【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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キミを連れて駆け出すよ


「友達」

 

◆◆◆

 

 第 8 話 

 

友達

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

使用人が作ってくれた朝ごはんを食べた陽灯は学校へ辿り着いていた。

今日は特別遅刻というわけでもなく、余裕のある登校だ。

いつもいつも困ってる人がいるわけでもないため、こういう日だってある。

そもそも明らかに登校ルートでもないのに、声が聴こえたり見えたりしたらそこへ迷いなく向かうのが原因なのだ。

まぁ、ちょっとした人助け……というか動物助けはしたりしてたが。

 

「おはようー」

「あっ、遡月くん。おはよー」

「おはよう、陽灯」

 

たったの一日。

それだけしか経ってないにも関わらず、陽灯は既に登校して教室にいる同級生と挨拶を交わすほどの仲となっていた。

男も女も関係なく、中には名前で呼ぶ者もいる。

そこから陽灯のコミュニケーション能力の高さが窺えた。

流石に全員とは行かないようだが、数人と出来てる時点で十分すぎるだろう。

陽灯は同級生たちと話していると、何かに気づいたように会話をやめて周りを見渡す。

そして程々に会話を区切ると、そこへ駆け寄っていった。

 

「---おはよう!」

「……! おはよう、なんよ〜」

 

陽灯は太陽のような笑顔を浮かべながらブロンドカラーの少女に挨拶すると、返ってきたことに嬉しそうにする。

なぜ挨拶をしたのか。それは今彼女が教室に入ってきたばかりで、そこから視線を感じたからだった。

陽灯は転校生というのもあるが、彼の性格故に人気者だ。少なくとも、もう周りから見れば友人に見える関係は作り出している。

しかし今陽灯が話した少女は何故か寝てることが多かったりぼうっとしてたり、一人でいることの方が多かった。

別に陽灯は一人で居たいというなら尊重するが、目の前の少女はそういうわけではなく別の理由があるような気がしていた。

言うならば、ただの勘である。

そしてその勘が当たってたりするのだが。

 

「つっきーは朝、早いんだね〜」

「つ、つっきー? 今日は普通に来れたからねーそれと、ごめん! 名前、なんだっけ?」

「覚えてないの〜? 昨日ちゃんと自己紹介したのに」

「流石に10人とかならまだしも、たくさんいるからまだ覚えれてないんだ。結構話した人たちは覚えてるけど…ほら、三ノ輪さんとか」

 

三ノ輪銀という少女に関しては初登校の前に会ってたというのもあったので、陽灯の記憶には残っている。

だからこそ例として挙げたら目の前の少女は納得したようだった。

そして少女は空気が変化しているのを鋭く感じ取る。

少女がチラッと他の生徒を確認すると、陽灯の発言に信じられないといった顔をしている者、何を想像したのか青ざめている者、何やら口パクで伝えようとしている者もいる。

陽灯とよく話してた生徒に関しては、やっぱりかーといった顔や、しまった、といったように頭を抱えていた。

何か空気がおかしいことには気づいた陽灯は首を傾げるも、よく分かっていない。

陽灯からすれば彼女はただの女の子である。むしろ誰にも言ってないだけで、かの光の巨人と共にいる自分の方が異常という自覚はあった。

まぁ逆に言えば、知らない者が居ないと言えるほどに有名な名前でもあるわけだが。

 

「それじゃあ、あらためまして……乃木さんちの園子です~」

 

ブロンドカラーの少女は変わった名乗り方をした。

乃木園子。

大赦の中でも上里とツートップの位置に居る名家、乃木家。当然ながら元一般家庭の陽灯とは天と地ぐらいに地位に差があり、その名は神樹館小学校---いや、四国にいるものなら誰でも知っているほどの苗字だ。

それほどのネームバリューがあり、無論のこと陽灯も---

 

「乃木園子…それが君の名前なんだ。覚えた!

