【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
ところでこの作品終わりそうですか? ギャラファイ4出る頃には終わってます(適当)
いつもと変わらぬ朝を迎え、陽灯は体を伸ばして時間を見ると時刻は4時だった。
小学生なのもあって深夜に外を出るのは禁止されているため、陽灯は基本的に22時くらいには寝ている。
欲を言えばあと二時間くらいは外に出たいと密かに思ってはいるが、不安にさせたくない気持ちもあってそれは控えてることにしていた。
睡眠時間的には6時間ほどか。子供と考えるならばもっと寝るべきだが、これでも彼は寝ている方なのだろう。
「巨人さん、起きてる?」
『---どうした?』
「ううん、気になっただけなんだ。巨人さんが休めてるなら、いいんだけど…見えないからさ」
『…そうだな、少なくとも長くキミの中に居たお陰である程度回復することが出来た。もしヤツが再び現れても戦えるだろう』
ヤツというのは陽灯の記憶の中に存在する怪獣。
自身を殺し、多くの人々を殺した上に甚大な被害を齎した存在。
「そっ、か……」
『…心配はいらない。やつも回復しているということだが、 陽灯は何もしなくていい。その時、私はキミから一時的に離れよう』
「違うよ」
『…む?』
「俺は離れない。その時は俺も巨人さんと戦うよ。俺はキミと居なければ生きられないんでしょ? だからそれしかないなら、やるよ。ただね、巨人さんが心配だったんだ。戦うのはきっと痛いことだし苦しいことだと思うから、俺は巨人さんに何をしてあげられるのかなって。守ってくれるキミに何を返せばいいのかなって」
『---』
強い眼差しだった。
いくら巨人の力で死から逃れたとはいえ、自身を殺した元凶を相手にする可能性が出ている。
にも関わらず恐怖も怖気つくこともなく、ただ巨人を心配する。
とても心優しい彼らしい姿だった。
『必要はない』
「え?」
『私はもう、キミにたくさんのものを貰っている。初めて会った時から、今も』
「…そうなの?」
『無論だ』
「そっか、じゃあ…よかった!」
それがなんなのかまでは深掘りせず、ただ励ますための嘘ではなく本当のことだと理解しているのだろう。
陽灯は嬉しそうに笑顔を浮かべて、布団から出ると畳んでいく。
陽灯はきっと自覚していない。
彼の変わらぬ笑顔がいつも誰かを救っていることを。誰かを照らしていることを。陰りを消し去っていることを。
それが、宇宙人にすら影響を与えていることを。
共に毎日を過ごす日々が、それだけ心地が良いということを。
陽灯が部屋から降りてくると、既に数人の使用人が仕事をしている。
朝から夜まで、というわけではなく朝にしか会えない人たちも居るからこそ陽灯は早起きなのだ。
無論、別にお城というわけでもないのでそんな朝に10人も20人もいなくて、合計でそれくらいだろう。
「おはようございます!」
いつものように笑顔を浮かべながら元気よく挨拶を交わすと、気づいたようでその場に居合わせた者たちに優しげな表情を浮かべながら挨拶を返される。
陽灯はそれから目的の女性を見つけると、声を掛けた。
「おはようございます、よく眠れましたか?」
「うん、ばっちり! ね、那由さん。澪さんや夜霧さんは?」
「奥様と旦那様はまだ就寝しております」
「あー…大丈夫なの?」
「お仕事が長引いてたようなので…」
「そっか…しょうがないね。起こさないであげてね」
「はい。それよりも陽灯様は御二方が居らずとも朝食はちゃんと召し上がってくださいね。また心配させてしまいますので…どうせ今日も抜こうとしていたでしょう?」
「うっ……そ、そんなわかりやすい?」
「それはもう。半年以上も世話をしていたら」
使用人の中でも、陽灯と長くいる人物はいる。養親が仕事柄ずっと居ることが出来ないのあって、いわゆる役割分担である。
身の回りの世話として付けられたのが三名ほどおり、那由と呼ばれた女性は黒髪で髪が短く真面目そうな雰囲気を感じさせる人物だ。
基本的には朝しか居ないので、陽灯はいつも休みの日にたくさん話している。
だからか、何度か朝飯を抜いて家を出たことは思い切りバレていた。
