【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】 作:絆蛙
前回は四対一は卑怯だろ!いい加減にしろ!でしたが、全く終わんねぇ……!
やりたかった話ですし投稿頑張ったからゆるして……。
ちゃんと日常シーンも書きますから! あ、それとアンケートお願いします()
東郷美森にとって、結城友奈と継受紡絆という人間は特別な存在だった。
同性の友奈はともかく、紡絆は別に付き合っていて恋人というわけでも婚約者という訳ではない。ただ異性では唯一と言えるほどの親友であり、近所なのと共通点があるからだ。
東郷美森は
互いに記憶を失っているという点は同じであり、
そして東郷は二年間の記憶もなく、交通事故による後遺症で半身不随になってしまい、車椅子生活を強いられることになった。
さらに親の都合で引っ越しすることになり、当時塞ぎ込みがちだった東郷は二人に出会ったことで救われた。
『新しく引っ越してきた子? 歳が同じなら同じ中学になるよね?
私は結城友奈。よろしくね! そうだ、この辺りまだよく分からないでしょ? 案内するよ、まかせて!』
引っ越し先で不安なこともたくさんあり、分からないこともたくさんあった東郷に、善意で優しく、明るく接してくれた友奈。
『あーよかった! 見つけた! 向こうの方で無くしたって泣いてる子がいて探すの手伝ってたんだ。拾ってくれてありがとう! 俺は継受紡絆……って言うらしい。えっと、一応お隣さん……になるのかな。よかったらよろしく』
出会った時から見返りを求めることなく、ただ
『え? 記憶がない? 足も動かないから迷惑になる? それが何か悪いことなのか? 俺だって記憶はないけど、やりたいことしてるぞ?』
その紡絆は明るい性格や前向きな様子からまるで心の底から
他にも彼の性格に惹かれ、励まされた人も勇気を貰った人も居たのだろう。
『俺も君も今を生きてるだろ? じゃあ、好きなことをしたらいいじゃん! やりたいことが一人では出来なくて、それで迷惑をかけるかも……なんて考えてるなら俺がいくらでも手伝う。何度だって頼ってくれていいよ。お隣さんだし、もう友達だ。
だからさ、そんな暗くならずに笑顔で今を生きよう。明るく前を向いて生きたら……きっと楽しくて、明るい未来へ行ける気がするんだ。
まあ、記憶ないやつが何ほざいてんだ、って話だけど! あはは』
そんな紡絆は東郷の悩みを聞き、自身にも記憶がないことをあっさりと言うだけではなく、足が動かないことにも気にした様子を見せなかった。
むしろ頼ってくれていいと、手伝うまで言い、不安だった心を掻き消すように支えてくれたことは彼女にとって、東郷にとって、紡絆と友奈の二人はまさに心の支えだった。
もちろん、初対面だった紡絆に関しては会ったこともないはずなのに、初めて会ったはずなのにそこまで相談したかは分からない。
しかし東郷は不思議と話していた---
そして、東郷の目の前にはまさに
文字通りの意味で、死にかけていたのだ。
今にも守るために貼られたバリヤーは薄まり、それが消えた後に待つものは、本人はいらないと言うだろうが、貰った沢山の恩を返せないまま大切な親友の死。
先ほどは何も出来ない、恐怖に打ち負けて大切な親友を失いそうになっていた東郷に変わって、親友である友奈を助けるためにウルトラマンへと変身して救って見せた紡絆。
そんな彼が今はピンチになっており、友奈の時とは違って駆けつけれる存在は何処にも居ない。
もちろん、それが紡絆だからではない。友奈だからではない。仮に喧嘩中であっても風がピンチだったなら、後輩である樹がピンチだったなら、東郷も当然助けたいと思う。
しかしそれでも---勇者部の中でも友奈と紡絆は、紡絆は東郷にとって
自身の気持ちを理解して、記憶がないために同情ではなく本音から寄り添ってくれて、助けてくれて、現に以前の戦闘でも秘密にしていたとはいえど、助けてくれた。
そしてさっきも助けられ、何度も助けられ続けた。ボロボロなのに、死にかけているのに、東郷は救われてしまったのだ。
何も出来ないことへの無力感。親友である二人に並び立てないことへの悔しさ。助けられることしか出来ない自分への後悔。だが何より東郷が抱いたのは---
「---やめて……やめろ! やめろッ! これ以上、私の大切な人たちを傷つけないで---ッ!!」
怒りだった。それも、自身の大切な人たちを傷つける、みんなの居場所を、
その瞬間、彼女の感情に呼応するように紡絆へと振り下ろされた間違いないトドメの一撃であるスコーピオン・バーテックスの尾を、割れ目から目と手を覗かせた卵のような姿で、殻の左側に青い花模様がある東郷のと思われる精霊が守って見せた。
そしてボロボロなのにも関わらず、紡絆の視線が東郷へと向けられ、東郷はその視線を受けた。
『おまえならやれる』という最後まで勇気を与えようとするメッセージと共に。
「私……ずっと友奈ちゃんや紡絆くんに守ってもらってた。だから今度は---私が勇者になって二人を守る!」
だからこそ、東郷はもう逃げない。もう守られるだけの存在ではいない。
その覚悟は認められたのか、東郷はスマホを握り、勇者システムのアプリ起動画面を開く。
そして迷うことなく起動させた東郷の姿が光に包まれると、スカイルブルーの衣装に髪は更に伸び、膝まで掛かるロングヘアーとなっていた。
その姿こそ---東郷の覚悟の証。踏み出せなかった一歩を、一人では飛び立つことすら出来なかった東郷に
ついに勇者として変身することが出来た東郷はコスチュームの一部である4本のリボンを触腕のように扱うことで地面へ降り立ち、目隠しをした狸のような姿で、複数の青い花模様のついた服を着ている精霊、
(どうしてだろう。変身したら落ち着いた……。武器を持っているから?)
「ッ……! う……ぐぐ」
新たに現れた勇者である東郷だが、想定外だったのかバリアに弾かれたスコーピオン・バーテックスがついに動く。
気づいた紡絆は起き上がろうと両拳を地面に付けて力を込めるが、一瞬で力が抜けて起き上がることすら叶わない。
そして東郷を無視し、バリヤーも消えて瀕死である紡絆にトドメを刺そうともう一度毒針を刺そうとすると---
違う、東郷は撃ち抜いたのだ。尻尾ではなく、針という小さな的を正確に狙い、撃ち抜いたのである。
その手腕に自身の傷を一瞬忘れ、紡絆は驚いていた。
「もう友奈ちゃんや紡絆くんには手出しさせない!」
短銃を仕舞い、今度は
その散弾銃をスコーピオンに放ち、回転させてリロード。そして発射。
それを繰り返していくと、徐々にダメージが入ってるのが見える。
そして---
「さっきのお返しだぁぁぁ!」
辿り着いた友奈がスコーピオンの尻尾をガシッと掴み持ち上げ、円周に回し始めるとハンマー投げの様に回転力を加えていく。そして樹と風を反射板で矢を反射させることで追い詰めているキャンサーの方向へ投げ飛ばしてみせた。
「よーし! って東郷さん!?」
「友奈ちゃん……。さっきの敵は?」
武器を消した東郷は投げ飛ばした友奈に少し驚きながら、足止めされていたはずの敵がいないことに疑問を抱いて聞く。
「えっと、あの犬みたいな怪獣は突然動かなくなったんだ。だから最後の力を振り絞ってたのかも……。
それより東郷さん。ついに変身出来たんだね!」
「そう……。ええ、これからは私も一緒に戦うわ」
ガルベロスはどうやら力尽きたらしく、行動的には
東郷は友奈に言われたことに頷くと、目をしっかりと見て言う。
そんな東郷に友奈は微笑んだ。
「わかった! 一緒に戦おう!」
「えぇ」
迷いもなく、戦える状態の東郷に友奈が言うのは否定するわけでもなく、肯定。
守るためじゃなく、一緒に戦う仲間として迎え入れたのだ。
そのことに東郷も同じく微笑んだ。
「……がほっ。す……げ……なぁ………」
そんな姿を吐血しながら眺めていた紡絆は掠れた声で呟いた。
投げ飛ばした友奈の姿も、外すことなく正確に当てて見せた東郷を見て思ったことを言ったのだろう。
その声に気づいた友奈も振り向き、名を呼ぼうとして---青ざめた。
「紡絆……くん?」
「あ〜……。じょー……ぶ。うご……ける……し。あ……はは」
平気というように笑いかけながら、倒れた状態から無理矢理座り込むと、紡絆は手を振る。
ただし、全身からも血を流しながら腹を抑えている時点で説得力も一切なく、生きてることすら怪しくなるほど重傷なのだが。
「紡絆くん、無理をしないで寝転んでいて。私たちがすぐに終わらせて病院に連れていくから……。だから---」
「わ……てる。ゆー……なも……と……う……をたの……む……」
まともに話すことが出来ないのか、途切れ途切れになりながらも紡絆は少しでも平気そうに振る舞う。
二人が戦いに集中出来るために、戦えるように。
「友奈ちゃん。行きましょう」
「……うん。すぐに終わらせるから、もう少しだけ頑張って!」
「おぉ……う………!」
東郷の声に従うように友奈が気を持ち直すように自身の頬を叩くと、友奈と東郷は風と樹に合流するために跳んでいった。
それを最後まで見届けた紡絆は---