じゃあ、こちらも…遡月さんちの陽灯です。よろしくね!」

「! よ、よろしく〜」

 

残念ながら知ってるはずもなかった。

しかし他の生徒ならば間違いなく態度を変えたり慌てるところを、陽灯は全く気にせず、むしろ彼女に合わせて自己紹介している。

そのことが嬉しかったのか、園子はどこか嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が始まると、陽灯はしっかりと授業を受けている。

ノートはしっかり取っており、頭から煙が出てるような錯覚を周りが覚えるくらいの状態にはなっていたが、黒板に答えを書くように求められた際には分からないと答える潔さがあった。

少なくとも当てられて全部そう答えてたので、彼の頭がアレなのは間違いなく周知の事実になったことだろう。

その後を笑いに変えてたのだけは、誰かを笑顔にする才があるのかもしれない。

そして休み時間には男女問わず話し掛けられており、そこには銀も混ざっていた。

授業中であっても度々陽灯を観察していた園子はそれが少し羨ましく思えた。

園子にその気がなくとも、彼女が話をしに行くと周りは乃木家の令嬢ということで遠慮してしまうだろう。それが嫌で動けず、しかしこのままでは昨日と同じく何も話せないまま一日が終えてしまうという危機感を覚える。

話したいけど話しにいけない。自身のことをよく知るからこそ、動けない。

いくら園子はそう思っても、現実は彼を囲む生徒はあまりに多くて。

 

「---ごめん。俺、ちょっと話したい人が居るんだ。また明日話そう!」

 

そんなとき、申し訳なさそうに周りにそう伝えて彼は一人の生徒のところへ向かった。

机に頭を置いて今にも寝そうな姿。

 

「乃木さん!」

「…はぇ?」

 

眠る前に話さねば、と話しかけると、間に合ったらしい。

顔を挙げた園子は驚いたように陽灯を見ている。

まぁ彼女からすれば人に囲まれていたはずの陽灯がいつの間にか目の前に居たのだから、仕方がない。

 

「つっきー?」

「えーと……よし! 俺も一緒に寝ていい?」

「---うん、いいよ〜?」

「じゃあ、椅子持ってくる!」

 

予想外のことだったのか、僅かに固まった園子はすぐに許可すると、陽灯は小走りで自身の椅子を持ってきた。

そして園子と対面になるように置くと、そこへ座る。

 

「おやすみなさーい!」

「おやすみ〜」

 

何かを話すわけでもなく、一応気を使っているのか机に少し頭を置く程度にしながら陽灯は一瞬で寝た。

普通に考えたら相手は困惑したりするはずが、その園子も園子で天然かつのんびりとした性格なのも相まって、少し陽灯を見てから眠りにつく。

まるで二人だけの世界のような光景で、関係ないはずの周りが呆然としていた---

 

 

 

 

 

 

ちなみに普通に寝過ごして怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になると、陽灯は囲まれていた。

楽しげに会話していると、陽灯は昼休みの行動を聞かれた。

正直どうしてあんな発想に至ったのか誰も分からないだろう。

 

「んー同じことをしてみようかなと思っただけだよ。仲良くなるには相手を知ることが大事かなって!」

「それであんな行動に…?」

 

周りは困惑した。

そりゃそうだ。ぶっちゃけ陽灯の行動は命知らずがやることで、もし彼女が権力を行使するタイプの人間だったなら斬首待ったナシである。

不敬にもほどがある。

昔で言うならば、乃木園子という少女はお姫様みたいなものだ。

 

「でも気になるんだよね。あの子はちゃんと会話してるけど、みんなから距離感を感じるというか、遠慮してる気がして」

「まぁ上里家と並んで最高の権力を持つ名家だから、流石に畏まるというか…」

「上里?」

「えっ、そこから?」

 

そういった知識は全部投げ捨てた陽灯だったので、家について全く知るはずもなく、何も知らなさそうな姿に同情してか一から説明が始まってしまった。

全てを聞き終えた時、陽灯が真っ白になったのは余談だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に帰っていた同級生たちと別れて、帰り道を歩く。

誰も居なくなったことを確認した陽灯は自身の胸に手をやって、小さな声で喋り始める。

 

「ねぇ、巨人さん。けんりょく?ってそんな凄いの?」

 

あれこれ聞かされたが、結局のところ陽灯は乃木園子という少女の家が凄いという認識しかしていない。

それでも分かった部分があったから、聞いてみたのだろう。

人間ではない光の巨人に聞く理由はさておき。

 

