×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~ 作:今峰鏡
台風の野郎、騒がせるだけ騒がせて消えやがって……
【トレーニング 10月】
シュート【1D7:1】
1.スピード(オビカネシューズで効果3倍)
2.スタミナ
3.パワー
4.根性
5.賢さ
6.賢さ
7.白 石 最 強
リヒト スタミナ固定中 絆MAXで効果2倍!
キミノ【1D6:3】
向日葵【1D6:4】
[スピードのトレーニング進行度が3アップ!]
[オウショウケイマの獲得指導ポイントが1アップ!]
3ヶ月の合計指導ポイント[13pt]
黒須リヒトの指導力[72]
(13pt + 7)/10 = 2
[オウショウケイマのスタミナが2ランクアップ!]
栃木県某所、オビカネスポーツが所有するスポーツ実験施設の一室、カプセル型の寝台に一人のウマ娘が横たわっていた。
しかし医療用らしくシンプルで清潔な見た目をしたHMDから零れる白毛と、何より薄い病衣を纏ったバ体を見れば、歴戦のトレーナーである白石が自分の愛バを見紛うはずもなかった。
「フルダイブ型のVRウマレーターとは言え、最新のモデルにしては大掛かりですな」
VRウマレーターは、かつてはトレセン学園の体育館に設置されるほどには大きな機械であったが、今では小型化が進み、一般家庭でもフルダイブ型VRゲームが遊べる程度には一般的な(それでも、随分と高価なおもちゃには違いないが)物になっていた。
それに比べて今白石の目の前にある機械は、黎明期のVRウマレーターに匹敵する大きさがある。
オビカネシューズの売上で導入した最新機材だと説明された直後ならば尚更な疑問であった。
「ウマレーター本体はシュートさんの被っているHMDです。彼女が入っているカプセル自体は、主にフルダイブ中の各種バイタルを測定する物ですから」
答えたのは白衣を纏った仮面の女性だった。
実験施設の主席研究員、
「フルダイブ型のVR機器の仕組みとしては、HMDが脳からの電気信号を
そう言って安心院が差し出してきたタブレット端末を覗き込むと、そこには束になった紅白の繊維が伸びたり縮んだりを繰り返している図が映し出されていた。
「シュートさんの脳が発した電気信号が、脚のどの筋肉をどの様に動かすよう指令を出しているか、リアルタイムで計測しています」
「そないな事まで出来るんですか……」
「医療用だからこそですね。市販品などはそこまで細かく信号を受け取る必要がないので『腕を動かす電気信号を受けたら、登録されたモーションからアバターの腕を動かす』くらいの精度しかありません」
そう締めくくって、安心院は白石の前に置かれた大型のディスプレイに映像を映し出す。
映像にはダートコースを走る幾人かのウマ娘が映っている。
その中に、白毛のウマ娘――ハッピーシュートも居た。
シュートが第4コーナーを抜け出し、直線に入る。
前を走っていた数人の逃げウマ娘は一瞬にして後方へと置き去りにされ、彼我の距離はぐんぐんと離されていく。
比例して近づいていくゴール板を内ラチ側の視界に捉えた時だった。
反対側の死角から突然何かが現れ、猛スピードでシュートを抜き去っていく。
今度はシュートが置いていかれる番だった。
呆然と『何か』を見送りながらゴール板を駆け抜けたシュートの先、クールダウンに脚を緩めて駆けるのは、漆黒のウマ娘。
「【エンプレスガビー】――正直、信じられないデータです」
安心院が呆然と呟いた。
ポリゴンで構成された3Dモデルでありながら、その濡れたような青毛と引き締まった長身の肉体は、見るものになんとも言えない色気を感じさせる。
その青毛のウマ娘が、同じくクールダウンに入ったシュートを振り返り、フっと笑う。
「白石トレーナーには足を向けて寝られませんよ、まさか
「最盛期には程遠い仕上がりですがな。……が、
白石と安心院が話していると、カプセルの
HMDを乱暴に外してベッドに置き、VR空間との感覚の違いから、若干フラつきつつ白石達の元へと寄ってきた。
「おおシュート! まずまずの走りやったな」
「何なのアレ……意味分かんない」
そう言ってヘルメット型のHMDで蒸れた頭をガシガシと掻く。
VR空間内での感覚を引きずっている所為で、体温が上昇していると錯覚した脳が今更になって発汗を促し始めたのか、額からは汗が垂れている。
