×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~ 作:今峰鏡
衰退期の欧州レース界の惨状を日本で起こすまいと最強を目指すバ主の話を書いていたら、ドイツが競走馬の調教を2歳半からにする法案を通したというニュースが流れて来て、現実ってのはやっぱり小説を超えてくるものなのだなぁと震えました。
果たしてこの世界のレース界はどうなるのか、お楽しみください。
‖皐月賞の注目ウマ娘数を決めます‖
注目ウマ娘【1D4:2】+1 [3]人
‖この内二人はブルーサイレントとワイルドファイアでしょうが、もう1人は?‖
1.ブラックシヴァ
2.ママオ
3.朝日杯FS勝ちウマ娘
4.まさかのダークホース
【1D4:3】
‖朝日杯勝ちウマ娘の評価と設定を決めます‖
学年【1D2:2】1.中等部 2.高等部 [高等部]
身長 120+【7D10:43】 [163cm]
バスト【1D5:2】1.無 2.微 3.普 4.巨 5.爆 [微乳]
耳飾りの位置【1D2:1】1.右 2.左 [右(元ネタが牡馬)]
毛色【1D8:5】1.白毛 2.栗毛 3.鹿毛 4.青鹿毛
5.黒鹿毛 6.青毛 7.栃栗毛 8.芦毛 [黒鹿毛]
長所【1D5:2】1.スピード 2.スタミナ 3.パワー 4.根性 5.賢さ[スタミナ]
短所【1D5:3】(被ったら1つ上の数字)
1.スピード 2.スタミナ 3.パワー 4.根性 5.賢さ[パワー]
脚質【1D5:3】1.逃げ 2.先行 3.差し 4.追込 5.その他 [差し]
固有スキル【1D5:4】5なら獲得済み [未獲得]
能力評価【1D50:43】+50(GⅠ補正で+50)[93]
[この娘もかなりの強敵のようですね……!]
『1番人気はやはりこの
『遠征帰りですが消耗は見られませんね。【1D17:15】+1[16]番ブルーサイレントと仲良く話しています』
『ブルーサイレントは【1D3:1】+1[2]番人気ですが、【1D2:2】+2[4]番人気のワイルドファイアと比べてどうでしょうか?』
『どちらもかなり仕上がっていますよ、状態は二人ともハッピーシュートより良いかも知れません」
『3番人気は少し不服か、【ミツリンエルフ】は【1D14:1】+1[2]番です』
『ハッピーシュートの隣の枠ですから、スタートから面白い戦いが見られそうですね』
レース番組でそんなパドック解説をされているとは露知らず、観客へのファンサそっちのけで集まるウマ娘が三人。
言わずもがな、昨年末にホープフルSで鎬を削った三人だ。
「よおパイセン、UAEダービー優勝おめでとう。祝いに行けなくて悪かったな」
「おめでとうございます、シュートさん。ボクもブルーも、トレーニングとウマドル活動で忙しかったってのもあるけど、やっぱり再会するなら
「別に気にしてないわよ、私も忙しかったし。それよりアンタ達も、おめでと」
パドックから観客席を見渡せば、そこから見える景色はホープフルSと全く同じ光景だ。
中山レース場、芝2000m。
あの時と同じ舞台で、三人は再会した。
「今度はゲートで絡んでくるんじゃないわよ、また出遅れるなんて御免だもの」
「ネットじゃ『出遅れ癖』とか『ゲート×』とか『シロイアレノナカマ』とか言われてるもんな、ウケるぜ」
そう言ってゲラゲラ笑うブルーサイレントを「ウケてんじゃねーわよ」とシュートが小突き、それを見てワイルドファイアも笑う。
「でも今回は、流石にゲートが遠すぎるぜ。絡まれる心配なら、オレよりアイツを気にした方が良いんじゃないか?」
「あぁ、ミツリンエルフさんだね」
ブルーサイレントが顎でしゃくり、ワイルドファイアが意味深な視線を向けた先に居たのは、艶めいて緑がかった風にも見える黒鹿毛のウマ娘だ。
透き通るような白い肌にスラッとしたバ体を持つ彼女は、まるでファンタジー世界のエルフのようだった。
「主にお前ら二人の所為でホープフルS組は目立つからな、それがどうも気に食わないらしいぜ」
