【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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ゆゆゆ10周年おめでとう!!
いやあ、何とか間に合ったぜ!
それはそうとしてこの話書き上げる前に輝きの章読み直したけど紡絆くんこの作品におけるターニングポイントの戦闘で致命傷か瀕死になってるのやばすぎて変な笑い出た。流石難易度ルナティックだわ。




「変身」

 

 

◆◆◆

 

 第 13 話 

 

変身

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祝勝会から1週間。

合同訓練が始まり、同じくやることとなった陽灯も須美や銀、園子と共にすることになっているのだが---

 

「……全然来ないわね」

「…来ないなぁ」

 

すやすやと眠っている園子はまだしも、須美は当然ながら遅刻せずに待っていて、実はちょっと遅刻した銀は怒られていたが約一名全く来ないのもあって説教は程々に済んでいた。

そう、陽灯である。

全く来ない、もう30分は経っている。

寝坊か忘れているのかすら思えるくらいに来る気配がない。

一体どこで道草を食っているのか、これが一度ならまだ分かるが、陽灯は常習犯だった。

さらに10分後、陽灯はようやく訓練場へ駆け込んでくる。

 

「遡月くん、遅刻……って、ええっ!?」

 

いきなり説教をかまそうとした須美は、陽灯の姿を見て怒りがどこかへ飛んで行った。

 

「あはは、ごめんね。遅れちゃった」

 

その理由は、もうなんかボロボロだったからである。

一人で訓練でもしてきたのかと疑うレベルで酷く、顔にはさっき出たであろう傷があるし服は泥で汚れているし髪はボサボサになっているし息切れを起こしている。

急いで来たのは分かるが、何をしたらこうなるのか。

 

「何かあったのか?」

「そういうわけじゃないよ! ただ困ってる人が居たから放っておけなくて見かける度に首を突っ込んだというか…とにかく俺の責任だからごめん!」

「それは立派な事だと思うけれど…」

「はるるんはね〜私と出掛けた時もこんな感じだったよ〜」

「うわ!? 起きてたのか、園子」

 

さっきまで眠っていたはずの園子が普通に会話に割り込んできたことに銀は声を挙げて驚き、須美はびくっと肩を跳ねさせたくらいだった。

ちなみに起きたのは陽灯がやってきた直後だったりする。

 

「体が勝手に動くんだ、こんなボロボロになるのは毎日ってわけじゃないんだけどね」

 

そもそも毎日困ってる人がたくさんいるということはなく、今日は多い日だったというだけなのだろう。

遅れたことに申し訳なく思っているものの、反省するつもりはなさそうだった。

 

「それが毎日なら、むしろ心配になるのだけど…とにかく一度服を着替えた方がいいかもしれないわね。何かあれば…」

「あ、そこは大丈夫!」

 

泥がついたまま訓練すれば場所を汚すし本人も感触が気持ち悪いだろうと提案すると、陽灯はバックから服を取り出していた。

 

「…泊まる準備でもしてたのか?」

「よく汚したり破けたりするから、替えの服はいつも持参してるんだ。普通だろ?」

「それは普通じゃないぞ」

「え?」

「えぇ、普通はそんな服が破けたりしないわね」

「いやいや…」

「はるるんくらいだよ?」

「……そっか」

 

誰一人同意してくれる者は居らず、陽灯はちょっとしょんぼりとした。

遡月になる前から家族に着替えは持つように言われたから持ってたが、替えの服を持つのは普通では無いらしい。

まぁ部活動とかあれば別だが、普通の人はわざわざ外出する際に持ってこないだろう。しかも破ける前提では間違いなく持ってこない。

 

「ま、まぁ…俺のことはいいよ!あってよかったし!」

「それもそうだな」

「じゃあ、遡月くんが着替えたら訓練を---って、遡月くんななな何を!?」

 

陽灯が服を脱ごうとしていた。

あくまで上だけだからその場で着替えようとしたようだが、須美は動揺しながら顔を赤くして背ける。

 

「うん?」

「ほわ〜…♪」

 

流石に銀も見ないように目を逸らしたのだが、そんな中で唯一園子だけは目を背けることをしてなかった。

それどころか興味津々といった様子で陽灯の体を見ている。

 

「は、破廉恥ですッ!」

「プールや海に行ったら見られるのに!?」

「そりゃそうだけどさぁ……」

 

珍しく正論な陽灯だが、そういった意味ではないのだろう。

陽灯はよく分からなくて考えるように顎に手をやるが、答えが出るはずもない。

 

「はるるん、硬いね。カチカチだ〜」

「おっ…ぐふ…そんなことないよ、特に何もしてないし」

 

ぺたぺたと触られたりつんつんと突かれたりと少々擽ったいのか身動ぎする陽灯だが、普段動きまくってるだけあって相応の筋力が出来ている。普通であるならばある程度成長すれば運動したりするが、陽灯の場合は動けるようになった時から何かとやってきたのだ、同級生よりかは筋肉がついてても不思議ではない。

といっても流石にムキムキというわけではないのだが、腹はでておらず細めだが、腹筋は硬くなっている。

陽灯は別に筋トレをしてるわけじゃないが、彼の人助けは自然と筋トレに繋がっているのだろう。

例えば木をよじ登ったり泳いだり物を掴んだりと。

 

「またまた〜こんなに硬くなってるのに〜?」

「そうかなぁ…」

「うん、初めて見た。男の子ってこんなに太くなるんだね〜こうやって近くで見て触れるのは、はるるんが初めてなんよ〜」

「そうなんだ。でも、誰でもなるんじゃないかな? 俺は鍛えてるってわけじゃないけど…確かに神樹館では同じくらいの子は見たことないかも…あんまり比べるように見る機会もないから服越しだけどね」

「ちょ、ちょっと待って! 何の話!? 二人とも何の話をしてるの!?」

 

黙っていたら会話が変な方向に行きかけてるからか、思わず須美が振り向くと、抱きつくように胸や腹筋に触れてる園子と未だ上半身裸で棒立ちの陽灯が一緒に目を丸くしている。

 

「…あれ?」

「え?」

「はるるんの筋肉?」

「傍から聞いてると、すごい会話になるんだな……」

 

思ったより普通---いや上半身裸の男の子に抱きついている絵面はセーフかどうか怪しいが、とにかく問題ない状態だった。

何となく理解した銀はちょっと頬が引き摺っていた。

 

「すごい会話? えっと、筋肉以外に他にあるの…?」

「じゅ、純粋な眼差し……!」

 

返って邪推してしまった須美は顔を真っ赤に染めると、銀が同情するように肩に手を置いていた。

 

「わっしーもミノさんも、はるるんの触ってみる?」

「えっ」

「まぁ…もう今更だから、どうせならあたしも触ってみようかな」

「減るもんじゃないから俺でいいならいいよ!」

「じゃあ…おおっ! こんな感じなのか!」

 

腹筋や胸筋などではなく、上腕に触れた銀が驚嘆の声を挙げる。

まぁ男と女では筋肉の付き方が違うというのもあるが、自分たちの腕とは違うというのもあるだろう。

ぷにっとしたものではなく、力を入れられると硬くてがっちりしている。

 

「た、確かにこうやって見ると安定してるというか頼もしく感じるような男児らしい体をしてるわね…」

 

釣られてか、須美は気がつけば陽灯の体をじっくりと見ていた。

訓練が始まる前は自ら鍛えることなんてなかったが、訓練が始まってからは彼は基礎トレーニングをしている。

というのも陽灯は今のところ、ザ・ネクストに自分の意思で変身することが出来ないからだ。

あの時以降一度も変身することが出来ず、どういう訓練をするべきかとなった結果、体を鍛えて体力をつけることにした。

ただ一週間で劇的に変わるはずもないので、あくまで約12年間の人生で動きまくった影響だろうが。

にしても今の状況は傍から見たら誤解を招かねない状況なのだが、大丈夫なのだろうか。

 

「……はっ!? そうじゃなくって、私たちは訓練をしに来たのよ。遡月くんの体を見に来たわけじゃないわ…! 早く服を着て!」

「服を着ようにも園ちゃんが…」

「お気になさらず〜」

「どうやって!?」

「そう言う鷲尾さんもちゃっかり触ろうとしてたような……」

「そっ、そんなことないわ! どう鍛えさせて立派な大和男子に仕上げようかと考えを巡らせただけで……」

「あ、着れちゃった。園ちゃん、大丈夫?」

「待て待て、二人とも何してんの!?」

「ん〜真っ暗だけど…あっ、はるるんの匂いがする…」

「遡月くん! 服が伸びてしまうわよ!?」

「そこじゃないから! そこじゃないからね、鷲尾さん!」

 

ようやく服を着たかと思えば、園子の言葉をそのまま真に受けて行動したらしく、見るからに体が太くなっている。

人一人が服の中に入ってるので当然ではあるが、服の中に入ってしまった園子を救助したのち、ようやく訓練が始まった。

ただ陽灯はやっぱり変身が出来ないので、走り込みやら筋トレなどになっていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練が終わると、残ったのは須美と園子と陽灯だった。

銀はそそくさと帰ってしまい、今は三人とも道場の縁側に腰掛けて休憩している。

 

「遡月くん…その、どうかしら?」

「んー、何が? あっ、訓練? 疲れたよねー結構体力には自信あったんだけど、結構バテちゃったな」

「いえ…そもそも30分間も全力疾走してるだけで十分すぎると思うけれど…そうじゃなくて」

 

そもそもの話、人間が全力疾走できるのは数秒が限界である。

そんな何分も維持は出来ないし、何なら全力疾走の場合速度は下がっていく。にも関わらず陽灯は30分間は速度が下がることは無かった。

 

「じゃあ…怪我? でもそれはもう治ってるし…うーん?」

「えっと、私が言いたいのは…ザ・ネクストになれるかどうかってこと」

「…あ〜」

 

ようやく分かったと言わんばかりに声を挙げる陽灯は微妙そうな顔を浮かべた。

もうその反応だけで分かるのだが。

 

「全然、かな…」

「そう……」

 

陽灯の反応から既に察してたようで、言葉にして伝えると須美は少し残念そうにした。

それを見て陽灯は目を下に向けると、口を開く。

 

「ありがとう」

「え?」

「心配してくれたんでしょ? お役目が始まったら、俺は再びあの世界に足を運ぶ。勇者でない俺には鷲尾さんや銀、園ちゃんのような力は無い」

 

自身の膝で寝ている園子の頭を陽灯はゆっくりと撫でる。

さっきから園子が居るのに会話に入ってこない理由は寝ているからだった。

 

「だからバーテックス相手にまた1週間前同様になるかもしれないって。今度は命を落とすかもしれない」

「……そうね」

「でもね、大丈夫だよ」

「それは…どうして?」

「俺は死なない。帰る場所がある。守りたい人がいる。大切な人たちがいる。だから死ねないんだ、死んじゃったらもう、会えないから。護れなくなるから」

 

慈愛に満ちた目で、大切なものに触れるかのように園子の髪を梳くように撫でる。

死んだら会えなくなる。

常識だ。

人が死んだあと何処に行くかなど死人にしか分からない。消滅するのかもしれないし、輪廻転生するかもしれない。虚無の中で永遠という時間を過ごすことになるのかもしれない。もしかしたらこの世を幽霊と呼ばれる存在として漂うことになるかもしれない。

バーテックスとは頂点であり、超常だ。

人では決して敵わない敵。

ザ・ネクストの力は強大ではあるが、陽灯は身体能力が高いだけの男の子に過ぎない。

そもそもいくら強くとも、人間である限り陽灯にはバーテックスを倒せない。

 

「理由になってないわ…結局変わらないじゃない」

「そうかも。だけど守りたい人がいるって、とっても頑張れることなんだよ? 俺、この力が宿る前からずっと人助けしてた。その時はいつも、そこに困ってる誰かが居たんだ。助けたい、力になりたい。とっても小さな覚悟かもしれないし、理由かもしれない。

だけどそれだけで人は頑張れるんだ…すごいよね。だからつまり…心構えが大事だと思うって言いたいのかな」

 