「そ、それより! いつも言ってるけど、様なんていいよ! 俺は俺だし…」
「それも同じです。仕事は仕事ですから」
「むむ…一回だけ」
「ダメです。早く召し上がってください」
「はーい……今日はどんなのかなー」
「今日は丹花さんですから、和食かと」
「そっか! ありがとう! またねー!」
教えてもらったことにお礼を述べると、陽灯は最後まで笑顔で那由の方を見ながら手を振って食卓に向かう。
その姿を那由は毅然とした態度で頭を下げるものの、口元は緩んでいる。
仕事に真面目なだけで、陽灯を思いやっていることは一目瞭然だった。
そうして仕事に戻ろうとしたところで、同僚にそこを指摘されてからかわれるのはもはや日常である。
ご飯を食べ終わると、陽灯はちょっとのんびりしたり家事を手伝ったら慌てて追い出されたりはしたが、歯を磨いて顔を洗い、しっかりと準備する。時刻は7時ほど。
いつもよりは遅いが、普通に行けば間に合うだろう。
「じゃあ、行ってくるけど澪さんや夜霧さんにはちゃんと行ったって伝えておいてね。二人は心配しなくていいって!」
「はい。気をつけて行ってらっしゃいませ」
「うん、那由さんもお仕事終わって、帰る時気をつけてね! 俺に出来ることあったら手伝うから!」
「……学校でしょう」
「あっ……と、とにかく出来る時なら!」
「そうですね、その時が来れば」
「うん! 行ってきまーす!」
いつものように明るく出ていく陽灯の姿を那由…と他の使用人たちも見送る。
いつも明るく学校へ行く彼の姿は子供らしいというのもあって、彼女らには一種の癒しだ。
本人は全く分かってはないが、陽灯が来てから遡月家は少し変わったというのは全員の共通認識になっている。
主に元気一杯のお人好しのお陰で賑やかになり、特別悪かったというわけではない全体の空気はより穏やかになっていったのだ。
つまり、彼は清涼剤だった。
家を出ると、陽灯は空を見る。
空は晴れ渡っており、雨雲はひとつもない。
春の陽射しは心地が良く、眠気がやってきそうだ。
しかし陽灯は学校に行く必要がある。
何より絶好の人助け日和なので、そんなことをしている暇などない。
「今日も頑張ろう、巨人さん」
残念ながら春を知らせる桜は散ってしまったが、春を迎えたという証明でもある。
四月とは出会いの季節である。
もう進級した後だが、新しい出会いといえば新しい一年生。
陽灯ですらまだ数人くらいしか話せてないが、困ってることがあったら助けてあげたいと思っている。
…まぁ、既に数人と知り合ってるのが可笑しいのだが、それはもう陽灯なので今更だろう。
「---あら? 陽灯くん?」
「おわ……
学校に向かおうと敷地内から出たところで、タイミングが合っていたのか声が聞こえて横を向くと、一人の女性と小さな子供が居た。
黒紫の女性と薄い黒い髪の少年だ。
家の場所からして近所の人だろう。
陽灯は少年に近づいて背を合わせてから口を開く。
「おはよう、
「…! おはよう、陽にぃ!」
話しかけられるということは知り合いである証拠であり、紹夢からは慕われてるような呼び方をされていることから間違いなくいい関係を築いてるのは想像に絶やすい。
「うん、元気そうだ。今日は大丈夫そうですか?」
「ええ、本人も体調がいいみたいで。無理をしてるわけでもないみたいだから」
「そっか……俺がどうにかしてあげられたら、いいんですけど」
陽灯は事情を知ってるようで、紹夢の頭を優しく撫でると彼は嬉しそうにしている。
しかし陽灯の表情は優しげでありながらも、何処か悔しそうだ。
まるで手が届くのに何も出来ないのが歯痒いような。
「紹夢と遊んでくれるだけで、十分だから。いつもありがとうね、陽灯くん。息子と遊んでくれて」
「いえいえ、生まれつき体が弱くとも悲観して生きて欲しくないんです。気持ちは分からないけど…いつか治るかもしれないですし…笑顔で生きた方が楽しくいられると思うので。俺に出来るのは、紹夢くんに笑顔を与えてあげられるだけ。裕香さんは紹夢くんのためにいつも頑張ってて、凄いと思います」