「ふぅん、まぁ勝つのは私だけど」
「言うね、ボクも負ける気は無いよ。今度こそ逃げ切ってやる」
「そいつはオレのセリフだ。トレーナーと敗因を分析してすべて潰してきた。パイセン対策もばっちりだ! ……てかパイセンのトレーナーってよぉ、ウチの巽サンに何かしたのか? 対抗心バリバリでちょっとヒいたぜ」
ブルーサイレントの担当トレーナーである巽は、伝統や常識を腕ずくで壊しまくる『最強』に良い印象を抱いていない。いつかあの若造の鼻っ柱を叩き折ってやろうと、ずっと機会を伺っていたのだ。
その千載一遇の好機に、ブルーサイレントのトレーニングにも熱が入っていたようで、彼女がシュートと会う暇がなかったのも、そこに原因があった。
「知らないわよ。まぁセンセって性格悪いし、恨み買っててもおかしくないけど」
確かにシュートの言う通り、白石をやっかむ者も多いが、それが致命的な対立にならないよう、立ち回る器用さが彼にはあった。
担当ウマ娘のメンタルに影響を悪影響を与えないように、そして自身の見栄を守るために、そんな努力をウマ娘に見せないようにしている節があるので、白石が意外と気遣い根回しの出来る人間だと言うことを、シュートは知る由も無いのであったが。
「自分のトレーナーをそう悪く言うものじゃ無いよ……っと、もう時間みたいだ」
ワイルドファイアが視線を向けた先では、出走ウマ娘たちが係員に促されてパドックを出て行き始めた所だった。
話題に上がっていたミツリンエルフは既に、パドックと本場場を結ぶ地下バ道へと向かったのか姿は見えない。
三人も観客たちへ手を降りながら地下バ道へと向かう。
「くはは! 燃えてきたね!」
「ハッ! 全員静かにさせてやるよ!」
不敵な笑みで宣う二人に、シュートは「えっ何そのキメ台詞みたいなの!?」という顔になったが、必死に考えて思いついたことを言った。
「わ、私が『最強』なんだからっ!」
これが後に『ハッピーシュートの最強宣言』としてメディアに取り上げられ、引退後まで擦られ続ける事になるとは、この時シュートは思ってもいなかったのだった。
『皐月賞 中山芝2000m』
注目ウマ娘3人
天候【1D4:2】1.快晴 2.晴れ 3.曇り 4.雨(※今のところフレーバーです)
★注目ウマ娘のステータスを公開します。
①『ハッピーシュート』
SP C+(B)
ST B+
PW C+(D+)
根 D
賢 E+
適正:バ場C 距離S
スキル:『最強へと至る道』Lv.2:1ターン目の『ピックアップステータス』を自分の最も『ステータス値』の高いステータスにする(同値の場合はランダム)。この対決に勝利した場合、勝利への道標を辿って『最終ターン』の補正値に『+11』する。
②『ブルーサイレント』
SP C
ST C+
PW D+
根 B
賢 E
適正:バ場A 距離A
スキル:『蒼海は青き空より出でて』:『最終ターン』に向けてロングスパートをかけ、ターンごとの補正値にそれぞれ『-5』『+5』『+10』する。この能力はレースターンが『3ターン以下』のレースでは発動しない。
③『ワイルドファイア』
SP D+
ST C+
PW D
根 D
賢 C+
適正:バ場A 距離A
スキル:『
④『ミツリンエルフ』
SP C
ST B
PW E
根 D+
賢 D+
適正:バ場A 距離A
スキル:未開放
★スタートフェイズ
①ハッピーシュート【5D10:22】-5 =17 出遅れ
②ブルーサイレント【5D10:13】-10 =3 出遅れ
③ワイルドファイア【5D10:21】+15 =36
④ミツリンエルフ 【5D10:33】+5 =38
[またやってるよ……6割以上の確率で通常スタートのハズなんですが……]
[ちなみに6割を3連続で外す確率は約6%です。単発で☆3引くよりは楽ですね]
‖今回出遅れた原因は何でしょうか?‖
1.ミツリンエルフが話しかけてきた。
2.ブルーサイレントが何やら騒いでいるのが気になった。
3.ママが見に来てくれてる! おーい!
