【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
基本三話完結になってるので、多分あとこれを抜いてあと11話か9話で鷲尾須美の話終わるんじゃないですかね。
てか2024年11月7日に行われた尊哉の部屋でのアベユーイチ監督の発言にあったんですけど、ネクサスとデュナミストは完全に分離はせず、デュナミスト達との経験がネクサスの中に残るって…あっぶねぇ、矛盾回避どころか設定まんま入ってますね、この作品。
つまり48話における『光の継承者』はそういうことです。元々漫画版、本編最後のエールを参考に書いてましたが、ナイスだぜ過去の俺。(ウルトラマン)ナイスだけに(クソうまギャグ)
オーロラのような世界を漂流する。
居心地が良く、何度が来たことのある世界だ。
しかし今回はちゃんとどうなったのかといった記憶は残っており、死んだというわけではないということを陽灯は理解していた。
目の前には光の線で彩られた光の巨人の姿があり、陽灯は目の前で停止していた。
(巨人さん……?)
『………』
巨人は何も喋らず、ただゆっくりと指を動かした。
疑問に思いつつ視線でたどる。
指で指し示された部分は右手。
今更ながら拳の中に違和感を感じ取り、拳を開く。
そこには赤い石があった。
真紅の輝石。しかし丸いわけではなく、それは目の前の巨人の胸部分。
赤い器官と同じ外見のもの。
(これは……?)
陽灯には見覚えのない物だ。
そもそもこの世界に小物を持って来れたということすら知らない。
なぜ持っているのか、なぜ巨人がこれを示し差したのか。
『………』
(えっと…)
何か伝えたいことがあるというのは鈍感な陽灯でも理解出来たが、肝心の意味までは彼には分からない。
巨人は指を差したまま動かず、陽灯は考えて考えて考えて、もしかしてと予想を立てる。
(これ、大切なものってこと?)
『………』
返答はYES。
頷いた巨人の動作を見て陽灯は俯いて考え込む。
すると、何かに気づいたように巨人を見つめた。
(もしかして、喋れないの?)
『………』
これもまた、頷かれる。
今までは話せていたはずだが、”そういえば最近はさっき変身する前以外に巨人さんの声は聞いてなかった気がする…“と思い出す。
意思は感じ取れるが、会話というものは全くしていなかった。それどころか初めて変身してから会話が出来ていない。
つい最近一方的に声を聞くことは出来たが。
そして巨人は陽灯を指差し、また石を指差す。
さすがに分からなくて、陽灯は眉を八の字にした。
(うーん。ごめんね、分かんないや……)
陽灯の言葉に巨人は止まり、何かを考えているようだった。
必要なことを伝えたいようだが、喋れない彼には伝えられない。ならばどう伝えればいいのかと。
『---みが---と----その---つか---』
(…み? つか? みつ……? あっ、水?)
喋れないと応えた巨人が無理に話そうとしてるからだろう。
途切れ途切れにしか伝わらず、陽灯の言葉に巨人は首を横に振った。
ただ指は陽灯と石を示している。
つまり石と陽灯が何らかの関連性があるのは確定だろう。
『………きに---おち---。---力---なる』
(力……? 大切……じゃあ、これが巨人さんになるためのもの?)
唯一聞き取れた部分から推測すると、肯定。
それと同時に、巨人が手のひらを差し伸べると赤い石が輝きを発する。
(うわっ!?)
光はすぐに晴れ、拳の中にあった赤い輝石は陽灯の首にベンダントのように掛けられていた。
ちょうど陽灯の胸の部分に位置するくらいの長さ。
革で作られた紐のようなもので落ちないようにY字の両サイドの上部分が包まれ、窪みの上の部分で括られ首から掛けられるようにされている。
手で持っていては無くす危険性もあるからこそ、巨人がしてくれたのだろう。
(えっと巨人さんがくれたものだから、大事にするね。ありがとう。俺の言葉が合ってるなら……どうにもならないことがあったら、力を貸してってお願いするから!)
(あっ、だけど俺も頑張るよ!守りたい……その思いは今も変わらないから! 人間や勇者だけじゃなくて…世界も巨人さんも!)
頼り切るという選択もあるというのに、自分の力で出来る範囲までは頼らずにやるということを伝えた陽灯は、それを最後に急速に意識が遠のいていく。
「ぅ…ぅぅん……」
意識が回復し、陽灯は目をゆっくりと開く。
知らない天井ではなく、見慣れた保健室の天井。
いや保健室の天井を見慣れる時点でおかしくはあるのだが、陽灯は体を起こす。
「あれ?」
(全然動く…完治してる? 俺は確かに昔から、それこそ
前回の戦いよりも怪我は酷かったはずで、左腕に関しては折れていた。
それに前回はある程度治っただけで完治はしていなかった。
しかし今回はどこも痛みはなく、むしろ普段よりも良い。左腕に関しても全然動くし痛みは無い。
ただちょっと動きづらいが。
顔を横に向けると、ちょうど窓があって夕陽の陽射しが入ってきていた。
眩しい太陽の光。
直視するのは無理で、すぐに目を逸らしたが夜にはなっていなかったらしい。
何か考えても分からない陽灯は思考を中断すると、思い出したかのように服の上から中を覗く。
するとすぐに安堵の息を吐き、手を突っ込むと服の中からある物を取り出した。
(良かった…ちゃんとあった。せっかくくれたのに、無くしたってなったら慌てて探しに行くところだったよ)
それは赤い輝石。
巨人と対話する空間の中で作られた紐などもそのままあり、陽灯は少し引っ張って太陽に当ててみた。
真紅の輝石はそれこそ宝石のような輝きを放ち、陽灯から見ても綺麗だという感想を抱かせる。
(多分、これがなくても今なら変身出来ると思う…ううん出来るけど…巨人さんが渡してくれたってことは意味があるだろうし、なりやすくなる、とか?)