『死ぬために』戦うのと『生き残るために』戦うのは全く異なるものだ。

前者は全てを投げ出しているが、後者は未来を考えている。

人とは複雑なもので、心が砕けたら何も出来なくなる。逆に心が奮い立つと頑張れる。

 

「確かに、母国を護るという心構えは大切よ。とっても立派。けれどそれだけで変わるとは…到底思えないわ。遡月くんは依然と危険なままだし…」

「んー、堅いなぁ…」

 

真剣な顔で告げる須美と苦笑いを浮かべる陽灯。

言ってることはお互い間違ってはいない。

陽灯のは精神論、須美は現実論。

スポーツならまだしも、命を賭けた戦いだ。力がなければ、生き残れるとは言えない。

その力を持っていても、自覚しなければ意味が無い。

 

「だっ、だから……」

「ん?」

 

ほんの少し、緊張した面持ちで須美は陽灯を見つめる。

膝元に置かれている手は握られ、力の入れすぎか肩に力が入っているのが原因か震えている。

 

「私が守るわ。貴方のこと…大切な仲間で、友達だから…」

「…そっか、ありがとうね鷲尾さん」

 

驚いたように目を見開いたが、陽灯はすぐに相好を崩す。

それはもう、嬉しそうに。

その反応を見てか、須美は少し安心したように息を吐く。

僅かに横目でそんな須美を見ながら、陽灯は覚悟を決めたように口を開いた。

 

「それなら俺は、俺を守る君を守るよ。約束する。何かあったとき、必ず俺が君を救い出してみせるから。大丈夫、君は…鷲尾さんは一人じゃないよ。傍にはみんながいる」

 

震えていた手に陽灯の手が重ねられる。左に座っているため、右手で須美の左手の上に手を置いてる形だ。

ぎゅっと、優しく包み込んでくれるようで。温かい熱を感じさせる手。

 

「遡月くん……」

「一緒に頑張ろう、ね?」

 

いつものように笑いかける陽灯を見てか、気が付けば須美の肩の力が抜けていた。

狙ってやったのか偶発的にか、どちらかは分からないが身を強ばらせていることに気づいていたのだろう。

 

「そうね…一緒に、よね」

「うん。一緒に、だよ」

 

互いに顔を見合わせて、笑い合う。

緊張の糸は切られ、緩んだ空気が場を支配していく。

勇者が守るならば、その勇者を守る誰かも必要。

そうすればきっと、犠牲が出ることもないはずだと陽灯は、夕暮れの空を見上げた。

 

「…! さ、遡月くん……」

「うん? どうかした?」

 

なんだかさっきより小さな声で名前を呼ばれ、聞き取れた陽灯が反応すると須美の顔が赤くなっている。

 

「その、手が……」

「あっ、ごめんね」

「ま、待って。嫌では、ないわ」

 

気づいた陽灯が手を退けようとすると、右手で掴まれた。

無理に解く訳にはいかないため、ちょっと浮いた状態で止まる。

 

「鷲尾さん?」

「自分でも分からないけど、遡月くんは違うというか……」

「…もう少し、こうしてよっか」

 

元々は安心させるためにしたことで、陽灯には当然ながら邪な考えは一切なかった。

だからこそ須美が不快になることもなかったのだろう。

陽灯はとりあえず、その方が安心出来るかなと微笑むと再び手を降ろして重ねる。

 

「ね、鷲尾さん」

「な…何かしら?」

 

異性と触れ合う機会に恵まれてない須美は慣れてない様子で、陽灯は羞恥心が存在してるのかどうか怪しくなるくらいに気にしてないが、何かを思いついたような顔をしている。

 

「俺のこと、仲間で友達って言ってくれたでしょ?」

「えぇ…」

「だから、これからは鷲尾さんってよそよそしい呼び方じゃなくて、須美ちゃんって呼んでいいかな? 案外、そういうの気にするタイプかなと思って名字で呼んでたんだけど」

 

そう言われて、須美は思い出す。

陽灯は園子のことはあだ名で呼んでおり、銀のことは名前で呼んでいる。

それは仲がそれほど深まっている証であり、園子に関しては現在進行形で膝枕をするくらいには親しい。

一方で須美だけが鷲尾さん、と呼ばれていた。

 

(なんだか、モヤモヤする……)

 

今まで思ったこともないことが浮かんでしまった。

まるでこれでは、壁があるみたいではないかと。

こう言ってはなんだが、須美は少々真面目すぎる節がある。

友達と呼べるような関係をまともに築けなかったのはそこが大きかったというのもあるだろう。

特に異性の男子とだなんて以ての外である。

 

「嫌なら、今まで通り---」

「ううん、そう呼んで。その、仲間外れみたいだし…私のことも名前で呼んで欲しいわ」

「そっか、じゃあ…これからは須美ちゃんって呼ぶよ。うん、ちょっとは距離が近づけた感じがするね」

 

改めて呼ばれると、須美は気恥ずかしく感じた。

異性である陽灯に呼ばれるからか、それとも単純に慣れていないからか、どちらかは分からない。

だけど陽灯の言ってた通り、今までよりは近づけたのような感覚があるのは錯覚ではないだろう。

 

「そうだ、俺のことも陽灯でいいよ。みんなそう呼んでるし、須美ちゃんにもそう呼んで欲しいな」

「えっ!?」

「今度は須美ちゃんの番だよ。無理にとは言わないから、嫌なら断ってくれていいけどね」

「べ、別にそういうわけでは…」

「ほんと?」

 

提案されたことに、尻込みする。

須美は名字で今まで呼んできたが、男子を名前呼びしたことはない。

陽灯は教室でよく色んな人の名前を呼んでいたから慣れているだろうが、須美は未経験だった。

しかし嫌ではないと言ったせいか、陽灯の目がキラキラしてるような気もしていた。

純粋な目で、期待してるようにも見える。

 

「う……」

「んー?」

「は…はる…」

 

残る一文字を言おうとして、詰まる。

名前で呼ぶなんて、言われるだけなら簡単なものだ。

しかしこうも勇気がいるものかと須美は今更気づいた。

あと少しが口から出てこない。

いつものように、名字を呼ぶ時と同じようにしようと思っても口から発することは出来なくて。

諦めるように目を伏せかけると、重ねられた手が握られたのが見えた。

思わず陽灯の顔を見ると、優しげな顔だった。

口にはしなくとも、まるで無理をしなくていいと言ってるかのようで、自分のペースで良いと言ってくれてるようにも感じる。

しかし須美はそれらよりも、背中を押してくれてるように感じた。

こうも受け入れようとしてくれて、寄り添おうとしてくれて、須美は己を恥じる。

経験して分かる。生まれ持ったモノもあるかもしれないが、他人に踏み込むのはとても勇気が必要なのだと。

傍から見れば簡単に見えるようなものでも本当はとっても難しいのだ。

陽灯はそれを簡単にやってのけているが、それは彼が勇気を出して他者の空間に入っているに過ぎない。

これから共に戦う仲間で、ようやく出来た大切な友の一人。

須美は深呼吸をして心を落ち着かせる。

その間も、陽灯は何かを言わずに待ってくれていた。

そんな彼に報いるためにも、須美は勇気を出す。

 

「は、る…は、はる…と、陽灯くん……っ」

「! うん、そうだよ」

「陽、灯くん…陽灯くん……」

「うん、うん。どうかな、今までより近づいたって思わない?」

 

何度も呼んでちょっとずつ慣れてきた様子。

機を見てそのようなことを聞いてくる陽灯に須美もちょっぴりとそう思ってきた。

 

「ゆっくりでいいんだ。お互いにね、まだまだ分からないことも多いと思うけど、こうやって須美ちゃんとも、もっともっと仲良くなれたらなって俺は思うから。そうしたら、須美ちゃんの色んな顔が見えるかもしれない。心からの笑顔がたくさん見れるかもしれないからね!」

 

朗らかに笑う彼は恥ずかしげもなく言ってのける。

歩み寄ってくれている。

強引にではなく、ちゃんと須美の気持ちまで考えてくれている。

無意識に手に力が籠った。

陽灯の気持ちに応えるために、言動で示そうと重ねられた手に、空いている右手を置いて挟むようにしながら須美は体を陽灯に向けた。

そして。

 

「陽灯くん…私も---」

「ふわぁあ……」

「ッ!?」

 

膝枕されて眠っていた園子が目を覚ましたように欠伸をする。

ばっ、と何事も無かったように反射的に高速で戻った須美は正面を向いて固まった。

重ねていた手も離されており、欠伸が聞こえた陽灯は視線を膝元に向ける。

 

「園ちゃん、おはよう。よく眠れた? 全然だったなら、ごめんね」

「ん〜…ん。お陰で休めたから、大丈夫〜…って、あれ?」

 

体を起こす気はないのか陽灯の膝に頭を置いたまま周囲に目を向けた園子は小首を傾げる。

 

「もしかして邪魔しちゃった?」

「いえ、大丈夫よ。ただの世間話ダカラ」

「……そう?」

 

微妙な空気の変化を感じ取ったのか園子が聞くと、須美は機械のように若干カタコトになりながら返事した。

 

「全然、邪魔なんて思わないよ。仲良くなりたいなーって話してただけだし園ちゃんも大切な友達だからね」

「……えへへ、そう言ってくれると嬉しいなぁ」

「ならよかった」

 

妙な空白があったことには陽灯は微塵たりとも気づかず、嬉しそうにする園子を見て陽灯もまた嬉しそうに笑う。

 

「そっ、それより陽灯くん。乃木さんが目が覚めたならそろそろ帰りましょう? 帰る時間はもう過ぎているわ」

「…!」

「うわ、いつの間に!?」

 

須美の呼び方が変わっていることに園子は聞き逃さなかった。

そんな一方で時刻を確認した陽灯は驚いている。

 

「じゃあ、帰らないとだね。園ちゃん、立てる?」

「あ…うん」

「?」

 

園子が退かない限り陽灯は動けないため、園子がゆっくりとした動作で立ち上がると何処か言い様のない違和感を覚えつつも特に問題はなさそうなため、追及はせず立ち上がろうとしたところで。

 

「おぐっ!?」

「だ、大丈夫!?」

「はるるん?」

 

足に力が入らずに倒れた。

ペターンと地面に顔をつけたまま動かない陽灯を見て、心配する二人だが顔は動かせる陽灯は横に向けた。

 

「ヤバい…足痺れて動けない」

「…ああ、ずっとしてたものね」

「…もう、驚いたよ〜」

 

園子が寝てから起きるまでの間膝枕をしていたため、正座の体勢だった。

脚に体重がかかると、床と筋肉などの間に神経や血管が挟まり圧迫される。

血流が悪くなれば神経が刺激され足が痺れてしまうのだ。

 

「くそ…ダメだ、俺は動けそうにないや。二人とも、俺のことはいいから早く帰るんだ…!」

「ただ足が痺れてるだけよね!?」

 

ちょっと休めば回復するようなことなのだが、深刻そうに告げる陽灯に須美がツッコミを入れた。

 

「私が原因ではるるんが……!」

「そんな重症じゃないでしょ!? もう、二人ともふざけてる場合じゃないのよ」

 

園子までも陽灯の話に乗ってしまい、もしここに須美が居なければあらぬ方向へ話が展開していったかもしれない。

 

「あはは、はーい。園ちゃん、大丈夫だよ! これくらいならいくらでもしてあげるから! 慣れてるし!」

「む…ぅ〜。他の人にもしてるの〜?」

「えっ!? いや、そういう訳じゃないけど…こう、ほら、甘えられるのは慣れてるというかなんというか…子供たちの相手良くしてるし…!」

 

何故か詰め寄られ、陽灯は目を泳がせながら言い訳を述べる。

墓穴を掘るとはこのことか。

しかしバレバレである。本当のことが混じりつつも隠し事があるような。

目敏く感じ取った園子は不満げにスカートを抑えながら陽灯の顔の前に座り込むと、ほっぺたを掴んだ。

 