4.センセのゲート特訓が効きすぎた! フライング気味に出ようとしてゲートに激突!
5.格好悪いので態度には出さなかったが、実は狭い所が死ぬほど苦手。
6.白 石 最 強
【1D6:3】
「今日はお招きいただいて、ありがとうございます」
「そう畏まらんで下さい、お母さん。シュートもこうして見に来て下されば喜びますやろ」
「せやでぇ、ブロンさん。ウチかて、いっつも
白石夫妻の歓待に、ブロンノワールは恐縮しきっていた。
ただでさえ、初めて現地に見に来た娘のレースがGⅠ皐月賞で緊張していると言うのに、上流階級ばかり集まるバ主席での観戦だ。ウマ娘でありながらレースとは縁の無かったブロンノワールとしては、どうしても落ち着かない心持ちになってしまう。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、新しく出来た金髪モデル体型の友人は、電話口でよく聞くぽやっとした口調そのままに、コースを覗き見て言う。
「ほら、シュートちゃんがゲートに入ったで、もうすぐ出走やねぇ」
促されるまま馬場を見下ろせば、見慣れたはずの娘が、見慣れぬ格好で、見た事もない真剣な表情をして、狭いゲートの中からコースを睨んでいる。
(あの娘、あんな表情も出来たんだ)と、もはや自分の手から離れて巣立とうとしている我が子に感慨深い思いを抱いていると、ちらとバ主席を見上げた娘と目が合った。
勘違いかと思う程度の一瞬の交差、再びターフに視線を戻したはずのシュートが、怪訝な表情でこちらを二度見すると、母の姿を認めて驚愕に目を見開いた。
すぐに笑顔になってこちらに手を振ろうとして、
「あの馬鹿!」
白石が漏らした瞬間だった。
「あっ」
「あらぁ」
ガシャンと音を立ててゲートが開いた。
★1第ターン
【ハッピーシュートの固有スキル『最強へと至る道』発動!】
[ピックアップステータスがスタミナになります]
【ワイルドファイアの固有スキル『
[ワイルドファイアのダイス数が+1されます]
[出遅れによりハッピーシュート、ブルーサイレントの補正値に-10]
①ハッピーシュート【5D10:34】+25 -10 =49
②ブルーサイレント【5D10:22】+15 -10 =27
③ワイルドファイア【6D10:38】+15 =53
④ミツリンエルフ 【5D10:25】+20 =45
[ワイルドファイアの勝利!]
『さあポンと飛び出したのはワイルドファイア、ハッピーシュートとブルーサイレントは少し出遅れたか。ハナを取って進むのはワイルドファイア、その外にブラックシヴァが着いて行きます。ママオはその後ろ。出遅れながらも内枠の有利を活かして前に出ようとするハッピーシュートは4番手、その1バ身後ろにデラエレーテ。先頭集団固まって第1コーナーを周ります。3バ身離れて中段先頭はミツリンエルフ、ブルーサイレントはかなり後ろからのレースとなりました――』
「はっはっは! 相変わらずシュートはスタートが下手だね、ウケる」
「ウケてる場合じゃないのです! シュートさん、大丈夫かな……」
トレセン学園のグラウンドの隅、芝生に座って休憩中のオウショウケイマとカズサヒカリが、スマートフォンでレース中継を見ていた。
その後ろで、次のトレーニングのためにタブレットでデータを纏めていたリヒトが、不思議そうに首を傾げる。
「ゲート練習は上手くやるんすけどね、何で本番になるとこうも毎回出遅れるのか……」
「そうですね……恐らくは感覚の鋭さと、肝の太さが上手く――いえ、この場合は『悪く』噛み合ってしまうのでしょう」
そう答えたのは桐生院向日葵だ。
デビュー前からシュートを知っている彼女は、その相マ眼でシュートの出遅れ癖の原因に思い至り、もっと早く気付いていればと歯噛みする。
向日葵の言葉に首を傾げるのはヒカリだ。
「感覚の鋭さと肝の太さ……なのです? どっちも良いところのような……」
