プロローグ/prologus
10:00 天候 快晴 気温26°
金属と金属がぶつかり合いそこらじゅうから銃声が聞こえる、鼻はとっくに硝煙の匂いに慣れてしまったようだ、時々聞こえてくる叫びが奇襲にあった仲間がどうなったかを教えてくれる。
どうにかして撤退せねば自分の小隊までやられてしまう
「おい、急いで撤退するぞIMCの奴らここまで来そうだ」
振り返るが誰も居ない。
ああ なんで忘れていたんだ
「そうだったな、仲間なんてとっくに死んじまってるよな」
ついに気も狂ったか、いやこんなとこにいるんだ狂ってるに決まってる。
目の前にある仲間だった"それ"が小隊が壊滅したことを示している。
「頼れるのはこいつだけってか」
手に持つCARにマガジンを込め周囲を見渡す
どこにでもある様な町なのだがこの町ではどうやら銃声と硝煙の匂いがするらしい
敵は居ないだがまた奇襲を受けるやも知れん、味方陣地まではおおよそ北へ2km
遠いなと呟きつつ地図をしまう。
1人では心もとない、誰かしら仲間はいないのかと無線に声をかける
「こちらデルタ4‐1 敵の奇襲を受け分隊は壊滅 撤退を要請するオーバー」
「こちらCP 撤退を許可する それと被害状況の具体的な報告を頼むオーバー」
「 デルタ4‐1 了解 奇襲を受けたせいでデルタ本隊と逸れた うちの小隊は壊滅して俺だけだ できれば近くの仲間と合流したいオーバー」
「こちらCP 了解した 貴官の近くでデルタ4‐2が撤退中だ 貴官のいる建物の北の方角に図書館があるはずだ そこで11:10頃に合流をしてくれオーバー」
「デルタ4‐1 了解 図書館へ行くのはガキの時以来だワクワクするよオーバー」
「呑気に本を読んで死なないでくれよ IMCの奴らに笑われちまう すまん少し待ってくれ 何?…いやわかった 。 残念な知らせだ、どうやら他の部隊でも奇襲があったらしい、行くなら急いだほうがいい頑張ってくれオーバー」
どうやら奇襲を受けたのはここだけではないらしい、急いで図書館へ向かわなければ
10:15 天候 快晴 気温 25° 道中 家屋にて
「流石に… 疲れるな」
奇襲を警戒し360°何時敵が来てもいいように構えておく、これが簡単だと言うものはいないだろう。
重装備を着て快晴の中歩くというのはかなりの体力を消耗する
適当な家屋に敵がいないか確認して入る
「時間は…あるな 少しばかり休むか」
よっこらせと適当な椅子に腰を下ろすと銃、ナイフ、手榴弾などの装備を確認する。
「装備は問題ないな、それにしても暑い…」
一通り確認を終えると水筒の水を飲み始める
その時だった
ゴトッ
「ッ!」
何かが落ちる音 即座に水筒を置き銃を構える
ゆっくりと音のした部屋へと向かう 警戒しながら扉を開ける。
だがそこにあるのは古びた椅子と机だけだった。
誰もいない?そんなことはないはずだ音はした、ならばどこでなったんだ?
そう思考に浸っている時
刹那 後ろへと銃口を向ける 目の前には165cmほどの人影 手には鋭利な破片を持っている、咄嗟に反応できたのは戦場で培った勘のたまものだろう
「投降しろ この間合いならお前がそれで俺を殺すより早くお前を殺せる」
16歳程だろうか少年が血濡れたガラスの破片を持って立っている
「あんたも白いやつの仲間なのか?」
綺麗な日本語で喋りかけてくる
白い奴とはまた抽象的だなまた白い服とはIMCの奴らのことだろうが、しかし民間人は厄介だからな、なにか起きればすぐ国際問題になる
「いや俺はミリシアだ 白い奴らと戦っている 敵対する気がないならその手に持っているのを離せ」
「…わかった」
敵対する気がないのかすんなりと離す
民間人は避難したはずだ ならこいつはなんだ…
考えていてもキリがないし民間人なら保護しなければならない、そういった努力によってミリシアは抵抗者として世間から扱われているのだから。
「君は何故ここにいる 民間人は避難したはずだろ?」
警戒したまま声をかける
「逃げようとしたんだ… でも逃げる前に空からやつらが降ってきた」
「なるほどなドロップシップからじゃなかったのか」
ドロップシップからの輸送は一度に多くの兵をおくれるが制空権の確保が必須だったり輸送に時間がかかる、しかし宇宙から輸送用の機械に乗って輸送するなら数は少ないが宇宙から落下するだけなので制空権も時間もかからない
しかし民間人に手を出したのか…これは国際問題じゃないのか?
