×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~ 作:今峰鏡
「やられたな」
そう呟く白石にリヒトは不思議そうな目を向けた。
大晦日を控え、そろそろ一年も終わろうかというその日、今年のレースも全て終わって閑散としたトレセン学園で、未だ仕事を納められないトレーナー達が居た。
白石とリヒトである。
キミノワルツには一足先に正月休みを与えており、シュートにも一ヶ月の休養を言い渡したのでここには二人しか居なかった。
「何かありました?」
師の呟きへ律儀に反応するリヒトに、白石は溜息を一つ吐くと答える。
「ワイルドファイアにファンを根こそぎ持っていかれたわ。リネンレーシングは今頃ウハウハやろうな」
「あー、あの走りを見たら仕方ないっすよね。本人も爽やかで真面目なスポーツ少女って感じで好感持てますし……というかワイルドファイアってクラブウマ娘だったんすね」
クラブウマ娘とは、バ主クラブが支援者となるウマ娘で、彼女達への支援は40~500口程度に分割されてクラブ会員から出資を募る形になる。所謂一口バ主だ。
こうしたクラブウマ娘はそもそもの支援者が多い上に、出資者への配当を増やすために幼少期からウマドル売りをする事が主流となっているため、デビュー前から知名度が高い。そこにあの活躍であるから、シュートを凌ぐ人気を博するのも無理はない話だった。
リネンレーシングはそうしたバ主クラブの最大手の一つである。当然ノウハウも豊富で、ウマ娘の売り方を分かっている。
その証拠に年末の特番を見れば、あらゆる放送局の番組にゲスト出演している彼女の姿が見られるだろう。
「ホープフルステークスでファンを稼いでドバイ遠征の弾みにするつもりやったんやが……これは国内でもう一叩きするべきやろか」
実際、今のファン数でも遠征は可能だ。たとえファンが少なくとも、ジュニア級で3人しかいない(Jpn1も含めれば4人)GⅠウマ娘なのである。遠征するための実績は十分と言えた。
だがやはり、海外遠征をするならばファンの後押しというのはあった方が良いのは確かなのだ。ただでさえ環境が変わってメンタルが不安定になるウマ娘も多い海外遠征なのだから、シュートの心の支えとなるファンは多いに越したことはない。
「どうすっかなぁ」と天井を見上げる白石だったが、リヒトの「そうだ」と言う声に視線を戻した。
1.クラシックトライアルからのUAEダービー出走表明なんてどうっすか?
2.サウジダービーからのUAEダービー出走表明なんてどうっすか?
3.オビカネさんの伝手でCMなんかに出れないっすかね?
4.ウマチューブを始めるなんてどうっすか?
5.URAとトレセン学園に協力してもらえないっすかね?
6.黒 須 最 強
【1D6:4】
「ウマチューブ始めましょうよ! 休養期間中にそこでファン数を稼いで、どこかで【重大発表】みたいな配信でUAEダービー出走を発表するんす!」
「リヒトお前、そんな方法………………おもろいやんけ」
「っしゃ! じゃあ早速アカウント作りましょうよ! チャンネル名はどうします? あっ白石最強チャンネルとか良くないっすか!」
「なんでやねん! シュートのチャンネルなんやからハッピーチャンネルとかでええやろ」
「いやいや、やっぱり話題性で言えば先生の名前を押し出したほうが――」
こうして、本人不在のまま仕事続きでハイになった大人たちの悪ふざけが始まるのだった……
『今日はな、ここイガースー神社で初詣をするで』
『へ~、結構屋台とか出てるんすね~』
『ここはな、黄金の船像が御神体なんや』
『いやそれ何シップやねん……』
『行こ行こ、さっさとお参りして帰ろ』
『…………』
『どないしたんや、さっさと行くぞ』
『いや、アレ……』
『ッ~~~~~~~~(笑いをこらえる)』
『アカンてホンマ! レジェンドに何やらせとんねん!』