「適切な場面でそれを使いこなせるならば……ですよ、ヒカリさん。シュートさんの場合、感覚の鋭さでゲート内からでも様々な情報を感じ取る事が出来ます。そういった特徴を持つウマ娘はそれなりに居ますが、大抵はレース直前の緊張で、その情報を処理できずにシャットアウトしてしまう……ですが――」
「緊張とは無縁なシュートだと、その情報をいちいち受け取って反応してしまう……って事っすか?」
「その通りです。対策としては耳カバーを付けて情報を制限する事などが挙げられますが……新しいバ具に慣れる訓練をしなければ逆効果にもなりかねません」
先輩トレーナーの言葉に、リヒトはなるほどと頷いた。
しかし、白石ともあろうトレーナーが、この弱点に気付いていなかったのだろうかとも疑問に思う。
その答えは意外な所から上がった。
オウショウケイマだ。
「ふむ。そう言えば――」
1.蒸れるから嫌。
2.耳が大きくて合うサイズで可愛いデザインが無いから嫌。
3.音が聞こえづらいと走りにくいから嫌。
4.なんか嫌。
【1D4:4】
[なんかって何だよ……]
「なんか嫌とか言っていたな、
「なんかって何すか……」
「なんかはなんかだ!」
そう言って笑うケイマに、リヒトがげんなりした顔をすると、生真面目な向日葵は律儀に説明を始める。
「そういった漠然とした感覚も、ウマ娘にとっては大事なものですよ。俗説ですが、ウマソウルが拒否するといった場合もあります。それより――」
「第2コーナーに入るのです!」
ヒカリの言葉に、データを纏めていたはずのリヒトまで、レース中継を見始めてしまう。
(レースが終わるまでは、休憩延長ですね)
そう心の中で独り言ち、向日葵もレース中継に視線を落とすのだった。
★2第ターン
【ブルーサイレントの固有スキル『蒼海は青き空より出でて』発動!】
[ブルーサイレントの補正値に-5]
【ワイルドファイアの固有スキル『
[ワイルドファイアのダイス数が+1されます]
ピックアップステータス【1D5:1】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)
①ハッピーシュート【5D10:37】+20 =57
②ブルーサイレント【5D10:39】+10 -5 =44
③ワイルドファイア【6D10:26】+5 =31
④ミツリンエルフ 【5D10:29】+10 =39
[ハッピーシュートの勝利!]
[ワイルドファイアの固有スキル『
ワイルドファイアは昨年末のホープフルSから大きく成長したウマ娘だ。
GⅠで2着に入った経験と、徹底したレース分析。そして、多くの担当を持つ故に一人に割く時間が少なくなりがちなトレーナーが、自身の為に多くの時間を使って指導してくれた事で、彼女は見違えるほどに飛躍した。
だが――
(それでも、ボクがシュートやブルーに劣っている事は自覚しているさ)
自嘲気味な思考を頭の片隅で弄びながら、冷徹に自身のスタミナと末脚を考慮してペースを作るワイルドファイアは、いつかにも聞いた力強くも軽快な足音を耳にして、折れそうになる心を奮い立たせようとする。
(だけど流石に、あの状況からここまで上げてくるなんて、想定してないッ!)
ちらと後ろを見れば、出遅れたはずのハッピーシュートが既に2バ身後ろにまで迫ってきていた。
体力の持つギリギリを攻めて逃げる自分に平然と追いついてくる白い影は、まるで
(またスタミナで擦り潰すつもりか? いや、単純にスピードが上がっている?)
ワイルドファイアの分析は的を射ていると言えた。
そもそもの巡航速度が他とは違うのだ。
だが、ここまで自分と違いが出るものなのか、そう考えて、ワイルドファイアの聡明な頭脳はひとつの仮説に思い至る。
(2000m前後のレースを勝ち続けた経験……それによって適切な力の入れ方を学習したって言うのか!? 言うなれば中距離への適性の上昇――それがシュートさんの『速さ』の
今に至っては、もはやどうしようもない分析である。それを自覚した時、自身の強固な思い込みである『領域』が反転を始め、自身を蝕み始めるのを感じた。
(このままの速度じゃ逃げ切れない、だけどこれ以上速度を上げて体力が保つのか?)