風を使うバーテックスとの戦い前は分からなかったが、今は確信を持っている陽灯は石の意味を少し考えてみた。
答えを返してくれる者はいないので結局答えは分からないのだが、どちらにせよ大切な物には変わりないので陽灯は服の中に仕舞う。
そのタイミングで保健室のドアが開く音が聞こえた。
閉められたカーテンを開くと、陽灯たちの担任兼監督役の安芸が居た。
「先生?」
「目を覚ましたのね」
「うん、みんなは大丈夫だった?どこかにいるの?」
「…三人とも軽傷よ。乃木さんも三ノ輪さんも鷲尾さんも今日は帰ってもらったわ。目を覚ますまで居ると言っていたけれど、遅くまで残すわけにはいかないから」
「そっか、無事だったならよかった!」
共に戦う仲間とはいえ、すぐに他の誰かを心配する姿に安芸は言葉を堪え、ちゃんと伝えたら彼は安心したように笑みを浮かべる。
そんな姿に思わずため息を吐いてしまうのも無理はないだろう。
「はぁ……」
「先生?」
「いえ。遡月くん、容体を確認したいから脱いでくれる? 上だけでいいから。怪我があるなら包帯も巻き直す必要も出てくるわ」
「はーい」
言われた通りに陽灯は上の服を脱いで折り畳み、シャツも同じく脱ぐと折り畳む。
上半身だけ裸になった後で、ようやくいつの間にか包帯が巻かれていたことに陽灯は気づいた。
動きにくかった理由もこれだったんだろう、と一人納得して頷いていると包帯が解かれていく。
「前回より治りが早くなっている…? 怪我も今回の方が酷かったのに一体どういう……治癒能力が上昇している?」
「せ、先生、ちょっとくすぐったい…」
包帯の無くなった体は傷一つ付いておらず、元の肉体の状態に戻っている。
目では見えないキズがあるというわけでもなく、安芸が陽灯の胸の中央に触れてもそれらしき部分もなければ陽灯が痛そうにすることもない。
(いくら自然回復能力が高いといっても、おかしすぎる。これじゃまるで……最初から傷がなかったような…)
包帯を巻く前、見えた傷は全身に切り傷と打撲による頭部の出血。鼻血。
重傷と言うべき状態だったのだ。
お役目から現実世界に帰ってきて一日どころか半日も経っていない。
陽灯の体、正確には巨人の力は大赦含め安芸も知らないことは多いが、ここまで人外じみた力を持っているものだろうかと思う。
巨人は勇者と同等、それこそ神樹様と同等クラスの力があっても不思議ではない。
「ぅー…ま、まだ?」
「あぁ、いえもう大丈夫よ。考え事をしていて…ごめんなさい。少なくとも怪我は治ってるみたいだけど…痛みは?」
「特にないよ。包帯もなくなったし、動きやすくなって好調!」
「そう…それならいいわ。ただもしもという場合もあるし、今日は時間も時間だから車で送るわ」
「うーん大丈夫なんだけどなあ」
平気というように服を着た陽灯は腕を回していたが、念の為と念押しされ、渋々と承諾していた。
後ろの後部座席に座りながら流れる景色を陽灯は眺めていた。
基本的にこうやって落ち着いて見る機会はなく、もうすっかり見慣れたはずの景色が知らない世界にすら思える。
いやある意味では、知らない世界を見ているとも言えた。
陽灯の目に映るのは目の前で流れていく場所だけではなく、その奥。人が見る限界の先までしっかりと見えている。
視力も元々いい方というよりは2.0はあったが、陽灯には初めて巨人とひとつになった時よりも視野も聴力も治癒力も上がっているように思えた。運転席に視線を向けると、安芸が運転している。
時刻はもう19時くらいか。空は暗くなっており、冬に比べれば明るい。
これからも少しずつ夏へ移し変わって19時でも比較的明るい時間帯になるだろう。
「ねぇ、先生」
「何かしら?」
窓から外を眺めながら陽灯は自分の中の疑問を解消したくて声を掛けると、返事が返ってきたので口にすることにした。
「先生は俺のこと、どう思ってる?」
「どう…と言われても大事な生徒としか答えられないわ」
「うーんそうじゃなくって。なんだろうな、うん…俺らしく言った方が分かりやすいかな。言い直すね」
ほんのちょっとばかり、遠回し気味だったせいだろう。
望んだ答えではなく、自分らしくなかった言葉に内心で苦笑しながら”もしかしたら怖かったのかな“と自問してみるが、
それはそうとして、解決したのであれば本題に移ろうと陽灯は口を開いた。
「先生は俺のこと”バケモノ“に見える?」
「……え?」
思わず、と言った感じでミラーの方ではなく振り向く安芸だが、陽灯はいつもの笑顔ではなく真剣な表情だった。
おちゃらけたわけではないのだろう。
「どうして……そう思ったの?」
冷静を装うように前を向いた安芸は問いかける。
両手に握るハンドルの力が、少し強まった。
「ザ・ネクストはザ・ワンと同じ名前の付けられ方って流石の俺でも分かるよ。ザ・ワンが始まりなら、ネクストは次だって。大赦は、先生は俺のこともそう思ってるのかなって思ったんだ」
当然陽灯は意味を知っていたのではなく、名前を教えられた際にそう伝えられたからなのだが、それは陽灯と家族と使用人しか知らない。
だが名前を付けたのは大赦であるならば、それはもう命名された名が真実を語っている。
ザ・ワンがバケモノだと思われていることを、陽灯は誰よりも知っているのだ。あの時の、あの夜の、あの惨劇の人々の怯えよう。恐怖心。
同じ扱いをされているのであれば、ザ・ネクストも、それを宿す陽灯も同種。
それにザ・ワンの意味が始まりならば、ネクストは次。もう一体目のバケモノなのだと。
「それは……」
「別に、何かあるってわけじゃないんだ。俺のことはどう思われてもいいから。だけどザ・ネクストは…巨人さんは俺のことを助けてくれたから。恩人を化け物だなんて思われてたら、悲しいなって…」
「ごめんね、先生。答えなくても大丈夫だよ。それで戦わないなんてことはないから。俺は守りたいから守るために戦う。その覚悟だけは決して変わらない。例え俺がどう思われても、人と思われてなくても」
即答することが出来なかったからか、それとも陽灯は安芸の立場を考えたからか、苦笑いを浮かべてそう言った彼はそれ以上特に何かを言うことはなく無言になった。
車は赤で停止し、そして青で動き始める。バックミラーに映る陽灯は何処か消えてしまいそうなくらいに儚げな顔を浮かべている。
息を吸い、吐いて安芸は心を落ち着かせる。
「……私は」
「?」
「少なくとも
「……そっか。ありがとう、先生。その言葉だけでも十分嬉しいよ。みんなが俺を人として見てないわけではないってわかっただけでも」
今の会話が大赦ではなく、安芸個人の言葉だと悟ったからだろう。
悲しいような嬉しいような、そんな狭間の笑顔を浮かべた陽灯は目を瞑っていた。