「の、乃木さん?」

「い、いふぁいよ、そのひゃん」

「つーん」

「ぇえ…なんれぇ…?」

 

むにむに、と弄られる陽灯とほっぺたを弄り始めた園子の姿に須美は困惑していた。

手は動くが足の痺れが取れない彼はまだ動けないだろう。されるがままになっている。

なんでこんなことになっているのか理解できない陽灯だが、残念ながら園子は答えてくれなかった。

そして須美は須美で止めるべきかどうか分からず右往左往している。

 

「ゆるひへ……にゃんへか、わっふぁんないはへど…」

「つーん」

「ふぁめかぁ……」

 

なんて言ってるのか分からなそうなのも確かだが、不満げな園子の理由を察してやれないのも原因のひとつだろう。

結局陽灯は足の痺れが取れて解放されてもなお、理由は分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、そんなことはあったが陽灯が帰ったのは外が暗くなった頃だった。

 

「うーん、何が原因だったんだろう。夜霧さんや澪さんに聞いてみようかなぁ。巨人さんはどう思う?」

『………』

「…今日はお役目なかったな。平和なのが一番だし、これからも来なかったらいいんだけどね。バーテックスとは話せないのかな? あーでもウイルスの集合体とか言ってたし、無理だよね。風邪だってウイルスだけど、 お話出来なかったし…」

『………』

 

何を話しても話題を用意しても、内側から何も聞こえてこない。

分からないのだ。

今日だって陽灯は園子が終始不満そうに頬を弄ってきた理由も、巨人さんが全く話してくれない理由も。

言ってくれないと分からない。

理解しようとしても、陽灯という存在は自身に対して向けられる感情は一切気づけない。

まずそこから気づくことを始めなくちゃならないのだが、そもそもそこへ辿り着けないという悪循環。

 

「……うん、大丈夫。これからも頑張ろう! おー!」

 

思考を投げ捨て、何度もチャレンジすればいいと独りでに拳を上空へ突き出し、鬨の声を挙げていた。

 

「ただいまー!」

「陽灯様ぁぁぁ!」

「あ、鈴さ…んん!?」

 

それはそうとして、家に帰ってこれた陽灯は早速抱き締められた。

つい最近似たようなことがあった気もしないなと陽灯は強く抱擁されているのもあり、呼吸が出来なくなった状況で思い出していた。

 

「ご無事ですか!? お怪我は!? 誘拐でもされてしまったのかと、私気が気でなくて…!」

「あ……連絡、わぷれへた…」

 

普段ならばもう少し早いが、もう夜食を食べるような時間帯だ。

何の連絡もなしに遅いと心配してしまうのは当然と言えるだろう。

別に訓練が長引いたわけではないのだから。

 

「無事ならよかったです…皆さん心配していたんですから。私を含めて陽灯様の帰りを待っていた方々もたくさん……陽灯様?」

「………」

「鈴さん…あの、陽灯さんが…」

「落ちかけてるよ」

「え、あ……わぁあああ!?」

 

身体能力だけは人外の領域に達している陽灯でも窒息には敵わないらしく、呼吸が出来なくなった陽灯は意識を失いかけていた。

しかし鈴が心配してくれているということは分かったので無碍には出来ず、抗うことなく受け入れた結果だった。

遅れて来た澪と夜霧の言葉を聞いて、慌てて離す鈴は肩を振った。

 

「すみませんすみません! 大丈夫ですか!? しっかりしてください!」

「だ、だだいっ…大丈夫だから! お、おおお落ち着いて!」

 

勢いよく体を揺さぶられてる影響で言葉がまともに発することが出来なくなったが、声を聞いた影響かピタッと止まった。

 

「ごめんね、心配かけちゃって。鈴さんはただ心配してくれたんだよね? ありがとう、その気持ちは嬉しかったよ」

「は、陽灯様……。でも、すみません…苦しかったですよね…?」

「謝らないでいいよ。苦しくはあったけど…その、うん、痛くはなかったし! だから気にしないで、ね?」

「はい……」

 

実際に息が出来なかっただけで痛くはなかった。

むしろ口には出さなかったが柔らかったので、そのまんま意識を手放して寝そうになっていた。

しかし表情は優れず、自責の念に駆られているのだろう。

一度や二度ならまだしも、実は過去に何度かやってしまっているのもあるのだが、陽灯はそんな鈴の姿を見て何かを閃く。

 

「んー…あっ、じゃあ、こうしよう! しゃがんでくれる?」

「?」

 

平均を下回っているのもあって身長も低いため、いくら女子高生相手でも小6の陽灯は小さい。

屈んでもらうと、ちょうど顔と顔が見れるくらいの身長差。

陽灯は若干背伸びをすると、鈴の頭に手を置いてそっと撫でた。

 

「は、陽灯様?」

「よしよし、鈴さんは悪くないよ。それどころか、いつも俺の世話ばかりしてくれて助かってるんだ。いつもありがとう! 鈴さんが俺の事を大切に思ってくれてるって分かるから、とっても嬉しい。だからこれは日頃の感謝と、罰だよ!」

 

そう言って陽灯はただ笑顔を浮かべた。

罰というにはあまりに緩すぎるものだ。

足りない言葉を補完するならば、頭を撫でられることが罰と言いたいのだろう。

鈴は目尻に涙を貯め、感激したかのように両手で口を覆った。

 

「うう…陽灯様、天使……!」

「…へ?」

「なんて慈悲深いんでしょうか…! 罰というにはあまりに優しすぎるもので、ただの褒美でしかありません。そして陽灯様の純粋無垢な輝かしい笑顔! これが天使でなければ他にどう表現すればいいのか! 私にはもう、後は神くらいしか思いつきません! 何より私を撫でるために足りない身長差を埋めようと必死に背伸びして下さる姿---もぅマヂ無理……最高…尊い……はぅ…!」

「え、ちょ、ちょっと鈴さん! どうして!?」

 

早口言葉のように捲し立てた鈴が満足そうな顔で後ろに倒れ、慌てて陽灯は支えるが声を掛けても返事は無かった。

 

「ど、どどどどどうしよう!?」

「陽灯さん、大丈夫ですよ。気を失ってるだけですから」

 

病気か何かなのかも、と狼狽する陽灯に鈴の状態を確認して無事なのを分かった澪がそのことを伝えると、陽灯はほっと息を吐いた。

 

「うん、まぁ色々突っ込みたいところではあるけど…おかえり、陽灯」

「…うん、ただいま!」

 

ひとまずの落ち着きが場を占めると、陽灯はとびっきりの笑顔で帰ってきた旨を伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

園子も機嫌が直っていたので、一緒に寝たりご飯食べたり歩いたりとしているうちにいつの間にか放課後だ。

 

「二人とも、ちょっといい?」

「須美ちゃん?」

「Zzz……」

 

相変わらず陽灯の席をキープしているようで園子が陽灯の椅子とくっつけながら肩に乗せて寝ており、陽灯が撫でていると須美が話しかけてきた。

 

「前々から思ってたことなんだけどね。陽灯くんは何となく分かったけど、三ノ輪さんも時々遅れることがあるじゃない?」

「そうなの?」

「すぴー…」

 

銀よりも遅刻している陽灯。というか大半彼が来る時には既に居る。

そして園子は寝てるので返事出来ない。

間違いなく人選を間違えていた。

 

「それに勇者になる前から遅刻が多かったもの。何か理由があるに違いないわ!」

「あー、えーと」

「だから調査が必要だと思うわ! 協力してくれる?」

「すや〜…」

「そう、ありがとう乃木さん」

「えっ、今返事してないよね!?」

 

こくりこくり、とうとうとしていたら強制的に了承と捉えたらしく、陽灯はちょっと心配になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日。

流石に放っておけなかった陽灯も参加することになってしまい、三人は三ノ輪家の前に来ていた。

陽灯とは違って学校とはそんなに遠くはない。

まあ陽灯の場合は車を出すというのを遠慮したから、というのがあるが。

 

「何か問題あるなら、私たちが力にならなくちゃ……」

「よく分からないけど、がんばる〜」

「そ、そうだねー…」

 

目的が私生活を観察すること。

育ちの良い須美からすれば行儀が悪いことだが、仕方がないことだと実行する。

 

(どうしよう…俺の口から言えないしなぁ……)

 

そしてここに一人、事情を知ってる人物は居づらかった。

実は陽灯、銀と仲がいいこともあって彼女の家には行ったことがあるというか数回以上行ってるのだ。

想像に容易いと思うが、仲良くなる→偶然事情を知る→いつもの流れといった感じで、何度か銀の力になっていた。

しかし他人の事情を勝手に話すほど陽灯は常識がないわけではない。銀が話してないからこそ、触れなかったのだ。

自分のことに関しては口が軽いのに、こういうところはちゃんとしているのが陽灯である。

しかし来てしまったものは仕方がない。

陽灯の目にはもう既に赤ん坊をあやしている銀の姿がずっと見えている。なんなら行きたいとすら思ってた。

もういいやと普通に行こうかなと立ち上がったら、須美に腕を掴まれて隠れさせられてしまった。

 

「私たちのことを知ったら隠すかもしれないでしょ?」

「あ、うんごめんね」

 

止められてしまったので、大人しく陽灯は隠れた。

そんなことをしてる間に、園子が中庭を指さす。

 

「わっしー、はるるん。あれあれ〜」

 

陽灯はとっくに来る前から見えてたので特別反応はないが、須美は望遠鏡レンズを覗くと銀が赤子をあやしている光景が飛び込んできた。

 

「弟が居るとは聞いてたけど……弟の世話をしていたのね」

「うー…うー……」

 

三ノ輪家は鷲尾や乃木、遡月よりも豪邸ではなく品の良い日本屋敷という佇まい。

しかし大赦で発言力こそあるが、家自体は使用人を雇うほど裕福ではなかった。

だからこそ世話も家の手伝いも銀は手伝っている。

 

「今度は家の中のお掃除もしてるよ〜。私ああいうのしたことないな〜。遅れている理由もこれじゃないかな?」

「確かに働き者だわ…だけど、うーん」

 

乃木家は発言力が高いだけではなく財力も絶大なため、当然使用人かいる。

そもそも遡月家ですらかなりの数がいるのだ。それを上回る乃木家ならばもっと多いだろう。

 

「お使いにいくみたいね……ついて行ってみましょう」

「うん〜」

「……あれ?」

 

出ていく銀の姿を見て尾行を続けることにした須美と園子だったが、須美は違和感を感じた。

一人、反応がないのである。

周囲を見渡してみれば、どこにもいない。なんならさっきまで居たの消えている。

 

「ねぇ、乃木さん。陽灯くんは?」

「はるるんはさっき、泣いてる子が居たから行ってくるって言ってたよ? 邪魔すると悪いから私にわっしーに無理になった、ごめんって伝えてって言ってた〜」

「い、いつの間に……!」

 

目を離した僅かの間に陽灯だけ居なくなってしまったが、伝言から察するに陽灯はそっちに行って帰ってこないだろう。

仕方がないので、二人でやることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして学校がある日。

銀が遅れる理由は行く先々でトラブルに見舞われるトラブル体質だったからと分かったことを共有され、知ってたことを伝えたら教えてくれなかった理由を聞かれた陽灯は正直に自分が勝手に話すことじゃないから言えなかったことを伝えると納得してもらった。

ちなみに実は陽灯もあの後銀の負担を減らすために強化された五感を利用して先回りし、起きていた問題を解決してたりしていたのだが、それを知る者は居ない。

そんなわけで学校なので当然授業を受け、クラスメイトたちと話して、下級生と話して、時折困ってる人を見かけたら手伝ったり相談に乗ったり、何故か連絡先を聞かれたりとしたが、いつも通りを過ごす。

ちなみに、連絡先に関しては特に気にしない陽灯が伝えようとすると何故かその女の子二人組が突如用事が出来たと言って、手伝おうかと言う前に離れていったので陽灯の連絡先は渡ってなかったりする。