いや その前にCPに伝えなくては
「君 名前は?」
「トーヤ」
トーヤ?日本系じゃないのか?いや確か"トウヤ"とも言うんだったか?
「トーヤか 俺はホルストだ とりあえずは難民としてミリシアで保護する ついて来れるか?」
「わかった」
「しかし何でその…血がついてるんだ?その破片…」
「白いやつがきたからこれで倒した」
「倒したって…」
まともじゃないな、普通そんなことはできない
(IMCのライフルマンといえどまともな訓練を受けた大人だ、子供がガラス片だけで倒せるような相手ではない、もし本当ならかなりの才能がある…パイロットにもなれるのでは?いやこんな世界に子供を入れるなんて野蛮なことはできん。)
「家族はどうしたんだ はぐれたか?」
「死んだ」
吹っ切れたのか
「他に生き残りはいるか?」
「いない」
生き残りはいないらしい、まあその分保護する手間が省けるのだが
とりあえずは連絡を入れなければ
「こちらデルタ4‐1 市街地にて避難に遅れた民間人を発見、基地まで避難させたいオーバー」
「こ…ら…P…………オー…」
砂嵐の様な不快な音のノイズが耳元になる
機器の故障か?
「ノイズが酷くて聞こえん、もっとしっかり言ってくれ」
「…………………」
ノイズだけが耳に届く
「繋がらなくなっちまった…ッチ」
こんな時につながらないとはとことん運がないようだ
時計を見る 10:45 そろそろ行かないとまずいな
「とりあえずは仲間と合流する、来れるか?」
何をしているのかとこちらを見ているトーヤに言う
「行ける」
「なら行くぞ」
11:00 天候 曇り 気温22° 図書館近辺
雲が空を覆い尽くしている
雨が降らないと良いのだがなどとぼやきつつ先を見る
「あれは…もう先についてたみたいだな」
図書館の近くの荒れた駐車場には見慣れたミリシアの装甲車と兵が周りを警戒しつつ待機していた
「あれがおじさんの仲間?」
「そうだ 同じ部隊のやつらだ、それもそうだがその おじさん って呼ぶのはやめろ俺は全然若いし そもそもヘルメットで顔見れてないだろ」
「周りがおじさんに見えたらそれはおじさんなんだよ?」
「うっ」
こいつ結構毒舌だなと思いつつ仲間のもとへ急ぐ
近くまで来ると周辺を警戒している兵が声をかけてくる
「ホルスト少尉殿ですか?」
若い兵士が声をかけてくる、これほど仲間との再会を喜べる日がくるとは
「第1小隊のホルスト少尉だ、こっちが先程保護した民間人」
「了解しました、ではどうぞお入りください」
そういうと敵味方判別用のICチップを渡される、これを付けることで索敵用の兵器を使う時に味方が映らなくて済むことから基本的に部隊ごとに分けられている
「ああ、そういえばあの筋肉バカはどこにいるかわかるか?」
「中尉殿なら無線機器のあるテントにいますよ」
どうやら筋肉バカでも通じるらしい
「了解した」
そういいトーヤと共にテントへ向かう
「デルタ4‐1 ホルスト少尉です」
駐車場にはいくつかの装甲車やテント、無線機器などが置いてあり駐車場端の花壇には土豪が積まれ遮蔽物がわりにしてある、また休憩する隊員と警戒にあたる隊員、無線をいじっている隊員などそれぞれが仕事をしている。
「デルタ4‐2 クラーク中尉だ あの状況でよく生きてたな」
そう言いつつ握手をしようとしているのはがたいの良い 筋肉マッチョの髭を生やした白人男性 同じデルタ大隊の小隊長であるクラーク中尉だ
「たまたま運がよかっただけです、私もあの中生き残れるとは思いませんでしたし万が一接敵していたらやられていましたよ」
60人ほどいた小隊もいまや1人しかいない、ここまで生き残れたのは偶然が重なったからだろう
「ご謙遜を、パイロット並みの射撃技術と格闘術を持つお前がやられる?そんなことあるわけないだろう」
中尉がそういうと突然他の隊員たちが好奇の目で見てくる
「中尉殿それは一体どういう?」
近くにいた兵の1人が言う
「軍曹、君もパイロットのフルコンバット認証は知っているだろう?」
「はい、何しろ死亡率90%越えのパイロット資格の最高峰ですからね、まさか少尉殿はそれを?」
「ああ、試験を受けて無事…落ちた」
こいつ言いやがったと中尉を睨みつつ補足を入れる
「落ちましたよ、神経接続ができないって理由でね」
「神経接続…ですか?」
「ああ、タイタンを操縦するときは神経接続をして操縦するんだ、だがどうやら俺は神経接続ができないらしい、詳しいことは医者じゃないから知らんが一定数俺みたいなのがいるらしいんだ、それでタイタン操縦が0点で見事に落ちたんですよ、これでいいですか中尉?」
あとで必ずシバかなければと頭の中にメモしておく
「って訳でこいつは実力はあるのにタイタンを動かせないせいで不合格くらったんだ」
