【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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最初に言っておく! サボってました。
ちょっと先生になったりアニメ追ったり映画行ったりガンブレ4のために3やってたりしたら忙しくて忙しくて…もうアーク始まってるってマジですか。戦い方が想像の斜めいってて天才すぎる。
うちの紡絆くんのジュネッスは超能力がメインの形態なのに公式に負けない技を出さねば超能力の名折れですね。まあ鷲尾須美では出ませんけど。
それはそうとして、この話はやっぱり重要ですね。





「祝勝」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 第 12 話 

 

祝勝

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「うう…本当にご迷惑をお掛けしてすみませんでした…陽灯様」

「迷惑だなんて思ってないよ。それよりも大丈夫?」

 

あれから少し、意識を取り戻した鈴が土下座するという行動に出て陽灯はやめさせようとしたり澪は気にしてないと伝えたりして一件落着したのだが、制服の上にエプロンを着込んだ鈴は陽灯の世話をしながらまだ反省していた。

陽灯としては人助けは慣れっこなので、心配の方が勝る。

 

「顔色は悪くないけど……無理しないでね?」

「は、陽灯様ぁ!」

「わぷっ!?」

 

じーっと顔を近づけて見ては、問題なさそうな姿にほっとする陽灯は気遣わしげな表情で告げると、鈴は感極まったように抱きしめた。

抱擁されるのは嫌ではないが、柔らかい部分が顔に当たって陽灯は少し恥ずかしくなる。

 

「本当に陽灯様は素敵です。私の推しです!」

「お、おし?」

「あっ、気にしないでください。ただ陽灯様のためなら無理も押し通せるってことですから!」

「う、うーん気持ちは嬉しいけど、無理はして欲しくないな…鈴さんがさっきみたいに倒れたら大変だし…」

「はうぅ…優しさが胸に染み渡ります…何より癒されます。うへ…ふへへ」

「す、鈴さん?」

「はっ!? なんでもありません」

 

ちょっと様子がおかしくなったような気はしたものの、急に離れた鈴は元通りの姿で陽灯はよく分からずに首を傾げた。

 

「そ、それよりも学校の時間ですよ。今日は私も一緒に途中までは行きますから、一緒に行きましょうね。奥様にも頼まれてますので」

「うん、わかった。よろしくね、鈴さん」

 

誤魔化すように話題が変わるが、陽灯は理解を示すとぱああっと光が弾けたような笑顔を浮かべた。

 

「…ああ、今日も眩しいです…」

「…へ? 何か言った?」

「今日も可愛いです」

「え、ありが…とう?」

 

キリッとした顔で褒められたが、男に対して可愛いは褒め言葉なのだろうかと一瞬思った陽灯だったが、考えても仕方がないので頭を振って学校の準備をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

準備を終えて玄関にまで行くと、今日は澪も夜霧も起きていて見送りに来ていた。

毎日という訳ではないが、起きている時は見送りをしてくれるため珍しいというわけではない。

陽灯は靴を履こうとして、差し出されたのがいつものと違うことに気づいた。

というか綺麗すぎるくらいで、新品そのものだ。

赤と黒の靴。

 

「これ…」

「手配しておいたよ。色はこっちが決めたけど、大丈夫だったか?」

「うん、大丈夫。ありがとう、夜霧さん」

「そうか、気にしなくていい。耐久性に優れたのが必要だと思ってオーダーメイドは出しておいたから暫くはそれで我慢してくれ。壊れたらまた用意する」

「出来る限りは壊さないようにする。せっかく、くれたものだから」

「ふ…陽灯がそういうならそうしてくれるといい」

 

新しい靴に触れてそう言う陽灯に口角を挙げた夜霧は頭をポンポンと叩いた。

しかし昨日まで履いていた靴は前の家から持ってきた最後の靴だった。

あれほどの動きをしたのは陽灯は昨日が初めてだったからこそ、壊れてしまったことに少し寂しさを覚える。

それでも、消耗品はいずれ壊れるもので、最後まで持ってくれただけ健闘してくれたに違いない。

心の中で別れを告げて靴を履くと、つま先で地面を軽く叩く。

新品特有の違和感はあるもののサイズはちょうど良いくらいだ。走っても靴が脱げることはないだろう。

 

「陽灯さん、もう大丈夫そうですか?」

「澪さん……うん、俺は俺らしくやってみようかなって。考えるのは苦手だから、思ったことをそのまま言ってみる」

「…そうですか、昨日よりも素敵な顔つきになっています。心配は不要でしたか」

 

晴れやかに笑う陽灯を見れば、答えを見つけたというのは一目瞭然だ。

澪もまた嬉しそうに微笑むと、視線を鈴に向けた。

微笑ましげに見ていた鈴はその視線に気付くとすぐに表情を引き締めた。

 

「ところで鈴さん」

「は、はいっ!」

「ずっと気になってたのですが……」

 

何を言われるのかと、緊張した面持ちになる。

朝、失態と言える失敗をしたのだ。

そう考えたら緊張するのも無理は無い。

 

「もしかして陽灯さんの寝顔の写真…ありますか?」

「…へ? あ、ありますけど…。とても可愛らしい寝顔でしてつい反射的に」

「素晴らしいです! 鈴さん、学校が終わってからで構わないのですが良ければ私にも頂けませんか? あっ、陽灯さんが良いならですけど…今更ですが盗撮はいけないことですからね」

「お、俺は撮られることは気にしないから全然いいけど…俺のなんているの?」

「「いります!」」

「そ、そっか…」

 

前と横から力強い肯定をされ、陽灯は目が点になるとすぐ苦笑した。

必要と言われて、嬉しくない人物なんて居ないだろう。ただ恥ずかしさはあるが。

 

「それでは陽灯様の許可も頂きましたから、奥様にもお渡ししますね。陽灯様の写真はたくさんあるんです! 寝顔だけじゃなくて、ぜひ奥様にも見ていただければと……!」

「他にもですか? それは楽しみですね…キャプチャとプリンターの準備もして待ってます」

「! その発想はありませんでした。流石奥様---」

「はい、二人ともそこまで。陽灯が困ってるし鈴も学校だろう? 遅れるぞ」

「え? わぁああ!? は、陽灯様すみません、つい…」

「あはは……」

 