「そんなこと…その笑顔を与えるっていうのはとても大変なのよ。私にはとてもじゃないけれど難しいから。親としては、きっと私は良くないのでしょうね…。でも陽灯くんがこの子と仲良くしてくれるようになってから、多かった暗い顔が無くなって笑顔が増えたわ。それがとても嬉しい。紹夢ね、いつか陽灯くんみたいなヒーローになるって毎日言ってるのよ」
「…へ? い、いやいやヒーローなんて。俺はまだまだ…それに裕香さんだって、良いお母さんです」
「ふふ、ありがとう。けれど陽灯くん。貴方はこの子にとってはヒーローなのよ。いえ、きっとこの子だけじゃないかもしれない」
「あはは…」
なんと言えばいいのか分からず、照れたように陽灯は頬を掻く。
会話から察するに裕香の息子である紹夢は生まれつき体が弱い。
先天性のもであり、治療の見込みがないのであろう。
実際に陽灯が出会った時は酷い顔だったのは彼も覚えており、できることをやろうとした結果遊んで仲良くなっただけだ。
陽灯自身、自分がそんな大それたものになれたなど思っていない。
ヒーローとは自身の体に宿る巨人のような存在なのだと陽灯は常々思っている。
「そういえば、最近澪せんぱ---さんはどう?」
「澪さんですか? 仕事で忙しいみたいですけど、元気というか…いつも優しくしてくれます」
「そう……変わらないのね。あの人は…」
会話を変えるように話が移行し、陽灯は素直に答えると裕香は遡月家の家を見た。
「よく、聞いてきますけど…直接会わないんですか?」
「それは、ちょっとね…あの人と話すのは、心の準備が必要だから」
「? 何かあったんですか?」
「ううん、そういう訳じゃないのよ。ただ…本当はもっと上に行ける人なの。下で使われるような人じゃない。出世を願わず、人としての幸せを選んだ。それが悪いなんて思わないし、陽灯くんのような子供を養子に出来て前よりも幸せそうなのは嬉しい。だけど、とても優秀で優しくて、賢くて判断も正確で……とても眩しい人で…学生の頃から何も変わってなくて、今もあの人は私にとって---ってごめんなさい。気にしないで」
「は、はい……」
若干の陰があったことに違和感を覚えるが、陽灯は自身が踏み込んでいいものでは無いと無意識に理解する。
当人たちの問題というよりは、感情の問題だ。他者が口出ししていいものでは無い。
陽灯はこういったことは何となくで分かる。ただそれでも。
「…よく分かりませんけど、澪さんは裕香さんのこと話すとき、とても懐かしそうで、嬉しそうで楽しそうでした。話す機会があれば話したら、どうですか? 俺も手伝いますから!」
「……ありがとう。その時はお願いするかもしれない」
「はい!」
「ただ、
「はっ……はい…」
何があったのかまでは分からない。
しかしそう言って笑顔を向けてきた裕香は、笑っているのにも関わらず後ろに何かが見えるくらいの怖さがあって、陽灯の頬は若干引きずった。
なんなら名前を呼ぶ時にすら棘を感じる。
仲が悪いのだろうか、とも思ったが触れない方が良いと頭の中から警報が出たので陽灯は大人しく従った。
「引き止めてごめんなさい。陽灯くん時間は大丈夫?」
「え? あ…やばっ!? ご、ごめんなさい。俺そろそろ行かないと! 紹夢くんもまた時間ある時来るから、その時遊ぼう!」
「うん! やくそく!」
「気をつけて行ってらっしゃい」
「もちろん! 裕香さん、ありがとうございます! そちらも気をつけてー!」
時間を指摘され、携帯で時間を見た陽灯は慌ただしく立ち上がると、紹夢に約束をしてから走り去っていく。
裕香は改めて遡月家を見ると、ある部屋に向かって冷たい目を向けてから気を取り直すように紹夢と手を繋いで歩いていった。
---鷲尾須美の朝は早い。
毎朝5時に起床すると、裏庭の井戸へ行く。
そこで身を清めるのが日課であり、その後徒歩で神社に向かうと祈りを捧げる。
帰宅してからは朝食の準備をする。
料理をするのが好きだった、というのもあるが一番の理由はやはり鷲尾家の両親が洋食派という部分が大きかった。
己が米と味噌汁こそ至高の朝食だと思っているからだ。しかし親の作るものに文句を言うなど言語道断。
真面目な彼女が出した結論は、不満があるなら自分自身で責任を持って作るということだった。
