【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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コロナに掛かったり脳がアカネちゃん(グリッドマン)に侵略されてたりブレーザーの映画期待しつつ観に行ったりめっちゃよかったと感想を抱きながら3km以上学生の時以来走ることになったりとかしたら遅れた。
わすゆ本編は多分次回の次回。次までは勇者メンバーとどう関わるようになったのか書く。
ところでVシネでレギュラーメンバー全員死ぬ戦隊が居るらしい。マ?




「遡月」

 

◆◆◆

 

 第 7 話 

 

遡月

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

大赦の人たちによって送迎された紡絆はこれから過ごすことになる家を見上げる。

すると、ここから先は邪魔になるからか役目を終えたように頭を下げて車に戻る大赦の人たちに紡絆は気づいて振り向くと笑顔で手を振る。

 

「あっ!ここまでありがとうございましたー!」

 

返事は無い。

顔もお面を付けているから表情も見えない。

ただこちらを一瞥して、大赦の人たちは車に乗ってどこかへ行く。

それを見送った紡絆は改めて家を見た。

人の気配は、家の中以外にはない。

 

「巨人さん。ここ大きいねー俺が過ごしてきた家より大きいよ。広い!大きい!」

 

胸に手をやりながら素直な感想を述べる紡絆は子供らしくて、実際に敷地は広い。

家は屋敷、とまでは行かないが普通の家と比べると一回りは大きい。それに和を感じさせる作りだ。

 

『……紡絆。無理していないか?』

「んー?」

『家族と離れるのは辛いことだと、私はそれをかつて目にしてきた』

 

『かつて』とは巨人が別の、違う宇宙で生きてきた時のことだろう。

紡絆とは違って、巨人は多くの経験を何万年も経験してきている。

当然、彼は『地球人』のことも詳しい。

 

「無理はしてないよ。寂しくはあるけど……やるって決めたから…俺がやらなきゃいけないことだから。それに俺、ひとりじゃないじゃん!こうやって俺の中に巨人さんが居てくれるんだから!」

『…そうか』

 

それが嘘なのか本当なのか、話せるレベルまで回復した巨人には判断が付く。

だからこそ、今言った紡絆の言葉が偽りのないことだと理解出来た。

どこか背負い込みがちな部分はあるが、紡絆が辛くないならば良いと巨人は沈黙した。

静かになったことを感覚的に理解した紡絆は覚悟を決めたように歩みを進めた。

出迎えるのは二人の夫婦。

実際には分からないが、見た目だけで判断するならば二十歳前半くらいだろうか。それほどに若く見える。

どちらも美男美女といったようで、和服を着こなしている。夫人の方は赤い瞳と黒い髪を持っており、おしとやかで儚げな雰囲気を。主人の方は黒い髪に黒い目を持っていて育ちの良さを感じさせ、知的な雰囲気を纏っている。

その夫婦は優しげな表情を浮かべていた。

 

「ようこそ遡月家へ。キミが継受紡絆くんだね」

「はい、今日からよろしくお願いします!」

 

歓迎してくれる二人に紡絆は清々しいほどに眩い笑顔を浮かべた。

一切の不安もなく、活気ある笑顔。

そんな彼に夫人はゆっくりと近づくと、これはまた上品に腰や手足を曲げて紡絆に背を合わせると口を開く。

 

遡月(さかつき)(みお)です。いきなり母親と思うのは難しいと思いますけれど、仲良くしてくださいね。ゆっくりと慣れていきましょう?」

 

紡絆の手を掬うように取り、優しく握ってくれる。

澪と名乗る夫人が、これからの母親になる人物だ。

 

「はい、お世話になります!」

「ふふ、もっと砕けた喋り方でも大丈夫ですから」

「はい……えっと、うん!」

「いい子ですね」

 

我が子を愛でるように紡絆の頭を撫でた澪は微笑むとゆっくりと立ち上がって離れると元の位置に戻った。

 

「じゃあ次は俺かな。遡月(さかつき)夜霧(よぎり)って言うんだ、これからよろしく頼む。今日からここがキミの家だから自分の家だと思って過ごしてくれていいからね」

「はい---うん。改めてよろしく…です!」

 

砕けた口調と敬語が合わさってしまったが、夜霧とは握手を交わして、紡絆は受け入れられた。

 

「さて、色々と話したりする前に荷物を置いてくるといい。それから家の中を案内するから」

「うん!」

「荷物運ばせましょうか?」

「大丈夫!これだけだから!」

 

