×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~ 作:今峰鏡
締切が無いとこんなに楽なのかと思いつつ、連載って毎日が締め切りなのにそこまでキツく無いのなんでだろうと書いています。これってトリビアになりませんか?
「な、何じゃとぉ~~~~~~~!? あの白毛がアイビスサマーダッシュに出走じゃとぉ!?」
欧州マイル三冠を制覇し帰国したメイドノミヤゲが最初に驚愕したのは、ハッピーシュートの
理由について記者会見で滔々と語る白石トレーナーを「え、聞いてないんですけど」という視線で見続けていた姿が印象的だったのは、ともかく。
「あやつの適性は中長距離ではなかったのか!? よりにもよって
そして2つ目の衝撃は、同期で同チームの後輩がその白毛ウマ娘とイチャイチャしていた事だった。
「寝取られやんけ~~~~~~~~~~~~!!!」
思わず叫んだメイドノミヤゲに怯えたシュートが、耳を絞ってミツリンエルフの背中に隠れた。
「ミヤゲさん、シュートさんが怯えてしまったではないですか」
「お、おびえてないし!」
「……怯えてませんがビックリされています。声を落としてください」
「や、はい。すまぬのじゃ……」
メイドノミヤゲは素直に謝ると、ソファに座るミツリンエルフを挟んでシュートとは反対側に腰掛けた。
場所は栗東寮の談話室。
時間は以前とは違い夕食後、夜の早い時間だった。
あれ以来、シュートはミツリンエルフに誘われて、時折こうしてお茶をしながら喋るようになっていた。
実は母親の影響で紅茶趣味のシュートだったが、これまで交友のあったブルーサイレントはスポドリ派、ワイルドファイアはコーヒー派、ポピーミントはエナドリ派と、飲み物の趣味が合うウマ娘がいなかったので、ミツリンエルフとの夜のお茶会を単純に楽しいひと時だと感じていた。
ちなみに白石のトレーナー室は主の趣味であるコーヒーと、熱中症対策のスポーツドリンクしか常備されていない。
「お主らが三冠路線で争っておるのは知っとったが、そこまで仲良くなっとるとは思わなんだぞ」
「トレセン学園において、ライバルとは友達と同義語ですよ。ね、シュートさん?」
「う、うん……」
毎晩のように会うようになったミツリンエルフだが、当のシュートは未だに内弁慶っぷりを発揮できていない。ミツリンエルフが
閑話休題。
ミツリンエルフのカップを強奪し勝手に紅茶を飲みながら、優雅に足を組んだメイドノミヤゲが流し目でシュートを見やる。
「で、お主は何ぞアイビスサマーダッシュに出走するんじゃ? ダービーウマ娘のローテーションでは無かろう」
「ゲートが下手だからって、センセが……」
「ほぅ、あの『最強』がのう」
白石の采配ならばそう言う事もあるかと頷くメイドノミヤゲであるが、これは白石だから許されるローテである。新人トレーナーは真似をしないようにして欲しい。
「ふむ、ならば妾が出走する有力ウマ娘について教えて進ぜよう」
「ほんと?」
「お主が短距離も走れると言うなら、いつか再戦の機会もあろうて。それまでに、そこらの有象無象には負けて欲しくない故な」
‖アイビスSD 注目ウマ娘数‖
【1D4:1】[1]人
「ね? ライバルは友達と同じでしょう?」
何故かドヤ顔のミツリンエルフを無視し、メイドノミヤゲは人差し指を立てた。
「短距離路線は妾の領分じゃ。それ故に秋のGⅠ戦線で戦う事になる有力なシニア級ウマ娘をピックアップして調査しておるが……その中でアイビスSDに出走予定のウマ娘は一人だけじゃ」
‖注目ウマ娘のステータス評価(GⅢ補正で+30、シニア級補正で+10)‖
【1D70:41】+30 +10 = 81
「【ツキノカガヤキ】はクラシック級こそパっとせんかった物の、シニアになってから実力を伸ばしてきた短距離専門のウマ娘じゃ。先月の北九州記念で初めて重賞を制覇し、今勢いに乗っておる旬の娘じゃの」
話を聞きながら検索していたのか、ミツリンエルフの差し出してきたスマートフォンの画面には栗毛に三日月型の流星が特徴のウマ娘が映されている。
プロフィールを見ればシュートとは同級生とあった。
もちろんシュートに面識は無い。
‖ツキノカガヤキの長所と短所‖
(短距離なのでスタミナは除外、被ったら1つ上)
長所【1D5:2】(1,2.スピード 3.パワー 4.根性 5.賢さ)