『どの世界にも大半は権力・権威というものは存在する。場合にも寄るが、物理的強制力や潜在的な社会的圧力を強いることで人を支配している。

キミたち人類の法律や憲法も同様だ。より簡単に言うならば、権力は人が他者を抑えつけて支配し強制させる力』

「強制…それって絶対?」

『その地位に着くものに寄るはずだ』

「そうなんだ。じゃあ、それでみんな?」

『遠慮している理由のひとつだと私は思う』

「でもあの子はそんなけんりょくって使うようには見えなかったけど…」

『権力ある者にはそれだけではなく、立場というものがある。大まかな理由はそこだろう』

「…むむ、むずかしいねぇ」

 

知識豊富な友人のお陰で陽灯は乃木園子、というよりは乃木家の存在を認識していくが、その顔は少し悲しげだ。

 

『…例え彼女が許しても周りは許さない。彼女自身にも問題がある部分はあるといえばあるが……』

 

巨人が一日で分析した部分から彼はそう語るが、陽灯はんー、と唸って考えていた。

一応、頭には入れているようだが。

 

「でも…悲しいじゃん。誰も彼女自身を見てない。あくまで皆が見てるのは、乃木家の乃木園子という女の子で……うん、やっぱりおかしいよ。そんなの良くない。彼女の本音が分からないからなんとも言えないけど…俺は彼女と友達になる。そんなの関係ないんだって行動で示すんだ」

 

権威、権力。

陽灯は知らないが、遡月家にも同様のものがある。

悪用すれば様々なことができ、悲劇も喜劇も起こせるもの。

しかし遡月家の力では乃木家よりかは低く、対等になることはない。

親の力も借りられない陽灯には抗う術はないのに、陽灯は決心したような顔でそう語った。

 

『キミならばそう言うと思っていた。今の私に出来ることは少ないが---キミのやりたいようにやればいい。私がそれを支えよう』

「---うんっ。ありがとう、巨人さん」

 

呆れたわけでも驚いたわけでもなく、予想通りといったような声音で味方であり続けると遠回しに言ってくれた巨人に陽灯は嬉しそうな笑顔を浮かべて、明日からのことを考えながら帰り道を歩く。

その歩調は暗いことを一切感じさせないほどに軽やかだった。

 

「そういえば、巨人さんってけんりょくもよく知ってるんだね?」

『宇宙は広い。私のような存在は他にも多く存在し、組織となって動いている者たちもいる。光の国---地球から約300万光年離れたM78星雲と呼ばれる場所に存在する星で別の次元に存在する者たち』

「それってオリオン座の? あれ、でもオリオン座は1600光年じゃ…」

 

陽灯は宇宙や星などに関しては一般の小学生よりかは詳しい。

自分自身でもそうでは、と自認しているしそれほどの知識を秘めている。

実際に星を知っていてもその中にある恒星を知っている者はそう多くはないはずだ。

だからこそ、光の国と呼ばれるものがないということを知っている。

 

『さっきも言ったが、この次元の話ではない。キミが知る宇宙とは全く異なる進み方をしている宇宙に存在している星だ』

「ああ、宇宙が複数あるってやつ…たしか、マルチバース! うんうん、四国だけでも広いのに、あの先はもっともっと広いんだねぇ…ゆにばーす!すごい!」

『そうだ、いつか陽灯の世界ももっと大きく広がるだろう』

「うん、その時は巨人さんも一緒だ!」

『……それは』

「えへへ、楽しみだなーどんな未来が待ってるかなあ」

『…………』

 

宇宙、空を見ながら()()()()()()()()()に夢見る陽灯に巨人は何かを言えず、そのまま黙ってしまった。

会話を終えた陽灯は少し歩き、家の中に入ると荷物を持とうとする使用人に遠慮するがあっさり奪われてしまい、また親しそうに、笑顔で喋っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食の時間になると、養親は仕事がある日でもやめて食卓に戻ってくる。

陽灯と過ごす時間を作るためだろう。

大丈夫なのかと聞いても、子供が心配するようなことではないと返されるだけだ。

客観的に見ればしっかりしている二人なので、陽灯も何も言わなくなったが。

 

「今日は二日目、でしたね。学舎の方はいかがでした?」

「うん、今日は普通に授業を受けて、友達と話してた」

「まあ…」

「もう友達が出来たのか? すごいなぁ…」

「えへへ、皆が優しいからだと思うよ?」

 

心配な部分もあったのか学校について聞かれて答えると、澪も夜霧も感心したように褒める。

陽灯はそれを周りのお陰と返すが、澪は首を横に振った。

 