その後すぐに話しかけてきた園子と一緒に教室に戻ってまた授業、といった感じだった。

 

「…うーん」

 

珍しく何かを考えている陽灯。

考えるよりも行動することに定評のある彼にしては珍しく、ノートと睨めっこしている。

傍から見れば勉強に詰まっているように見えるのだが---。

 

「はるるん〜? どうしたの?」

 

悩んでいる陽灯に園子が声を掛ける。

にらめっこしていた陽灯は顔を上げると、一瞬の逡巡の末、ノートを見せた。

 

「これのことで悩んでたんだ」

「ん〜?」

 

ノートに書かれていたのは、二つの絵。

左側には星のマークとその中心に五角形と思われる形に、軌跡らしき形でその星のマークを指している絵。

右側には星のマークに複数の軌跡が描かれたよくあるシンプルな絵。

 

「わぁ、上手〜これって〜流れ星?」

「絵を描くのはちょっと得意でね、園ちゃんの言う通りこれは流星だよ。どっちも捨てがたいな〜って思っててね。園ちゃんはどう思う?」

「うーん。私はどっちもいいと思うけど〜…何かに使うの?」

 

ちょっと、という割には専用の形をした道具でも使ったのではと思えるレベルで綺麗な星マークが描かれている。

はっきり言って素人が描けるものではないだろう。

絵が上手という陽灯の新しい一面を知って、脳内で即座に記憶しながら園子は首を傾げる。

そもそも悩んでるとは言っていたが、絵に対して何故悩んでいるのかは流石の園子でも分からないのである。

そこへ思い至ったのか、陽灯はハッとした。

 

「まだ決めてないけど何か作りたくて、そのデザイン…的なやつ、かな」

「そうなんだ〜」

「なになに、どうかしたのか、おふたりさん」

「何か悩んでいる様子だったけれど…?」

 

軽く説明をしたら、タイミングよく銀と須美がやってきた。

ちょうど良かったと思いながら陽灯は同じ説明をする。

どっちのデザインがいいのか、用途はまだ決めてないと。

 

「二人はどう?」

「え? そうね、どういうものに寄るかと思うけれど、簡単に作るならば右側じゃないかしら…」

「よくあるデザインだし、売ってそうではあるよな」

「私は左側の方が好きかも〜」

「むむ、そうなるかぁ…でも銀の言う通りかも。こっちなら売ってるんだよね、昔アクセサリーショップで見たし…」

 

右側の方は星のマークに三つほどの軌跡。

誰もがイメージしそうな、流星そのものだ。

左側は逆に、流星ではあるが何処か違うもの。

陽灯は知らないが、そのデザインは科学特捜隊---科特隊と呼ばれる隊員が胸に身につける通信機に酷似している。

そして()()()()には決してない物だ。

それを知る者は一人---いや巨人を含めれば二人しかいない。

 

「陽灯ってそういうの見たりするんだな、なんか意外だ」

「こう言ってはなんだけど、あまりそう言う印象はないものね。服装とかアクセサリーとか拘らなそうで…無頓着って言えばいいかしら」

「え? うーんまあ、俺はあまり興味は無いけど。誘われたら似合いそうなものを探す手伝いくらいはするからね」

「へ〜」

「なるほど、それは…陽灯くんらしいわ」

「それなら誰かと一緒に行ったことがあるってこと?」

 

陽灯自身の性格からして意外も意外だったことだが、真相が判明すれば納得したようだ。

 

「えっと、ちょっと昔に…知り合いの女の子と」

「…ふーん?」

 

あまり昔のことを話すことはない陽灯だが、いつの間にか距離を近づけてきた園子に誤魔化す---なんて器用な真似が出来るはずもなく素直に答えてしまうと、園子は何かを考えるような仕草をしていた。

 

「じゃあ、はるるん。今度は---」

「ッ!?」

 

園子が何かを言おうとした時だった。

何かに気づいたように立ち上がった陽灯の手からノートが落ち、地面に落ちる---ことなく停止する。

 

「これは…もしかして!?」

「他も止まってる…陽灯のノートだけが何故か浮いてるってわけじゃないみたいだな」

 

外の鳥は止まり、ノートは止まり、まだ残っていた人物も固まっている。

この場で動けているのは陽灯、須美、園子、銀の4人。

つまり。

 

「……来る」

「……もう。少しは空気を読んで欲しいなぁ」

 

 

樹海化が始まったことを知らせるように波がこちらに向かってくるのを察知した陽灯と、不機嫌そうな顔で誰にも聞こえない小さな声で呟く園子を最後に、世界は豹変した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---樹海。

二度目ということもあり、戸惑うことなく須美と園子と銀はスマホを取り出して勇者としての装いを纏う。

一方で陽灯は胸を右手でぎゅっと握りしめ、目を閉じていた。

 

(巨人さん……今度こそ、守るから。俺が必ず)

 

勇者の変身が完了し、陽灯は覚悟を決める。

もうバーテックスは大橋を目指して侵攻して来ているだろう。

迎撃するためにも向かわなければならない。

 

「陽灯くん、分かってると思うけど……」

「うん、みんな頑張ろうね!」

「って、はえーよ!」

 

本当に分かってるのか分かってないのか、両足に力を入れると同時に跳躍する陽灯は先に行き、初っ端から先に行く姿に須美も銀も一緒に向かうと、園子は一旦切り替えてついていく。

ある程度訓練のお陰で勇者として慣れているのもあり、すぐに辿り着いた一行。

素のスペックで普通についていける陽灯に驚くことはもうなく、バーテックスの姿が見える。

天秤まんまの姿であり、どこか磔を思わせるバーテックスだ。

 

「あれは……」

「天秤が浮いている〜」

「じゃあ天秤座だ。見た目もそんな感じがするし、今回は分かりやすいね。ちなみに天秤座は7月初旬の夕方、南の中天に見える星座だよ」

「いや詳しいな!?」

「はるるんすごいね〜」

「ふふん、星に関しては詳しいって自信があるからね! 宇宙と天体!」

「もう…三人とも。悠長に話してる時間もあまりないわ。とにかく訓練通りに動きましょう!」

 

気を引き締めて臨むべきお役目。

状況を知らせるように声を挙げると、陽灯のお陰というべきかガチガチになることもなく、全員が程よい緊張感を保持している。

そして須美は弓に矢を番えた。

 

「これで終わってくれれば一番いいのだけれど……ッ!」

 

ロングレンジから複数放たれた須美の矢。

一般的な矢ではなく、神の力を宿した力で放たれた強弓はただの矢ではなくミサイルに近い。

しかし、逆を言えば相手もまた神の力が必要なほどに強大な相手。

矢が天秤の分銅部分に吸い寄せられ、相当固いのか刺さりはしたがダメージは見られない。

 

「! もう一度射かける…!」

 

もう一度放たれた矢は前と同じく不自然な軌道を描き、分銅部分に命中する。

完全に吸い寄せられているという事実に軽くショックを受ける。

 

「あの敵、体と体の繋がっている部分が細くてもろいかも~」

「接続部を狙って攻撃ってことね!」

「じゃあ、俺は背後から行ってみる!」

 

さすがに正面から行くとは言わなかったようで、大きく跳んで行きながら背後へ回ろうとする陽灯と左右に分かれる銀と園子だったが、バーテックスは分銅を振り回すように高速で横回転する。

 

「あっまっこれやばぁあああああ!?」

 

竜巻のような防御壁に背後へ回ろうと空中に居た陽灯は耐えることなんて出来るはずもなく、あっさりと巻き込まれていた。

 

「な…おい、陽灯---くそっ!」

 

回転を止めようと銀が強引に攻撃を仕掛けるが、回転で弾かれてしまう。

 

「近づけない……!」

 

下手に矢を射れば、巻き込まれている陽灯に刺さりかねない。遠くから射るのは無効化されると分かってるからこそ距離を縮めようとしたが、風があまりに強い。

それどころか回転の遠心力を利用し、吸い寄せた矢をお返しとばかりに須美の方へ射出する。

狙いがあまりに雑だったお陰で回避出来たが、何本かの矢は樹海に着弾し傷つける。

樹海が傷つけば傷つくほど、その災いは樹海が解除された際に街に何らかの形で降りかかる。

今回のケースでは軽微だろうが、仮に大穴でも空けばどうなるか。

 

 

 

 

 

 

 

「ぁぁぁぁぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぉおおおあああああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぁぁぁぁああああああ---っ!?」

 

そして件の陽灯は上昇気流に巻き込まれていたものの、外側へ行く力(遠心力)によって上昇途中で投げ飛ばされてしまい、地面へ落下した。

なんか鳴ってはならない音がなったような気はするが、無事に帰還出来たようだ。

 

「はるるん、大丈夫!?」

 

落下地点は園子の近くだったらしく、何とか風に耐えながら近づいた園子が聞くと、陽灯は普通に起き上がったがまた吹っ飛ばされそうになったので慌てて地面にしがみつく。

そんな陽灯を守るためか傘を展開した園子は屈んで風を軽減すると、陽灯は礼を述べる。

しかしあの状況下で受け身を取ったのか純粋に打ったのか、左腕がブラブラとしてるので確実にやっただろう。

気づいた園子は一瞬だけ顔を顰める。

 

「ちょっと痛いけど大丈夫! 台風に巻き込まれるって初めての経験をし…」

「! それだぁ!」

「えっ、なに!?」

 

何故か感想を言い出した陽灯だが、園子は陽灯の言葉をさえぎって大きな声を出した。

突然遮られ、陽灯は驚く。

 

「ぴっかーんと閃いた!」

「へ? 攻略法見つけたの?」

「うん!台風の目ってあるよね」

「たいふうのめ?」

「台風の目…もしかして」

「そう、この回転だって周囲に対しては強くても…頭上はお留守かもしれない!」

「そっか! 上から飛び込めばいいってことか!ナイスアイデア園子!」

 

一人だけ理解してなかった者が居たが、最後の説明で理解したらしい。

しかし問題となると、どう上から侵入するかだ。

そのまま突っ込んだって、陽灯の二の舞になるだけである。

 

「そういえば風が弱い部分が見えたような……」

「本当か!?」

「だったらまずは私が確認のために矢を打ち込むわ……!」

「後はどう上に行くか、だよなぁ…」

「園ちゃん園ちゃん」

「ん〜?」

 

風を上手く利用すれば高く飛ぶことは可能。逆に言えば風のせいで遮られる可能性もあり、何か方法でもあるのか陽灯が園子に声をかけると、耳打ちした。

 

「どうかな?」

「うーん…」

 

珍しく提案したらしいが、園子は了承しかねない様子だった。

しかしそうこうしてる内にもバーテックスは回転し続け、突進してくる。

分銅と本体を使って高速回転するその姿は巻き込まれただけでミンチになる未来しか見えない。

陽灯は風のみだったお陰で切り傷が出来ていたくらいだったが、今のバーテックスは近づいてきている。

つまり分銅が直撃する可能性があり、そうなれば竜巻のような風のコンボで間違いなく死ぬだろう。

救いは留まっていた時よりも風が弱くなっているということ。速度が大したことがないので、軽々避けられることか。

それでも勇者が無事でも、陽灯が無事でも樹海はそうはいかない。

 

「はるるん!」

「! 分かった!」

 

それが承認するものだと理解した陽灯は即座に銀の元へ駆け寄ると軽く説明し、須美の方には園子が説明していた。

終えたということを伝えるように園子からの視線を受けた陽灯は須美に向かって声を挙げ---

 

「須美ちゃん!」

(あれ? これ、方角どっちだっけ?)