「げほっ! がふっ………ちょ……と…やす……も……かな……」
我慢していた分も吐き出すように血塊を吐き出すと、限界を迎えたように仰向けに倒れてしまい、背中をつけたその地面は真っ赤に染まっていた。
うっすらと開けたままの瞳は焦点が合わないのか友奈と東郷は複数いるようにも見えて、一人にも見える。
喉の渇きも生まれ、呼吸ですらまともに出来てないのか『ヒューヒュー』といった空気のような音しか鳴らず、ただ失いそうになる意識を耐えながら横たわった紡絆は勇者たちの戦いを必死に見ようとする。
しかしその状態から分かるのは---長くは持たないということだろう。
ネクサスとガルベロスが消え、サジタリウスとキャンサーを相手にすることになった風と樹だったが、キャンサーの反射板によるバーテックスの巧みなコンビネーションに攻撃することは叶わず、降り注ぐ雨の矢から逃げ惑うことしか出来なかった。
風と樹は樹海の根を盾にして、攻撃を凌ぐ。
「ああもう、しつこい男は嫌いなのよ!」
「モテる人っぽいこと言ってないで、なんとかしなくちゃお姉ちゃん」
「そうは言ってもねぇ。なかなか隙が……ん?」
途切れることなく放たれる雨を掻い潜ることなど至難の業。
そんな時、空気を切るような音が近づくと、巨体が降ってきて凄まじい音を立てながらキャンサーを巻き込んで倒した。
新手かもしれないと風と樹は影から出てくると樹枝に着地する。
「な、なにか降ってきた!?」
「一体何!?」
「そのエビ運んできたよーッ!」
「いや、サソリでしょ」
「どっちでもいいから……」
唖然とする風と樹に手を振りながら言う友奈に風は今言うべきではないところにツッコミを入れるが、樹は苦笑しながら宥めていた。
そしてそんな友奈の後ろからは東郷が跳んできて、近くに降り立つ。
「遠くの敵は私が受け持ちます」
「東郷先輩……!」
本来なら
「東郷……!? 戦ってくれるの?」
風の問いに東郷が頷く。
樹海化が始まる前、謝ることも出来なかったのだ。だからこそ、来てくれるかどうかなんて分からなかったのだろう。
「風先輩。部室では言い過ぎました。私のモヤモヤを八つ当たりするように言ってしまって……ごめんなさい」
そして東郷は申し訳なさそうな表情をしながら、風に向かって自身の気持ちを告げる。
東郷だって、自覚していることから分かる通り、仕方がないとは分かっていたのだ。それでも自身の感情を制御することなど簡単にすることは出来ず、八つ当たりするようにぶつけてしまった。
だからこその、謝罪。
「東郷……いいえ、私の方こそごめんなさい。本当はもっと早く告げるべきだった。五箇条を作ったのに相談することもしなかったから……」
その言葉を聞いて風も謝る。
選ばれることがなかったとしても、話していたならば覚悟の少しも出来たかもしれない。選ばれて欲しくなかったと願っていたとしても、あんな突然に言われれば東郷の言葉も間違ってると一方的には言えないし、風にも間違ってるとは言えない。
互い互いを思ったからこそ、ちょっとしたすれ違いのようなもので起きた事故みたいなものなのである。
どうしようもなく、少し選択を間違えただけ。
だが結局のところは、互いに謝ってしまえば解決なのだ---少なくとも、東郷と風の仲はそれほど良いのだから。
「うん、これで仲直りだね!」
「よかった……」
それを見ていた友奈と樹は嬉しそうに、ほっとするようにそう呟くと、東郷と風も笑みを浮かべ、東郷はすぐに表情を引き締めた。
雰囲気を切り替えた東郷は、まだ知らないであろう風と樹に対して報告するため、口を開く。
「風先輩、樹ちゃん。落ち着いて聞いてね」
「ん?」
「えっと……?」
突然言われた二人は当然だが、なんのことか分からないため首を傾げるしかない。
そんな風と樹に対して、東郷は大事なことの一つである正体を告げる。
「あの銀色の巨人---ウルトラマンは紡絆くんでした」
「……は?」
「えっ……!?」
それは、ウルトラマンの正体。
風と樹からすれば、最後に見たのは貫かれた姿だったが、いつの間にか消えていた。
もちろんその後どうなったかまではわからなかったが、真実を告げられた風と樹は驚愕し、動揺していた。
「紡絆がウルトラマン!? え? あの巨人? はああっ!? どういうことよ!」
「じゃ、じゃあ昨日……私たちを助けてくれたのって……」
「紡絆くんみたい。私もさっき聞いたからまだ実感も湧いてないんだけど……」
予想外すぎる真実に混乱するが、樹の疑問には友奈が代わりに答えていた。
友奈も友奈で聞かされた際には緊急事態だったため、混乱はしたが驚いてる暇はなかったのだ。
「私も紡絆くんがウルトラマンに変身するところを見ただけですから、分かりません。でも……早くバーテックスを倒さないとこのままじゃ紡絆くんが死んじゃうんです……!」
暗い表情で言うのさえ嫌と言うように重たい口を開いて述べる東郷。
「え……? 紡絆が……死ぬ!? で、でも……なんで」
「そ、そんなッ!?
……も、もしかして、ウルトラマンが貫かれたから?」
大切な部活仲間である紡絆という唯一の男子生徒が死ぬかもしれないという事実。
信じられないといった表情をしながらも、経緯が詳しく分からない風はそう言うが、樹がふと思い出したように言うと、東郷が何処か曖昧な感じで頷いた。
「おそらく……。今は休むように言ってますけど、出血もすごくて……」
「だから早く倒さないと!」
「友奈ちゃんの言う通り、私たちで早くバーテックスを倒して紡絆くんを病院に連れていけば、助かると思うんです。今も戦ってくれてます…!
私は紡絆くんを……親友を絶対に死なせたくありません。だから風先輩、樹ちゃん、力を貸してください……!」
説明しながらも懇願するように、頭を下げて頼み込む東郷。
そんな姿を見て、あまりにもの情報量に混乱の文字しかなかったが、風は首を横に振ると、手をパンっと叩いた。
「そうね。正直混乱しててよく分からないことだらけだし、驚きばかり。だけど紡絆のためにも、私たちの世界のためにも時間はないことだけは分かったわ! だから詳しいことは後で本人に聞きましょう。そのためにも今はバーテックスを倒すわよ!」
「お姉ちゃん……。うん、私も頑張ります……!」
「風先輩……樹ちゃん……。精一杯援護するわ!」
「じゃあ、勇者部の出陣! だね!」
気合いを入れ直した風に、自身も頑張ると両拳を作る樹。
勇者部に薄情な存在はいない。一緒に居て、部活をして、それは分かっていたことだった。
それでも目の前で迷うことなく言ってくれたことに東郷は感動を覚え、安心する。
同時に紡絆の命が今も奪われつつあるということに焦りもあるが、今は疾風迅雷の如き行動で動くしかない。
「それじゃあ、まずは手前の二匹から封印いくわよ! 散開!」
「「オッケー!」」
風の指示にフランクに返しながら動き始める友奈と樹。
東郷は武器が武器なのもあり、遠距離での援護だ。割れ目から目と手を覗かせた卵のような姿で、殻の左側に青い花模様がある精霊---
東郷は体を屈めてうつ伏せになり、狙いを定めようとしながら二人に警告した。
「みんな、不意の攻撃には気をつけて!」
「「はいっ!」」
「ちょ、私のより……返事がいい……」
さっきのフランクな返事とは別で、しっかりとした返事。
風はその事実にしょぼくれるが、そんな暇はないと同じくバーテックスへ跳んでいく。
そして先程まで無数の矢を絶え間無く放っていたバーテックスは下の口を閉じ、上の口を開けて細長い抗のような矢を作り出すと、東郷に向けて発射する。
それはライフルの引き金を引いたことによって放たれた弾とバーテックスから放たれた矢が衝突し、爆発する。
細長く、素早く撃たれたはずの矢ですら正確に撃ち抜くことから彼女の狙撃能力がとてつもなく高いことが分かるだろう。
「こいつが皆を苦しめた……」
一発。
放たれた弾はサジタリウスの巨体に当たり、ダメージを与える。
狙いを外さないようにしっかりと定め、再び弾を放とうとして---
「ッ!? みんな避けて!」
どこからともなく飛んできた
「えっ!?」
「ちょ、また!? 今度はなによ!?」
「うわぁ!?」
東郷の警告により、封印する前だったのもあって飛んできた火球群を避けるために大きく跳躍することで避ける三人。
お陰で二体のバーテックスの封印が出来なくなってしまうが、東郷は飛んできた方向へとライフルを向け、放たれた
何処にも当たることなく彼方へと飛んで行ったが、それは東郷のライフルでも相殺できないと察せられるほどの威力を秘めたものであり、避けなければ精霊バリアと共に吹き飛ばされてしまっていただろう。
「東郷さん! 大丈夫!?」
「なんとか大丈夫! それより、あれは……!」
合流した友奈が東郷を起き上がらせるが、東郷は睨むように視線を向ける。
巨体、バーテックスと同じくらいの大きさを持ち、何よりも違う点といえば甲殻類に似た外見---それもサソリをモチーフとされているようで、見た目からして分かる強靭な外骨格を持っているところだ。
さらに鋭い鋏や長い尾、尾の先端にはハサミを持つというバーテックスにはない特徴が見られる姿---
「まさか、スペースビースト!?」
「に、二体目〜!?」