そう言ってキャリーケースを紡絆は持って見せる。

いくら子供とはいえど、小学生だ。

もっと荷物はあっても可笑しくないはずだが。

 

「それだけでよかったのかい?」

「着替えとか歯ブラシとかひつじゅひん?だけでいいと思ったから、それだけ!あっ、でも本は入ってるよ!」

 

ニコニコと笑顔で中身を包み隠すことなく開けて言っていく。

入ってるのは本当に生活に必要なもの程度で、娯楽のものはあまりに少ない。

というか本しかない。

これは別に紡絆が虐げられていたわけではなく、彼の欲があまりに薄すぎて自分で何かを欲しいと言うことがないからなのだが。

澪と夜霧は顔を見合わせ、互いに頷いていた。

 

「欲しいものがあれば、遠慮せず言ってくださいね」

「無理強いはしないけど、もっと自分の欲しいものがあるなら言って構わないからな」

「?うん、その時はお願いします」

 

何故そんなことを言われたのか紡絆は分からずに疑問符を浮かべるが、ひとまず納得を示すと澪が改めるように両手をそっと合わせて口を開く。

 

「はい。まずはお部屋に案内しましょうか。此方へ」

「わっ。分かった!」

 

ちょっと慌てたように荷物を収納すると、抱えて近くに寄る。

そんな紡絆をずっと澪は優しい眼差しで見ていたのだが、紡絆は気づかずにそのまま後ろをついて行く。

 

『…キミは欲がないな。私が今まで見てきた者たちと異なる』

「そうかな…俺、人助けが出来たらいいから」

『………』

 

誰にも聞こえないくらいとても小さな小声で言葉を返すと、また静かになった。

澪には聞こえなかったのか特に何かを言われることも無く、部屋に案内される。

 

「わあ…」

「どうでしょう?」

「広い!俺なんかが使っていいの?」

「なんか、とは言ってはいけませんよ。貴方を引き取ったのは私達です。本来共に生きるべき家族と引き離してしまいました。ですから、これくらいのおもてなしは当然です」

 

負い目を感じているような何処か申し訳がなさそうにそう告げる澪に紡絆は素直に受け取ることにしたのか、部屋の中に足を踏み入れて振り返る。

 

「じゃあ……ありがとう。大事に使うね」

「はい」

 

そうして荷物を置くと部屋を後にして階段を下りていく。

その間にも通る道でどういった部屋か教わり、紡絆は完全にとは行かないがある程度把握することが出来た。

しかしずっと気になることがひとつあり、紡絆は聞くことにした。

 

「あの…澪さん」

「なんでしょうか?」

「ずっと気になってたけど…もっと砕けた口調でもいいよ?俺、そんな特別な人間でもないし…」

 

そう、彼女は紡絆に話す度に丁寧語で話す。

それなのに自分は砕けた喋り方だったのもあって、気になっていた。

まだ実感は湧いてないが、これから家族になるのだから。紡絆としてはもっと親しくなりたいというのが本音だった。

 

「ああ…えっと…気に障りましたか?」

「ううん、そういう訳じゃないよ。気になっただけ」

「そうですか。そうですね…私はこれが普通ですから、貴方だからというわけではないんです」

「あ…ごめんなさい、そういう人もいるって分かってたつもりだったんだけど…」

「いえ。私と仲良くしたいと思ってくださってると気持ちは伝わりましたから。むしろ嬉しいです」

「それならよかった…のかな?」

「よかったのですよ」

「そっか!」

 

理由を知れて納得を示すと、紡絆も澪も互いに笑顔を浮かべた。

紡絆が元々距離感を縮めるのが上手いのもあって、見知らぬ他人から知り合い程度には仲は深まっただろう。

さすがに親、とまではまだ行かないが。

 

「さて、ここがリビングです。夜霧さんも待ってますよ」

「うん!」

 

そうこうしている内に辿り着いたらしく、リビングが開かれる。

内装もそうだったが、リビングは当然予想よりも広く。

椅子に座って何らかの書類に目を通している男性と傍には使用人らしき人達が数人。

紡絆はそのような人たちを実際に目をするのは初めてなので、若干驚いていた。

 

「ん?どうだったかな?」

「あ、えっと…よかったです(?)」

「ははっ、それならば良かった。これでも緊張していたからね」

「え、そう見えないよ?」

 

遅れて気づいたようで書類から目を離した夜霧に対する返答には疑問符になってしまったが、紡絆の視線の先には緊張の『き』の一文字すらなさそうな姿が見える。

あまりに堂々としていた。

 