『誰やタマ姐さんにタコヤキ焼かせとるんわ! 苦情来るで!』
「…………んがっ」
大晦日のお笑い特番を見ながらうたた寝をしていたシュートは、スマートフォンの着信で目を覚ました。
垂れかけていたヨダレを拭きながら、乙女として人様にお見せできないような顔でスマホを手に取ると、そこには……
1.センセからの着信
2.キミノさんからの着信
3.向日葵センセからの着信
4.クラスメイトからの着信
5.ライバルからの着信
6.ハ ピ ー ト 最 強
【1D6:5】
「ブルーサイレントぉ~? 何なのよこんな時に……はいもしもし」
「おー、出た出た。パイセン今暇か?」
「暇じゃないわよ、ウマ使見てんのこっちは」
「じゃあ暇だな! 初詣行こうぜ、ポピーも来るからよ!」
「え~……寒いし」
「着込んで来ればいいだろ。あっ、着物でもいいぜ」
「嫌よ面倒くさい…………で、どこなの?」
「トレセン学園の近くの神社! 石段上りとかするところな」
「はいはい、行けば良いんでしょ。ちょっと時間かかるわよ」
「年が明けるまでには来いよ~」
ホープフルSではバチバチにやりあっていたはずの二人だったが、レース後に何か吹っ切れた様子のブルーサイレントとワイルドファイアに絡まれ、ぐいぐい来られる内にLANEの連絡先を交換させられ、何度か連絡を取り合う間に仲良くなったのである。
人見知りで内弁慶気味のシュートにしてみれば、向こうからグイグイ来て気を使わなくても良いブルーサイレントは付き合いやすかったというのもあって、わずか数日の内にちょくちょく呼び出されては面倒くさそうに(でも満更では無さそうに)対応するシュートの姿が見られるようになっていた。
「あ、来たなパイセン」
神社の石段の前で屯していたブルーサイレントが手を挙げると、隣で栃栗毛の少女が軽く会釈した。
ムスッとしているようにも見える表情の身長170cm近い栃栗毛の少女は、メイクデビューで戦ったポピーミントである。
「こんばんは、シュート先輩」
「こんばんは、ポピー」
この二人もブルーサイレントの引き合わせで既に顔見知りとなっており、何度か食事をともにした仲だ。
大柄な体に似合わず食の細いポピーは、先輩ぶったシュートが食事を奢っても、隣の青毛の後輩のようにバカバカ食べたりしない所をシュートは気に入っていた。それに無愛想だが素直だ、隣の青毛に比べて。
「っしゃ、じゃあ行くかと言いたいところだが……もう一人待ってるんだよ」
「は? 私達だけじゃないの?」
不機嫌そうな声で言うシュートだが、人見知りが発動して不安がっているだけである。
1.ワイルドファイア
2.カイノクロコマ
3.キュウカンバア
4.ポピーミントのトレーナー
【1D4:4】
「あたしのトレーナーが来るんで、待ってるんですよ」
「ポピーのトレーナー? なんで?」
「保護者役らしいぜ、夜中に子供だけじゃ危ないってよ」
彼女達もウマ娘とは言え未成年の少女たちである。大晦日とは言え深夜外出をすると聞いたポピーミントのトレーナーは大慌てで外出の準備をしてトレーナー寮から神社へと向かっていた。
「こんばんは、ポピーにブルー。あとその娘は……ハッピーシュートさんかな?」
程なくして現れたのは、黒縁のメガネを掛けた年若い青年だ。温和そうな笑顔を浮かべてこちらへと歩いて来ると「【福岡裕二】です。よろしく」と自己紹介をする。
「あっはい……ハッピーシュートです、どうも」
言いつつさり気なくポピーミントの影に隠れようと立ち位置を調整するシュートだったが、ブルーサイレントに肩を捕まれあえなく前へと押し出された。
「んじゃ行こうぜ。本当はワイルドファイアも呼びたかったんだけどよ、テレビの仕事で忙しいらしくてさ」
「テレビ? なんで?」
「パイセンこそテレビ見てたんじゃ無ぇのかよ……ホープフルステークスの活躍で、年末特番に出まくってるぜ」