今では両親も須美の料理を楽しみにしており、洋食から和食派に好みを塗り替えるという彼女の作戦は成功しつつある。
そうして登校準備を済ませれば、いつものように通学するだけだ。
神樹館六年一組。
それが須美が通う学者とクラスの名前である。
世界の全てである『神樹』の名前がついている学校なので格式は高い。
普通の学校と造りは変わらないが、警備は厳重で衛生管理なども隅々行き届いている。
クラスの前に着くと挨拶をして入る。
すると同級生も挨拶を返してくれる。男女とも分け隔てなく話しているが、何かと話題が尽きない学校というのもあるだろう。
残念ながらまだ想い人のような存在は居ないが、充実した学校生活だった。
しかし優等生の須美も人の子であり、三十人いるクラスメイト達の中で苦手な方に分類されてしまう人物が二人---いや三人居た。
その中の二人は女子だが、もう一人は男子だ。
そのうちの一人は今まさに須美の隣の席で机に突っ伏して寝ている。
須美に言わせれば惰眠を貪っていると表現出来てしまう。
ケチをつけたいわけではないので、誰だって眠たい時はあると自分自身に言い聞かせる。
細かいことに目くじらを立ててしまいそうになる。そんな自分を恥じるが、だからこそこういう気持ちになる隣のクラスメイトが苦手だった。
その同級の体がビクンと動く。
「あわわっ、お母さんごめんなさい!」
そんなことを叫びながら慌てたように両手を合わせている。
突然のことにクラスが静かになった。
「…はれぇ? 家じゃない〜…?」
「ここは教室で、朝の学活前よ、乃木さん」
「てへへ…おはよう〜鷲尾さん」
「おはようございます」
冷静に突っ込みを入れる須美に隣の女子は照れたように笑いながら挨拶をしてくる。
当然真面目な須美はちゃんと返した。
上品な顔立ちに似合わぬドジっ娘ぷりを見せつけた彼女は乃木園子。
この国を支える組織である大赦の中でもトップクラスの発言力を持つ乃木家の威厳からは想像も出来ないほど、彼女は常時ぼや〜っとしている。
これでもマシにはなった方なのだが、ある人物が居ない時の彼女はだいたいこんな感じだった。
苦手な理由のもうひとつの理由は“お役目”に就いているということ。
天然系な性格を見ていると神聖なるお役目が果たせるのか不安になってしまう。
そうこうしているうちに、担任の先生が挨拶しながらやってきた。
去年と同じ担任で二十代半ばの凛とした女性。
普段は厳しくて子供たちから恐れられているが、生徒想いのことは伝わっているので嫌われてはいない。
そして日常の行事である学活がはじまる。
それを知らせる号令を日直がかけようとしたとき。
「はざーっす! ま、間に合ったっ!」
「三ノ輪銀さん、間に合っていません! まったく貴女は…」
教師の後で駆け込んできた三ノ輪銀という少女は、ばん、と軽く出席簿で頭を叩かれていた。
時代が時代なら体罰になりかねないものの、この時代には過度でなければ問題はない。
クラスの皆がドッと笑い、銀は早足に自分の席に戻っていくとすぐにクラスメイトに話しかけられていた。
その周囲がぱぁっと華やぐ。
底抜けた活発さが彼女の魅力なのだろう。それが周りにも影響を与える。
しかし教科書を忘れたという言葉が聞こえ、須美は底抜けすぎではないかと思った。
ただのクラスメイトなら気にしないが、彼女は大事なお役目に就いている三人のうちの一人。当然ながら、お役目についてるということは大赦でも名誉ある家のひとつである。
その銀の姿が須美にはいい加減に見えてしまっていた。
そのようなアクシデントはあったが、気を取り直して日直が号令をかける。
「起立」
生徒たちが立ち上がる。
「礼」
生徒達が敬意を表すように頭を下げる。
「拝」
そして今度は、礼をしたまま手を合わせていた。
「神樹様のおかげで今日の私たちが在ります」
感謝の言葉を世界の全てである神樹様に捧げる。
「着席」
ここまでが一連の流れだった。
しかし皆が席に座ろうとした瞬間、扉の方から勢いよく音が鳴り響く。
突然の音に固まり、好奇心に駆られて全員の視線が向けられると一人の男の子が息も絶え絶えで両膝に手をやりながら居た。