「大人は隠すものさ」

「そういったものなの?」

「人それぞれ、でしょう。ですけど、慣れると分かりやすいものですよ。少し指先が震えているでしょう?」

「んー…ほんとだ」

「…そこは言わなくてよかったんだけどなあ」

 

指摘された影響で紡絆にバレてしまい、夜霧は苦笑いを浮かべる。

すぐに気を取り直すようにコホン、と咳払いをひとつする。

 

「何はともあれ、キミを歓迎するよ。澪も紡絆くんも席に着いて」

「あ、うん…うーん…?」

「こちらで構いませんよ」

「ありがとう」

 

何処に座ればいいかわからずに立ち尽くしていると、澪が椅子を引いてくれたので紡絆は大人しくそこに座ると、夜霧と澪と向かい合う形になった。

 

「さて、キミの名前を決めないといけないね。同じ名前を使う訳にも行かないだろうし、本当の親御さんに申し訳が立たない。何よりも紡絆くんには遡月の名を名乗ってもらう必要があるからね」

「そういうものなんだ」

「名は体を現す、それと同じものですから」

「ふんふん…」

 

説明を聞きながら頷いているが、本当に分かってるのか分かってないのか。

しかしそんな突然言われてたって思いつくはずがない。

 

「分からなくても気にする必要はありませんからね」

「よかったあ」

 

わかってなかったらしい。

安心したような笑顔を浮かべる。

まあ一切関わりのなかった小学生に家柄のことで理解しろと言う方が無理がある。

 

「学校に行くまでの間に決めれればいいのですけれど…」

「学校?」

「神樹館小学校。格式の高いこと以外は普通の学校だよ。同じくお役目に着くことになる子たちもいるから」

「そうなんだ、どんな人たちかな。そこは楽しみだなー」

 

ニコニコと紡絆は純粋な笑みを浮かべる。

他者と関わるのは紡絆は好きな方だった。前の市で老若男女問わず仲良くしていたように。

 

「…うん。思いついたかもしれない」

「へ?」

 

先の未来のことを考えていたら、そのような言葉が聞こえて首を傾げる。

何をか、と聞きたいのだろう。

 

「キミはここに来てからたくさん笑顔を見せてくれる」

「そういえば私が案内していた時もそうでしたね。とても魅力的な、眩しく感じるほど純粋に。こちらが元気を貰えるようでした」

 

普通ならば多少不安がったりするものだろう。人によっては警戒するはず。

が、紡絆はそういった感情は一切なく何もかもが新鮮な、楽しそうな様子ばかりだ。

ほんの少しの時間しか話してない夜霧にさえも、そう印象を与えるほどに。

 

「太陽のような光。照らして明るくする灯火。仏教では闇を照らす智慧の光ともされるが---そこから取って、陽灯(はると)はどうだろうか?」

「私はとても素敵だと思いますよ。本人の気持ちが大事ですから、嫌でしたら嫌と言ってくださいね」

 

太陽の『陽』と灯火の『灯』それを合わせて『陽灯』だと夜霧は紙に書いて見せる。

それは夜霧や澪が紡絆を見て、短な時間で抱いた紡絆の印象なのだろう。

当然、候補のひとつとして出しただけで本人が嫌ならば別のを考えるのだが。

 

「陽灯……陽灯……かあ。名前はいいけど、名前負けしてないかな…」

「太陽のように誰かを照らすような者になって欲しい、という思いもある。紡絆くん本人がそう思うならば、そうなるようになってくれたら嬉しいんだけどね」

「…うん、じゃあ頑張るよ。せっかくつけてくれたし、覚えやすいから」

 

ここまで理由をつけて、意味をつけて、名付けてくれた。

それを無碍にするのは紡絆は嫌だった。

何よりも陽灯という名前が嫌なものではないというのもある。

 

「では、決まりですね。手続きはこちらでやりますから必要な時だけ呼ぶので、その時はお願いしてもいいですか?」

「うん、俺に出来ることなら何でもするよ。ありがとう」

「そういったものは此方がやることだからね。紡絆くん……いや、陽灯が気にすることじゃない。改めて、これからよろしく」

「私の方も、よろしくお願いしますね。陽灯さん」

「…!よろしくお願いします、夜霧さん。澪さん」

 