 

ようとして、ポンコツを発揮した。

こちらを見る須美に対し、陽灯は焦る。

作戦を伝えようにも、見たのはあくまで陽灯の目だ。他の誰も風が弱い部分は分からず、方角が分からなければ手当り次第に撃つしかなくなってしまう。

 

『---彼女の位置ならば中心から左5メートル』

「そのままで! 中心から左5メートル!」

「分かったわ!」

 

その声が聞こえた時には陽灯はもう同じように叫んでいた。

お陰で知らせは届き、須美は具現化された菊の勲章を貫き、威力を増した矢は一寸の狂いもなく伝えられた位置へ直進していき、竜巻の最上部を目指していく。

竜巻の風のバリアを貫き、その矢は見えなくなる。

 

「陽灯くん、銀! もう少し、右に10メートルほど動いて!」

「待って須美ちゃん! 10メートルってどれくらい!?」

「それくらい分かれよ!?」

「ここだよ〜!」

 

おおよそ予想していたのか先回りしていた園子のお陰で無駄に終わらずに済み、即座に位置を調整。

 

「俺は片腕使えないし武器ないから銀に頼むしかないんだけど…大丈夫?」

「なーに言ってんだ。そのために陽灯が居るんだろ? 大丈夫だ、陽灯なら必ず届けてくれるって信じてるからな!」

「そっか、じゃあ大丈夫だ! 絶対に上手くいく、俺がそうする!」

「なら……行くか!」

 

合図もカウントも、あったわけではなかった。

ただ行うことを伝えただけで、だというのにタイミングがズレることなく同時にジャンプを繰り出す。

勇者のスペックでは常人には出すことの出来ない飛距離を稼げるが、それでも竜巻の最上部に辿り着くことは不可能だ。

そして陽灯は身体能力が人間離れしているものの、流石に勇者ほどの出力は持っていない。

先に自由落下が始まる陽灯だが、空中で体勢を上下逆に向けると、簡易的な踏み台を作る。

そして落下してきた銀が陽灯の足の裏を踏み台にし、再びジャンプする。

陽灯の人外じみた脚力が加わり、最上部まで辿り着いた銀が飛び込む。

 

(届いた! 風圧がヤバいな…けどさっきに比べれば!)

 

銀は地面に落ちていく感覚に身を任せながら斧を構える。

身動きが取れなかった時とは違って、吹き飛びそうになるほどではない。

だからこそ決めなければならない。ここに来れたのは全員が協力したからだ。

足となってくれた陽灯。作戦を思いついた園子。正しい場所を見つけ出した須美。

ならばここで倒さなければ、銀は見せる顔がない。

 

「これで!!」

 

倒せなかったら、無理だったら、足りなかったら。

そんな考えは一切浮かぶことがなく、銀は絶対に勝つ、というシンプルな強い意思。

その力に、神は答える。

銀の在り方を具現化したように斧に炎が宿る。

その炎は彼女の折れない意思を表すかの如く、風の中でも消え去ることはなかった。

 

「終わりだぁああああああ!!」

 

そして銀は光にも負けないほどに熱く、周囲を灯す炎を噴き出しながら確かにバーテックスを縦と横に斬って見せた---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜巻のような風は銀がバーテックスを斬り終えた時に収まり、桜が舞う。鎮花の儀。

 

多少風の刃に斬られはしたが勇者の力によって回復はされ、特に怪我もなく戻ってきた銀は待っているであろう三人に声を掛けようとして。

 

「はるるん大丈夫〜?」

「んー! ちょ、ちょっと、全然抜けないんだけど…!生きてる?生きてるわよね!?」

 

見た光景はそれはもう見事に真っ逆さまに頭から地面に突き刺さっている陽灯と引き抜こうと頑張っている須美の姿だった。

なんでこうもフィクションしか起こりそうにない状態になっているかは分からないが、まあ勇者の力やバーテックス、巨人や怪獣がいるこの世界では今更か。

 

「おーい」

「あ、ミノさん」

「どういう状況だよ、これ」

「えっとね〜ミノさんがはるるんを踏み台にして飛んだ時にそのまんまの勢いで落下してこうなった?」

「それ折れてないか?」

「大丈夫って言ってたよ〜」

「喋れんの!?」

「---ぷはっ!? あ、おかえりー須美ちゃんもありがとう」

「はぁ、はぁ…ど、どういたしまして……」

 

そんな話をしていたら引き抜くことに成功したらしく、結構汚れた陽灯と疲労で地面に座り込んでいる須美の姿がある。

引き抜いた方が疲れていて、本人が割と平気そうなのはどこからどう突っ込めばいいのか分からない。

 

「ああ、うん…ただいま」

「いやー神樹様の味がした気がするよ」

「どんな味だよ…」

「神樹様って味ってあるんだ〜」

「いやいや、そんなわけないでしょう。第一食べれるものじゃないのよ」

「あはは、まあでも!」

 

埋まってた時に口にでも入ったのか、そんなことを言っていたがまず食用ではない。

ただ冗談のつもり---そんな器用な真似は出来ないので素だろうが、陽灯は立ち上がると手を挙げた。

それがどういう意図なのか理解した銀は笑みを浮かべる。

 

「勝利!」

「いえーい!」

 

パン、と心地よい音が鳴り響く。

手と手を打ち合わせて起きた音。

訓練の成果か純粋に慣れてきたからか、今回は辛勝ではなく、余裕を持って勝てた。

唯一の救いは風が殺傷能力が低かったこと。近づけないという点では強力ではあったが、乗り越えさえすれば前回のバーテックスの方が厄介だったといえよう。

 

陽灯と銀がハイタッチして喜んでたからか、戦いでは無いのに疲労した須美も頭が理解してきたようで笑みを浮かべ、園子だけは陽灯の左腕に視線を向けていたが、ふと首を傾げる。

 

「あれ〜?」

「どうしたの?」

 

陽灯と銀には聞こえなかったようだが、近くにいた須美が反応した。

 

「なんだかおかしいような……」

「え? どこが変なところでも……あれ?」

 

須美もまた何か違和感を感じた。

いや気づいたというべきか。

周囲を見渡す園子と思案する須美。

 

(樹海化が解除されない……?)

(前は戻ったよね〜?)

 

そう、樹海化が解除されていない。

バーテックスは倒した---正確には撤退なのだが勝利したならいつまでも樹海にしている意味は無い。

だが神樹様は解いていない。

そこから考えられる最悪のケース。

答えに辿り着いた園子と須美は顔を見合わせる。

 

「もしかして…」

「まだ終わってない!?」

 

その時だった。

勇者の強化もあるだろうがロングレンジ弓を武器にしているだけあって、遠い場所を補足出来る須美は何かが光ったような気がした。

それが何なのかは分からない。

分からないが、それは接近してきているようにも見えて。

位置と速度、思わず振り向いた先にいるのは銀がいる場所。

そして園子は須美とは別のものを見ていた。

須美が前方ならば、彼女は上空。

 

(あれは……)

 

アレはなんだ。

園子は今まで生きてきた中で、完全なる未知のなにかを見た。

黒く、深く黒く、深淵とも言うべき真っ暗な闇のような、そんな穴。

あんなもの、あっただろうかと。

何か分からない。

分からないが、知っている。園子は嫌な予感と共に前回の戦いの記憶が思い出されるように再生される。

あれはそう、以前バーテックスに降り注いだナニカ。

つまり、()()()()()()()()

それを知らせるように振り向く。

これが同時刻に感じて、思って、行動したことだった。

 

「ミノさん!はるるん!」

「三ノ輪さん! そこから---」

「ッ!?」

「え!?」

 

光が加速する。

言葉よりも早く、音を置き去りにして銀が居た場所へ。

そして園子と須美が目にしたのは、音よりも早くに瞬時に反応して見せた陽灯が銀を強く押した姿。

銀が目にしたのは、必死の形相ではなくほっとしたような笑みを浮かべる姿。

一秒にも満たないにも関わらず、スローモーションのように感じる世界。

1コンマの差で光が何なのかを捉えた陽灯は咄嗟に左腕を動かそうとして、動かなかった。

半ば無意識の行動でしかなかったが、左腕は動かないことを思い出した時には陽灯の体は凄まじい勢いでその場から吹き飛び、轟音が鳴り響く。遅れて、三人がいた場所に暴風のような突風が吹いた。

髪を揺らし、目が開けれられないほどの風。

すぐに風が過ぎ去り、目を開けば樹海の地面を削り、大木を貫き、大木には丸い穴が空いている光景が見える。

そこに陽灯の姿はなく、ただ地面には陽灯の場所を知らせるような血が間隔を空けながらも付着していた。

呆然としながら三人は振り向く。

どこから撃たれたのか、それだけは真っ白になった頭でも分かっていたから。

そしてそこにいるのは、さっき倒したはずのバーテックス。

銀に斬られたはずの傷がゆっくりと回復していき、元通りへと戻っていた。

しかしそれだけでは無い。

アクエリアス・バーテックスとは違い、いずれライブラと命名されるバーテックスは風を纏っていた。

回るのではなく、何もしてないのに風が荒れ狂うように吹いている。

 

「手応えは感じたのに…なんで……!? 鎮花の儀もちゃんと……ッ!」

 

そう、確かに終わったはずだった。

これが鎮花の儀が起きたということは後は神樹様が処理するだけ。今ここにいるということは、神樹様が処理出来ないほどの力を得たということ。

儀式の最中に妨害されてしまった、と考えるのが妥当だがその考えに至るのはもう少し先の話だ。

 

「分からない、分からないけど、でも今は……!」

「はるるんを見つけなきゃ!」

 

直ぐに戻ってくる気配がない上に、さっきの光景が威力の高さを物語っている。

ただどこにいるのか分からないというわけではなく、血があるお陰で把握するのは容易だった。

バーテックスは動かず、それを見た三人は陽灯の血の跡を追っていく。

バーテックスはやはり、動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こぽっと口から零れた血が地面を濡らす。

攻撃と思われる一撃を防御も出来ずに受けた陽灯は神樹様が生やした樹木のお陰で止まることは出来たが、衝撃までは防げなかった。

うつ伏せに倒れ、吐血だけではなく体から出てきた血が血溜まりを作る。

 

(な、に……が……)

 

陽灯が分かったのは銀が危険だということ。

そしてあの攻撃は、()()でしかなかったということ。

それは人類が開発した兵器のひとつ、空気銃。エアガンというもの。

それが近しいものだが、もはや砲弾に近い。

縮んだ空気は押し返す力---弾性力が高まり、高温になればなるほど空気が活発に動き、そして圧縮された空気はいずれ爆発する。

圧縮空気の弾。

それが攻撃の正体であり、バーテックスの力で撃たれた結果、凄まじい威力を誇るになっただけ。

ただ撃つ、というのは表現的に正しくないかもしれないが。

 

(はや、く…いか……ない…と…)

 

起き上がろうと動く右腕をバネにして立ち上がろうとするが、力が抜けたように滑って地面に伏せてしまう。

耳を澄ませば交戦音は聴こえない。

 

(こ、れ……な、んか……やば…い……)

 

漠然とした意識の中で想像以上にダメージが大きいことを悟る。

頭を強く打った影響か血が次々と垂れてきて地面にポタポタと粒が落ちていく。

視界の中は酷く朧気で、油断すればそのまま意識を失いそうだった。

 

(ねむ……)

 

普段あまり寝てない影響だろうか、と真っ白になってきた思考の中で思いつつも少しだけ休もうと目を閉じる。

そうしたら、不思議な感覚だった。

全てから解放されるような、全身の力が抜けていくような。

ああ、けれど従ったらダメだ、と陽灯は拳を強く握る。

確信はなく、ただの予感。従ったらもう、戻れない気がしたから精一杯の抵抗をする。

 

「---い!」

 

そうして意識を失わないように抗っていると、足音が複数聴こえた。

誰かの声。

 

「---ん!」

「しっ---り!」

 

気がつけば気配が近くにあるような気がして、陽灯はゆっくりと目を開く。

視野は普段よりもぼんやりとしていて明瞭ではないが、誰がいるのかくらいは分かった。

 

「そ、の……ちゃん…す、みちゃん……ぎん…?」

「っ…よかった! 生きてる……!」

「とにかく今は距離を取りましょう。陽灯くんをこのままにしておけないわ…!」

「まだお礼も言ってないんだ……! 陽灯がいなきゃあたしはやられてた。だからそのためにも死んだら許さないからな!」

「…う、ん……あは…は……」

 

