることなく駆け寄って見上げる。

 

「こいつが原因…!今度こそ返してもらうぞ…!」

 

右足に光が集まり、地面を蹴ると跳躍し、そのまま小都音に抱きつく。

一人の体重程度ではビクともしないのか、揺れるだけで外れない。

しかし右腕はもう使い物にならない。

ならば---

 

「ん、のぉおおおおお!!」

 

全身が光を解き放つ。

力の入らない腕を背中に回し、小都音を支えるようにしながら眩い輝きが拘束する闇を掻き消す。

拘束具としての役目を果たし、吊るしていたものが消えたのもあって落下が始まるが、流石に右腕が使い物にならないのもあって上手く着地するのは無理だと判断した紡絆が自らを下敷きにして背部を強打する。

 

「っでぇ……」

 

背中は痛かったが、目を開けて視線を下げれば、自身の上にうつ伏せに倒れる小都音の姿があって、耳を澄ませば、息も聞こえる。

それで無事に助け出せたと気づいた紡絆は安堵の息を吐いた。

 

「ん……」

 

そのタイミングで意識が戻ったのか、僅かに小都音が身動きし、ちょっとした擽ったさを感じつつも紡絆は左手で彼女の頭を撫でる。

いつもと変わらず、優しく。

そうして少し撫でれば、小都音がうっすらと目を開いた。

前見た時とは違い、瞳には何一つ汚れもなく、透き通るほどに美しき海のような爽やかな瞳。

対して青い瞳に映るのは、輝くほどに眩い光の瞳。

 

「おに…ちゃん……?」

「ああ」

「おにいちゃん……おにぃちゃんっ……!おにぃちゃんっ!!」

「いっだぁ!?」

 

後ろ首に両腕を回され、勢いよく抱きつかれた紡絆は下敷きのままなのもあって痛みに叫ぶが、小都音の啜り泣くような声に無理矢理こらえる。

 

「わた、し……私っ!お兄ちゃんに大変なことを…お兄ちゃんに酷いことしちゃった……!傷つけたくなかったのに…おにいちゃんを守りたかっただけなのに…ただずっと一緒に居られたら、それでよかったのにっ!傷つけて、酷いことばかりして、怪我させて……!自分の手でおにぃちゃんをっ……!」

「小都音……」

 

自分がやったことを覚えているのだろう。

何処か怯えるように震えてしがみついて、不思議とそんな彼女に懐かしさを覚えながら紡絆は抱きしめた。

 

「いいんだ、過ぎたことを言ったって仕方がない。元々俺はあれが最期のはずだったんだ。でもこうして生きてる。それにあれは小都音のせいでもないだろ?人の心には闇がある。それを利用されただけ。ただ闇があったとしてもさ、光だってまた必ずどこかにはあるんだ」

「………」

「少なくとも俺は気にしてないよ、まだやり直すことだって出来る。だから一緒に帰ろう。みんなが待ってるんだ、俺を。小都音のことを」

 

優しい声を掛けながら髪を撫でる紡絆は、責めるようなことは何一つ言わなかった。

それがとても彼らしいのだが、時にその優しさは、人を傷つけるものでもある。

疼くような例えようがない痛みが小都音の胸に襲いかかり、小都音は紡絆の服を強く握ると首を横に振っていた。

 

「…むりだよ」

「無理じゃない」

「むりだよ…むりなの…出来ないのッ!私はおにぃちゃんほど強くない!おにぃちゃんと違って、私にはそんな強さも輝きも……何も無い……。きっとまた私は抗えない…きっと傷つける…!誰かを傷つけて、大切なおにぃちゃんを手にかけて……!そうしていつか、いつか引き返せないことを…っ!」

 

涙を流して、強く握って、子供のように大声を挙げる。

二人しかいない世界にその声はよく届き、それを聞いた紡絆は目を伏せた。

紡絆は元凶と思われるダークザギと対峙してなお、様々な体験をさせられてもなお心の輝きを保ち続けた。

普通ならば間違いなく良くて廃人になっているほどのものを、抗い、打ち破った。

対する小都音は闇を利用され、ただ支配されるがままに動いていた。

その強さは確かに紡絆にしかないだろう。

 

「小都音、それは違うんだ」

「……え?」

 

だがひとつ、間違えていることが分かる。

それを修正するために目を開いた紡絆は小都音の頬に手を添えると小都音は愕然としていた。

 

「俺は一人じゃ無理だった。みんなが居てくれて、色んな人が力を貸してくれた。様々な人が手を貸してくれたから、俺はここまで来られた。ウルトラマンで居られたんだ。そこにはもちろん、小都音も入ってる。記憶のない俺には目覚めた時だって自分という存在すら曖昧だったけどさ…今みたいに()()()()()()があったから、俺は俺らしく、自分が望むままに生きようって思ったんだ」

 

そう、紡絆は多くの者に助けられ、ここまで来ることが出来た。辿り着くことが出来た。歴代の適能者(デュナミスト)、勇者たち、次元も時空も違う、別世界の者たち。何よりも、ウルトラマンと家族の存在。

それでも、紡絆にだってどうにもならない事態はある。そんな時、いつも彼の中にあるのは守るべき者の存在だ。

世界、家族、友人、知人、そういった彼が守りたいと願うものがあったからこそ、いつなんどきも立ち上がることが出来たのだから。

 

「大丈夫だって、お前はウルトラマンを宿す兄の妹なんだぞ?そんな妹なんてこの世界においては小都音にしかいないんだからさ!それに小都音の周りには俺や真偽や麗華さんに大勢の人もいる、勇者部のみんなだっているだろ?それでももし、不安なら。無理だってまだ言うなら---」

 

ポケットに手を突っ込んだ紡絆はペンダントを取り出す。

ここへ導いてくれたアイテムであり、かつてプレゼントとして渡されたもの。

それを手のひらを閉じることで覆い隠し、手の中で僅かに発光する。

光が晴れると、紡絆は()()()()()うちのひとつ、太陽のペンダントを小都音の首にそっと掛ける。

 

「これ……」

「きっとそれが、小都音の道標になってくれる。どうやら俺には、太陽は必要ないらしいからな」

 

本来は太陽と月、二つ一緒になっているものだが、太陽と月に分かれていた。

太陽は生命力の象徴。強い光で闇を照らす他に、そのモチーフには『力強さと成功』『魔よけ』などの意味もある。

困難に打ち勝つために、適したものだ。

 

「あとさ小都音も強いよ」

「何を言って…だって私は……」

「いや、小都音は負けなかっただろ。樹ちゃんが教えてくれた。意識が残っていたってことは諦めてなかった証だ。勝つことは出来なかった。だけど負けなかった。それなら小都音だって必ず光になれる!俺が保証してやる!」

「お兄ちゃん……」

 

いつもと同じく、普段と変わらない笑顔を紡絆は浮かべる。

それが、その在り方が小都音には眩しくて、ちょっぴり目を伏せてしまうけれど。

 

「私も……強くなれるかな。本当に…今度は、負けないくらい」

「ああ---もちろんだ!」

 

不安げに、それでも前を向いた小都音に、紡絆は迷うことなく肯定を示す。

そんな紡絆に薄らげに笑顔を作った小都音は、頬に添えられてる手に自身の手を重ねる。

 

「みんな…怒るかな?樹ちゃんにも…辛いことをさせちゃったかも。結城さんを傷つけちゃったし東郷さんや風先輩、三好さんにも酷いこと言っちゃった」

「その時は俺も一緒に謝るよ。怒られるかもしれないけど、それは怒りからじゃない。じゃなきゃ俺がここに来るための協力なんてしてくれないだろうしさ、心配かけさせたことや何も言ってくれなかったことに対して相当怒られるんじゃないか」

「だったら…お兄ちゃんはもっと怒られるね。だってこんなに無理して……こんなボロボロになってるもん」

「……うげ」

 

指摘されて、ようやく気づいたと言わんばかりに嫌そうに頬を引き攣らせるが、腕は使い物にならず、また血だらけになっているのだから間違いなく説教をされるだろう。

が、そもそもの問題として既に変身してはならないのにやった時点で手遅れだったりする。

 