家族も仲間も友人も同級生も、陽灯のことは陽灯だと思っている。正体を知る者たちも陽灯のことを恐れたりはしていない。
けれど親しいからだ。知らない人からすれば、陽灯は変身せずして異常な身体能力を持ち、回復力を持ち、動体視力、聴力---人離れするほどに強化された五感を持つ。
ザ・ワンともザ・ネクストともバーテックスとも同じで、ただ陽灯の場合は外見上人ならざる者ではなく人の皮を被っているというだけの違い。
大赦の人と直接会ったことは陽灯もあったが、あの時は神樹様からの指名があり、なおかつザ・ネクストに変身出来ることは知られていなかった。
もし今会えば、あの時とは別の目を向けられるかもしれない。
短い言葉から、先生の態度から、今までの記憶からいくらアホで鈍感な陽灯でも自分がどう思われているのかくらいは察する力はあった。
(もっと別のことを言ってあげられたら違ったのかもしれないけど…そんなの気休め程度にしかならない。それどころか真実と違ったとき、遡月くんに辛い思いさせるだけ…)
(なんて。向き合うことが出来ないことを言い訳にしてるようにしか見えないわね。大人だからこそ、未来ある子供の彼が安心して過ごせるようにしてあげなくてはならないのに…)
安芸は知っていた。
陽灯が今もこうして居られるのは神樹様の言葉によって、意見が分かれた影響だと。
勇者とは違ってザ・ネクストはどこの馬の骨かも分からない。
使い潰すべきだと言う者もいれば、その間に勇者を強化すべきだと言う者もいる。逆に協力すべきだと言う者もいれば、味方に引き込むべきだと言う者もいる。
そこに、戦わせないという選択肢はない。
陽灯だけを戦わせれば、今までの戦績からある程度の時間は稼げるだろう。その間に勇者に訓練を積ませることも出来るしシステムの強化も出来る。
いずれ牙を剥く可能性もある存在は、一部の者からすれば潰し合って欲しいと願ってしまうものなのだろう。
(私たちとは少し力が異なるだけで、彼も人間だというのに。それに彼の周りにはいつだって、誰かの笑顔がある。それはひとつの才能。他者を思いやれる姿はこの世界の誰よりも深く、強く…男で無ければ間違いなく、勇者に選ばれてもおかしくないほどの逸材でしょうね。例え力がなかったとしても、この戦いを乗り越えたとしても、未来のことを考えるならば彼の損失は間違いなく大きいように思える、思えてしまう)
世界を守りきったとして、バーテックスに打ち勝ったとして、ある存在に打ち勝ったとして、スペースビーストも倒したとして、未来は誰にも分からない。
もし暗闇が広がる未来だけが残ってしまったとして、彼が居るならば照らしてくれる、と思わせる何かが陽灯にはある。
教師という仕事をやっているからこそ、陽灯の話はよく届くのだ。
困ってる生徒から。そんな生徒と話している陽灯の姿を見たことだって。
例えるならそう、まるで優しく穏やかに全てを明るく照らしてくれる月と太陽のような。
「…先生」
そんなことを考えていたからだろうか。
呼ぶ声に反応が遅れてしまった。
「俺、みんなに笑顔で居て欲しいんだ。学校の人たち、街の人たち。俺の家族にも、巨人さんにも神樹様にも」
願い、と言うべきものだろうか。
思い出すように目を閉じている陽灯の頭の中には今挙げた人々の顔や思い出が、場所が思い浮かんでいた。
「もちろん須美ちゃんや銀、園ちゃんにも。
だから俺は出来ることの方が少ないけど精一杯頑張ってみる。ギリギリまで踏ん張って頑張って、諦めないように。みんなを守れるような---」
何かに気づいたように目を開けた陽灯は、口元を緩めるとさっきまでと違う純粋な、彼を彼だとたらしめる笑顔を浮かべた。
「うん、そうだ。なってみせる、なるよ。そんな
自己完結したように頷きながら、真っ直ぐな目を向けている。
夢というにはあまりに難しいもので、現実味を帯びてなくて。
大人が捨てたもの。子供だからこそ抱けるもの。
酷く険しい道で、勇者でもなく正体不明の彼はもっと厳しいかもしれない。
いや、不可能だといっていい。
みんなというのは不特定多数で、限られた者ではなく言葉通り全員。
現実を知れば諦めるしかないもので。
それでも。
「そう…いい夢ね」
「でしょ?だからほら、先生もそんな難しい顔してないで笑って! にーっ!って!」
それでも。
それでも彼は、こうやって笑顔を浮かべるのだろう。
現実を知れば、夢物語だと分かるはずだ。
しかし子供の夢を大人が否定するというのは、目指すという行為そのものをやめさせてしまう。
何より夢を応援してあげるのが大人というものだ。例え荒唐無稽なものだったとしても、不可能だと知るまで。
翌日。
誰もいない教室に陽灯と園子、須美と銀は安芸に呼ばれていた。
「正直驚いたわ。貴方たちがまさかあそこまで連携が取れるなんて…」
戦闘データを見ながら驚愕の表情を浮かべて安芸はそう言った。
誇らしげに胸を張る銀と園子、苦笑いを浮かべる須美。
陽灯はきょとんとしている。
それを見ながら安芸は当時のことを思い出しながら思案する。
元々は須美と園子と銀の三人でのお役目だったはずで、流れでとはいえ、男1と女3人になった。
年齢も年齢というのもあり、思春期の彼女たちだと当初は性別による不和や人間性の問題が起きるのではという話も挙がっていたが、それを良い意味で覆してくれたのは嬉しい誤算と言えるだろう。
それに合同訓練に入ったのが敵との戦いの後ということもあって連携具合に不安はあった。
だが、それとは裏腹に連携して動き、敵を倒して見せた。
それに4人の仲は至って良好。連携の程度も2戦目であることを考えれば上々。陽灯を除いて怪我らしい怪我もない分、1戦目と比べれば遥かに良好といえる。
4人が無事であったことを内心喜びつつ、安芸は顔に出さずに真剣な表情で口を開く。
「とは言え、まだまだ連携が甘いのも事実。まずは4人の中---いえ遡月くんを除いて3人の中で作戦を指揮する隊長を決めるべきね」
「俺だけハブられた!?」
「遡月くんは変身したら無理だからよ。隊長が現場を離れてどうするというの…話せないのもあるわ。それに指示するような性格というよりは突貫する方でしょう」
「た、確かに…! 流石先生!」
「流石にそれはあたしでも分かったな…」
変身した際に話せたとして、変身しない前提として考えたとしてって、陽灯は部隊を指揮するような性格はしていない。
場を和ませ、周囲を奮い立たせるという意味ではリーダーとして向いているが。
「ともかく、そうね……乃木さん、頼めるかしら?」
「えっ? わ、私ですか?」
選ばれるとは思ってなかったのか園子は少し驚いた表情を浮かべると一瞬須美に視線を向けていた。
「あたしはそういうの、柄じゃないから。あたしじゃなければ、どっちでも」