短所【1D5:3】(1,2.スピード 3.パワー 4.根性 5.賢さ)
「トップスピードに関してはかなりのモノがあるのじゃが、その反面パワーには欠ける印象があるのう」
「つまり、大きな坂の無いアイビスSDはうってつけのレースだということですか」
「妾も
その相手に、比較的平坦な新潟1000mで戦わなくてはならない。
初めての短距離戦という事を差し引いても、勝つことは困難を極めるだろう。
そもそも出走登録をした白石でさえ勝つことは期待していない、いわば調整のためのレースだ。その証拠に出走ウマ娘の情報どころか、コースの解説や作戦についても聞かされていない。
「でも、勝つから」
それがレースなら、どんなモノであろうと負けるつもりで走るウマ娘は居ない。
「見ててね、ミツりん」
「はい、シュートさん」
「妾も応援しとるぞ~」
二人の応援を受けて、シュートが
その後はメイドノミヤゲの紅茶を淹れなおし、三人は消灯時間までお茶会を楽しんだ。
『アイビスサマーダッシュ 新潟 芝1000m 直線』
天候【1D4:2】1.快晴 2.晴れ 3.曇り 4.雨
★注目ウマ娘のステータスを公開します。
①『ハッピーシュート』
SP B(B+)
ST B+
PW C+(C)
根 D
賢 E+
適正:バ場B 距離S
スキル:『最強へと至る道』Lv.2:1ターン目の『ピックアップステータス』を自分の最も『ステータス値』の高いステータスにする(同値の場合はランダム)。この対決に勝利した場合、勝利への道標を辿って『最終ターン』の補正値に『+11』する。
②『ツキノカガヤキ』
SP B+
ST E+
PW E
根 B
賢 B+
適正:バ場A 距離A
スキル【1D2:1】1.解放済 2.未開放
『月の輝き、星の瞬き』:終盤に前に行きリードを広げる。短距離のレースに限り、『最終ターン』の補正値に『+10』する。
※短距離戦限定ルール①:ピックアップステータスが『スピード』だった場合、ステータス値による補正値を倍に。ピックアップステータスが『スタミナ』だった場合はステータス値による補正値を半分にします。(小数点以下切り上げ、マイナスの場合は切り捨て)
※短距離戦限定ルール②:最後の競り合いが発生した場合、根性のステータス値による補正値だけでなく、スピードのステータス値による補正値も加算します。
ハッピーシュートのアイビスサマーダッシュ参戦は、レース界で大きな話題となった。
未だ
アイビスサマーダッシュは元々、日本唯一の重賞直線競争という事で一定の人気はあったが、その日の新潟レース場にはダービーウマ娘の短距離挑戦を一目見ようと、スタンドに収まりきらないほどの観客が押し寄せていた。
見渡す限り人だらけのレース場は初夏の熱気もありまるでサウナのようだったが、それもこの冷房の効いた関係者席では無関係だった。
そんなガラス張りの関係者席から、パドックを見下ろす一人の女性が居た。
小柄な、ウマ耳の老女だった。
彼女はしゃんと背筋を伸ばし、毛量こそ減った物の未だ艶のある栗毛から伸びる耳を盛んに動かし、興奮した様子で隣の若いウマ娘に言う。
「そういえば、色んなレース場を走りましたが、新潟は走った事がありませんでした。【フガク】ちゃんはメイクデビューが新潟でしたね」
「それ以来走ってないけどね。それにしても、お婆ちゃんが現地にレースを見に来るなんて思わなかった」
「ダービーウマ娘ちゃんが新潟千直を走る事なんて、生きている間にはもう無いでしょうから。それにハッピーシュートちゃんは推しですしおすし!」
「お婆ちゃんの推しは多すぎて把握しきれないんだよなぁ……」
「もちろん最推しは我が孫、フガクちゃんですとも!」
「知ってた。親の声より聞いてるよ、その台詞」
「もっと親の声聞いてください……あの子も心配してましたよ」
「引退したら帰るよ。それより――」
フガクと呼ばれた祖母譲りの
「お婆ちゃんがあの娘を推してるのは、自分に似てるから?」
「似てますか? あんなに可愛くなかったと思うのですが……」
「とうとうボケた? そうじゃなくて、脚質の事。芝もダートも走れる、戦う場所を選ばないウマ娘って事」
「う~ん、流石に短距離は……いや、ありましたね。でも、似ていませんよ。ハッピーシュートちゃんは多分、本質的にはステイヤーですから」
「マ?」
「マジですとも。むしろ脚質や距離適性的には、白石トレーナーのお母さん……いえ、それより叔母さんに似ていますね。あの方も芝にダートに、マイルから長距離まで走っていますから」