名前が決まり、今度こそ『家族』として迎え入れられた。

継受紡絆という名前ではなく、遡月陽灯として。

奇しくも月と太陽の光を冠する名前となって、遡月家の一員になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから暫くは雑談をして、苦手なものや好きなものを共有して。

食事が出来れば使用人に呼びに行かせるとのことで、紡絆は部屋に戻ってきた。

またしてもわざわざ案内してくれた澪にお礼を言い、部屋を好きにしていいと言われたのは良いもの、特に荷物が多いわけではなかった。

 

「うーん…」

 

とりあえずキャリーの中身を取り出し、本を数冊取り出すと本棚があったのでそこに入れ込んでおく。

部屋はピカピカと言えるほどに綺麗で、勉強机やら椅子やらベッドやら必要なものは全部揃っている。

特に移動させる必要もなければ、別に位置に拘る性格でもないので終わってしまった。

 

「ふわあ」

 

手が空いてしまったため、ベッドに顔から倒れ込むと今まで触れたこともないほどに柔らかい布団が受け止める。

あまりにふかふかで、心地が良かった。

 

「陽灯…だって。どうかな?」

 

仰向けになりながら胸に手を当て、天井を見ればちょっとオシャレな電気が見える。

部屋には誰もおらず、外にも気配は無い。

 

『紡絆に相応しい名前だと…私は思うが』

「あはは、名前負けしないように頑張らなきゃだねー」

『……キミは既に』

「……?」

『いや…あの時、キミの()が私に力をくれた。紡絆は自身を誇るべきだ』

「巨人さんにそういわれると嬉しいよ。正直、あの時は必死だっただけだけど」

 

多くの死者が出た。

あの事件は隕石の落下という扱いになっているが、紡絆の記憶にはちゃんとした記憶が残っている。

あの時見た、光の巨人も。恐れた怪獣の姿も。

今は恐怖心は消えたにも等しいが、その経験は今の紡絆を創る。

 

「そうだ。夜霧さんも澪さんも…優しくて良い人だったね。使用人?の人たちは分からないけど、雰囲気はよかった」

 

いきなり外出するわけにも行かず体を横にして、紡絆はさっきまで居た時のことを思い出す。

養子に出ることになって、不安がなかったわけではない。

もし手を出す親なら。平気で虐待したりする親だったならば、紡絆は我慢はしたがこのように楽に過ごせることはなかっただろう。

使用人の人たちも紡絆は一般家庭から来たというのに厳しい目を向けることもなかった。

 

「だから、よりお役目頑張らないとだね。世界も人も、神樹様(友達)も全部守れるように」

『紡絆……』

「あ、それと!今日から俺は遡月陽灯だから、陽灯って呼んでくれる?まだ俺も慣れてなくて、自分の名前名乗っちゃいそう。巨人さんが良いなら、そう呼んで慣れさせて欲しいんだ」

 

学校に行けば、間違いなくどちらかで呼ばれる。

慣れなければ返事が遅くなって迷惑をかけるかもしれないという思いもあり、紡絆は---陽灯は自身の中に居る巨人に頼んだ。

 

『キミが望むならそうしよう---陽灯』

「うん、ありがと」

 

特に忌避感などもなく、呼び方を変えてくれた巨人に少し申し訳なく思いながらも紡絆は笑顔を浮かべた---。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遡月家の養子となって三日後。

色々とあった手続きも終え、紡絆は正式に遡月陽灯となった。

最初に比べれば仲も深まり、陽灯は両親となった二人のことを知った。

まず夜霧は学者らしく、日々調べたり考えたりしていた。それが何なのかは分からないものの、執務室に入り込んだり外に出たりと忙しい。

澪は色んな種類をまとめたり書いたり、指示をしたりと家にいることは比較的多いが外にも出る。

なんでも大赦でやることが多いとか。

それもあり、使用人が居るのではなく使用人が必要という家庭で料理や洗濯など使用人に任せっきりになっている。

と言っても澪は家事が好きらしく、たまに自分でやったりしているらしいが。

それを見ていて陽灯は無理矢理時間を作らせてしまったのでは、と申し訳なく思ったが、夜だけは夜霧も澪も一緒に居る時間を作ってくれている。

そのことを聞けば、やりたくてやってると言われたので陽灯は何も言えなくなってしまった。

そこで遠慮すれば二人の思いも無駄にしてしまうし、陽灯も陽灯で一緒に過ごす時間があった方が嬉しいからだ。

 

そして今、陽灯は走っていた。

日々の走り込みをしてるわけではなく、珍しくその顔は緊迫した様子。

 