それを聞いて哀れみの目で見てくる輩やパイロットの格闘術と聞いて好奇の目で見てくる輩などがいる、言うことはまだいい、だけど何だろうか すごくうざい
「この話する必要ありました?次は中尉の失恋話でもしましょうか?」
明らかに焦り出すクラーク中尉
「まあとりあえず立ち話も何だからこっち座れよ」
話を変えやがったと内心舌打ちしつつ 装甲式の超大型車兼指揮所の車へ案内される
「これは…でかいな、こんなの良く手に入れられましたね…」
指揮所に使える程の硬度を持つ装甲と大きさのある車両など普通小隊程度の部隊に配備されないしかも超大型なんてかなり最新式なものが来るなんて普通はありえない。
「驚くなよ?内装はもっとすごいぞ?」
そう言いうと車のドアが開く、ヘルメットを取り中へと入る
中は見た目以上に広く大型の無線機やら資料の束、椅子や机なんなら簡易的な寝床まである、中には謎の筋トレ道具まである…多分中尉のだろう
「広いな…通信機器も完備されているとは、このいらない道具どもを捨てればさらに置けるのでは?」
「おっと少尉、君にはこれの良さがわからんのか?それに日々鍛えなければ筋肉が弛んでしまうだろう?」
そう言うと中尉は筋トレを始めようとする
「おじさんたちは何言ってんの?」
そういえばまだ紹介していなかったと思い出す
「すまん、紹介してなかったな、南の方の市街地で保護した子供です、名前はトーヤと言うらしいです」
「おっと忘れていたなトーヤか、じゃあアジア系だな英語がわからんと言うことは日本系か?」
そう言うとクラークはヘルメットの翻訳用デバイスの電源を入れる
翻訳用デバイスは無線などと同じ電源から電気を取るため必要な時以外は基本的にはオフにするようになっている、そのため大体の部隊は同じ言語の人間で組織されていることが多い。
「坊主、これで俺の言葉がわかるか?」
「坊主じゃないトーヤだ、ってかおじさんだれだよ」
こいつどんどん生意気になってやがる…
「こいつ避難民にしちゃ元気ありすぎじゃないのか?」
「俺も思いましたよ、戦争に巻き込まれた民間人がこんなに元気だなんて運もいいし、気力もありすぎる」
IMCの奴らが殺すと決めたなら徹底的に攻撃をしてくるはずだそれを生き残るってのはかなり難しいだろう
「確かにな、あと色々な報告が残っているだろう?それを頼む」
仲間を失った、それは仲間の責任ではないそれを率いている隊長の責任なのだ
「トーヤ、俺は報告をしなければならない少し外にいれるか?」
と筋トレ道具に興味津々のトーヤに言う
「まあ…いいけど」
そう言うとトーヤは渋々外へ出て行った。よほど筋トレが気に入ってしまったのか中尉のようになる前に何とかせねばと頭の中にメモをしておく
「報告をします、第一小隊は奇襲を受け壊滅、今より第一小隊は第二小隊の指揮下へと入ります」
「第二小隊 小隊長 クラーク中尉より第一小隊が第二小隊の指揮下へと入ることを許可する」
「この形式の言い方苦手なんですよね」
「わかる」
「さてとりあえず11:30にここを出発する、それまではゆっくりしててくれ」
「その前に一ついいですか?」
避難民を基地で保護するにも基地で保護する許可が降りないと保護できない、先ほどから無線が繋がらないから連絡を入れなければ
「なんだ?」
「無線が繋がらなくてまだCPに連絡が取れていないのでここのを使っても?」
携帯用無線がダメでも設置式なら何とか連絡できるのではと思い聞いてみる
「お?なんだお前の無線も繋がらないのか?電波妨害の反応も無くて故障かと思ってたんだが」
「ちょっと待ってくださいそれって…」
無線が繋がらない、それはまだいいしかし電波妨害もなく携帯式も設置式の無線までも使えないというのは考えられる上ではひとつしかない
それは最も最悪なケースでありできる限り迅速に行動せねばならないものだ。
『CPが攻撃されている?』
青ざめた2人の声が重なる
それからの動きは早かった
「通信兵、付近の斥候部隊に連絡を入れてCPを見て来させろ!」
クラークが叫ぶ
「こちらから何人かと車両を借りて行きます、高台からなら連絡も取れるかもしれないし最悪CPが襲われているなら煙が見えます」
「ここからでは建物が邪魔で周りが見えんからな了解した、こちらから三人と装甲車一両を出す行ってきてくれ」
急ぎヘルメットを被り直し装甲車へと向かう
「おじさん急にどうしたんだよ」
「すまん今はそれどころじゃない後にしてくれ」
「どこか行くなら連れてってよ」
何言っているんだこいつはと真剣な顔で言う
「いいか、今から市街地に向かうそこでは敵がいるかもしれない、死ぬかもしれないんだ、わかるな?」
「敵って白い奴ら?」
「ああそうだ だから来るな」
時間がないと早足で車へと向かう
「絶対行く」
「何?」
(聞きわけが悪すぎるだろ!死なれたらこっちがまずくなるんだぞ!)
