【悲報】気がつけば目の前に知らない遺跡があるんですが…【なにこれ】   作:絆蛙

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な、何とか間に合った……。本当は全員やりたかったんですけど、文字数的な意味でも一人が精一杯でした。
一応言っておきますけど、恋愛系書くのが苦手な割に頑張ったんです、はい。
誰か参考に出来るほどのおすすめの恋愛小説知りませんかね……?




「-説明-ディスクライブ」

◆◆◆

 

 第 9 話 

 

-説明-ディスクライブ

 

×××

 

日常編その①

東郷美森編

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

説教という名のものでこってり絞られた紡絆だが、彼は今、勇者部の部室で真剣な表情を作っていた。

前日言った通り、自身の持つ力について説明するからだ。

彼は僅かながら緊張を漂わせる。それは伝染したのか、紡絆が黒板の前に立ちながらみんなを見渡しても、誰もふざけることはしていない。

むしろ部室中に広まり、勇者部の面々も緊張の面持ちで見ていた。

ピリピリとした張り詰めた空気の中、紡絆がようやく口を開く---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということで、第16回ウルトラマン会議を---」

 

「一回もしてないよ!?」

 

否、誰かの手によるものでもなく、本人の手で先ほどの雰囲気が飛散した。

真剣な表情で何を言い出すかと思えば、誰も見覚えのない会議を勝手に16回まで進めてるでは無いか。

 

「えぇー……じゃあ第100回で」

 

「いやいや、数増えせばいい問題じゃないから。真面目にしなさい」

 

「一番真面目にしない人に言われたッ!」

 

むす、とした紡絆が不満なのかと回数を増やすが、風に言われて思わず争いの種を引き起こしてしまう。

 

「どういうことよッ!?」

 

「風先輩だってふざけるじゃないですか! バーテックスの説明してる時もふざけてましたし!」

 

「んな……!? それはあんたが私の絵にケチつけるからでしょ!」

 

「じゃあこの状態でどう説明しろと!? ほら見てくださいよこれ! これのせいで超がつくほどにシュールですからね!? どうシリアスに話せばいいと!?」

 

全く進むことなく言い合いになるが、絵面が問題なのだろう。

左手にチョーク。右手に牛鬼。

紡絆は右手に甘噛みを続ける牛鬼をぶんぶんと振るが、相も変わらず牛鬼は笑顔を浮かべてるだけで決して離れない。

それを見て、ただ同情するような視線を風が向けた。

 

「なんでこいつ、俺から離れないんですか」

 

「知らない」

 

「な、懐かれてるんですよ、きっと」

 

「私が言っても行っちゃうんだよね」

 

「精霊にも好みがあるのかしら……。それとも宿主の心とかに従って……。ということは友奈ちゃんは……!?」

 

こいつ、と言われたからか牛鬼が不機嫌そうに羽でぺちぺち攻撃する。

決して痛くないが、うざい。だが紡絆は性格上精霊を殴ることはしないし、友奈を守ってくれたことには感謝してるのだ。

なので甘んじて受けていた。

そして紡絆の疑問には誰も答えを持ち合わせておらず、一人だけ深く考えすぎて誤解しかけてるが、紡絆は深呼吸して心を落ち着かせる。

 

「東郷、それないから。ひとまず落ち着こう。それだと友奈が俺の手を食いたいと思ってるから」

 

「あはは……私、そんなことしないよ?」

 

「そ、そうよね……よかった」

 

「というか本題に全く入れてないんだけど」

 

「やっぱり紡絆先輩に真面目なのは合わないかもしれないですね」

 

「唐突な毒舌!? お、俺って後輩に不真面目だと思われていた……?」

 

誤解が解けたかと思えば、まさかの発言に若干ダメージを負うが、紡絆は軽傷だ。肉体に比べれば軽傷なので、牛鬼に謝ってからこほん、と一つ咳払いを入れた。

 

「よし、真面目にしますよ真面目に。で、なんだっけ? バーテックスが黄道十二星座を元にしてるって話でしたっけ。ちゃんと調べたら間違いなく合ってるので残りバーテックスは---」

 

「紡絆くん、そっちじゃなくてウルトラマンのことよ」

 

「流石詳しいね!」

 

「なんか私より詳しくなっていってない?」

 

「また話が逸れそう……」

 

真面目にすると言っていきなり別の話題をぶっ込んだ紡絆にツッコミと褒める言葉が出てくる。

それぞれの言葉を聞いて、思い出したように頷いた紡絆は今度こそ真剣な表情で口を開いた。

 

「あーウルトラマンでしたね。えーと俺自身も分からないことは多いので掻い摘んで説明します。まずこれ、アンファンスと呼ばれるウルトラマンです」

 

そう言って伏せるように貼っていた大きな紙を外し、指差すのは、隣に49mの巨人を書こうとして黒板のため全く足りず、ウルトラマンの足だけの絵になったやつと、やけに小さくデフォルメされた可愛いらしい銀色のウルトラマン。

簡単にいえば、失敗作とちびトラマンである。

 

「わーかわいい!」

 

「紡絆くんって、結構上手いのね」

 

「私より上手い……だと!?」

 

「隣の存在感が……消した方がいいのでは?」

 

ちびトラマンに可愛いと素直な感想を述べる者と、感心する者。

そして樹の言う通り明らかに消せばいいはずが、自信作なのだろう。

ドヤ顔がそれを証明しており、勇者部の部長はバカにしただけあって自身より上手かった絵に僅かにダメージを受けていた。

 

「まぁ、自身が変身する姿なので。昨日からひたすらノートに書いて、朝早く来て練習しまくりました」

 

目元に隈が出来てることから、寝ていないのだろう。

割と本気で練習していたであろう姿に勇者部の面子は苦笑した。

 

「力入れるところおかしくない……?」

 

「はいそこ部長。余計なこと言って話折らない」

 

「あ、はい」

 

ツッコミを入れた先輩である風を黙らせ、真面目に解説するためにチョークをコンコンとちびトラマンのアンファンスを軽く叩く。

どうやら本当に真剣にするらしい。

 

「とまあ、なんかこのアンファンスと呼ばれる形態ではエナジーコア……という名の胸のY字ラインがあるんですが、鳴りません。実質制限時間無制限の初期形態でこれ鳴ったら適能者、デュナミストと呼ばれる俺が死にそうになってるらしいです」

 

「あぁ、だからあの時って心臓のような音も鳴っていたんですね」

 

「じゃあやばい状況だったんだ……」

 

「紡絆くん、あの状態から変身した時点でわかってたけど本当に無茶してたのね……。また説教するべき?」

 

納得したような様子だが、それはつまり、死にそうになっていたのに戦っていたということの証明だ。

東郷の言葉に頬を引き攣らせた紡絆は必死に言葉を紡ぐ。

 

「いやあの、ごめんなさい。勘弁してくださいというかあれは俺じゃなくて明らかにスペースビーストが悪いから! 実際俺が変身しなければバーテックスの封印もキツかっただろうし、神樹様も壊されてたかもしれないだろ?」

 

「それは……否定出来ないわ」

 

「私も紡絆くんに助けられちゃったし」

 

「私もですね……」

 

実際、紡絆がウルトラマンに変身しなければただでさえ厄介なコンビネーションを持っていた敵を相手しながら、厄介な防御力と遠距離攻撃を持つグランテラを相手することになっていた。

もしかしたらウルトラマンが現れなくともファウストは現れたかもしれないことから、誰もがその言葉を否定することは出来ない。

現実世界に多大な影響を与えたり、封印も失敗してたかもしれないことから否定する材料など見つからないのだ。

だからこそ、東郷は悔しそうに。友奈と樹は思い出すように言う。

 

「ごめん。ちょっと言い方はずるかったな。けど、こうして生きてる。

だからそれでいいじゃん! 世界を救えて、みんなとこうやって楽しんだり話したりふざけあったりできる。

俺はみんなを、みんなと過ごす日常を守りたいからさ。

例え誰に何と言われても、この力を受け継いだのは俺だけだから。

真の戦う答えを見つけた今、絶対に退くことは出来ない」

 

それでも自分の言い方は意地悪だったと自覚しているようで、申し訳なさそうに謝るが、紡絆は頑固たる意志を持って退かないことを話す。

言葉にもあった通り、絶対に退くことはないのだろう。共に長く過ごしてきた勇者部の面々は紡絆の毅然とした様子を見て、きっぱりと諦めていた。

 

「ところで風先輩。なんで喋らないんですか?」

 

そんな中、一切喋ってなかった風に疑問をぶつけると、風は椅子から立ち上がってカバンからノートとペンを取り出すと持つ。そのまま皆の視線を受けながら椅子に座り、紡絆に何かを書いてからノートを見せた。

 

『余計なこと言うから』

 

大きく、そう書かれていた。

 

「いやもういいですから! なんで根に持ってんですか!? 普通に考えてそこまで厳しく言いませんよ、俺!」

 

「あら、そう?」

 

「そうですよ! というかいくら俺がウルトラマンに変身出来るとはいえ、そんな一般人と変わりませんし他人の思考を覗ける特殊能力とか持ってませんよ……まったく」

 

予想にもしなかったことに紡絆はため息を吐くが、頭を振って意識を切り替える。

そして新たに捲ったものをチョークで指していた。

 

「それで、話を戻しますけどこれが前回なったジュネッスと呼ばれる姿です」

 

黒と赤が追加された、今度は諦めたのかデフォルメされたちびトラマンのジュネッスのみを書いたものをコンコンと軽く叩いた。

 

「見た目がちょっとかっこよくなったけど、可愛いね」

 

「この大きさ……現実でも見てみたいわね」

 

「ちなみにこれも練習したの?」

 

「お姉ちゃん……その質問いるのかな」

 

「あ、これですか? 10時間くらいしました。唯一の成功作です。いやーなかなかエナジーコアの上にある青い半球状のコアケージと呼ばれる部分が綺麗に真ん中に書けなくてですね、それに色を付けるのも中々に大変でチョークだからちょっと不格好ですけど本当はもっと---」

 

それぞれの感想を聞いた紡絆が風の質問に対して長々と語っていく。

どれだけ苦労したのか知って欲しいのだろう。いくら絵師などが描いた絵とは足元にも及ばないとはいえ、ウルトラマンと分かるくらいには、可愛いと思われるほどには絵の特徴はあるのだ。

 

「わ、分かったわ。だから戻ってくれる?」

 

「え? 二時間くらい話せますけど?」

 

「そんなにもしてたら依頼が出来なくなるわよ、紡絆くん」

 

「今日もいっぱいあるもんね!」

 

「そんなにも頑張ったんですね…紡絆先輩」

 

話し足りないといった様子の紡絆に勇者部のメンバーは困るが、依頼があるとなれば時間をかけられないと紡絆が一気に説明する速度を上げる。

 

「それでこの形態ですけど、メタフィールドという空間を三分間だけ作り出せ、消耗が激しいのでそれが過ぎると俺が死にます。

詳しく言うと位相の褶曲(しゅうきょく)によって生じる不連続時空間の結界で、ウルトラマンが作り出す戦闘用亜空間ですね。

超分かりやすく言うと別世界、異空間です。

隔離させるので外に被害が出なくなるのと、ウルトラマンの本来の力と……勇者の力も強化するみたいです。

ただ封印は防げないのか、苦しかったですけど。あ、光線は必殺技ね」

 

それだけでは終わらず、ちゃんと全て解説するつもりなのか次々と言っていく。

まず、ウルトラマンの身体そのものから作り出され、ウルトラマンの身体を構成する物質の組成と同じものでできている異空間なので、簡単に言えば自分の身、命を削りながら作り出す空間であること。

現実世界に影響を与えないため、これを貼っていれば樹海のダメージを削減できること。

メタフィールドを貼らなければジュネッスでも制限時間はないこと。ただしエネルギー、体力、またはダメージを受けすぎるとコアケージが鳴ってしまうこと。

ジュネッスの場合はコアケージが青が正常で、赤になると残り制限時間が少ないこと。停止したら変身者を含めてウルトラマンも死んでしまうこと。

ジュネッスはアンファンスの強化形態だということ。

コアケージはエナジーコアと同じ意味を持つこと。

塗り替えられた力はダークフィールドと呼ばれ、自身とは相反する空間であること。つまり、敵の力のみを強化する空間であること。

実は勇者としてのお役目が始まる前にウルトラマンと出会って既に戦いを経験しており、川で頭を打って以降の怪我はスペースビーストと戦ったことによって負ったものだと。

背負った使命と力の、光の意味について考えていたが、前回の戦いで答えを見つけてこれからも勇者部のみんなと一緒にバーテックスと戦う覚悟を決めたこと。

一番大事なこととして、ウルトラマンが受けたダメージは全て自身に還元されてしまうこと。

 

「まぁ、こんなもんですかね。他は俺も分からないので、どうやっても解説出来ません」

 

その解説を聞いた勇者部の面々は、様々な反応だった。

驚愕、納得、安堵、不服、悲痛、悲観、混乱、不安、興奮---聞いてるだけで様々な感情が生まれたが、代表して風が口を開いた。

 

「どうして相談しなかったのよ?」

 

「いや、普通に信じれると思いますか?