分からない。
だが――
(やるしか無いッ!)
駆けた。
★3第ターン
【ブルーサイレントの固有スキル『蒼海は青き空より出でて』発動!】
[ブルーサイレントの補正値に+5]
【ワイルドファイアの固有スキル『
[ワイルドファイアの補正値-10]
ピックアップステータス【1D5:5】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)
①ハッピーシュート【5D10:25】-5 =20
②ブルーサイレント【5D10:35】-10 +5 =30
③ワイルドファイア【5D10:27】+15 -10 =32
④ミツリンエルフ 【5D10:30】+5 =35
[ミツリンエルフの勝利!]
「1000mの通過タイムが57.8秒……トばすやないかい、ワイルドファイア」
バ主席で呟く白石に、ブロンノワールが心配そうに訊ねる。
「ハイペース……と言う事は、シュートには不利なんですよね?」
「一概にそうとは言えません。特に中山レース場では……」
一般的にハイペースのレースでは、前方を行くウマ娘が体力を消耗しやすいため、後方脚質が有利である。
だが中山レース場のように直線の短いコースでは、そもそもが差し・追込のウマ娘には不利だ。
では後方脚質のウマ娘が勝つにはどうすれば良いのか。
答えはホープフルSの作戦会議で、既に白石が述べていた。
『ハイペースなレース展開で前のウマ娘がバテるのを狙いつつ、序盤に体力の消耗を抑えてロングスパートをかける。』
ブルーサイレントが後方から徐々に加速し始めるのが、バ主席からは良く分かった。
それに合わせてミツリンエルフも動き始めている。
「巽トレーナーも手堅い作戦で来おったな……」
「シュート……」
白石の険しい表情に、不安げな顔をするブロンノワールの手を仁美が握った。
ハッとして見上げると、日本人離れした美貌を持つ友人は、おっとりと笑んだ。
「大丈夫や、シュートちゃんを信じよ?」
「うん……そうね、仁美さん」
破滅的なペースで逃げる鹿毛を追って、白毛を先頭とした先行集団が行く。後方からはロングスパートをかけたブルーサイレントとミツリンエルフが迫って来ていた。
最終コーナーを回ろうとする前の二人の内、ワイルドファイアは間もなく垂れるだろうと予想して、位置取りを調整する。
ミツリンエルフは翡翠色の瞳を細めて脚を早めた。
出遅れたブルーサイレントがロングスパートに入ったのが、第三コーナーを曲がり切る際に見えた。
そろそろ自分も出るかと脚に力を込める。
徐々に前へと進出する自分を追うようにして大外を回るブルーサイレントは、もう敵ではないと思考の中から切り捨てる。
内枠から順調に出て、内ラチ沿いで中段に控え続けた自分と、出遅れから大外を回ってロングスパートをかけるブルーサイレント。
どちらがより体力を残しているかなど明白だ。
直線に入る際に自分が前に居さえすれば、どれだけ鋭い末脚を持っていようと、自分の方が先にゴール板を横切れる自信が、ミツリンエルフにはあった。
それよりも敵は、前を行く白毛の娘だ。
レースを分析すれば嫌でも分かる無尽蔵のスタミナに、ゴール前の坂を物ともせず駆け上がるダートウマ娘故の力強さ、そして生まれ持ったベーススピードの違い……出遅れとハイペース程度で脱落するウマ娘とは思えない。
「それならココからが本番ですね」
新緑色に輝く黒鹿毛を靡かせて、ミツリンエルフは跳ぶように駆けた。
逃げるワイルドファイア、好位を追走するハッピーシュート、溜めた脚を開放すべく迫るミツリンエルフ、ロングスパートで徐々に差を詰めていくブルーサイレント――
皐月賞は混戦状態のまま、最終コーナーへと入る。
★4第ターン
【ブルーサイレントの固有スキル『蒼海は青き空より出でて』発動!】
[ブルーサイレントの補正値に+10]
【ワイルドファイアの固有スキル『
[ワイルドファイアの補正値-10]
ピックアップステータス【1D5:1】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)
①ハッピーシュート【5D10:23】+20 =43
②ブルーサイレント【5D10:27】+10 +10 =47
③ワイルドファイア【5D10:23】+5 -10 =18
④ミツリンエルフ 【5D10:32】+10 =42
[ブルーサイレントの勝利!]