忘れていたかのように、夜霧に指摘されて腕時計を見た鈴はぺこぺこと頭を下げる。

陽灯はもう、なんて言えばいいか分からずに笑っておくしか出来なかった。

 

「そ、それでは陽灯様を連れて行ってきます」

「行ってきます」

「ああ、行ってらっしゃい。玄関はこっちで閉めるから」

「気をつけてくださいね、お二人とも」

「はい!」

「うん」

 

気を取り直して鈴が玄関を開けると陽灯は外に出て手を振り、鈴は深くお辞儀すると手を差し伸べ、陽灯はその手を握って一緒に歩いていく。

その姿を見ながら、夜霧は澪を横目で見た。

 

「で、陽灯が何か思うことがあったのには気づいてたんだろう?」

「あら、何のことでしょうか? 私はただ私自身の思いを伝えただけですから」

「…そういうことにしておくよ。ありがとうな、俺にはできないことだ」

「不器用ですものね。ですが夜霧さんも陽灯さんのために奔走していたのは知っていますから。大赦からの要求を全て断ったのでしょう? 流石は私の旦那様、ですね?」

「……いつまでも敵わないな」

「ふふっ、褒め言葉として受け取っておきます」

 

お互いに陽灯が何か悩んでいるというのは気づいていたらしく、惚ける澪に夜霧はお礼を告げるが、何をしていたのかバレていたことに照れ臭くそうに髪を掻くと澪はただ微笑むだけだ。

改めて、陽灯と鈴の背中を見つめるとちょうど消えたところだった。

 

「…ザ・ワンとザ・ネクスト、か……陽灯はきっと、これから多くの困難に直面するだろうな…」

「私たちはやれることをやるだけです。ただ陽灯さんの帰る場所を作って、躓いた時に手を差し伸べられるように傍に、家族として過ごすだけですよ。私は陽灯さんを信じてますから」

「俺もだよ。ただ何故陽灯にザ・ネクスト…いや光の巨人が宿ったのか。何故陽灯だけが樹海化した世界で動けるのか…そこが未だに解明できていない。調べていくうちに、ひとつだけ樹海化した世界で動ける理由について仮説は出てきたが…」

「…それは?」

「少なくとも()()()()()()()()()()()()ということだ」

「……! そう、ですか……では」

「…どの道、彼に選べる選択は無かったということさ。理不尽なことだが、彼ほど士気を保つということに関して適正のある人物がいないのも事実だろうしな。もし別の道を歩んだ世界があるならば、大赦は勇者のサポーターとして雇っていただろう」

 

普段の明るく前向きな性格は、他者に影響を与えている。

人を思いやるという点では誰よりも優れていると言ってもいい。悪く言えば自分を見ていないとも言えるが、仮に光の巨人が居なくとも樹海に入れる時点で十分異物だ。

そんな人材を放っておくほど上は甘くなく、遡月陽灯がお役目につくことになるのは必然だった。

運命、とでも言うべきか。

子供の、それも何も知らないはずの一般家庭の子供が背負うには大きすぎるもの。

その現実に悲観するも、二人は乗り越えることが出来ると信じる。

どんなことがあろうとも、何があろうとも、陽の(あか)りが照らす未来が訪れることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神樹館小学校を目指しながら陽灯は鈴と手を繋いで歩く。

こうして歩いているのは、無論のこと陽灯があっさりと迷子になるからである。

困ってる人が居たら自分のことを放っておいて向かうのだから、行く先々で見つけてしまえば自身の知らぬところにも行ってしまう。

もちろん、鈴からしてみれば任された身として送り届けるという理由しかないのだが。

 

「ねえ、鈴さん」

「はい、なんでしょう?」

「鈴さんって、結構写真撮ってるよね。そんなに好きなの? ほら、今日の朝も撮ってたし…よく俺の写真撮ってるから、そうなのかなーって」

 

隣を歩く年上の女性。

陽灯の世話係の一人だが、当然ながら世話係ということで一緒に過ごす期間は長い。

年齢が近いのもあって、一番接する機会があるくらいだ。

だからこそ陽灯は勉強していたり食事してたりしても鈴が許可を取ってまで自身を撮ってるのを知っている。

別に気にしてない陽灯はそのうち、許可は必要ないから好きにしていいと言って今に至るが。

 

「うーん好き…とは少し違うかもしれませんね。私の趣味みたいなものですし、写真というより私は陽灯様を写真に収めるのが好きですから」

「鈴さん自身は撮らないの?」

「そうですね、友人と撮ることはありますが…あんまり、でしょうか」

 

人差し指を口に添えて思い出すように返答する鈴に陽灯は少し残念そうな顔をした。

 

「そっか…鈴さん写真映りいいと思うけどな〜美人だし…」

「陽灯様にそう言って頂けるのは嬉しいですけど…うぅん、難しいですね。陽灯様に分かりやすく言うなら、価値観の違いでしょうか。私にとって私の写真には何の価値もありません。ですが、陽灯様の写真は私にとって宝石のように価値があるんです。私の写真が誰かにとって価値があるなら、喜ばしいことですけどね」

「でも写真は思い出をそのまま撮ってくれるのに、鈴さんがないのは寂しいような……そうだ、だったら一緒に撮ろう! 俺が鈴さんの写真持つから!」

「えぇっ!? わ、私が陽灯様と撮るのは恐れ多いといいますか、なんといいますか…」

「だって、俺にとっては鈴さんは大切な人なんだよ? いつもお世話になってるし、何かお返ししたい! だから俺のことを撮るのが好きなら一緒に撮ったら鈴さん自身も思い出として残せると思うから…たまにはそうやって撮って欲しいな」

「…ぅう、そう言われてしまうと弱いです…。で、ですが……」

「あ、やっぱり嫌だったりする…?」

「そっ、そんなことありません。撮りましょう、そうしましょう! 学校が終わってからでいいなら、いくらでも撮りましょう!」

「本当に?」

「はい!」

「やった、約束だよ!」

「ですね…約束です」

 

ただただ、花が咲くように笑顔を浮かべる陽灯に鈴は自然と笑みが零れていた。

それから少しして、鈴が突然足を止める。

陽灯は何かあったのかと振り向くと、鈴は真剣な表情を浮かべている。

 

