×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~   作:今峰鏡

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久しぶりのトレーニングとイベントで、システムを間違えてないか若干心配しています。


クラシック級 6月

‖オウショウケイマの5月の指導ポイントを振っていなかったので、先に振ります‖

 

‖オウショウケイマの5月の獲得指導ポイント‖

【1D5:5】+1(日本ダービー勝利ボーナス)[6pt

 

UUU

 

 日本ダービーの雨からこっち、気温と湿度はぐっと高くなり、過ごしにくい日々が続いていた。

 トレセン学園に通うウマ娘達にとって、雨の日が続くのは憂鬱だ。

 単純に湿気が不快と言うのもあるが、雨では外での練習が出来なくなるからだ。

 毎日毎日屋内でのウェイトトレーニングや座学ばかりでは、走りたい衝動を持て余してしまう。

 ここぞとばかりに「重バ場の練習だ」と外に繰り出すトレーナーも居るが、殆どのトレーナーはそんな限定的な状況を想定してのトレーニングなどしない。素直に筋トレや水泳で、晴れの日にも通用する能力を伸ばす方向に向かう。

 何故なら中央のレース場は水はけが良いため、多少の雨くらいでは重バ場判定をされたりしないからだ。殆どのレースは良バ場で、雨が降ってようやく稍重というくらいで、重バ場となるのは全レースの1割にも満たない。

 

 そんな事情はさておき、雨だろうと変わらず楽しそうにトレーニングを熟すウマ娘が居た。

 そのウマ娘は小柄な身体に不釣り合いなほど豊満なバストを、水着というのも憚られるようなビキニに押し込み、太陽が隠れる雨の日ですら眩しい肢体を衆目に晒している。

 

 オウショウケイマである。

 

 彼女はスタミナを伸ばすトレーニングのために屋内プールに来ていた――訳ではない。

 そこはトレセン学園の敷地内にある坂路コースだった。

 

 ビキニ姿のオウショウケイマは、バシャバシャと濡れた芝をシューズで叩いて坂路を駆け上がっている。

 

 完全に不審者の構えだが、これは決して彼女のトレーナーであるリヒトが強制したわけではなかった。

 リヒトの「芝が重くなった坂路を走ってスタミナと一緒にパワーも鍛えるから、濡れても良い格好で坂路コースに集合っすよ」と言う言葉を受けて、自発的に水着を着てきたのである。

 それもスクール水着の着用を推奨されているトレーニング用プールでは無いからと、夏に向けて買ったばかりの、おニューの水着をだ。

 

 正直リヒトはその時点で頭を抱えたが、学園側に申請している坂路の利用時間も限られているため、仕方なくそのまま走ることを許可したのだった。

 

「胸が揺れすぎる! 普通に痛い! というか零れる! 何がとは言わんが!」

 

 楽しそうに叫ぶケイマを見て、リヒトはやっぱり許可するんじゃなかったと深く後悔していたが、ケイマが坂を登りきると同時に止めたストップウォッチに表示されたタイムを見て、目を見開いた。

 

「ち、縮んでる……」

「む? ()れの胸は縮んではいないぞ、むしろ少し大きくなった」

「そうじゃなくて、タイムがっすね……」

 

 そう言ってケイマへと見せたストップウォッチのタイムは、確かに晴れの日に測ったものより幾秒か短くなっていた。

 

「流石はお師匠様だな、己れをここまで成長させるとは……はっ!? つまり己れの胸が大きくなっているのもお師匠様の所為!? 買ったばかりの水着のサイズが合わなくなったらどうしてくれるんだ! もしそうなったら一緒に水着を選びに行ってもらうからな!」

「確かに身体が大きくなるよう栄養も考えてるっすけど……何で胸にばっか行くんすか?」

「…………お師匠様の趣味?」

「断じて違う」

 

 もはや「っす」口調も投げ捨ててリヒトが言った。

 とても冷たい口調だった。

 坂路を走りきって火照ったケイマの身体が一瞬にして背筋まで冷え切ったのは、降りしきる雨の所為だけでは無いだろう。

 

「じゃあもう一本、行くっすよ」

「ハイお師匠様!」

 

 ばびゅんと坂を駆け下りて行くケイマを見送りながら、リヒトが思い返すのは師の教えだ。

 白石はかつて、ウマ娘という種族の不条理さについて語った事がある。

 

「これがウマソウル――結局は()()()()()なら、俺達トレーナーは何のためにいるんすかね……」

 

 坂路の使用時間いっぱいまで坂を登り続け、その度に自己記録を更新していくケイマの仕上がりを見ても、リヒトの心は今日の天気のように晴れることはなかった。

 

 

 

【トレーニング 6月】

※トレーニング表を変更し、賢さトレーニングの発生率を高めました。

 

シュート【1D7:7】

 

1.スピード(オビカネシューズで効果3倍)

2.スタミナ

3.パワー

4.根性

5.賢さ

6.賢さ

7.白 石 最 強

 

リヒト スタミナ固定中 絆MAXで効果2倍!