第4コーナーを回り、ブルーサイレントは自身の余力を確認する。
大丈夫だ、あの時よりも余裕がある。
「いいねえ、あの時のやり直しだ……!」
ホープフルSでの勝負では、ブルーサイレントは中山の見えない壁によって阻まれた。
だが今回は違う。
パワーが足りずに追いつけなかった事を反省し、坂路で徹底的に鍛えてきた。
そして何より――
「どうした、そんな顔してよ……オレが追いついたのがそんなに驚きか?」
ちらと横を見れば、ミツリンエルフが驚愕の表情でこちらを見ていた。
「何故ですッ! 何で貴女が
ブルーサイレントは大外からロングスパートをかけていたはずだった。
それが最終直線に入った途端、バ群を飛び越えたかのように内側を駆けていた。
「理由は眼の前に見えてるだろうが!」
ハッとしたミツリンエルフが前を向く。
そこには先頭を逃げるワイルドファイアと、そのすぐ外を追走するハッピーシュートの姿。
――
「ワイルドファイアが垂れていない!?」
「そういうこった! オレはファイアの脚がこんな所で止まるはずが無えと思ってたんだ!」
(あの位置取り調整……ワイルドファイアが垂れると予想して行った、あの僅かな横移動の隙を突いてきたと言うのですかッ!?)
「ですが、体力は未だ私が有利ッ! 残った脚の差で置き去りにします!」
「それだけじゃねえぞ!」
暴力的な蹴り込みで芝を踏み抜いたブルーサイレントが僅かに前に出る。
否――
(私の脚が鈍った!? ――ッ! 坂ですかッ!)
「オレにはホープフルSで、9ハロンを走った後にこの坂を登った経験があるが、アンタが走ったスプリングSはそれよりも1ハロン短え……その1ハロンの差はデケえぞ、ミツリンエルフ!」
坂で僅かに足を鈍らせたミツリンエルフを追い抜き、ブルーサイレントが加速する。
(末脚勝負なら誰にも負けねえ! 今度こそブチ抜かせてもらうぜ、
目指すはターフの緑を切り取ったように、白い軌跡をたなびかせるウマ娘。
青毛の長髪が風を孕んで靡くに任せ、ブルーサイレントは全力を足裏に込めた。
★最終直線
1.ブルーサイレントが全員まとめて撫で切った!
2.四人の競り合い
3.四人の競り合い
4.四人の競り合い
5.ミツリンエルフそのまま差し切ってゴール!
6.ワイルドファイア逃げ切った!
7.四人の競り合い
8.四人の競り合い
9.ハッピーシュートの勝利!
10.ハッピーシュート押し切り勝ち!
【1D10:8】
出遅れが響いていると感じた。
自分のスタミナであれば、本来ならそこまで気にしないような差だ。
だけど――
(この娘、前よりもずっと強くなってる)
今のワイルドファイア相手では、その差こそが大きな壁となってそそり立っている。
ハッピーシュートは思う。
これが、ホープフルSに優勝しながらも、自分が『負けた』と感じた理由だと。
スピードは自分の方が上のはずだ。
だけどこの娘は負けないと言う意思だけで、逃げることで築いた有利を少しずつ切り崩しながら、それでもまだ粘っている。
(すごいな)
シュートは酸欠気味で鈍る思考の中、燃え盛る野火を追いかけながら思う。
(こんなすごい娘に勝ちたい)
(こんなすごい娘だからこそ――勝ちたい!)