勇者になった後ならともかく、その前は無理でしょう。痛いやつとしか思われないかと。

逆に六日前の戦いの前に話そうとしても……俺自身色々いっぱいいっぱいだったのと、ウルトラマンの力はハッキリ言って、危険です。それを宿した俺も。

みんなを信頼していないわけじゃないですが、あまり口に出していいものじゃないし、もしお偉い方たちにバレたら俺は人体実験でモルモットにされ、二度とここに帰ってこれないと思います」

 

最もなことだろう。

第一、勇者ですら信じ難かったのに巨人になれます。光の巨人に変身できますと言われても痛いやつだ。中二病と言われるか、テレビの見すぎとでも言われるか、とにかく信じられないに違いない。

それにウルトラマンは勇者とは違って、一人しか居ない。しかも適性を持っているかどうかすら分からず、勇者一人分の力を優に超えている。

実際に防戦一方になったとはいえ、バーテックスとスペースビーストを同時に相手出来た点からそれは簡単に考え得ることだ。もちろん、だからといって制限時間のあるウルトラマンと違って、勇者には制限時間はないため、勇者が要らないわけではないのだが。

そして仮にウルトラマンの正体が人間だとバレてしまえば、人体実験にされてしまう可能性の方が高い。

宿主を解剖でもすれば、ウルトラマンの力の源を知れる可能性はあるのだから。

 

「じゃあ、今まで筋肉痛とか言ってたのって……」

 

「ああ、それは怪我を隠してただけで、筋肉痛じゃないな」

 

「あ……なら、人形劇の時って痛かった? ご、ごめんね?」

 

「あれはどっちかというと倒れたやつを持つ方がしんどかったかな」

 

「もしかして、貫かれた時は……」

 

「うん、ダメージ還ってきたから大量出血したし毒もあったから普通に死ぬかと思った。あはは」

 

「笑い飛ばしていいんですか、それ!?」

 

もう過ぎ去ったようにあっけらかんと笑う紡絆だが、一応言うとまだ治っていない。包帯だらけになってるのだから分かると思うが。

表向きは交通事故にあったということになっているとはいえ、登校してきた時は同級生がみんな驚いたくらいだ。

むしろ近所の人にすら好奇な眼差しで見られていたのだから。

 

「はぁ……それなら戦わないで欲しいんだけど---」

 

「だけど?」

 

「するわけないわよねぇ。むしろ逆に突っ込んでいきそうで困るわ。樹海には強制召喚されるし……仕方がない、か」

 

「よくお分かりで。みんなが戦ってるのに俺だけが見ないふりするぐらいなら、死んだ方がマシです」

 

風は軽く頭を抑えながら、紡絆の今までの様子と今の表情からして察すると、諦めるようにため息を吐くしか出来なかった。

 

「でも、その場合紡絆くんは……」

 

「勇者も同じだ。死ぬ可能性はある。だったら、一人でも戦力を増やして生存率を上げた方がいいだろ?」

 

以前の戦いを思い出して不安そうな表情で見つめる東郷に、紡絆は何ともなさそうな表情で返す。

正論であるのだから、タチが悪いのだが。

 

「その通り。だからここからは別よ。私たちの戦いに、勇者ではない紡絆を巻き込むことになる……それでも共に戦ってくれるかしら? ウルトラマンとして、なにより勇者部の一員として」

 

「……! いいんですか? ぶっちゃけウルトラマンと同じダメージ負うこと言ったら止められると思ったんですけど」

 

風が立ち上がって近寄り、手を差し伸べると紡絆は予想外だったのか驚いたような様子を見せる。

そんな紡絆の疑問を風は答えた。

 

「まぁ、勝手にされるよりは一緒に居てくれる方が助かるのよ。私たちが助けられたことに変わりはないし、さっき自分で言っていた通り覚悟を決めてるなら止められる自信なんてないし」

 

「なるほど、止められても無視して戦うつもりでしたけど、それなら改めてよろしくお願いします」

 

納得と言うように頷いた紡絆は風の手を握り、正式に勇者の仲間として迎え入れられることになった。

 

「紡絆くん、一緒にがんばろー!」

 

「もちろんッ! 一緒にみんなを守るぞ!」

 

「うん!」

 

早速と言わんばかりに友奈が椅子から立ち上がって紡絆と握手する。

何故か互いに腕を勢いよく振っていた。

 

「仕方がないわよね……ううん、むしろ今の方が紡絆くんらしいわ」

 

「はい。いつも紡絆先輩は誰かのために行動してましたから」

 

絶対に止められないと知っているのもあるが、なによりもこの方が紡絆らしいと東郷も樹も知っている。

勇者部のみんなは、継受紡絆という人間がどんな存在か知っているのだ。逆に何も行動に移さない方が、紡絆に何か異常が起こっているのではないかと思ってしまうほどには。

彼は、そういう人間なのだから。

だからこそ、紡絆がそう決めたのであるならもう何も言わないことにして、笑顔で迎え入れる。

そこでふと、紡絆は思い出した。

 

「やべ、忘れてました。

ウルトラマンに変身するって言ってましたけど、みんなが端末のように俺にもアイテムがあるんですよ。

ちなみにこれ、エボルトラスターというやつです。

触ってもいいですけど、無くさないでください。

危ないので出しませんが、一応銃としてブラストショットというやつもありますけど」

 

何気に重要なことを忘れていたが、紡絆はポケットから短剣型のアイテムを手にして皆に見せる。

それを興味津々と見ていた。

 

「へぇ、エナジーコア?というやつとコアゲージってやつに似た模様もあるのね」

 

「私たちはスマホですけど……紡絆先輩は違うのでちょっと……バレたら大変ですよね」

 

明らかに短剣型とスマホ。

どっちが誤魔化せるかと言えば、スマホだろう。現実に持っていない人物なんて居ても極小数。今や社会に浸透してるものなのだから。

 

「おもちゃと言えば問題ない……かな」

 

「んーっ! あ、これ抜けないんだね〜」

 

「そうみたいね。私たちでは無理なのかしら? 勇者と同じく、ウルトラマンも選ばれた人物しか無理……ということになるのかも。それにモチーフ的には日本刀? これ、紡絆くんは問題なく抜けるの? 前見た時は簡単にしてたけど……」

 

渡したのは紡絆とはいえ、勝手に遊ぶように引き抜こうとしていた友奈たちだが、彼女たちに引き抜くことは出来ない。

それを見ていた東郷は思考しつつ疑問を投げかける。

 

「ん、あぁ。俺は簡単に抜けるけど、俺が引き抜いたら変身するから出来ないな。

それはデュナミスト以外引き抜けないから。

変身は……まぁ、どうせまだバーテックスと戦うんだし、その時に分かると思う」

 

「私たちで言う勇者システムなんだから、無くさないようにしなさいよ?」

 

「無くしても多分勝手に戻ってきそうですけど……」

 

「それなら安心……なのかな?」

 

聞かれて分からないところを掲示板で聞いてその通りに言っていた紡絆だったが、手元になくとも姫矢さん(デュナミスト)と一緒にブラストショットもワープさせてたから多分行けるみたいなのが流れてきたため、便利だと思いつつ、風の言葉に返した。

樹は本当に大丈夫なのか分からずにこてんと小首を傾げていたが。

 

(そういえば最初の時って意識無くしたのにいつの間にかカバンの中に潜り込んでたもんな……有り得そう。ヤンデレかな? いや、ウルトラマンのお陰だろうから助かるけどさ)

 

一方で、最初の戦いの時を思い出した紡絆は無くさないようにしてるとはいえ有り得そうだと思っていた。

決して試す気にはならないだろうが。

 

「あ、紡絆くん。返すね」

 

「ん、おう」

 

東郷と共に模様を見ていた友奈は満足したのか紡絆にエボルトラスターを手渡しで渡すと、紡絆は左手で受け取って懐に収納する。その際に自身の右手に違和感を感じ、頬を引き攣らせた。

 

「あ、ところで友奈。そろそろ何とかしてくれない? な、なんか手の感覚なくなってきた……」

 

「え、えぇっ!? ちょ、ちょっと牛鬼! はーなーれーてー!」

 

諦めていたとはいえ、流石に違和感を感じたと思えば手の感覚が無くなってきていた。

ちょうど友奈が目の前に居たため、主なら聞くのではと試しに言った紡絆の言葉を聞いて友奈が慌てて紡絆の右手を噛みながら寝てる牛鬼を掴んで引っ張るが、取れない。

 

「こういう動物居たよなーなんだっけ。スッポン?」

 

「スッポンは水に沈めれば外してくれるらしいけど、精霊に効果あるのかしら?」

 

「お前……牛じゃなくて亀だったのか?」

 

「流石にそれはないかと……」

 

離さないのを見て思い出すように呟いたが、東郷の言葉を聞いて何処にも亀だという要素はないのに実は亀なんじゃないかと疑い始めた紡絆。

樹から、というか誰から見ても違うので否定の言葉が呟かれていた。

 

「さてっと。話は聞いたし勇者部の活動始めるわよー!」

 

「まさかのこの状態で!? ちょ、マジで手の感覚がぁああああ! 傷治ってないから! 牛鬼起きてぇぇえええ!!」

 

「うー! 離れないよー!?」

 

「友奈ちゃん。精霊を一度戻したら?」

 

「「あっ!?」」

 

必死に離そうと頑張っていた紡絆と友奈だが、東郷の言葉に互いに忘れていたように気づいた。

紡絆は友奈に対して頷き、友奈も頷く。

 

「これで……どうだー!?」

 

「ヴェッ!?」

 

意思疎通出来た二人は立ち止まるが、何故か友奈が()()()()()()()スマホを取り出して精霊を戻す。

寝ているからか、牛鬼は出現しない。今回は手がベタベタではないが、牛鬼も学んだのだろうか? 紡絆の手は無事に解放される。

そう、でも()()()()()のだ。ならばこそ、引っ張っていた力はどうなる? 