普段とは違う弱々しい笑顔。

たったの一撃だ。

バーテックスの攻撃を直撃しただけで、巨人を宿す陽灯が瀕死レベルまで追い詰められた。

何発もとなれば再生能力を持つ勇者とは比べれないが、一撃を耐える耐久性だけなら勇者にも引けをとらないだろう。それどころか万全の状態なら陽灯の方が頑丈かもしれない。

そんな彼が今この状態。

もし銀だったなら最悪死んでいた可能性が高かった。その点では陽灯でよかったと言うべきだろう。

 

「私と銀で運びましょう。私の矢じゃ防げないし……」

「そうだな…園子は警戒を頼む!」

 

だが移動しなければ同じ場所にさっきの技をやられて今度こそ終わる。

防御が出来る園子が警戒し、須美と銀が両脇から支えて連れていく。

勇者の身体能力であれば何の妨害もなければ離れるくらいはすぐ終わり、ある程度離れると陽灯は大木に持たれかかれるようにゆっくりと降ろされる。

 

「酷い怪我…流石に応急処置だけじゃ無理だわ。早く病院に連れていかないと……」

「早く倒さなきゃいけないってことか……!」

「………」

 

例の如く何故かタオルやら包帯を持っていたお陰で何も無いよりかはマシ程度にはなったが、出血量が多くてすぐに包帯が真っ赤に染まってしまっている。

それを見て須美と銀に焦りが生まれるが、ふと一人だけ静かな人物がいることに気づいた。

 

「乃木さん…?」

「園子?」

 

ずっと黙っていた園子を見れば、彼女はバーテックスの方を睨むように見ている。

何かを考えているような、そんな様子。

 

「乃木さん…?」

「園子?」

「ねぇ二人とも」

 

声を掛けて見ると、園子は振り向く。

その顔は真剣なもの。

 

「さっきからずっと見てたんだけど、どうしてバーテックスは動かないのかな?」

 

言われて須美と銀はバーテックスの方を見た。

動いていない。

移動していた時に陽灯を含め、勇者に対してさっきの一撃を放てば回避することなくやられていただろう。

園子が警戒してたとはいえ空中では踏み止まれない。

明らかにチャンスでしかなかったはずなのに、敵は一切攻撃することはなかった。

 

「確かに…風は纏ってるけどそれだけね…一歩も動いてない」

「そう言われると妙だな…」

「もしかしたら動けない…んじゃないかしら」

「うん、私もそう思うんだ。あいつは確かに強力な一撃を持ってるかもしれないけど、その分負荷が大きくて使ったあとは隙だらけなんじゃないかなって。だから動けない。ただどれくらいの猶予があるのかまではまだ分からないけど…少なくとも撃ってから一分はあの状態」

 

バーテックスを観察し、導き出した答え。園子の言葉はバーテックスの様子を見る限り確かなものだろう。

しかし須美と銀は別の意味で驚いていた。

 

「…? どうしたの?」

 

そんな2人の様子に気づかないほど、瀕死になっている誰かさんとは違って園子は鈍感ではない。

二人は顔を合わせて、互いに頷くと須美が口を開く。

 

「いえ、その…乃木さんが落ち着いていたから…」

「そうそう、意外でさ」

「…あ〜」

 

須美と銀は早く倒さねばと焦りが生まれていた。

園子の様子に気づかなければ間違いなくバーテックスの方へ向かっていただろう。

しかし傍から見たら園子は冷静だったのだ。

感情的になることなく、敵の分析をしていた。

 

「そう見えたんだね〜」

「……と、いいますと?」

「はるるんを傷つけた分しっかりとお返しするために相手を知るのは当然でしょ? だから少しの動作も見逃さないようにずっと見てたんだ〜」

「そ、そうか…」

 

にっこりとした笑顔ではあったが、目が全く笑っていなかった。

冷静だったように見えて、内心は怒りに燃えていたのかもしれない。

薮をつついて蛇を出さないように、銀はそれ以上何も言わなかった。

 

「けれど、問題はあの一撃…よね? 正直接近してしまうと避けられる気がしないわ。だけどあの風も意味が無いとは思えないし…」

「多分、あの風は身を守るためじゃないかな。例えばアルマジロが身を守るために丸くなるように、バーテックスは身を守るために風を纏った…とか。だから動けなくても問題ないから、あの場にいるんだと思うな〜」

「今はそう考える方が良さそうね……」

 

動けない理由だけではなく、ちゃんと他の部分も予想を立てている。

過信は出来ないが、ないとあるとでは取れる戦略も大きく変わってくるものだ。

 

「…れ、も……」

 

擦れる音が響き、音の発生源を見れば陽灯が手と足で這いながら少し動いていた。

 

「お…れ、も……」

「はるるんはだめ。縛ってでも行かせないから」

「………」

 

園子の脅しにも近い言葉にピタ、と止まった陽灯は須美は銀にも目を向けるが、須美は首を振って、銀は両腕でペケの形を作っていた。

味方は居ないらしい。

当然っちゃ当然である。

 

「とにかく陽灯は休んでなって! もう同じ手は食わないからさ!」

「大丈夫よ、陽灯くん。さっきのは不意打ちだったのもあるし、私たちは一人で戦うわけじゃないから」

「……そ、うだね…」

 

頑固たる意思を持つ三人を説得する力はないのもあり、陽灯はそれ以上何かを言うことは無かった。

それを見て、三人は頷き合うとバーテックスの方へ向かっていく。

あっという間に姿が見えなくなり、陽灯はゆっくりと木に持たれながら立ち上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人が辿り着いたとき、バーテックスは動き始めていた。

さっきまでは止まっていたのに、侵攻を開始した。

それはつまり、園子の見当は当たっていたことへの証明となる。

 

「風は常に纏ったままなんだな」

「どれほどの風力かに寄ると思うけれど…試しにッ!」

 

放たれた矢は真っ直ぐに向かい、分銅すら必要ないと言わんばかりに風によって流され、力を失ったように落ちていく。

上手く行くとは思ってなかったが、それでも須美は悔しげに唇を噛み締めていた。

 

「だったら!」

 

銀が素早くバーテックスに接近していく。

近づいてくる存在に気づいたのかバーテックスは銀に向かって風で作った丸いボールのようなものを飛ばす。

咄嗟に双斧で受け止めると、風の力が込められてるからか防ぎ切る頃には同じ場所へ戻されていた。

 

「くっそ! そんなのもあるのかよ!」

「威力自体はあまりなさそうね…でも近づけないんじゃ……」

「っ。それに、近づいてもミノさんにみたいに戻されるみたい」

 

槍を展開して近づいた園子はボールは防げたようだが、同じく戻されていた。

現状、敵は勇者を殺せるほどの力は陽灯を瀕死にさせた一撃のみ。勇者側は今のところ攻撃が出来ずにじり貧。

ただ敵は例の一撃は使う気はないだろう。そもそもバーテックスにとって勇者を殺す必要はなく、神樹本体に少しでも近づくだけでいいのだ。

 

「どうする?」

「一斉にやってみるとか、どうかな?」

「まだ訓練でも上手く行ってないのに…できるかしら」

「やれるだけやろう!」

 

警戒しながら作戦を決めると、銀の一言で実行することにしたらしい。

物は試し、とはよく言うものだ。

 

「3」

 

それぞれ武器を握りしめ、須美は矢を引き絞る。

 

「2」

 

銀と園子が背を屈め、前傾姿勢になる。

 

「1---0!」

 

矢が複数放たれ、地面を二人の勇者が駆ける。

バーテックスがボールを放つも避けられ、須美によって放たれた矢が飛来する。

本体が纏う風が矢を打ち上げ、左右から迫った園子と銀の攻撃が刺さる---その瞬間、バーテックスは高速で回転した。

 

「わぁあああ〜!?」

「さっ、きより、つよっ……!?」

 

竜巻のように回るバーテックスによって弾かれるように吹き飛ばされた園子と銀は空中で何とか体勢を戻して地面へ着地するも、先程以上の風に身動きが取れない。

 

「二人とも! この……当たって!」

 

風によって直接刺さらないならば、と須美は上空に矢を放つ。

曲線を描き、落下した矢が高速回転するバーテックスへ向かうがやはり風によって弾かれてしまう。

 

「ダメか! だけど……これは、さっき見た!」

「ミノさん!?」

 

周りを見渡し、高い大木に乗った銀が頂上を目指すように跳躍する。

台風の目。

能力は強くなっていようが弱点は依然と変わらない。

そう思っての行動だが、回転をやめたバーテックスが迎撃するように分銅を横に薙ぐ。

 

「おわっ!?」

 

近接においては回転しかしていなかったバーテックスが近接攻撃をしてきたこと、何より巨体なのにタイミングを合わせてきたことへ驚きながら銀が叩き落とされる。

 

「三ノ輪さん…!」

「っ、大丈夫だ!」

「やぁああ!」

 

直前で双斧で防御出来ていたからか、すぐに起き上がった銀が声を挙げると、即座に攻撃をしかけた園子の槍がバーテックスに刺さる---前に風が巻き上げ、槍の矛先がズラされた。

 

(……あれ?)

 

攻撃が当たらなかったというのに、園子は違和感を感じた。

ほんの一瞬でしかないが、その違和感に足を止めて注視していた。

バーテックスはすぐにボールを飛ばし、ハッとした園子は咄嗟に後退すべく飛ぶが、地面に当たったボールは風力を撒き散らし転がる。

 

「う……」

「園子!平気か!?」

「大丈夫!?」

 

地面に伏せた園子を守るように銀が前に降り立ち、須美が立ち上がれるように手を貸す。

しかし園子はバーテックスの方をずっと見ていて、考え込むように口元に手をやっていた。

 

「乃木さん?」

「…なあ、またバーテックスおかしくないか?」

「え?」

 

そんな園子に声をかけた須美だったが、銀の一言でバーテックスを見た。

あの強力な一撃を使ってないのに動きを止めている。

一体何事かと考えていると、バーテックスが突如ボールを作り、攻撃が来ると警戒した三人の予想を反し、バーテックスのボールは勇者から見て右側、バーテックスから見て左側の方に飛んでいく。

しかもそれらは連続して、だ。

 

「……?なにやってんの?」

「外した…? なんのために? 何か別の攻撃が---」

「待って、あそこ!」

 

須美が指差した方向はボールが飛んで行った場所。

小さな人影があり、ボールが近くで破裂する。

風が巻き起こり、人影は止まることなく歩みを進めていた。

血だらけで今にも倒れそうな程にふらふらな姿。

全身には小さな切り傷があり、頭から血を流している。

バーテックスの攻撃は奇跡的に当たっておらず、それはその者の動きが覚束ず、不規則的すぎる影響で狙いがズレているお陰か。

 

「なっ……陽灯!? 何してんだ!?」

「急ぎましょう!」

「はるるん!」

 

前に進もうとしているようだが、ふらついて左右にしか動いてなかったり斜めに動いたりと、バーテックスが狙った方向からはギリギリ避けられているが運が良いだけ。

須美が当たらなくても矢を放って引きつけようとするが、ボールの風圧が矢の力を奪い、バーテックスは須美を無視して陽灯を狙い続ける。

そしてついに、運悪くボールが胴体を打つ。

 

「ごふ……っ!」

 

威力が少ないのが救いか。

吹き飛ぶだけで済み、陽灯は背中から地面に落ちる。

どちらかと言うと衝撃に寄るダメージの方が威力は高く、陽灯が立ち上がる頃には狙いを定めたバーテックスのボールが再び直撃する。

今度は顔面。

後頭部から倒れ、またゆっくりと立ち上がっていた。

鼻から血が流れ、頭部から流れる血が頬を流れ、地面に零れる。

しかしその目は諦めの色はなく、小さな小さな、それこそ豆粒のような光が宿っていた。

追加で飛んでくるボールが、陽灯の頭上を通り過ぎる。

外した、のではない。血を流しすぎた影響か陽灯が膝を着いたからこそ、当たるはずだった一撃が当たらなかった。

逆にバーテックスからすれば、あと少しで殺せる。

それを敵は理解しているのかボールを連射していく。

 