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!」
脚を踏み込む。
光の道は見えない。
それでも、自分の足元が淡く光っているように見えた。
そうか。
勝利へと至る道は、自分で刻むんだ。
後ろからは二つの足音が猛烈な勢いで迫ってきている。
足音だけじゃない、一緒に聞こえてくる低く唸るような雄叫びは、この数ヶ月で聞き慣れた声だ。
絶対に負けないという気迫の籠もった声は、じわじわとしか縮まらないワイルドファイアとの差とは裏腹に、一瞬にしてすぐ後ろにまで迫ってきているように感じた。
後ろを振り向く余裕はない。
足を動かす事以外に力を使った瞬間に追い抜かれる事は分かりきっている。
(コイツも、すごいヤツだ)
(すごいヤツだからって負けたくない)
(すごいヤツだからこそ――負けたくない!)
脚を踏み込む。
淡かった足元の光が強くなった気がした。
ゴール板はもう目の前だった。
★最後の競り合い
①ハッピーシュート 根性D【1D100:71】+0 =71
②ブルーサイレント 根性B【1D100:43】+20 =63
③ワイルドファイア 根性D【1D100:99】+0 =99
④ミツリンエルフ 根性D+【1D100:38】+5 =43
差はもはや無かった。
全員が横一閃に並び、ゴール板を駆け抜けた。
『これは――分かりません! ワイルドファイアが残ったか、ハッピーシュートが差し切ったか、ブルーサイレントが撫で切ったのか!? ミツリンエルフは僅かに遅れて入線したように見えますが……結果は写真判定です! なんと言う事でしょうか、前代未聞の4着までの写真判定! 5着入線ブラックシヴァだけが確定しています!』
ゴール板を駆け抜けた先、そろそろと速度を落としながら、三人は自然と固まって掲示板を眺めていた。
結果は写真判定に委ねられた。
それでも、この三人にだけはなんとなく結果がわかっていた。
最後、ゴール板を駆け抜ける時に、燃え盛る炎のような熱を感じたからだ。
無言でただ寄り添う三人の頭上で、パッと掲示板が点灯した。
『ワイルドファイア! ワイルドファイア1着です! 2着はハッピーシュート、3着にブルーサイレント、4着がミツリンエルフ、これが全てハナ差です! 今年の皐月賞は史上稀に見る接戦となりました!』
わ――と、スタンドが揺れる。
中山の空を揺るがす歓声の中、ブルーサイレントがワイルドファイアの小さな肩に手を回した。
「負けたよ、やっぱスゲーなお前ら」
「ブルーも凄かったよ。勿論シュートさんも、負けるかと思った……シュートさん?」
何の声も上がらない事に不審を覚えたワイルドファイアが首をめぐらした瞬間だった。
「勝ちたかった……! ファイアもブルーもすごいからっ……勝ちたかったのに、びええええええええん!」
「えぇ……?」
「子供みてーな泣き方すんなよパイセン……」
わんわん泣くハッピーシュートを二人で支えながら、3着までに入った3人は並んでスタンドへと向かう。
ワイルドファイアがシュートを支えるのと反対の手を上げて大きく振れば、それだけで大歓声が上がった。
耳が痛いほどの歓声の中、シュートが何かを呟いた。
耳をそちらに向ければ、泣きじゃくりながらも強い視線でこちらを見返す瞳とぶつかった。
「次は勝つもん! すごいアンタに勝つ! 勝ちたい! あとブルーにも!」
「くはは! うん、ボクも負けないよ、次も負けない。もちろんブルーにも」
「おい何かムカつくなぁその言い方!」
ワイルドファイアが快活に笑い、ハッピーシュートが涙を流しながら口を笑みにして、ブルーサイレントが苦笑いで溜息を吐いた。
ワイルドファイアがもう一度腕を掲げる。
さらに強くなった歓声は、彼女達が地下バ道に消えても鳴り止まなかった。
やっぱりワイルドファイアが主人公じゃないですか!
次回から『燎原の火は『最強』を打倒するようです』に変更します。
ウソです。
次回はレース後の話と日本ダービー準備回の予定です。
掲示板回はどうしよう、ダービー後かな?
次もお付き合いいただければ幸いです。
【おしらせ】
久しぶりに配信もしようかなと考えています。
拙作について語る雑談枠のつもりですが、興味のある方は作者のエックスをフォローして下さると、配信の告知なんかが見れたりします。
今のところ日曜日にやりたいなぁとか思っています。