【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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ちょっと脳が侵略されてたので遅れました。理由知りたい人は明日分かるよ、作者のページにでも飛んでくれれば。
んなことより次回から原作キャラ出てきます。こっちはなんか(この話までの)ヒロインちゃんとイチャイチャしてるだけ。
実際読者様がどう思ってるか聞きたいところですけどね、作者は割と愛着持ってます




「養子」

 

◆◆◆

 

 第 6 話 

 

養子

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

紡絆が目覚めて一週間後。

動くことを禁止された紡絆は、暇なので歩いて中庭へ向かっていた。

下手くそな隠れ方をしているが、奇跡的にも見つかっていない。

 

(なんだろう…以前と違って遠くまで聴こえる気がする。それに視野も広いような……()()()よりかは聴こえないし見えないけど…)

 

怪獣と巨人が居た場所で誰かを助けようとしていた時はもっと見えていたし聴こえていた。

それは瞳が金色になっていた時のことだろう。

今はそれよりも効果は低いが、ある程度の範囲まで広がっている。

向こうが限定的であるならば、此方は常時か。

 

(お陰で抜けだせる)

 

バレたら叱られるし小都音になんて特にバレる訳にはいかない。

二年眠っている間に何があったかは分からないが、怒った小都音には逆らえないような何かがあった。

それでも、動けなかった数日間紡絆は落ち着かなかったのだ。

そのためこうして中庭へ向かって、辿り着いた。

花に木など自然色のものが埋められ、何処にもあるような中庭。

憩いの場としても仕事しているのか椅子やベンチ、テーブルなどあって中庭でご飯を食べる者もいる。

目を閉じると、ちょっと暑い風が頬を撫でる。

 

(うん、暑い)

 

夏だから当然といえば当然なのだが、普通に汗をかく。

日差しは強めで、夏だと知らせるようにセミの鳴き声が僅かに聴こえる。

特別ここへ何かをしに来たわけではなく、病院内を歩くよりも見つかる可能性は低いだろうと珍しく頭を使ってきただけ。

 

(そういえば……今日は聴こえないな)

 

時折、知らない誰かの声が聴こえる。

名前も姿も知らないけど、話せるなら友達になりたいと紡絆は思っていた。

 

(やることないなぁ…)

 

元々遊ぶにせよ何かやるにせよ、家ではなく外ばかりにいるアウトドアなのが紡絆だ。

ゲームもやれないことはないが、さほどやらない。

しかも制限されている。歩いてる時点で手遅れだが、走ったり跳んだり激しい運動は流石にまずいだろう。

せめて話し相手が居たら別なのだが---

 

「つ、つむ…つむぎ、くん…」

「ん?」

 

そう思っていたところで、タイミングよく声を掛けられた。

自身の名前を知ってることから、知り合いなのは間違いない。それに裾を掴まれてる感覚もある。無論例え誰であろうと無碍にはしないが、今のタイミングは嬉しかった。

ただ声だけじゃ分からないため、紡絆は振り向く。

 

「……お」

「や、やっと…みつ、けた」

 

二年間眠っていた---感覚はぶっちゃけ紡絆にはないが、前提に考えるなら懐かしい姿だ。

やはり記憶の中にある人物とは異なるが、茶髪で前髪が長くて目が隠れている。

両肩で息をしてることから、若干疲労してるのが見て取れる。

 

「久しぶり、里香ちゃん」

「う、うん…って、そうじゃ、なくて…!どうして、ここに…?」

 

紡絆の記憶にもよく残っている人物であり、よく話したり遊んだりしていた。

言うならば彼と彼女の関係は幼馴染に近いだろう。

 

「あ、えーと暇で…ここならバレないかもしれないし、困ってる人が居たら手伝えるかなと…」

「……!そ、それでも抜け出しちゃ…めっ」

「あはは」

 

可愛らしく叱られてしまったが、とりあえず笑っとけの精神でどうにか誤魔化そうとする。

そんな紡絆に諦めたのか息を吐くとなにかに気づく。

 

「そ、そうだ…小都音ちゃんは…?」

 

里香はきょろきょろと見渡して、何処にも居ないことを認識する。

昔の話だが、彼女はいつも紡絆の傍に居た。

近くに居ないことが珍しいほどだ。

 

「本当は急ぎたいけど遅れてくるって言ってた。俺は別にいいって言ったんだけどね。それ言ったら絶対行くから動かないでって言われたよ」

「…さっそく守ってないんだ」

「………」

 

指摘されたからか紡絆は目を逸らす。

今度は言い訳すら出来なかったらしい。

いや、さっきも言い訳出来てなかったが。

 

「え、と…こ、このことは内密で…」

「……どうしようかな」

「えっ!?ば、バレたら怒られる…なんでもするから!」

 

怒られたくないなら初めからやらなかったらいい話ではあるのだが、そんなこと出来るはずもなく懇願するように両手を擦り合わせて頼み込んでいた。

 

「本当に…?」

「う、うん。俺に出来ることなら…」

「…ん。じゃ…あ、ふたりのひみつ、だね…?」

「それでお願いします…」

「ふふ…な、なんで…敬語…なの?」

「いやぁ…何となく」

 

くすくす、と面白そうに笑う里香。

そんな彼女を見て僅かに視線を上へ向けた紡絆は勝手に納得でもしたのか視線を里香に戻して微笑む。

 

「な…なにかついて、る?」

「ううん、やっぱり綺麗だなってさ」

「…ふぇっ!?」

 

しばらく顔を見ていたら変なところでもあるのかもしれないと思ったようで髪をいじったり服を整えたりしていた里香は紡絆に言われたことに顔を真っ赤にした。

紡絆は不思議そうにしつつ、周りを見渡す。

 