「例えそうでも、人間関係というのは複雑なんですよ。周りがではなく、貴方自身も優しいからだと私は思います」

「そんなものなのかなー」

「そんなものです」

 

厳しくではなく、優しく諭す澪に陽灯は納得したように数回頷くと、ご飯を口に含む。

以前まで食べていた味とは全て異なるものの、昔も今も変わらず美味しくて陽灯は幸せそうな顔だった。

当然ながら全てにおいて今の家の方が質も味も良いのだが、前の家の料理は料理で好きだった陽灯はどちらかを選べない。

 

「あ、そうだ」

 

出された食事に舌を打っていると、思い出したと言わんばかりに声を挙げた陽灯に夜霧も澪も首を傾げた。

 

「けんりょくある人って近づき難いって思われるの?」

「突然だね」

「学校でね、ある女の子にみんなが遠慮してるというか…うまく言えないけど、近寄られたら話すけど、皆からは話しに行くことが用でもないとなさそうなのが気になったんだ。嫌いとか、虐めとかそういったわけでは無いと思うけど…」

 

全く何も知らなさそうだった陽灯が権力などと言い出して意外そうな顔をしたが、理由を聞いて得心がいったようで二人は少し困ったように眉を曲げる。

 

「それは少し、難しいですね。その女の子がどういった立場に居るのか、それに寄りますから」

「えっとね、乃木園子って女の子」

「乃木家の令嬢のことだったかぁ…」

「ああ、向こうは覚えているか分かりませんが…昔見た彼女はとても可愛らしいお方でしたね」

 

夜霧も澪も会ったことがあるようで、夜霧は片手で顔を覆い、澪は懐かしげに微笑んでいた。

言葉から察するに、今よりも小さい時なのだろう。

 

「彼女は少し難しいというか……まぁ、変わってるというべきか。悪い子ではないのは確かだと思うよ」

「ですけど、周りから見れば近づき難い存在かもしれませんね。乃木家というのは……陽灯さんに分かりやすく言うならお金持ちですから」

「なるほど……」

「それで、どうして乃木家の令嬢のことを?」

「仲良くなりたいんだ。よく寝たりぼうっとしてるから……もっと笑顔で楽しい学校生活を送って欲しいって。俺に出来ることを増やすためにも少しでも何か聞けないかなって…」

 

打算があるわけではなく、純粋にそれだけを思っている。

それを理解した二人は顔を見合わせると、陽灯に優しく微笑む。

 

「でしたら…陽灯さんの思うがままに行動してみては?」

「え? でも、ちいって向こうが上なんでしょ? 夜霧さんや澪さんにも俺がやらかしたら何か起きるかもしれないのは……俺嫌だよ」

「なに、その時は何とかしてみせる。それとも何かい、陽灯は何かやるつもりなのかな?」

「ううん、仲良くなって話して、一緒に過ごして遊ぶくらい! そう、友達になる!」

「なら大丈夫だ。陽灯は陽灯らしく接していけばいい」

「俺は、俺らしく……」

 

宣言して、心に留めるように言われた言葉を反芻する。

それで覚悟を決めたのか陽灯はパンっと頬を強く叩いた。

突然の行動に夜霧も澪も待機していた使用人も目を丸くした。

本人は痛そうな顔をしており、両頬が赤くなってるが力強い目をしていた。

 

「ありがとう、俺頑張る!」

「あ、ああ…うん」

 

割と痛そうな状態になっているため、夜霧は何とか返事をし、澪は濡らしたタオルを持ってくるように指示を出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

やることを決めた陽灯は学校に着くと、同級生と話す。

みんなと仲良くしたいという思いは変わらず、自分自身を曲げない彼は困ってる人が居たら力を貸す。

特に変わったことのない時間を過ごしながら、園子が登校してくると陽灯は向かった。

 

「乃木さん、おはよう!」

「…ふぇ? お…はよ〜」

「大丈夫? 眠たい?」

「大丈夫だよ〜」

「そっか、無理はしないで…っと呼ばれてるからもう行くね!」

 

ほんの少し会話を交わすと、陽灯はさっきまで話してた者たちの方へと向かっていく。

わざわざ話しかけに来てくれたからか、園子はそんな陽灯を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四日目五日目六日目---陽灯が転校してきて一週間。