「ふふ、私も叱られてあげるから大丈夫だよ、私も叱るけど」

「そうか、一人じゃない分はマシ…うん?」

 

何やら一つおかしいことを言われたような気がして首を傾げるが、その疑問を解消するよりも早く小都音が紡絆の上から退いて立ち上がると見上げていた。

遅れて紡絆は左手を着きながら立ち上がると同じく視線を移す。

見れば空間が徐々に狭まっていってるだけでなく、闇が迫っている。

 

「これは……俺の位置がバレたみたいだな。そのまま取り込む気か」

「お兄ちゃん……ごめんね。巻き込んじゃった」

「大丈夫だ、もとより巻き込まれるつもりで助けに来たからな」

「ううん、そうじゃないの。お兄ちゃんは戻れても私は戻れない。だって私はメフィストの命で生きてる。メフィストから離れたら私は---」

 

その続く一句を小都音が言い噤む。

言われなくても分かるだろう。

既に失われた命は、戻すことは出来ない。残念ながらそれは、様々な現象を引き起こせる紡絆の力でも『奇跡』を内包したウルトラマンの新しい力でも無理だ。

 

「でもいいよ。お兄ちゃんと最後に会えたから。けど樹ちゃんには約束を果たせなくてごめんねって伝えて欲しいな」

「断る。約束ってのは果たすからするんだろ。その約束は絶対に叶えさせる」

 

まるで最期の会話と言わんばかりに言伝を告げてきたが、紡絆はそれをあっさりと断ると、小都音が困惑したような悲しげな表情を浮かべた。

 

「お兄ちゃん……その気持ちは嬉しいけど、いくらお兄ちゃんでも出来ないよ。お兄ちゃんに宿るウルトラマンが本来の力を取り戻してるなら別だと思うけど……」

「心配すんなって、小都音は死なない。ただ…俺を、ウルトラマンを信じてくれるか?」

「………うん、お兄ちゃんのことはずっと信じてる。ウルトラマンのことは…今なら信じられる、かな」

「そっか、じゃあ大丈夫だ!」

 

一体何が大丈夫なのかは分からないが、不思議とそう思わせるような力がある紡絆に、小都音は呆れたようにため息を吐くと、笑う。

 

「お兄ちゃんらしいね。わかった、もう何も言わない。お兄ちゃんたちを信じる」

「ああ、一緒に帰ろう。みんな待ってるからな!」

「うん…!あっ」

 

時間も闇も迫っている。

紡絆がエボルトラスターを取り出し、いざ変身しようとしたところで小都音が声を挙げたことが気になったのか、止まる。

 

「どうした?」

「伝えなきゃいけないことがあったんだ。これだけはすぐに伝えないとって」

「伝えたいこと?」

 

どうやら思い出したから声を挙げたらしく、紡絆はなんの事か当然ながら知らないし分からないので首を傾げると、小都音が深刻な表情で口を開く。

 

「お兄ちゃん、気をつけて。アイツは……ザギはお兄ちゃんをいつも見てる。()()()()()()()()()()で、人の中に溶け込んでる。勇者もウルトラマンも、全部利用して何かを企んでる」

「最も監視しやすい場所……?まさか」

「うん、お兄ちゃんの考えてる通りだよ。わざわざ私たちに力を与えて、お兄ちゃんと戦わせてたのも…きっと意味があると思うの。もし今までのことがアイツのシナリオ通りで私たちが踊らされていただけなら、良くないことになる…そんな気がして」

「……そうか、教えてくれてありがとうな」

 

不安そうにそう語る小都音に、紡絆は何の曇りもない笑顔を浮かべながら頭を撫でると、改めて前を見据えてエボルトラスターを強く握った。

 

「……何を企んでいても、結局俺たちは守るために戦いをやめるわけにはいかないからな。だけど今考えるべきなのはそのことじゃない。明日より今日のことだ。明日を考えるには今を生きなくちゃいけない。そのためにもここから出る……行くぞ!」

 

エボルトラスターを引き抜き、闇の世界に黄金色の光が溢れる。

体長はそう変わらない等身大での変身。

黄金色のジュネッスへ直接変身したネクサスが小都音の前に出て振り向くと、向かい合う。

 

「貴方にも…ごめんなさい。本当はお兄ちゃんを助けようとしてくれてたってのは分かってるの。でも感情が抑えられなくって、自分でも分からない何かが溢れて……」

『-----』

「……そ、か。貴方は貴方でお兄ちゃんを。私たちを巻き込んだことに責任、感じてたんだ…。ありがとう、あのとき…お兄ちゃんを助けてくれて」

『---』

 

頭を下げてまで謝って、お礼を告げてくる小都音にネクサスは首を横に振ると、彼もまた頭を下げていた。

まるで、全ては自分の責任だと言わんばかりに。

 

「そうかもしれない。お兄ちゃんが貴方を助けた。でもお兄ちゃんを助けたのも、貴方なの。だから…この話は、もうおしまい!その代わり、私は貴方を…許して、信じる。もし貴方が私を許してくれるなら---」

 

一度言葉を区切った小都音は深呼吸を挟み、真っ直ぐにネクサスを見て続く言葉を述べる。

彼女が一番知る、どこまでもお人好しな目の前にいる二人のように。

手を差し伸べて。

 

「私を……助けてくれる?」

『シュアッ!』

 

力強く頷いたネクサスが、行動で示すように小都音の手をそっと掴む。

そして上を見上げて時間が無いことを悟るとネクサスは自らしゃがみ込み、両腕で相手の背中と脚を持ち上げるように抱き抱える。

いわゆるお姫様抱っこと言われる抱え方をすれば、小都音も気づいたのか抱きつくようにネクサスの肩に手をかけていた。

それで問題ないとわかったネクサスは地面を蹴り、一気に飛んでいく。

出口はなく、そこは闇しかない。

そのまま空を飛んでも意味は無いだろう。

 

『出口がないなら、作ればいい!』

 

しかしそれを、紡絆は簡単に塗り替える。

元々ネクサスにはメタフィールドという隔離する空間を作り出す能力がある。

そしてこの形態は『神樹』の力も宿す形態だ。神樹が持つ能力として挙げられるのは空間の四国結界、時間の樹海化がある。

もはやエネルギーとして向かってきた闇に対し、ネクサスは時間を固定し、メタフィールドを展開して隔離するのではなく、その逆。

メタフィールドは閉じるものだ。それを神樹の持つ空間操作能力でさらに拡張。

メタフィールドのような()()()()()()()()()

そうして開かれた光の穴へ時間すらも追い抜いて光速で入っていった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メフィストが一切動かなくなって数分。

勇者たちが吹き飛ばされる。

いくら五人揃ったところで、究極には届くはずもない。

そろそろ満開の維持も厳しくなってきたのあるが、満開時の武器がボロボロになっている。

 

「紡絆は!?」

「っ、まだ!」

 

状況を確認するように叫ぶ風に、夏凜が即座に返す。

失敗したら二度と帰って来れない、そのようなことが一瞬頭に浮かぶ。

 

「大丈夫です!紡絆くんならきっと小都音ちゃんを連れて帰ってきます!だから私たちは私たちにできることを!」

「そうね、私たちは紡絆くんたちの帰る場所を守らないと!」

 

そのような不安はすぐに掻き消され、巨大な拳と砲撃が同時に尾を弾く。

すぐに刀と大剣が振り下ろされ、すり抜ける。

不意をつくように背後からイシュムーアが現れ、振り下ろす爪を無数のワイヤーが防ぐ。

 

『必ずって言ってましたもんね……!』

「…そうね、まったく。すっかりみんな強くなっちゃって!」

「まぁこれも、アイツの影響なんでしょうね…ッ!!」

 

拳が。砲撃が。大剣が。ワイヤーが。刀が。

雷撃、溶解液、火球、光弾、毒液とぶつかりあった。

互いに弾かれ、距離が離れる。

 

「つっ……あっ。アレ!!」

「……!もしかして…!?」

 

ダメージの比率は明らかに勇者側が多いが、何とか地面に叩き落とされることはなかった友奈が顔を挙げると、さっきまで動いてなかったメフィストの胸のランプ(カラータイマー)から光の粒子が流れている。

 