(ここはみんなが幸せなわけじゃない。俺でも病気を治す方法はないから助けられない。だけど人が幸せそうにしてるところは、 なんというか、輝いてるんだ。きらきらしてて、美しくて、尊くて。

だから…守りたくて……救えなかったな……)

 

医療は専門外であり、紡絆に出来ることはそうなる前に助けることだけ。

それと同じように、紡絆がどれほど助けたいと救いたいと願っても手が届かないものの方が多い。

 

「紡絆くん……?」

「あっ…ごめんね。なんか言った?」

「急に止まったから…どこか、わるくなったのかな…って」

「大丈夫、心配してくれてありがとう」

 

無駄に不安をあたえてしまったことを反省しながら紡絆は里香の頭を撫でる。

また顔が赤くなっているが、心地よいのか気持ちよさそうにしている。

 

「うん、里香ちゃんのお陰で分かった気がする」

「…へ?」

「俺、この日常が好きなんだと思う。小都音や母さんや父さんと過ごす日々。家族だけじゃなくて里香ちゃんみたいな大切な友達と話す日々。たくさんの人の姿や人の営みを見るのが好きなのかもしれない。みんなが幸せな姿が好きなんだ。

そのためにやれること、きっとあるはず…ううんやらなくちゃいけないことがあるような、そんな気がするんだ。俺が、俺にしか出来ないことが」

 

突拍子もなくそのようなことを語る紡絆に、里香は大人しく聞いていた。

まるで遠くに行ってしまうような、何処かに消えてしまいそうな雰囲気があって。ちょっとばかし大人びてるようにも見えて。

『大人』のように抱えようとしてるようで。

 

「………」

「里香ちゃん?」

「あ……」

 

無意識にその腕を掴んでいた。

里香本人もその理由は分からず、ハッとした時には遅い。

 

「え…と……あ…の……」

 

言葉が出てこず、しどろもどろになる。

しかし掴んでる手とは逆の手は胸もとを握っていて、怪我をしてるわけでもないのに痛かった。

残念ながら紡絆には伝わるわけもなく、彼は首を傾げるだけだ。

 

「わ……わた…し……」

「……?」

「そっ、その……」

「?」

 

要領が得られず疑問符だけを浮かべる紡絆。

一方で元々臆病な性格な里香は若干パニックになっている。

時間だけが過ぎていく中、やってきた突風が髪を靡かせる。

普段は隠れている目が風によって晒され、不安げに揺れるアメジスト色の瞳とどんな色にも染まらない黒い瞳が交差する。

今も何とも思ってなさそうな紡絆と、何処か不安そうな里香。

胸もとで作っている握り拳に力を込めて、深呼吸して。

 

「ひゃ…っ?」

 

体が急に動くとぽすん、と紡絆の胸もとへ優しく抱き寄せられた。

何をされたのか、どういう状況なのか理解するまで数秒かかり、ようやく何をされたか気づいた。

 

「あっ…ああああのつ、つ…紡絆くん……!?」

「あれ、違った?ごめん」

「ぁ……も、う…少し……」

 

思ってた反応とは違ったようで紡絆が離そうとすると里香は止めるように背中に手を回す。

目を丸くさせ、すぐに微笑む紡絆は何かを言うことなく抱きしめながら頭を撫でる。

それこそ慰めるように。

 

「………」

「………」

 

互いに何も発することはなく、穏やかな時間が流れる。

夏らしくギラギラと燃える太陽の日差しが強く、普通にいるだけで暑いのにこうしてくっついてるともっと暑いだろう。

だけど今は、そんなことは些細な問題だった。

里香にとっては大事な時間なのだから。

 

「……ね…ねえ……」

 

いつまでやっていたか。

数分かもしれないし数時間かもしれないし数秒かもしれない。

沈黙に耐えかねたのか里香は紡絆の服を握りながら見上げて口を開く。

アメジスト色の瞳は今も不安げに揺れていた。

 

「?」

「ど……どう、して……こう…してくれた…の?」

 

何かを言ったわけでもないのに、紡絆は抱き寄せて今も撫でてくれている。

そのことを聞きたいのだろう。

紡絆は悩むようにんー、と唸り、里香の頭を撫でるのをやめて真っ直ぐな目で見つめた。

 

「上手く言葉に出来るか分からないけど、里香ちゃんが今にも泣きそうなくらい不安そうに見えて。特に里香ちゃんの目っていつもは隠してるけどこうやって見たら宝石みたいに綺麗でそんなキミを泣かせたくないなぁって」

「ぇ……あ……へっ……!?」

 

髪をそっと退かして、両瞳を見えるようにした紡絆は恥ずかしげもなくサラッと言ってのける。

逆に里香は一度固まり、徐々に顔を赤くしていく。

周りから見れば口説いてるような現場なのだが。

 

「俺、何すればいいか分かんないから。温もりを与えれば良いかなって思ったんだ。突然したのはごめんね」

「ぁう……ぅう」

「わっ、どうしたの?」

 

さっきと違って、顔を胸に埋めるように抱きつく里香に紡絆は不思議そうにしながらまた頭を撫でる。

変なところでは鋭いくせに、別のところでは鈍感らしい。

 

「い……いま……見たら…だめ……」

「んーよく分からないけど分かった。好きなだけしていいよ!」

 

本当に分かってないのはとても彼らしく、里香が落ち着くまでぼうっと周りを見てると、やけに微笑ましそうな視線を向けられていることに気づいた。

完璧に子供同士がイチャイチャしてる姿にしか見えないのもあるだろう。

家族かって言われると見た目が全く違うことから、別の関係性の二人にしか見えないのもあるかもしれない。

見られてることを言うべきか悩んだが、黙ってる方が良さそうなので紡絆は気にすることをやめた。

 