「俺も園ちゃんでいいと思うな。園ちゃん頭良いし」
銀は初めから隊長になる気もないのか、それとも初めから隊長には向いていないと周知しているからか、園子が隊長になる事に異論しない。
陽灯もまた園子とよく居る影響で彼女の凄さを知っているため、同じく。
こうなると、残すは須美の返事だけだ。園子が隊長に選ばれた理由を考察していた須美は、そこである事に気付いた。
(そっか……。考えてもみれば、乃木家は大赦の中で力を占めている。こういう時も、リーダーに選ばれる家柄なんだ)
鷲尾家も名家といえば名家なのだが、乃木家と比べればずっと小さい。同じく遡月家も三ノ輪家も同様。まぁ実は須美と陽灯に関しては実際の生まれはもっと下なのだが。
しかし富も名声も、ずっと格上なのは事実であり、そう考えると隊長に選ばれた理由も、何となくではあるが理屈が通る。
そう考えを改めた須美の中で、答えは決まった。
「私も、乃木さんが隊長で賛成よ」
「わっしー……」
(でも、実際は私がまとめないと……。うん、頑張ろう)
便宜上園子に決まってはいるが、彼女の能天気さや、銀の危なっかしいほどの大胆さ、陽灯の無鉄砲さをコントロールできるのは、須美だけだ。特に陽灯なんて二度の戦いにおいて二度も瀕死になっている。
実戦になれば自然と自分が指揮をとっていく事になるだろう。須美は自分をそう納得させ、決意を新たにした。
「じゃあ、決定ね。隊長も決まったことだし、神託によれば次の襲来まで時間があるみたいだからいい機会だしより連携を深めるため、合宿を行おうと思います」
同時に1枚の紙をテーブルに置いて差し出す安芸。四人が前のめりになって紙の内容を見ると、そこにあるのは強化合宿と大々的に書かれた四文字と、その簡単な備考。
「強化……」
「合宿……?」
「ということはお泊まり! 楽しそうだなー!」
「バーテックスとの戦いが本格的になってきた為、今後大赦はあなた達勇者を全面的にバックアップします。もちろん、遡月くんもね。
強化合宿はその一環。連携の強化、親交を深める、勇者の力をより使いこなす。やれることは全部やるわ。学校のこと、家庭のことを気にする必要もないから」
「それは効率的に出来ますね」
合宿だーとみんなでお泊まりだーと楽しみだなーと喜ぶ三人を一人で窘める姿があり、ふと陽灯が首を傾げた。
「あれ、そもそも俺って行っても大丈夫なの? バックアップしてくれるとは言ってくれてもお役目はしてるけど勇者じゃないし」
「はるるんが居ないと寂しいな〜」
「俺も置いていかれるのは寂しいよ!」
陽灯の言葉ではっ、と気づいた園子は陽灯の裾を握り、銀と須美は安芸に問うような視線を向けていた。
「確かに遡月くんは勇者ではないけれど、一緒に戦うことに変わりは無いでしょう。さっきも言ったけど大赦は一応、理由はどうあれ遡月くんもバックアップすることになってる。何より、さらに強くなったバーテックス---強化型バーテックスに対抗するために少しでも戦力をあげる必要が出てきたから」
「強化型バーテックス?」
「突然新しい力を得た時のことじゃないかしら。ほら、一度目では水圧。二度目は風圧と言った感じで」
「あぁ、あれかあ!」
「名前決まったんだ〜」
「先日ね。まだまだ未知なことも多くて、把握しきれていない。だからどんな強化をされても戦えるように手数を増やさないといけないの。少しでも場数を踏んでいたら違うでしょう?」
それは大赦の方でも同じなのだろう。
最も勇者や陽灯に話を通しやすい安芸に話が行かないということは、勇者も陽灯も大赦も全員が未知の進化を遂げていくバーテックスのことを把握出来ていない。
わかっていることはただ一つ、今までの傾向から一度倒したバーテックスは強くなるということ。
一度目では超高圧水流。二度目は風の強化。それぞれのバーテックスの特徴的な力が強化されていた。
三度目もあるに違いない。
少しでも予想を立てて可能性にある状態と全く可能性を想定してない状態なら前者の方が対処出来るものだ。
「それはそうだよな。ぶっちゃけ一度目なんて陽灯のお陰で助かったし」
「あはは、俺は踏み潰されてたけどねー」
「笑いごとじゃないよー」
「ごめんごめん」
過去のこととはいえ、笑い話にでもするように話す陽灯に思い出したのか頬を膨らませる園子と若干曇った須美と呆れたような目を向けてきた銀に謝ると、咳払いが聞こえる。
「こほん。それで、脅威は強化型バーテックスだけではないわ。
ザ・ワンがいつ出現するかも分からない。こっちに関しては神託でも不明だから訓練中に来る可能性だってある。それに遡月くんが変身時にどう戦ってるのかは分からないけど、生身に動きを覚えさせた方が頭で覚えるよりやりやすいでしょうしね」
「ふふん、覚えるのはむりだよ! 忘れてる自信しかない!」
「陽灯くん…それは威張ることじゃないわ」
頭がアレな陽灯のことをよく分かってるというべきか。
どちらにせよ、陽灯も訓練に参加出来るということだった。
はっきり言って前回の風を操るバーテックスに対し、陽灯はあまり戦えたとは言えないだろう。もしザ・ワンが相手なら負けていたかもしれない。
戦いも知らない一般人だから仕方がないと言われればおしまいだが、天性の戦いのセンスとザ・ネクストが持つスペックのゴリ押しなのだ。
それではいずれ、対処出来ない相手に負けるだけ。
「そういうことだから、遡月くんも参加よ。遅刻せず、ちゃんと来るように」
「分かりました」
「はーい」
「りょーかい!」
「先生が先生みたいなこと言ってる…!」
「先生よ」
「あはは、そうだった!」
必要事項を伝え終えたということが分かったからか、合宿について四人は話し合っている。
世界の命運と全人類の命を背負わされているとは思えないくらい明るくて楽しそうで、その中心に居るのは何処でも一緒で、遡月陽灯という人物だった。
この面子だと真面目な須美は大変かもしれないが、彼女も笑顔が増えた。
(だからこそ、使えると判断されてる…ということね。彼だけじゃない。子供に力を授けるのではなくて、私たち大人に授けてくれたならば、どれだけよかったことか。そうすれば背負わせる必要なんてなかったのに。
ダメね……こんなこと何度思ったこと、何度考えたことかしら)
四人の見えない中で、子を想う先生の手が握りしめられていた。
残酷な運命を背負わせるしかない現実に、代わってやることが出来ない無力さに。
二日後。
合宿の日となり、バスの中で須美たちは待っていた。
既に園子は寝ており、銀も遅れつつもいるが相変わらず居ない陽灯に須美は両腕を組みながら不機嫌そうに待っていた。
「遅い…流石に遅すぎるわ! 10分20分ならともかくもう一時間よ!?」
「はは…まあ陽灯だからなあ…」
「…!