そう、スペースビーストに他ならない。
しかも先ほどとは明らかに違う個体で、より遠距離に特化した姿でもあり、当たれば人間は即死であろう鋭い挟があることから近接にも強く対応出来る姿だ。
「急いでるのに……! こんな時に邪魔をしないでッ!」
体勢を整えてしまった姿が見えた東郷は、スペースビーストにライフルを放つ。
しかし当たったと思われるはずの弾は少し傷つけるだけで、怯む様子すらない。
それだけではなく、再び復活したキャンサーが反射板を複数枚操り、サジタリウスの矢を全員に反射させて見せた。
「東郷さん、こっち!」
風と樹は即座に避け、友奈は東郷を抱えながら避ける。
大量の矢を避けることに成功すると、即座に友奈は降ろしてスペースビーストに接近する。
「おりゃあ---かったぁ!?」
腹部を一発殴り、もう一発殴って両拳のラッシュをしようとするが、殴れないほどじゃないとはいえ、痛みに手を抑えると鋏による攻撃を慌てて避ける。
「ほんっとしつこいわよッ!」
「大人しくして……!」
風と樹はしつこく狙ってくる矢を避けながらスコーピオンに近づくと、風が大剣を振り下ろし、樹が尻尾を絡めとる。
しかし近くのキャンサーが自身の鋏で風を妨害し、樹のワイヤーは尻尾をスコーピオンが激しく動かすために離すことになってしまい、破壊することもダメージを与えることも叶わなかった。
「くっ……せめてアレだけでも!」
再び細長い抗のような矢を反射するサジタリウスをライフルの弾で破壊すると、連続で銃弾を放つがビーストが射線に立ち、強固な肉体で防ぎ切る。
さらに腹部に隠していたであろう六つの気門を展開すると、気門から火球群を放ってきた。
東郷は即座にそれを撃ち落とすが、徐々に放たれる速度が速くなり、破壊に追いつけなくなる。
全て壊すことが出来ないと理解すると向かってくる火球群を避けるが、それは追尾してきた。
「東郷さん、危ない!」
「しまっ---!?」
大きく描いたため、迫ってくるのが遅かった火球群をなんとか退けた東郷だったが、友奈の声に反応する。
既にサジタリウスは斜め上に口を開けており、大量に矢を発射していた。
実は機動力が他の勇者よりも制限されている東郷にそれを避け切るのは難しく、思わず頭を腕で守るようにすると---
『ヘアッ! シュアッ!』
光の球体が東郷に迫っていた矢を空中で全て消し去り、矢を放つサジタリウスに突撃していくと怯ませる。
それだけで終わらず、光の球体が風たちの傍に降り立つと光がキャンサーを蹴り飛ばし、実体化と共にスコーピオンを掴みあげてスペースビーストにぶん投げた。
飛んで行ったスコーピオンはスペースビースト共々地面に倒れるが、光が晴れると現したのは---銀色の巨人、ウルトラマンネクサスだった。
512:名無しの転生者 ID:wJcUojCq5
おい、イッチ生きてる……のか? いや、生きてるのか怪しいくらい重傷なんだが、大丈夫なのか?
513:名無しの転生者 ID:+AKpW0zPi
腹思いっきり貫かれてたし……あれはなんだ?
514:名無しの転生者 ID:Krcrbf7yO
多分さそり座がモチーフと思われるから毒ゾ。麻痺か猛毒かは知らへんけど
515:名無しの転生者 ID:JjlVMktyn
ネクサスの場合は変身者にダメージ還元される……しかもダメージによる強制解除っぽいよな
516:名無しの転生者 ID:OX82Ln2AK
イッチのエナジーコアが鳴っていたということは、ネクサス知っている人なら分かるだろう。
ウルトラマンネクサスという作品の場合、ウルトラマンのエナジーコアが鳴るということは適能者、デュナミストの命の危機だ。
つまりイッチは腹を貫かれた段階ではまだ大丈夫だったが、毒を体内に注入されたタイミングで命の危機に陥ったと見ていい。そして俺たちは毒を注入された場合の対処法を……あまり知らない。作品によっては違うが、ネクサスに毒になってデュナミストが死にかけた事例はないからな
517:名無しの転生者 ID:sTPNClwpL
博識ニキの解説が絶望感をより募らせる……!
518:名無しの転生者 ID:t3mn08nJH
そもそも腹貫かれたところに関しては俺らが目を背けたくなるくらいだったからな……
519:名無しの転生者 ID:GbndxADVS
イッチが死にかけたお陰で東郷さんが勇者として覚醒出来たが、意味ねぇだろ!
520:名無しの転生者 ID:ZPY37mnAN
でもイッチも見た感じ動けそうにないぞ。意識も薄れてるっぽいしこのままじゃ長くもたん!
521:名無しの転生者 ID:9C+t9m6b
もしもの時はノアさまが……って願いたいけど、ノアさまが助けてくれるかどうかって言われると可能性が低すぎる!
姫矢さんや憐が実験されてた時だって本当にガチのギリギリでしか助けることはしてなかったし! 憐に至ってはナイトレイダーが助けてたし!
522:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW
あたまがいたい
くらくらする
いっぱいみえる
ねむたい
523:名無しの転生者 ID:MaXgvaOT3
おい! 絶対寝るなバカ! それは死ぬぞ! 起きろ! お前、なんで戦う前に死亡フラグ建てたんだよ! 帰ったらぼた餅食べさせてくれ、みたいなこと言うからだろ! ウルトラマンでも死亡フラグは回収するんだぞバカ!
524:名無しの転生者 ID:CvAiLDd8/
お前が今死んだら友奈ちゃんたち曇るし絶対やばいことしか起きないダルォ!?
525:名無しの転生者 ID:+B1VngM5f
ガルベロスは死んだっぽいが、まだまだビーストはいるんだぞ!
526:名無しの転生者 ID:YT3K/IISB
生きろ!
みんなを悲しませんじゃねぇよ!
527:名無しの転生者 ID:fcJRtxKzS
見た感じアンファンスで戦うしかないのが原因に見える。ジュネッスにさえなれてたら……!
528:名無しの転生者 ID:Gw6SawenV
今は休め! 病院に行きゃ、まだ助かるはずだ!
529:名無しの転生者 ID:WLdMFeZWj
仲間を信じろ! お前は生きることだけを考えとけ!
530:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW
だめだ、ちがう、いかなきゃ
やらなきゃ
おれがやらないと
うるとらまんだから
ひとりでやらなくちゃ
ひとりでがんばらなきゃ
うるとらまんだから
やらなくちゃ
やらないと
〔添付:ブレまくって判然としないが、新しいビーストの写真〕
531:名無しの転生者 ID:OX82Ln2AK
この特徴的な見た目は恐らくグランテラ!
ウルトラマンネクサスEPISODE.25からEPISODE.28に出てきたスペースビーストで憐編に切り替わって初めてウルトラマンが戦った相手! まさにウルトラマンを見極めるための重厚な装甲は脅威だ!
それにしてもイッチが初めて戦ったのがガルベロス、原作でもガルベロスは姫矢さんの初戦闘の相手!
それに続いて憐編の初めての敵……狙ったように出てくるのはどうなってる!?
532:名無しの転生者 ID:pSz1rg6T1
アレってジュネッスブルーのスピードで撃破出来た相手じゃなかったか!? やめろ! 今度こそ死ぬぞ!
533:名無しの転生者 ID:+qpx8dGDo
というか死にかけてるのになに行こうとしてんだよ!
534:名無しの転生者 ID:XMsXVGsp+
ウルトラマンの力を抱えたから一人で抱え込もうとしてるのか!? バカヤロォ! なんのための俺たちだよ!
535:超古代の光の転生者 ID:T8iHSnGQA
ウルトラマンは決して一人の力で戦ってきた訳じゃない! 君だって知っているはずだ! 僕がそうだったように、みんなの光がウルトラマンに力を貸してくれる! 守りたい存在がいるからウルトラマンとして戦ってこられたんだ!
536:名無しの転生者 ID:M6QEdnCpT
お前……! まともにエボルトラスターすら掴めてないじゃないか!
537:名無しの転生者 ID:pPMsrmbaD
血の量もやばいが、毒が回ってるのか……!
538:名無しの転生者 ID: aEMY5nMeK
そもそもイッチの肉体は元々がボロボロだった……! そこに腹を貫かれて毒を受けて、吹っ飛ばされたんやぞ。
そりゃあそうなるに決まってる!
539:セブンの息子の転生者 ID:Ze0+RO3s6
>>530
俺一人だとハイパーゼットンに一発当てることすら出来なかった。それでさっきは負けた! サーガになって勝てたのはみんなの力があったからだ!
お前にも仲間がいるなら、信じろ! 人を、人間を!
540:名無しの転生者 ID:/sKDTKM5F
サーガ終わったゼロ転生者……!
原作ゼロがギャラファイで言ってたが、一人でなんでも出来るって思うな! 大事なことが分かってない証だ!
541:名無しの転生者 ID:nqnDQQ6t/
血まで吐いてやがる……
542:名無しの転生者 ID:tj6c4ZgBV
やっぱりネクサスは深夜帯にやるべきじゃねぇか!