「私、陽灯様にお仕えできて本当によかったです」

「…ほぇ?」

「陽灯様は自覚ないと思いますが、最初は不安だったんですよ。誰かのお世話なんてしたことありませんでしたし、怒られないかなとか気を悪くさせないかなとか…私、割とドジですから。ですが陽灯様と出会って、こうしてお仕えが出来て、毎日が楽しいんです。癒されてるんです。可能なら毎日お世話係として傍に居たいくらいです。そんなことしたら奥様や旦那様に怒られますが…」

「鈴さん……」

「私にできることなんて限られてます。ですから、これだけでも伝えておきたいなと…陽灯様、必ず無事に帰ってきてくださいね。私にまた、陽灯様のお世話をこれからもさせてください。今日みたいに、思い出もたくさん作りたいです」

 

陽灯の右手を両手で包み込むように握って、不安と心配と信頼がごちゃ混ぜになったかのような表情で告げられる。

そんな鈴に陽灯は嬉しそうに、真面目な顔で答える。

 

「…うん。でもね、俺も鈴さんと出会えてよかった。いつも俺の事ばかり考えてくれて、限られてるだなんてそんなことないよ。ありがとう、これからも傍に居てくれると嬉しいな。鈴さんが居てくれるから、安心して俺はいつもを過ごせるんだ」

「はっ…陽灯様…! 一生お仕え致します!!」

「そ、そこまではしなくていいから! 鈴さんは鈴さんの人生を歩んでね!?」

「いいえ、私にとって陽灯様は全てです。奥様と陽灯様のために生きるのが本望ですので!」

「え、ええぇ…?」

「証拠となるかは分かりませんが、ホーム画面もロック画面も全部陽灯様にしてますし複数別のものを用意して日ごとに変えてますからね!」

「そこまで!?」

 

そこまでは知らなかったようで予想外のことに驚きはしたが、陽灯は一歩前に出て、振り向きながら優しく手を引っ張った。

 

「俺はもう少しだけど鈴さんが遅刻しちゃうよね。行こ!」

「…はいっ!」

 

不安なんて消え去ってしまいそうなほど、朗らかな顔を浮かべて前を歩く陽灯に引っ張られながら鈴は少し眩しいものを見るかのような目を向けて、にこやかに笑った---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に着いてからは高校とは離れてるため、鈴と別れた陽灯は自身の教室に向かって歩いていく。

 

「陽灯くんおはよー」

「遡月先輩、おはようございます!」

「あ、遡月じゃん、おはよう、今日は早いなー」

「おー陽灯。おはよう」

「は、陽灯先輩おはようございます!」

「おはよ〜」

 

次々と見かけたり廊下で話してる生徒など、様々な人に話しかけられると陽灯はその度に挨拶を返していた。

たまに顔が赤い生徒も居たりしたが、体調が優れないのかと顔を覗き込んだら一瞬にして居なくなってしまったのでよく分からないが問題はないのだろう。

他にも色んな人がいたが、問題なく辿り着いた陽灯はクラスメイトと話を程々にようやく席につけた。

目を閉じて、感覚を研ぎ澄ませる。

 

(巨人さん。何を思ってるのか、考えてるのかは分からないけど…俺は守りたいんだ。手が届くのに、守れるのに、何も出来ないのは嫌だよ。

だから力を貸して欲しい。俺を、頼って欲しい。俺のわがままでしかないけど俺と一緒に守ってくれる…? 俺だけでもない。巨人さんだけでもない。俺たちで出来ないかな…?)

 

昨日から何の返事も返ってこなくて、陽灯は落ち着いた今伝えたいことを簡潔に伝えた。

もっと言いたいこともあった。気になることもあった。

それでも今は、自分自身の思いだけを伝えるべきだと思って届けた。

しかし、やはり返事は無い。

 

(………)

 

他に話せることなどない。

心のままに告げて、何も返ってこなかった。

そういうことなのだろう、と陽灯は目を伏せて---ぶわっと胸の中で何かを感じ取った。

灯のような強い光。

何か言葉を発してくれたわけじゃなかったけれど、目を開いた陽灯は嬉しそうな顔を浮かべた。

明確な答えなんて、必要ない。

その合図だけで陽灯は巨人の意思を確かに感じ取った。

喜びを感じていると近づいてくる気配を感じる。

視線を向ければ。

 

「ねぇ、はるるん」

「あ、園ちゃん。おはよう」

 

ゆったりとした歩調で近づいてきたのは園子だった。

陽灯の机の前に立って、じぃっとこちらを見てくる。

何も言ってこないことに不思議に思いつつ考えてみると、観察するように見てくる理由に心当たりがひとつ。

 

「怪我はもう殆ど大丈夫だよ! ちょっと痛いときはあるけど傷自体は治ってるし…」

「ほんと?」

「ほんとほんと、ばっちり! 俺、怪我慣れてるし昨日の怪我より酷いのなんて昔したことあるからね!」

 

えっへん、と何故か胸を張る。

正確に言うならば自身よりも圧倒的に巨大な存在に心臓を貫かれて臓器自体が潰れてしまい、命そのものを失ったのだが流石にそれは口にはしなかった。

 

「そっか、それはよかったぁ…心配したんだよ〜?」

「そこは謝るしかないなぁ…ごめんね」

 

心配したということは本当なのだろうが、表情が無表情だ。

怒っているようにしか見えない。

が、陽灯は全くそんなことに気づかずに申し訳なさそうに謝罪すると、園子はようやく表情を和らげて、笑顔を浮かべた。

正解だった、と陽灯も笑顔を浮かべようとして---

 

「ん〜だめ」

「えっ」

 

謝罪を受け入れられないことに固まった。

困ったように眉を下げるが、目の前の園子は変わらず笑顔だ。

このような表情を浮かべて断られるのは流石に予想外だった。

 

「そのまま椅子を引いて?」

「園ちゃん?」

「引いて?」

「あ、はい…」

 

逆らえないような圧を感じ取った陽灯は大人しく後ろの席へぶつからない程度に下がることで机と距離を少し離す。

すると園子は横へと回り、ちょこんと陽灯の膝上へ座った。

突然の行動に少し驚き、両手の置き場に困った。

 

「園ちゃん、どうしたの?」

 

身を預けるように持たれかかってくる園子に、ようやく何かあったのかと理解した陽灯はひとまず片手を頭に置いて撫でる。

さらさらとした髪を梳くように動かしていきながら、言葉を待つ。

 