「させるか!」

 

次々に放たれていく風のボールを銀が斬り裂く。

さらに本体は無理でも無効化くらいは出来るからか足りない部分を須美の矢が撃ち落とし、園子は陽灯の傍に着地して複数の穂先を傘のように展開。

防ぎ切れない攻撃を防御に撤することで完全に遮断すると、園子は体を抱き抱える。

 

「はるるん、はるるん! しっかりして…!」

 

脈はあるし、息もしている。

死んでいるわけではないが、長く居ればいるほど助かる可能性は低くなっていく。

だが戻るには一度倒したはずで、強くなって蘇ったバーテックスをもう一度戦闘不能状態にして鎮花の儀を行わせなければならない。

その敵は近づけず攻撃を寄せ付けない強さがある上に、こちらを確実に殺せる時が訪れれば必殺の一撃とも呼ぶべき攻撃をしてくるはずだ。

このままでは、まずい。

 

「陽灯は!?」

「大丈夫なの!?」

「今は大丈夫…! でも」

 

このまま放置すれば訪れるのは死。

離れたところで、敵を倒すのが遅くなったら遅くなるほど命が失われていく。

それに世界もやばいだろう。

どちらにせよ、早く倒さねばならない。

まだ情報が足りないのだ。考えを張り巡らせ、園子は疑問を感じた部分を深堀りしていく。

 

「…る」

「…え?」

 

園子の思考を中断させたのは、陽灯の声だった。

 

「くが……んだ……」

 

地面に手を付き、力を込め、震える足で立ち上がる。

何処から力が湧いてくるのか、一体彼を何が動かすのか。

見上げる園子に見向きせず、彼は1歩歩みを進める。

 

『---灯、陽---陽灯』

(きょじ、んさん……)

 

そんなとき、陽灯の目にだけ映る、もう一人の存在が現れる。

形は光で出来ているが、確かな人型。

樹海ではなく、オーロラのような神秘的な世界。

意識だけが巨人に引き込まれたというべきか。

 

『今のキミならば、できる』

(なに、を……)

『想いを形に。願いを、キミの本当の感情を、解き放つんだ---』

 

久しぶりに交わせた会話。

今はそれを、喜んでいられる状況ではなく陽灯の意識は再び樹海の体、現世に引き戻された。

 

(俺の、想い…俺の願い……?

そんなの…いや違う。俺の、やるべきこと! 変わらない、変わることがない。変わるなんて、絶対にないだろ! それは……)

 

力強く、地面を踏みしめる。

何かを察したように、バーテックスはボールを撃つのではなく球状の風を集める。

ボールなんて比では無く、威力すらも桁が違う---そう、バーテックスが手に入れた必殺の一撃。

まさしく風の砲撃。

 

「はるるん……?」

「そう、だ…そうだ! 俺は……俺は……ッ!」

「! 待って、はるるん!」

 

駆ける。

さっきまでの状態が嘘のように陽灯は走っていく。

そんな彼を園子が追い始め、須美と銀は攻撃が止んだことに一息ついていたせいで遅れて陽灯の存在に気づいた。

 

「陽灯!?」

「陽灯くん!」

 

反応した時にはもう、陽灯は須美と銀の前に躍り出ており、すぐに園子もついていた。

何が何だか分からないものの、向かっている先がバーテックスだと理解した二人も慌てて追い始めた。

 

「この世界も、この世界に暮らす人々も!」

 

---脳裏に過ぎるのは思い出の数々。

継受紡絆という人間が築いてきた人との関わり、家族との思い出。別れ。

遡月陽灯という人間となり、新しく増えた家族や思い出。大切な友達。

学校や近所の人。

そして神樹様。

色んな人たちのことを浮かべ、陽灯の想いに呼応するように、内側から青白い神秘的な光が溢れ出る。

 

「俺が守る! 俺が---守るんだッ!! ()()()()()で、絶対に!!」

「ぅおおおおおおぉおぉぉぉ!!」

 

瞳が一瞬赤く光り、眦に金色の光の筋が走る。

そして溢れ出る光が陽灯の全身を覆う。

赤い閃光が天を突き、眩く目が開けられないほどの強い光を発する。

勇者たちが足を止め、勇者であろうとバーテックスであろうと同じで。

しかし園子も須美も銀も、不思議と痛くはなかった。

むしろ心地が良く、何処か安心出来るような安らかな気持ちを抱かせるモノ。

赤から青白い光に変化し、全身を覆われた陽灯の姿は一切見えなくなり、徐々に光が肥大化していく。

2mを超え、3mを超え、5mを超え、10mを超え---15m。

バーテックスよりも小さいが、その体長は人間を遥かに上回る巨人と呼ぶべき存在。

溶岩が冷え固まったような暗色をし、体表は生物的な肉質をしているが、でこぼことしていて石をイメージさせる。

その存在には胸に存在する赤いY字型の輝きがあり、顔は何処か仏のような顔立ち。

これこそ、かつて地球を訪れた赤い発光体の正体。コードネーム、ザ・ネクスト。

遡月陽灯が宿し、共に戦う友の姿。

 

『デェアァ!!』

 

そのまま駆ける巨人は陽灯を優に超える速度。

力を貯めていたバーテックスが反応出来ず、ザ・ネクストの拳によって後退させられる。それにより、貯めていた力は霧散した。

振り抜いた拳を戻し、ザ・ネクストは自身の両拳を見ながら握ったり開いたり、首を動かして体を見たりと調子を確かめるような、自身の肉体の変化を確かめるような仕草をすると、何となく納得したのか頷いていた。

以前の戦いでは見られなかった動作。

それはつまり、そういうことなのだろう。

 

「はるるん……?」

「変身したのか…?」

 

園子と銀の声に反応し、振り向いたザ・ネクストがゆっくりと頷く。

会話が通じている。これも以前とは違う変化だ。

前回の戦いにおいて一方的なものでしかなく、言葉は通じているような様子はあったが返事が返ってくることはなかった。

しかし今回は明確に声に反応した上で”頷く“という動きをした。

 

「言葉が通じるの?」

『………』

 

須美の問いに、またザ・ネクストは頷く。

一度ならばまだしも、二度目となると伝わっていると見るべきだろう。

 

「もしかして喋ることは出来ないのかしら…」

『……』

 

三度目の肯定。

頷く、ということしかしてないことにも意味はあったらしい。

話せないからこそ肯定の意味として頷いていた、と。

そうこう話してるうちに、バーテックスが体勢を整え、風のボールを飛ばしてきた。

 

「! 来るよ〜!」

「おっと、話してる場合じゃあないな!」

『ハァッ!』

 

右拳一発で打ち消し、回転しながら肘打ち、手刀で真っ二つにする。

風が左右に吹き、ザ・ネクストは両拳を握りしめて構える。

 

「相変わらず凄いなあ」

「出番なかったね〜」

「これなら風も突破できるかもしれないわ…!」

 

勇者たちも構えてはいたが、ザ・ネクストが全て捌いてしまった。

しかし戦況が変わったのは間違いなく、希望が見えてきた。

ザ・ネクストは頷くと、すぐにバーテックスの方に走っていく。

迎撃すべくバーテックスはボールを連射した。

矢を携え、複数の矢を放つ須美が撃ち落とし、落としきれない部分を銀と園子が防ぎ、ザ・ネクストはジャンプした。

バーテックスの中心。おおよそ10mの跳躍。

拳を握り締め、真っ直ぐに突き出す。

 

『!?』

 

その瞬間、バーテックスは回転した。

嵐のような風。

強引に突っ込もうとしていたザ・ネクストでも突破出来ず、弾かれて落下してしまう。

勢いよく地面に落ち、土埃が舞う中で即座に立ち上がるが、風は止まずに両腕で覆いながら進もうとする。

やはり、難しそうだった。

常時纏っている風ならば、ザ・ネクストは突破出来る。しかし回転してしまうと話は別だった。

 

「こ、これだと、さっきと、同じ……ッ!」

「さすがに跳べないよな、これ!」

「はるるん! ほんのちょっとだけでいいから、バーテックスの動きを止められる?」

『?』

「確かめたいことがあるんだ」

『シェッ!』

 

何とか踏み止まることで精一杯な勇者は何も出来ない。

ただ、ザ・ネクストは吹き飛びそうなわけでもない。

だからこそ園子が聞くと、ザ・ネクストは彼女の言葉を信じたように両腕を勢いよく振るい、風圧同士をぶつけ合うと一瞬出来た時間の中で右腕のフィンを一閃。

カッター状のエネルギーがバーテックスへ向かい、分銅が受け止めて風が弾く。

ならば、とフィンを横、縦、斜め上、斜め下、と連続で放たれる。

一発目。弾かれ、二発目弾かれ、三発目弾かれ、四発目弾かれ、五発目六発目七発目---直撃。

分銅を傷つけ、八発目のエネルギーがバーテックスの回転を弛め、時期に止まった。

やったことはただ同じ位置にタイミングを少しずらして放つことで風の抵抗を軽減し、威力の低下を防いだだけ。

それにより風が弾くことが出来ずに傷ついたということ。

そして止まったバーテックスはボールをすぐさま放つ。

拳を横に振るい、弾く。

 

「やっぱり……!」

「何か分かったのか!?」

「うん、でもこれは…わっしーの一撃が必要かな〜」

「私? でも私の矢じゃ……」

「ううん、大丈夫。はるるんお陰で確信した。あのバーテックス、一見防御も攻撃も完璧に見えるけど、ちゃんと隙があったんだよね」

 

そう言われ、ザ・ネクストも含めて須美も銀もバーテックスを見る。

しかし見た感じそうは見えなかった。

変わらずボールを飛ばしてくるため、ザ・ネクストは防ぎながら耳を傾ける。

 

「さっき連携でやった時も、槍で攻撃した時もだけど、バーテックスは攻撃する時、風が薄まるんだ。そして防御に風を回してるとき、逆に攻撃が出来ない。そして---ミノさんに一度やられてるからか、接近しようとしたら警戒して回転する。それらは防ぎ切れないからじゃないかな。あの状態は私たちを寄せ付けないから回転して距離を稼ぐ。だけど攻撃は出来ない。バーテックスの風は限られた分で補ってる…と思うよ」

 

園子によって導き出された弱点。

そう、今までの行動でバーテックスは攻撃と防御を両立したことがない。攻撃をすれば防御が手薄に、防御すれば攻撃が疎かに。

バーテックスに限った話ではなく、誰もが同じなのだ。

ザ・ネクストだって防御に集中しなければ防ぎ切れない攻撃ならば防御しか出来なくなる。逆に防御する必要がなければ畳み掛けることが出来る。

それこそ脳が二つ、意識が二つ、手数が多くなければ不可能だろう。

例えばタコのように足が八本あれば別かもしれない。

それなら四本を防御、四本で攻撃が出来る。

しかし人間はバーテックスほどの巨体相手なら両腕は必要。ザ・ネクストも威力によっては必要。このバーテックスにはそもそも腕がない。

故に、このバーテックスは攻撃は攻撃だけ。防御は防御だけなのだ。

それに攻撃はあまり強くなく、どちらかという防御特化型だ。攻撃にさえ集中させれば突破は容易。

防御さえ突破すれば、例の一撃以外は大したことがない。

 

「つまり、どういうことだ?」

「バーテックスが攻撃をしている最中に、私の矢でダメージを与える…? けれど接近する必要も出てくる…」

「うん、だからバーテックスを引きつける必要があると思うんよ〜その鍵は……」

『?』

 

全員の視線が、ザ・ネクストに集中した。

バーテックスは警戒して防御に回しているのか今は攻撃しておらず、巨人は首を傾げる。

 

「陽灯くんしかいない、でしょうね」

「それはあたしでも分かるな」

『………』

 