それほど経ってもなお、陽灯は園子が来る度に声を掛けていた。

何度も何度もタイミングがあれば話そうとする姿に、気のせいではないと園子自身も分かっていた。

そうなると、興味というものが出てくるもので園子は最近観察するようになっていた。

が、やはり一人にならないので話せるタイミングがない。話しかけに行って会話を邪魔をするのも忍ばれるからだ。

何より一週間経っても陽灯の人気は消えるどころか、むしろ人の密度が濃くなっている。

これに関しては、彼のコミュニケーション能力が高いせいだろう。

誰かと話したいからと蔑ろにすることもない。誰かが特別だとかそういった差別や区別もなく、彼は平等に話す。

それが男の子でも女の子でも変わらず、嘘を全く吐かない裏表のない性格が安心し受け入れられてるのもあるかもしれない。

場合に寄っては空気が読めないという欠点を持ってしまうが、それをカバー出来るほどのコミュニケーション能力を持っている。

彼はいわゆるコミュ強だった。

当然、墓穴を掘ることは多いが。

そして休み時間が終わると、授業を受ける。

相変わらず座学系統には弱いようで頭から煙が出ている錯覚を覚えるが、体育に関しては話が別。

スポーツ全般成績が良く、身体能力は間違いなく学校一だろう。

運動会が始まる前に居なかったことを悔やまられるレベルだった。

しかも見てる側が楽しそうだと感じるほどに楽しそうな様子なのが憎めないひとつのところ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陽灯はいつも教室にいるわけではなく、休み時間になると遊ぶわけでもなくどこかへ行く。

誘われたら遊ぶが、特に何もないなら彼は自由気ままに行動する。

ようやく訪れたチャンス。

園子は陽灯の元へ向かおうと足を動かそうとして、同級生ではない誰かと話している姿を見た。服からして女の子。

学年では見たことがなく、下か上。

敬語を使ってないことから下の可能性はあるが、陽灯は話を聞いて頷くと後ろをついて行っていた。

また話すタイミングを失い、戻ろうかと考えた園子だったが好奇心には打ち勝てず、後を付けることにした。

辿り着いたのは二つ下のクラスであり、会話は聞こえないが仲介しているようにも見える。

話を終えたのか、男の子二人が互いに頭を下げてる姿があり、陽灯は二人の両肩を軽く叩くと、しーっと口元に人差し指を立てながら包装されたクッキーを渡して解散と言わんばかりに数回手を叩く。

すると騒ぎはすっかり収まり、陽灯も戻ろうとしたところでなぜか人が殺到して抜け出せなくなってしまった。

流石の陽灯も予想外だったようで驚いて僅かに固まると、次々と質問責めにあっていた。

苦笑しながら陽灯はそれらに答えていき、もう時間がないことに気づいたのか手を合わせながら人混みを抜け出していく。

戻るつもりだろう。

話す機会と言えばそうだが、喋りかけて授業に遅れてしまえば迷惑をかけてしまう可能性があって園子は仕方がなく先に戻ることにした。

 

「…あれ? いま誰かいたような…ってやばっ!?」

 

見たことのあるような。綺麗な髪が僅かに見えた陽灯は首を傾げるが錯覚だったのかもしれないと思い込んで時間がないことに気づいて戻っていく。

なお普通に遅刻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になると、陽灯は何かを考え込んでいた。

 

「やっぱり…気のせいじゃないよね」

 

小さく口に出てしまっているが、流石の陽灯もうすうすと勘づいていた。

宿っている巨人も肯定するのだから気のせいではないのだろう。

ならば、と陽灯は行動に移すことにした。

 

「乃木さーん!」

「ん〜?」

 

帰ろうとしていた園子は立ち上がっており、机の前に来た陽灯は口を開こうとして、周りの視線を集めてることに気づいた。

何をしでかすか分からないからだろうか。

 

「放課後時間ある?」

「? あるよ〜?」

「じゃあ、ごめん。良いところがあるんだ、行こう!」

「え?」

 

気を遣ってか一言謝ってから園子の手を取ると陽灯は走り出す。

流石に園子も呆気に取られたようで、手を引かれていた。

彼女からすれば急すぎる行動で、けれど全速力というわけではない。

ちゃんと園子のペースを見て走る速度も落とし、合わせていた。

教室から離れ、辿り着いたのは芝生に包まれた場所だった。

遮るものがなく、太陽の日差しが直接降り注いでくる。

軽く息を整えながら陽灯と園子は向き合っていた。

 