「…朝」

「朝? 寝れなかった?」

「んーん、はるるんが歳上の女の人と手を繋いで親しそうにしてたのが見えてね〜…あの人、誰?」

「あー、見てたんだねー」

 

しばらく撫でていたらようやく口にした内容に朝のことを思い出す。

鈴と登校するのは今日が初めてというわけではないが、過去にも二、三回くらいしかない。

今回はたまたま来る途中で見えたのだろう。陽灯が来た頃には教室には園子が居たのだから恐らく車の中からか。

 

「あの人は鈴さんって言って、俺の世話をしてくれてるんだ。知らない人について行ってたわけじゃないよ! それがどうかしたの?」

「…そっか、そうだったんだ。ううん、なんでもないんよ〜」

「?」

 

一転してぐりぐりと甘えるように頭を胸に擦り付けてきたので、陽灯は一定のリズムで頭を撫でる。

結局よく分からないままだが、園子は機嫌が良さそうだった。

そんな二人の姿を周りは遠巻きに見て注目を浴びてるのだが、陽灯はそもそも気づいておらず、園子は気づいておきながら気づいていないフリをしていた。

 

「ん〜やっぱり、はるるん撫でるの上手〜」

「そうかな? こんなので喜んでくれるならいつでもやるよ。園ちゃんの笑顔は素敵だからね」

 

サラリと言ってのけているが、実際に陽灯にとって撫でるという行為は慣れている。

一体どれだけの人助けに人生を費やしているというのか。常日頃から困ってる人が居たら見逃さないようにしているほどだ。

子供というのは迷子になりやすい。

ある程度成長してるならまだしも、何も知らないのだ。外の景色は新鮮で興味を持ってしまえばそこへ行って親と逸れる機会も多い。

まぁ陽灯は陽灯で別の意味で迷子になりやすいので人のことを言えないのだが、とにかくそんな子たちを相手にしてたら自然と子供にやれる行動は上手くなる。

 

「ほんとぉ? じゃあ、もっとして欲しいな〜」

「うん、いいよ。園ちゃんの髪は綺麗でちゃんとしてるから撫でやすいし撫で心地がいいからね」

 

ただこの状況、この場所。

学校という学び舎の施設で白昼堂々と甘ったるくイチャイチャされるのは周りからすればどうだろうか。

乃木家の令嬢に口出すような者はまず普通の人ならば居ないだろうが、周りは割と微笑ましそうにしてるので問題ないだろう。

一部嫉妬や羨望の念も含まれているが、まあ今更か。

にしても、付き合っても居らず、幼馴染といった関係でもない異性の膝上に乗って撫でられているというのは距離感がバグっていると思うが、朝礼が始まるギリギリまでこの状態は続いてたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先生がやってくると、朝礼の前に説明が成された。

昨日樹海の世界で戦った三人と一人。

お役目に参加する際に突然と姿を消すのだから、そこの説明を掻い摘んで話したのだ。

それから授業を受けて放課後になると、陽灯はクラスの同級生たちと話しながら帰るみんなを見送っていた。

もう数えられる程度しかおらず、とりあえず背後から感じる感触には出来る限り考えないようにしながら片手を回して頭を撫でていた。

 

「えへぇ〜」

 

案の定というべきか、陽灯の後ろにいるのは園子だ。

彼女は陽灯に後ろから抱きついている。

正面に座られるよりは色々な意味でマシなので、陽灯は特に気にしていなかった。

元々甘えられるのも慣れている。

そんなふうに過ごしていると、教室に残っている中の一人である須美が突如として立ち上がった。

椅子の動く音で注目が集まり、その顔は緊張しているように強ばっている。

 

「ね…ねぇ、三ノ輪さん、乃木さん、遡月くん」

「?」

 

名前を呼ばれて一様に反応すると、続きを口にしようとする須美の言葉を待つ。

須美は一度深呼吸を挟んでから、意を決して告げた。

 

「よ、良ければその…こ、これから…しゅ、祝勝会でもどうかしら…?」

「祝勝…? うん、いいんじゃないかな!」

「いいねー私も同意見」

「うん、行こ行こ!」

 

約一名だけ分かってなさげではあったが、全員須美の提案に肯定を示していた。

それを聞いて、須美の顔はぱああっと明るくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4人は祝勝会の場所として選んだ大型ショッピングモール、“イネス”へとやってきていた。銀曰く、砂漠に現れる強大なオアシスだそうだ。

物珍しい様子で辺りを見渡す陽灯。

 

「はるるん、どうしたの?」

「うーん…いや、こう、ショッピングモールって感じ!」

「そりゃショッピングモールだからなぁ」

「それもそっか!」

 

一般家庭から裕福な者まで来る場所だというのに、こんな反応をするのは彼くらいだろう。

納得したようにきょろきょろと見て、気が済んだのか普通に前を見て歩くようになった。

 

「俺、詳しくないから案内出来ないなー」

「心配いらないって! このイネスマニアの銀様が隅々まで案内を---」

「今日は祝勝会で来たのだから、食事出来るところにしましょう?」

「仕方がないか……じゃあこっちだな!」

「おー頼りになる! お願いします、先生!」

「お願いします、せんせ〜」

「任せろ!」

 

 

ということで銀の案内によってやってきたのは、イネスの中にあるフードコート。軽食からがっつり食べられる物、スイーツに至るまで揃っているその一角は、大人数が座れるように多くのテーブル席が用意されている。

そのテーブル席の1つに、4人はジュースを手に座って居た。

テーブル席は4人であり、陽灯の隣に園子。向かいに須美、その隣に銀という席順である。

早速須美がランドセルから、前もって準備していたとされる、折りたたんだ紙を広げて、そこに書かれた文を声に出して読み始める。

 

「えぇっと……。今日という日を無事に迎えられた事、大変嬉しく思います。えっと……、ほ、本日は大変、お日柄もよく---」

「ぉ、おおー文章長い! 堅い!」

「そういうのはなしでいいんだよ、かんぱーい!」

 

何を読んでるのかと興味を持った陽灯が覗き込み、銀が音頭を取ってジュースに口をつけていた。

 