も、もしかして陽灯くんは誘拐されて今監禁状態にあるんじゃ……例えば騙されてついていった結果身代金を要求するために縛られて真っ暗な中で動けなくされてるとか……!」
「い、いやいや考えすぎだって! さすがの陽灯も知らない相手について…いったりは……うん、するな」
あの善意100%の人を疑うことすら知らなさそうな顔を思い浮かべた銀は須美の言葉を否定しようとして思い直した。
例えば困ってるから助けて欲しいなんて言われれば、陽灯は間違いなく疑わずに力になろうとするだろう。
むしろよく今まで騙されることも無く無事だったなと思えるほどのお人好しが陽灯なのだ。
「だ、だとしたら大変! 急いで探さないと…いえ先に通報?けれどその間にも陽灯くんは酷い目にあってるかもしれないしそのことを考えるなら今すぐにでも探して…でも私たちはまだ未成年。子供だけで探して二次災害が起きてしまえばそれはそれで大変なことに---なにより範囲を絞らないと全ての場所を探すだなんて絶対に出来ないし間に合わないし早く見つけてあげないと何をされているのか---」
「お、落ち着けって!流石に考えすぎだから!鷲尾さん---須美!」
「は…っ!?」
体を揺すぶっても深い思考の中から帰ってこない須美に銀は名前で呼ぶと、戻ってきたのか彼女は銀を見つめる。
「三ノ輪さん……? あれ、今……」
「やっと戻ってくれた……それとほら、今更だけど前も言っただろ?銀でいいって。あたしも須美って呼ぶし。いつの間にか陽灯だけ呼んでてずるいぞー」
「えっ、それはその……」
ようやく戻ってきた彼女に安堵するものの、銀に一人だけ名前呼びしてることを指摘されると須美は言い淀む。
「あたしらチームなんだしもっと交流を深めるのも大事だと思うんだ。それにもう結構一緒にいるだろ?友達だしさ、固いのはなし!」
「え……と…じゃ、じゃあ……銀…?」
「そうそう!それでいいよ!」
「ん〜なら私のことはそのっちって呼んで欲しいな〜」
「うわぁ!?」
「い、いつ起きてたの!?」
満足そうに笑顔を浮かべた銀だが、寝ていた園子が乱入し、二人して驚いていた。
そんな二人に園子は思案するように口元に人差し指を添えると思い出すようにしながら口にする。
「えっと〜遅い…から?」
「それ最初からよね!?」
「そんなことより、ほらほら〜そのっちて呼んでくれていいよ〜?」
「そんなことって…まぁでも、園子だけ省くのはないよな〜?」
ぐい、と顔を近づけて言ってくる園子と銀の追撃に須美は言葉を詰まらせ、観念したのか頬を赤くしながら口を開く。
「わ、分かったわ。そ、そのっち……」
「! うんうん、そうだよ〜」
「いやーやっと呼んでくれましたな園子さん」
「ですな〜」
「も、もう。終わったことはいいでしょ!」
「えへへ、でも嬉しいよ、わっしー!」
「ちょ……っ」
「お、あたしも混ぜろー!」
「ちょ、ちょっと!?」
「ごめん!やっと着いた---え、なにこれどういう状況?」
集合時刻から大遅刻してようやくバスに入ってきた陽灯は後ろの席で須美が銀と園子にくっつかれ、ぎゅうぎゅう詰めとなっていることに何があったのか分からず首を傾げる。
「は、陽灯くん助けて!そのっちと銀を…!」
「あ、呼び方変わってる。うん、よく分からないけど仲良しなのはいいことだよね!」
呼び方が変わったことには気づいたが、別に何か悪いことをしてるわけでもないので、微笑ましそうにしていた。
人助け命な陽灯でも、良し悪しは区別出来るのだ。
そんなこんなで結局抜け出した須美に遅刻したことを怒られてしまったが、言い訳することなく人助けしてたら普通に迷子になって30分くらい彷徨ってたと言ったら逆に心配されてしまったものの、その後は陽灯を中心にわいわいと騒ぎ、合宿場に辿り着いた。
場所は讃州サンビーチ。所謂海水浴場。
早速体操着に着替え、準備運動をした後に様々な訓練をさせられる。
残念ながら海水浴場だからといって海で泳いで遊べるわけではなく、目的は訓練。
その訓練としてでも砂浜という舗装された道を走る際にはあまり使われないような筋肉を鍛えることが可能だったり体力の消費が激しかったりなど訓練としての場所として優れていること、広い場で出来ること、周りを気にせず出来ることなど様々なメリットがあるからだ。
無論それだけでは無い。
基礎体力は大事だが、人類の際たる武器として存在する技の型や武器の使い方、その道の達人が指導する。
ただし陽灯は武器を使わないが、どれを使うか分からないというのもあって全てやらされたりはしたのだが、基本的には格闘メインだったりと。
他にはバランスの取れた食事や筋トレなどその他諸々など、過酷と言えば過酷なものばかりだが当然無茶させるわけではなくそのギリギリのラインを見極めた上でのこと。
そして個々の強化はもちろんのこと、今回の本題たる最後の訓練に入る。
既に疲労困憊と言った感じの三人と何気にまだ余裕がありそうな陽灯---ただし何故か体操着が破れたり汚れたりボロボロになっているが、そんな四人は最初に来た場所である砂浜に集合していた。
四人の目の前には動きやすい服に着替えた安芸がいる。
「やることは単純。この機械から発射されるボールに当たることなく、三ノ輪さんを目標地点のバスに辿り着かせること。乃木さんと鷲尾さんは三ノ輪さんを辿り着かせるために迎撃・防御でアシスト。三ノ輪さんも自身の力で避けられる部分は避けること。ただし一度でもボールに当たったら最初やり直し。互いの役割をしっかりこなすように!
また、この訓練は貴方たちの連携を高めるためのものです。ジャンプしてバスまでひとっ飛び、なんてことをするのは禁止します」
『はい!』
「あれ、先生? 俺は?」
ちゃんと聞いていた陽灯はその中に自分が入ってないことに気づくと質問を投げかける。
それは園子たちも同じく思ってたようで、安芸に視線が集まった。
「遡月くんは別のものをやってもらうわ。今の貴方の体格と身体能力はザ・ネクストの時とは別でしょう? 遡月くんを入れて変身前で慣れてしまったら、連携に支障が出る可能性も考慮してね。それに…」
「?」
「ザ・ワンが現れた際は間違いなく貴方の力が必要になる。そうなると遡月くん抜きで戦わなければならない可能性があるわ。今までの戦いでもそうだけど、遡月くんばかりに頼ることは出来ないというのも理由よ」
「俺が勝手にやってるだけなんだけどなあ…」
「……いいえ。陽灯くん、先生の言葉も最もよ。私たちは貴方に助けられてばかりだから」
「まぁ大丈夫だって。こっちはこっちでやってるからさ! 次戦うときにあっと驚くくらい連携出来るようにしとくからな!」
「一緒じゃないのは寂しいけど、はるるんが巨人になることを想定してやるなら、先生の言うとおりだと思うからね〜」
「えー…うーん…みんながそういうなら…」
渋々と納得を示す陽灯ではあるものの、事実今までの戦いは全て陽灯が守り、引き付けてきた。
アクエリアス戦では須美を守り、攻撃を引き付け、園子も銀も注意がなければやられていた可能性が高く、最終的にはザ・ネクストの力で撃破。
ライブラ戦においては強化される前は弱点を見つけるくらいだったが、強化型バーテックスになった際には銀を庇い、ザ・ネクストの力が勝利に貢献した。
結局のところ、彼が一緒に戦える状況だからこそなせたこと。
それは須美も銀も園子も理解している。