当然引っ張られた力はそのままで、紡絆の体が引っ張られる形で友奈の方へ持っていかれる。

 

「へっ!?」

 

「あ、むりぃいいいいい!?」

 

何とか一瞬で体制を戻そうとするが、紡絆は一瞬で諦めた。

一応言っておくと、彼は肉体のダメージはマシになっただけでそのままなのだ。運動などの激しい動きを禁止させられるほどのものなので、そんなすぐに全力で立ち止まる力などない。

というより、立ち止まろうとした瞬間に凄まじい痛みが走ったため、僅かな間力が抜けてしまった。

そのまま紡絆の体は抵抗も虚しく、引っ張られる力のまま友奈の方へ行き、そして---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃっ!?」

 

友奈を()()()()形で部室の地面に倒れた。

原因は、互いに油断していたこと。突然過ぎたこと。引っ張られたのが友奈ではなく、男だった紡絆だということ。今の紡絆ならどっちにしてもなっていただろうが、原因はそこしかないだろう。

ただし、せめてもの罪悪感からか腕を割り込ませて友奈の後頭部を守ったのだけは、男として誇っても良いかもしれない。

だが---空気が、固まった。

比喩ではない。完全に樹海化が起きたんじゃないかと思うほどに、止まっているのだ。もちろん、外では自然も動いているし鳥などの動物も動いている。時間も、動いている。

しかし部室内の空気だけが止まっていた。いや、この場合は場が凍ったと言った方が分かりやすく、適切だろうか。

その理由としては状況から分かる通り、一人の男子中学生が事故とはいえ女子中学生を押し倒したからだ。

事故とは分かっていても、何も分からない人が見れば明らかに気まずくなる空間。

両者の顔が少し動かせばキスでも出来るのではないかと言うほどに近い位置にあるのもあるかもしれない。

少なくとも、動ける者は居なかった。当の本人たちの方が一番焦ってるだろうが、周りも動ける者は---否。

一人だけ、動く人物が居た。

スッと自然な動作で何かを取り出したその人物はただ一つの行動を行う。

カシャッ、と。

 

「「え?」」

 

「と、東郷?」

 

「と、東郷先輩?」

 

予想にもしなかった状態なため、固まっていた紡絆と友奈が同時に反応し、その光景を見ていた風と樹も東郷に視線を送る。

全員の視線を受けた東郷だが、彼女が手にしていたものは---スマホ。

そしてカシャッという音がスマホから鳴っていた。

それはつまり---彼女は自然な動作でスマホを取り出し、写真を撮ったのだ。しかも次々と連射音が聞こえてくる始末。

 

「っ〜〜〜!?」

 

「………ごめん」

 

それに気づいた友奈が目をぱちぱちと瞬きすると、冷静になって押し倒されたという事実を理解して顔が赤くなっていく。

紡絆はすぐに退くという考えはあったが、さっき足に力を入れた際にダメージを負ったせいで退こうにも痛くて出来なかったのだ。

そんな彼は、自身が起きた不幸にこの先の未来を予想し、達観し始め、謝った。

そしてその未来は---

 

「ゆ、勇者パァァァァァンチ!」

 

「あぁぁああぁぁぁ!?」

 

顔を真っ赤に染めた友奈の拳が胸に直撃し、予想通り吹っ飛ばされた。

本来、いくら友奈の一撃でもそこまで吹き飛ぶことなんてないのだが、そこは世界の法則が変わったのだろう。見事打ち上げられた紡絆は背中から地面に肉体をぶつけ、ダウンする。

せめて腹じゃなかったのは救いだった。腹部であったなら、今の紡絆ならば気絶コースだったのだから。

 

「と、東郷……それ、消せ……ッ。がく……」

 

最後の力でも振り絞るように東郷に向かって手を伸ばすが、地面に手が落ちる。

ちなみに別に気絶してる訳ではなく、喋れないほどの痛みに悶絶しているだけだ。

 

「はぁ、派手に飛んだわね……」

 

「紡絆先輩……」

 

事故とはいえ、部室でまさかの展開になったことに片手で頭を再び抑える風と何故か紡絆に対して冷たい視線を送る樹。

傍から見たら紡絆が押し倒したようにしか見えないので仕方がないのだが、後輩にそんな目で見られつつ、痛みに悶絶してる紡絆は二重---

 

「パソコンにも写して……完了ね」

 

三重の意味でダメージを受けた。

東郷は消すどころか、パソコンにバックアップを送ったようだ。

紡絆は精神的に二、肉体的に一のダメージを受けた。合計で三重である。

 

「わ、わー!? つ、紡絆くんごめんなさい! 大丈夫!?」

 

状況が状況だったとはいえ、怪我人に対して殴ってしまった友奈は気持ちを落ち着かせてから慌てて駆け寄り、紡絆の体を起こすが、紡絆は平気と言うように表情を取り繕った。

 

「も、問題……ないといえないかもしれない……」

 

が、本音がこぼれ落ちた。

残念ながら我慢しきれるほどのダメージじゃなかったらしい。

 

「ほ、本当にわざとじゃなくってッ! そ、その……」

 

「わ、分かってるから……いや、ほんと耐えようとしたんだけど力入らなくて。ごめん……」

 

何とか立ち上がれるまで回復した紡絆は手を貸して貰って立ち上がるが、友奈は思い出したのか再び顔を赤くして俯いた。

紡絆はそんな友奈を見て、自身の不甲斐なさについて謝るしか出来なかった。

 

「お、お姉ちゃん」

 

「……こほん。えー改めて勇者部の活動よ」

 

「お、おー!」

 

「し、しばらく休んでます」

 

「頑張りましょう」

 

樹が姉であり部長である風に呼びかけると、風は色々と入れ替えるように咳払いを一つ入れてから今度こそ再開するように言った。

友奈も頬を赤めたままだがすぐに乗り、紡絆は胸を抑えながら自身が描いたチビトラマンだけ写メで撮って休む。

東郷は微笑みながら一人だけ満足げだったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

435:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

まったく酷い目にあったわ。おのれ牛鬼

 

 

436:名無しの転生者 ID:cL0B3aY0h

なんだなんだ?

 

 

437:名無しの転生者 ID:mBKNJf0Vs

またなんかやらかしたんか

 

 

438:名無しの転生者 ID:9fWOcnM7y

イッチの信頼度が低すぎる

 

 

439:名無しの転生者 ID:AttFrr4uG

まぁ、知ってる人は知ってるだろうが、ウルトラマンネクサスの世界だと思い込んでたのに全く知らない別の世界だったっぽいから……

 

 

440:名無しの転生者 ID:Lm2ofHiJk

自分のことではないのに絶望感半端なかったもん。しゃあない

 

 

441:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>439 >>440

いや、それは何かごめん。

 

>>437

いうてやらかしたわけじゃなくて皆にウルトラマンであることバレたからなったことの経緯とさっきもあった通りウルトラマンの説明をしただけ。

その後部活の活動しようとしてたんだけどさ、部室で傷が治ってないのに牛鬼がずっと俺の手を噛んでたせいで手の感覚がね……

 

 

442:名無しの転生者 ID:rrju4SaqW

あーなるほど。まあ、あんな重体だったのに治るわけないわな

 

 

443:名無しの転生者 ID:jJhW1TLYh

んで、手を噛まれてたから酷い目にあったってことなのね

 

 

444:名無しの転生者 ID:aDRqkOPI3

懐かれてるんやなぁ

 

 

445:名無しの転生者 ID:d13vSz7s2

もしくは非常食だと思われてない? 大丈夫? こっちの世界では遭難したから仕方がないとはいえ、ワイと女の子二人以外は人肉食べてたけど?

 

 

446:名無しの転生者 ID:9KvulLyYJ

可愛いよね、精霊だっけ

 

 

447:名無しの転生者 ID:gRRYPfDYw

>>445

グリザイアしか浮かばねぇわ……

 

 

448:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>443

や、どっちかと言うと噛みついたまま寝た牛鬼が取れないから友奈と協力して取ろうとしてたんだけど友奈が精霊を戻したら引っ張られたままだったから押し倒しちゃって……力入らんかったから退くことも出来ずにギャグ漫画のように殴られて吹き飛んだわけ。

六割牛鬼、四割俺のせいだ

 

 

449:名無しの転生者 ID:gzcBB++QX

……は?

 

 

450:名無しの転生者 ID:d24Wj3+Rr

あ゛?

 

 

451:名無しの転生者 ID:kDjC2pWU4

お前やっぱ転生する世界間違えてるやろ

 

 

452:名無しの転生者 ID:G0psySYMs

しね

 

 

453:名無しの転生者 ID:qVgjuIU5E

なんてうらやま……羨ましいやつなんだ

 

 

454:名無しの転生者 ID:IE2V86OG1

九割お前のせいやろ

 

 

455:名無しの転生者 ID:/KdXzWUPo

一度土に還って、どうぞ

 

 

456:名無しの転生者 ID:vWMTE/1ve

い つ も の

 

 

457:名無しの転生者 ID:XSwg73M+4

全員でリンチしたい

 

 

458:名無しの転生者 ID:GEMaDI8Sf

ちなみに押し倒しただけなんか?

 

 

459:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

こんな辛辣とか悲しいなぁ……

 

>>458

それだけですけど? いや、相手が美少女と言えるから中学生とはいえ顔も近かったし俺も肉体は中学生だからドキドキはしたけど

 

 

460:名無しの転生者 ID:3lx47WAkP

はーつっかえ

 

 

461:名無しの転生者 ID:hzWwJcCAB

アホくさ、辞めたら?

 

 

462:名無しの転生者 ID:ytXisiPkf

リトさん見習えや

 

 

463:名無しの転生者 ID:JNQIBl7GG

あのさぁ……

 

 

464:名無しの転生者 ID:SuFDtcN8n

欲丸出しにするのはやめちくり〜

 

 

465:名無しの転生者 ID:0WBs37i6D

おっ、そうだな

 

 

466:名無しの転生者 ID:kxbtsPSKL

似たようなことも出来ないの? そんなんじゃ甘いよ(嘲笑)

 

 

467:名無しの転生者 ID:Va4ttyzp8

何だお前根性無しだな(棒読み)

 

 

468:名無しの転生者 ID:EqzCrBzL5

はえーやっぱ好きなんすねぇ

 

 

469:名無しの転生者 ID:qsu/s/wWR

うわぁ……なんだこれは……。たまげたなぁ……

 

 

470:名無しの転生者 ID:2ZAOLo4n5

なんでこんな汚くなってんの?

 

 

471:名無しの転生者 ID:iAyaH+Nxr

あーもうめちゃくちゃだよ

 

 

472:名無しの転生者 ID:Qguuatm+y

初見ドン引き不可避

 

 

473:名無しの転生者 ID:RTtxXWgU+

みんな期待してるんだよ

言わせんな恥ずかしい

 

 

474:名無しの転生者 ID:bgqF/Ixkc

えっ、期待してないですけど

 

 

475:名無しの転生者 ID:Rk8ktlBS5

ホモは嘘つき

 

 

476:名無しの転生者 ID:A9lBnf0Hu

>>474

嘘つけ絶対期待してたぞ

 

 

477:名無しの転生者 ID:kE5avBTZC

(このスレはもう)ダメみたいですね(諦観)

 

 

478:名無しの転生者 ID:mkxaEmxtb

>>459

何か足りねぇよなぁ?

 

 

479:名無しの転生者 ID:LQYwsGMwf

(R-18展開は)まずいですよ!

 

 

480:名無しの転生者 ID:ZCTvU381T

なんで語録がこんな飛び舞ってるんですか(歓喜)

 

 

481:名無しの転生者 ID:Bk8U5psCx

イッチが原因ゾ

 

 

482:名無しの転生者 ID:/ejxVTpGW

やっぱりイッチのせいじゃないか(呆れ)

 

 

483:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

そんな期待されてもやりたくてやったわけじゃないし仮にしたら明日から白い目で見られながら部活行かなきゃいけないんですけど

 

 

484:名無しの転生者 ID:lKLysYE6J

お前友奈ちゃんのなにが不満なんや

 

 

485:名無しの転生者 ID:YsAJWb/Ne

貧乳はステータスだし希少価値だぞ

 

 

486:名無しの転生者 ID:MEqnz8mqK

部活行かない選択はないのか……

 

 

487:名無しの転生者 ID:2UPiNYGre

友奈ちゃん意外と胸ある(らしい)だろ! いい加減にしろ!

 

 

488:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

いや、友奈ちゃんに別に不満はないけど普通に考えたら互いに好きじゃない限り……そのー、行為とか及ばないし変なことしないでしょ! というか前も事故でやったから知ってるけど、罪悪感半端なくなるんだよ!

他にも互いに中学生だしそんな関係じゃないんだってば!

 

 

489:名無しの転生者 ID:CjBa8I61x

さてはイッチ童貞だな

 

 

490:名無しの転生者 ID:K+fxdyq5Y

ここのスレの連中は間違いなくそうだゾ

 

 

491:名無しの転生者 ID:JAy2FNrZO

なんかイッチからピュアな片鱗を感じた気がする

 

 

492:名無しの転生者 ID:f9l9gCcC8

というか中学生で経験してたらイッチが怖いよ

 

 

493:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>489

中学生でしてるわけないじゃん……

 

 

494:名無しの転生者 ID:67DPTfNnz

今どきの中学生はヤってんぞ

 

 

495:名無しの転生者 ID:8wAcVm+4B

マジ?

 

 

496:名無しの転生者 ID:vL/9UqqcK

あれ、なんでこんな話になったんだっけ

 

 

497:名無しの転生者 ID:AHfRQ4npe

>>494

マジかよ、那珂ちゃんのファンやめます

 

 

498:名無しの転生者 ID:dR/xbVCfi

んで、イッチは今何してんの?(話題転換)

 

 

499:名無しの転生者 ID:E3HX5UX+x

>>498

有能

 

 

500:名無しの転生者 ID:GSFgsXfo5

>>498

ナイスゥー!

 

 

501:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>498

さっきからずっと(走るの禁止されたから歩いて)飼い猫探ししてる。強化月間中でかなり減ってきてるからな。あとちょいで終わるわ。

というか分かったから勘弁してくれ。そんな望むならやってやっから

 

 

502:名無しの転生者 ID:Wup/qL4ou

お?