「あれ、もういいの?」

「う……うん……」

「そっか」

 

少しして離れた里香は耳まで真っ赤になっているのだが、紡絆は何かを思うことなく納得したように微笑むと手を差し伸べた。

 

「俺、バレたら怒られるからそろそろ戻るけど里香ちゃんも来る?帰るなら見送るけど」

「い…いって、いい…なら……」

「多分大丈夫!じゃあ一緒に戻ろう!」

「あ……」

 

以前と同じように、紡絆は里香の手を優しく包み込む。

いつも引っ張ってくれていた紡絆は例え二年間経ったとしても同じで、変化はなくて、それが無性に嬉しいのか里香は自然と笑顔になった。

 

「うん、やっぱりその方がいいね。俺は好きだな〜」

「んん……も、もー……」

 

無自覚なのだろうが、すぐに恥ずかしくなるような言葉を言ってくる紡絆に里香は顔を逸らした。

 

「…いこ?」

「うん、そうしよう---」

 

チラッと里香が僅かに見ると、紡絆は頷いて歩を進めようとする。

しかしなにかに気づいたように立ち止まると、手を離した。

 

「紡絆くん…?」

「ごめん!ちょっとまってて!」

「えっ…?」

 

本来は歩くことすら禁止されている紡絆だが、既に駆け出している。

突然の行動に驚く里香を置いて、紡絆は木に向かって跳んでいた。

軽く3mほどの跳躍力。

それから木を蹴り、枝に引っかかっていた帽子を取った紡絆は着地すると持ち主と思われる女の子が駆け寄って、何かを話すと紡絆は帽子を被せてあげていた。

ちょっと深かったのか帽子を両手で位置を直したあと笑顔で手を振って親と思わしき人物と合流する。

頭を下げられ、女の子には手を振られると紡絆は返事がわりにただ満足そうに微笑んでいた。

 

「や…やっぱり…かっこいい…ね、紡絆くん」

 

女の子が木の近くにいたならともかく離れていたのもあって誰も気づいてない中、真っ先に飛び出したのが紡絆だ。

周りを良く見てなければ気づくはずもない。

事実傍にいた里香は帽子の存在など気づかなかったし、他の人も同様だ。

そもそも風に攫われた帽子を捉えるなど紡絆からの距離では不可能なはずなのだが。

 

「……里香ちゃん」

「…?」

 

それはともかく。

紡絆は振り向くことなくその場で立ち尽くしたまま名前を呼ぶと、里香は首を傾げる。

声が少し真剣だったから、というのもある。

もしかして何か重大な話でもあるのかもしれない。

そう思って少し身構えると。

 

「ごめん…足挫いた」

「…へ?」

 

まさかの発言にポカーンと呆然とする。

よくよく見れば紡絆の足はプルプルと震えていて、ついには足を抱えてダウンしていた。

歩くことを禁止されていたのは、二年間眠っていた人間がいきなり運動出来るかって言われればそんなわけがない。

むしろ目覚めて二日目から松杖といった補助具なしで動く紡絆がおかしいわけで、急にあのような激しい動きをすれば足は限界を迎えるだろう。

 

「だ、だだだ大丈夫!?ど、どうしよう…こ、こういうとき…えっと…えっと……!」

「あー…えと…里香ちゃんが嫌じゃなければ肩を貸して欲しいな…」

 

自分よりも焦る人物が居れば相対的に落ち着くものらしい。

元々痛い程度にしか思ってないというのもあっただろうが、本人よりも慌てる里香の姿に紡絆は苦笑する。

 

「あ……う、うん。まかせて…!」

「ごめんね」

 

こうなってしまっては戻れないため、紡絆は申し訳なく思いながら頼むと里香は冷静となったらしい。

肩を貸してもらった紡絆は出来る限り体重をかけないように心掛けながら病室へ戻っていった。

なお入院期間は増えた上に看護師の人や医者にも怒られ、少しして遅れてやってきた小都音には物凄い怒られたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

603:名無しの転生者

アホすぎて草

 

 

604:名無しの転生者

身体能力やばすぎね?

 

 

605:名無しの転生者

これはウルトラマンと一体化してますね間違いない

 

 

606:名無しの転生者

ただこの時はまだ自分の中に存在してるってことは気づいてないのね

 

 

607:名無しの転生者

誰もいないところで誰かいるのかと聞いたり話す陽灯くん……

 

 

608:名無しの転生者

文字に起こししたらやべーやつやんけ

 

 

609:名無しの転生者

精神的に病んでるのかと思われそうだな…

 

 

610:名無しの転生者

ところでこれで付き合ってないとかマジ?

 

 

611:名無しの転生者

いくら幼いとはいえ付き合っててもおかしくないレベル

 

 

612:名無しの転生者

イッチといい陽灯くんといい素で口説いてるしな

 

 

613:名無しの転生者

案の定美少女でした…

 

 

614:名無しの転生者

今この子どうしてるんだろうか。イッチは会ってないみたいだし

 

 

615:名無しの転生者

陽灯くんみたいなの忘れられそうにないだろうしな…

 

 

616:名無しの転生者

会ってやらねーの?イッチ

 

 

617:名無しの転生者

今はさらに成長してるだろうしもっと可愛いんだろうなあ

 

 

618:名無しの転生者

イッチも陽灯くんも色んな意味で記憶に残りやすいしな

 

 

619:光の継承者

うーん向こうは覚えてるか分からないぞ?正直あれから約四年近く会ってないし、もしかしたら彼氏とか居たら逆に邪魔になるかもしれない。いなかったとしても友達同士で過ごしてるかもしれないし…

 

 

620:名無しの転生者

は?