だからこそ、今回ばかりは三人とも陽灯を頼らないために安芸の言葉に肯定を示した。
「じゃあ、俺は?」
「どちらかと言うと個人の力を高める…といった感じね。だけど納得出来ないでしょうから、ひとまず試して見ましょう」
「試す?」
「えぇ。やることは三人とほとんど一緒。今からこっちの機械からボールが出てくるから、それを避けること。ただ動きは最小限ね」
「そんなのでいいの?」
「違えば納得出来ないでしょう。準備が出来次第位置に着いて。ああ、三人は見ていて頂戴」
試すといったことから、あくまで実験みたいなものなのだろう。
とりあえず陽灯は巻き込まないために三人から離れると、機械との距離はあまり離れていない。
せいぜい5mといったところか。どれほどの速さかは定かでは無いが、一般レベルならば簡単に避けられるだろう。
「それじゃあ…行くわよ」
「はい!」
陽灯の返事と同時に安芸が機械を操作すると、複数のボールが放たれる。
それは一般人が出せるスピードを遥かに凌ぎ、勇者の動体視力で辛うじて補足出来るほど。
彼女たちですらシステムを使わずに素の動体視力では見えないだろう。
しかも陽灯は機械から近いということから、もっと速く見えたはずだ。
しかし。
「…!」
陽灯の目はしっかりとボールを捉えつつも身を僅かに横に逸らし、鼻先スレスレで避けて見せた。さらに僅かな間しか開かず次々と向かってくるボールに対して同じように身を逸らし、曲げ、上体だけだったり脚だけだったり跳んだりと回避し、ちょうど最後の一発が終わったところで綺麗に回避されたボールは曲線を描きつつ陽灯の遥か背後で落ち、砂浜に嵌っている。
放たれた本数的にもクリアかな、と安芸に視線を向けようとすると---
「うぉおお!? ちょ、ちょっと先生!? 聞いてないよー!?」
まさかの一発ではなく、何発も打ってくる十個くらいはあるであろう機械から飛んでくるボールに驚きながらも
計300発。
場が沈黙に満ち、陽灯は汗を腕で拭きながら今度こそ終わりかなと僅かに警戒しつつも前方にいる先生と機械に視線を彷徨わせている。
「えっ、えっと…こ、これでいいの?」
「…大丈夫よ。流石ね」
「陽灯ー!」
「銀?」
どうやら今度こそ終わりだと安堵の息を吐くと、勇者の力を活かして銀が一気に近づいてきた。
ちょっとした強風に目を瞑り、目を開けた時には銀が目の前に来ていた。
「やっぱり凄いな! あの距離であんな速いボールを何回も避けて一度も当たってないしさ!」
「そうね、それに先生は一つの機械とは言ってなかったから不意打ちのように放たれたものまで全て避けるなんて…陽灯くんの能力がすごいのは実感してたつもりだったけどここまでとは思わなかった」
「流石はるるん、すごいね〜」
「えへへ、動くことは得意だからね! でもみんなでもやれるよ、絶対!」
「いや陽灯みたく生身じゃ絶対無理だと思う」
「それは同感ね」
「えっ?これ褒められてるの?」
賞賛されていたはずが、微妙なことになっていっていることに陽灯は混乱しているが、結局話を戻され参考程度にどう避けたのか話を聞く須美にIQが低そうな言葉で答える姿を安芸は見守りながら考え込む。
(バーテックスの攻撃を視認出来てるってことから予想はしていたけれど顕著な身体能力はまだしも、凄まじい動体視力…。
何より反応速度に関しては卓越しているわね。少なくとも今のはこの機械が出せる最高速度。これを持ち出す前にある
私たちで言えば放たれた銃弾を見てから避ける、そういったレベルを複数、一度も当たることなく最小限で避けて見せた…)
見てから避けるという時点でも異常だというのに、陽灯は不意を突かれてもなお反応して避けて見せた。
もはや人の域を優に超えているといえるだろう。
いくらザ・ネクストを宿してるからといえ、ここまで身体能力が人間を大きく上回るものなのか、と考えるが、安芸には当然分からない。
分かるのは予想通り、彼は別の訓練にしなければならないということ。
「四人とも。これで分かったと思うけど、遡月くんには別の訓練になるわ。さっきも言った通り三人は連携を中心に、遡月くんは個人の力を高める。何か他に質問がある人は?」
「確かにこれでは参加したら陽灯くんだけで達成出来てしまいそうだものね…」
「だな…」
「うんうん」
「謎のそ、そ…除け者感!」
疎外感と言いたかったのだろうが、残念ながら言葉が思い浮かばない彼はほんのちょっとしょんぼりした。
しかしまあ、陽灯は強化型バーテックスの攻撃すら目視出来るほどに高く、反応速度に関しては誰も反応出来なかったアクエリアスの超高圧水流の最高速度の攻撃に反応出来たほど。
そして今までの行動から分かる通り、陽灯は自分すら投げ捨てるので、練習にはならないだろう。
間違いなく銀や須美、園子に当たりそうになったら庇う状況が想像出来る。それがなくとも危うい場面があれば速攻で助けに入るに違いない。
「でも先生。結局俺は何を…?」
もっともな疑問を投げかける。
さっきのは三人と同じことをしたらどうなるのか、といった実験のようなものだ。
結果は陽灯が入れば練習にならない、となって全員が納得したが別のことをするにしても予想は付かない。
「もう言わなくても分かる通り、遡月くんの動体視力は極めて高い。だからこそ、遡月くんにはこれを着けてもらうわ」
「……へ?」
そう言った時には安芸は手に持っていた物を陽灯の頭から通し、視界が真っ暗になっていた。
「せ、先生? 何も見えないけど……?」
「アイマスクを着けたから当然でしょう。もちろん外したらダメよ。遡月くんには
「……え?」
「速さはさっきと同じ…というかあれが限界だから最高速度ね」
「え?」
「説明は以上。始めましょう」
「え?」
未だに衝撃から立ち直れていない陽灯を置いて、安芸は合図を皮切りに機械を操作した。
瞬間、ボールが陽灯の顔面に直撃し、陽灯は普通に吹っ飛んだ。
「いっ…ちょ、ちょちょっと待っくべ…!? い、いたい!普通に痛い!見えない!」
「痛くなければ訓練にならないでしょう。いい? 一つ一つのボールがザ・ワンやバーテックスの攻撃と思いなさい。避けられなければどうなるか、防御が間に合わなければ、迎撃に失敗すれば、突っ走れば---そういう危機感を持つように。自分じゃなく、誰かが大怪我をするかもしれない。最悪に至るかもしれない。それを常々頭に入れて励むように」
「…………」
何も見えない中で顔を抑えながら起き上がったものの、残念ながら視認できないと陽灯も反応することすら出来ないようで、彼はボールにボコボコにされて完全に地面に倒れ伏せていた。
間違いなく話を聞けていない。
「う、うわぁ……」
「は、陽灯くんがこうもあっさりと……私たちもやるのかしら、あれ…」
「はるるん大丈夫〜?」
「ハッ!?そうだ! 見えないなら音を聞けばぁあ!?」
目隠しした上で勇者ですらやっとのボールを何発も発射されてボコボコにされた光景を目にしたからか、銀も須美もぶっちゃけ引いていたが、心配する声に何かを思いついた陽灯は手を使わず勢いだけで跳ね起きると、耳を済ませ---
「ああ、ちなみに音でも聞こえないようにしているわ」
「う、うそぉ……おっ!? ぐえっ! ぬあああぁぁ!?」
超人的な聴力を持つ陽灯対策なのか、本来の射出音はほぼなく、ダミー音も混じって聴こえてきたため逆効果にしかならなかった陽灯はやっぱりボコボコにされて倒れ伏した。