「お…おは、はぁ…よ、よう…ござ、ます!」
顔を挙げながら挨拶をした男の子はまだ春だというのに酷く汗もかいている。
身長は男子にしては割と低めであり、黒い髪に何の色にも染まっていない黒い目をしている。
容姿は十分優れているだろう。
「間に合っ」
「間に合ってません」
「えぇ!? って、やばっ!?」
驚いた際になにかに気づいたように声を挙げた彼の服が動き、襟元から何かが出てきた。
『ワンッ!』
「………」
「………」
空気が固まるとはこのことか。
襟元から出てきたのはまだ小さいチワワだ。つぶらな瞳は愛くるしさを一層強くするが、今はそんな時じゃなかった。
バツが悪そうな顔をする男の子と呆れたようにため息を吐く担任。
そして数人を残して一斉に駆け寄るクラスメイト。
もはや授業の空気が消え去ってしまい、男の子は一瞬にして囲まれた。
残った中には須美も居たが、呆然とするしかない。
彼こそ、須美が苦手な最後の一人。なんなら、一番苦手かもしれない。
別に彼が悪い人物というわけではなく、今みたいに純粋に予想が出来ないのだ。
誰がこの学校に犬を連れてくるのか。目の前の彼くらいしか見たことがない。
しかも間違いなく拾い犬だろう。
さすがに収集が付かなくなると判断したのか、担任が止めに入ることで生徒達は先程来たばかりの犬を抱えた男の子を残して戻って行った。
男の子は向き合うと、真剣な顔で口を開く。
「先生! この子寂しそうにしてて…だから俺見捨てられなくて…ちゃんと飼い主も探すしそれまで世話するので出来るのであれば---」
「……職員室で事情を話してきなさい。ただし許可されたとしても放課後ちゃんと迎えに来ることが条件です」
「! はい! 失礼します!」
今度はまたそそくさと教室から離れていく。
離れていく足音的に、走っているのだろう。
「あと、廊下は歩くように!」
「すみませーん!」
安芸の声に反応して声だけが返ってくる。
嵐のような人物だった。クラスメイトたちはそんな彼に笑っていたが、担任はため息を一つ吐いて気を取り直すように授業を始める旨を伝えると---
突如と教室内が不気味なほどに静かになった。
周囲の動きが止まり、瞬きすら誰もしていない。
「みんな?」
一瞬何が起きたか分からずに声をかけてみるが、やはり誰も動いていない。
それどころか壁に掛けられた時計が止まっている。
秒針は動いてなければならないはずなのに、全てが止まっているのだ。
それが意味することはただひとつ---
「来たんだ、私たちがお役目をする時が……」
「ねぇねぇ。これって敵が来たってことじゃないの?」
「三ノ輪さん…動けるのね」
そう、つまりはそういうことである。
二人が動けるということは当然園子も動けるわけで、彼女は呑気に自身の席で欠伸をしていたが。
しかし敵が来たということが正しければ時間停止現象の後にやってくるのが、神樹様の力によって行われる大地の“樹海化”。
それを理解してすぐ、三人……いや、世界を極彩色の光が呑み込む。
その光に三人はとても目を開けては居られず……再び目を開けた時、先程まで居たハズの神樹館の面影など何処にもない、巨大な樹木に埋め尽くされた世界が広がる。これこそが“樹海化”。神樹様を狙う敵と戦う為のバトルフィールドである。
「うわ〜すごっ!」
「わ〜初めて見た〜。綺麗だね〜これが神樹様が作った結界の世界?」
「樹海…!」
「凄いね〜全部木だ---あっ。あれが大橋かな?」
「多分! だけど分かりやすくていいな」
「神樹様も分かりやすいね〜」
樹木の他に唯一橋だけが無事だった。
さらに須美たちがいる位置からでもうっすらと見える樹海の奥地には神樹が大木となり、神々しく光り輝いていた。
「あれが……」
「ええ。私達人類の……敵」
結界の向こうと四国を繋ぐ大橋、その上を進む……トゲとアンコウのような触覚の生えた青い巨大なゼリーに同じく巨大な水玉をくっつけたような、なんとも説明に困るビジュアルのナニカ。
水瓶座の名を冠するアクエリアス・バーテックスと呼称される存在である。
このバーテックスが大橋を渡りきり、神樹様へと到達した時、人類は滅びる。敵が現れた以上、こうして呑気に喋っている場合ではない。