「ありがとうね、すみすけ」

「?」

「私も、スミスケを誘うぞ誘うぞって思ってたんだけど、中々言い出せなかったから凄く嬉しいんだよ!」

「えっ、そうなの!?」

「鷲尾さんから誘ってくれるなんて初めてじゃない?」

「そうなんだよ〜」

「それは確かに。俺も鷲尾さんと遊んだりしたことないなー」

 

元々会話という点では陽灯は何度か交わしたことはあったが、園子も銀もクラスメイトという立場であっても関わることの方が少なかったのだろう。

 

「合同練習もなかったしなーそれにしてはよくやれたんじゃないか?」

「それは私も思うな〜。はるるんが押し潰された時は心臓が止まるかと思ったけど…」

「あはは、それはごめんね。でもほら、結果良ければ全てよしってことわざもあるし!」

「それは終わりければ、じゃないかしら…」

「あれぇ!?」

「でもでも、すみすけの狙撃も精密で凄かったしミノさんは特攻隊長って感じで、はるるんは巨人に変身して、もうとにかく今は語り合いたいことがいっぱいあって私興奮してたんだよ!」

「俺は覚えてないから、聞いた話でしか答えられないけどね」

 

またしても言葉を間違えていたが、終わった今では思い出話のひとつにしかならない。

ただ陽灯としては覚えてないので、ピンと来た様子はなかったが。

 

「実は私も…その話がしたくて」

 

少し俯きがちに目を伏せながら須美はおずおずと話始める。

 

「私、三人のことあまり信用してなかったと思う。それは、三人のことが嫌いとかじゃなくて、私が…人を頼ることが苦手で…」

「すみすけ……」

「でも、それじゃあダメなんだよね。一人じゃ……私一人じゃ、何も出来なかった。三人がいてくれたから……」

 

実際にそうだった。

須美だけではない。園子も銀も、そして陽灯と巨人も。

誰か一人でも欠けていたなら間違いなく、お役目を果たすことは出来なかった。

ただのアクエリアスだけなら勇者三人の力でも何とかなったかもしれない。

だが突如強くなったバーテックス、怪獣(イレギュラー)の存在。

その二体によって、一人居なかっただけで負けていただろう。

覚えてない陽灯ですら理解している。

だからこそ三人は須美の言葉を待った。

 

「だから…その…これからは私と、仲良く、してくれますか?」

 

どこか言いづらそうに、躊躇ってるようにもじもじと指を組みながら思い切ったように本音を吐露する。

それに対し銀と園子は顔を見合わせて、陽灯だけは首を傾げた。

 

「……ん? なんで今更? 友達じゃなかったの!?」

「えっ?」

「俺は友達だって思ってたよ。既に共に戦った仲だしこうやって一緒に出掛けて話して、不和な空気になってるわけでもない。それはもう、友達なんじゃないかなって! 友達の定義なんて誰にも分からないんだから後は本人次第だと俺は思うな」

「遡月くん……」

「陽灯の言う通りだって。私ら既に仲良しだろ? ここに来る道中や今だって普通に話してるんだしさ」

「でも嬉しい! 私もすみすけと仲良くしたかったんだ。ほら私も〜…友達作るの苦手だったから…」

 

ほんのわずかばかり、園子は陽灯に目を向けたが本人はジュースを飲んでいて気づいていない。

実際彼女は友達と言える関係は陽灯に出会うまでなかった。それはまた、須美も似たようなものだ。

須美の場合はクラスメイトに話し相手が居た。けれど、友達かと言われるとそこまで親しくないだろう。

園子の場合は例え話をしても壁があって、友達という関係まで進展することは決してなかった。家柄的に乃木家の場合は仕方がないといえば仕方がない。取り入ろうとするものは居ても、権力という力が関係を築かせてくれない。

その関係へ歩み寄ってくれたのが、陽灯だ。それから陽灯を通して、園子は多くの人と喋る機会が増えたわけだが。

陽灯と銀に関しては、言うまでもないだろう。

 

「三ノ輪さん、乃木さん…」

 

ただまぁ、一瞬だったので園子の視線には誰も気づかなかった。

それよりも須美は胸が温かくなる感覚を感じていた。

なぜなら不安が杞憂だったと思ってしまうくらい返ってきた返事は肯定するものばかり。

それどころか、陽灯は既に友達と認定しているし銀も仲良しだと言ってくれ、園子は同じ気持ちだと言ってくれたのだから。

 

「すみすけも同じ想いだったんだ〜嬉しいなぁ、すみすけ!」

「あ、あの…乃木さん…?」

「はーい!」

 

ニコニコと語る園子に須美は今更ながら疑問を抱いた。

そこを指摘するために名前を呼んだが、明るい声で返ってくる。

少し言いづらくはあるが、気になるものは気になるのだろう。

 

「その…いつの間にか定着してるすみすけっていうのは何…?」

「あぁ〜いつの間にかあだ名で呼んでた〜」

「自覚なかったのかよ…」

「園ちゃんは割とあだ名で呼ぶからね。俺も最初話した時からあだ名だったな〜気にしてなかったけど」

 

自覚のなかった園子に目を点にする須美と苦笑いする銀、懐かしそうにする陽灯だった。

 

「う、うれしいけど…それ…あまり好きじゃないかな…」

「じゃあ、ワッシーナは? アイドルっぽくない?」

「もっと嫌よ!」

「えぇ〜…」

 

出来る限りオブラートに包み込んで渾名を変えてもらおうとした須美だったが、さらに酷くなったため全力拒否すると園子は少し不満そうだった。

これに関しては陽灯も思うところはあったのか同情的な意味で隣で苦笑している。

 

「乃木さんも、『そのこりん』とか嫌でしょう?」

「わぁ、素敵!」

「……ごめんなさい、忘れて」

 

普通の感性とは大きく異なるらしい。

まさか受け入れられるとは思わず、言った須美自信が後悔した。

 

「あっ、閃いた!じゃあ『わっしー』はどう?」

「う〜ん…」

 

握り拳を手のひらにポンと、叩いた園子は案を再び出すと、須美は返答に悩む。

しかしあまりにも目を輝かせて今か今かと待っている園子を見て、遂に諦めた。

 

「まぁ、それで良いかな……」

「! よろしくね、わっしー!」

「う、うん……」

「んじゃあさ。あたしの事は、『銀』って呼んでよ! 三ノ輪さんは何だかよそよそしいな〜?」

「そうだね〜」

「えぇっと…」

 