 

 

621:名無しの転生者

何言ってんだこいつって多分俺以外も思ってる

 

 

622:名無しの転生者

いやいや絶対無理やろ…脳焼かれてるでしょこれ

 

 

623:名無しの転生者

これ見てて陽灯くんとかいう過去の男忘れるなんて想像出来ないんだけど?

 

 

624:名無しの転生者

だってあれじゃん、この子って自分自身の容姿や性格にコンプレックス持ってたじゃん?特に目の色が不気味って言ってたじゃん。他の子からも忌み嫌われてるって言ってたじゃん!自分自身も嫌いだって言ってたし!

 

 

625:名無しの転生者

陽灯くんはこの子助けたあとにそれを聞いて否定するどころか、逆に綺麗だとか色々言ってたしな…挙げるとこっちが恥ずかしくなりそうだからこれ以上挙げないけど

 

 

626:名無しの転生者

いやーあんな真っ直ぐ自身が嫌ってる部分を肯定するようなことを言われたら、ねえ…?真っ赤になるのも仕方がないというかー

 

 

627:名無しの転生者

若いって、いいね……

 

 

628:名無しの転生者

とにかくお前、会いに行ってやれ

 

 

629:名無しの転生者

つーか行けアホ

 

 

630:名無しの転生者

流石に可哀想がすぎる

 

 

631:名無しの転生者

イッチってあれやろ?行方不明扱いになってんだろ?過去のスレから察するに今も前も。

つまりこの子はイッチ(陽灯くん)が無事か分からないまま居場所も分からずじまいってわけ

 

 

632:名無しの転生者

うわ、イッチひでー

 

 

633:名無しの転生者

不安にさせたままでええんか?

 

 

634:名無しの転生者

おら、これも一種の人助けだぞ。それでもお前はいかんのか、ああ?

 

 

635:名無しの転生者

イッチさいてー!くずー!女の敵ー!

 

 

636:光の継承者

ええ…なんでそんな言われないといけないんだ。わかったわかった、居場所は…まあウルトラマンの力使ったら見つけられるだろうし会いにいくって。それでいいんだろ、こっから出られたらになるけど。それでいいなら会いに行くよ

 

 

637:名無しの転生者

よろしい

 

 

638:名無しの転生者

最初からそうしとけばいいんだよ

 

 

639:名無しの転生者

ふへへ、どんな成長してるのかなあ

 

 

640:光の継承者

会いにいくときは映像写さなくていいか…

 

 

641:名無しの転生者

やめろォ!

 

 

642:名無しの転生者

ばっか!そこは見せろ!

 

 

643:名無しの転生者

一部の変態が湧くだけでそんな目的のために会いに行けって言ったわけじゃないからまじで!

 

 

644:名無しの転生者

そうそう、6割くらいしかねーから!

 

 

645:名無しの転生者

半分以上でくさ

 

 

646:名無しの転生者

まぁ結局イッチが壁の外にいる限り無理なんですけどね

 

 

647:名無しの転生者

なぜまだ帰れないのか…

 

 

648:名無しの転生者

まあまあ、流石にイッチでも敵が無数にいる世界じゃ変身保つのは不可能だからな…疲労残ったまま動けば仲間もいない今の状態だと変身解除された時詰むしネオ融合型クラスが疲労困憊の時に来たら厳しくなる

 

 

649:名無しの転生者

なお負けるとは言っていない

 

 

650:名無しの転生者

それでも勝てるとかやっぱイッチはイカれてやがるぜ…

 

 

651:名無しの転生者

新しく手に入れた力がチートすぎるんだよなあ

 

 

652:名無しの転生者

いうて奇跡の力(ザギに対抗するための力)だし多少はね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏休みを寝て過ごす(監視付き)羽目になった紡絆は無事に退院を果たした。

ちなみに入院期間はわずか三週間である。

捻挫した翌日には捻挫を回復させ、隙を見て脱走。

病院内の困ってる人を見つけ次第手伝い、見つかって病室に戻され、怪我して怒られて回復して、見舞いに来てくれた人と会話して、両親に注意されたり小都音に世話されたり里香に世話されたり(紡絆曰く、二人の間に火花が見えたとか)など割と他の人が見たら羨ましいようなイベントが起きたりしていたのだが、驚異的な回復力でたったの三週間で退院した。

といっても、ほぼ怪我を自ら増やしたり骨が折れる寸前になったりなどしたせいでここまで伸びただけなのだが。

それはともかく、退院したら変わる…わけもなく、人助けに精を出したり友人と遊んだり、前以上に一緒に居る時間が増えた小都音と里香と過ごしたりなどしているうちに、気がつけば猛暑は過ぎ去り紅葉の候。

紡絆が目覚めてはや二ヶ月。

特に変化はなく、唯一変化があったとすれば。

 

「宇宙、かぁ……」

 

珍しく自室で過ごしている紡絆は本を読んでいた。

無限の宇宙といったタイトルで、文章は難しい言葉ばかり。バカな紡絆には絵くらいしか分からず、せいぜい理解出来るのは中学生レベルの用語くらいだ。

それでも小学生が持つには十分すぎる知識なのだが。

 

「そうだ。キミはどこから来たの?」

 

部屋の中には誰もいない。

だと言うのに紡絆は誰かに聞いていた。

わざわざ誰かを指す二人称の人代名詞も使って、だ。

そんな声に対して。

 

『多次元宇宙---ここではない宇宙から、私はやってきた』

 