三人は頷いた後にスマホを取り出す。
その画面の中心には花のマークが描かれたアイコンが表示されており、事前に説明されていた三人は迷い無く変身アプリをタップした。
瞬間、スマホから花弁と共に光が溢れ、三人の体を包み込む。
その光が消えると三人の姿は先程までの制服とは違う、それぞれ別の色合いの服を着用していた。須美は薄紫、園子は濃い紫、銀は赤を基調とした服装。
さらにそれぞれの手には武器が存在しており、須美は弓。園子は複数の穂先が浮いた槍。銀は双斧だ。
三人の中でとてつもない力が湧く。
神である神樹様の力を与えられて人類が造り出したシステムなのだから当然だ。
ただこの力を現在使えるのは三人しか居らず、今も戦えるのは三人しかいない。
「合同訓練はまだだったけど…」
「敵がご神託より早くに出現してしまったから」
「まぁ大丈夫だよね」
「二人とも、慎重に戦いましょう」
「よーし! ぶっ倒す!」
「あ、ミノさん待って〜」
「ちょっと!? 待ちなさい!」
昂っているのは恐らく全員が同じだ。
しかし聞いてるのか聞いてないのか先に行く二人を須美は追っていくと、身体能力が向上している影響で数分かからず到着する。
すると目の前には遠巻きでも確認できたバーテックスが存在していた。
遠くからでもはっきりと見えただけあり、その姿は奇妙かつ巨大。
小学生の小さな体と比べるとあまりに差がありすぎており、例えるならば蟻と像が想像しやすいか。
しかし三人はこれからこれほど巨大な相手を幾つも相手取らなければならない。
こんなところで怖気付いたり先のことを考えている余裕はない。
目の前の敵に集中しなければ、まず次が訪れないのだ。
相手が何かをする前より早く、銀が速攻する。
そんな銀に対して次々と水球を生み出すバーテックスだが咄嗟にジグザグに動くことで避け、跳躍しながら中心のゼリーのような水を斬り裂く。しかし斬られるよりも早く水球を盾としたのもあって、深く切ることは出来なかった。
それどころか彼女が着地する頃には新品同様に再生し、元通りとなっていた。
「浅かった! くそー再生とかずるいだろ!」
「ミノさん、危ない!」
「園子! 助かっ」
「あっごめん、これ無」
浅い手応えとあっさり再生した姿に怒りを向けて地団駄を踏む銀目掛け、バーテックスは水流を放つ。それを事前に察知した園子は銀の前に出て槍を突き出し、複数の穂先を傘のように展開、水流を受け止める。が、園子の小さな体では踏ん張りが利かず、数秒と保たずに2人まとめて水流に流されてしまった。
「二人共!?」
二人が流されたことに焦る須美は矢を番えながら水球を避けるように走り、矢を連続して打つ。
水球によって勢いが殺され、攻撃が防がれるも何発かは直撃する…が、やはり簡単に再生されてしまう。
仮にダメージを与えても、大きなダメージにはならない。
こっちは避けるので精一杯なのにも関わらずだ。
それは須美の心に大きなダメージを残す。
「そんな…防がれ……いや、直撃してもこのままじゃ…あうっ!」
反撃として須美目掛けて放たれる水流。
一度見ていたというのもあったお陰で須美は何とか反応して避けることに成功するが、躓いて転んでしまう。
しかし自分たちが諦めては世界が終わってしまうと自身を奮い立たせると直ぐに体を起こし、バーテックスを睨み付ける。
その瞬間須美の戦意を砕くように、ほんの数ミリ横を水流が通り過ぎ、橋の表面を砕いた。
(私達が諦めたら……世界が終わるのに……)
橋の向こう側、バーテックスがやってきた方向から少しずつ橋が黒く染まっていっている。その現象は“侵食”と呼ばれ、侵食が広がると現実世界に影響を与え、不幸や事故という形で現実に被害が出る。
(こんな敵……どうすれば……)
須美に少しずつ迫るあまりに巨大かつ強大な敵。
お役目を成し遂げるという使命感を持ち、世界を守る為だと奮起して挑んだ戦い。
須美自身、それを誇りにも思っていた。
だが敵は攻撃を与えても再生するせいでダメージが入っているのか分からず、敵の一撃は重い。現に須美だって掠っただけなのに頬から血が流れている。