「はぁ、相変わらず遅いんだから」

「まったくよ」

『でも絶対に大丈夫って思ってました』

 

それが何を意味するのか、分からない勇者たちではない。

流れる粒子の数が徐々に増えていき、一気に光が溢れ出る。

光が左手の形を形成し、その後に腕を。さらに頭部、両肩、コアゲージとエナジーコア、右腕と右手、下半身を生成するとぐんぐんと伸びていく。

 

『---シュワッ!!』

 

左手の手のひらを突き出しながら、右手の甲を下にしつつ何か持つように全ての指を曲げながら腹部に添え、メフィストの中から出てくるのと同時に巨大化したネクサスが空中で回転しながら地面に着地する。

 

「紡絆くん!」

「紡絆!」

 

両手で包み込むようにしていたネクサスがその手を地面に降ろすと、勇者たちが名を呼びながら即座に駆け寄る。

ネクサスは顔を挙げて勇者たちが近づいて来るのを見ていた。

 

「成功したの?」

「小都音は?」

『シェ』

 

失敗したのか上手くいったのか、当然結果が気になるため聞くと、ネクサスはただ頷いてそっと両手を開くと地面に優しく降ろしていた。

ネクサスが手を退けると、そこには横たわる小都音の姿がある。

 

『小都音ちゃん…!』

 

誰よりも早く傍に寄った樹が体を抱く。

しかし何の反応を示すことなく、体を抱いた樹だからこそ気づく。

 

『ハァ、ハァ…馬鹿なヤツだ。言ったはずだ…分離をすれば命は無いと…!』

 

体内に存在する小都音を無理矢理引き剥がされたようなものなので、苦しそうにメフィストが胸を抑えながら告げる。

が、その通りだった。

呼吸もしてなければ、脈も動いていない。

体温も冷たくて、完全に死体へ戻っている。

 

「っ……!」

「そんな…!」

「ダメだったってわけ……?」

「紡絆くん……」

「樹……」

 

ただ唇を噛み締めながら力強く抱きしめて、こんな時ですら声を出すことは許されない。

そんな樹の背中を風が撫でて、友奈がショックを受けて、夏凜が拳を握って、東郷は紡絆に心配するような視線を送っていた。

しかしネクサスは特に変わることなく、両腕をゆっくりと動かす。

 

『ハァァァァ……』

 

握り拳が自身へ向くように両腕をエナジーコアの前で立てると、エナジーコアが輝く。

何かをしようとしているネクサスに気がついたのか、視線が集まるが、本人は何の反応も示さず行動に移した。

 

『シェア……!』

 

そしてネクサスが樹に抱きしめられたまま動かない小都音に向かって左腕を伸ばせば、エナジーコアから緑と光の粒子が小都音に向かって放たれた。

さながらそれらは雪のように降り注ぎ、小都音の体を包み込んでいく。

光に全身を包み込まれ、一瞬だけ全身が輝くのと同時に光は晴れる---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぉ……お、おに……ちゃ、ん……」

 

弱々しく声が口から発せられ、ゆっくりと伸ばされた手を咄嗟に樹が両手で握った。

体温を感じられる。鼓動を感じられる。呼吸音も脈も、人間が必要なもの全部。

それこそ()()()()()ように。本当に、奇跡が起きたように。

 

「っ…!っ……!!」

 

ぽたぽた、と小都音の顔に雫が落ちる。

うっすらと開かれた目が、原因を捉えた。

ちょっと視線を上げれば、その先には樹の顔があって。

両目から流れている涙が、落ちてきたのだろうと。

心配させて、不安にさせて、それでも嬉しくて。だから樹は泣いている。

そんな彼女を少しでも慰めるように、小都音は震える手を樹の頬に手を添えた。

 

「ぁ…。ご……めん、ね……い、つき…ちゃん……」

「……!………!!」

 

安心させるように。

ゆっくりと笑顔を浮かべた小都音に、樹は首を横に振る。

それでも涙は止まらなくて、ゆっくりと目元の雫が小都音の指に拭われる。

 

「よかった……本当によかったわね、樹」

「ほんと…言って欲しかったくらいよ。こっちがハラハラしたんだから」

「うん…でも、良かったよ!私もなんだか涙が出ちゃいそう…!」

「ようやく、やっと……取り戻せたのね、紡絆くん」

 

全部は終わっていない。

しかしながら一件落着---そう言えるような光景に、笑顔の花が咲く。

絵になるような状態ではあるが、残念ながらそんな時間は長くは続かない。

 

「………」

「……?小都音ちゃん…?」

 

伸ばされた手は力なく落ち、小都音の目が閉じられていた。

唖然とする樹に、全員がまさかの事態を考えてしまう。

 

『心配ない。小都音はいずれ目覚める』

 

それを打ち消すように告げられた言葉に、樹は慌てて小都音の左胸に耳を当てると、心臓はちゃんと脈を打っている。

つまり眠るように意識が途切れただけだった。

 

「じゃあ、もう大丈夫ってこと?」

『………』

「ああ、そうね。確かに大丈夫じゃないか…」

「まだやるべきこと、残ってる…!」

 

風の言葉に一度ネクサスは頷き、次にメフィストたちを見る。

そう、小都音は生き返ったがここで負ければ全てが終わる。

 

「大丈夫、私たちにはウルトラマンがいる。ウルトラマンには私たちがいる。だから絶対、勝てるよね?」

『デアッ』

 

これが最後の戦い。

樹は小都音をそっと寝かせて、ネクサスは小都音を守るように光の膜を貼る。

改めて、黄金色のネクサスと満開を保つ勇者たちが出揃う。

準備は万端。

 

『バカな……ありえない。ありえるはずがない。そんな力、認められるか。奇跡だと?巫山戯るな、貴様の光は失われた筈!なかったはず!そんな力が一体何処から生まれたッ!?』

 

ゆっくりと構えを取るネクサスに対し、メフィストは展開したクローを自身の胸のランプ(カラータイマー)に添えると赤黒いエネルギーが纏われる。

 

『ハアッ!』

『ヘェアッ!』

 

まとめて消し去るようにメフィストは真っ直ぐに突き出し、メフィストクローから闇弾が何発も発射される。

その闇弾をネクサスは左腕で受け止めていた。

 

『分からないのか?だったら()()()()言ってやる!この力は決して希望を捨てず、信じてくれた皆がくれた力だ!壊すためじゃなく守るための…決して明日を諦めない人々のためにある!それに気づけないお前が---俺たちに勝てるはずがないッ!』

 

受け止めた左腕に赤黒いエネルギーが纏われ、左腕のアームドネクサスから発せられた輝きが光に変換する。

青白いエネルギーが纏われ、ネクサスはその場で回転し、遠心力を生かしながら投げつけるように()()のエネルギーを飛ばす。

直線上に飛ばされたエネルギーはメフィストへ直撃し、爆風が覆い尽くした。

その言葉の数々は、ウルトラマンの記憶を覗いた紡絆とメフィストだけは、分かっているはずだ。

 

『……笑わせるな』

『ッ…!?』

 

しかし、大ダメージにはならなかったのか、片膝を着くだけで済んだメフィストが立ち上がる。

瞬時にネクサスは警戒するが、メフィストは拳を握りしめた。

 

『人々のためだと?醜く人を貶めるしか能のない人間に価値などない!全てを壊してやる。全てを呑み込んでやる!』

 

かつて同様、道は交差はしようとも繋がることはない。

光と闇の関係でしかない両者には互いに分かり合えないとそれだけで十分だった。

 

『……シェアッ!』

 

言葉はもはや不要。

イシュムーアが殲滅力の高い火球を大量に生み出し、放たれるのとネクサスが消えるのは同じだった。

それが戦闘の合図となり、次々と落ちてくる火球を勇者はさっきまでのが嘘のように全て弾き飛ばすと、誘爆させて破壊することで一気に駆ける。

 

「もう関係ない!一気にぶちかますわよ!」

「とっとと御魂を壊して終わらせる!」

 

小都音という人質も失われ、ウルトラマンも勇者も心置きなく攻撃ができる。

そして消えたネクサスはイシュムーアの頭上へ出現し、降下キックを与えようとするが、イシュムーアは位相を移動して回避する。

 

『ハッ!』

 