「や、やばいやばいっ!どうしようどうしよう…どうする!?」

『陽灯、学舎は真逆だ』

「ああ!?ありがと!でもごめん!やっぱりこっちに用が出てきたから!」

 

そう言って陽灯は学校とは真逆に走っていき、困ってる様子の人に話しかけていた。

その姿を見て、巨人は押し黙る。

陽灯の中にいる巨人は陽灯の視界を通して世界を見ることができる。それどころか360度見通すことだってできる。

だからこそ巨人は陽灯のその背中をただ見ていた。助けることはしない。

もし陽灯が求めるなら別だろうが、彼は相談することはあっても直接助けを求めることはなかった。

無意識に拒んでるのか、単純に自分の力で解決しなければならないと思ってるのか、理由は謎のまま。

そうして陽灯は無事に解決したようで、お礼を言われて気にしないように言っている。

話は着いたようで、陽灯は今度こそ学校の方へ走っていく。

 

「うう、やばいぃ…このままじゃ転校初日から遅刻しちゃう!あと10分で間に合うか…!?」

『………』

 

両親や使用人がしっかりしている人たちなので、言われて時間に余裕を持って出たのが陽灯だったのだが、残念ながら10分で間に合う距離では無い。

身体能力が強化されている陽灯でも間に合わない距離だ。周りの被害を考えない全速力ならば話は変わるものの、前提として陽灯が人助けをしてなければ時間に余裕しかなかったりする。

 

「あっ!向こう行かなきゃ!」

『………』

 

そしてまた道から外れる陽灯。

巨人はそれが原因だとは思ったが、口には出さなかった。

それはきっと、彼が彼らしくある理由のひとつだと思ったから。

しかし遅刻確定になってしまう点についてはどうなのだろうか。恐らくもうその事は一時的に頭から離れてるのかもしれない。

陽灯は困ってる様子の老婆と銀髪の少女に話しかけ、説得するように幾度か会話をすると銀髪の少女は申し訳なさそうな顔で渋々離れ、代わるように対処していた。

ランドセルがあることから、同学年か下くらい。自分が代わりにやるから行くようにとでも言ったのかもしれない。

自分も学生なのだが、やはり自分のことは抜けてしまっているようだ---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局陽灯が辿り着いたのは一限目の途中。

ひとまず陽灯は職員室に行って更衣室を借りた。

 

「いやー朝から大変だったね」

『……何の躊躇もなく川に飛び込むのは君くらいだ』

「あはは、笑顔になってくれたからよかったじゃん。寒いけど死ぬわけじゃないしちゃんと替えも持ってきてたからね」

『分かっていたのか?』

「いや、妹に外出する時には絶対毎日二・三着くらいは持っていくように言われて」

『………』

 

おそらくこの会話を聞いてる人がいれば困惑するだろう。

現に人類を超越する存在ですら無言になってしまった。

あれ、と首を傾げながら案内してくれる大人について行く。

ただもし替えの服がなければ、一日下着も含めてびしょ濡れという状況なので彼の妹が居なかったらどうなってたのかなど考えたくもない。

 

「今日からここが遡月くんのクラスよ。安芸さ…先生がいるから入ったら先生の指示に従ってね」

「はい」

 

5年1組。

ちょうど二学期になって数日経った後の転校になったため、進級まで半年あるかどうかだ。

それでも陽灯は出来る限り仲良くなりたいと願う。

緊張するのではなく、割とワクワクしているという珍しい転校生の姿に微笑んだ案内の先生はノックする。

すると教室内の声が静まり、メガネを掛けたどこかクールな感じを思わせる大人の女の人、安芸先生が陽灯を案内した先生といくつか言葉を交わし、案内してくれた先生は振り向く。

 

「じゃあ、頑張ってね」

「ありがとうございました!」

 

流石に大声は出さず控えめに抑えながら頭を下げると、去っていく姿を見ながら陽灯はいよいよ同級生と対面出来ると気合いを入れるように顔を引きしめる。

 

「それじゃあ、呼んだら入ってきてくれる?」

「分かりました」

 

事情を説明しに行ったのだろう。

安芸は陽灯より先に教室に入っていく。

 

「仲良く出来るかなあ」

『陽灯ならばそこまで心配する必要はないはず。何かあれば私も力になる』

「ありがとう、それならすっごく安心だ」

 