思い返せばルームメイトが帰省するのを見送って、なんとなくテレビを点けた直後くらいから記憶がない。『笑っちゃいけない』が始まった辺りで一度目が覚めた気もするが、冒頭数分しか内容を覚えていないから二度寝していたのだろう。
「そうなんだ……って待って、ホープフルステークスの活躍って何? 勝ったの私なんだけど!?」
叫ぶシュートに、隣を歩きながらポピーミントと何やら話をしていた福岡トレーナーが反応した。
同情するような苦笑いを浮かべ、若干言い難そうに福岡は言う。
「シュートさんはどちらかと言うとラスボス感出てたからね。ワイルドファイアさんも『打倒ハッピーシュートに向けて何か抱負は?』みたいな事ばっかり聞かれていたよ」
「それに、ファイアはクラブウマ娘ですから」
クラブウマ娘の事情についてはシュートも知っていたため、なるほどと納得しつつもラスボス扱いには承服しかねる彼女だったが、初対面の大人にその点を突っ込む事も出来なかったので、纏めて飲み込む事にした。
そんなシュートの気持ちを知ってか知らずか、福岡はにこやかに続けた。
「それにしても、シュートさんの走りは凄かったね、流石は白石トレーナーの愛バだ」
「センセを、知ってるんですか?」
「そりゃあトレセン学園現役最強のトレーナーだからね。面識は――」
‖福岡トレーナーと白石陣営の面識‖
(1.ある 2.ない あるの場合の友好度【1D100】)
白石 【1D2:2】 【1D100:76】
リヒト【1D2:1】 【1D100:46】
キミノ【1D2:2】 【1D100:15】
「白石トレーナー御本人とは無いけど、黒須くんとは何度か会ったことがあるよ」
「リヒトさんと?」
「トレーナー会の集まりでね。彼が白石トレーナーの代理として来ることが多いから、若手で集まると自然と顔を合わせる事になるんだ。先輩から聞いた話だと、彼の顔を売るために代理出席させてるみたい」
共通の知り合いの話をした事で先程よりは打ち解けたのか、シュートの警戒心が薄れ始めた所で一行は石段を登りきり、神社の境内へと到着した。
普段はトレーニングに来るトレセン学園生くらいしか居ない神社も、今日ばかりは近隣住民でごったがえしている。
ウマ娘3人寄れば姦しいと言うがこの3人も例に漏れず、基本的にはブルーサイレントが話題を振り、時折シュートを弄ると彼女が喚き、ポピーが相槌を打ったりブルーサイレントのイジりにノッてみたりといった様子を福岡トレーナーがニコニコしながら見ている内に、時計の針は0時を指そうとしていた。
「3」
「2」
「1!」
『明けましておめでと~~~~~!』
日付が変わる瞬間にジャンプしたブルーサイレントに、ソレを見てケラケラ笑うシュートと、薄く笑みを浮かべながら周りの迷惑にならないように気を配るポピーミント。
彼女らが賽銭箱にジャラジャラと小銭を投げ入れるのを見ながら(ブルーサイレントはこのネタのためにホープフルステークスの賞金の一部を両替して大量の5円玉を作ってきていた)福岡はスマートフォンを取り出して操作しながらポツリと呟く。
「騙すようで悪いが……まぁ、上手くいってくれると良いな」
「なんかテンション上がってきたな、走ろうぜ!」
初詣を終えて寮へと戻る途中、ダートコースの横を通りすがった際にブルーサイレントが唐突に宣った。
ポピーミントの耳がピクリと動く。
「いいわね! やるわよ!」
友人との深夜のお出かけでテンションが上り、気が大きくなっているシュートもそれに同意すると、ズカズカとグラウンドの方へと歩き出す。もしかしたら神社で貰った甘酒が効いてるのかも知れないと思えるほどのノリの良さだった。
ブルーサイレントはニヤニヤと、ポピーミントは神妙な面持ちでそれに続いた。
真っ暗なコースに人気は無く、月明かりに照らされてぼんやりと光る砂紋は、まるで穏やかな夜の海のようだった。