「ごめんね、ちゃんと話すには皆から離れた方が乃木さんも気を遣うことはないかなって思ったんだ」

「驚いただけだから、大丈夫だよ〜」

「そっか、なら良かった」

 

安心したような笑みを浮かべる。

自分自身でも強引だった自覚はあったのか、申し訳なく思っていたようだ。

しかしそれっきり互いに口を開くことがなかった。

園子は思いがけず出来たチャンスに何から話せばいいか考えて、陽灯は何を考えているのかただ悩んでいる。

 

「…うん、そうだ」

 

口を開いたのは数秒くらい後のことだった。

陽灯は一人で納得したように真剣な顔で園子を見つめると、真面目な話だと判断したように園子も耳を澄ます。

 

「うじうじ考えてるのは俺らしくない。実はみんなから聞いたんだ、乃木家のこととか、君のこと。上里家のことも」

「あ〜……うん」

 

知らなかった。

無知だったからこそ、陽灯は積極的に話しかけてくれた。何も分からないから乃木園子という人間と関わりを持とうとしてくれた。

知らないからこそ、大胆に声を掛けてくれた。

たったの一週間でしかなかった。

時間としては酷く短く、一日もないだろう。それでも嬉しくて、友達になれるかもしれないと思っていた園子は何かを察したように目を伏せる。

最初は誰も同じだ。同じ名前がいるという可能性もあるから話しかけてくれても、園子が上里とツートップの乃木家の令嬢と知れば人が変わる。

関わりが少なくなる者。遠慮する者。媚びる者---結局は壁が出来てしまう。

それは仕方がないことだと納得していたが、今回も同じなのだろう。

だから園子はいつもと変わらない自分のまま口を開こうとして。

 

「だから、俺と友達になろう!」

「…え?」

 

そんな予想もしなかった言葉に驚いて、何も考えられなくなったのも仕方がないのかもしれない。

園子の様子に気づかずか、陽灯は一歩踏み出す。

その壁を、見えなくとも隔てている壁をあっさりと飛び超えるように。

 

「家のこととか権力とか、お金持ちとか立場とかそんなの関係ないよ! そりゃ他の人たちは気にするかもしれないけど、俺は気にしない!

だって俺は乃木さん…園子ちゃんと仲良くなりたいから! 同じクラスの、ただの乃木園子という女の子と仲良くなりたいんだ!」

 

そう言ってとびっきりの笑顔を見せる陽灯は、太陽に照らされて眩しさを感じさせる。

まるで陽灯自身が太陽の光であるかのように輝いて、綺麗で。

 

「…いいの? 私のことを聞いたなら分かってると思うけど、つっきーにも迷惑かけるかもしれないよ?」

「迷惑だなんて思わないよ! もし何かあったなら、俺が解決する。こう見えても人助けは得意なんだ! あっただこれは俺が勝手に思ったことで、乃木さんが嫌ならちゃんと距離感とか諸々考えるというか……と、とにかく! 嫌なら嫌と言ってください!」

 

ちょっと台無しになってしまっているところもあるが、これは陽灯の心そのものだ。

誰にもそうなのだろう。園子は家が家なこともあって多くの人を見てきたが、ここまで純粋で真っ直ぐな人物は見たことがなかった。

遡月家の家柄的に乃木家には匹敵しない。ある意味敵が増えることになる。だけど、彼はそれすらも迷惑じゃないと言ってくれた。

興味が湧いてくる。

もっと知りたいと。もっと話したいと、ここに来る前よりも園子の気持ちは強まっていた。

何よりも---

 

「名前…」

「…へ?」

「名前で呼んで欲しいんよ〜あ、つっきーがいいなら、あだ名でもいいよ?」

 

さっきのように呼んで欲しくて、そのようなことを言っていた。

乃木家の園子ではなく、乃木園子として呼んで欲しくて。

それに関しては伝わったのか、陽灯は悩むように俯いて考え始めた。

 

「あだ名、あだ名かあ…俺そこまで得意じゃないんだよね。乃木園子だから…のこちゃん? ののちゃん? その…っちとかうーん……」

 

小声で挙げながらチラッと陽灯が見れば、園子は期待するような目で見ている。

逃れることは出来なさそうだ、と陽灯は考えるが、元々頭は大して良くない彼がこれといったものを浮かべることは出来ず。

 