キミノ【1D6:4】

向日葵【1D6:3】

 

 

 

[知 っ て た]

[実 家 の よ う な 安 心 感]

親 の 顔 よ り 見 た ダ イ ス 目

 

 

 

 

【特別トレーニング】

 

1.全能力進行度2アップ

2.【1D5:4】[根性]トレーニングの進行度を5アップ

      (1~5は順番に「スピ,スタ,パワ,根,賢」に対応)

3.バ場適正アップ

4.距離適性アップ

5.バ場&距離適正アップ

-.固有スキル開放

6.白石最強

 

【1D6:5】

 

‖距離適性上昇ダイス‖

1.短距離 A

2.マイル B

-.中距離 S[MAX!]

-.長距離 S[MAX!]

 

【1D2:1】 

 

[これもしかして、白石センセはスプリンターズS狙ってるんじゃ……]

[ちょっとダイスを振ってみましょう]

 

‖シュートの次走‖

1.菊花賞に直行するで

2.菊花賞に直行するで

3.神戸新聞杯で叩いてから菊花賞や

4.神戸新聞杯で叩いてから菊花賞や

5.セントライト記念で叩いてから菊花賞や

6.セントライト記念で叩いてから菊花賞や

7.スプリンターズSでシニア級と戦い経験を積む

8.スプリンターズSでシニア級と戦い経験を積む

9.「夏休みはお預けや、ジャパンダートダービーに出るで」

10.白 石 最 強

【1D10:10】

 

[爆笑してから冷静になって頭を抱えています]

[振らなきゃよかった……どうしろっていうんだよ……]

 

‖渾身のダイス表……受け取ってください……‖

1.ジャパンダートダービー+菊花賞トライアル

2.ジャパンダートダービー+菊花賞トライアル

3.ジャパンダートダービー+スプリンターズS

4.ジャパンダートダービー+スプリンターズS

5.ゲート練習ついでに新潟千直に出るで

6.ゲート練習ついでに新潟千直に出るで

7.新潟千直+ジャパンダートダービー

8.新潟千直+スプリンターズS

9.「夏休みは海外旅行に連れてったる」

10.白 石 超 最 強

【1D10:5】

 

[一番穏当な所に落ち着いた……いやダービー馬が新潟千直に出るのはおかしいやろ]

 

UUU

 

 雨が上がると同時、早朝にも関わらずシュートは芝コースへと呼び出されていた。

 呼び出したのは勿論白石だ。

 ジャージ姿で欠伸をしながら現れたシュートを出迎える白石の隣には、久しぶりに見るキミノワルツの姿もあった。

 

「先生とシュートさんはレース続き、リヒトさんはケイマさんのトレーニング、さらにサブトレーナーが一人増えてと、事務仕事は増えたのに処理する人間は私以外居ませんでしたから、ずっとそちらの処理に掛り切りだったんです」

 

 シュートの驚いた表情に気付いたキミノが言うと、白石はバツが悪そうに視線を逸らした。

 

「キミノには感謝しとる。それよりも、今日のトレーニングについて説明するで」

「はいセンセ……」

 

 早朝からコースを借りるような練習とは何だろうと首を傾げる。

 トレーニング内容に全く思い至らないのは、寝起きで頭が回っていないからだろうか。

 直す余裕のなかった寝癖を撫でつけながら、目を(しばたた)かせるシュートに白石は告げた。

 

「菊花賞に向けて、シュートが克服せにゃならん弱点は()()ある!」

「二つも!?」

 

 勢いに乗せられて思わずオーバーリアクションをしてしまったが、むしろ二つしか無いのかと思わなくもない。間もなく始まる期末試験は赤点回避で精一杯だし、後輩達とは仲良くなったが未だにクラスメイトに友達は居ないし、つい食後のプリンを食べすぎてしまうし、ウマチューブでケイマと一緒に水着お披露目会をしたらチャンネルをBANされるし……いやあれは無駄に露出度の高い水着を着てきたケイマが悪いな。