543:名無しの転生者 ID:55zsdtQSN
とにかくイッチは休まないと……待てよ、ストーンフリューゲルはどうした!?
544:名無しの転生者 ID:/Wks/l0Kj
確かに毒は無理でも肉体なら回復するはずだが……
545:名無しの転生者 ID:YR5llvsyT
違う、さっきイッチはブラストショットを握ってたんだよ。でも落とした。おそらく力が入らなくなっていて撃てないんやろうけど、無理矢理にでも撃って欲しかった!
546:名無しの転生者 ID:qBdXxW4Aa
というか、さっきのバーテックスといい、スペースビーストといい、何故ウルトラマンであるイッチを集中的に狙うんだ……?
547:名無しの転生者 ID:MdCEZRh6A
ウルトラマンはどちらにしても厄介な存在に違いないからやろ。ぶっちゃけクソ雑魚変身者ならともかく、イッチは勇者より厄介。
548:名無しの転生者 ID:yjGiiDf86
ってやべぇ! 勇者もやべぇ! バーテックスが復活しやがった!
549:名無しの転生者 ID:e4KwBxPkV
ああ、もう! 次々と多いんだよ! 追いつかねぇわ!
550:名無しの転生者 ID:PYm6PConE
イッチが戦わなくてもピンチ! 戦ってもピンチ! どうすりゃいいんだ!?
551:名無しの転生者 ID:9qnpeF1wQ
せめて毒だけでも消せれば……あー思いつかねぇ! グリージョとかがいれば回復出来たかもしれんが、人類や異星人が仮に居たとしても樹海には勇者とイッチしかいないから治療なんて出来ねぇじゃん!
ウルトラマンの世界ではよく呼び起こしてしまった怪獣の状態異常とかは異星人か人類が援護してくれてたのに!
552:名無しの転生者 ID:KLYLDKwyg
それにバーテックスの毒は簡単に消せるとは思えない……!
553:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW
ひとりじゃ……ない?
554:名無しの転生者 ID:104gu154k
そうだよ! お前昭和知ってんだろ!? 昭和トラマンだって時に人類が倒した! 協力した! ウルトラマンを助けた! 特にセブンのキングジョーが有名で分かりやすい例だろ! セブンひとりじゃ勝てなかったし、セブンが居なければ人類はライトンR30爆弾を外していたかもしれない! 例えイッチがウルトラマンになったとしても一人で戦ってるわけでも戦ってきたわけでもないじゃねぇか! 俺たちもいる!
555:名無しの転生者 ID:sXokLvS4w
仲間がいるだろ! 勇者部のみんなは確かに戦うことになってしまったかもしれんが、立派な仲間じゃん!
556:名無しの転生者 ID:fES0/+yTK
動けないんだから無理するな!
本当にしぬぞ!
557:名無しの転生者 ID:De6N16hg7
つーか今のイッチよりみんなの方がつよいわ! 今は自分の心配だけして、耐えろ! 命を決して尽きさせるな!
558:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW
あ、とうごうが……
559:名無しの転生者 ID:6uXsuPpNT
大丈夫だ! 友奈ちゃんが助けてくれてる!
560:名無しの転生者 ID:4sHlxEvVU
いいから無理するなって! みんな言ってんだろうが!
561:名無しの転生者 ID:fnC1Hp56N
あ、でもやばい! 友奈ちゃんは離れてるし風先輩と樹ちゃんも離れすぎてる! あの矢の量は流石に……!
562:名無しの転生者 ID:t6+ITlPDL
まて、動くな!
563:名無しの転生者 ID:4aZEbMxk3
ちょ、マジでなにしてる!?
死ぬ気か!? 死んだら意味ないんだよ!
564:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW
ありがとう。
でも、おとこならだれかのためにつよくなるんでしょ おもいきりまもりぬくんでしょ ころんでも、たちあがる
やくそくしたんだ
いきてかえるって みんないきなきゃ おれも、みんなも。
ここのみんなのおかげできづけた ウルトラマンは決して一人じゃない! 俺は一人なんかじゃない!
いつもと違って心配してくれるのは嬉しい。だけど今回は信じてくれ!
565:名無しの転生者 ID:VX+IodbvY
あああぁあああ! くそっ! どうせ聞かないだろお前ッ!
566:名無しの転生者 ID:3/2zAbZVa
さっきから言ってるのに一向に聞かねぇからな!
567:名無しの転生者 ID:WSiSjgu0P
わかった! こっちが折れるから!
568:名無しの転生者 ID:jICbimKdA
条件はただひとつ! 勇者部のみんなを守ってイッチも生き残る!
569:超古代の光の転生者 ID:T8iHSnGQA
>>564
分かった。なら絶対に帰ってくるんだ。君はここで終わるような人間じゃない! 自分を、みんなを信じるんだ!
570:セブンの息子の転生者 ID:Ze0+RO3s6
アスカが言っていた。『限界を超えた時、初めて見えるものがある。掴み取れる力が』ってな。
そのためにも決して諦めるんじゃねぇぞ!
流れる掲示板に意識を割りながら、いつもとは違って心配してくれる人達に苦笑しつつ、幸せだと感じていた。
「…毒さえ……なけりゃ……な」
気持ちを入れ替え、力を入れる。
朧気だった意識を奥底から引き出すように叩き起し、焦点が合わない瞳を気合いを入れて何とかする。
傷については腹が
それがなければ立てたからこそ、そう呟いてしまう。
「ぁ……! ち……くしょ……!」
起き上がるために拳を地面に着け、力を振り絞る。
徐々に肉体が上がると、真っ赤に染まっているのが見えるが、生きているのなら問題ないと無視して膝立ちになる。
手を地面に伸ばし、探るように動かすとエボルトラスターを見つけ、手にした。
しかし落としてしまい、紡絆は自身の手を見つめる。
手は震えており、力を入れるので精一杯。まともに制御することが叶わなかった。
(あれだけ掲示板で啖呵切ったんだ……約束もした! 死ねない! そして死なせることもさせない……握れないなら、掴めないなら、引き抜けないなら---)
目を閉じ、一気に空気を吸い込む。
あまり時間はかけられないため、目を開けた紡絆は無理矢理立ち上がる。
反動で吐血してしまい、目の下にも隈が出来ていた。
完全に貧血を起こす寸前だが、勇者部のみんなを思い浮かべると、エボルトラスターを見つめる。
もはや引き抜く力など残っていない。変身するに必要なシークエンスを行うことが出来ない。
もしウルトラマンに変身したら戦える程度の力は出せるだろうが、毒に蝕まれてしまった生身は限界なのである。
ならば出来ることはただひとつ---
「おい、ウルトラマンッ! 聞こえてるんだろ! だったら俺に力を貸せ! まだ俺もお前もこんなところで負けていられないだろ!? スペースビーストを倒して、世界を守るためにッ! 俺はこんなところで
それは、限界を超えること。
歯を食いしばり、力を一気に込めてエボルトラスターを掴み取る。
そして紡絆の想いに呼応するようにエボルトラスターが単体で光り輝く。
「勇者部五箇条ひとぉぉつ! なるべく---諦めなああああぁぁい! うおおおおおぉぉぉぉ!」
ただの気合い。
精神的な問題になるが、意味のない根性に過ぎない。
それでも---諦めない勇気、それこそが力へと変換される。
エボルトラスターが眩い光を発し、紡絆の肉体も同じくて輝くと---
『ヘアッ! シュアッ!』
ネクサスへと変身することに成功し、光の球体となって東郷に迫っていた矢を空中で全て消し去り、矢を放つサジタリウスに突撃していくと怯ませる。
それだけで終わらず、光の球体となったネクサスが風たちの傍に降り立つと光の球体のままキャンサーを蹴り飛ばし、光に包まれたまま実体化するのと同時にスコーピオンを掴みあげてスペースビーストにぶん投げた。
飛んで行ったスコーピオンはスペースビースト共々地面に倒れるが、光が完全に晴れると現したのは---銀色の巨人、ウルトラマンネクサスだった。
『ウグァ……ハァ、ハァ……』
しかし即座に膝を着いたネクサスのエナジーコアが、心臓の鼓動に似た音を出しながら点滅を始める。
ネクサスの肉体は銀色のはずなのに上半身はエナジーコアを除く胴体から上に、下半身は太もも辺りまで
徐々にそれが広がっていることから、毒による侵食なのだろう。仮にそれが全身に行き渡ってしまった場合、待つのは当然---死。
「紡絆くん!? どうして来たの!?」
「えっ、紡絆くん!? な、なんで!?」
そして東郷が誰よりも先に驚きから立ち直ると、紡絆に対して怒りの形相を浮かべる。友奈も一泊遅れて気づいたが、心配と不安と驚きを混ぜたような表情をしていた。
『ウッ……!?』
しかしあまり動いていないにも関わらず、ネクサスは胸を抑えて地面に手を着く。
変身してもなお、傷が治るものではない。毒が消える訳でもない。
「ちょ、ちょっと紡絆……でいいのよね! あんたなにしてんのよ!?」
「苦しそう……。無理しないでください……!」
『…………デヤッ』
足に力を入れてネクサスが起き上がると、首を横に振ってから平気というように頷く。
明らかに疲労したような息遣いから大丈夫ではないと分かるのだが、引く気はないとネクサスはバーテックスとビーストを見据えて構える。
中腰ではなく、腰を深く降ろした構え。
『シュワッ!』
「ちょっと!?」
「ま、待って紡絆くん!」
ネクサスが構えたかと思うと、まさかの突撃。
風が思わず声を出し、東郷が静止の声を挙げるが、ネクサスは走り続けている。
周囲に胸の、エナジーコアの点滅音を響かせながら。
「ど、どうしよう……」