位相を移動して避ける能力は強力だ。

ただし、それが新しい力を解放したネクサスというウルトラマンじゃなければ、だが。

即座に左手を翳したネクサスがイシュムーアの()()()()()()()()ことで強制的に人間世界の物理法則下に引きずり込む。

 

「紡絆くん!」

『デェアッ!』

 

強引に透明化が無効化され、姿を現したイシュムーアに巨大な拳が放たれ、同時にネクサスが蹴りを放つ。

透明化は無効化されても、相手は複数の能力を併せ持つ。

二人の攻撃は地中へ潜り込まれたことで外れ、ネクサスの背後から現れると十二本の尾が一斉に襲いかかり、砲撃とワイヤー、大剣と刀が全てを弾く。

 

『ハアッ!』

『フッ---!』

 

イシュムーアを飛び越え、クローを突き出しながら落下してくるメフィストを側転で避け、拡散するように放たれた雷撃が降り注いでくるが、ネクサスが78枚---タロットの総数と同じ紫のカードを右手を左から右に動かすことで生み出し、ばら撒くように空中に拡散させると雷撃を凌ぐ。

そこへ横に振られた刀と大剣がメフィストに襲いかかり、離れようとしたメフィストがワイヤーに封じられ、砲撃に妨害され、拳が強引に押し当てる。咄嗟にメフィストはクローで大剣と刀を受け止めたが、拳による加速により威力が上昇しているため、弾かれていた。

ネクサスが駆け、蹴りを放とうとしたところでドーム状の紫のエネルギーが空間を纏うと、勇者もネクサスも一気に体が重たくなって膝を着く。

 

「重力……ッ!」

 

相も変わらず苦戦させられる技だが、ネクサスが冷静に黄金色のフィールドをエナジーコアから展開すると、空間が相殺されたかのように破壊された。

 

「軽くなった!?」

「あれ、そっちに……?」

 

瞬時に消えるネクサスに対し、動けるようになった勇者たちが後退するが、なんとイシュムーアは上空に熱線を放った。

明らかに何も無いところで、神樹様も関係ない。

 

『!?』

 

しかしその上空には光が集まり、ネクサスが姿を形成していた。

驚いたように固まり、空中でバク転して避けるネクサスがまた姿を消すと、熱線が薙ぐように動かされる。

 

『シエッ……!』

「読まれてる……まさかもう学習してる!?」

 

咄嗟にサークルシールドで身を守るが、またしても位置がバレている。

いやバレているのではない、学んだのだ。

圧倒的な学習能力。

位置がわからないはずが、イシュムーアは予測で当てている。

次々と消えるネクサスに対し、溶解液を弾のように発射していく。

さらにメフィストは闇の球体を頭上に解き放ち、次々と光弾を降らせていた。

 

『ッ!』

 

能力が通用しないと見ると、ネクサスは360度に回る。

光刃が一気に放たれ、全ての弾を相殺すると、飛び込んできたメフィストから放たれた拳を避け、容赦なく顔面を蹴り上げながら回転すれば、無数の矢がネクサスの居た位置へ降り注ぎ、追尾していく。

空気を蹴り、加速したネクサスが両手からパーティクルフェザーを放つも矢は消しされず、両手を頭上へ翳し、真っ直ぐに突き出すと丸い月のようなものから無数の針を生み出して相殺する。

そして炎を纏う()()のエネルギーを形成したネクサスが消えるとイシュムーアの目の前に姿を現しては縦に切り裂き、回し蹴りで吹き飛ばす。

しかしイシュムーアは即座に再生し、無数に分身していた。

ここにきて最適な()()をした。

 

「なあっ!?」

「避けて!」

 

囲まれたネクサスに()()()()()火炎放射が放たれるが、ネクサスは避けるよりも先に振り向いて右手のアームドネクサスを振り下ろし、縦に裂くように放出された光が壁を形成する。

さらに左手は神樹様に向けられており、光の花弁が展開されていた。

それと同時に爆発が起き、光の壁が勇者たちを、花弁が神樹様を守る。

 

「私たちを庇って……!」

「紡絆は平気なの!?」

 

分身に併せた、幻覚と幻影によるコンボ。ただ分身といっても本体ほど強くは無い。

それでも間違いなく、全力の一撃。

火炎の威力が物語っており、爆心地を中心に舞い上がる突風が火を消し去っていく。

姿が現れると、片膝を着いたネクサスが若干よろけながら片手を着いていた。

上空に逃げたメフィストが降り立ち、ネクサスはただ顔を挙げる。

 

『どんな力を得ようが、貴様らに勝ち目はない…イシュムーアは何処までも成長する。再生する……!対抗出来るのは貴様一人だ……!』

 

それはネクサスの動きを予測したことから、考えられることだ。

しかも再生速度は異常に高く、例え今のネクサスでも難しいだろう。

あくまで対抗出来るだけで、再生能力が上回ることが出来なければ勝ち目などない。

仮に倒せる火力を所有していたところで、メフィストが間違いなく妨害するだろう。

ウルトラマンはエネルギーを放出する光線技が主な必殺技なのだから。

 

『どうかな。確かにひとりじゃ勝てないかもしれない。そんなの分かってる……でも俺は一人じゃない!』

 

一瞬のアイコンタクト。

それだけで理解出来た勇者たちが戦略もクソも捨ててただ頷く。

 

「そういうこと…一気に行くわよ!」

「攻撃は最大の防御ってわけね」

「うん、信じてる!」

「だから私たちは私たちの役目を……!」

 

イシュムーアは究極ではあるが故に『ウルトラマン』が『一人』だと勝てない。一人でなくても()()()()()()()()では勝つことは不可能。

だがイシュムーアとは、『究極』であっても『融合型』に過ぎない。

そしてまた、融合型とは怪獣と異生獣(スペースビースト)、バーテックスが合わさった存在。

究極であっても『バーテックス』でもあるのだ。

改めて立ち上がったネクサスが、両拳を強く握りしめた。

 

『見せてやる!俺たちの光の絆!』

 

そう叫ぶは否や、ネクサスが右足を一歩踏み出し、腰を入れる。

その瞬間、ネクサスのエナジーコアから発せられる()()の光と()()の光が入り交じり、力を解放した際と同じく混ざり合う。

虹色を覆う金色の輝きが全身を覆い尽くし、ネクサスが光の粒子となって消滅した。

何をするつもりかは不明だが、イシュムーアは生物としての本能か、勇者たちを排除することを選んだらしい。

囲むように幻影と分身を生み出し、全ての部位から能力を発動させ、エネルギーを溜めている。

どれも同じ行動。タイミングも一緒。

拳や銃撃、刀、大剣、ワイヤーが次々と攻撃していくが全てすり抜けていく。つまり、幻影。

さらにメフィストは上空へ移動し、両拳を交差してから広げていた。

間違いなく数秒後にはやられるような状況。

地上はほぼ全てを複数のイシュムーアと幻影が埋めつくし、空中ではメフィストが地上に向けて光線を放とうとしている。

消えたネクサスがどこへ行ったかは分からないが、仮にどちらかを吹っ飛ばしたところで間に合わない。

そしてエネルギーがチャージされ、メフィストは光線技を。イシュムーアが光球を放とうとしたところで---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『デェアァァァッ!!』

『グォオオ!?』

 

高速で向かってきた()()()()()()()になっているネクサスがメフィストを蹴り飛ばす。

速度を活かした蹴りはメフィストを容易にぶっ飛ばし、地面に叩きつける。

そこを追撃するように空間内のエネルギーを集めたネクサスはスピルレイ・ジェネレードをメフィストへ直撃させる。

しかしメフィストを攻撃したということは、イシュムーアはフリーということだ。

上空に浮きながらジュネッスになっているネクサスがイシュムーアを見下ろす。

すると既に。

グランテラの尾、左腕からゴルゴレムの口吻、右足膝のペドレオン。リングのように存在するレオの日輪から火球。左肩のリザリアスグローラー、そして口から放たれる熱線、右腕の花粉。

鼻から青色破壊光線に生み出されたヘビのような首から火炎放射、頭上に生まれる矢、小型の爆弾、反射板、放電、快音波、竜巻に放水---文字通り、攻撃として使える全ての能力が一斉に解き放たれていた。