「衰えたとは言え、数年前までダートで最強やったウマ娘やからな」
『生涯無敗』『砂の女帝』『最も叡智な現役ウマ娘3年連続ナンバーワン(URA非公式)』と、数々の異名を持つ白石の教え子、エンプレスガビーの現在のデータを元に作られたアバターに勝つのは、いくらシュートと言えども難事だと言わざるを得ない。
‖シュートのVR空間内での勝率‖
【1D100:46】-50 [0]%
実際、VRウマレーターでの模擬レースで、シュートはまだ一度も勝ててはいなかった。
「俺もお前が勝てるとは思っとらん。それでも善戦は出来とる、上々や」
「……はいセンセ」
不承不承、シュートがふくれっ面で言った時だった。
‖エンプレスガビーのアバターを操作していたのは?‖
1.本人
2.キミノワルツ
3.オウショウケイマ
4.ブロンノワール
5.NPC
6.生 涯 無 敗
【1D6:1】
どんがらがっしゃんと今日日漫画でも聞かないような音を立てて誰かがズッコケる音が響いた。
あ痛たた、と腰を擦りながら現れたのは、VR空間内でシュートを下した青毛のウマ娘、エンプレスガビーだった。
内ハネのセミロングヘアーの下には垂れ目がちな大きな瞳、すっと通った鼻梁に泣きぼくろ、現役時代より肉がついてむっちりとした長身の女性は、なるほど叡智だった。
「シライシ、あのアバター
「そのはずやが……安心院さん、これは?」
元担当トレーナーとは言え、白石を呼び捨てにするエンプレスガビーにシュートは驚くが、当の本人は気にした風もなく安心院へと問いかけた。
「本当に極一部の、トップアスリートにしか起きない現象ですね、神経が競技に最適化しすぎて、脳との結びつきが強くなりすぎて居るんです。それ故に、アバター側がエンプレスガビーさんの反応速度について行けていないのでしょう」
マグネットコーティングをする前のガンダムに乗るアムロのような物です。と、分かり辛い例えをする安心院に首を傾げながら、エンプレスガビーはシュートに向き直る。
‖エンプレスガビーのシュートに対する評価‖
【1D100:15】
「やっぱり……貴女も私の後継者足り得ないのね」
「は? 何なの急に」
悲しげに言うエンプレスガビーに対し、シュートがつんけんと返す。
エンプレスガビーはじっと彼女の瞳を覗き込んで続ける。
「私の帝国は、私の引退と同時に亡びたわ。砂の帝国、私の遊び場……ダートという箱庭の主はもう居ない。千々に乱れた亡国を統べるに足る器を探していたのだけれど……これは未練ね、シライシ?」
「ほなら、何でドバイ王族の求婚を断ったんや。受けとれば文字通り、お前の国を作ることだって夢や無かったやろ」
「シライシなら分かるでしょう? 分かって聞いているのね。でもいいわ、答えて上げる。――私が『女帝』だからよ。貴方が『最強』であるのと同じ様に、私の帝国はレースの中にしか無い」
そう言って『女帝』は妖艶に笑った。
寒気のするような美しい笑みだった。
「ハッピーシュート、貴女は『君臨する者』では無いのね。きっと『挑戦する者』なのだわ。人はそれを何と言うか知っていて?」
「…………平民?」
「うふふ、違うわ」
エンプレスガビーは表情を消して言った。
「――人はそれを『勇者』とか『英雄』なんて呼ぶのよ」
それきり、エンプレスガビーはキョトンとした表情のシュートから興味を無くしたように視線を切ると、白石に向き直る。
「シライシ、『勇者』を仕立て上げて一体何をするつもり? 『魔法使い』気取りの『最強』は、彼女に何を打倒させたいの?」
「……どこまで分かっとるんや、お前は」
「何も知らないし、何もわからないわ、興味がないもの。それでも察せられるのね、きっとシライシのやる事だからだわ。私の『魔法使い』さん?」
「お前の言う事は分からん……」
顰め面で首を振った白石を見て、エンプレスガビーが上品な笑い声を上げた。
「貴方が成す事を、私は遠くから見守らないわ、興味がないもの。うふふ……それではまた会いましょうね、シライシ」
「暫くは会いた無いなぁ……」
「照れ隠しね?」
「ちゃうわドアホ」
うふふと笑って、エンプレスガビーは去っていった。
嵐のような女だと白石は思った。
「何なのあの人、強いのは分かるけど、センセの事呼び捨てにするし、嫌な感じ」