 チャンネルBANの真相について頷いて納得していると「なんや、シュートも分かっとるようやな」と勘違いした白石が続ける。

 

「1つは皐月賞でも言った出遅れ癖、もう1つは芝適正の低さや」

「確かに芝よりダートの方が走りやすいとは思うけど……」

 

 現状、シュートは芝のコースを走れている。否、()()()()()()()()()と言ったほうが良い。

 クラシック級前半のこの時期ならまだ問題はないが、これから身体の成長しきった同期や、シニア級ウマ娘と戦う上で、芝への適応は急務だ。

 

「そこでや、今日は雨で重くなった芝から初めて、徐々に乾いた芝へと脚を慣らしてくで」

 

 なるほど、それで雨が上がると同時に呼び出されたのかと納得しかけ、いや待てよと疑問を投げる。

 

「なんで雨上がりじゃないと駄目なの?」

「逆に聞くが、重バ場だったダービーは皐月の時より走りやすかったんちゃうか?」

 

 言われてみれば、走りやすかった……と言うより気にならなかった感じはあった。

 走りづらそうにしていたワイルドファイア達に比べ、シュートは何の苦も無く濡れた芝を駆けていた。

 

「濡れて路盤が柔らかくなった所為で、一時的にダートに近い状態になったんやな。逆に言えば濡れたダートは締まって路盤が固くなるから、シュートにとっちゃ走りづらくなる訳やな。だからダートを走るにしろ芝を走るにしろ、適正の向上はせにゃならん」

 

「はいセンセ、なんとなく分かったわ! じゃあ今日は濡れた芝を走ればいいのね」

 

 そう言ってストレッチを始めたシュートに待ったをかけたのはキミノワルツだ。

 

「シュートさんにはこちらに履き替えてもらいます」

「靴下? にしては生地が分厚いような……」

 

 手渡された靴下をしげしげと眺めてみれば、ラッシュガードのような生地で出来ていて、足裏にはゴムが貼られているのが分かる。

 

「サンドシューズや。ビーチバレーなんかのビーチスポーツで、砂浜の熱から足裏を守るためのモンやな」

「へぇ、そんなんあるんだ……って何でこれを履くの?」

 

 物珍しさから興味を持ったのか、早速靴を脱ぎ始めたシュートと、それに手を貸すキミノを見ながら白石が言う。

 

「芝の感触を覚えるためや。本当は裸足がええんやが、怪我をしても適わんからな。せやから足の裏に集中しながら走るんやぞ」

 

 サンドソックスに履き替え、ぴょんぴょんとその場で跳ねるシュートに、白石は「もう一つ」とサンドソックスが入っていた袋から、赤白二つの旗を取り出した。

 

「俺がゴールで赤旗を上げた時だけ走れ。白旗なら走るんちゃうぞ」

「そっちが出遅れ対策ってこと?」

「せや、タイムも測るから、しっかり見とくんやで」

「はいセンセ!」

 

 こうして始まった適正改善トレーニングだったが、なかなか上手くはいかなかった。

 芝適正に関しては、日が昇りきって徐々に乾いていく芝に自然と慣らされていったのだが、スタートの方が上手く決まらない。目が良すぎる所為で簡単にフェイントに引っかかったり、コースに他のウマ娘が朝練をしに出て来始めるとそちらに気を取られたり、最終的には出遅れながらも強引に加速することで目標タイムをクリアするという、ある意味恐ろしい成長を見せた事で、その日のトレーニングはお仕舞いにする事となった。

 

「先生、どうしましょう」

 

 くたくたの状態で登校していったシュートを見送り、キミノワルツが不安げに問いかける。

 一日二日でなんとかなるとは白石も思っては居なかったが、予想外に改善の傾向が見られない。

 もしこれ以上続けて効果が出ないようなら……

 

「荒療治しかあらへんな……キミノ、出走登録を頼むわ」

「はい先生。どちらのレースに?」

 

 

「新潟千直――GⅢ・アイビスサマーダッシュや」

 

 

 

 【 R E S U L T 】

 

芝適性 C → B

 

短距離適性 A → S

 

【指導ポイント】

オウショウケイマ

5月分:+6pt

6月分:+3pt

 