 

 

503:名無しの転生者 ID:X0p+ZqbZa

>>501

ん? 今何でもするって

 

 

504:名無しの転生者 ID:K170ajUTg

言ってない定期

 

 

505:名無しの転生者 ID:y0iGRmQdD

あんな汚い話の中イッチは飼い猫探ししてたんか。お前ら見習えよ

 

 

506:名無しの転生者 ID:fuEeDPgmX

誰だって期待するからね仕方がないね

 

 

507:名無しの転生者 ID:hrZ+xHFJq

ヤって……ヤル?

 

 

508:名無しの転生者 ID:sLupalmeF

ふしだらNG

 

 

509:名無しの転生者 ID:LwB7W8A3s

>>501

自ら死地に飛び込もうとするエンターテイナーの鑑

 

 

510:名無しの転生者 ID:kweYH+Y7u

イッチはバカだからな

 

 

511:名無しの転生者 ID:Aib5HAQgA

今回ばかりはイッチのせいではないんだよなぁ

 

 

512:名無しの転生者 ID:cE6210bHL

どうせみんな期待してた(確信)

 

 

513:名無しの転生者 ID:9rGKaY5Lj

ピンク色空間作らなきゃ(使命感)

 

 

514:名無しの転生者 ID:39pPrCt4B

そんなことあるわけ(移植版なのでシーンは)ないです

 

 

515:名無しの転生者 ID:qwXaEQdk4

抜きゲーなら押し倒した時点でシーン入ってた

 

 

516:名無しの転生者 ID:OL1K66z5K

変態の巣窟かよォ!

 

 

517:名無しの転生者 ID:WqNhkSr3p

みんな欲求不満だから……

 

 

518:名無しの転生者 ID:JDnMsDgvM

で、イッチはまさかアレやるんか?

 

 

519:名無しの転生者 ID:3B3JnuTCh

アレ……ああ、アレね知ってる知ってる

 

 

520:名無しの転生者 ID:cGx9wG0k9

まぁ、安価しかないやろうな

 

 

521:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

ちょうど終わったから今日はもう暇だしその通りや。

安価で決めたら誰も文句言わんでしょ。決めるのはみんなだし、何があっても文句なしになる。今回は特に指定しないし好きにしてくれ

 

 

522:名無しの転生者 ID:NBGb0v9gG

や っ た ぜ

 

 

523:名無しの転生者 ID:+0hrLbI+J

流石にそうなると文句言うやつは居ないだろうな

 

 

524:名無しの転生者 ID:vK+wL5iJt

しょがねえなあぁああああああ(KZM)

 

 

525:名無しの転生者 ID:mDD9FUwKN

ホモはちょろい

 

 

526:名無しの転生者 ID:yKuw8fK2H

>>524

なんだかんだ文句言いながら助けてくれるKZM兄貴だいすき

 

 

527:名無しの転生者 ID:0Kw2/tVfg

ホモは寛容だしせっかちだし変態だし百合好きだし変態だしちょろいからね

 

 

528:名無しの転生者 ID:yK9pCyVsv

大事なことなので二回(ry

 

 

529:名無しの転生者 ID:7waXMpnAC

イッチも苦労人なんやなって……それはそうとして容赦なくするんですけどね

 

 

530:名無しの転生者 ID:zWFwI13eT

そういえば指定なしってことは誰でもええんか? えっちぃのでも?

 

 

531:名無しの転生者 ID:iVDXxEq/W

近所のおばちゃんでも?

 

 

532:名無しの転生者 ID:B6k5D5/ip

お兄さんでも?

 

 

533:名無しの転生者 ID:mrVZ5VY4V

お姉さんでも?

 

 

534:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

あのさぁ……人のことバカバカ言う割にはお前らもバカだろ!

普通に考えて有り得ねぇでしょーが! てか、近所のおばちゃんお兄さんってなんだよ! 嫌に決まっとるわ! 勇者部の誰かだよ! 知らん人とは出来ないし親しくない人に対して安価やるのすらやだよ!

バカ! 考えろ!

 

>>530

えっちぃのは……困るからスキンシップ取る、ぐらいで頼むわ。流石に信頼無くすのはやだし、勇者部のみんなをそんな目で見てないから。常識内で

 

 

535:名無しの転生者 ID:OZKS004wX

お兄さんはともかく何故おばちゃん……?

 

 

536:名無しの転生者 ID:DDp1RxT8V

>>534

さらっとお姉さんだけ否定しないの草

 

 

537:名無しの転生者 ID:o3G2VNDOS

イッチも欲丸出しやんけ……

 

 

538:名無しの転生者 ID:25I5dGtgK

イッチ、もしかして年上派か?

 

 

539:名無しの転生者 ID:iiQTkCEdO

いうてイッチの前世合わせたら年上って間違いなく熟女になるやろ。年齢は知らんが、多分高卒はしてるだろうからな

 

 

540:名無しの転生者 ID:S1te7p2YS

>>534

何気にイッチが他人にバカ言うのは珍しいのでは?

あと、ちゃんと大切に思ってるんやなって

 

 

541:名無しの転生者 ID:8eXTqYZhV

>>534

人妻は?

 

 

542:名無しの転生者 ID:1KkVZZFdn

ショタイッチがお姉さんとなんかするなら絶対最後食われるやつ

 

 

543:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

>>541

すまん、熟女含めてそんな性癖は持ち合わせてない

 

 

544:名無しの転生者 ID:PfEkYk03t

おねショタはいいのか……

 

 

545:名無しの転生者 ID:eFB6Onulk

イッチって性格的にNTRとか嫌ってそうだしな。なんかこう、本当に純愛好きってイメージがある。普通そんな美少女ばかり周りに居たらちょっとはそういう方面で見ちゃうゾ

 

 

546:名無しの転生者 ID:hCk4d849g

おねショタはほら、結構人気あるし……

 

 

547:名無しの転生者 ID:8GQ93JTo4

なんでや、人妻もええやろ

 

 

548:名無しの転生者 ID:QSB1YqXUj

熟女もいいダルォ!?

 

 

549:名無しの転生者 ID:F0Gpl5ElB

いつからここは性癖博覧会になったんだ……?

 

 

550:名無しの転生者 ID:yggkjy7p4

誰もお前らの性癖は聞いてない(辛辣)

 

 

551:名無しの転生者 ID:uPln1nTC4

やっぱおねショタが一番やなって

 

 

552:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

いや、もうなんかどうでも良くなってきたわ……。俺の性癖なんて勝手に決めてくれもう。

 

>>545

まあ、煩悩がないと言うと嘘になる。というか、精神的には問題ないんだけど抱きつかれたりすると肉体が反応しちゃうんだよね。困ってる時とか泣いてる時とかは助けないと、とか力になろうって気持ちが強くて問題ないんだが、普通の時は困るわ。

流石に前世の記憶を持ってようが煩悩消し去ってようが思春期特有の生理現象はどうしようもない

 

 

553:名無しの転生者 ID:mFltnZzo5

つーか生理現象まで発動せんかったら人間かどうかを疑うわ

 

 

554:指揮官ニキ ID:aZ5LENTtv

誰もが通る道だし、仕方がないね。そこはみんな納得すると思うで。というかほんと、泣いてる時とかは問題ないんだが、不意打ちとかからかうようにするのとかマジでやめて欲しい……我慢する方もきついんやぞ。簡単に無防備になってさぁ! 抱きついてきたりするしさぁ! 思春期じゃないけどみんな露出高いの! やめて! 

 

 

555:名無しの転生者 ID:kL+L4iWtL

転生者あるある。

美少女に抱きつかれて困る

 

 

556:名無しの転生者 ID:OoSf+8/56

ねーよ

 

 

557:名無しの転生者 ID:OgwkPO+0n

一部の世界だけだしモブじゃなければなんだよなぁ

 

 

558:名無しの転生者 ID:b53wD6Ifk

それはお前らの言動が悪いのでは? イッチ見習えよ、今も落し物探し……ってマジでなにやってんの()

 

 

559:名無しの転生者 ID:FByyKxRw3

なんでこいつ怪我してるくせに平気で走って車避けてんだ……?(畏怖)

 

 

560:名無しの転生者 ID:N26oEUzGd

走るの禁止(しないとはいっていない)

 

 

561:名無しの転生者 ID:brc+V+nfV

時々イッチって人間じゃない動きするよな。ウルトラマンの影響か?

 

 

562:名無しの転生者 ID:ahNX05A1k

あれ、ネクサスって変身者に対する身体能力強化あったっけ?

情報ニキ!(パンパン

 

 

563:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

はいよー

 

ネクサスの身体能力強化。

憐編では分かりにくいから割愛するが、姫矢編では主に溝呂木のダークエボルバーによるエネルギー弾を姫矢さんが避けていたこと。

ブラストショットの狙いが戦場カメラマンや一般人(?)の割に正確過ぎること。ビーストが現れてから走って行くのは姫矢さんも憐も一般人じゃ間違いなく無理なこと。

ULTRAMANの内容的に真木さんは特別だが、明らかに身体能力が尋常じゃないことからデュナミストは少なからずとも多少は上がってると思われる。

なので、ぺドレオンの時と言い、ガルベロスの時と言い、イッチの身体能力は真木さんレベルかそれ以上に上がってると思っていいかもしれない

 

 

564:名無しの転生者 ID:wHixIBJMi

なるほど、流石いつの間にかコテハン付けた情報ニキ。助かる

 

 

565:情報ニキ ID:OX82Ln2AK

ええよ、気になるから書き込んでなくとも暇な時見てるしな。てか、大半の人がそうだしね

 

 

566:名無しの転生者 ID:wJcUojCq5

>>563

まぁ、火球避けられるぐらいだもんなぁ

 

 

567:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

ごめん。小さい子供がおもちゃを落としたらしいから探してた。危うく車に壊されるところだったわ。換えが効くとはいえ、親に買って貰った大切な一つの宝物だからな。壊される訳にはいかん

 

 

568:名無しの転生者 ID:SC+NNc1P0

>>567

やだ、誰このイケメン……嫌いじゃないわッ!

 

 

569:名無しの転生者 ID:VIr+lrgPZ

いや、あの……今のタイミング的に一般人なら一緒に轢かれてたんですがそれは

 

 

570:名無しの転生者 ID:A8iWnStKL

もし轢かれてたらどうするんだよ。異世界転生か? 轢いた人も被害出るからな

 

 

571:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

分かってる。でも見捨てることなんて出来ないじゃん。

俺ぐらいなら轢かれても吹っ飛ばされるくらいで済むが、おもちゃは壊れる。そしたら子供は泣くし轢いた方も困るかもしれない。

それに俺が轢かれても誤魔化すことぐらいならできるし、そこは考えてあるから大丈夫だ

 

 

572:名無しの転生者 ID:AjDRFlU5f

>>570

なろう特有の呼ばれる異世界トラック先生かよ。毎回運転者どんな損害受けてんだろ

 

 

573:名無しの転生者 ID:vZD21rTNt

吹っ飛ばされる(当たり所悪ければ普通は死ぬ)

 

 

574:名無しの転生者 ID:YmTdMiFjg

むしろ吹っ飛ばされるより車の速度によっても死ぬんだよなぁ

 

 

575:名無しの転生者 ID:pzQqpqSYJ

まぁ、特撮世界というか特撮関連の住人はみんな個人差はあれど耐久値カンストしてるし

 

 

576:名無しの転生者 ID:b89jSl3+w

なんだかんだでイッチを心配するし何かあるとすぐに真面目になるこのスレ嫌いじゃないよ

 

 

577:名無しの転生者 ID:fES0/+yTK

ばっ、ばばばばかっ! べ、別に心配なんてしてねぇよ!

 

 

578:名無しの転生者 ID:De6N16hg7

そ、そうだよ! イッチなんてどうでもいいし!

 

 

579:名無しの転生者 ID:4sHlxEvVU

な、何言ってんだよ! ほんと嫌になるわ!

 

 

580:名無しの転生者 ID:fsccKCvQ6

などと言っておりますが、イッチが死にかけた時のことを思い出しましょう

 

 

581:名無しの転生者 ID:WUufLewKM

>>577->>579

お前らのツンデレとか誰得やねん……

 

 

582:名無しの転生者 ID:0Kw2/tVfg

ホモはツンデレだしネットやってるやつもアンチも大抵がツンデレ

 

 

583:名無しの転生者 ID:HOmFw3Lws

特にスレ書き込んでるやつはツンデレやからな……

 

 

584:名無しの転生者 ID:0sTpCO4Ay

いやもうホモどうなってんだよ。便利な言葉と化してんじゃん

 

 

585:名無しの転生者 ID:xrCQfol27

まぁ、結論述べると変態だけど寛容なツンデレやな

 

 

586:名無しの転生者 ID:yfR6jxUXr

>>571

知ってるか? こいつ、まだ全身怪我してるし腹貫かれてからそんな経ってないんだぜ?