「あいつらがいるなら絶対に行く、あいつらを絶対に倒す」
「いいか、一度しか言わないからな、これは戦争だ遊びじゃない、復讐ごっこならよせでやれ、お前が殺されたいなら別だがな』
「死んでもいい、奴らを殺せるなら」
ああクソッこう言うやつはもう話を聞かない、最悪だ
民間人なんて保護しなければ良かった!
「ああもういい、来るなら来い足手まといなら置いていく」
「少尉殿もう行きますよ急いでください!」
駐車場にちゅういが寄越したであろう部下が乗った装甲車が見える
「了解だ」
そう言って装甲車に乗ると装甲車はすぐに動き出した
装甲車の乗り心地が思ったよりも良いことに驚ていると運転席から声がかかる
「少尉殿自己紹介がまだでしたね、私はカール軍曹です、それで助手席にいるのがハインツ軍曹、後ろの車上機関銃をいじってるのがラルフ軍曹です」
「3人とも軍曹なのか?」
「はい、全員同期なんですよ」
軍曹が3人とは
「中尉もすごいのをくれたな」
「パイロット並みの技術を持つ少尉には負けますよ」
と後ろの機関銃から声がする
「まさかラルフ軍曹、君は」
「中尉殿と話してた時にいました」
(クソッやっぱりそうだったか)
「少尉殿その、そこにいる少年はいいのですか?」
「放っておけこいつは家族の復讐に燃えているらしい」
横を見ると基地を出るときに渡したP2016のセーフティの解除から発砲までの流れをつぶやいているトーヤがいた。
(これは…ただの馬鹿だな、ここまで復讐に取り憑かれていたら簡単に死んでしまうだろう)
そう思いながら俺は壊れた街を眺めていた
11:35 天候 曇り 気温22° ビル下
5人は装甲車を降り隠密行動の後ビルの下にいた
「ここがこの街で1番高いんだな?」
「はいこのビルが1番高いですね」
とカール軍曹が言う
カール軍曹にビルの間取り図見せてもらっているとラルフが声をかけてきた
「少尉殿クラーク中尉からプレゼントだそうです」
そう言って渡されるのはクナイのような形をした刃物三本
「このナイフは何だラルフ?」
「わからん中尉殿から少尉殿に渡せと言われただけだからな」
見た目はただの刃物だがパイロットの知識を齧っていればあれば少なからず何かはわかる
「これはパルスブレードだな、索敵用のパイロット武器だ」
「パイロット用ですか?」
「ああ、ラルフ軍曹達は知らなくて当然だろう、しかし中尉もなぜこんなものを持っているんだ…」
パイロット用の武器やセットはとても高額で通常一介の歩兵が買えるような品じゃない
「ああ、それでしたら中尉殿とのカードを奪られたものでしょう」
「カードって言うと…賭けのやつか?」
「そうです」
そうですって、賭け系は何を賭けるかわからないからミリシア全体で禁止されているんだがな…
「つまりそれで奪ってきたと?」
「はい中尉殿は以前大隊長殿とその同期のパイロットの方と賭けておりましたから」
軍規違反だぞあの中尉
「まあ、そこは後で問いただすとしよう」
「まあできるだけ優しく問いただしてあげてください…」
「さてビルには敵がいるだろう、つまり戦闘をすると言うことだ、準備はできてるか?」
「あの〜少尉殿?申し訳ないのですが何故敵がいると思うのですか?」
「おいおいハインツ軍曹、君は無線を知らないのか?無線は内容は隠せても通信していることは隠せないんだぞ?」
「あ〜無線ですか、なるほど忘れてましたね」
こいつすごい緩いな.大丈夫なのか…まあこれでも軍曹なら大丈夫だろう…多分
「じゃあ乗り込むぞ準備はできてるか?」
ちらっとトーヤに目を向ける
何故かビルを見つめている
「怖気ついたか?帰ってもいいんだぞ?」
「怖気ついてなんてない」
「ならいい、足手まといにだけはなるなよ」
そう冷酷に言う、仲間の命がかかっているんだ
「行くぞ」