「と、とにかく! 私たちも行かないと! ですよね、風先輩!」
「ああもう、あのバカ! 後で覚えておきなさいよ! 友奈の言う通り、各自バーテックスと新しく出てきた敵、スペースビーストに気をつけつつ紡絆---ウルトラマンを援護するわよ!」
「「「了解!」」」
やることは決まったと風の指示に反駁することなく返事をすると、既にグランテラに向かって飛び蹴りを放っているネクサスに追いつくために動き始める。
『フッ! ガァッ!?』
しかしネクサスの蹴りはグランテラの鋏に叩き落とされ、首を挟まれて持ち上げられる。
抵抗するように足で蹴りを入れていくが、あまり効いた様子がない。
グランテラの強固な外骨格がダメージを削減させているのもあるが、ネクサスの肉体に毒が回っていていつもより力が出てないのもあるだろう。
そして再びグランテラの腹部が開き、六門の気門を展開するとエネルギーがチャージされる。
『キィィィィ!』
『ヘアッ!? グァ……ファッ!』
アームドネクサスのエルボーカッターで掴まれている鋏を攻撃して外すと、即座に横に転がる。
瞬間、そこから六つの火球群がどこかへ飛んでいく。
さらにキャンサーが板を叩きつけるようにネクサスへ送り、挟み込むようにスコーピオンが長い尾を振りかぶる。
『グッ………!』
挟み込まれたネクサスは両側を見るが、どうやっても避ける事は不可能。
少しでもダメージを減らすように迫り来る攻撃に両腕でガードしようとして---
「おりゃあああああ!」
「はあああぁぁぁぁ!」
その攻撃を、友奈と風が弾き飛ばす。
さらに樹のワイヤーが伸び、反射板が地面へと突き落とされ、東郷のライフルがスコーピオンの尾を半分破壊する。
「大丈夫ですか!?」
『シュア……ヘェアッ!?』
驚いたようにネクサスが樹を見て、みんなを見る。
しかしネクサスは火球群が
「わっ、いつの間に! 紡絆くんありがとー!」
「おお……凄い力ね。というかあんた、さっきより体紫になってない?」
緊張感の欠けたお礼を手を振りながら言う友奈と、ネクサスの異変に気づき始めた風。
ふとネクサスが自身の肉体を見ると、いつの間にか肩にまで行きそうなほどに侵されており、紡絆は肉体が苦しくなってきたのも感じる。
それを気合いで押し殺しつつ構えるが、先ほどよりも何処か苦しそうだ。
「……紡絆先輩? そういえば、音が一層早くなったような……」
『ヘ……ァッ……!』
徐々にネクサスの異変に気づき始めるものが出てくると、ネクサス自身も急ぐようにグランテラに向かって殴り掛かり---
『ウアァ……!? アアァ……!』
『ピィィィィ!』
体の自由が悪くなると足が止まった状態で目の前で空振り、片膝を着いてしまう。
それも、グランテラの
その隙は大きく、グランテラは容赦なくネクサスの肉体を思い切り蹴り飛ばした。
『グッ…アアッ!?』
「ッ!? やっぱり!」
大きく吹き飛ばされたネクサスを見て、追撃をさせまいとライフルでグランテラの妨害をするが、東郷は何かに気づいたように声を挙げ、みんなに通信を繋げた。
「東郷?」
「みんな、よく聞いて! ウルトラマンのあの音はおそらく危険信号! それが止まったらどうなるか分からないけど、悪いことなのは確かだわ!」
「危険信号? 信号って……アレ?」
「赤……信号……。じゃ、じゃあ危険を暗示してるってことでしょうか?」
東郷からの報告で友奈が思い浮かべたのは道路などにある信号だが、それもあながち間違っていない。
交通機関において、赤信号とは停止や危険を警告する意味がある。しかしこの場にて適切なのは、樹が言った『危険を暗示している』ということ。
つまり、東郷の『悪いことは確か』という言葉はそれの的を得た考えである。
「大赦はこれを知っていた……? いえ、今は目の前のことね。こうなったらウルトラマンの危険信号が止まる前に早く封印するしかないか!」
「で、でも手強くてッ! 難しいです!」
防御にも使えるのか、反射板が友奈の攻撃を防ぐと、そこに大量の矢が飛んでくる。
樹のワイヤーと東郷のライフルがサジタリウスを攻撃しようとすると、グランテラが間に入って防御。
さらに再生したスコーピオンの尾による一撃が暴れ、連携の取れた攻撃に苦戦を強いられてしまう。
苦戦する理由は、間違いなくグランテラ。
グランテラが居なければサジタリウスに攻撃が当たり、キャンサーとスコーピオンを相手にするだけで戦えただろう。
グランテラの装甲が薄ければ、妨害を防ぐことは出来ただろう。
そもそもグランテラが出てくることがなければ、封印は可能だった。
つまり、グランテラさえ現れなければこの時点で勝つことが出来た可能性が高かったのである。
しかもネクサスは傷を負っていて、今も
仮にネクサスがバーテックスかグランテラを抑えることが出来ていたら、この時点で勝つことも出来たかもしれない。
しかし、それは不可能。毒と貫かれた痛みを引き継いでるのか、ネクサスの動きも正直現れてから芳しくない。
『ピイィィ……ガアアアアアアッ!』
そしてグランテラが両手を合わせる。そこから雷のようなエネルギーが帯電し、青白い光球が作られた。
その青白い光球を獣のような鳴き声と共に発射する。
「えっ!?」
「な、なんでそっちに!?」
樹と友奈が驚きの声を挙げる。
理由は単純明快。
グランテラが放った青白い光球は樹や風、友奈に東郷、四人に向けられたわけでも予測したように狙ったわけでもない。
「一体どういうこと……? あたしたちは無視?」
風も思わず止まって怪訝そうにするが、青白い光球は
速度が落ちることなく、ただ真っ直ぐ。
そして東郷も疑問を感じたのか、スコープで
「ハッ!? 不覚ッ! 風先輩、友奈ちゃん、樹ちゃん! 狙いは私たちではなく、本元! つまり神樹様です!」
そう、その先にあったものは神樹様の樹木。
破壊されれば人類が滅びる場所であり、グランテラは
東郷の言葉に全員が息を呑むが、今追ったところで勇者の身体能力でも追いつけない。
ならば自分が撃つしかない、と東郷が狙うが、放たれた青白い光球は位置が離れているのもあって、予測して撃ったところで弾道が過ぎる前に通り過ぎてしまう。
「やばっ……!」
勇者部の全員が
しかし、誰かを忘れているだろう。神樹様の近く、そこには---
『ハアァッ!』
ネクサスがいることに。
フラフラな状態で立ち上がったネクサスが神樹様の前に立ち、両腕を突き出す。
すると水面に生まれる波紋のような、青色に輝く円形状のバリヤー、サークルシールドによって青白い光球は完全に防がれた。
危機一髪。ネクサスの背後には神樹様が存在しており、もし居なければ破壊されていただろう。
それを見た勇者部の一同はほっ、と胸を撫で下ろした。
「ナイスよ紡絆!」
「助かったぁ……」
「無駄よ、やらせない!」
犬吠埼姉妹が思ったことを口に出すが、安心している暇などない。
ネクサスに向かってサジタリウスの抗のような矢が発射され、東郷のライフルが破壊する。
スコーピオンが神樹様の方へ向かおうとしたところで、友奈がスコーピオンを殴ることで向かわせず、すぐに風と樹も反射板とともに移動しようとしていたキャンサーを大剣とワイヤーによる攻撃で阻止する。
だが、残ってしまったグランテラが六門の気門から砲撃し、再びネクサスの元へと飛んでいく。
すぐに東郷が狙って射撃するが、消せたのは二発のみ。
残りの四発を東郷は行かせてしまった。
「外したッ……!」
「紡絆くん、気をつけて!」
『フッ!』
悔しそうに唇を噛む東郷と警告する友奈。
その声に反応するように、再びサークルシールドを貼り---
『ヘエエッ!?』
サークルシールドが、
愕然とした声のようなものを出しながら両手を見るネクサスだが、エナジーコアが凄まじい速度で点滅を始め、両腕まで
---ウルトラマンとしてのエネルギーが、戦う力が残っていないのだと。
そして動転としているネクサスに容赦なく向かってくるのが、四発の火球。
避ければ世界が終わる。避ければ人類の敗北。避ければ神樹様が死ぬ。避ければ全てが終わってしまう。
避ければ、助かる。避ければ、無事に済む。避ければ、痛くない。避ければ怖くない。
『ウァァアアアアァァ!?』
両腕を広げながら、
自身の肉体を守るのではなく、神樹様に被弾させないように両腕を広げることでより守れる範囲を増やし、次々と増えた火球がネクサスの肉体を一気に傷つける。
『ウグゥ……ハグッ……! グァッ!?』
放たれると、着弾。
着弾すると、追加。
そうやってネクサスの体はただ火球を受けるだけだ。
(や、やばい……このままじゃ意識が……消え---)
『キィ---ピャアアアァァァ!』
ネクサスの目の光が消えていく。
ダメージを過剰に負い、意識が消えてきているのだ。そんなネクサスに対し、グランテラはトドメの一撃を作り出した。
一回り大きい青白い光球を作り出し、全力を注ぎ込んだように用意されたその光球は、勇者たちが行動する前に放たれる。
凄まじい速度で発射された光球はあっさりと通過し、ネクサスの腹目掛けて一直線に飛んでいく。
光球が当たる直前---
『ア……アァ……。グッ……』
ネクサスの目の光が消える。
ただ、ただそれでも両腕を広げることはやめず。避けることもせず。
(くそっ……。俺は…………絶対………諦め………な…………ぃ)
ついに、紡絆は掲示板からの色んな言葉を掛けられながら、意識が途切れた。
そして、ネクサスの肉体が爆炎に包まれる---
「いつつ……あれ?」
紡絆が目を覚ますと、背中には土と葉っぱがあり、周りには木々がある---森林に居た。
空は曇り空なのか、暗い。
そんな中を見渡すが、樹海らしき場所はどこにもなかった。
紡絆は先ほどまでは樹海の中に居たはずで、疑問に思いながらふと自身の腹に触れた。
本来ならば、ボロボロで血が付着しているはずの服と大量出血しているはずの腹。
しかし
「治ってる……? 死んだ?