 

 

587:名無しの転生者 ID:3z0Z1xzvp

ハッキリ言ってキモイ(褒め言葉)

 

 

588:名無しの転生者 ID:T1VCMhmFp

怪我人の動きじゃないんだよなぁ。はよ治さんとまたビースト来るぞどうせ

 

 

589:名無しの転生者 ID:WHH7TbxAY

ザギさんはグランテラという厄介なコマを失ったとはいえ、近々来そうだしね

 

 

590:名無しの転生者 ID:hsizGn25U

ひえーネクサス怖い。ウルトラシリーズこわい

 

 

591:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

いつ来るか分かればなぁ……まぁ、今はいいよ。日常は謳歌しないと勿体ない。学生だしね。

ほれ

>>620

>>674

 

 

592:名無しの転生者 ID:OR2I2WfYR

ファッ!? おま、二個かよ!?

 

 

593:名無しの転生者 ID:KJq6Ff6/5

意外ッ! それは二個ッ!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタ、とパソコンのキーボードを打つ音だけが部室内に響き渡る。

普段は騒がしい勇者部の部室も、今は静けさに包まれていた。友奈と紡絆は飼い猫探しに。紡絆が動けない分、友奈は頑張ると張り切っていたのだ。

そして風と樹は誕生日パーティをしたいけど人手が足りないという依頼のため、そちらへ向かった。

家族であるからか連携力は高く、体力面から考えてその方が良いと判断されたからだろう。

そんな中、東郷美森はパソコンで資料の作成、依頼の確認、返事、情報収集などと言った事務的な活動をしている。足を動かすことが出来ない東郷にとってそれが仕事であり、自分の出来ることだと知っているからこそ全力で応える。

そもそも、それは物凄く大切なことで誰もできないから、というのもあるだろう。

東郷は耳から聞こえる軍艦マーチと一般的に言われる軍艦行進曲、または行進曲『軍艦』と呼ばれる軍歌をイヤホンを付けながら流し、作業していた。

といっても、これは先ほど変えたものだ。作業BGMを聴くこともあるし別のを聴く時もある。結局は気分なのだ。

そんなふうにしばらく作業していると、部室をノックする音と知っている声が聞こえた。

イヤホンを外し、東郷はすぐに返事する。

 

「はい」

 

「あれ、みんなまだ帰ってきてないのか?」

 

そこには勇者部で唯一の男性、継受紡絆が()()()()()()()()()()()状態で入ってくる。

一応払ったのだろうが、大量に着いてしまったせいで取れなくなったのだろう。

紡絆は部室に入ると東郷だけしかいないことを認識すると確認するように聞いてくる。

 

「えぇ、風先輩や樹ちゃんは時間掛かるだろうし友奈ちゃんも張り切ってたからたくさんしてくると思うわ」

 

「……流石に申し訳ないなぁ」

 

紡絆はうっ、と呻き声を出すと自身が怪我をしてるせいで激しい運動を禁止されたため、負担を掛けさせたと思ってるのだろう。

心の底から申し訳なさそうな表情をしていた。

 

「あ、えっと……いつも紡絆くんは頑張ってたんだから、気にしないでいい、のよ?」

 

そういうつもりで言ったわけじゃない東郷は少し言葉に躓きながらもフォローするように言うと紡絆は苦笑した。

 

「いつもはただ好きでやってるだけだからさ。流石にこう、なんと言えばいいのか……落ち着かないんだよ」

 

頬を掻き、どう表現するべきは分からないといった風な表情をしながら答える紡絆に東郷は何処か安心する。

 

「ふふ。紡絆くんは揺らがないわね」

 

そう、東郷の知る継受紡絆は、勇者部が知る彼はいつもこうなのだ。

ただ好きだから、やりたいからしてるだけだと答える。自身が怪我していても、行動出来ないことが落ち着かないのは彼が生まれ持って持った素質、と言えるのかもしれない。

お節介でお人好し、というのが似合う言葉だろう。当の本人はそう言われたら喜ぶと思うが。

だからこそ、東郷は嬉しそうに微笑む。ウルトラマンという力を宿しても変わらない姿に。

 

「俺も結構揺らぐぞ? うどんかラーメン、蕎麦を選べと言われたら選べないほどに」

 

「あら、それならうどんにすればいいじゃない。うどんには様々な種類もあるし麺の太さ、食感、味、コシ、具材、多岐に渡るほどに魅力的な要素は多いわよ?」

 

「いや、なんだかうどんのみに占拠されては行けない気がして……と、邪魔になってないか?」

 

残念ながら、勇者部はうどんに侵略されている。

本当は紡絆の脳裏では今の発言で戦争が勃発してしまったのだが、それを知るのは紡絆と掲示板(ヤツら)だけだろう。

 

「全然平気よ。息抜きも大切だし、他でもない紡絆くんだもの。友奈ちゃんと紡絆くんとの時間は大切だから。みんなとの時間も大切だけど」

 

「そっか……まぁ、邪魔になってないならいいかな」

 

「それより、どうしてそんな汚れてるの?」

 

思ったより雑談をしてしまったが、東郷は聞くタイミングを逃していたことを聞くことにした。

あー、と言いにくそうになった紡絆だが、隠す気はないらしい。

素直に口を開いた。

 

「……小さい子供が泣いてて、おもちゃ探ししてたんだけどおもちゃが車に轢かれそうになってたから、思わずと言った感じで」

 

「あぁ……」

 

それを聞いて、東郷は思わず納得してしまう。

おもちゃは買い直せばいい。しかしそれで納得するかどうかと言われると無理だろう。

大人やある程度成長したならともかく、小さい子にとってそれは宝物に等しいのだから。

それにしたって、怪我人なのに無茶をする姿は例え禁止したところで止められるものではないらしい、と東郷はため息を零した。

 

「え、ええっとほら! ちゃんと子供は笑顔になったし、運転手さんには謝ったし、特に問題があったわけじゃないから! そ、それに禁止はされたけど依頼中走ったりなんて決してしてないしさ!」

 

何を誤解したのか、紡絆は言い訳のように捲し立てていく。

そんな言い訳の中に自身が入っていないのは、東郷が何か相手に迷惑をかけたんじゃないかと思って、ため息を吐いたのだと勘違いしたからだろう。

 

「紡絆くん、私が言いたいのはそっちじゃなくて紡絆くん自身のことよ。怪我も治ってないんだし無茶したら悪化するかもしれないでしょ? 分かってるの?」

 

「うぐ……。それは……ごめん」

 

紡絆自身も自覚はあるのだろう。

言っても反省しないにせよ、謝ることだけはしていた。

 

「……まぁ、今に越したことじゃないけど、気をつけてね?」

 

「あっ、はい……?」

 

それでも、東郷は決して無理に止めようとはしない。

怒られると思ってたのか疑問形を抱く姿があるが、東郷だって彼の善意と厚意に救われた身。

彼の行動はそうやって、本人が知らぬ間にも誰かを助けるのだから。そもそも説教したのに辞めてない時点でお察しである。

 

(それに、そんな紡絆くんは……輝いて見えるし)

 

本来の仕事に戻りつつ、チラッと紡絆を見ると紡絆は飲み物を淹れていた。

紡絆は東郷の視線に一切気づくことはなく、お茶を飲みながら終えた猫の写真を取っている姿がある。

そんな後ろ姿を東郷が見てると、ふと紡絆が東郷を見た。

東郷は見ていたことにバレたのかとドキッとしつつ、パソコンに視線をやる。

紡絆は気にした様子もなく、東郷に近づいていた。

 

「そうだ東郷。明日って確か勇者部の活動はなかったよな?」

 

「え、えぇ。それがどうかしたの?」

 

悟られないように極めて平常を保ちながらパソコンを打っていると確認するように言ってきた紡絆に東郷は答える。

よし、と紡絆は小さく呟くと、ここで彼は予想外の発言をした。

 

「明日一緒に何処かに出かけないか? あ、二人っきりになるから嫌ならいいんだけど」

 

「……えっ?」

 

その瞬間、東郷の手が完全に止まった。

それは、普通の誘い方ではあるだろう。

ただ友達を誘ったという発言ではあるはず。それはいい。

しかし、それなら疑問を抱くのは何故わざわざ予定を聞いて、二人っきり、といったか、だ。

別に東郷だって紡絆と二人っきりで行くことはある。買い物や遊びに行ったり。

だが、いつもは必ずとも()()があったのだ。今回はそれがなく、ただ単に()()()()()()()()()()()()、とも取れる発言。普通の友人に対しては、あまり言う発言ではない。

それなら遊ぼう、とでも買いたいのがある、とでも言えば良いのだから。

だからこそ、東郷の脳内は混乱していた。

 

(ど、どういうこと? どうしてわざわざこのタイミングで? いつもなら友奈ちゃんと帰ってる時や部室内かみんなで帰宅する時にみんなで行こうとか部活の活動のことが多いのに。し、しかも目的もなく、休日に男女で一緒にってことはそれは世間一般でいう---)

 

「あー…いや、ほんと。何処に行こうとかは決めてないんだけど嫌なら嫌で断ってくれても」

 

「いいえ行きましょうっ!」

 

「ウェア!? お、おう……?」

 

様子がおかしい事に気づいたのか、断ってもいいと言おうとしたところで紡絆は変な驚き方をした。

東郷の勢いに若干身を引かせた紡絆だったが、そんな紡絆とは反対に東郷は何処か楽しそうだった。

よく分からない、というように紡絆は首を傾げているが、何だか機嫌が良さそうだと察すると特に何か言うことはしなかったが。

 

(今日帰ったら調べておきましょう。紡絆くんとで、でで---逢い引き…お出かけすることになるなんて。しかも二人っきり……だ、大丈夫かしら? はしたない行動はしないようにしなくっちゃ)

 

「や、やってやったぞ、コンチキショー……」

 

いくら上品な少女に見えても、東郷だって中学生。

学生だし青春を生きる少女だ。

そんな彼女が自身と同性である友奈と同レベルにまで信頼のおける()()()()()に誘われてしまえば、考えてしまうのは仕方がないだろう。

そしてまだ来ぬ明日について考えている東郷には頭を抑えながら小さい声で恨めしそうに紡絆が()()()呟いていたのは聞こえなかった。

例え聞こえていても彼女には分からないだろうが、それは()()に対して、だ。

少なくとも、紡絆は勇者部のみんなが帰ってくるまで無言の空間の中、脳裏で殺意と共に罵倒されまくった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

870:名無しの転生者 ID:U4Mu+n1sA

おい誰だよ。あんな安価したやつ

 

 

871:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

お前らだろうが! なんであんな罵倒されなくっちゃいけないんだよ! 一日中やるやつがいるか!?

 

 

872:名無しの転生者 ID:Twa+BkJIr

ここにいるじゃん

 

 

873:名無しの転生者 ID:rVdmoo3Az

美森ちゃんとおじさんもデートしたいなぁ!

 

 

874:名無しの転生者 ID:dndTfMhQZ

安価は……絶対だ。こればかりはもう何も言えねぇ! イッチ、分かってるな? あともう一つもやれよ? 今回は関係ないが

 

 

875:名無しの転生者 ID:gHMTrrJoC

>>873

ダメです。

 

>>871

羨ましいから……というかあれ前回告白言ったやつだろ! 運どうなってんだよ! 今回かなり速かったのに狙ったようにビンゴだったぞおい!

 

 

876:名無しの転生者 ID:wnYEU0l+B

どんだけイッチとくっつけたいんだ……?

 

 

877:名無しの転生者 ID:6bbHA33vh

いや、もしかしたらイッチを調子に乗らせて堕ちるところが見たいのかもしれん

 

 

878:名無しの転生者 ID:KrMw2siqm

愉悦部出身のやつかもしれないな

 

 

879:名無しの転生者 ID:iaSmfSBBu

まぁでも、せっかくなら楽しませろよ。泣かせたり喧嘩したら今度は三日間罵倒しまくるからな

 

 

880:光を継いだ転生者 ID:nX2S4UypW

脳壊れるから勘弁してくれ。あくまで友人同士のお出かけでしょ。っと、そろそろ行ってくるわ

 

 

881:名無しの転生者 ID:NG3y26QIy

逝ってこい

 

 

882:名無しの転生者 ID:y0QEHMSNu

こいつ……マジで言ってんのか?