どこからもなく声は返ってきた。

正確に言うならば、紡絆の脳裏に直接言葉が返ってきたの方が正しいか。

しかし紡絆はその言葉に首を傾げる。

 

「ここじゃない宇宙…?まるちばーす?」

 

多次元宇宙とは量子力学にある1つの理論であり、現代物理学の分野なので紡絆は知らない。

 

『…壁を挟んで無数の宇宙と世界が隣り合っている、と思えばいい』

「ええっと…つまり俺のいる宇宙とは別のユニバースがあるってことだよね」

 

配慮してくれたのか比較的簡単に説明され、自分なりに整理した答えを出すと肯定が返ってくる。

つまるところ、今紡絆たちが生きる宇宙とは違って別の歴史を歩んだ宇宙から次元を渡って声の主は来たということだ。

まだ確証のない研究されてる理論であり、何気にそれを証明する存在から教えられるという発表すれば一気に有名になれるほど重大なことを知ったのだが…紡絆は純粋に感心するだけだった。

 

「すごいね、俺はまだここから星を見るだけで精一杯で手が届くことも宇宙に行くことも…空すら飛べないよ」

 

ほんの少し、いやかなり残念そうに苦笑しながらそのようなことを呟く。

過去には平成という暦が存在していたが、人は自分の手で空を飛べたことはない、と紡絆は読んだことがあった。

機械の力を借りて飛ぶことは出来ても、人間だけでは飛べなかった。

 

『紡絆、キミは……』

「ん!何でもないよ。ただちょっと…空を飛べたら、どれだけいいかなーって。そうしたらどれほど手が届くのかなって。あの時見た…あの光みたいに」

『…………』

 

その目は純粋で、輝いていて、口ではそう言っていてもそれが何なのかは簡単に伝わる。

それは『憧れ』なのだろう。

空でも宇宙でもなく。紡絆が見た光に対する。

その事を知ってか知らずか、声の主はそれっきり黙ってしまった。

悪いことをしたかな、と申し訳なく思いながら紡絆はベッドに体を預ける。

思い返すのは三日前のこと。

三日前、紡絆は二年前よりも体が軽くなってるのもあって以前よりも人助けに勤しんでいたら突如として声が聴こえるようになったのだ。驚きはしたが、聞いた事のある声だったので慌てることはなかった。しかしそれはもう変な目で見られていた。

だけど紡絆にとっては良い話相手であり、紡絆の知らない世界を声の主は親身になって教えてくれる。

まぁ会話が出来るようになったのが三日前のことなのでそこまで多く言葉を交わしたわけではないのだが。

そんなふうに思い返していると、程よい涼しさの季節になったのもあって、背中を預けて天井を見ていた紡絆は睡魔がやってきたのか視野が狭まっていく。

このままでは寝てしまう、と思った紡絆は起きようとしたが、体に力が入らず不思議と抗うことが出来ないまま眠りについてしまった---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然のことだった。

紡絆が眠ってる間にインターホンの音が鳴り、休日で家に居た父親がモニターを見ると、神聖そうな服装にお面を被った人たちが扉の前にいる。

それを見た父親は母親を呼び、無視するわけにもいかないので二人は紡絆と小都音を呼ばずに玄関へ向かい、扉を開ける。

 

「継受瞬也様、継受瑞稀様。突然の訪問によるご無礼をお許しください。我々は神樹様の信託を受けて此方へ出向いて参りました」

「神樹様の信託……?なぜうちに…」

 

それが何を意味するのか知っているのか、父親と母親---瞬也と瑞稀は驚いたように目を見開く。

わざわざこうして訪問してきて、信託を知らせてくるだなんて1つしかない。

それにこの家の中で、その対象となる者は一人しかいなくて---

 

「つきましては、 継受紡絆様並びに、そのご家族に()()()の件でお伝えしたいことが」

「…は?紡絆に、用……?」

「…あなた。ここだと迷惑になるわ。ひとまず上がってもらいましょう」

「そう…だな。こちらに」

 

予想が大きく外れたことに、理解が追いつかなかった。

二人の頭に真っ先に浮かんだ人物ではなかったからだ。

しかしこのまま外で会話をしても騒ぎを起こすだけだと瑞稀は気づいたようで家に上げるように言うと、瞬也も意図を組んだように大赦の人たちを家の中に上げる。

 

「それで何故紡絆にお役目が?娘ならば納得は出来ずとも理解出来ます。しかし()()に男がなることは……」

 

テーブルを囲み、お茶を出して互いに向かい合う形で座ると早速本題へ入る。

 

「ご存知の通り、勇者の適性があるのは()()()()()だけです。そちらのご子息である継受紡絆様には適性はないとされています」

「じゃあ、どうして?」

 

そう、勇者になれるのは無垢な少女のみ。

紡絆は当然ながら男であり、大赦の使者も自ら『ないとされている』と言っている。

これが紡絆ではなく、小都音ならば話はまだ分かるだろう。

 

「何故男性であるご子息が選ばれたのかは我々にも理解出来ておりません。しかし神樹様は確かに継受紡絆様が必要だと、ご子息を神樹様自ら直接指名する旨を神託で告げたのです。彼がこの世界の()()になると。だからこそご子息には勇者の役目に着いて貰う必要があります」

「っ……そ、そもそも勇者を輩出するのは大赦でも伝統ある家からでは?勇者として行くわけでなくとも、我が家は…」

「ええ、ですのでご子息には大赦の伝統ある家柄の1つ、遡月(さかつき)家へと養子に出てもらうことが決まりました」

 