「じゃあ……安直だけど、園ちゃん! で、どう?」

「おお〜それがいい〜」

「なら、そう呼ぶね! そうだ、それならつっきーも悪くないけど、俺のことも名前で呼んで欲しいなーその方が友達!って感じがすると思うんだよね」

 

目を輝かす彼女に安心しつつ、陽灯もまた提案すると園子は自分で納得したのか思案した後にぴかーんと閃いたような様子を見せる。

 

「じゃあ〜つっきーは…はるるん、かなぁ?」

「うん、それで大丈夫! 園ちゃんが決めてくれたものだから、俺は嬉しいよ!」

 

ニコニコと裏を読む必要がないくらい嬉しそうなオーラのようなものすら見える。

だからか---

 

「はるるん…はるるん」

「ん? なに?」

「えへへ、呼んでみただけ〜」

「そう---」

 

嬉しそうに何度か名前を呼んで、園子は笑顔を浮かべた。

陽灯が来てから、初めて見た心からの笑顔。

笑顔になってくれたことへの喜びを感じつつ、陽灯は園子の笑顔に見惚れて僅かに固まる。

 

「そっ……っか! 今日から俺と園ちゃんは友達。だからもっともっと、たくさんお話しよう。学校でも、プライベートでも!」

「うん、不束者ですがよろしくお願いします〜」

「お、おお…こちらこそ、まだまだ未熟といいますか逆に迷惑かけちゃうかもだけど、よろしくお願いします」

 

それも一瞬で陽灯は我に返ると、ぺこりと頭を下げる園子に同じように返すと、何処かおかしく感じたのか二人して笑い合った。

 

「さて! 園ちゃん、時間も時間だし暗くなる前に一緒に帰ろう?」

 

まだ余裕があるとはいえ、小学生である二人は早く帰るべきだ。

だからこそ、陽灯は誘った。

手を伸ばして、一緒に帰ろうと。

そんな陽灯の手と顔を園子は往復する。

下校。クラスメイトとの、友達との下校。

なんと心躍る響きだろうか。

当然ながら、園子は経験がなく、その手を取っていいのか考えかけたが遠慮がちに手を伸ばして。

 

「行こっ!」

「---うん!」

 

その手を包み込むように握った陽灯は園子を優しく引っ張る。

それがきっかけになったのか園子は自らの足で歩き出した。隣に並んで、

新しく出来た初めての友達と。

今度は、園子自身が壁を飛び超えたのだ---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

陽灯は普通に遅刻した。

理由はまぁ、例の人助けによるものだが、遅れた原因は自分にあるので陽灯は特に言い訳せず謝り、授業に途中参加しただけでこれといって特別なものはない。

いつものように休み時間になったり囲まれ、遅れた理由を聞かれたらそのまま答える。

そうして話していくうちに、陽灯は視線を感じると視線の主に安心させるように微笑む。

それがきっかけとなったのか。

 

「---はるるん〜」

『!?』

 

園子が名前らしきものを呼びながら足を進める。

明らかにその人物はこの教室には居ない。つまりあだ名しか選択にはなく、周りが驚いてる中で園子は陽灯の前に立つと陽灯は手を差し伸べる。

 

「いらっしゃい、園ちゃん。座る?」

「…! うん、ぜひぜひ〜」

『!?』

 

優しく迎え入れるような言葉と行動に、何より昨日と同じあだ名で呼んでくれた陽灯に園子は嬉しそうにその手を取った。

なお園子のことをあだ名で呼ぶ陽灯にまた驚かされる同級生たち。別のクラスの者ですら驚いている。

 

「……って、そっち!?」

「だめ?」

「い、いや園ちゃんが良いならいいけど」

「やったぁ」

 

そしてまた、今度は椅子---ではなく陽灯の膝上に乗る園子の行動に三度の驚きが生まれたのは言うまでもなく。

陽灯は休み時間が終わるまで質問責めされた。

けれども。その会話の中には確かに園子も居て、以前までの空気や遠慮が少し減っていた。

それは陽灯が緩衝材として上手く会話を回したのもあるだろう。

ただ女子が同性である園子に質問責めするくらいには仲良くなれている姿に、自分のことでもないのに陽灯は嬉しそうに笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一ヶ月。二ヶ月。三ヶ月。四ヶ月。五ヶ月。六ヶ月。