この場でそう呼んでいるのは陽灯だけで、これを機に変えようと思ったのだろう。

ただいきなりそう呼ぶのは照れ臭いのか戸惑っている様子。

 

「あはは。まぁいいか。よぉし! それじゃあ今日という日を祝って、みんなでここの絶品ジェラートを食べよう!」

「じぇらーと?」

 

無理に強要するつもりはないらしく、話題を変えるように銀はそう提案すると、置き物と化していた陽灯が首を傾げた。

---実は彼らが通う神樹館小学校だが、教育方針として、4年生を越えれば買い物も許可されている。

十歳を越えればお金の使い方を知っておくのも勉強ということだ。子供達のモラルが高い神樹館小学校ならではの、自由な校風で、生徒達は歓迎している。

制服を着て学校が終わったあと買い食いなんて、学生にとって憧れの生活のひとつ、というのもあるだろう。

 

再び席に戻ってくるとさっきと同じ位置に座る。

フードコート内にあるジェラート専門店で、各自で好きな味を注文した後だ。

手には様々なジェラートがあり、陽灯だけは二つ持っている。

抹茶味と期間限定とやらのハイコンセプトネクストフレーバーだとか。

銀に近い白と赤、片方はザクロでもう片方はバニラだ。

なぜ普通のバニラではなく色が銀色っぽいのかは謎だが、変な味をしないことを願うしかないだろう。

ちなみに須美は宇治金時、銀はしょうゆ、園子はメロン味だった。

特に好き嫌いもない陽灯はザクロだろうとも美味しく感じ、それぞれジェラートに舌鼓を打つ中で、須美だけが一口食べた後にジーっと難しい表情でジェラートを睨み付けていた。

 

「鷲尾さんどしたの? そんなジェラートにガン付けて。美味しくなかった?」

「いえ、宇治金時味のジェラートが美味しすぎて……でも私はおやつと言えば和菓子かところてん派だったから、こうも簡単に自分の信念が揺らいでしまうのかと思うと……」

「まあまあ、美味しいものは美味しいでいいんじゃないかなー」

「私もそう思うな〜」

「そ、そうね…」

 

単純と言えば単純だが、分かりやすい答えを告げた陽灯やそれに同意する園子を見て、須美も納得したのだろう。

須美は気持ちを新たに、ジェラートを頬張った。

 

「……うん、美味だわ! このほろ苦抹茶とあんこの甘さが織りなす味の調和が絶妙だわ……!」

 

年相応の笑顔を浮かべて口を動かし続ける須美に陽灯は微笑ましげに見つめると、自身は今度はスプーンで一掬いした抹茶味に手を出していた。

抹茶味特有のコクのある苦みや渋味、抹茶の豊かな風味とやさしい苦み甘さが口の中で溶け、おいしいと言いたげに頷いていた。

そんな陽灯をじぃっと見つめる視線があり、気づいた陽灯が首を傾げる。

 

「美味しそうにはるるん食べてるから…一口ちょ〜だい?」

「あ、そういうこと? いいよ、はい」

「! あ〜……ん〜♪」

「「!?」」

 

園子のおねだりに陽灯は気にした様子もなく抹茶味のジェラートをスプーンで一掬いすると躊躇もなく園子の口の中へ運び、園子はその行為を理解してるからか照れが少しあるようだが、それでも受け入れる。

園子はその行為がお気に召したのか満足げな笑顔を浮かべていたが、須美と銀は口を出す暇もなく慣れてるような一連の流れに驚いている。

 

「さ、遡月くん何を…」

「? 食べさせただけだけど…」

「つ、付き合ってもない異性同士がそんな…破廉恥だわ!?」

「そうかな、普通じゃない?」

「うん、流石に普通ではないな」

 

元々いた家では割と要求されていたり、お腹が空いている誰かに食べ物を分け与えることはしょっちゅうある陽灯は特に気にしていないのでまた抹茶味を食べ出す。

耐性がないらしい須美は見てるだけ、正確には目の前で友達同士が恋人がやるようなことをしていたことに顔を真っ赤にしており、銀もほんの少しだけ赤みがあるが、須美ほどではなかった。

 

「はるるんにも、お返し〜」

「おーありがとう、あむ」

「どう〜?」

 

さっきと同じように園子に差し出されたスプーンを、食べるのを辞めた陽灯が咥える。

抹茶味やザクロ&バニラとはまた違った風味に頬を綻ばせる。

 

「こっちもこっちでいいね」

「えへへ、よかった〜」

「ま、また…ッ!?」

「あ、鷲尾さんも食べる?」

「えっ!?」

 

なぜそういう考えに至ったのか。

陽灯は須美が食べたいのではないかと思ったらしく、笑顔でスプーンを差し出す。

はしたなくないか、と自問自答する須美ではあるが、自身が動こうとしない姿にこてんと小首を傾げる陽灯とスプーンを見て、このままでは逆に彼に迷惑をかけてしまうと遠慮しがちに咥えると味には敵わなかったのか顔を輝かせる。

ただ陽灯に微笑ましそうに見られてることに気づいて、須美はまた顔を真っ赤にした。

 

「なんだこれ……」

「銀も食うか?」

「おっ、それならあたしのしょうゆ味も食べてくれよ! これこそナンバー1! まさに最強の味だよ!」

「それなら頂こうかな!」

「む〜……ねぇねぇ、こっちも食べてさせて?」

「こっちは他とは違うから、合うか分からないな〜でも挑戦は大事だからね、いいよ」

 

それがきっかけとなったのかどうかは分からないが、この後全員で食べさせ合うという状況が出来上がってしまった。

なお、銀一押しのしょうゆ味は好評を得られなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェラートを食べ終えた4人は銀の案内でイネスの屋上へとやってきていた。そこからは街の様子が良く見えた。その中には勿論、4人が戦った大橋の姿もあれば、四国を囲う壁も見える。

 

「いい景色…これを守ることが出来たんだな」

「うん…」

 

この場の全員が、同じことを思っただろう。

あの戦いで負けていたら、この景色をこの四人で見ることは出来なかった。

 

「そういえば俺は覚えてないけど、銀ってバーテックスの水飲んだんだっけ? あれ、飲めたんだな」

「ああ、あれね……うん、サイダーかと思ったら途中でウーロン的な味になったよ」

「…なんかごめん」

 