毒もないからか苦しくないし……それじゃ世界は……いや、おかしい」
死後の世界ならば、傷も毒もないのは納得出来る。
だが、何故森林なのか。何故
「でも確か、あの世でも掲示板は使えていたはず……。
襲来編前に死んだから元気玉と界王拳の修行してるわ、とか言ってる人や人間の『徳』を集めてる人とか斬魄刀と修行してる人とか閻魔大王の第一補佐官の人だって使えてたしなぁ」
ならば掲示板は使えるはずなのだが、何故か使えない。
試すように起き上がって近くの木に触れてみると、自然そのものだったり触れることも出来る。
つまり、紡絆の肉体は霊体という訳でもないのだろう。
しかし掲示板を使えないとなると、ここが何処なのか相談することも出来なければ何も話すことが出来ない。
「うーん……そもそも、何をするべきなんだ?
あの強そうな光球が当たる前に意識消えたから……分からないよな」
何故自分がここに居るのか分からない紡絆は唸りながら悩む。
最後に覚えている記憶。紡絆の中には光球が目の前にあったのと、掲示板で心配されながら文句や罵られていた記憶しかなかった。
「多分連れてこられた……? もしかして、ウルトラマンの力か?
っと、エボルトラスターは……あるか」
推測の域でしかないが、推察しながら慌ててポケットを探ると、エボルトラスターはしっかりあったが、スペースビーストが現れたら必ず鳴る鼓動はしていなかった。
そのことから、ここは別の空間だということが嫌でも理解でき、グランテラが存在せず、勇者部のメンバーは今も戦っているかもしれないと気づくと、焦りが生まれ、忙しなく周囲を見渡す。
が、見渡しところで変わるわけでもなく、森林だ。
「あー! どうしたらいいんだよー!」
すっかりと肉体が元気になったため、紡絆は胸の内を打ち明けるように叫ぶと---
「きゃあああぁぁぁ!?」
「ッ!? スペースビーストか!?」
爆発音が聞こえる。
一人ではなく、最初に響いた悲鳴から次々と悲鳴が聞こえるようになり、紡絆は
「うわあぁぁぁぁあ!?」
「きゃああああぁぁぁ!」
「うわぁ!」
紡絆が全力で走り、悲鳴が聞こえた位置へと無事に着いた時。
紡絆は目の前に広がる光景を見て、呆然としてしまう。
「なっ……どういうことだ……!?」
銃弾が蔓延り、爆発が起きる。
悲鳴は人間のもので、目の前で幾多と言えるほどの人間が
比喩ではなく、死んでいっているのだ。次々と同じ種族である人間が放った銃弾が人間に当たり、爆発に巻き込まれ、呆気なく死んでいく。
その光景はまるで---
「戦争……!? どうして戦っているんだ!? この世界はもう、そんなことしてる場合じゃないだろ!」
銃を持つ兵士に近づき、すぐに民間人を守るために銃を蹴り飛ばす---はずが、すり抜けてしまう。
「はっ……?」
どういうことか、と手を伸ばす。
そこへ銃弾が飛んできたことに気づいて痛みに耐えるようとするが、それすらもすり抜ける。
驚いてる暇もなく、すり抜けた銃弾が民間人と思われる者たちに直撃し、鮮血が噴き出た。
しかも伸ばした手は兵士らしき人物をすり抜け、肉体ごとすり抜けて通り過ぎてしまう。
「クソッ!」
分かってはいる。
しかし行動に移さずには居られず、守ろうと両腕を広げるが、防げない。
肉体を通り過ぎ、また一人と死者が出てしまう。
この場で自身が何の役にも立たないと知ると、紡絆はギリッと歯を噛み締めることしか出来なかった。
手にあるエボルトラスターを使えば、何かが出来るかもしれない。それでも、紡絆は決してウルトラマンになることは選ばなかった。
ウルトラマンの力は、あくまで怪獣やスペースビースト、バーテックスなどといった超常のものと戦うための力であり、人間同士の争いにウルトラマンとして介入するわけにはいかないと知っている。他にも彼自身が使うことを認めておらず、行使する気など一切なかった。
だが、そんなことは関係ないと紡絆の周囲に爆発が起きながら、人の死体が作られていった。
「---! ---!」
その時、紡絆の耳には幼さを感じさせる声が聞こえ、周囲を見渡した。
視線を張り巡らせていくと、紡絆のちょうど背後に声の主はいて、声の主は一人の少女だった。
着てる服からして、日本ではない異国の少女。
何故四国以外に滅んでいるはずなのに、異国の少女がいるのか紡絆は気になったが、今は気にしていなかった。
そして少女はまるで
身を屈ませながら爆発による音を耳を抑えながら、怖いだろうに誰かを探す少女を見て、紡絆は即座に動く。
「こっちに来ちゃダメだ! 逃げろ!」
「
紡絆の警告は聞こえてないのか、少女は大声で名前らしきものを呼びながら探し、ふと探していたものを見つけたように笑顔を浮かべた。
「ジュンー!」
そして、少女が爆発に巻き込まれてしまう。
「
一人の、
「……変わった?」
一体なんなのか理解出来ないまま、紡絆は青黒い空間に居た。
そこは、初めてウルトラマンと出会った空間。
紡絆が空間を見渡すが、ウルトラマンは何処にも居なければ現れる様子はない。
そこで、何らかの気配を感じとった紡絆は背後に体を向けながら見た。
そこには---
「---俺は人が生きる姿を、その意味を、撮りたかった」
「……ッ!?」
黒いタンクトップらしきものの上に革ジャンを着た一人の男性が紡絆と
「だが俺が撮ったのは、人々の死ぬ瞬間だった……。戦場に巻き込まれ負傷してしまった俺を懸命に治療してくれたセラという孤児の少女……」
深く後悔しているような、感情が深く籠った声と悲痛な面持ち。
「妹のような存在だった……俺は取り返しのつかないことをしてしまった。カメラマンとして戦場を撮りにいった俺を探しにきたセラは目の前で爆発に巻き込まれ、亡くなってしまった」
「……そう、だったんですね。さっきのは俺じゃない……貴方の記憶、ということ……」
そんな目の前の男性の言葉聞いて、紡絆は理解した。
何故人に触れることが出来なかったのか? 何故銃弾が自身に直撃することなくすり抜けたのか? 何故爆発が効かなかったのか? 何故声が届かなかったのか? その理由は、目の前の男性の
記憶の中を追体験しただけ。
目の前の男性の過去の記憶ならば、それは紡絆に干渉することは出来ない。
なぜなら
既に終わった出来事を、変えることは出来ない。仮に出来たとしても、変えてしまえば歴史そのものに大きな異変が起き、未来が消えてしまうかもしれない。
未来で出会う人々との関わりですら、なくなってしまうのだから。
だからこそ、どちらにしても干渉することは許されないのである。
紡絆の考えを肯定するように、男性は一瞬だけ紡絆へ視線を送ると、小さく頷いた。
「日本に帰国した後、俺の写真は評価されてしまった。セラが、爆発で命を失う瞬間の写真が……」
「……ッ」
紡絆にも、気持ちは分かる。
例え彼が
目の前の男性と紡絆では出来事は全くと言っていいほど違うが、自身を支えてくれた大切な人の死というものは理解出来ており、さらに追い打ちをかけるように写真が評価されたと語る彼の言葉に紡絆も胸が痛くなった。
同情かもしれない。だが、分かってしまうのだ。
その辛さを。
自分に置き換えるだけで、痛みを受けてしまうのだ。
「俺はセラに導かれ、光の力を得た。そして誰かを救うために戦い続けた……力を与えられたこと、それが俺に対する罰だと思ったから。
………光を得た意味を探していた俺はボロボロに傷つき、一人孤独に死んでいくことが、せめてもの罪滅ぼしに違いないと、俺の贖罪だと思っていたんだ」
似ていた。
戦う理由も、力の意味も、全て。
目の前の男性は贖罪だと思い、紡絆はヒーローという存在で知っていたからこそ、ウルトラマンの力を与えられた自分が一人でやらなければいけないと、自身の家族のように
「君は、何のために戦う?」
「……えっ?」
「俺は罪滅ぼしだと、戦っているモノを宿命だと思って戦っていた。君は何のためにその
突如真っ直ぐ見つめられながら聞かれたことに疑問の声を挙げると、男性は再び問いかける。
即答出来る答えを持ち合わせていない紡絆は悩み---思い出す。
「最初は……怖かった。世界が壊されるかも、日常が壊されるかもしれないって。
俺の居場所が、大切な人たちに被害が行くんじゃないかって。
そうなるくらいなら、俺が戦うと。でも……その人たちは戦う力を手にした。してしまったんだ。俺が守る必要がないくらい、強い力を。
だから今は……家族を、妹を死なせてしまった罪滅ぼしとして俺は……」
暗い面持ちで語る紡絆。
今まで溜め込んできた、自身の悩みと、後悔を語るように。
その答えを聞いた男性は、紡絆に親近感のような感情を覚えつつも、諭すように口を開く。
「その
「俺の……本当の、想い?」
反芻しながら呟き、苦悩する紡絆に、男性はかつて自身が言われたことを寸分の狂いもなく伝える。
「その力は、遥か昔から長い時を超え、多くの人々に受け継がれてきた。時には大切なものを失いながらも、何かを守るために必死に戦ってきた力だ。
俺もそうだった……そして、君も選ばれたんだ。光の継承者として」
「そのような、力が……?