今から向かっても遅く。

例え精霊のバリアがあろうとも、関係の無い無慈悲な一撃が勇者たちを襲う---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シュアァ!』

 

高速で地上を駆け回る()()()と光の剣が幻影と分身を()()斬り裂く。

すぐさま本体を見つけ出し、マッハムーブで勇者たちの前に立つ青いジュネッス。

ジュネッスブルーは向かってきた攻撃に対して右腕をエナジーコアに翳してアローモードを形成。

さらに左腕に空間内に漂う闇のエネルギーを集めて光に変換し、変換した力をエネルギーとして拳から解き放つナックレイ・ジェネレード。

青色破壊光線と放電を相殺すると即座に放たれる光の矢が火炎放射や熱線とぶつかり合う。

だが、残っている能力はまだまだある。

 

「他は紡絆に任せてあたしらも!」

「板は私たちが!」

「うん!」

「爆弾も忘れるんじゃないわよ!」

 

叩きつけるように向かってきた板は殴り飛ばし、斬り落とされ、撃ち抜かれる。

爆弾は纏められ、刀でまとめて破壊され---それでも足りない。

 

『ハアッ!』

 

上空から降り注ぐ()()()()()()()が矢を崩壊させていく。

さらに火球に対しても続々と降り注いでは爆発を繰り返し、やはりまだ足りない---

 

『デェアッ!』

 

放たれるネクサスハリケーンとコアインパルスが放水を撃ち抜き、竜巻を押し留める。

だが残る音波とぶつかり合い続ける熱線と火炎放射は止める術はなく、呑み込まんと---

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヘェアアアアアァッ!!』

 

黄金色の磁場が音波から守り、同時に放たれたクロスレイ・シュトロームが熱線と火炎放射を破壊し、膨大な熱量と共に世界を爆炎が覆った。

邪魔な煙を振り払うように、煙が一つに収束していく。

それはネクサスの元へ集まっていき、煙が晴れた先には---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シュア!』

 

赤い鎧に身を包む、ある英雄から光を受け継いだウルトラマンネクサス・ジュネッス。

 

『ヘヤッ!』

 

青い鎧に身を包む、青い果実から光を受け継いだウルトラマンネクサス・ジュネッスブルー。

 

『フッ---!』

 

ネクサスとどこか違い、全身が凸凹しつつも鎧を被せたような外見に筋繊維状のように関節部は赤く。また後頭部の襟足に突起物があり、全身に血流をイメージした赤いラインが入っている。腕には鋭い武器のような刃が出現し、背中や脹脛ヒレが存在する銀色のボディを持つ誰も見た事のない---ウルトラマン・ザ・ネクスト・ジュネッス

 

『デェア……』

 

そして、金の体色を持つ計九色のカラーで構成された黄金色のジュネッス。

()()()()()()()()()が勇者たちを守るように油断なくファイティングポーズを取っていた。

 

「……ん?」

「……え?」

「……えっ!?」

「はえ……?えっ、ええええぇええええ!?」

 

そして当然ながら、衝撃的すぎる目の前の出来事に思考が停止し、全員が驚愕に彩られていた。

思わず叫んでしまうのも無理はなく、二度見する者もいれば夢かと錯覚して目を擦るものもいる。疲れてるのかと目を抑えるものもいて、目を瞬きさせる者も。

 

「つ、つつ……紡絆くんが!紡絆くんが!紡絆くんが増えてるーっ!?」

「え、ちょ…うそ、えっなにこれ、どゆこと?どういうこと!?」

「あれ、本人?ウルトラマンってこんなことも出来んの!?てか見たことないやつあるんだけど!?」

「!……!?」

「どうしてかしら……なんだか、あの姿を見てると不思議な気持ちになる……。紡絆くん、なのよね?」

 

それぞれ違う反応を示す勇者たち---まあ樹は喋れないので口をパクパクさせてただけなのだが、確認するように聞く東郷に四人のウルトラマンが同時に動くと、一斉に頷いた。

---どういう原理なのだろうか。時間操作したり空間の穴をこじ開けたり、物理法則下に引きずり込んだり、超能力を駆使したり。ただでさえむちゃくちゃなのに今度は増えた。

 

『奇跡と---』

『絆と---』

『光』

『これが俺たちの本当の力だ!』

 

流石に予想外だったのか、それとも自身の全てを防がれたからか、究極の名を持つイシュムーアが完全に固まっていた。

いや、全ての力を行使した結果、その分消耗しているのもあるのだろう。

 

『言ったはずだ。俺たちは一人じゃない。ウルトラマンは俺一人じゃない!』

 

奇跡。それは神樹の力。

絆。それはウルトラマンの力。

光。それは可能性の力。

これこそ、紡絆が発現させた力の、真の力。

絶望に抗う、奇跡の形態。

 

『これが、絆の力だと……奇跡だというのか……!?ならば全部だ!そんなくだらないものなど消し去ってやる!貴様の全部を寄越せ、イシュムーア!』

『ヘエッ!?』

「何をする気!?」

「まだなにか来るってこと!?」

「止めなきゃ……!」

「私と紡絆くんで!」

 

ふらつくメフィストはしがみつくようにイシュムーアを掴むと、応えるように雄叫びを挙げる。

咄嗟に四人のウルトラマンが駆け出し、遠距離から放てる東郷が貯めることなく連射する。

しかし辿り着くよりも早く、メフィストの肉体が膨大な闇に覆われ、凄まじいエネルギーを発した。

 

『『『『ッ!?』』』』

 

向かっていた四人のウルトラマンたちがエネルギーに耐えようとするが、近くまで寄っていたのもあって、あっさりと衝撃波によって吹き飛ばされ、背中から倒れる。

さらに。そのエネルギーはウルトラマンより後ろにいた勇者たちにすら降りかかり、彼女たちは何とか耐えるだけで精一杯だったが、バリアが発動している。

つまり、()()()()()致死量ダメージを超える威力だ。

 

『ふ……フハハハ。究極を超える---貴様らもこの世界も!全部!この次元そのもの消し去ってくれる……!』

 

闇に包まれたイシュムーアとメフィストだったが、闇の中から声が聞こえる。

ゆっくりと、少しずつと闇が晴れていく。

 

「っ…何よ、何なの…あの大きさ!?反則でしょ……!」

「メフィストでもバーテックスでもスペースビーストでもなく…まだ成長するってわけ!?」

「と、とにかく大きい……!」

「一体、何が……起きたの…!?」

 

四人のウルトラマンが起き上がる。

特にダメージはなかったようで衝撃にやられただけらしい。

だが彼らは驚いたように固まって()()()()いた。

勇者たちとウルトラマンが遥か先に見た存在。

それは。

 

『---』

『似た存在を知っている?っ、みんな気をつけろ!』

 

イシュムーアとメフィストが融合。

いやメフィストが自ら()()()()()異形の姿。

紡絆に宿るウルトラマンが『似た存在』を知っていたが、それらとは違う。

それはどちらかと言えば。

 

 

150:名無しの転生者 ID:ngEn5O6of

ネオカオスダークネスIIみたいなことになってやがる!?

 

 

151:名無しの転生者 ID:DImfus0Cc

まさかメフィストと究極融合型昇華獣がひとつになったのか!?