弓も斧も槍も軽い攻撃じゃ倒すことは出来ず、須美にはこの状況をひっくり返す策が思いつかなかった。
考えれば考えるほど絶望というのものが広がってゆき、心を蝕んでいく。
戦意が喪失しかけ、それによって行動すらも停止してしまった。
しかしここはどこだ。
戦場といってもいい場所であり、戦いの場で無防備な存在を放置することなどありえない。
敵からすれば自身の目的を妨げる敵を葬れる絶好のチャンスに他ならない。
案の定、バーテックスは須美目掛けて水流を飛ばしてきた。
「あ---」
明確な死のイメージ。
直撃すれば死。運良く助かっても重傷。
戦意が折れかけていた須美は気づいても体は動いてくれず、そのまま須美はバーテックスの水流によって---
「鷲尾さんッ!!」
当たる直前、誰かの声と共に須美の体が勢いよく横に倒れる。
次に来るであろう傷みに誰かなのかを確認するより早く目を閉じてしまう。
(あれ……痛くない……?)
いつまで経っても、痛みが来ない。
誰かの声が聞こえた。
しかし痛みがないということは即死か。そう考えるには自身の体から感じる別の温もりが死を否定する。
ならば何があったのかそれを確認するように須美は目を開けると、そこには。
「っう……よ、かった。間に、合った……!」
「さか、つき…くん……?」
息切れを起こしながら、このような場ですら安心したように笑顔を作る本来この世界に居るはずもないクラスメイトがそこには居た。
〇遡月 陽灯
使用人含め、隣人との仲も良好。既に入学してきた一年生とも交流がある。つよい。バケモノかな?
ただし、彼にも救えないものは存在するので、彼自身は何も出来ないことを悔やんでいる。
〇光の巨人
長く陽灯くんの中に居たので、ある程度の回復はしている。
が、残念ながら力は取り戻してない。
ちなみに分離したら陽灯くんは(巨人が戻らないと)死ぬ。一時的なら仮死状態になるため、三分くらいなら問題ないと思われるがしないので設定だけ。
これは真木同様、陽灯くんが同化時に既に死んでるため。
〇鷲尾須美
原作主人公。
実は陽灯との仲はさほど良くはなく、むしろ苦手。
行動が予想出来ないのもあるが、遅刻も多すぎて気になるため。
なお未来
〇裕香さん
近所の人。
何やら澪と関係があるらしく、夜霧を嫌ってる様子。
激重感情持ってると思われる。
〇紹夢くん
陽灯のことを『陽にぃ』と慕う裕香の息子。
ただ遊んだだけ、と陽灯は言っていたが、同じ目線で病気の有無関係なく優しく接してくれたことが子供にとってどれだけ救いになるのか。
少なくとも紹夢の『心』は救われてるため、陽灯という人物はまさにヒーローそのものなのである。
黄金色のジュネッスの名称
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ジュネッス・オーア(紋章学で金色)
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ジュネッス・トリニティ
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ジュネッス・ブリエ(輝き)
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ジュネッス・ルフレ(光沢、反射)
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ジュネッス・ルクス(光)
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ジュネッス・ルミナス(光り輝く)
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ジュネッス・ゴールド(金色)
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ジュネッス・オール(金、全部)
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ジュネッス・グロウ(発光)