気になったことを聞けば、思い出させない方がよかったような感想が返ってきたので陽灯はすぐ謝った。

銀は気にしてないようで、いいってと手を振っていたが。

 

「そうそう。そういえば陽灯は巨人に変身したよな」

「凄かったね〜」

「名前決まったんだっけ、えーと」

「ザ・ネクスト…ね。横文字なのが少し不満だわ」

「アハハ…でもほら、あの姿って特撮ヒーローに似てるしさ、ああいう系にはよくあるみたいだよ」

「………」

「はるるん?」

「あ、ううんなんでもない。気にしないで、園ちゃん」

 

元々の目的に戻り、戦いを振り返る。

そこで思い起こされるのはやはり、銀色の光の巨人のことだ。

今はもう、名前を付けられている。

その名前に関しては不満そうな須美に銀はテレビか雑誌か、それとも別の媒体で知ったのか特撮ヒーローならよくあることを伝えていた。

一方で食いつきそうな陽灯は名前を挙げられた時に僅かに悲しそうな表情を浮かべていた。

そのことに園子はすぐ気づいたものの、陽灯もそこまで強く気にしてる訳では無いからかすぐに元に戻ったのを見て追求はしなかった。

 

「そうだ! あの怪獣の名前も決められてたな」

「ザ・ワンだね〜結局よく分からないままみたいだけど……でも」

「なんだか遡月くん…というよりザ・ネクストと因縁がありそうな感じではあったわね。昔からの知り合い…みたいな」

 

会話を聞いていて、確かにと陽灯は思った。

彼は巨人とザ・ワンのことを誰よりも知っているといえよう。樹海の時の記憶はないが、知っているのだ。

昔、もう二年以上も前になるか。

宇宙から飛来してきた二つの光。出会い、ひとつとなった日。

赤と青。巨人とザ・ワン。

だが夢の中では、()()()()があったような気もするが、それに関しては見たことはなかった。

あの時ですら、巨人とザ・ワンは互いを知っているように思えたし一緒に飛来してきたことから関係あるのは間違いない。

詳しくは聞いてないので、知らないのだが。

ただ---

 

「…どうしてなのかな」

「え?」

「あ、口に出してた?」

「それはもうばっちり」

 

無意識だったのだろう。

疑問の声を挙げていたことに指摘されてから気づくと、陽灯は少し悩んだ。

説明が難しい、といった感じか。

 

「バーテックスは…無理そうだけど、戦いだけが手段なんて、おかしいと思うんだ」

「それって、どういう…?」

「俺や鷲尾さん、銀や園ちゃん。俺たちは『会話』という行為をして、こうやって仲良くなれた。だからもしバーテックスにもザ・ワンにも言葉が通じるなら…どうにかできないのかなって」

「ん〜…と、はるるんは…話し合いで解決出来ないんじゃないか、ってこと?」

「うん、そうなるかな」

 

返ってきた肯定に、三人が顔を見合わせる。

考えたことがない、そんな感じだった。

大人たちから、大赦から、ずっと言われてきた。

お役目とはなにか。敵と戦い、世界を守ること。

彼女たちには『対話』などという発想がまずなかったのだ。まぁあの問答無用な様子から、バーテックスは会話すらままならないだろうが。

 

「うーん……それは…難しいんじゃないかしら」

「それが出来てたらこんなことにはなってないんじゃないの?」

 

そう、話し合いで解決出来るならやっている話だ。

陽灯は”みんな“の幸せを願う。

人でも動物でも巨人でも神でも、文字通りのみんな。

でもそれは、不可能なのだ。

人と人ですら時に争い、傷つけ合う。同じ星で生まれた者たちですら分かり合えないのに、宇宙から飛来してきた存在(ザ・ネクストやザ・ワン)人の範疇を超えたバケモノ(バーテックス)と話し合いで解決なんて出来るはずもない。

 

(でも…俺と巨人さんは友達になれた。だったら、きっと……)

 

バーテックスは分からない。

それでもかつて陽灯はザ・ワンと会話をしたことがあった。

陽灯が知っている記憶では『交渉』が可能だったのだ。

助かったとはいえ、自身の命を差し出す代わりに誰も傷つけるなと、戦いをやめろ、と。

 

「…あっ!」

「お、またなんかひらめいちゃった感じ?」

「うん、ざ---巨人となら、その通りいけるんじゃないかな〜って。はるるんが変身したっていうのもあるけど、私たちを守ってくれてたから〜」

「確かに、その線はありそうね。事実、彼…彼女…?どちらか分からないけれど、助けられたもの。なにより神樹様のお墨付きだし…」

「それに会話が通じてた感じはあったよな」

「頼りきりになってしまった部分は大きいけれど…」

「それは違うと思う」

 

陽灯が気にしていたことを察してか、名前ではなく巨人と称して告げると、これに関しては好意的な意見だ。

神樹様の言葉が大きいだろうが、直接見た彼女たちは守ってくれたことや援護してくれたことも知っている。

それを嬉しく思いながらも、陽灯は須美の最後の言葉を否定した。

 

「みんなが居なかったら、あの戦いは勝てなかったと思う。聞いた話でしかないけど、俺だけじゃ…巨人さんだけじゃ守れなかった。誰が欠けてもダメだったんだ。それにね、一人で戦うのとみんなで戦うのは違うよ。

スポーツの話になるけど、チームでやった時と一人でやった時ならチームでやった時の方が強くなれるんだ。気持ちの問題かもしれない…けどお役目もきっと、同じだよ」

「遡月くん……」

「人と人が手を取り合うから、何倍にも強くなれる……だからみんなが居てよかった。ありがとう、一緒に戦ってくれて! これからも仲間として……ううん友達として! これからも一緒に頑張ってくれるかな?」

 

そう言って彼は、またいつものように笑顔を浮かべた。

手を差し伸べて、独りよがりではなく選択を与える。

これから先の戦いは、よりもっと厳しくなるかもしれない。

巨人の力はあれど制御することも出来ないし変身する方法も分からない。それらが分かったとして、敵も強くなっていくだろう。

初陣で辛勝だったのもあり、もしかしたらがあるかもしれない。

ただそれでも、彼はこうやって誰よりも前に出るのだろう。誰よりも、人と寄り添おうとするのだろう。

 