合計:8pt → 17pt

 

 

 

 

 

 

【イベント 6月】

【1D10:7】

1.向日葵  ◆◇◇

2.シュート ◆◇◇

3.リヒト  ◇◇◇ 

4.キミノ  ◆◇◇

5.帯金   ◆◆◇

6.奥さん  ◆◇◇

7:ライバル ◆◆◇

8.仲間たち ◇◇◇

9.ママ   ◇◇◇

10.白 石 最 強

 

 

UUU

 

‖今回ピックアップされるライバルは?‖

1.カイノクロコマ

2.ワイルドファイア&ブルーサイレント&ポピーミント

3.イズモヤエガキ

4.ミツリンエルフ

5.外国勢

6.メイドノミヤゲ

【1D6:4】

 

[2月の時のメイドノミヤゲと言い、存在感を出せなかったウマ娘の掘り下げ回になってません?]

[とは言え時期的に丁度良いので、あの娘のダイスも振ってみようと思います]

 

 

‖メイドノミヤゲの欧州マイル三冠挑戦‖

★5月前半 『イギリス2000ギニーステークス』 ニューマーケット芝1609m

 

ライバルウマ娘数【1D3:1】[1]人

 

ライバルの強さ【1D50:19】+50(GⅠ補正)[69

メイドノミヤゲの強さ[89]+【1D10:3】(ホープフルSからの成長)[92

 

※強さを最大値としたダイスで勝負をします

 

メイドノミヤゲ【1D92:31

ライバルウマ娘【1D69:30】

 

[メイドノミヤゲの辛勝!]

 

 

★5月後半 『アイリッシュ2000ギニー』 カラ芝1609m

 

ライバルウマ娘数【1D3:1】[1]人

 

ライバルの強さ【1D50:26】+50(GⅠ補正)[76

 

メイドノミヤゲ【1D92:77

ライバルウマ娘【1D76:21】

 

[メイドノミヤゲの圧勝!]

[メイドノミヤゲ二冠達成!]

 

UUU

 

「あっ」

「おや?」

 

 深夜0時。

 なんとなく眠れなかったシュートが母から送られてきたハーブティーでも飲もうと、美浦寮の居室を抜け出して補食室(キッチン)へと向かう道すがら、談話室を横切った時だった。

 消灯されたはずの談話室に()()っと明かりが灯っているのが見え、ビクビクしながら中を覗くと、ソファに座ってテレビを見ていたミツリンエルフと目が合った。

 談話室の明かりはテレビの物だったらしい。

 音量を消したテレビには何処かのレース場が映っており、見覚えのないウマ娘達がパドックから観客に手を振っている。

 

「こんばんは、ハッピーシュートさん」

「あ、えっと……こんばんは

 

 談話室の入口から顔だけだしたシュートが、人見知りを発揮して小声でペコリと頭を下げると、クスクスと声を潜めた笑い声が聞こえた。

 

「ごめんなさい、可愛らしくてつい。レースの時と違って、普段は控えめな方なのですね」

 

 上品に笑う線の細い美少女につい見惚れていると、ミツリンエルフが手招きをしてきた。

 流されるままにソファの後ろに立つと、肩越しにこちらを見上げるミツリンエルフがテレビ画面を指さした。

 

「もうすぐ『セントジェームズパレスステークス』の発走なんです」

「せんとじぇー……なに?」

「イギリスで行われる、クラシック級の欧州マイル戦の頂上対決です。同じ担当トレーナーの先輩が出走するので見ているんです」

「なんて()?」

「メイドノミヤゲさんですよ。ハッピーシュートさんもホープフルSで戦ったでしょう?」

「ああ、メイド服の……」

 

 後方待機からそのままスタミナ切れで着外に沈んだため、あまり印象には残っていないが、あの『メイド一族』という事で名前だけはぼんやりと覚えていた。

 

「良かったら一緒に見ませんか?」

 

 そう言ってにっこり笑む美少女(ミツリンエルフ)に――じゃなくてレースに興味が湧いたシュートはコクリと頷く。

 

「見る……から、ハーブティー淹れてくるけど、飲む?」

 

 

★6月前半『セントジェームズパレスステークス』 アスコット芝1603m

 

ライバルウマ娘数【1D3:1】[1]人

 

ライバルの強さ【1D50:27】+50(GⅠ補正)[77

 

 