あまりに勝手な話だろう。

つまるところ勇者でもないのにそういう体で養子に出せと言っている。

瞬也も瑞稀もそれがどういう意味を持つのか知っていた。

何故ならこれでも()()()()()()()()()身なのだから。

だからこそ“お役目”も“勇者”も、“神樹様に選ばれた”重要性も理解している。

何よりも神樹様が自ら直接指名した、ということは紡絆の存在がそれほど重大なのだろう。

 

「でも、そんな急な話、納得なんて…」

「それでも納得して貰わねばなりません。神樹様の為、何よりもこの世界の為に。神樹様が重要視するほどの案件であるが故に、ご子息には必ず来てもらわなければなりません」

「っ……」

 

納得出来ない瞬也や瑞稀に大赦の使者は無感情に、無機質に告げる。

例え何を言っても変化は起きないだろう。

しかし一体誰が好き好んで子供を死なせるかもしれないお役目に。戦場へ行くことを許せるのか。

だが断ることも出来ないのはまた事実。勇者としてのお役目は、大赦に所属する者ならば誰もが知る最重要案件。

そのお役目に神樹様が必要と言うならば、世界が。多くの人々が困る。

それでも、はい分かりましたと渡せるはずもない。

この決定を変えるには上里や乃木家といった大赦の中でも発言力のある家でないと不可能だろう。

残念ながら継受家の家柄ではどう足掻いても決定を覆すことが出来ない。

どうにかして、その決定を変えることは出来ないかと二人は考えて---

 

 

 

「---行くよ」

 

リビングの外から、そんな声が聞こえた。

瞬也も瑞稀も、大赦の使者も含めて声の聞こえた方へ顔を向けるとそこに真っ直ぐな目をした紡絆が真剣な表情でリビングに入ってくる。

 

「紡絆!?」

「それがどういう意味なのか……っ」

「分かってるよ、父さん。でもさ上で話を聞いてたら俺が必要なんですよね?」

「………」

 

確認するように紡絆が大赦の使者へ目を向ければ、小さく頷かれる。

しかし上で話を聞いていたとはどういうことか。

それほど大きい声でもないのに、二階にまで声が届くはずない。

 

「だったら俺は行くよ。神樹様が俺を選んだなら……何より、それはきっと俺が()()()()()()いけないことだと思うんだ。ただ一つ、お願いしたいことがあるんです。いいですか?」

「……出来ることであれば」

 

紡絆にとって、神樹様が直接選んだということは特別な意味をする。

それはここに居る者たちは知らない。

無論、それだけでは無い。

紡絆が行かねば困るということは誰かが必要としていることであり、紡絆にとってそれは耐え難いものだ。

だからこそ紡絆はたった一つの条件を告げる。

 

「時間をください。みんなにお別れを言う時間と…家族と話す時間を」

「お望みのように」

「ありがとう…ございます」

 

これが通らなければ考えたかもしれないが、あっさりと許可をもらったため紡絆は笑顔を向けてお礼を伝える。

 

「いえ…一週間後、お迎えにあがります。それまでお好きなようにお過ごしください。それでは失礼致します」

 

そんな紡絆に対しても感情の乗っていない淡々とした声や態度で大赦の使者たちは家から出ていく。

残された紡絆は悲痛な面持ちを浮かべる両親に苦笑する。

 

「ごめん、勝手に決めちゃって。母さんも父さんも俺のために頑張ろうとしてくれたのに」

 

紡絆とて両親の想いに気づいていないというわけではなかった。

自分自身を大切に思ってくれてるのは分かっていて、これ以上苦労をかけないようにするための選択でもある。

 

「紡絆…分かってるのか?いいか、この役目を引き受けるってことはもしかしたら死ぬかもしれないんだ」

「分かんないよ。死ぬかもしれないって言われても何をするのか、何をやるのか。でも確実に死ぬわけじゃないんだ。そのお役目を引き受ける覚悟は決まってる」

 

いつもは優しい両親もこの時だけは厳しい目を向けてくる。

普段と違う穏やかではない空気。

両肩を父親に掴まれて、逃げられないようにされて脅しにも近い言葉や圧を受けても、紡絆は引き下がることなく目を逸らすこともない。

どこまでも真っ直ぐな、彼らしい目だ。

 

「………」

「………」

 

時計の音だけが静かな部屋に響く。

覚悟が揺らがないことを示すように、紡絆は一向に動かない。

そんな沈黙を破るように、瞬也の手を誰かが取って紡絆の肩から離させると口を開く。

 

「…瑞稀」

「これ以上言っても、紡絆は曲げないから。こうだって決めたら突き進む子だもの」

 

いつだって、そうだ。

家族として過ごしてきて、紡絆は必ず成し遂げようとするところを瑞稀は何度も見てきた。

両親は知らないがあの日、命のかかった場でさえ誰かを助ける決断をして最後までやり遂げたように。

 

「母さん……」

「正直な気持ちとしては、無理矢理にでも止めたいのが親心というもの。だけどね、子供のやりたいことをやらせてあげるのもまた親の役目なの。瞬也さんも紡絆を心配して聞いただけだから」

「…うん、分かってるよ。母さんも父さんも俺を大切にしてくれてたってよく知ってるから」

 

二年間も眠っていても、仕事終わりに様子を見に来ていたと紡絆は聞いていた。

大切にしてないなら仕事で忙しいのに来るはずない。毎日毎日、一瞬でも通うなんてどれほど大変な。

 

「だから認めます。その代わり、三つだけ約束を交わしてくれる?」

「約束?」

 

それが出来る譲歩というものなのだろう。

瑞稀は姿勢を正しながらしゃがんで紡絆の背に合わせると、頬に手を添えながら瞳を射抜くように真っ直ぐに見つめる。

紡絆もまた見つめ返して、青と黒の目が交差した。

 