月日は過ぎ去ってゆき、気がつけば四月。

進級し何人かとは分かれたが同じクラスメイトになった者たちも少なくはなく、そこには園子と銀、須美もいる。

半年も過ぎればすっかりと陽灯は有名になってしまい、本人は知らないが女子の中で人気が出ている。

男子も含めて相談や頼れる人物という印象を抱かれるようになったのは、陽灯が毎日困ってる誰かが居たら助けていたからこそ、彼の行動の影響だ。

最初は家柄的に近づき難いだけで容姿の整った乃木園子とよく一緒にいること、彼女の性格も相まって人気のある三ノ輪銀と親しくなっているといった部分の他に男女問わず親しい陽灯に妬むものも居たが、今は全く居なかった。

というのも、いわゆる『いいやつ』に分類されるのが陽灯だ。

実際に関わると彼の良さがよく分かってしまう。本人が苦手なだけでしかないが嘘を言わず、愚直なまでに素直で純粋。何よりとびっきりのバカだ。

はっきり言って悪感情を抱くのがバカバカしくなるし、仮に喧嘩になっても陽灯は決して誰かを殴るということをせずされるがまま。

どんなことがあっても許せる器。

見返りを一切求めず誰かのためだけに全力で行動する姿。

その在り方が眩しくて、だんだんとそういった人物は減っていった。

無論、人が人である限り好き嫌いというのは千差万別。

陽灯の在り方や性格が苦手だったり嫌いなものは居るが、表立ったものはない。

まぁ下級生には喧嘩を仲介してくれる人みたいな印象も抱かれたりはしてるのだが---何はともあれ、陽灯はちゃんと神樹館小学校の一員になれたと言ってもいいだろう。

桜が散った春。

陽射しを浴びながら見上げた空は大きく広がり、翳りがなかった。

 

「今日も頑張ろう、巨人さん」

 

---神世紀298年。

四月。

ここから始まるのが始まりの物語。

終わりの物語ではなく、未来へ託す物語だ。

どんな結末を迎えるかなど、誰も知る由はない。

なぜなら既に、歴史が変わっている。神である神樹も、とある存在も。

正体不明の存在や過去に現れた怪獣や光の巨人。

その誰もが知らず、未知の歴史。

それでもきっと、彼ならばより良い未来を創れるだろう。

どんな時も明るく、人を笑顔に出来る彼ならば。神ですら思いやり、友で在ろうとする彼ならば。

その結末は彼が夢見る英雄(ヒーロー)のように。

御伽噺に出てくる勇者(ヒーロー)のように。

大円団(最高のハッピーエンド)を迎えられるかもしれない---

 

 

 

 

 

 

 





○遡月陽灯
権力や権威に恐れることなく相手をちゃんと知った上で、園子を『乃木家の園子』ではなく『一人の女の子』として接することで友達になった。
一週間であだ名呼びに変わってる二人の様子にはクラスメイト全員が驚いた模様。
ちなみに進級時には既に小学校の中で有名人。
人助けをしまくった結果男子からは信頼され、女子から人気はあるが、告白されたことはない。その理由は……下記の通り、そういうことです。
むしろ陽灯に告白出来る人は正しく勇者だと思う

○乃木園子
元々転入生ということで気になっていたが、話しかけるタイミングがなく観察ばかりをしていた。
しかし陽灯は毎日一言だけでも会話をしにきてくれ、家の事を関係なく受け入れてくれたことから、本当の意味で初めての友達が出来た。それもあって陽灯は他の者たちよりも彼女の中では特別なのだろう。
ちなみに陽灯のお陰で喋る相手はめっちゃ増え、以前よりも子供らしく楽しそうな姿が目撃されているとか。
何より、陽灯とあだ名を呼び合うようになって友達になって数日後、彼女は陽灯とほぼ一緒に居ることになってたりするのだが……陽灯が女子からの人気が凄いことになっていったことから理由は察せられるだろう。

黄金色のジュネッスの名称

  • ジュネッス・オーア(紋章学で金色)
  • ジュネッス・トリニティ
  • ジュネッス・ブリエ(輝き)
  • ジュネッス・ルフレ(光沢、反射)
  • ジュネッス・ルクス(光)
  • ジュネッス・ルミナス(光り輝く)
  • ジュネッス・ゴールド(金色)
  • ジュネッス・オール(金、全部)
  • ジュネッス・グロウ(発光)
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