 

 

883:名無しの転生者 ID:CxVMy2DjF

鈍感属性もついてるとかエロゲーの主人公かよ

 

 

884:名無しの転生者 ID:DSI9dOi/I

あの誘い方は絶ッ対誤解してるって。絶対デートだと思ってるって

 

 

885:名無しの転生者 ID:UYq2HcHVP

天然ジゴロはこれだから怖い

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転生者掲示板でやけにボロクソに言われた紡絆は気にした様子がないまま、東郷の家の前で待っていた。

今は掲示板を見てないが、建ててくれるらしいので気にしていない。

そんな彼らにも本当は家じゃなくて現地集合が望ましいとボロクソ言いながら何だかんだで助言されたが、東郷が車椅子のことを考えて集合場所を変えたのだ。

紡絆自身のファッションは、春らしい服装、と言うべきだろう。しかし長袖で少し丈が長い服にしてるが、これは怪我を少しでも隠すためである。

色的には黒と白。正直、カッコつけたりする訳でもなく自然体で普通だ。

ちなみに、エボルトラスターだけは無くさないように大事な収納バックに入れてるし財布もある。

スマホも念の為にあり、準備万端だった。

 

「さて…と。時間はまだまだあるが、どうするか。東郷は厳しいから早く来たんだが……大丈夫か、これ」

 

時間を見れば、まだ一時間前だ。

正直に言うと、現地集合するならともかく、近所だとすぐ着くということを視野に入れてなかったのが原因である。

女性を待たせない、という意味では正しいかもしれないが。

 

「……前世でもこんな大きい家は見たことないんだよな」

 

東郷の家は和風であり、それはもう一般の家より大きい。

見るだけで凄いとしか感想が浮かばないが、正面にいると怪しまれるかもしれないので少し横に移動しながら携帯の時間を確認したり、軽くパズルを落として消すゲームなどして暇を潰していると、引き戸が開かれる。

気づいた瞬間にはスマホを収納し、すぐに紡絆は向かった。

 

「ほら」

 

「え? あっ……ありがとう」

 

「いいって! これくらい全然な」

 

車椅子に乗って引き戸を閉めようとしていたため、大変だろうと引き戸をそっと閉める。

居たことに気づいてなかったのか東郷は驚いたようだ。

東郷が鍵を閉めながらお礼を言うが、紡絆は気にした様子もない。

 

「えっと……待たせちゃったかしら?」

 

「いや、そんなに待ってないから大丈夫」

 

東郷は鍵を閉めた後に鍵をカバンに入れると紡絆と向き合う。

もしかして待っていたのかと気にするような表情をしていたため、紡絆はよくありがちなセリフを言うしかなかった。

 

「それならいいのだけど……」

 

「おう。それに仮に待っていたとしても東郷みたいな綺麗な女の子を待たせるよりかはいいじゃん!」

 

「そ、そう……」

 

照れるように頬を赤める東郷だが、それは紡絆がお世辞でもなく笑顔で言って見せたからだろう。

まぁ、お世辞なしでも間違いなく綺麗に分類されるのだが、紡絆本人は偽りなく真っ直ぐな言葉で吐き出したため、それもあるかもしれない。

 

「それと……うん。似合ってて可愛いと思うぞ?」

 

「も、もう……恥ずかしいわ」

 

恥ずかしそうにする東郷の服装は青と白を基調とした明るめのもので、紡絆には流石に女の子の服についての知識はないので何と呼ばれる服なのかは分からないが、少なくとも似合ってるということだけは分かっていた。

 

「ごめんごめん。じゃ、行こっか」

 

「えぇ…任せて、ちゃんと行き先は決めてきたから!」

 

東郷の後ろに着いて車椅子のハンドルを握ると、一度深呼吸して落ち着いたのか東郷がそう言う。

 

「わざわざ決めてくれたのか……なんかこう、男として立つ瀬がないような」

 

東郷の言葉を聞いて紡絆は苦笑いする。

紡絆も一応としての場所は決めたものの、行きたいところがあるわけじゃないので、男としてはどうなのかと思うだけで特に異論することはないのだが。

 

「あ、なら……また一緒にお出かけするときにお願いしようかしら?」

 

「気にしてないからいいけど……そうだな、今度はちゃんと考えとくよ」

 

いつまた出掛けるかなど分からないが、紡絆は次があるならエスコートしようと心に決めた。

さらっと次も約束してるようなものだが、元々親友という親しい仲にある彼らにとって何かあるというわけではないのだろう。

 

「そういえばやけに大きい荷物を持ってるが、持とうか?」

 

「ううん、自分で持てるわ。ありがとう」

 

「分かった。必要になったらいつでも言ってくれ」

 

東郷が持つのは肩に掛けるタイプの大きいバッグだ。それを膝元に置いており、重たくないか心配した紡絆は善意で持とうか聞いたが、問題ないらしいので気にしないことにした。

仮に持たされたとしても、流石に中身を見るほど非常識でもなければデリカシーがないわけでもないため、特に問題はないのだが東郷には別の理由があるらしい。何故なら、揺れないようにか大切に抱えるように持ってるからだ。

車椅子を押すために後ろに回ってる紡絆は気づくことはないが。

 

「さて、目的地は?」

 

「えっと、実は見たい作品があって……」

 

「なるほど、それなら映画館か? じゃあ……向こう側だな」

 

「そうなるわね」

 

言いたいことを察した紡絆は視線だけを動かすと、東郷自身も頷いた為、目的地を映画館にしながら車椅子を押していく。

走るわけでもなく、普通の速度で。

そして車椅子を押しながら、紡絆は質問をしていく。

 

「時間は大丈夫か? この時期の映画は何があるか調べてないから俺は分からないんだが……」

 

「もちろん、ちゃんと確認してたから大丈夫よ。ただ……その、ちょっと帰りが遅くなっちゃうかも」

 

「なんだ、そんなことか。東郷とその分居れるってことだし楽しいだろうな」

 

「そ、そうね。私も紡絆くんと居るのは楽しいというか……嬉しいし」

 

懸念すべき材料もなくなり、家族が居ない紡絆に門限などないために問題がない。

それどころか、紡絆は前向きに考える。

その前向きな発言が少し問題なのだが、東郷も満更でもなさそうである。

 

「それならよかった。まぁ折角の休日だし問題ないだろう。晴れでよかったなー」

 

駅に向かって進みながら、そう呟く。

今日の予報では一日中晴れだが、天気を見ても雨が降りそうな雲は何処にも見当たらない。

絶好のお出かけ日和、と言える。

 

「雨が降ると色々と大変だものね。大事といえば大事なのだけど……」

 

挙げればキリがないが、洗濯などは困る。

でも雨がなければ他に困る人や困る要素も出てくるので、晴れだけと行かないのが地球という惑星だ。

それでも、折角のお出かけに雨が降るよりは晴れの方が良いはずであり、そのことを紡絆は言ったのだろう。

 

「その辺は(かぜ)の働きによるものだし、流石にどうと言えないな……。けど、こうやって晴れも雨も雲も、今日という日も俺たちがバーテックスと戦って守り切ったからこそ、今があるんだよな」

 

「そうね……そう考えると、良かったって思えるわ。

……無理したことは忘れてないけど?」

 

「うぐ……あ、あははー」

 

痛いところを突かれたというように言葉に詰まるが、紡絆は笑って誤魔化そうとする。

正直誤魔化せてないのだが、東郷はクスッと笑う。紡絆はきょとんと首を傾げていた。

 

「冗談だから」

 

「よ、よかった」

 

東郷の言葉に紡絆はほっと安心する。

また掘り起こされるのでは無いかと思ったのかもしれない。

そんなふうに会話をし、駅まで辿り着けば、駅員の力を借りながら慣れたようにテキパキと行動して乗車し満員ではない電車に乗って、発車した電車から流れる景色を眺める。

香川県の映画館は彼らが住む場所である讃州市---分かりやすくいうと紡絆が持つ前世、または西暦でいう観音寺市にはなく、高松市か綾歌郡しかないらしい。綾歌郡に行くには観音寺駅から直接行ける電車がないため、わざわざ乗換するのは車椅子の東郷も何処か思うところがあるだろう。

それを気遣ってか紡絆は観音寺駅から高松駅に電車での移動を選んでいた。それなら乗り換えすることもなく一時間あれば行けるのだから。

ただし、西暦とは色々と変わっていてその時にあった映画館を含め、全体的に建物がなかったりするものもあるのだが、流石に300年も違うと変わるものである。

---のだが、紡絆は不思議と一株の寂しさを覚える。

 

(四国しかないもんな……)

 

もちろん全員が仕事という訳ではないのもあるが、電車の中を見た紡絆は人の少なさを見てそう思ってしまう。

前世の記憶を思い出した彼からすれば、もっと人が居るものだと知っているからこそ思ったのだろう。

決して満員ほど居て欲しいとは微塵たりとも思ってないが。

気持ちを入れ替え、時々東郷と小声で会話をし、時々一人で考え、時々景色を眺め、そうやって辿り着くまでに時間を潰す。

それはどこか心地悪くなく、不思議と何か思うことがあるわけでもなかった。

唯一思うのとすれば、脳内の掲示板から安価しようぜ、だったり東郷に対して手くらい握れとかもっと気遣えよという指示が飛んでくることくらいだった。

そんなこんなでしばらく経つと、高松駅に着いたので駅員の力を借りて降り、お礼を言いながら車椅子を押しながら歩く。

 

「東郷、疲れてないか? 大丈夫か? 電車で寝てても起こしたぞ?」

 

「ううん、私は大丈夫よ。むしろ紡絆くんの方が疲れてるでしょ?」

 

「いやーそれが全然! スポーツするよりかは全然楽だし、体も動かさなきゃ鈍るしな!」

 

ここから映画館に行くには、徒歩だと40分は最低でも見積もっていていい。本当は映画館に行くには地区が違うのでまた電車で乗り継ぎした方がいいのだが、徒歩で行ける距離なので徒歩を選んだ。

紡絆は元々体力は高く、何よりも東郷のことを思って徒歩を選んでると思っていい。

彼女が車椅子であることを。誰かに迷惑をかけてるんじゃないかと気にしないように。

しかしそれをわざわざ言わないようにしてるが、残念ながら真面目な東郷は経路検索もバッチリなので思い切りバレていたりする。

だからこそ、東郷の顔は紡絆から見えないが、申し訳ないような嬉しいような感情が混ざった表情をしていた。

 

「ま、疲れたりなんかあったら言ってくれ。俺にできることなら何でもするからさ」

 

「……うん」

 

「よーし、じゃあ映画館まで頑張るぞー!」

 

普通の人間なら、それほどかかる時点で少し嫌な表情をするかもしれない。電車かバスに頼るかもしれない。

そもそも気遣うことなんてしないかもしれない。

しかし紡絆は違う。

底なしの明るさを全開にしながら他者を善意100%で気遣いつつ、前向きに考え、心の底から迷惑だとも嫌な気持ちも実際にないのだと感じさせる。それが彼の生粋の性格なのだ。

それはきっと、紡絆に似たような性格を持つ友奈だって同じかもしれない。

例えそのことに東郷が迷惑をかけてると分かっていても、思っていても紡絆は決して気にしないしそうは思わない。

その心遣いがあるからこそ、東郷は彼と安心して過ごせて、不安になることなくこうやって出掛けられる。

紡絆のそういう部分が誰かを無意識に助けて、救って、笑顔を作り出せるのだろう。

少なくとも、東郷は嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩き続けて辿り着いたところは、シネマ。

つまりは映画館。迷うことなく車椅子を押しながら入った紡絆は早速表示された予定表を見て口を開く。

 

「おー、何か映画館って感じ!」

 

「うふふ、映画館だもの」

 

出た語彙力は皆無だった。

まるで純粋な子供のような紡絆に東郷はくすり、と笑いながらも予定表と時間を確認してまだ問題ないと理解する。

 

「えーっと……わ、分からない。どれ見たいんだ?」

 

車椅子を動かし、程々にいる館内を見つつかなりの作品があるのを見て紡絆は首を傾げる。

というよりも、紡絆にはほとんど知ってる作品がない。せいぜい深夜アニメや特撮ヒーローくらいだろうか。

それも二つほどしかないのだが。

 