でもっ! それなら益々俺に資格なんて……!
家族を、救えなかった……俺が……」
ない、と口に出すことまではしなかったが、家族という死は紡絆を想像以上に苦しめている---いや、今まで出してこなかったからこそ、溢れ出てしまっているのだろう。自身を責め続けてもなお、誰にも心配かけさせないために、押し殺してきたのだから。平気だと、大丈夫だと貼り付けた笑顔で、自分のことで誰かを悲しませないために。
そのことを目の前の男性は理解しているように口を開く。
「俺がセラを失ったように、君も家族を失ったんだろう。だが、俺が
過去は変えられないが、未来なら変えることができる」
「生きていた、証……。
変えることができる……未来」
「改めて聞くが……君は本当は何のために戦う? その力を、どう扱いたいんだ?」
「………」
言われた言葉を心に仕舞いながら、紡絆は俯いた。
自身の胸に手をやり、その気持ちを引き出すように。
数秒にも満たぬ間、男性はただ見守り続けるだけだったが、紡絆の瞳を見て確信を得たように笑った。
何故なら紡絆の表情と瞳は
そんな紡絆が口を開く。
「そうだ、俺は家族を救えなかったからこれ以上誰も傷つけさせないために背負うべきだと思っていた。ウルトラマンの力を引き継いだ俺だから、一人でやらなくちゃいけないと。みんなが強大な力を得たとしたって関係なかった。
俺は……本当にバカだ……ッ!」
「…………」
紡絆が懺悔するように述べるが、目の前の男性は何も言わない。
ただ見守る。まだ幼い、未熟な熟していない一人の少年の姿を。自身に似ている少年の姿を。
「だけど、もう迷わない!
俺が誰かを助けてた理由なんて、そんなのなかった!
困ってる人がいて、力を貸したらその人が笑顔になった。嬉しそうにしてくれた。
それだけで満足だったから、人助けしてきたんだ。
見返りなんていらなかったし、今だって変わらない!
この力は、俺はこの光を、世界を守るために。
みんなの幸せや日常を守るために使いたいんだ! 大切な人々を守るためにッ!! 今度こそ守りたいからッ!!」
---ドクン。
紡絆の想いに応えるように、再度エボルトラスターが鼓動を始めた。
紡絆が思わず視線を向けると、いつでも行ける、と言われたような気がした。
「それでいい、紡絆。キミはこれからも戦うことになるはずだ。それでも、闇に惑わされるな。怒りに支配されることなく、光を信じるんだ」
「……はい! あ、そういえば貴方は……」
迷いなく、明るい返事で返す紡絆だったが、名前を知らないことに気づいて、すぐに聞こうとするが、目の前の男性の姿が光になっていた。
「……姫矢…准」
一瞬名乗るか迷ったようにズレがあったが、その名を聞いた紡絆は驚く。
その名を、紡絆は知っているからだ。
「姫矢……さん。貴方が、そうだった……んですね。
あの、ありがとうございました! 本当に、貴方が居なければ俺はもう戦うことなんて出来なかったかもしれない。仮に戦えても、一人で背負い続けて死んでいたかもしれない! 貴方のお陰でこの光の意味を、戦う理由を、俺の戦う本当の想いを見つけれました!
大切な人たち---同じ部活の勇者部っていうんですけど、俺は彼女たちも守ってみせます! 今度は対等な関係として!」
だんだんと肉体が見えなくなってきているのを見ると、紡絆は慌てて感謝と自身が出した答えを早口で告げる。
目の前の男性---いや、姫矢はそれを聞いて安心したように頷いた。
「俺も孤門やナイトレイダーという組織に助けられたことがある。同じくして戦ってくれる人たちであるなら、紡絆を支えてくれるはずだ」
「はい……」
「最後に、俺から言えることは一つ---」
そう口を開こうとしたところで、姫矢の肉体は
「姫矢さん……!? あ、ちょ、こっちくる!?」
赤い粒子となったものは赤い色の光へと変換され、紡絆の肉体の中に入っていった。
『紡絆。光は……絆だ。誰かに受け継がれ、再び輝く』
突如肉体へ入ってきたことには驚くが、紡絆は脳裏で満面の笑みを浮かべながら
数秒ほど下げていただろうか---頭を上げた紡絆は決して折れてなどいない瞳でエボルトラスターを見つめ、目の前を見つめる。
「行こう、ウルトラマン。みんなと世界を守るために」
紡絆の目の前には、ウルトラマンネクサスが居た。
手元のエボルトラスターは無くなっており、ウルトラマンが実体化したのだろう。
その姿に、今度は紡絆から手を伸ばす。
迷いはなかった。悩みはなかった。一人で抱える、背負おうとする気持ちもなかった。もう全て、吹っ切れていた。
あるのは、後悔しないように、大切な人々を今度こそ守るという気持ち。
仲間がいる。
普段はふざけたり殺意をぶつけてくるが、
なにより、自身に力を授けてくれて、共に戦ってくれる
「君は力なんかじゃない。俺の大切な相棒だ。また、力を貸してくれるか?」
いつもの、一番似合う笑顔をウルトラマンに向けると、ウルトラマンは一つ頷き、今度はウルトラマンが紡絆の手を掴んだ。
その瞬間、再びウルトラマンネクサスとして紡絆は飛び出した---
神樹様の近くで、大爆発が起きる。
樹海化が解けることも、何も変化がないことから神樹様が無事だと言うことは誰もが理解していたが、それはつまり、ウルトラマンが、紡絆が肉体で受けたということになる。
ボロボロの状態で、毒に侵食されつつある状態で。
「まさか……紡絆ッ!」
「紡絆先輩!」
「紡絆くん……。約束したなら守ってよ……!」
「……ッ。だ、大丈夫! だって、紡絆くんだもん! いつものように無事に帰ってくるよ! だから私たちは今何とかしないと!」
爆炎で見えないが、一向に姿を現さない姿に
みんなを励ますように、信じようというように。
「……でも」
「東郷さんと約束したんでしょ? 紡絆くんは約束を破るような人じゃない!」
「友奈ちゃん……そうね。私たちが信じないと」
何処までも前向きで、何処までも明るくて、何処までも元気いっぱいな友奈は東郷に言ってのけた。
その姿を見た東郷は頷き、風と樹にも通じたのか、笑みを浮かべた彼女たちはバーテックスとグランテラにそれぞれの得物を構え、そして---
『ハァァァァァァ……』
声が響く。
その方向は、爆炎の中。
決して大きな声ではないが、友奈や東郷、風や樹、さらにはバーテックスとグランテラですら戦うことをやめ、その爆炎の中を見る。
『ハァァァァァァァァァァ---シュアッ!』
そして、全身が紫になりかけていたネクサスが姿を表し、胸のエナジーコアから眩い輝きが発せられる。
その光はネクサスの全身を覆い、誰もが光に目を奪われた。
720:名無しの転生者 ID:P0HTOoOUx
生きとったんか! ワレェ!
721:名無しの転生者 ID:WCoZeWOOW
この輝きはまさか!
722:名無しの転生者 ID:xJ4RAmWh4
ようやく来たか……!
723:名無しの転生者 ID: OX82Ln2AK
間違いない! コアファイナルだ!
秘められた力を解放するジュネッスにはないアンファンスにしかないとされている技!
『シュッ!』
光り輝いた肉体が晴れると、現れたのはネクサス。だが、侵食されているように紫色になっていたはずが全て消え去っており、なおかつ姿を変化させた姿。
肩には鎧の肩当てのような板状のパーツがあり、胸のエナジーコアの中心には新たに生まれた半球状の発光体、
だが何よりも、ネクサスの肉体が銀色のみでは無くなっているのが特徴的だろう。
爆炎から出てくるその姿は銀色だけではなく、銀と比率の高くなった黒と赤。
英雄の力を纏いし姿だ。
774:名無しの転生者 ID:2joYgcZDh
ウッソやろ!? 姫矢ジュネッスやんけ!