老女はトレセン学園の黄金期を思い返し、もう一人の芦毛と共に一時代を築いたウマ娘を想起する。
彼女もまた、名バだった。
「さてさて、ハピートちゃんは一体どんな足跡を、歴史に残す事になるんでしょうか」
老女の呟きに、フガクが素早く反応した。
「そのダサい略称をやめろ」
★スタートフェイズ
①【5D10:32】-5 =27
②【5D10:25】+25 =50
レース衰退期、レース界で存在感を放っていた多くの名家が没落した。
未だレース業界を主に活動し、バ主になっている家もあるが、レース業界にどっぷりであった多くの名家が他業種に軸足を移さなければならなかったのは事実である。
そんな中、バ主制度の成立で台頭してきた新たな名家も存在する。
それらの名家は『新名家』などと呼ばれ、大昔からランキングが大好きな日本人(江戸時代には『おかず番付』やら『温泉番付』などが発行されていた)らしく、ファンによる序列まで定まっている。
『ツキノ』はそんな新名家の序列【1D10:7】[7]位に位置する家だ。
現当主は重賞未勝利からGⅠ制覇を成し遂げた【ツキノラビット】で、その戦績は【2-4-3-4】と微妙だが、そんな所が序列7位の所以だったりする。
ツキノカガヤキはそんなツキノ家から出た久しぶりの重賞ウマ娘である。
それ故に周囲のプレッシャーは大きいが、当の本人は緊張した様子もなく、のほほんとゲートから直線コースを眺めていた。
むしろ隣の枠に入っている白毛のウマ娘の方が緊張しているように見えた。
(ダービーウマ娘でも、ゲートって緊張するんだなぁ)
等と考えているツキノカガヤキだが、その間にスターターがスタート台に立つのが見えた。
意識を切り替え、前を睨む。
スタートは
そもそもがウマ娘という種族自体、狭い所が苦手だし、ただ前扉を睨んでいるだけではスタート直後の進路把握が遅れてしまう。だからと言ってコースの先ばかり見ていると、扉が開ききる前に前へ出てしまい、扉とぶつかって怪我をする可能性がある。
だからツキノカガヤキはスタート時、視野を広めにとって
そしてその日も、いつもの表情でスタートを待って――ゲートが開いた。
★1第ターン
【ハッピーシュートの固有スキル『最強へと至る道』発動!】
[ピックアップステータスのダイスが変化します]
ピックアップステータス【1D2:2】(1.スピ 2.スタ)
①ハッピーシュート【5D10:19】+13 =32
②ツキノカガヤキ 【5D10:33】-2 =31
[ハッピーシュートの勝利!]
ゲートを飛び出したハッピーシュートは
それはもう見事な全力疾走だった。
新潟レース場に詰めかけた観客の多くは「ダービーウマ娘とは言え、ジュニア級の娘が初めて短距離を走ったら、そりゃ緊張して掛かるよね」と溜息を吐いた。
その溜息がどよめきに変わり、歓声に成るまで要した時間は
シュートは直線の半ばにまで到達していた。
そんな観客席のざわめきを聞いて、関係者席の老女は可笑しそうに笑い声を上げた。
「そりゃあステイヤーが短距離を走ったら、
「最初から全力疾走……ってコト!?」
フガクが驚愕の声を出し、次に「ワァ……!」と歓声を上げた。
「ツキノカガヤキちゃんもそれに付き合う構えですか……!」
「やるね、あの子」
だが、そこはスタミナ自慢のシュートだ、ツキノカガヤキに比べ表情には余裕があった。
「いやはや、たまには現地に見に来るものですね! いや、この場合は長生きはする物、と言うべきでしょうか……何にせよ、こんなレースはもう二度と見られないかもしれませんよ」
「3番手以降と4バ身は離れてるもんね、
二人のデッドヒートの様相を見せ始めたアイビスサマーダッシュは、早くも終盤に入った。
★最終ターン
ピックアップステータス【1D5:2】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)
【ハッピーシュートの固有スキル『最強へと至る道』の効果発動!】
[ハッピーシュートの補正値に+10]
【ツキノカガヤキの固有スキル『月の輝き、星の瞬き』発動!】
[ツキノカガヤキの補正値に+10]
①ハッピーシュート【5D10:23】+13 +10 =43
②ツキノカガヤキ 【5D10:23】-2 +10 =31
[ハッピーシュートの勝利!]