エンプレスガビーが去ったのを見送って、シュートがムッツリと告げる。
白石は苦笑いで答えた。
「まぁそれだけの実績があるっちゅうこった。アレでトレーニングは真面目やったしな、誤解される事は多いが、悪いやつやあらへん」
「それに私を勇者だとかって……あれ? 褒められたの?」
「さあな。せやけど――」
(俺がシュートに全距離・全バ場GⅠ勝利を達成させようと思っとる事は――少なくとも、何かを成すためにこいつを走らせとる事までは
思った言葉を飲み込んで、白石は言う。
「そろそろシュートにも、俺の目的を話すべきなんやろうな」
小さく言った言葉を聞き取れず、シュートが首を傾げる。
白石が誤魔化すようにシュートの頭を乱暴に撫でると、鬱陶しそうに手を払われた。
「何よ!」
「お母さんに会いに行こか、色々と話す事があるやろ。……俺も話したい事がある」
「……センセってママの事気にしすぎじゃない? 狙ってるの?」
「ドアホ! 単純にシングルマザーは大変やろうと思っとるだけや。仁美もえらい世話になっとるみたいやしな」
「ああ、なんかこの前一緒にランチ行ったら、回らない寿司屋に連れて行かれたって、ママ震えてたわよ」
白石は黙って眉間を揉んだ。
有名トレーナーの娘で、母方の実家もフランスの名家なので、あれでもお嬢様生まれなのだ。自身も中央のダンス講師をしていたくらいには稼いでいたので、ナチュラルに金銭感覚がバグっている節がある。
対して白石は名家の血こそ引いているものの、ドケチな関西ウマ娘の母に育てられたので、その辺りの感覚は一般人に近い。それ故にブロンノワールの心労を察するに余りある物があった。
「仁美には言うとくわ……」
白石は溜息と一緒にそう吐き出した。
千葉県北部にあるシュートの実家で、白石は半年ぶりにブロンノワールと対面していた。
あの皐月賞での敗北以来であるが、もちろんLANEなどで連絡は取っていたし、仁美を間に挟んで近況を聞いては居た。
「なんや仁美がブロンさんの事連れ回しとるみたいで、ホンマ申し訳ありません」
「そんな、謝らないでください。私も仕事ばっかりで、プライベートのお友達は少なかったから嬉しいんです」
「そう言って下さると助かります……さて、今日は俺よりも、シュートが話がある言うて連れてきたんですわ」
「シュートが?」
小首をかしげたブロンノワールが白石の隣に座るシュートを見やると、シュートは居心地悪そうに視線を逸らした。
暫くモジモジとしているシュートを待っていると、彼女はおずおずと口を開いた。
「ママって、思い出のあるレースってある?」
叱られることを恐れる子どものような――いや、事実シュートはまだ子供だ。
だが、大人になろうとしている、その狭間にある少女だ。
この母娘の対話もまた、彼女が大人になるための一歩なのかも知れないと白石は思った。
「えっと、う~ん……そうねぇ」
‖ブロンノワールの思い出のレース‖
1.有マ記念
2.ジャパンカップ
3.宝塚記念
4.東京大賞典
5.凱旋門賞
6.母 は 強 し
【1D6:5】
「凱旋門賞……かしら。白石先生、あれは何年前でしたっけ」
「ん? あぁ、なるほど。【1D6:4】+2[6]年前ですわ」
「6年前……あっ! 【ウシュクヴェーハ】の凱旋門!」
6年前、白石の担当するウマ娘、ウシュクヴェーハが日本ウマ娘としては
黄金期に日本ウマ娘が初めて凱旋門賞に勝利して以来、
しかし衰退期に入ると、日本ウマ娘の凱旋門賞勝利はパタリと止んでしまうのだった。
これは勿論、衰退期に入り日本ウマ娘のレベルが低下した事もあるが、それ以上に欧州レースが衰退し、ファンが凱旋門賞に魅力を感じなくなった事が原因であった。
そんな衰退期を引き摺る欧州レースに殴り込みをかけたのがウシュクヴェーハだった。英国スコットランド生まれの彼女と、フランス育ちの白石は、共に欧州レース界の復権を願っていた事から、かの地のレースを盛り上げるために一年間の長期遠征を試みたのだった。
その一年間の中で数々のライバルと切磋琢磨し、その結末は欧州のライバルとの凱旋門賞での叩き合い――結果、ヨーロッパのウマ娘レースは往時には劣るものの活気を取り戻した。
余談だが、その時に凱旋門賞で鎬を削った相手がドイツウマ娘の【ゼーレーヴェ】やイタリアウマ娘の【アレクサンドラ】、そしてUAEダービーでシュートと争ったペンウッドのバ主である、コート伯爵の支援ウマ娘【ドルネーズバトラー】であった。