「これで……その…紡絆くんは興味ないかもしれないけど」

 

気にするように視線を送られると、紡絆はきょとんとしながら画面を覗き込む。

大丈夫だと頷きつつ、タイトルを見てスマホで検索してみた。

 

(あぁ……日露戦争、それも日本海海戦の話を描いた映画なのか。確かに軍艦については全然知らないけど、掲示板はやけに詳しい人いるな……丁字戦法がうんたらかんたら。一応前世の記憶によると日本の勝利、だったっけ? 史実通りかは分からないけど)

 

あらすじを読んでみると、どうやら日本海海戦を元にしたドラマらしく、感想ではドラマというよりは艦隊戦をメインに書かれているようで評価が高いようだ。

どうやら戦闘の方に気合を入れたようである。

 

「東郷が好きそうな作品だなぁ。ま、一緒に見てみよう。例え分からなくても映画を一緒に見たら感想は言い合えるし、用語などは調べたり……東郷に聞いたら教えて貰えそうだからな」

 

「……! えぇ、いくらでも聞いてちょうだい!」

 

「おう!」

 

機嫌が良さそうになったのを見て、紡絆はただ微笑む。

見る作品は中学生向けではないが、子供のように何処かソワソワする姿は控えめに言っても可愛らしいだろう。

普段とのギャップがあって、印象が変わる。

 

「入場まではちょっと時間あるし、パンフレットとか見てみるか?」

 

「確かに売り切れたりするかもしれないものね……見ておきたいわ」

 

「了解っと」

 

チケットも購入したため、グッズがある場所へ移動する。

色々なグッズもあって、それだけで楽しめるかもしれない。パンフレットを見てもどんな感じなのか想像させるような表紙だが、彼ら(掲示板)曰く戦艦である三笠が表紙になっているパンフレットがそれ、らしい。

紡絆には全く分からなかった。東郷は目を輝かせていたので、理解しているらしい。

 

「……まぁ、いっか!」

 

そして紡絆は諦めた。

文句を言われているが意識外へ持っていき、ただ東郷の姿を眺めながら車椅子を押す仕事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画の内容は至って特に改変もなく、史実通り日本の勝利。

内容を軽く纏めるならば日本海海戦とは、1905年、5月27日から5月28日にかけて、大日本帝国海軍の連合艦隊とロシア海軍の第2・第3太平洋艦隊との間で行われた海戦である。

ロシア軍の艦隊をバルト艦隊、「バルチック艦隊」と呼べば有名で分かりやすいと思うが、最強とされた艦隊の名前だ。

主な艦は前弩級(ぜんどきゅう)戦艦スワロフ、インペラートル・アレクサンドル三世、ボロジノ、アリョール、オスラービア、シソイ・ウェリーキ、ナワーリン、ニコライ一世、装甲巡洋艦であるナヒーモフ、ドミトリードンスコイ、モノマーフ、海防艦であるゲネラル・アドミラル・アプラクシン、アドミラル・セニャーウィン、アドミラル・ウシャーコフ、それから旅順艦隊とウラジオ艦隊。

それがロシアの戦艦8隻、海防戦艦3隻、装甲巡洋艦3隻、巡洋艦6隻で他全38隻だ。

一方で日本の戦艦は三笠、富士、八島、敷島、朝日、初瀬。装甲巡洋艦の八雲、吾妻(あずま)、浅間、常磐、出雲、磐手(いわて/いはて)、日清、春日だ。

戦力としては戦艦4隻、装甲巡洋艦8隻、巡洋艦15隻、他全108隻である。

一から語ると大変なためにどういう戦いかざっくりカットして言うならば、結果は日本の勝利である。

勝利となった要因は、ひとつ、指揮能力。

最前線で敵の動向に瞬時に対応する陣頭指揮を行いつつ、速やかな指揮権継承を保障するなどの指揮をとったこと。

旅順封鎖の期間中も演習を行い、十分に艦隊の練度を上げていたこと。

直前の黄海海戦(こうかいかいせん)などの戦闘経験と、その勝利によって士気も高かったこと。

また、黄海海戦(こうかいかいせん)の教訓を十分に活かしたこと。複数の艦を同時に自由に反転させるなどの様々な艦隊運動を思いのままに行うことができたのもあり、逃げ回るバルチック艦隊の風上に常に回り込み、艦隊を維持しながら砲撃を加え続けることができたこと。

もうひとつは、戦術。

七段構えの戦法と呼ばれる参謀が立てた迎撃作戦計画が上手くいったこと。

高速近距離射法と呼ばれる駆逐艦や魚雷艇で敵艦に全力で接近して行う魚雷夜間攻撃法が成功したことによったトドメの打撃を与えたこと。

 

つまり、より分かりやすくいえば七段構えの戦法の中に入っている第二段、艦隊の全力を挙げて、敵主力部隊を砲雷撃により決戦。丁字戦法(ていじせんぽう)が行われ、第三・四段の昼間決戦のあった夜、再び駆逐隊・水雷艇隊の全力で、敵艦隊を奇襲雷撃。高速近距離射法が行われたことによる成功が原因だ。

もちろん、他にも色々とあるが、主には前述の七段構えの戦法と指揮力、気象が一番の要因といえる。

それが成功したのも、一重に最新鋭で最も装甲の厚かった三笠に集中攻撃を被弾させることで他艦に被害を及ばさないことにし、万一三笠が大破しても丁字の状態を完成させることを最優先としたところも大きいだろう。

後は丁字戦法(ていじせんぽう)とは文字通りの『T』を作ること。

側面から撃つ方が砲撃は撃てるからであり、日本側は『一』の方向だったからだ。

といっても、日本海海戦では意見が分かれており、斜めの『イ』であったと言われているのだが。

 

とまあ、海戦当日の気象は、「天気晴朗ナレドモ浪高シ」とされていたように、風が強く波が高く、日本側の回り込みによって風下に立たされたバルチック艦隊は、向かい風のために砲撃の命中率がさらに低くなったので不利なのもあったと思われる。

実際にロシアの司令長官は航海経験が有るため、「ロシア艦隊が台風の直撃を受けたら、戦わずして過半の喪失もあり得る」と認識しており、台風の直撃を受けにくい対馬海峡を突破する航路を決断したのも一因となっただろう。

 

これが、史実。そして史実通りに映画も作られており、艦は水雷艇3隻の沈没のみが日本の損害だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほど、わからん!」

 

そして、紡絆は全く理解出来なかった。

そもそも軍艦がどうであれ、勝ったのか、くらいにか思えないだろう。

理解するのは難しく、紡絆は脳裏でも説明を受けていたが投げ出した。

 

「けど……見て良かったとは思うな。色々と派手だったし、映画ならではの演出だった」

 

「そうね。砲撃や魚雷、映写幕が大きいのもあって見応えも良くって、それから三笠のあの雄姿! あれほどの集中砲火を受けてもなお勇敢に戦い、生き残って見せた姿はとてもカッコ良かったわ! ちなみに敷島型戦艦の四番艦三笠は旧世紀、昭和の時代に作られた前弩級戦艦で排水量は15,140トン、全長は131.7mで最大幅23.2m。吃水(きっすい)は8.3m機関は15,000馬力で速力は18ノット! 航続距離は10ノットで7,000海里---つまり約13,000kmも可能なの! 兵装は---」

 

(あ、これスイッチ入ったな)

 

何が何やら分からない紡絆は諦めつつ苦笑いしながらも仲間たち(掲示板)に頼りながら必死に何か理解していく。

が、主砲 40口径30.5センチ連装砲2基4門な副砲 40口径15.2センチ単装砲14門とか言われても強いのかどうかすら分からないために徐々理解するのを諦めかけている。

それどころか、次々と東郷が装甲はKC装甲鋼板(クルップ鋼)舷側(げんそく):9in(228.6mm)-4in(101.6mm)KC鋼、甲板(かんぱん):3in(76.2mm)-2in(50.8mm)砲塔:14in(355.6mm)-8in(203.2mm)砲郭(ほうかく):6in(152.4mm)-2in(50.8mmを使っているなどと言い出してついにキャパオーバー。

二重攻撃によって頭が真っ白になり、頭を抑える。

 

「それで他にも活躍が……あっ」

 

「う、うえぇ……クルップ鋼ってなんだ……ん? どうした?」

 

もはや語っていた東郷の言葉など理解出来てなく、紡絆はひたすら知らない金属について考えてたら突然何処か暗い面持ちになった東郷に疑問を抱いて聞く。

ちなみにクルップ鋼とはニッケルとクロムを配合した合金鋼の表面に浸炭(しんたん)焼き入れをして強度を増した装甲板のことである。

 

「う、ううんなんでもないの」

 

「そうか? んー……ならいいけど」

 

紡絆は訝しそうに見つめるが、本当にそこまで気にしてるようなことではなさそうだったので素直に信じることにした。

それよりも知恵熱でも出たのではないかというくらい頭が痛いので、深く追及をしない。

 

(どうしてだろう……。こんな話をするのが()()()()と感じたのは……?)

 

俯きながら、東郷は自問する。

途中で止まった理由は、そんなことを思った理由は彼女も分からなくて、彼も分からないだろう。何故かは分からず、ただ疑問を抱きながらも東郷は気のせいだと思い込むことにした。

そして、すぐに思考が切り替わる出来事が起きる。

ぐぅーっとお腹の虫が鳴るような音が聞こえたのだ。

ふと顔を上げてみれば、紡絆が少し元気をなくしていた。もしかして、と思うと、紡絆が口を開く。

 

「……腹減った」

 

「もう昼過ぎたものね……遅くなったけどお昼にしましょうか」

 

「しゃー!」

 

その言葉を待っていたと言うように嬉しそうに喜ぶ紡絆。

どうやら、お腹が空いて元気を少し無くしてしまったらしい。

そんな紡絆を見ながら、東郷はさっきのことを一瞬考えて見ても、何とも思わなかったので気のせいだと納得する。

---少しの蟠り(わだかまり)を残しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで、外。

駅の近くの公園まで辿り着いた東郷と紡絆だが、紡絆は店に行かなかった理由が分からないままだった。

一応すぐ帰れるようにと落ち着ける場所を探してここにしたのだが、肝心のご飯がなくて空腹を抑えるので精一杯な様子。

その公園の木陰広場には芝生があり、ピクニックに来てる人もいる。普通に休んでる人や遊ぶ人も。家族連れの人も居て、空腹はあるが、その光景を見て紡絆は少しほっこりしていた。

 

「ここでいいのか?」

 

「うん、お願い」

 

言われた通りに車椅子を止めると、受け取ったレジャーシートを芝生の上に敷いていく。

人が二人座っても問題ないほどの大きさのシートであり、紡絆はただ言われたままに敷き終え、しっかりと伸ばした際に折れたところを真っ直ぐに戻して整えていた。

その間に東郷はゆっくりと車椅子から降りており、紡絆は慌てて手伝おうとするが、東郷が大丈夫というように首を横に振ったので従う。

 

「ほら、座って?」

 

「じゃあ失礼して」

 

ぽんぽんと女の子座りする東郷の隣に紡絆は靴を脱いで座る。

そんなふうに紡絆と東郷が座っていてもまだ余裕はあるようで、紡絆はリラックスするように息を吐いた。

そんな紡絆を見て微笑を浮かべた東郷はカバンから何かを取りだし、それを広げた。

 

「紡絆くん。実はね、お弁当作ってきたの」

 

「お、おぉ……だからカバン大きかったし、店で食べなかったのか」

 

「えぇ。是非食べて欲しくて」

 

広げられた弁当箱は重箱の三段あるもので、おにぎり、タコさんウインナー、唐揚げ、厚焼き玉子、ブロッコリー、トマトにきゅうりやアスパラガスが入っている肉巻き、焼売といったしっかりと彩りを大切にしていると分かる重箱だった。

それに驚きながらも、紡絆は納得する。そして、再び腹の虫が鳴っていた。

 

「美味そうだな……食べてもいいのか?」

 

「もちろん、そのために作ってきたのよ?」

 

「なら……いただきま〜す」

 

手を除菌シートで拭き、手を合わせた紡絆はおにぎりを一つ取り、ゴクリと喉を鳴らせる。

じーっと見つめ、我慢できないというように一口かぶりついた。

 

「ど、どう……かしら……?」

 

「……。……っ! ……! ………〜〜っ!」

 