いやおかしいだろ、とツキノカガヤキは思った。
いくらアイビスサマーダッシュが1000mしか無いとは言え、最初から最後まで全力で走って保つ
それを悠々と無視して白毛のウマ娘は速度を緩めない。
そこまで考え、気付く。
そもそもステイヤーでありながらダートを難なく走れる程パワーがあり、それでいてダービーに勝てるようなスピードを持つウマ娘が異常なのだと。
(そんなウマ娘が、よりによって新潟千直に出てくるなよなぁ!)
もうスタミナは限界に近い。
それでも1バ身以内には追い縋っている。
残り100m。
自分の脚が保てば、あるいはハッピーシュートが失速すれば、ワンチャンスくらいはあるだろう。
萎える心を奮い立たせ、ツキノカガヤキは駆ける。
★最終直線
1.流石に1000mずっと全力疾走は無理でした。
2.競り合い
3.ハッピーシュートの勝利!
4.ハッピーシュートの勝利!
5.ハッピーシュートの勝利!
6.ハッピーシュートの勝利!
7.ハッピーシュートの勝利!
8.ハッピーシュートの勝利!
9.ハッピーシュートの勝利!
10.ハッピーシュート、新潟1000mコースレコード!
【1D10:7】
ゴール板を駆け抜けて、シュートはふらふらと芝に座り込んだ。
流石のシュートも1000m全力疾走は体力の限界ギリギリだった。
それでもなんとか保った。そのおかげで勝てた。
本当はどこかで息を入れるつもりだったが、ツキノカガヤキがずっと追いかけてくるためにスピードを落とせなかったのだ。
「すご……短距離ウマ娘って……毎回、こんなレースしてんの?」
「する、ワケ、無い」
独り言へと返ってきた声にシュートの耳が跳ねる。
見れば汗で体操服をぐっしょりと濡らしたツキノカガヤキが居た。
ツキノカガヤキはどさりとシュートの横へと座り込むと、息を整えながら言う。
「同学年に、ッスー……こんな娘が居るなんて……ハァー、思わなかったよ」
「あ、うん」
「今度から、スタミナトレーニングもするよう……トレーナーに頼んでみる」
「いいんじゃ、ない?」
「参考までに、どんな事してるのか、教えてよ」
「えっと……数十キロ背負ってプールを泳いでる」
なんと無しに放たれた言葉に、ツキノカガヤキは目を丸くした。
それはもはや拷問では?
「浮力が働くから、地上ほど重さは感じないの。浮かなくなるけど」
「あ、はい」
「浮かないから、ずっと足か手を動かしてないと駄目なのね。だからすっごくキツイわ」
ツキノカガヤキはちょっとだけ、実家の前で座り込みをするウマ娘愛護団体の気持ちがわかった。名家でありながら比較的規模が小さいから狙われやすいのだ。今度からほんの少し優しくしてあげよう。警察は呼ぶが。
「流石にそれは御免だけど、プール練習は参考にさせてもらうよ。また一緒に走ろう」
ツキノカガヤキが差し出してきた手を、シュートが握る。
「いいけど、もう直線は嫌よ」
こっちのセリフだ。と、ツキノカガヤキは言わなかった。
新潟7R アイビスサマーダッシュ 着順
1着 ハッピーシュート
2着 ツキノカガヤキ 1
3着 ・・・・・・・ 5
★レース勝利ボーナス
※短距離かつ賢さ上昇のためのレースなのでダイス表変更
1.スピード
2.賢さ
3.スピード
4.根性
5.賢さ
6.バ場適性
7.距離適正
8.白 石 最 強
【1D8:2】のトレーニング進行度が【1D3:1】上昇!(適正上昇の場合、1段階のみ)
ファン数が【5D10:32】×100 + 1000 [4200]人増えた!
【 R E S U L T 】
スピード ■□□□□[C+]
スタミナ ■■■□□[B+]
パワー ■□□□□[C+]
根性 ■■■■□[D]
賢さ ■■■□□[E+]
【ファン数 49749人 → 53949人】
新設定がいっぱい出ました。
ようやく出せたか感あります。
次回はまともに練習してくれ!
■お知らせ
連載はお盆休みを取らせていただきますので、次話まで少し間が空くかもしれません。空かないかもしれません。
ぶっちゃけ仕事です。
学生の皆さんは長期休暇がちゃんとあるお仕事に就いたほうが良いですよ。