「一つ、何があっても決して曲げないこと。紡絆がやるって決めたことは、決して途中で投げ出さないで」

「分かった」

 

即答。

ちょっとでも迷うことがあれば、考えは変わるかもしれない。

そんなのをないと証明するように紡絆はすぐに頷く。

 

「一つ、どんなことが起きても自分らしさを捨てないこと。特に紡絆の誰かを助けたいと思う気持ちは、貴方の一番素敵なところですもの。それを忘れてはダメ」

「それはもちろんだよ」

 

人を助けたいと願う気持ちは、紡絆が紡絆になった頃からあった想いだ。

意識を持って初めてそれを抱くのははっきりいって異常ではあるが、その部分は多くの人を助けてきた。

近しい仲ならば、小都音と里香が分かりやすい例だろう。

 

「そして最後に…必ず帰って来なさい。私は、私たちは紡絆を待ってる。お役目を終えて帰ってくることを。この三つを…ちゃんと約束出来る?」

「うん…約束!」

 

真剣な顔から、子を想う優しい母親の表情になった瑞稀に紡絆は自分らしさを示す、いつもの明るい笑顔と共に小指を差し出す。

 

「…はい、約束。必ず、守るようにね」

「うん!」

 

本当は止めたいだろうに、一瞬だけ躊躇はしたものの瑞稀は紡絆と小指を絡めて確かな約束を交わした。

例えここで説得しても、紡絆は必ず行動に移す。

無論権力的な意味でどうしようもないのも事実ではあるため、そういった側面の理由もある。

 

「瞬也さんも、構わない?」

「…仕方がない、か。父さんに出来ることはないけど、紡絆の無事はずっと祈ってる。だから何があっても帰ってきてくれ」

「がんばるよ」

 

諦めを悟ったように息を吐いた瞬也は紡絆の頭を撫でる。

紡絆はただされるがままだった。

 

「あ、それと小都音にもちゃんと伝えること。そうじゃないとあの子拗ねちゃうから」

「そっか…そうだね、ちゃんと伝える」

「一週間。たったの一週間しかないけど、最後までよろしくね」

「…うん!」

 

両親にも紡絆にも、悲嘆に暮れるような空気はなかった。

いつものように、何ら変わらない状態。

心の内までは分からなくとも、泣いて別れたり問題を後回しにするより早く答えを出して、笑顔で送り出す方がきっといいから。

笑顔で別れた方が、きっといいから。

だからこそ、瞬也も瑞稀も悲しみを表に出すことは決してなかった。

そして紡絆は、眩い光のような笑顔を曇らせることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---そうして、一週間が過ぎた。

一週間というのは短すぎる期間だった。

小都音の説得に三日費やし、知り合いや近所の人たちとのお別れを伝えるのに一日。

一番親しいと言える友人だった里香ともお別れを告げ、最後の一日はほぼ一日中家族と過ごし、小都音は紡絆から離れることはなかった。

それでも時間というのは進むだけで、戻ることはない。

起きたとき、紡絆は迎えが来るのを待って、来たら行く。

それだけだ。

ただ、今の問題はそれではなく。

 

(ここは……?)

 

オーロラのような神秘な光の奔流の中。

来たことがあるような場所で、紡絆はぼうっと前を見ていた。

夢ならば、もう時期覚めるだろう。

そうすれば家族と別れになる。

お役目を終えたら戻って来れる確証はないが、無事に完遂したらその程度の我儘は聞いてくれるはずだ。

そのためにも目を覚まして、頑張らないといけない。

そう思っていても意識は現実へ戻らずに、眩い輝きが視界を一瞬だけ妨げる。

 

(キミは……)

 

気がつけばそこには()()が居た。

光の線で形作られているが、間違いなく巨人だ。

それもあの時見た、自分たちを守ってくれた光の巨人。

なぜここで会えたのか、どうして今になって会えたのか、当然分からない。

 

『---紡絆』

(え……?この声……)

 

けれど紡絆は、その声を聞いたことがあった。

最初に目覚めて聴こえて、最近会話するようになった『ダレカ』。

 

(そっか……キミはあの時の巨人さんだったんだ)

 

ようやく、紡絆は理解してきた。

聴こえてくる声が、一体どこからだったのか。

声の主の正体が何者か。

何よりも、死ぬはずでしかなかった自分自身がなぜ生きることが出来たのかを。

そして。

 

『キミの力が、必要になる---』

 

光の巨人は、手のひらを差し伸べる。

大きな手で、紡絆を求めるように。

 

(うん……行こう、一緒に!)

 

そんな巨人に対し、紡絆は躊躇することなく自身の手のひらを伸ばして、小さな手と大きな手が互いに握られる。

その瞬間、紡絆の意識は一気に現実世界へ引き戻される。

繋がった手に、確かな温もりを宿しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紡絆は目を覚まし、家族といつものような最後の朝食を済ませる。

特別な何かがあるわけでもない。ただ日常を過ごしてきた。

ここで特別なものにしてしまえば、これっきりになってしまう予感があったのかもしれない。

誰も、変わったようなことはしなかった。

 

「……っし!もう行かなくちゃ」

 

家を出てほんの少し歩けば、大赦のものと思われる高級車がある。

これから乗って、別の誰かと家族として暮らさなければならない。

先の分からない未来があっても、紡絆は怖気付くことはなかった。

 

「約束は…覚えてる?」

「ちゃんと覚えてるよ、大丈夫」

「無理だけは…するなよ」

「善処するよ」

 