 

 

 

 

 

イズマエルの胸部分がズレ、メフィストの顔面がそのまま付いている。

全体的に体も大きくなり、その身長は50mを持つネクサスを軽く超え、100m、200m、300mはあることは目測で分かる。

イシュムーアともメフィストとも言える異形の存在---究極融合型昇華獣と闇の巨人がひとつになった、安直にイシュフィス・ダークネスとも呼ぶべき存在が闇の光弾を一気に降らせる。

その数、数千を遥かに超える。

 

『シェアッ!』

 

咄嗟に巨大なサークルシールドを三人のネクサスが前に出て展開する。

守られているとはいえ、勇者システムを持たない小都音をネクストが体で覆うことで守り、砕けるギリギリのところでバリヤーが全ての光弾を防ぎ切る。

が、逆を言えば三人で守って壊されかけている。しかも、明らかに牽制技でしかない光弾で。

 

『デェアッ!』

『ハアッ!』

 

ジュネッスがアームドネクサスを輝かせ、ジュネッスブルーがシュトロームソードを構えながら空中を駆けて斬り掛かる。

金属を叩いたような音がなり、弾かれるジュネッスとジュネッスブルーに対し、ノスフェルの爪が叩きつけられた。

 

『ンンンン---シュアァァァァ!!』

 

半分くらいまで飛んだ黄金色のネクサスが両手を胸の前で揃え、右手を肩の高さまで掲げると150mはあるであろう歯車状の巨大なプラズマ光輪を生み出し、体勢を崩しつつも打つ。

それはイシュムーアですら警戒したものであり、より強くなっている。

それだけでは無い。150m、ネクサスを遥かに超える光輪は次々と分裂し、ネクサスを構成する九つの色と同じ量が一斉に襲いかかる。

それすら、闇のエネルギーを纏った爪が光輪をたったの一度、()()()()で全て破壊し、溜めもなく全部位から放たれた光線が黄金色のネクサスへ直撃する。

避ける暇もなく直撃したネクサスが、弾丸のように飛ばされた。

 

「紡絆をあんなにあっさり!?」

「技が通用しないなんて…!」

「なにより巨体なのに速いわ!」

「と、とにかく今は避けて---!?」

『ハッ!』

 

瞬時に駆け出したネクストが反応が遅れた勇者たちを守るべく高速で放たれる火球を腕に備わるストラトスエッジで弾き、反撃の一撃を放つべく腕を振りあげようとするが、熱線が既に迫っていた。

 

『グッ……ガッ!?』

 

避ける訳にはいかないネクストが右腕を使って受け止めるが、元々強かったイシュムーアにメフィストの力も加わっているようで、抑えきれず両腕で防ぎ、押されつつもその場で熱線を掻き消す。

それでもダメージにはなっていたのか、右腕を抑えている。

 

『シュア……!?』

 

そして今度は、イシュフィスから熱量を感じるとまたしても姿が変化していく。

イシュムーアとしての体が溶けていき、その体が球体へ変わる。

超高温・超高圧の火の玉---それは太陽を思わせる。

言葉通り、全てを終わらせるために燃やし尽くす気なのだろう。

しかしそれをするには邪魔がいる。

排除するために、極太のレーザーがネクストに向かって発射される。

 

『デェ---ッ!』

 

すぐさま両腕のエネルギーを貯めるが、発射されてからでは間に合うはずもなく。

極太のレーザーはネクストの腹部へ直撃し、レーザーと共にネクストがその場から強制的に離脱させられる---守る者が、完全に勇者の元から離された。

 

「紡絆!?」

「紡絆くん!」

「このままじゃやばい!」

「神樹様を護らないと!」

「ッ……!」

 

咄嗟に全員が振り向いた先には、ネクストは木に叩きつけられて倒れていたが、片手を着きながら起き上がろうとしている。

しかしあくまで邪魔者を消し去っただけで、本来の狙いが別だと気づいた夏凜と東郷は同時に飛び出すと、他の皆も同じく飛び出す---()()()()だった。

元々時間稼ぎでダメージは受けていた。

限界を迎えた満開は消失し---

 

「「「「満開ッ!」」」」

 

五人の勇者が巨大な花々を咲かせながら太陽のような火の玉を受け止めた。

世界を燃やし、熱気を放ち、全部を燃やし尽くした最後の一撃。

その破壊力はとんでもなく。

 

「と、止まらない!?」

「でも、絶対に押し返さないと……!」

「この……諦めてなるもんか!勇者部をなめるなああああああ!」

「よく言ったわ!恐らくこれが最後!全部出し切る!気合い入れるわよ!勇者部---」

『ファイトォオオオオオオ!!』

 

ここが正念場。

友奈も東郷も風も樹も夏凜も、誰もが諦めることなく力強く叫ぶ。声が出せない樹も、全力以上に力を出す。

諦めない強い想いに神樹様が応えてくれたのか、それとも人間の底力が限界を超えさせたのか。

五人の力が増し、溢れた勇者としての力が大きな六つの花弁を持つ光の花を作り出して空に咲き誇る。

その力を持ってしても、太陽は止まらない。止まるはずもない。

例え勇者の力だろうと神ごと呑み込まんと押し出していく。速度は遅くはなった。けど、止められない---黄金色の巨大な花弁が重なる。

 

『そうだ、いつだって変わらない』

『どんな時も、協力してきた!』

『人とウルトラマンが手を取り合う……そうして幾度も!』

『絶望を打ち砕いてきたんだ!』

 

速度が停止し、黄金色の花弁にヒビが入っていく。

停めることには成功したが、結局はいずれ壊れて動き始める。

それよりも早く、ネクストが、ジュネッスが、ジュネッスブルーが、黄金色のネクサスが四角形に囲むように降り立つ。

ネクストは両拳を力強く握りしめつつ両腕をエナジーコアの側まで挙げ、雷の如き光の稲妻を行き来させながら両腕を少しずつ近づけていく。

そしてバックスラッシュを切るように動かし、右腕を斜め上に、左腕を斜め下に持っていくと同時にエナジーコアが輝いていた。

ジュネッスは両腕を下方で交差し、胸の前にまで高く上げる。

エナジーコアの部分の傍に両腕が来たときにはゆっくりと両腕を左右に広げていき、両腕に稲妻の如き青白いエネルギーを纏われる。

そのエネルギーはネクサスの両腕を行き来しており、ネクサスはそれを纏ったまま両腕をV字型に高く伸ばし、稲妻ではなく、光のエネルギーを両腕に纏う。

ジュネッスブルーは右手のアローアームドネクサスを光り輝くコアゲージへと翳すと、エナジーコアの形をした光が一瞬現れ、光が収束することでアローアームドネクサスはエナジーコアを投影する。

するとアローアームドネクサスは光の弓を形成し、アローモードと呼ばれる形へと変化する。

ネクサスは光の弓を引き絞り、それと同時に光の弓から剣が伸びることでファイナルモードを形成すると限界まで弓を引き絞る。

虹色の光が、そのエネルギー密度を示すようにかかる。

最後に、黄金色のネクサスが両腕をY字を描くように伸ばせば、左手に備わる黄緑色のパーツからは虹色の。右手のアームドネクサスからは黄金色の光が溢れ、エナジーコアが眩い輝きを解き放つ。

エネルギーを凝縮するように伸ばした手を胸元まで戻し、エナジーコアの前で両腕を広げながら立てると黄金色に混じる虹色のエネルギーを纏う。

右腕は立てたまま弓を射るように左腕を動かし、バックスラッシュを切るように動かしながら両手を広げて右腕を斜め上に左腕を斜め下に向ける。

 

『ハアッ!』

『デェアアアッ!!』

『ヘェアアァッ!』

『シェアアアアアッ!』

 

ネクストは両腕を回すように十字に手を組み、同時に力強く足を一歩踏み出すことで放つ最強光線---エボルレイ・シュトローム。

ジュネッスはL字型に腕を組むことで膨大なエネルギーを発射する最強の必殺光線---オーバーレイ・シュトローム。

ジュネッスブルーは弓を射ることで放つ最強の必殺技。不死鳥を思わせる光矢---オーバーアローレイ・シュトローム。

黄金色のネクサスは両腕を大きく回すと頭上で交差し、右足を一歩強く踏み出しながら十字に手を組む、虹と金色の光線---ウルティメイトレイ・シュトローム。

それぞれが持ちうる、四つの最強技が()()()()()()太陽へ直撃した。

再生する太陽。削る光線。

徐々に赤から青白く染まっていく太陽は、分解に抗っている。

勇者が負けるか、ウルトラマンが負けるか、それとも闇が負けるか。

勝敗の分からなくなった戦いは、ひとつ崩れると変わる---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ……!」

「ッ!?」

 

太陽が急激に重たくなった。

体に力が入らなくなったように、花びらが散る。

一人落ちていく。

それは、いつも明るく居て、励まして、勇ましい精神を持つ---

 

「友奈!?」

「友奈ちゃん!」

 