確かな自分とは全く別の、暖かい温もりを感じながら紡絆は入ってくるように声をかけられたため、元気よく返事しながら扉をゆっくりと開ける。

黒板には授業に関する内容が書かれていて、空いている箇所に名前が書かれている。

教壇に立ち、これから共にするクラスメイトたちを見る。

が、残念ながら陽灯に一瞬で顔を覚えれる頭はなかった。

 

「今日からクラスメイトになる、けい---遡月陽灯です! 引っ越して来たばかりで分からないことばかりなので、教えて貰えると嬉しいです。あと! 神樹館小学校の全員と友達になりたいと思ってるので、男女問わずたくさんお話しましょう!」

 

自己紹介を終えた陽灯にちょっとした空白はあったが、皆からの拍手で迎えられる。

大方、堂々と宣言して見せた姿に驚いたといったところか。

 

「では、遡月くんの席は……窓側の一番後ろね」

 

言われた場所を見ると、当然ながら席は誰もいない。

陽灯はニコニコと笑顔で歩いて鞄を置くと、席に座る。

 

「よろしくね!」

「うん、こちらこそ」

「おう」

「それでは授業を再開します」

 

隣と前しかいないが、初めて会った男女にも挨拶をすると、陽灯はハッと慌ててカバンから荷物を取り出していた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間。

一限目を終えた陽灯は多くの人に囲まれていた。

転校生の運命というべきか、質問責めに合っている。

どこから来たのか、兄弟姉妹はいるのか、家はどこかなど。

それらに関して陽灯は前の自分である継受紡絆ではなく、遡月陽灯として答える。

 

「どうして遅れてきたの?」

「それは川で物を落とした人が居てね、取りに行ったり道案内したりとか、荷物代わりに持ったりとか色々やってたら遅れたんだ」

「え、大丈夫だったの!?」

「うん、慣れてるから大丈夫! びしょびしょにはなっちゃったけどね、ちょっと寒かったな、あはは」

「そ、それは笑うところなの?」

「あーだから髪濡れてるんだな」

「拭いたけど流石に乾かなくて」

 

多くの人が気になったであろう質問にも答え、実際のところ陽灯の髪は濡れている。

川に飛び込んでそれほど経ってないから分かりやすいが、誇張してるわけでもなく本当のことだと物語っている。

 

「ねぇねぇ、いつもはなにしてるの?」

「いつも? うーん両親が帰ってくる時間まで外に居て、歩いてるよ。困ってる人が居たら、力になれると思って」

「趣味は?」

「人助け! あっ星は好きだよ。宇宙のこととか勉強してるから強いて言うなら読書になるのかな?」

「好きな人はいた?」

「? みんな好きだけど」

「そういう意味じゃなくてほら、特別に好きというか…異性として好きとかはっ?」

「よく分からないけど、特別はなかったかな? でも仲の良かった幼馴染が居て、その子は一番大切だったと思う。こっちに来る前に、離れることを伝えたくらいだったから」

「好きなスポーツとかはあるのか?」

「体を動かすことなら全般好きだよ。一番とかはないかなー」

「ゲームとかしないの?」

「たまにするし、よく小さい子と遊んだりはするね」

 

男女関係なく質問をされつつ、陽灯はちゃんと全部答えていた。

まあ一部の質問の答えには女子から甲高い声が響いたりはしたが、特に大きな問題はなかった。

 

「それじゃあ---」

「みんな、気持ちは分かるけどそこまでにしましょう」

「ん?」

 

全然気にせずドンと来いといった様子だった陽灯は知らない声が聞こえてそこを見ようとしたが、囲まれてる影響で姿が見えない。

 

「あっ、鷲尾さん」

「もう言ってる間に休み時間が終わるわ。彼も大変だし周りの子も座れないし皆も先生に注意される。だから一旦ここまでにして、次の休み時間にしましょう?」

「うわ、ほんとだ」

 

鷲尾、という人物が時間を伝えたようで、その際に確認したのだろう。

昼休みでもないため、少ししか時間は無い。

陽灯も時間を確認すれば、もう一分もなかった。

 

「じゃあ、私たちは戻るね、陽灯くん」

「鷲尾さんも教えてくれてありがとう」

「うん、またいつでも答えるから好きな時に来てね。あと、困ったことがあったら遠慮せずに言ってねー!」

 

さっきまで囲まれていたのが嘘のように、次々と離れていく。

今近くにいるのは、元の席の男女と陽灯と鷲尾と呼ばれた女の子。

陽灯はわざわざ教えてくれた人物を見る。

髪を後ろへ纏め、どこか真面目な印象を抱かせる少女。

 