しばらく会えなくなる、最後の会話にしてはどこかよそよそしい。

いや、何と言えばいいのか分からないのだろう。

このような経験、普通はするはずないのだから。

それでも両親は、無理をしてでも笑顔を浮かべる。

 

「小都音…何も言わなくて、いいの?」

 

そんな中で、小都音は自身のスカートを強く握りしめながら俯いていた。

長くは居られず、もう時期行かなくてはならない。

いつもなら兄にべったりな小都音もこの時だけは大人しくて、気づいた瑞稀は声を掛けるが小都音は俯いたまま何も言わない。

困ったような顔を浮かべる両親に紡絆は苦笑いを浮かべて、小都音の頭を一度撫でると息を大きく吸って吐き出す。

 

「それじゃあ……行ってきます!」

 

その言葉を最後に、最後の最後まで明るい笑顔を浮かべて。

紡絆は振り返ると大赦の高級車に向かって歩みを進める。

別れの時間だ。

小さな背中が離れていく。

これが最後になるかもしれない。もっと伝えたいことはあっただろう。

もっと思い出を作りたかっただろう。

この決定は覆ることはなく、少しずつ遠くなっていく背中を瞬也も瑞稀も互いに手を握って、俯いたまま静かな小都音の手を握って見送る。

そうして紡絆は高級車に乗り込む---

 

 

「---お兄ちゃんっ!」

「……ん?」

 

その寸前で小都音は両親から離れて急いで駆け出すと、肩で息をしながら紡絆の背中に声を掛ける。

まだ車に乗り込む前だったのもあって紡絆は振り向くと、色んな感情が混じった表情を浮かべている小都音と目が合う。

 

「たし……わたし、頑張る!次にお兄ちゃんにあったとき、お兄ちゃんのお世話を私が出来るように、頑張るから!お兄ちゃんが驚くくらい、いっぱいできるようになってるから!」

「…そっか」

「うん……私がどれだけ変わったのか、成長したのかたくさん見せるよ。料理だって、お兄ちゃんが虜になるくらい上手になってるからね。だから……だから絶対に帰ってきて。そして帰ってきたら…帰ってきたら…感想…聞かせてね」

「ああ、楽しみにしてる。俺も俺で、頑張るよ。小都音に負けないように、向こうで頑張ってる。お互いに頑張る---約束だ!」

「……!約束、だよ…絶対に守ってよ…?」

「大丈夫だって!俺は出来ないことの方が多いけど嘘だけは……約束だけは破らないからな!じゃあ、母さんも父さんも。小都音も元気で!里香ちゃんや他のみんなにも、そう伝えてて!」

 

不安そうにする小都音に、輝かんばかりの笑顔を浮かべた紡絆はそれっきり振り向くこともなく高級車に乗って去っていった。

家族はその車が見えなくなるまで見送り、見えなくなったところで限界を迎えたように涙を流す。

瞬也も瑞稀も静かに涙を流しながら、泣き崩れる小都音を抱き締めていた。

せめて、残った小都音だけでも離さないように。

 

大赦の伝統ある家なら、神樹様に選ばれたことを誇りに思い、諸手を挙げて喜んだだろう。

神樹様に選ばれるなんて、とても誇らしく光栄なことなのだから。

しかし継受家は普通だった。

どこにもいるような一般的な家庭。

紡絆が明るい性格なのもあって、表ではあっさりと決めていたが覚悟も心構えも出来ていたわけではない。

もっともっと、幸せな日々が続いていたはずなのにそれが唐突に奪われてしまったのだから。

ただでさえ、二年間も空白の時間が開いたのに。

これが神世紀297年の出来事。

何よりも、継受紡絆の苦難が始まる予兆が出てくる頃でもあった---

 

 

 

 

 





〇継受紡絆(過去)
Q.なんで帽子が飛んでいくのが分かったの?

A.周り(他人)しか見てないから

Q.迷いは?

A.んなのあったら誰も困らない

〇巨人
割と最近話すようになった謎の存在。
その正体とは二年前にやってきた発光体のひとつ、光の巨人。
ようやく姿を現すことが出来たことから、それまでずっと紡絆の中で回復してたと思われる。

〇継受小都音
交わした約束は彼女の中に残り続けた。故に彼女は今の彼女にまで成長したのだろう。
しかし二年後には……。

〇里香ちゃん
紡絆くんに脳が焼かれている(と思われる)子。
アメジスト色の瞳を持ち、過去に不気味だとか怖いだとか呪われるだとか言われ、コンプレックスを抱いて隠していた。
しかし過去に助けられた際に見られ、紡絆くんにべた褒めされた。
目が奪われるほどに綺麗、とあの紡絆くんですら評価するほど。
が、実は紡絆くん以外に自分自身で瞳を見せることは無い。
人見知り気味なのは紡絆くんが眠っていた二年前からあまり変わってなかったり(これはどちらかと言うと紡絆くんが相手だから、というのも大きいが)

〇継受瞬也、継受瑞希
ようやく名前が出てきた二人。
実は大赦に勤めていた(小都音ちゃんが大赦に接触出来た理由がこれ)
そのため、お役目がなんなのかは知っている。

〇神樹様
紡絆くんを直接指名したとか。
そうせざる得なくなったということを知っているのは、神のみである。

黄金色のジュネッスの名称

  • ジュネッス・オーア(紋章学で金色)
  • ジュネッス・トリニティ
  • ジュネッス・ブリエ(輝き)
  • ジュネッス・ルフレ(光沢、反射)
  • ジュネッス・ルクス(光)
  • ジュネッス・ルミナス(光り輝く)
  • ジュネッス・ゴールド(金色)
  • ジュネッス・オール(金、全部)
  • ジュネッス・グロウ(発光)
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