「正直な事を言えば、ミヤゲさんの実力はこの中でも頭ひとつ飛び抜けています」

「そうなの?」

「えぇ、短距離・マイル戦なら私と同等かそれ以上の強さがあります。その証拠に、彼女はここまで欧州マイルGⅠを2勝しています」

 

 確かに、パドックで日本から来た観客にファンサしているメイドノミヤゲには余裕があった。むしろピリピリしているのは周囲の欧州ウマ娘の方だ。

 

「ですが、欧州レースにはラビットが居ます」

「うさぎ?」

 

 ようやく眠気が来たのか、若干幼児退行気味のシュートがコテンと首を倒して呟くと、ミツリンエルフがくすくす笑いを漏らす。

 

「本命のウマ娘を勝たせるために、同じバ主がペースを支配するためだけに出走させるウマ娘ですよ」

 

 日本では禁止されているラビット行為だが、欧州ではむしろ当然の戦略として用いてくる。ラビットの有無の分だけメイドノミヤゲは不利と言えた。

 

「それに相手も()()()()、フランス2000ギニーの勝者【デアフライシュッツ】です。知っていますか、シュートさん?」

「しらない」

「ふふ、『魔弾の射手』ですよ。そしてバ主はイギリスレース界の大物、コート伯爵です」

 

 言った傍から赤スーツの男がテレビに映る。

 彼が黒鹿毛のウマ娘に何やら耳打ちすると、そのウマ娘が闘志を秘めた瞳でメイドノミヤゲを睨んだ。

 

「さて、そろそろ出走ですね」

 

 ぞろぞろとゲートへと向かうウマ娘たちを最後に、放送権を買い取った日本のテレビ局のスタジオへと映像が戻る。

 音を消しているため何を言っているのかは分からないが、昨年の京王杯ジュニアステークスやホープフルSの映像が流れている辺り、メイドノミヤゲの戦績について話しているのだろう。

 それらを流し見ながら、うつらうつらするシュートの滑らかな白毛を触って遊んでいると、ついにセントジェームスパレスSの発走準備が整った。

 

「シュートさん、始まりますよ」

「ふぇっ」

 

 駄目だこりゃ。

 ミツリンエルフは諦めて、少しその場からズレると、シュートの頭を倒して膝枕した。

 シュートの小さな頭を撫で、柔らかい耳をこしょこしょと触りながら呟く。

 

「勝ってください、ミヤゲさん」

 

 

メイドノミヤゲ【1D92:55

デアフライシュッツ【1D77:31】

 

 

 アスコットレース場は、日本では見られない三角形のコースを持つレース場だ。

 そしてセントジェームズパレスステークスは、その三角形の頂点からスタートし、次の頂点を曲がって底辺を走り抜け、その先の最後の頂点がゴールになる。

 

 その最初で最後のコーナーまでの直線の最中、先頭を走るウマ娘を冷ややかな目つきで見て、メイドノミヤゲは失笑を漏らした。

 

 先頭のウマ娘はデアフライシュッツのラビットだ。

 追込脚質のメイドノミヤゲが不利になるよう、そして先行脚質のデアフライシュッツが余力を残せるよう、スローペースを演出している。

 

 先行ウマ娘が足を残して最終直線に向かえば、スタート距離の差で後方を走る差し・追込ウマ娘は不利になる。

 

 だがメイドノミヤゲは余裕の表情を崩さない。

 何故なら、もう対策は成っているのだから。

 

「さあ、行くのじゃ」

 

 メイドノミヤゲが呟くと同時、中団を走っていた1人のウマ娘が突然前へと飛び出した。

 掛かったとしか思えない動きに周囲が動揺する中、件のウマ娘はあっと言う間にラビットを追い越してハナに立つと、さらにスピードを上げていく。

 先頭のウマ娘とラビットの差は既に5バ身以上ある。流石に焦ったラビットがスピードを上げると、隊列は徐々に徐々に縦長になっていく。

 

「ホーッホッホッホ! 既にあの娘は妾の虜よ! ラビットにはラビット、レース前に妾の美貌で魅了しておいたのじゃ!」

 

 一転ハイペースになったレースに観客がざわつく中、ウマ娘達はコーナーへと差し掛かる。

 前を行く二人のラビットは、アスコット1600mの()()()()()()()()で体力を消耗しもういっぱいいっぱいだ。

 先行策を取るデアフライシュッツの額にも汗が浮かんでいる。

 