「ありがとう、えっと……」

「鷲尾須美よ。気にしないで、やりたくてやっただけだから」

「そっか、でも教えてくれなかったら気づいてなかったから。それのありがとう」

 

陽灯が名前を知らないことに気づいた彼女は自身の名を名乗ると、またお礼を言われたため、素直に受け取ることにして戻ることを伝えると戻っていく。

そして数秒後にはチャイムが鳴り、また授業が始まる---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

2限目、3限目の休み時間も囲まれていた陽灯だったが、昼になると落ち着きを取り戻している。

正確にはご飯の時間があったから流石に質問責めに合わなかったという理由だったが、今は数人に囲まれている程度だ。

質問も少なくなり、普通に談笑している。

 

「なぁ、あんた!」

「?」

 

そんなとき、ちょっと大きめの声が聞こえて陽灯が視線を向けると、どこかで見たことのあるような姿をしている女の子に声をかけられた。

知り合いはいないはずなのに、引っ掛かりを覚えて首を傾げる。

 

「朝はごめん! それとありがとうな! あの後、どうだった?」

「ん? 朝……ああっ!」

 

言われて陽灯は思い出したように声を挙げる。

既視感のあった理由は会ったことがあるかららしい。

困っていた老婆と一緒にいた少女。

 

「問題なく送ったよ。君こそ、間に合った?」

「ああ、お陰さまでギリギリな!」

「なんの事か分からないけど、銀ちゃん。間に合ってなかったでしょ」

「ぎくっ!? で、でも始まるまでには着いたし……」

「遅刻は遅刻なんだけどなー?」

「大丈夫! 俺は授業中の途中だから!」

「そこ胸を張って言えることじゃないからね!?」

 

フォローするように発言したと思われるが、残念ながら何のフォローにもなっていない。

陽灯に比べればマシ、という意味ではなってるかもしれないが、結局二人とも遅刻である。

 

「そもそも遡月はもっと早く出てたら間に合ってたんじゃないか?」

「え? 6時に出たけど?」

「……ごめん」

「…? どうして謝るの?」

 

6時に出て3時間半近く掛かったということは、陽灯がそれほど人助けに専念していたということになる。

流石に周囲も何も言えなくなったようで、なんと言うべきか分からないと困ったような表情だ。

悪いことをしているならともかく、良いことをしているのだから余計に何かと言いづらい。

 

「そ、そういえばさ! 自己紹介してなかったよな?」

 

そんな空気を察したのか、話題を変えるように銀と呼ばれた少女が陽灯に言うと、周りはあからさまにナイスといった合図をしていた。

 

「あ、うん。確かに名前知らないな…じゃあ俺から。遡月陽灯、好きなものは誰かの笑顔。趣味は人助けの普通の男の子だよ」

「あたしは三ノ輪銀! 趣味は漫画を読むことかなー」

「……いや、ちょっと待って。普通に自己紹介しないで。普通とは?」

「遡月だけは絶対違うと思う」

「なんで!?」

 

深刻なツッコミ不足で流れそうになっていたが、誰もがそうするような言い方をした陽灯に総ツッコミが入っていた。

 

「にしても凄いよな、三ノ輪も遡月も」

「凄い?」

「あたしがか?」

「あー確かに」

「誰かのために動くって考えただけでも勇気いるのにね」

「そうそう、それに大変だろ?」

「うーん俺は別に大変だと思ったことは無いかな。やりたくてやってるわけだし」

「それはあたしも同意見。そりゃ、場合によっては大変かもしれないけどな」

「そっかーなんか二人は似てるね」

「こう、キラキラしたものがあるな」

「え、俺そんなのになってる!? え、こわい!」

「例えだから! 例え!」

「あ、ほんと? びっくりしたぁ」

「遡月くんは純粋だなぁ」

 

簡単に真に受ける姿に誰もがその感想を抱き、陽灯という人物を少しずつ理解していく。

 

「一言で言うなら、遡月はお人好しだな」

「でも、良いよねー。かっこいいと思うよ!」

「ありがとう、そう言われると嬉しいよ! でもキミたちもかっこいいし可愛いと思う!」

「え、あ、そ、そう?」

「うん!」

 

笑顔でさらっと言ってのけた陽灯に、一部は頬を赤める。

お世辞ではなく、本気だということが陽灯の顔から判断出来て、実際に思ってるからそう言ってるのだろう。

 