何故か出しっぱなしになっているゲートを見つけたシュートは「丁度いいわね」と何の疑問も抱く事無くさっさと最内枠を陣取ると、コートを脱ぎ捨て二人に「早く来なさい!」と呼びかけた。
「それじゃあ僕がスタート係とゴール板役をするよ。距離はメイクデビューと同じ1800mでいいね」
そう言って福岡がゲート横に立つと、隣の枠に誰かが入る気配がした。
「ただでさえ芝で私に負けてるのに、ダートで勝てると思わないことね!」
「いや、これでいい。これがいいんだ」
ブルーサイレントだと思ってかけた軽口に帰ってきたのは、予想に反して硬い、ポピーミントの声だった。
「シュート先輩、本気でお願いします」
「は? アンタどうしたの?」
「ホープフルSを見たトレーナーも言ってたし、ブルーからも聞きました。先輩は本気じゃなかったって」
「えっと、それは、その……」
ポピーミントからかけられた言葉に、シュートは気まず気に視線を彷徨わせる。
口ごもるシュートを置いて、ポピーミントが続けた。
「最初は落ち込みました。それから、本気を出させられなかったあたしが悪かったんだって、自分を納得させようとしました。でも、やっぱり嫌だ。
そうじゃなきゃ、前に進めない。
ゲート越しにこちらを睨めつけるポピーミントに動揺しながら、シュートが何かを言おうとした時だった。
――バンと音がして、ナイター照明が点灯する。
「位置について。よーい――」
目を白黒させるシュートをよそに、福岡が声を張り上げ手を上げた。
「ちょ、まっ」
「――ドン!」
福岡がそう言って手を降ろし、ポピーミントがゲートから飛び出す。
数瞬出遅れてシュートも駆け出した。
自然と先行する形になったポピーミントをハッピーシュートが追走する。
そのまま第1コーナーを回り、第2コーナーでポピーミントが脚を緩めた。
ここで一度息を入れるようだと察し、シュートが外から追い抜くと、バックストレッチの直線では先程とは立場が入れ替わった形になる。
3バ身程後ろを走るポピーミントをちらりと見やると、シュートは少しだけ速度を上げた。
ポピーがそれにしっかりと着いてくるのを確認して、第3コーナーへ。
体を傾けながら経済コースを取り走るシュートがふと気配を感じて斜め後ろへと視線をやれば、いつの間にかポピーミントが体を併せてきていた。
――ロングスパート!? ブルーサイレントの真似ってワケ?
僅かに動揺した隙に前に出られた。
第4コーナーを抜け直線に入る頃には、ポピーミントが半バ身ほど前に居る。
ほぼ真横に見えるポピーミントの顔は必死だ。
汗を滴らせ、砂に汚れて歯を食いしばって走っている。
それを見て、シュートは途端に恥ずかしくなった。
いくらお遊びのレースとは言え、ゲートで彼女は何と言った?
本気で走って欲しいと、そう言って。それを証明するように彼女自身本気で走っている。
勝とうとしているのだ、彼女は――私に。
それを私はなんだ? メイクデビューではソラを使って、ホープフルステークスでは喧嘩して、出遅れて。
必死に前を走って、下バ評では自分に劣っていたはずなのに、抜かれまいと全力だったワイルドファイアの走りはファンの胸を打って、差し切ったはずの自分が
勝ちたいと、負けたくないと必死だったからじゃないのか?
翻って私はどうだろう。本当に勝ちたいと思っていたのだろうか。強くなりたいとは、思った。レースで1着になって、テレビで見るウマ娘みたいにファンから祝福されて、皆からチヤホヤされたいと、漠然と思っていた。
では、彼女達が何故ファンから祝福されるのか。
それは必死で走って、勝ちたいと願った先に、その願いを掴み取ったからじゃないのか?
ああ、そうか――
私は走る前から
1着になっても負けていたから、本当に
クラブウマ娘がどうとか、ウマドル売りがどうとかは関係ない。
レースに勝つってのは、
あぁ、私も勝ちたい。
勝ちたい。
勝ちたい――
君に勝ちたい!
「あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
砂が爆ぜた。
全力で叩きつけられたハッピーシュートの後脚が爆発的な推力を発揮して彼女の体を後押しした。
いつの間にか5バ身程前を行き、未だ加速し続けるポピーミントの背中がみるみる内に近付いてくる。
激しい砂のキックバックを受けながらもただ前を見てシュートは駆ける。
4バ身、3バ身、2バ身、1バ身――
ハッピーシュートは並ばない、そのままポピーミントを追い抜いて、それでも速度を緩めない。
全力の末脚で照明に照らされたダートコースを駆け抜ける。
ゴール板代わりに立ってこちらを見ていた福岡が目を剥いているがそれにも気付かない。
息の続く限り加速し続け、そして――
【1D10:8】
気付けば福岡の前を通り過ぎ、それでも勢いが止まらずコーナーを周りかけた所でポピーミントがゴールした。
ヨロヨロと脚を緩め、荒い息を吐きながら内ラチに手をかけて立ち止まる。
「8バ身差……これがGⅠウマ娘か、遠いなぁ」
「いやいや、こないな事思いつくトレーナーなんそう居らんで。武田さんが目をかけるだけあるわ」
「そう言ってくださるのは嬉しいですが……今回は完敗です」
「『今回は』か……ククッ、これはリヒトも――いや、俺もウカウカしとれんな」
聞き慣れた声にシュートがハッと顔を上げた。
そこに立っていたのは福岡と白石だった。
「センセ?」
何故かその後ろにはカメラを構えたリヒトも居る。
混乱するシュートの肩に、白石はポンと手を置くと、言った。
「ま、ドッキリ大成功ってトコやな」
白石の言に拠れば、事の発端はシュートに負けた事と、彼女がソラを使っていた事でモチベーションを低下させていたポピーミントを気遣った福岡トレーナーが、リヒトを通じて白石に相談を持ち掛けた事だと言う。
大学を卒業して一年目の新人トレーナーである福岡の最初の担当ウマ娘がポピーミントだった。
そんな新人トレーナーの担当にかける情熱は尋常ではない。
現役最強と言われる白石に対して、ほぼ面識が無い状態から併せウマを持ちかける程なのだから相当である。
そんな福岡の情熱に心を打たれた白石は一計を算じた。(これを『打算』と言う)
「これ、ウマチューブのネタにならんか?」
いつの間にかシュートがポピーミント達と仲良くなっていた事も手伝い、白石はドッキリを仕掛けるタイミングを図っていると、折よく福岡から「シュートとポピーミント達が初詣に行くので自分も着いていく」と連絡を受け、大慌てで機材を用意し、福岡経由でポピーミントとブルーサイレントに話を通したのだという。ちなみに正月深夜のダートコース使用は、実家に帰省中のキミノワルツを通してトレセン学園に許可を取った。
「ま、そう言うワケで今のレースはバッチし撮影しとるから、あとは編集して1月中にはチャンネル開設するさかい、頼むでシュート」
「………………」
ジト目で白石を睨みつけるシュートだったが、こちらへと歩み寄ってくる気配を感じて振り向く。
そこに居たのはブルーサイレントと、彼女に肩を借りるポピーミントだった。
「ポピー……」
「負けたよ、先輩。悔しいな……」
そう言うポピーミントだったが、その表情はどこか清々しそうにも見えた。
恐らく、ブルーサイレントを通じてシュートと仲良くなった事で吐き出す先を失い、心の内に溜め込んでいたモヤモヤを解消できたのだろう。どこか一線を引いたような敬語も無くなっていた。
「ごめん、ポピー。私――」
「いいんだ、今度は本気で走ってくれたから」
「うん、それでも……ごめんね」
「いいんだよ、先輩」
俯き、涙を堪えるシュートを、ブルーサイレントから離れたポピーミントが抱きしめる。
「これじゃ、どっちが先輩か分かんねーな」
茶化すブルーサイレントだったが、その目尻には光るものがあった。
ナイター照明の長く伸びた影に紛れて目元を擦ると、彼女も抱き合う二人の輪に加わり、努めて明るい声で言う。
「次は俺もポピーも負けねえからな! 本気でぶっ潰してやる!」
「私も負けないから! 絶対勝つもん!」
「あたしも負けないよ。二人には及ばないけど、トレーナーと一緒に頑張るから」
三人の輪にはいつの間にか笑顔があった。
真冬の夜の青春に、大人達も――特に最年長の白石が鼻をすすりかけた時、ブルーサイレントがぶっこんだ。
「ちなみに、パイセンの次走ってどこだ? 芝? ダート?」
「ダート……」
「じゃああたしが先に再戦だ。やっぱり羽田盃トライアル?」
「ううん、UAEダービー」
「へぇ、ドバイか………………あ゛?」
「あちゃぁ、言うてもうた」
『はぁ~~~~~~~~~~~~~~~?????』
真冬の夜空に、ウマ娘二人+トレーナー一人の叫びがこだました。
【 R E S U L T 】
固有スキルのレベルが上がった!
『最強へと至る道 Lv.1 → Lv.2』
[補正値が+10から+11にアップ!]
ドッキリ動画によりファン数が【3D100:96】×10[960]人増加!
【ファン数 9459人 → 10419人】
どこまで歌詞使用になるのか分からないので一応楽曲コード入れておきます
ダイス振ってバカ話するだけのつもりだったのに……ライバルから電話かかってきて、ポピーのトレーナーまで合流するからこんな事に……