「さて三人も見てるだけじゃ意味が無いし、準備はいい? こっちはこっちで始めます」
倒れ伏してる陽灯に容赦なくボールが降り注いでオーバーキルになっているのは気にはなるものの、安芸の言葉に三人はひとまず意識から逸らして身を引き締める。
用意されたのは大量の機械。
人数が人数なのもあり、陽灯より2台ほど多いが誤差に過ぎない。
スタート同時に次々と連射されていくが、陽灯のより遅い。
先に速いものを見た影響か軽々と避けて駆ける銀だったが、近づけば近づくほど密度が濃くなり、だんだんと速度がなくなっていった。
最初は走りながら顔を逸らしたり体を逸らしたりと避けれていたのに、今では斧を駆使して防御したり弾くことで対応するが、防御が間に合わなくなってくる。
そして斧を振り下ろした際に勢いが強すぎたのか砂浜に刃が突き刺さってしまった。
「っ! やば---」
ボールは間近。
抜くよりも早く辿り着き、体のどこかにぶつかるだろう。
しかしここで斧を置くという選択はない。斧がなければここを打破してもすぐさまやられるのは目に見えているからだ。
それにボールなら殴って何とか出来るが、これが敵の攻撃ならば武器を捨てるなんてことは到底できるはずも無い。
「ミノさん!」
「園子! 悪い!」
銀の前に園子が穂先を傘状に展開した槍を前にして出ることでカバーし、死角からのボールを須美が撃ち抜く。
それを見てすぐさま斧を引き抜き、砂が視界を邪魔するが払って突撃。
飛んできたふたつのボールを双斧で弾いたところで、銀は目を見開く。
「なっ…もう一つ!?」
「銀!」
間違いなく弾いたはずだが、隠れるようにしてボールがやってきていた。
既に振り切ってしまった斧は即座に戻すことは出来ない。
流石に園子も間に合わず、須美が落とすために矢を放っていた。
「たすかっ」
「あっ」
「ぐべっ!?」
が、気づいたように思わず声を挙げた須美の反応からわかる通り、スレスレのところで空振ってしまい、銀の顔面に見事直撃した。
「ぎゃあああああぁあぁぁぁ!!!」
「そこまで!」
結局あれ以降リベンジしていたであろう陽灯が吹っ飛びながら悲鳴を挙げていたが、一度終わりを知らせるような言葉と共に機械からボールから撃たれることもなくなっていた。
「ぎ、銀、平気? ごめんなさい…」
「たはは…大丈夫大丈夫!須美のせいじゃないって…!」
「どんまいだよー!わっしー!」
そもそもとして近接で薙ぐよりも遠距離で撃ち落とす方が難しく、ミスは誰にだってあるものだ。
険悪な仲でもない二人は気にした様子はなかった。
「あれ〜? はるるん?」
「………」
それはそうとして、珍しく一切喋ってない陽灯のことを考え、まだ倒れているのかと心配になって見渡した園子は違和感を覚えた場所へ歩くと、何故か空いている穴を覗いてみた。
「はるるん?」
「………」
ちーん、と効果音が鳴ってそうな状態で倒れている陽灯が居た。
完璧に力尽きてしまったのだろうか、と寄れば鼻ちょうちんが出来上がっている。
「大丈夫〜?」
「……! 園ちゃん…? ど、どうしよう! なにも、何も、みえ…ない……! わあ真っ暗だぁ…寝よう」
気がついたように体を起こした陽灯は目に何も映らずに慌てていたが、思ったより平気そうだった。
ほっと安堵の息を吐きつつ、そんな深くは無い穴に飛び込んだ園子は陽灯の頭を手を通して目隠しを外していた。
「あ、見える! ありがとう園ちゃん!」
「ううん、無事で安心したよ〜行こ?」
「そうだね!」
目隠ししていたことすら忘れていたような感じではあったものの、陽灯は見上げる。
それほど深くはないが、普通の人間ならばまず跳んで戻ることは不可能だ。
というか二人分が入っても余裕があるほど大きいというわけではなく、横幅が陽灯の身長分よりちょっと大きい程度。
しかし跳躍しようにも超人的な身体能力を持つ陽灯と勇者の力を持つ園子では同時に跳ばねば砂というのもあってどちらかに大量にかかってしまう。
いくらバカな陽灯でもそれくらいは分かっていたため、どうしようかと腕を組みながら首を傾けていた。
「同時に跳ぶのは成功させれるか分からないしなぁ……俺の力と勇者の力だと強すぎて崩れちゃうかもしれないし」
いつもは樹海という神樹様が作った世界で戦うお陰で陽灯も超人的な身体能力が使えるし勇者も同じく使える。
だが現実では陽灯も超人的な身体能力を使う際は毎度どうしようもない時と人助けのみだ。
「それもそうだね〜あっ、じゃあ……こうは?」
「ん?」
そういうや否や、園子の服装が勇者の時の服から神樹館の制服に戻っていた。
どういうことかと考えること少し、ポンと叩く音が聞こえる。
「なるほど!つまり…つまり?」
だが理解した人がやる動作だと思うのだが、分かってなかったようだ。
「ん〜!」
「……ああ! 流石園ちゃん! じゃあ早速!」
少し不満げにしつつも両腕を伸ばす園子を見て、陽灯の頭の中では遡月陽灯でなかった頃の記憶が蘇ると、ようやっと理解した彼は早速行動に移った。
特に気にすることもなく、陽灯は右腕を園子の脇から背中に手を回して上半身を支え、もう一方の手を両膝の下に差し入れ脚を支えて抱き上げる---お姫様抱っこで抱える。
「これなら確かに脱出出来るもんね。俺じゃ思いつかなかった!」
「えへへ、でしょ〜?」
「うん、でもやっぱり園ちゃん軽いね〜こうやっても持てちゃうし」
「うーん、それははるるんの力が強いだけだと思うなぁ〜」
「そうかなぁ」
「うん。だからこう出来るから、嬉しいんよ〜」
「そうなんだ、よく分かんないけど園ちゃんが嬉しいなら俺も嬉しいな!」
一転して満足気に体を寄せて密着する園子が嬉しそうだからか、陽灯も嬉しそうな笑顔を浮かべると、本来の目的である脱出を試みるべく陽灯は両脚に力を入れ、両膝を曲げる。
そして両足を使ってジャンプすると、陽灯は人一人を抱えているとは思えないほどの跳躍力を発揮し、穴から抜け出すどころか穴から計算して15mほど跳んでいた。
なお陽灯の力の影響で穴はさらに深まったので、これで勇者の力もあったら崩れていたかもしれない。
それはさておき滞空時間が長いからか景色に心を奪われるようにしがみつきながら周りを見る園子と落下先で誰かを踏まないためにちゃんと下を見る陽灯は須美や銀が見てることに気づいた。
二人とも驚いたように見ており、陽灯は手を振れないのでとりあえず笑顔を浮かべておいた。
「…あれ? これ結局埋まるくない?」
珍しく頭が冴えた陽灯だったが衝撃を殺せる場所がない。
空中移動が出来ないため、自由落下に従うしかないが15mも跳んだ陽灯は園子を抱えているのもあって砂に落下したら同じことになるだけだ。
間違いなく、跳びすぎだった。
今更どうしようかと周りを見渡すものの、落下先は砂浜。
時間もなく、園子に聞く時間もない。
陽灯はどうにでもなれの精神で園子を庇うことだけに意識を向けようとすると首から掛けていたベンダントが赤く発光し、陽灯の体は地面に着く寸前でゆっくりと降りるように着地した。
「今の……」
「陽灯くん! そのっち!」
「なんで園子は陽灯に抱えられてるんだ?」
「えっとね〜一緒に脱出するため?」
「…ん?すまん、どういうことか分からん」
「それはいいとして、二人とも急にいなくなったから慌ててたのよ」
駆けつけてきた二人は探してたのか心配してくれていたが陽灯はさっきの出来事のことを考えていた。