「お、お前な…冗談でもあまり言うことじゃないぞ?」

「俺、本当のことしか言わないから、本気で思ったことしか言わないけど。昔から嘘は言わないようにしてるから!」

「…あっ、これマジなやつだ!?」

 

ふざけてるような様子もなければ真剣で、本気ではないと思っていた者たちもようやく理解した。

 

「天然か……」

「へ?」

 

誰かがボソッと言った言葉に同調し、皆が頷く姿に陽灯は首を傾げていたが、少ししてまた普通の雑談へと変わっていく。

質問というよりは会話になってきているが、まだ初日だというのにクラスメイトとの距離が友達と呼べるレベルまで縮まっているのは彼の独特な雰囲気と純真な姿勢が齎した結果だろう。

さらっと遊びに行く約束を交わすレベルだった。

 

「あ、もう時間だ。そろそろ戻った方がいいんじゃない?

「わ、もう昼休憩終わる! ありがとうね、陽灯くん。また話そう!」

「俺らも戻らないとな。じゃあ、約束忘れるなよ!」

「約束は忘れないよ! またねー」

 

席に戻っていくのを手を振りながら見送ると、まだ銀だけが残っていた。

 

「時間大丈夫?」

「いや、なんというか初日と思えないくらい馴染んでるなあって」

「皆優しいからじゃないかな。三ノ輪さんもそうだけど」

「それだけじゃないと思うんだけどな…あ、銀でいいぞ?」

「じゃあ俺のことは陽灯で。ってそれより本当に時間!」

「やべっ! じゃあ、また来るからな、陽灯!」

 

あと数秒まで近づいてきたのもあって、急かすように言うと銀は陽灯の名前を呼びながら慌てて戻っていく。

僅差で何とか間に合ったようで、ほっと息を吐いている姿に苦笑した陽灯は、机に突っ伏しているクラスメイトに気づいた。

起こすべきか、と思って立ち上がろうとしたところで顔を上げたクラスメイトは周囲を見渡して、首を傾げていたが何も問題なさそうなので大人しく席に座った。

 

(そういえばあの子、さっきも寝てたなぁ…)

 

ブロンドカラーの少女。

ずっと一人で寝てばかりで、気になっていたといえば気になっていた。

しかし陽灯はすぐに囲まれてしまうため、話しかけにいけない。

余裕がある時に近づいてみようと心の中で誓いながら、陽灯は午後の授業を受けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





〇遡月陽灯
普通に名前呼びされるレベルでクラスメイト数人と仲良くなっている。
多分一週間後にはクラスメイト全員と親しくなってそう。目標は神樹館小学校の全員と友達になること。
ただ、たらしっぷりは常時発動型なのでお前いい加減にしないとまたハートキャッチ(物理)か刺されるぞ定期

〇光の巨人
陽灯の中に存在する光の巨人。
陽灯くんが最も信頼を置く友人であり、巨人は時折相談に乗っている。
彼が居なければ多分辿り着いたのは三限目の途中だっただろう。

〇遡月夜霧
陽灯くんにとっての養父。
知的な雰囲気を持ち、クールぶってるが、割と緊張してたりなど気遣ったりなど隠しきれない人の良さが出ている。
学者らしく何らかを調べているようだが、それは不明。
なぜ引き取ったのかも不明であるが、陽灯に対する対応から悪い考えでは無いのは確かだと思われる。
陽灯という名前は『太陽』と『照らして明るくする灯火』から取ったらしく、苗字と合わせると月と太陽の二つを持つ名前となっている。
その名前は『ある形態』を思わせるもので、忘れていても継受紡絆にも受け継がれていたのだろう。

〇遡月澪
陽灯くんにとっての養母。
おしとやかで儚げな雰囲気を持ち、誰に対しても敬語で話す。
家事は得意な方のようで、時折しているらしい。
夜霧とは違って事務関連の作業が多いが、勤め先は大赦で指示を出せる立場から上の方だと思われる。
積極的に陽灯と接しており、遡月家では一番仲が良い。

黄金色のジュネッスの名称

  • ジュネッス・オーア(紋章学で金色)
  • ジュネッス・トリニティ
  • ジュネッス・ブリエ(輝き)
  • ジュネッス・ルフレ(光沢、反射)
  • ジュネッス・ルクス(光)
  • ジュネッス・ルミナス(光り輝く)
  • ジュネッス・ゴールド(金色)
  • ジュネッス・オール(金、全部)
  • ジュネッス・グロウ(発光)
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