775:名無しの転生者 ID:c7u0ByTBd
やっぱりジュネッスはかっこいいですねぇ!
776:名無しの転生者 ID:SmITD/l45
勝ったな、風呂入ってくる
『デェヤアアアアアッ!』
瞬間、ネクサスが力強さを感じさせる動きで走っていく。
誰よりも早く気づいたグランテラが六門の気門から火球を放つが、堅実な戦い方へと変わったネクサスはアームドネクサスでかき消し、火球が消えると空を飛んで凄まじい速度でグランテラを蹴り飛ばした。
『ハアァァ……へアッ!』
さらに仕返しと言わんばかりにスコーピオンの尻尾を完全に切断して踏み砕き、腹目掛けて前蹴りで吹き飛ばすと、キャンサーの反射板を
さっきと打って変わって、明らかにパワーアップした姿に目を奪われていた勇者部のメンバーはすぐに近づいた。
「わあー! 紡絆くん! かっこいい! なにその姿!?」
「友奈ちゃん……掛ける言葉を間違えてるわ」
「良かった……無事だったんですね」
「まったく、帰ったら説教だかんね! あとうどんを奢りなさい!」
『ヘェ!?(なんで!?)』
まともな言葉が大してきてないが、いつもの勇者部だと紡絆は安心しつつ、樹の言葉だけ嬉しく感じていた。
そして部長である風の言葉には思わず驚くしかなかった。
「そりゃ心配させたのと無理をした罰、あとはウルトラマンということを秘密にしてたからよ」
「紡絆くん、私も許さないから」
「あはは、えっと……ご馳走になります?」
「あの……頑張ってください……」
『フエエェ……』
言葉には出てないはずが、恐らく雰囲気や驚くタイミングからして予想されたのだろう。
何も言い返せない風の言葉と、怖くなってきた東郷の笑顔。味方だと信じていた友奈と樹にですら見捨てられ、紡絆はネクサスの姿でため息を零し、紡絆として笑みを浮かべた。
「まあとにかく! 何だか分かんないけど紡絆もパワーアップしたことで、バーテックスとスペースビーストを一気にやっつけるわよー!」
「今度は守るわ」
「がんばろー!」
「わ、私も頑張ります……!」
『デアッ』
それぞれ投げられる言葉にネクサスがこくり、と頷くと、復活したバーテックスとグランテラを見据えた。
『シュアッ! ハアアアァァァ---』
ネクサスが左腕を上にして右腕を左側に持っていき、十字を作るようにアームドネクサスをクロスする。
すると手首に青い輝きの粒子が纏われ、弧を描くように大きく右腕を回しながら左腕もあとから体ごと右側へと捻り、右腕を少し後ろの方から胸のエナジーコアの傍で拳を上にしながら固定すると左手を腰に止める。
『ハアッ!』
エナジーコアの傍で固定した右腕を掲げ、見上げるのと同時に青く輝く光線を空高く撃ち上げた。
手首に纏われていた輝きが消え、樹海の空へ向けた光線が継続することなく消える。
瞬間、消えたと思われる箇所から花火のように拡散。黄金の雨のように光が降り注ぎ、
さらに地表からは水泡のような光が立ち昇っていた。
「え!? またなんかあるの!?」
「なになに!?」
「これは……結界?」
「あたたかい……」
光に包まれた風と友奈が驚き、少し驚きながらも冷静に観察する東郷、そして光の空間から感じたことを口に出す樹。
そんな勇者たちだが、またまた驚くことになる。
先ほどまでは樹海に居たはずなのに、今度は真っ赤な荒野へと変貌していたからだ。
「いや、何処よ!?」
「太陽などもないですね……」
「よく分からないけどなんかすごい!」
「あ、あれ? さっきまで樹海にいたはずなのに……でも、綺麗」
非現実的なほどに、青が濃すぎる空にオーロラのような光が満ちている。
太陽もない、月もない、星もない、なのに明るい世界。
砂の無い、結晶が埋められた赤土が敷き詰められたかのような、真っ赤な荒野。
これこそが、ネクサスの代名詞といえる技。
その能力によって作り出される
その世界はウルトラマンの身体そのものから作り出され、ウルトラマンの身体を構成する物質の組成と同じものでできている異空間であり、簡単に言えば
展開中は維持するために命を削る必要があるが、その分ウルトラマンの力を強化する空間でもある。
なおかつ、この世界ならば樹海が一切傷つけられる心配がないという凄い力だ。
「あれ? なんだかさっきより力が出てくるような……」
否、それは勇者の力すらも強化する。まさに
そう言えるだろう。
「よーし! 行くわ---」
『ファッ!?』
風の掛け声が、ネクサスの驚愕の声に掻き消される。
邪魔をしてきたネクサス、というよりは紡絆に視線を送る風だったが---
「風先輩……あれ」
「あれって……ブラックホール? みたいなやつ?」
「え、えぇええ!?」
気づいた東郷が風に呼びかけると空へと指を指し、友奈はどう表現するべきか分からずに首を傾げ、樹は信じて驚く。
「なに……はあぁぁぁ!? 紡絆、どういうこと!?」
『……ジュワ?』
風の言葉に分からないと言うように首を傾げるネクサスだが、変化が訪れる。
世界が変わり、メタフィールドと見た目的にはほぼ同じだが、空の色は赤黒く、不気味な光が不規則に明滅しているだけではなく不浄な空気と汚染された大地の世界へと変わった。
それを---
『フンッ!』
『シェアッ!』
ふと飛んできた紫の光弾を、ネクサスがパーティクルフェザーで相殺する。
まるで
820:名無しの転生者 ID:Ne+W1B2cy
いや、この世界の難易度頭おかしすぎん?
821:名無しの転生者 ID:cBDC1WXkZ
あのさぁ……ザギさんなにしてんの? お前強化形態出たばかりなのにそれは卑怯だろ!
822:名無しの転生者 ID:7noJ1zhjC
気をつけろ、イッチ! ファウストは意外と強い! それにダークフィールドに塗り替えられても維持する負担はイッチとかいうクソ仕様だ! ナーフしろ!
823:名無しの転生者 ID:OX82Ln2AK
アレはダークファウスト! 闇の巨人と言われるウルティノイドでEpisode.07からEpisode.12にまで登場して姫矢准を苦しめた巨人だ!
そしてイッチのメタフィールドを塗り替えたのはダークフィールドGと呼ばれる力! アンノウンハンドのみが展開するもので、スペースビーストを強化するだけじゃなく、再生や進化を促進させる厄介な空間!
824:名無しの転生者 ID:lHq/JCJJr
さらっとザギさんいること確定しましたね……
『私はファウスト。光を飲み込む、無限の闇だ……』
『……シュア』
ファウストと名乗ったウルトラマン---いや、
ファウストを見て、ネクサスはただ何も言わずに拳を構えた。
「……頭痛くなってきたわ」
「あれもウルトラマン?」
「……敵でしょうね」
「なんだが、怖いです……」
「ええい、もう知るか! とりあえずぱぱっと終わらせてうどん食べるわよ!」
ヤケになるように叫び出した風の言葉に、ネクサスを含めて勇者部全員が頷いた。
〇継続紡絆/ウルトラマンネクサス
記憶失ってるのに人助けしてた変態。
けれど家族が宝物で支えでもあったという。
無理し続けたせいでエネルギー切れを起こしたし『一人でやらないと』と思っていたが、色んな人たちの声でついに覚醒。
コアファイナルによって毒
今の彼は、(光の意味も見つけたし迷いも重圧もなくなったしジュネッスになったし)馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前(天下無双)
〇友奈ちゃん
実はクッソメンタル来てるくせにみんなを励ましてた子。
不安で仕方がなかったという。
〇東郷さん
無事なのには安心したが、流石に無理してまで来たことでお怒り中。
〇風先輩
頭こんがらってきたけど、とりあえずうどん奢らせることで解決。
〇樹ちゃん
紡絆の癒し。
てっきりダメかと思っていたが、無事だったことに凄い安心していた。
〇
本人が直接来た訳ではないが、一応レジェンド出演。
ノア様の記憶と力の残留(最終回のようなやつなので一応本人でもある)で似た境遇を持つ紡絆を(自身の過去を見せることで)導いた。
本質も伝え、彼の
ちなみに、サブタイトルは彼と紡絆、東郷を掛けたものである。
〇ファウスト
プロット消失で悩んだが、出した。
中身……いらなくない? それともいる?(地獄への誘い)
〇ダークフィールドG
は? (グランテラの防御力あったら勝手に毒で死ぬと思ってたのに)なんで生きてんの? (まあ、正体知らんだろうからバレへんし)妨害しよ
こっそりガルベロス(死体)回収していたりする。
▼誰でもいいからくれてもええんやで質問
Q. 紡絆君に対して
A.友奈ちゃん→自身に似てるし互いの性格故に凄い気が合う誰よりも仲のいい異性。時々ドキドキさせられる部分がある。
東郷さん→ほんへ通り。
風先輩→頼りになるしふざけあえる後輩だが、助けられる部分も多い。しかし無茶する部分はやめて欲しい。
樹ちゃん→当初会った時は異性なのもあって苦手意識が高かったが、今では全然問題なし。むしろ……
(一旦入る)日常編♡
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友奈ちゃん
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東郷さん
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風先輩
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樹ちゃん
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???(残る一人のメンバーの人)
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うるせぇ! 全員やるんだよっ!