近接においてザ・ネクストが来ることを恐れたようにすぐさま回転を選んでいた。

陽灯は知らないことだが、この姿はパンチやキックなど肉弾戦に秀でた姿であり、実は遠距離技は全くといっていいほどない。

そのようなことを知る由もない彼はやることだけは理解したのか頷くと、前に出る。

決まったならば、あとは作戦を実行するのみ。

 

『デアッ!』

 

ザ・ネクストが駆ける。

迎撃すべくバーテックスはボールを飛ばすが、ザ・ネクストはボールを避けて右側面に回るように走っていくとバーテックスは追尾するように其方を向いた。

 

「行くよ〜!」

「分かってる!」

「今度こそ、必ず……!」

 

視線が外れた瞬間、勇者たちも動いた。

固まることはなくそれぞれ死角となる位置になるようにバーテックスに向かって走り、ザ・ネクストは攻撃をその場で避け続けている。

隙があれば接近しようとしているようだが、バーテックスはひたすら妨害しかしていない。

このままいけばいずれはザ・ネクストは直撃を受けるだろう。

今ならば当てられる、とでも考えたのかバーテックスは一気に連射速度を高めた。

 

『!』

 

流石に避け続けるのは不可能なようで、ザ・ネクストは少し動きながら避ける。

ただしあまり動くことは出来ない。もし勘づかれたら狙いを変えられてしまう。

それでも最小限の動きで避け続けるのは難しく、時折掠って風力によって体勢が崩れかけている時があった。

何とか強引に立て直しながらも捌き、時に避け、打ち消し、徐々にザ・ネクストの足が後退していく。

そして右肩を掠った時、無理矢理半身を逸らされ、完全に体勢が崩れた。

その隙を逃さないと言わんばかりに、凄まじい風が周囲を覆うと収束していく。

 

「なんだ、あれ……」

「あれってあの時の……?」

「でもさっきより大きいわ……!」

 

頭上を覆う大きな風の渦。

思わず足を止めてしまうほどの光景。

風の渦は徐々に縮小していき、円球の形を象る。

圧縮されたそれは果たしてどれほどの力があるのか。荒れ狂う風の球体見る限り、少なくとも最初に打ったエネルギーを超えている。

完全にトドメを刺すつもりなのだろう。

しかし逆を言えば、これがバーテックスにとっての最後の攻撃を意味していた。

そしてその最後の攻撃である風の砲撃が放たれる。

当然狙いはザ・ネクスト。

球体の背後には竜巻のような風が押し出すように放たれており、それがより加速させる。

おおよそ風速80m/sほど、時速換算すれば288km。

新幹線レベルで突っ込んできているものだ。しかも瞬間加速ではなく一定での速度。

30m/sですら人は動くことすらままならず、60m/sならば鉄塔すら曲がる。

それを遥かに凌ぐレベル。

 

『ハッ!? ゥグゥ……!?』

 

崩れていた体勢を戻したザ・ネクストが両拳を交差して受け止める。

圧縮された影響で重さのある空気の球。さらに威力を高めるように継続的に放たれている風。

ザ・ネクストですら踏み止まることが出来ず、その足が一気に後ろへ持っていかれる。

地面を削り、跳ね返したり逸らそうとしようとも空気の球がそうはさせてくれない。

 

『ォ、ォオオオ……!』

 

徐々に迫っていく橋。

その背後の神樹様本体。

背後を見て存在に気づいて、必死に抵抗しようとしてはいるが徐々に空気の玉が重くなっていく。

それだけではなく、エネルギー消費の影響か胸のY字型の器官が点滅を始め、ドクンドクンと心臓のような鼓動音が鳴り響くと力が抜けてきているのかザ・ネクストは片膝を着いてしまった。

それでも受け止めるということは辞めない。やめてしまえばこの一撃が橋を破壊し、神樹様本体を破壊するだろう。

押し負けるように、ザ・ネクストの背が後ろへ倒れていく。前にしようとしても、止まらない。止まらないどころか押し出す風が吸収されていっているのか大きくなり、重くなり、熱が高まっていく。

圧縮され続けた空気がどうなるのか、そんなのもう言うまでもないだろう。

詰み。

ザ・ネクストでは勝てない。力が足りない。

これを防ぎ切ったとしても、彼の命は間違いなく尽きるだろう。

必殺の一撃とは必ず殺せるからこそ、必殺なのだ。その意気込みがあるからこそ、必殺と扱われるのだ。

そう、だからザ・ネクストは勝てない。

勝てないが---勝てないのは()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと、隙が出来た…! これならッ!」

 

必殺の一撃を受け止める傍らで、突如として保っていた風の放射が止む。

バーテックスの背後から突き刺された矢がバーテックスの体勢を突如として崩した。

右側の分銅に直接突き刺したのだろう。風を纏っていない状態ならば矢は突き刺さる。しかも直接刺したということは弾かれることもない。これは遠距離射撃では無い。

だがダメージは少ない。接射で攻撃の手は緩めない。

一撃ならまだしも、無視出来なくなったバーテックスは攻撃から防御に---。

 

「三ノ輪さん!」

「おう!」

「はぁあああああぁぁッ!」

 

風を纏うより早く、銀が勢いよく半回転しながら双斧を須美の矢に釘を打つように打ち、分銅を貫く。

風を纏うことが出来ずに怯み、その隙に園子が接近していた。

正面からではなく、こちらも背後から。

死角から迫った園子に、当然ながら風を纏う以外の選択がないバーテックスでは迎撃が出来ない。

 

「よ…こっいしょ〜!!」

 

そして園子が持つ槍が伸び、もう片方の分銅を吊るしている人で言う腕のような部分を勢いよく振り下ろすことで切り落とす。

左右の分銅の無力化。

そのダメージは大きく、バーテックスの動きが停止した。しかも必殺の一撃を使った直後。

遠距離攻撃が吸い寄せられる心配はない。それに厄介な竜巻も使えないはずで。

 

「陽灯くん!」

「陽灯!」

「はるるん!!」

 

三人の勇者が、希望を繋いだ。

ならば。

 

『フッ---ヘアッ!』

 

それに応えるのが彼の仕事だ。

圧力を増していたはずの空気の球ごと持ち上げるように片足立ちから立ち上がり、両肘のフィンが光を纏う。

気合いを入れるように、両腕を勢いよく交差するように振り下ろし、空気の球が左右に分かれ、背後で爆発する。

無事に無効化したザ・ネクストが助走を付け、跳び箱のロイター板を踏み切るように勢いよく跳躍した。

真っ直ぐにバーテックスに向かっていったザ・ネクストは左掌を攻撃対象たるバーテックスに狙いを定めるように向け、右肘のエルボーエッジが再び輝きを宿しながら右腕を引き絞り---

 

『デェッァラァ!!』

 

一閃。

片膝を着き、着地したザ・ネクストの右腕は肘を振り抜いたように胸の前で横のまま停止しており、背後のバーテックスの中心には斬痕が残り、すぐに上と下がズレ、上下に分かれて崩れていく。

さらに桜の花びらが樹海の世界を彩る---

 

「鎮花の儀…」

 

幻想的な景色が、短命を象徴する桜の如く消え去った。

そこに残ったものは須美と銀と園子と、そしてザ・ネクストのみ。

バーテックスの姿はどこにも無く、今度こそ勝利を意味していた。

 

「ということは……」

「終わった、ね〜…」

「っ---しゃあああ!」

 

疲れたと言わんばかりに座り込む須美と槍を棒代わりにする園子、勝利に喜びを見せる銀と三者別々の反応だった。

 

『……ゥオ……ァアアァ……』

 

それを見届け、ザ・ネクストの心臓のような鼓動音が加速。

ふらついた彼の体は崩れるように地面に手を付き、その力すら抜けたのか地面にうつ伏せに倒れると同時に全身を光が覆い、肉体が縮んでいく。

光が晴れた時、そこには血だらけの遡月陽灯が目を閉じた状態で倒れていた。

 

「…! 陽灯! おい、しっかりしろ! おい!」

 

唯一立っていた銀がすぐに駆け寄ると、抱き抱えながら揺する。

反応は返ってこない。

 

「三ノ輪さん、陽灯くんは!?」

「ミノさん、どう!?」

「……」

 

すぐに近づいてきた須美と園子も様子が気になるのか銀に声を掛けると、彼女の腕が震えていた。

まさか、と最悪な考えが浮かび上がり---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、こいつ……寝てる……!!」

「…は?」

「…ふぇ?」

 

予想外の言葉に素で低い声が出た須美と目をぱちくりとさせる園子がそこに居た。

一瞬思考が止まってしまったが確認のために傍に寄って顔を覗けば、陽灯は割と心地良さそうな寝顔をしている。

 

「はあぁ……もう、心配させないでよ…」

「はるるんも私のこと言えないね〜」

「あはは…まぁでも、無事で良かった!」

 

疲れとは別で力が抜けた須美は文句が口から出たものの、仕方がないだろう。

実際出血してるように見えて血は既に止まっているようで、ただ変身前の血が付着しているだけ。

陽灯の寝顔をじっと眺めている園子はともかく、最終的には死者が出ることも世界が終わることもなかったことに銀はそう笑顔を浮かべた。

 

「よか……ふあ…」

 

そしてそれは、心配していたことすら気づかないまま呑気に寝ている陽灯も、笑顔を浮かべている。

---その右手に、赤い、()()()()()を握りしめながら。

 

 

 

 





〇遡月陽灯/ザ・ネクスト
割と大事な部分でポンコツになったが、持ち前の反応速度で銀を守った。
自分自身の意思で変身したため、若干大きくなっている。
しかし陽灯くん自身は守るために覚悟を決めただけで戦意が低いため、本来のスペックは出せてない模様。
それはそうとして割と死にかけた。
変身解除後、手には赤い輝石を持っていたようだが……。

〇ザ・ネクスト
陽灯の強い感情に呼応し、ようやくちゃんとした形で力を貸すことが出来た。
やろうと思えば無理矢理意識は乗っ取れるが、陽灯を尊重しているのですることはないだろう。
ちなみに実は既にザ・ネクストのジュネッスクラスに近い力が出ていたりする。

〇鷲尾須美
なんか知らんけどこの子ヒロイン適正高すぎる気がする。
しかし陽灯が普通にやってのけていることの難しさを知り、徐々に陽灯のことを理解していってるようだ。

〇乃木園子
作戦を思いつき、勝利に大きく貢献した。
普通の日常では基本陽灯の傍から離れてないというかめっちゃガンガン攻めてる。
ちなみに陽灯くんが連絡先を聞かれてた時は後ろでニコニコしてた。

〇三ノ輪銀
実は何度か陽灯を家に入れたことがあったりする。
性格が性格なので、すぐ仲良くなったもの同士気は合うので困ってる人を見捨てられない陽灯はすぐに彼女の力になった。
今回は陽灯に守られたが、そもそもとして狙われた理由が攻撃力の高さと近接という敵にとって狙うべき存在だったためで仕方ないといえば仕方がないだろう。

〇謎の黒い穴
ナンナンダー


〇ライブラ・バーテックス
いずれそう称されるもの。
今回は風の強化がされ、防御と攻撃双方に強いが両立は不可能。
必殺の一撃を会得し、空気圧縮の球を放つ。
威力に関しては生身の強化された陽灯くんが一撃で死にかけるレベルで、勇者なら終わってた可能性大。
陽灯くんも陽灯くんで途中で神樹様が木を生やして止めねば下手したら死んでたくらいやばい。
さらに最後に放った最大威力はザ・ネクスト単体ならば倒せるレベルの威力だったりする。
ただしデメリットとして一分間動けなくなる…が、風を纏うことが出来るので防御に専念できるクソ仕様

黄金色のジュネッスの名称

  • ジュネッス・オーア(紋章学で金色)
  • ジュネッス・トリニティ
  • ジュネッス・ブリエ(輝き)
  • ジュネッス・ルフレ(光沢、反射)
  • ジュネッス・ルクス(光)
  • ジュネッス・ルミナス(光り輝く)
  • ジュネッス・ゴールド(金色)
  • ジュネッス・オール(金、全部)
  • ジュネッス・グロウ(発光)
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