なんで問題なかったのか、同じことにならなかったのか、こうやって着地出来たのか考えるまでもない。
(ありがとう、巨人さん。この石が大切なものは分かってたけど、俺の身を守ってくれるものでもあったんだね)
直接もらったものだからこそ、大事なものとはわかっていたが”綺麗な石“というだけでなくちゃんとした意味があったことを知ると嬉しいという気持ちが溢れる。
言うならばこれは、巨人が陽灯のことを想って用意してくれたようなものだ。
「---から。って、陽灯くん聞いてる?」
「おーい?」
「…へ?あ、ああごめんね。考えごとしてたんだ。えっと、どうかした?」
思考していたせいで話を聞いてなかったようで陽灯は謝りつつも、ため息を吐く須美と苦笑する銀を不思議そうに見つめる。
「はぁ、いえそれよりもずっと気になってることがあるのだけれど……」
「?」
「…陽灯くん、いつまでそのっちを抱えてるの?」
「…ん? ……あっ」
もう穴から脱出したのだから降ろしてもいいはずが、陽灯は今までずっと抱えたままだ。
普通は人を抱えていたらいくら軽くともだんだんとキツくなるものだろう。
これが大人ならまだしも、陽灯と園子は同い年で陽灯はぶっちゃけ同年代の男の子に比べれば身長も体重も低すぎる。
そんな彼がずっと抱えているし話してる最中も抱えたままだから気になってしまうのも仕方がないだろう。
「これ、忘れてた反応だよな」
「ええ、間違いないわね」
「むぅ…はるるん。私の事忘れてたの?」
「そ、そうじゃないよ! 園ちゃんが軽くて気にならなかっただけというか違うこと考えたというか……えっとえっと、とにかくそう! 園ちゃん軽いよ! 全然! このままでも!まだまだ余裕!」
「あっでも園ちゃん動けないよね、ごめん! すぐ降ろすから---」
「ん〜もう少しこのままにしてくれたら許すよ〜」
誤解を招いたことに慌てながら言葉を捲し立てて、降ろそうとするが園子の言葉に停止し、嫌じゃなさそうなのでそのままにすることにした。
「ってそうだ!先生は---あでっ!」
「ここよ、まったく」
二人が見つけてくれたとはいえ、探してたってことは同伴者たる先生も同じはずで、迷惑をかけてることに気づいた陽灯はすぐに動こうとするが、後頭部に痛みが走って思わずしゃがみこんでしまう。
振り向いた先には、安芸が呆れた表情を浮かべていた。
「目を離した私も悪かったけど、返事がなければ何かあったのかと思ったでしょう」
「あ、あはは…ごろごろ転がってたら穴に埋まっちゃって…そしたらちょっと寝ちゃって…ごめんなさーい!」
恐らく何度か練習してた時に空中から落ちた際の穴に落ちたのだろうが、なぜ転がっていたのだろうか。
ろくでもない理由しか返ってこないため、聞く必要はなさそうだろうが。
(何も見えなくて暇だったから転がってたら落ちたなんて言えないし…)
一歩間違えたら海に流されてた可能性もあるが、そんなことを考えられる頭をしてない陽灯はやっぱりろくでもない理由が原因だった。
「まぁ終わったことは仕方がないでしょうし…。それよりもいい加減乃木さんを降ろしなさい。休む時間はおしまい! もう一度やるわよ!」
「えぇ〜…」
「はーい。ごめんね、園ちゃん。がんばろう!」
「遡月くんはもう終わりよ。やりすぎても意味が無いしそろそろ限界でしょう」
「そっ、そそそそんなことななないよ!ま、まだまだ余裕!」
「休みなさい」
「はーい…頑張ってね、三人ともー!」
園子を降ろしたあとにリベンジに向かおうとしていたが、体力的にではなく肉体的には割と痛くてキツイのがバレた陽灯は有無を言わさない圧に負けて大人しく従い、応援することにした。
ちなみに応援があったからといっても、激的に変わることはなくクリア出来なかったらしい。
〇遡月陽灯/ザ・ネクスト
自身がバケモノだと思われていることを察している。
改めて夢を自覚し、全てを救うヒーローになることを誓う。
それはそうとさらに回復速度上がってるし身体能力上がってる。
〇ザ・ネクスト
ついに喋れなくなった巨人。
これに関しては理由があり、ヒントはノア様がザ・ワンとの戦いを終えた真木瞬一に何をしたか分かる人には答えは分かるだろう。それの弱いバージョンを変身解除と同時に陽灯くんに行っている。
そのため陽灯くんの体内で休んでいるが彼の体内だと”なぜか“回復速度が速いので、意思疎通程度なら輝石を通して可能。
〇安芸先生
陽灯くんの肉体に関して不審に思いつつも、質問に関して嘘は付けなかった。
大赦が彼のことをどう思っているか知っている…が、安芸自身としては先生として関わるうちにザ・ネクストであるよりも大切な、人を笑顔にさせるという誰にでも出来るようなことではないものを持つ彼を失うべきでは無いと思っている。
〇訓練
陽灯くんがスペックが高すぎて勇者と同じでは訓練にならないため、成されたレオ式特訓。
目隠ししながらボールを避ける。ただしダミー音もあり、複数から放たれる500発。
なおボールもクソ硬いため陽灯くんの肉体にダメージが入るレベル。
一般人なら骨折じゃ済まない一撃。
〇機械
ある下っ端職員に改造されたボールが出てくる機械。
勇者の動体視力でやっとであり、元々動体視力が高くザ・ネクストによる強化でプラスされてる陽灯くんだからこそ避けられるもの。
その速さはザ・ネクストの強化がなければまだ覚醒に至っていない陽灯くんでも視認出来ない。
〇赤い、真紅の輝石
ウルトラマンは光の力を解放するアイテムが必要(M78星雲限定?)らしいが、もしザ・ネクストなら何がアイテムになるだろうと思った結果出した。
本作では別に無くても変身出来るが、陽灯くんの戦意があまりに低すぎて安定しないため安定させる補助アイテム的なもの。
見た目は紐?も含めて銀河帝国においてナオが持っていたバラージの盾の欠片そのもの。
黄金色のジュネッスの名称
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ジュネッス・オーア(紋章学で金色)
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ジュネッス・トリニティ
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ジュネッス・ブリエ(輝き)
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ジュネッス・ルフレ(光沢、反射)
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ジュネッス・ルクス(光)
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ジュネッス・ルミナス(光り輝く)
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ジュネッス・ゴールド(金色)
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ジュネッス・オール(金、全部)
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ジュネッス・グロウ(発光)