友奈だった。

彼女はこの中で、一番ダメージを受けている。

ウルトラマンに光を届けた際、イシュムーアの一撃を防御することすら出来ずにまともに受け、一度勇者の力が解除されるほどだった。

そのダメージは計り知れず、力を振り絞って無理をした結果だ。体が限界を知らせるように、勇者システムが解除される。

一人崩れれば、拮抗していたものは一気に---

 

『ハアアアアッ!!』

 

崩れるよりも先に。

黄金色のネクサスが十字からL字型に組むことで、凄まじいエネルギーの奔流が太陽を一気に青白く染めていく。

一人の分を、二人分の役目を。それ以上を果たす。

そのお陰で動かなくなった太陽だが、ネクサスは信じている。

人の可能性を。

紡絆は信じている。

ずっと近くにいた、弱くも強い少女を。

 

「はあ……はあっ……つ、むぎくん……みんな……!」

 

散華。

動かなくなった体を、必死に動かす。

両脚を捧げ、動かない。

動く部位を使って、手を使って、強引に動かす。

それでも動かなくて、力が無くて。

顔を挙げた友奈が見たのは、気力を振り絞って耐える勇者たちと、光線と光矢を継続させる三人のウルトラマン。

何より---こちらを信じて見つめてきた、黄金色のネクサス。

 

「ッ!」

 

伝わってくる、その想い。

もう無理だ、もう力はない。もう、動けない。そんな考えが一気に吹き飛ぶ。

そう、信じているのだ。

みんな。

そして頼ってくれている、いつも誰よりも前に立つ、友奈が()()()者が。()()()()()()()()()が。

なら立ち上がらなければならない。

気力も力も、ないけれど。

信じるその力が---勇気に変わる。

 

「うおおおぉぉおおおぉおおおおおおお!!!」

 

友奈の叫ぶに応えるかのように、樹海や精霊から光が集っていく。

そうして再度現れる巨大な腕で地面を叩き付けるよう飛び上がり、遅れて羽衣が身に纏われると、拳を振り抜いた。

 

「私は…!!! 讃州中学勇者部!!!」

「友奈ァ!」

「……!!」

「友奈ぁああ!!!」

「友奈ちゃん!!!」

 

みんなが名前を呼ぶ。

それを見た黄金色のネクサスが太陽が青白く染まりきったのを確認した後に瞬時に消え、その身を光に変換すると友奈の拳へ光が集っていく。

 

『---友奈』

「---!結城友奈!!」

 

それだけで十分だった。

()()()()()()()()()()()()を叩きつけ、太陽の中へと侵入していく。

バリアも防具も全部貫通するような熱気。それをウルトラマンが防具としての役割を果たし、炎を打ち払いながら勇者は進む。

巨人が守り、勇者が進む。

僅かなやり取りで決められた役割。

溶けていく。

巨人を宿す巨腕が溶け、光は服へ移動する。

しかし焦りが生まれる。

その焦りを、宿る光が落ち着かせる。

満開の服装が溶け、勇者の服へ---。

火の玉の奥に、闇の御魂が見えた。

 

「紡絆くん---」

 

勇者服が、変身が解ける。

光の膜として存在する巨人が、直接ダメージを受け止める。その頃には火の玉の中を更に進み、二人は自分達と御霊しか存在しない白い空間へと来ていた。

手を必死に伸ばす。

もう少し、あと少しと。

最後の力を、振り絞れ。

 

「届けええええええええええええっっ!!!!」

 

伸ばされた手。

光が闇を溶かし。抵抗するために能力を発動させようとする御魂を抑え込む。

そうして伸ばされた手が、友奈の手が御魂に触れ、勇者達も、樹海も、神樹も、ウルトラマンですら。

何もかもを真っ白な光が飲み込んでいった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人のウルトラマンが太陽を上空へ運び、役目を終えたように消滅する。

同時に真っ白な光が世界を照らし、終焉の地は樹海へ。

勇者たちは円を描くように倒れていて、精霊たちが覗き込むように見て、消えていなくなる。

そして労るかのように、空から花弁がひらひらと舞い落ちて、勇者たちの体に降り掛かっていた。

さらに黄金色の球体がゆっくりと降下し、地面に降り立つのと同時に友奈が東郷と風の間に倒れており、光が晴れると無傷の黄金色のネクサスが勇者たちを見下ろすように佇んでいる。

 

「……終わっ、たの……?」

「………?」

 

力を使い果たして、全部を振り絞った。

もう動く力はなく、みんなボロボロだ。

それでも実感が湧かなくて、風の呟きに誰も答えられない。

ただ一人、まだ動けるネクサスだけは変身を解いてなかった。

そのことに疑問を感じるが、ネクサスは空を見上げている。

少しして、再び見下ろすように視線が注がれた。

 

『……風先輩、勇者部を作ってくれてありがとうございました。お陰でかけがえのない、大切な思い出を作ることが出来た。いつも引っ張ってくれて、迷惑ばかりかけたかもしれないけど、楽しかったです』

「…紡絆?あんた、急に何を……」

 

始まりは彼女だった。

風が勇者部を作って、紡絆たちを誘わなければ友奈や東郷とは一緒に居ただろうが、風や樹、夏凜とすれ違うようなことはあっても親しくなることはなかったかもしれない。出会いをくれたことへの感謝。

 

突拍子もないことをするのは普段と変わらないが、何処か雰囲気が違って、その言葉が呑み込めない。

分かったのは横に視線を動かし、今度は樹を見たということ。

 

『樹ちゃん。妹の友達になってくれてありがとう。小都音が目覚めたら、また一緒に話したり遊んでやってくれ。身勝手なお願いだけど、小都音のことを頼む。それと夢が叶うこと、応援してる。樹ちゃんなら必ず叶うよ。なんだって君の中には強い勇気が誰かを思いやる優しさがあるんだから』

紡絆先輩……?

 

声は出なくても、樹は困惑したように名前を呼んでいた。

紡絆は知っている。樹が初めてのお役目のとき、誰よりも早く姉の風についていく決断をした強さと自身の身体機能が治らないと知らされても姉の風を心配する優しさを。

 

『夏凜。出会いはちょっと変だったけど、俺は会えてよかったって思ってる。もう必要ないと思うけどさ、夏凜の居場所は勇者部にある。だからこれからも勇者部の仲間として、みんなを支えてくれ。夏凜がどれだけ頼りになるか、俺は知ってる。今回も、今までも。夏凜が居なかったら俺はここまで来れなかった』

「紡絆…?な、何よ、唐突に---」

 

今度は、夏凜だった。

出会いとしては紡絆が死にかけて、それを偶然助けたのが夏凜だった。

それから紡絆に翻弄されっぱなしだったが、夏凜が居なければ紡絆は何度か死んでいただろう。

冷静に戦況を見極める目。彼女が培ってきたセンスは彼らを何度も助けてきた。

 

「東郷。これからはもう一人じゃないんだ。みんながいる。やったことは簡単に許されるようなことじゃないかもしれないけれど、東郷は十分役割を果たした。それと……悪い、最後の最後で、約束を果たせそうにない。それでも俺は、今日のことを。東郷のことを忘れない。だから友奈を、俺の分まで頼んだ」

「え……?紡絆くん…?それはどういう---」

 

東郷にも言葉を贈る。

東郷のやったことは結果的に間違いではあったが、みんなを救いたいという心があったのも確か。

ただそれでも、彼女の戦いにおける分析能力は強力な力となっていた。

常に後ろに彼女がいるという安心は、みんなにも何らかの影響を与えていただろう。

 

『友奈。俺の願いを叶えてくれてありがとう。頼んでよかった、お陰で俺は、みんなを救う力を発現させることが出来た。想いは、みんなの声はちゃんと俺の中に届いていたよ。友奈の誰かのために立ち上がれる力は、俺にも力を授けてくれた……友奈ならきっと、()()()

 

最後に、意識がないのか身動きの取らない友奈に言葉を投げかける。

いつだってそうだ。彼女はみんなに力を与えた。諦めない強さは、紡絆も励まされたのかもしれない。

紡絆同様、彼女も勇者部にとって光だったのだろう。

それでも彼女自身はただの女の子。弱い部分は確かにあって、それでも誰かのために勇気を振り絞れる少女。

紡絆はそれをよく知っている。だから()()()()()のことを思うと、少し申し訳なかった。

それだけを告げたネクサスが振り向きざまに、上空を再び見る。

その姿は、紡絆のその言葉はまるで、もう会えないような。

今生の別れのようで---

 

『シュワッ!』

 

そうして、ネクサスが飛んだ。

両手を広げて、空を。

皆に背を向けて、振り向くことは二度となく。

 

「紡絆……!」

「紡絆!」

紡絆先輩……!