「辛いじゃろう。苦しいじゃろう。レース半ばで体力の尽きる辛さは、妾もよぉ~~~く知っておる」

 

 脳裏に過るのはホープフルSでの惨敗だ。あの時は完走するのですら精一杯だった。美しい自分に相応しくない無様な負け。それを思い出す度にメイドノミヤゲの(はらわた)は煮えくり返るようだった。

 

「あの白毛はダービーウマ娘になったようじゃが、皐月賞では負けたと聞く。対して妾は三冠ウマ娘じゃ! 中長距離をはしる彼奴(きゃつ)とはもう戦う機会は無かろうが、これで借りは返すぞ!」

 

 コーナーを曲がり直線を向く。

 ずるずると後退するラビットを追い抜き加速する。

 大外一気、デアフライシュッツを猛追するメイドノミヤゲに追い抜かれたウマ娘達が悲鳴を上げた。

 中には身体をぶつけようとしてくるウマ娘も居たが、並ぶことすら許さない末脚に追いつけず空振りに終わる。

 残り100m、先頭を行くデアフライシュッツを射程圏内に捉えた。

 

「――さあ、ご奉仕を始めてやろうぞ」

 

 欧州の重い芝を踏みつけ、メイドノミヤゲが()った。

 

 みるみる内に縮まる距離。

 バ蹄の音でそれに気付いたデアフライシュッツが速度を上げる。

 それでも距離は離れない。

 魔弾は一体どちらなのか、何処までも追いかけていくメイドノミヤゲから、デアフライシュッツは逃れられない。

 残り20m、二人が並んだ刹那の間に、メイドノミヤゲは悪魔的な笑みを浮かべて魔弾の射手を見た。

 

「お前を殺す銃弾は、一発で十分だったのう」

 

 デアフライシュッツに日本語は分からない。

 そもそも二人が交錯した須臾(しゅゆ)の間では、まともに言葉など交わせない。

 それでも、デアフライシュッツは彼女が何を言ったのか理解した。

 理解して、心が折れた。

 二人の間が急速に離れていくのはメイドノミヤゲの加速の為だけでは無かった。

 

 こうしてメイドノミヤゲは1着でゴール板を駆け抜けた。

 一人のウマ娘の心に、呪いという土産を残して。

 

UUU

 

「あの……ごめんね、途中で寝ちゃって」

 

 翌朝、自室で目覚めたシュートは昨晩の事を夢かと思い、しかし綺麗に洗われた二つのティーカップが自室の机の上にあるのを見て、すぐに現実だったと理解した。

 そして朝食を摂りに向かった食堂で、クラスメイトらしきウマ娘達に囲まれて談笑するミツリンエルフを見かけると、勇気を振り絞って声をかけたのだった。

 

 謝られたミツリンエルフは上品に笑うと、昨夜そうしていたようにシュートの髪に手櫛を通し、耳元でそっと囁いた。

 

「私の膝の上で眠るシュートさんは、とっても可愛かったですよ」

 

 みるみる内に真っ赤になったシュートは、朝食を食べるのも忘れて一目散に食堂から逃げ出した。

 ミツリンエルフの取り巻きたちから黄色い悲鳴が上がる。

 真っ赤な唇を舐めて、蠱惑的な笑みを浮かべると彼女は言った。

 

「さて、何本の矢を放てば――貴女を射止められるのでしょうか」

 

 

[ミツリンエルフとの絆(?)が深まった!]

[次回のトレーニングには必ずミツリンエルフが同行(ストーキング)します]

 

 

 

【 R E S U L T 】

 

1.向日葵  ◆◇◇

2.シュート ◆◇◇

3.リヒト  ◇◇◇

4.キミノ  ◆◇◇

5.帯金   ◆◆◇

6.奥さん  ◆◇◇

7:ライバル ◆◆◆【MAX!】

8.仲間たち ◇◇◇

9.ママ   ◇◇◇

 

[絆レベルMAXボーナス! 次回のトレーニング効果が+1されます]

 

 




弱点を二つも克服しちゃいます!
いや出来てね―じゃねえか!

メイドノミヤゲとミツリンエルフは好きにさせたら勝手にヤバいヤツらになりました。ミツリンエルフがこんなメイドに好意的なのは、多分顔が良いからです。
だからってそうはならんやろ!


次回は降って湧いたアイビスサマーダッシュ回です。
なんで……?
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