少し不安そうな表情で紡絆を見る東郷。

紡絆は口に含んだおにぎりを咀嚼し---目をカッと見開くと厚焼き玉子と唐揚げを口に含み、おにぎりを一気に食べる。

しかし紡絆の頬がリスのように膨らむと、涙目になっていた。

 

「つ、紡絆くん!? だ、大丈夫!? もしかしてダメだった!?」

 

「んーっ! むぐ……! むぐぐ、もぐもぐ……!」

 

「な、何? ごめんなさい、分からないわ」

 

紡絆は涙目になったまま何かを伝えたいのか咀嚼しながらこくこくと頷いたり胸を叩いたりする。

が、流石に東郷もどういうことか分からないらしい。

 

「んぐ……ごっくん……。はぁ〜っ! いやごめん。本当に止まんないくらい美味い! こんな家庭的で美味しいご飯作れるなんて東郷は絶対良いお嫁さんになれると思う。いいや、俺が断言するッ!」

 

「へっ!? ほ、ほんと?」

 

何の権利があって断言しているのかは定かではないが、どうやら美味しくて止まらなかったせいで喋れなかったらしい。

実際に紡絆は目を若干輝かせながら次はどれを食べようか迷っていた。

そして次の獲物を探しつつ、頬を赤めてる東郷の言葉に紡絆は頷く。

 

「うん、絶対。東郷のご飯は何度か食べてきたけど、今日が一番な気がする。その時も美味しかったんだけど、今日はまた一層美味しい……かな?」

 

「よ、よかった。実は……その、今日のは自信作だったの」

 

「なるへほ……はむ。納得。んぐ、幾らでも食えそうなもぐ、くらいにむぐ、美味い……! 果たしてこんなの、もぐ。俺だけむぐむぐ。食べて---」

 

顔を赤くしている東郷に気づかないまま、目の前の弁当に夢中になった紡絆はついに喋る時だけは口を抑えつつ食べ始めた。

どうやら休むことなく食べるほど、美味しいのだろう。

それに家ではなく、このような自然溢れる外で食べるご飯がまたより美味しさを感じさせるのかもしれない。

 

「もう……喋る時は口の中が無くなってからよ?」

 

「ふぁーい……!」

 

注意してもなお、食べるのをやめない紡絆を見ていると、料理を作った甲斐があると言えるだろう。

東郷は優しそうな、それでいて嬉しそうに紡絆を見ながら自身も食べていく。

余程お腹が空いているのか、紡絆の食べる速度は早いが、しっかりと噛むようにはしているらしい。それに食べてばかりではなく、おにぎりの中身が違うことに驚いたり、味付けが好みだということを伝えたりなど、東郷にお礼を言いながらも味について感想を伝えていた。

紡絆からの感想はどれも高評価で、むしろ褒めすぎるほどだ。

そんなふうに互いに弁当を食べていき、途中で完全に喉に詰まって苦しそうになった紡絆の姿に東郷が慌ててお茶と背中を摩る出来事が起きたくらいで他は特に何も無く、無事に食べ終えた。

 

「ふぅ……ご馳走様。本当に東郷の料理って美味いよなー。毎日食べたいくらいになるほどだし!」

 

「ご馳走様でした。そ、そこまでではないわ……」

 

「そうかなぁ……俺なら絶対飽きないけど」

 

重箱を片付けながら謙遜するような言葉を吐く東郷に紡絆は手伝いつつ首を傾けながら言うが、世間一般でいう告白に近い言葉を吐いてることに気づいているのだろうか。

いや、無自覚だろう。東郷もそれは気づいているのか本気にはしていないようだが、満更では無い様子。

 

「こ、こほん。そんなに褒めたってこれしか出せませんっ!」

 

「お、おー……あれ、これは?」

 

褒めちぎる紡絆に対して、若干顔が赤いまま誤魔化すように新しく取り出した容器。

さっきよりかは大きくはないが、今度も一体何なのか想像が付かないらしく、紡絆は興味津々に見つめる。

そんな紡絆を気にせず、東郷は容器の中身を開けた。

 

「紡絆くん。あの時約束したでしょ? 戦いが終わったらぼた餅食べさせてって。その約束」

 

「……あぁ、覚えてくれてたんだ」

 

そう、その中身はぼた餅。

ただ紡絆の腹もそれなりに満たされると分かっていたのか三個のみで、紡絆は照れ隠すように後頭部を軽く掻いていた。

 

「無事とは言えないけど……ちゃんと帰ってきてくれたんだもの。だから約束を守ってくれたお礼」

 

「それなら……有難く頂くかな」

 

「ふふ、はい」

 

容器を笑顔を浮かべながら差し出してくる東郷に紡絆は手を伸ばしてぼた餅を一つ掴み取り、一口食べると笑顔になる。

うん、と頷きながら流石に餅なのでパクパクと行かず、ゆっくりと食べていた。

 

(……一応、誘ったのは安価とはいえあんな目の前で血を吐いて出しまくったからその詫びも兼ねてたんだが、返せなくなりそうだなぁ)

 

ぼた餅を食べながら紡絆はそんなことを思っていた。

彼が一切デートと思っていない理由は、間違いなくそれなのだが、声に出していないので東郷には分からないだろう。

なお、実は周りの人からは成り立てのカップルがデートしていると思われていたことは二人は一切知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして再び電車に乗り、既に夕焼けとなっていることからもう17時は過ぎているのだろう。

無事に戻ってきた紡絆は東郷の車椅子を押しながら、帰宅するための道を歩んでいた。

 

「今日は楽しかったーっ! なによりご飯美味しかったし!」

 

「そんなに言われると照れるわ。食べたければいつでも作るし……

 

「東郷?」

 

「な、なんでもないから気にしないで」

 

「……? そっか」

 

流石に聞こえなかった紡絆は聞き返そうか悩んだか、何だか俯いていた東郷がそんな様子じゃないので素直に口を閉じる。

ただ自分たちがよく通る道を歩きながら、陽に照らされる。

特に会話がなくとも、居心地は変わらない。どちらかといえば、良いと言えるだろう。

そこでふと、紡絆が口を開く。

 

「……別に勇者部の活動をするのも好きだけど、こうやって次はみんなと出掛けるのもいいかもしれないな」

 

「そうね。今度は友奈ちゃんや風先輩、樹ちゃんとも一緒にお出かけるのも悪くないわ」

 

「うん、だな! きっと今よりも楽しくなると思うぞ〜!」

 

二人で十分楽しかったならば、親しいメンバー全員ならばもっと楽しくなるだろう。

それを思って、紡絆は言ったのだ。それは東郷も同じ気持ちらしく、同調していた。

そんな、いつかのことを考えながら帰り道を歩いていると、二人の家が見える。

どうやらいつの間に帰ってきていたらしい。

 

「お、何だか帰ってきた感じがする」

 

「それはもう帰ってきてるからじゃないかしら?」

 

「本当だ」

 

他愛もない、本当にただ自然。

そんな会話なのにも関わらず、東郷は思わず笑ってしまう。変に気取るよりも、良いのだろう。

少なくとも東郷にはここに引っ越して来た当時では考えられないくらい、今はお役目以外の、日常での不安は一切なかった。

 

(それも……友奈ちゃんと紡絆くんのお陰ね)

 

こっそりと東郷が視線を紡絆に向ければ、紡絆は口角を上げたまま前を向いていて、普段通りだ。

疲れている様子なんて全くなく、これで怪我人なのだから逆にびっくりしてしまう。

 

(……本当に、初めて会った時から変わらない。紡絆くんには私と違って記憶が無いのに、誰かに優しくできる。きっとみんなそこに惹かれていくのね)

 

自分が惹かれたように、彼の優しさに触れて、彼の温かさに触れて、彼に助けられて、笑顔を見て、救われるのだろう、と東郷は考えた。

もしかしたら、彼に惹かれるだけでなく---流石に続く言葉や考えた言葉を本人に言うのは恥ずかしくて言えないのだが、紡絆は視線に気づいている様子はなかった。

それどころか、ころころと表情を変えていて面白い状況となっている。

 

(何を考えていたらそんな変わるのかしら……でも、ちょっと得した気分)

 

東郷は知らないだろうが、表情がころころ変わっている理由は脳裏でぐっちゃぐちゃ言われているからである。

達観したような表情になった紡絆はそのまま歩き続け、東郷はバレないうちに見つめるのをやめていた。

 

「よっし、ゴール!」

 

「お疲れ様、紡絆くん。ここまでありがとう」

 

「いやいや、全然大丈夫だって! まだまだ余裕あるし!」

 

玄関前まで連れてきてくれた紡絆に労りの言葉とお礼を述べると、予想通り返ってきた答え。

 

「今日は私も楽しかった。一緒に行けてよかったわ」

 

「ん、俺も分からないことはあったが、それは同感だな」

 

分からないことというのは、間違いなく説明されまくった三笠についてだろう。

オーバーヒートした後、既に紡絆は記憶から消去していた。

 

「なら良かった。勇者部も活動も……お役目も頑張りましょう」

 

「もちろん! それじゃあ、はい」

 

「…えっ?」

 

東郷が安心したように微笑むと、紡絆も笑顔を浮かべながら頷き、帰る前にと袋を渡した。

目をぱちぱちと瞬きしながら袋と紡絆を交互に見る東郷に、なんと言えばいいのか分からなそうな紡絆。

 

「弁当に比べたら大したもんじゃないけど、お礼ということで。いや、ほんと要らなかったら処分していいから。じゃ、次は勇者部の活動で!」

 

比べるのも失礼なのでは、と考えつつも紡絆は渡したものは渡したからか、背を向けて体を伸ばしつつ歩きながら敷地内から出て帰って行った。

その背中を見ながら、東郷は受け取った袋の中身を取り出して見てみる。

 

「………」

 

入っていたのは、見た映画のパンフレット。

そして、紡絆は分からないようだが、戦艦である三笠が描かれたマグカップ。

間違いなく、しっかりと精密に描かれた船のそれは中学生からしたらかなりの額を支払っただろう。

確かに東郷の作ってきた料理の原材料から含めて全て考えると値段はマグカップ以上かもしれないが、別に料理は全ての材料を詰め込んだわけでも全ての調味料など使ったわけでもないのだからはっきり言うと、そこまで金はかかっていない。

それに第一、異性であって親友と思っている、わざわざ休日に二人っきりで出掛けるような異性からもらったものをあっさりと手放すと思っているのだろうか。

そもそも東郷の性格からして、貰ったものを捨てるなど彼女を知るものなら考えられない。否---

 

「……もう。絶対に、大切にするから」

 

そのマグカップを両手で包み込むように大切に抱える彼女を見て、捨てるように見えるものがいるならば間違いなく大馬鹿に違いない---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





〇継受紡絆/ウルトラマンネクサス
色々やらかしてるやつ。でもしっかり褒めれて気遣える。
彼からしたら誘ったのは安価とお詫び。
何気にウルトラシリーズでは珍しい身体能力強化有り

〇東郷さん
デートだと思いつつ、楽しんでた子。
何やら艦についての話で似たようなことがあったらしいが…?
ちなみに弁当は紡絆がぼた餅を食べれる量に調整してるので多分胃袋掴んでる。
紡絆くんと友奈ちゃんの事故は間違いなく確信犯。
仕方がないね

〇友奈ちゃん
事故とはいえ紡絆くんに押し倒されて思考停止したが、自分が悪いことも自覚していた。
仕方がないね

〇風先輩
紡絆の参加についてしっかり考えられる辺り部長。
紡絆が友奈を押し倒したところは流石に気まずい。
仕方がないね

〇樹ちゃん
上に同じ。
たまに毒を吐くし、今回は紡絆に冷たい視線を送っていた。
仕方がないね、

〇エボルトラスター
ヤンデレ説

〇転生者掲示板
ツンデレと変態とホモと嫉妬深い童貞など、とにかくふざける集団。基本的にイッチ(紡絆)に対して辛辣。
が、真面目な時は心配するし真剣になる。普段とのギャップがすごいヤツら。
たまに他のウルトラマンはいる

▼日本海海戦
多分あってます。途中から頭痛くなった。

▼質問
Q.他トラマン

A.ウルティノイド組は全員出ます。本編中ではネクサスと過去編でネクスト(アレ)です。
ただ終了後は出すかも?
紡絆の宇宙出なくともゼロ師匠やオーブ、エックス、ゼット辺りなら行けるのでは?→後に無理な真の理由は出ますたぶん
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