「私は見てるだけじゃ嫌だから、当然着いていくよ〜」

「もちろん、あたしもな!」

 

当たり前だというように、園子も銀も陽灯の手を取ると、陽灯は何も言わずに須美を見た。

まだ一人だけ、返答を聞けていない。

 

「私……」

「うん」

 

優しい目だ。その声も、表情も、雰囲気も、全部が穏やかで安心出来るような、思いやりがある。

どんな返答が来ようが受け入れるのだろう。

陽灯だけじゃない。園子も銀も、須美の言葉を優しく待ってくれている。

初めてだった。

須美は確かに、同級生と会話はできる。

でもこうやって場を設けたのは、チームワークを高めるために仲良くなりたかったからだ。

全員が居なければ勝てなかった。

その言葉は正しく、陽灯だけなら踏み潰されて死んでいた。巨人が居たから助かって、戦力にもなかった。須美の援護があったからこそ、アクエリアス・バーテックスまでの道筋が出来た。園子が居たから勝利への道が見えた。銀が居たから道が切り開けた。

三人がいなければ、陽灯はもう居ない。

逆に陽灯が居なければ、ここに須美も園子も銀も居なかっただろう。

祝勝会を提案したのは、それを分かっていたから。

だがその提案は、この行動は、須美にとっても勇気が居ることだった。

友達の作り方なんて知らなくて他人と仲良くなる方法なんてわからなくて。それでも、前のままじゃダメだと思ったから、勇気を出した。

今のままならきっと、須美は守られるだけになってしまう。あの時だって、陽灯が身を挺したことで二度も守られた。

最初の頃なら勇者だからと、お役目だからと理由を付けられたかもしれない。

だけど今は、もう---

 

「私も…仲間として…ううん、友達として…一緒に頑張りたい」

 

初めて出来た友達と一緒に戦いたいと、心から思っている。

守られるのではなく、守り守られる。

共に戦うというのは、そういうことだろう。

 

「そっか…じゃあ…これからも一緒に頑張ろうね、鷲尾さん!」

 

そう言って、背を照らす太陽(夕日)にも負けないほどに輝かな笑顔で陽灯は須美の手を取って引っ張る。

それほど強くない力。

一歩踏み出す程度でしか無かったが、須美の体は影から陽だまりに照らされる三人の元へ。

手を握る陽灯の手は、温かくて、握るというよりは包み込んでくれるような力だ。

その身に宿すのは、光の巨人。

されど、これはそういうのでは無い。

須美の目の前にいる彼は、光の巨人の存在など関係なく彼が彼であるからこそ、こうも眩しく、こうも温かく、居心地が良いのだろう。

皆が陽灯を好ましく思うのは、その心なのだろうと、こういうことなのだろうと須美は初めて苦手でしかなかった彼の部分を、少し理解した。

 

「あ〜わっしーズルいな〜私も」

「あたしも忘れてもらっちゃ困るぞ!」

 

彼の一端に触れていた須美は二人の声に現実に引き戻されると、園子が須美を包み込む陽灯の手の上に自身の手を合わせ、銀は横から手を合わせていた。

温もりがふたつ、増える。

 

「そうだった! これでみんな一緒!」

 

さらに、陽灯のもうひとつの手がみんなを包む。

陽灯と須美、園子、銀、そして最後の手は、巨人(ザ・ネクスト)

欠けてはならない、全員だ。

四人ではなく五人。

五人の勇者なのだから。

しかし今更ながら須美は初めて異性に触れていることに気づいて顔を赤くするが、この温もりが、一人では無いということを教えてくれる。

それはきっと、全員が同じ考えを持ったのだろう。

この空間には天真爛漫な笑顔の花々が咲いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〇遡月陽灯/ザ・ネクスト
多分今頃紡絆くんの脳内(掲示板)ではお前この頃から(後輩すら)また落してんのかよとか言われてる。よく今まで刺されなかったね、ほんと。
ただこの頃はやはり覚悟が決まってないような部分が見当たる模様。
それでも根本的な部分はやはり現代紡絆くんと同じらしい。
樹海に入れる理由として、光の巨人は関与してないらしいが…?

〇ザ・ネクスト
陽灯の言葉を聞いて、ようやく返事っぽいことをした。

〇遡月夜霧
何を調べているかは未だに謎。
しかし陽灯のことは心から心配しているようで、光の巨人が関係なくても巻き込まれていたという事実に悲観していた。

〇遡月澪
ちゃんと周りを見れる人で鋭く優秀。
彼女がいたからこそ、陽灯は思いを伝えれたのだろう。
ちなみにこの後、彼女の手によって陽灯の写真がめっちゃ増える模様。家にも飾られているとか。

〇鈴さん
多分割とやばい人(変態)
しかし彼女もまた陽灯に救われ、大切に思う人の一人なのだろう。

〇乃木園子
割と積極的で距離感バグってる。
陽灯くんが逆らわない選択をするくらいなので、彼の妹といい勝負をしているのかもしれない。
ちなみに唯一ザ・ネクストという名前が好きじゃなさそうな陽灯の様子に気づいてる。
ぶっちゃけ独占欲は高そう。てか絶対高い。

〇三ノ輪銀
イネス好きの人。
しょうゆ味が好評得られなかったことだけが不満。陽灯ならば分かってくれると信じてたのに、とは彼女談。
普通に『あーん』している姿には見てる側が恥ずかしくなったが、須美ほどではなかった。

〇鷲尾須美
ちゃんと話せた結果、仲が深まった。えらい。
異性に関しては耐性があまりにないのかすぐに真っ赤になっていた。
陽灯の人柄をほんの少し理解し、苦手意識は薄まったようだ。
それはそうとしてザ・ネクスト含めザ・ワンの名前にも不満があるけど決まったものは仕方がないね

黄金色のジュネッスの名称

  • ジュネッス・オーア(紋章学で金色)
  • ジュネッス・トリニティ
  • ジュネッス・ブリエ(輝き)
  • ジュネッス・ルフレ(光沢、反射)
  • ジュネッス・ルクス(光)
  • ジュネッス・ルミナス(光り輝く)
  • ジュネッス・ゴールド(金色)
  • ジュネッス・オール(金、全部)
  • ジュネッス・グロウ(発光)
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