「紡絆くん!まっ---」

 

必死に動かそうとする。

友奈を除いて、意識のある全員が取り返しのつかないことが起きるような、今動かなければ後悔するような予感を感じて、起き上がろうとする。

しかし疲弊し、限界を迎えている肉体は動いてくれない。

どれだけ動くように言っても、叫んでも、体は動いてくれなかった。悲痛な声が響いて、涙が溢れて。

遠ざかっていく。

いつも前へ進み続ける少年は、誰よりも高く。誰よりも速く。誰よりも遠くに遠くに。いつだって止まらなかった彼は、こういう時でも止まってくれない。

ひたすら前進して、星の先へ。未来へ進んでいく。

遥か先、未だに消えない太陽のような玉。

金色の光の領域が広がり、外側に次々と色とりどりの色が発生していく。

金、銀、紫、青、黒、空色、黄緑、赤、桜色---それらはネクサスが太陽の中へ侵入した瞬間に太陽を包み込む。

神樹様が四国全域を守るために貼った四国結界。世界を隔離するメタフィールド---それの応用技。

灼熱の世界をただ進み続けるネクサス。

 

(---ごめん、ウルトラマン。本当は君だけでも助けたかった。それでも俺のワガママに付き合わせて)

『---気にする事はない。紡絆、共に行こう』

(……ありがとう。行こう!全て、終わらせる!!)

 

進み続けたネクサスの目は、中心部で闇のエネルギーを放出し、太陽を黒く染めて圧縮しているメフィストの姿があった。

そう、それが紡絆が変身を解いてなかった理由だ。

あの時倒されたのは、究極融合型昇華獣のイシュムーアのみであり、メフィストはイシュムーアの力すら奪って練り上げていた。

両手に集めるエネルギー量は、もはや計り知れない。

いくらネクサスが破壊したとして、それは地球どころか宇宙すら影響が出るだろう。仮にエネルギーが溜まりきったとすれば、それはこの次元すら消滅するかもしれない。

それもそのはずで、メフィストは自分ごと全て終わらせようとしているのだから。

故にネクサスが結界を貼った。メタフィールドと四国結界の合わせ技はこの奇跡の形態でしか為せない。

黒炎がネクサスの身を焦がしながら、飛行するネクサスは右拳を握りしめる。

エナジーコアから発せられた黄金色の光が集まり、虹色の輝きをその拳に宿すと、右腕を振り絞り---

 

『デェアァッ!』

『!?』

 

()()()()目掛けて虹色の拳を突き出した。

虹色の拳は黒い太陽を貫くとエネルギーが膨張していき、膨張したエネルギーが破裂する。

虹色の光が世界を染め、メフィストとネクサスは至近距離で膨張した際に起きる大規模な爆発を受け、その身が消えていく。

空間内で眩い青白い光が全てを覆い尽くす中、外ではネクサスの手によって貼られた世界を隔離する結界が世界の隔たりを貫き、次々と崩壊していく。

一枚、一枚と割れていき、最後の一枚である桜色の結界にヒビが入り、ガラスのように割れるのと同時に樹海が解けていく。

神樹様の采配のお陰か、勇者たちが現実世界へ帰還して行く中で彼女たちが最後に見えたのは、ウルトラマンでも継受紡絆の姿でもなく---世界を巻き込むほどの爆発力を見せる光景だった。

その爆発力はさながら---超新星爆発(スーパーノヴァ)に匹敵していた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

982: 光の継承者 ID:NEXUS_h16

これしか、手段はなかった。

自分の世界の事じゃないのにさ、俺やみんなの心配をしてくれて、知恵を貸してくれて、何かあったとき。

一緒に考えて提案をくれて、嬉しかった。楽しい日々をくれて、俺の知らない世界を知れて楽しかった。ワイワイ騒いで、ふざけあって、なんだかんだ幸せだった。

みんなが居てくれたから、俺はスペースビーストや融合型、ネオ融合型や闇の巨人たちと。究極融合型昇華獣を倒せた。

何より、救えなかった母さんと違って……今度はちゃんと、妹を救えた。守れた

 

 

983:名無しの転生者 ID:7kYtQ0RF+

イッチ……?

 

 

984:名無しの転生者 ID:rRZYfXrhy

どうしたんだよ、急に

 

 

985:名無しの転生者 ID:aAVD74Hpk

ふざけんじゃねぇよ、結局俺らもお前に助けられてんだよ

 

 

986:名無しの転生者 ID:f6APTRb3d

ああ、確かに俺らは関係ねぇよ。でも同じ転生者っていう仲間だ。本当にやばいときは協力し合うってのは暗黙のルールだからな

 

 

987:名無しの転生者 ID:OSIVcR9jY

そうだぞ。イッチたちの世界も見ていて楽しかったしな

 

 

988:名無しの転生者 ID:sGIFACjCx

まぁ絶望しかなかったけど。それでもお前や勇者たちが居れば、もしかしたらって思えた。

なんというか、こっちまで勇気が貰えたんだよな

 

 

989:名無しの転生者 ID:J3dVlfCR3

俺の世界も割と詰んでるんだけど、まだまだ諦めれないなって思ったよ……

 

 

990:名無しの転生者 ID:DfugalMvc

次元を超えてまで影響を与えたんだ。誇っていいんだぞ、イッチ

 

 

991:名無しの転生者 ID:0ppdsgQlu

応援しか出来なかったけど、それでも力になれたならよかったと思う

 

 

992:名無しの転生者 ID:Un9347b2u

そうそう、だからさ、その……お前さ…そんな言い方やめろよ……らしくないぞ……

 

 

993:名無しの転生者 ID:V59HXwnkS

まるでこれが最期みたいじゃん…違うだろ、ありがとうでいいんだよ。それだけで、それだけで十分なんだ。

あとはいつもみたいにバカやって、いつもみたいに笑ってりゃいいんだよ。まだまだ、終わらないだろ?

 

 

994:名無しの転生者 ID:OZzS93e0l

お前にはまだやり残したことあるだろ?約束忘れんなよ、妹ちゃんはどうするんだよ。みんなはどうするんだよ……!

生きろよ、絶対に死ぬなよ!

 

 

995:光の継承者 ID:NEXUS_h16

……ごめん。次にこの世界に誰かがやってきたら、教えてやってくれ。きっと光も、意志も継がれるはずだ。

だから最後まで諦めるなってさ。

俺から言えることはないけど、闇に囚われなかったのはお前たちのお陰なんだ。その応援だって、俺に力をくれた。

みんなも自分たちの世界で頑張ってくれ。きっと乗り越えられる、どんな壁だって。世界は違えど、最後まで見届けてくれて、共に戦ってくれた!

みんなも勇者だ!

だから、ありがとう---いや、ありがとうございました!

 

 

996:名無しの転生者 ID:/cCIVJQqz

おい、何勝手に自己完結してんだよ!?

こっちとらまだ言い足りねえことあんだぞ!?

 

 

997:名無しの転生者 ID:2DFDDNKwR

散々情報渋ってさ!誤解させてさ!どんだけ振り回されたと!?文句の一つや二つじゃ言い足りねぇよ、戻ってこい!

次は絶対に罵倒で埋めつくして寝かせねぇぞ!

 

 

998:名無しの転生者 ID:iasuvMOsy

最後の最後まで人の心配ばかりして、人のことばかり!他人ばっかり……!

お前に言われなくたって、お前の勇姿を見てきたものは分かってる!

いい加減にしろ!お前が生きなきゃ---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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余談:ここでEDのAurora Daysにて紡絆くんが少しずつ薄らぎ、サビで消滅(一番後ろを歩く→みんなを見守るという理由だけではなく、居なくなっても誰も気づかない)
性格上中心の筈が、撮る写真が真ん中ではなく端が多い→消えても違和感が少ない


活動報告→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=302751&uid=271214
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