「当時小学生だったシュートが初めてレースに興味を持ったのが、あの凱旋門賞だったんです。目をキラキラさせて、テレビの前でぴょんぴょん飛び跳ねて……ふふ、可愛かったわ」
「そ、そうだっけ……」
シュートが恥ずかしそうに目を逸らす。
当時の記憶は曖昧だが、それでもあの年の凱旋門賞についてはハッキリと思い出せる。
琥珀色のウマ娘が、ロンシャンの
「それを見て、私はシュートをレース教室に入れたんです。そして、その娘が今はダービーウマ娘になってくれた……だから、1番思い出に残っているレースは、凱旋門賞なの」
慈母の笑みと言うべきだろうか。
シュートに向けて優しげな笑みを見せるブロンノワールに、同じく女手一つで自分を育ててくれた母を思い出し、白石は思わず涙ぐむ。
シュートは母親から急にそんな事を言われ、照れながらも、決意を秘めて拳を握った。
「じゃあ私も凱旋門賞に勝つわ! ママに凱旋門賞のトロフィーをプレゼントしてあげる!」
立ち上がって言うシュートに対し、二人の反応は対象的だった。
白石はシュートの決意を汲み取り、後方腕組み父親面でうんうんと頷き、ブロンノワールは娘の大言壮語にポカンと口を開いて呆けていた。
いえ、ダービーウマ娘だし、一概に大言壮語とも言えないのかしら? それにトレーナーはウシュクヴェーハさんを育てた白石先生だし……と混乱するブロンノワールを差し置いて、やる気になった白石が遠征の算段を建て始めた。
「まずはチャンピオンズカップやろ、そこから遠征に慣れるためにもドバイ……いや、国内で調整してもええな。夏は札幌記念に向かうか、欧州レースに向かうか……」
「その辺はセンセに任せるわ!」
わいわいと今後の予定について話す二人を、仕方がないなと呆れながらも満更でもない笑みで見守っていたブロンノワールだったが、ふと気付いて口を開く。
「そう言えば、白石先生も何か話があるって言ってましたよね」
「あ、はい。そうですな……俺の目的について、シュートにも知って貰お、思いまして」
「センセの目的?」
首を傾げるシュートに、白石は真面目な表情を作ると、ブロンノワールと頷き合ってから口を開いた。
「シュート、お前には日本のレース界を盛り上げるため『最強』になってもらう」
「は?」
「具体的には、全距離・全バ場でのGⅠ勝利が目標や!」
「はぁ~~~~~~~~~!?」
【 R E S U L T 】
スピード ■■■■□[C+]
スタミナ ■■■■□[B+]
パワー ■□□□□[C+]
根性 ■■■■□[D]
賢さ ■■□□□[D]
・オウショウケイマ
スタミナ E → D
アプリの育成シナリオなら、最終目標レースが凱旋門賞になる感じでしょうか……まさかそこを引くとは。
さて、活動報告でも書いたのですが、拙作のタイトルを変えようかなと思っています。
キャラメイクからお話が始まる都合上ネタバレになるかと思い、主人公を『×××』と表現していましたが、キャラメイク冒頭で主人公の設定について決まるため、ネタバレと表現するほど隠さなくてはいけない物では無いのではないのかと思い至った次第です。
ちなみにダイスで女神様にお伺いを立てた所――
女神様の賛成度【1D100:86】(高いほど賛成)
と、なりました。
そんな訳で、読者の皆様のご意見も伺いたく、アンケートを設置しようかと思っております。是非ご回答下さると幸いです。
それともう一つ、こちらも活動報告に書いたのですが、拙作をPixivでも公開しようかと考えております。
Pixivでの投稿のため、一部タグを使えない場面の改稿も考えておりますので、そちらの作業を行っていると、次話投稿が遅れるかも知れません。その点ご了承いただきたく思います。
次回は10月のイベントダイスです!
菊花賞を走ったライバル達との交流になるのか、それとも……
ダイスの女神様のお導きのままに。
拙作のタイトル変更について
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変更しない方が良い
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タイトルを『最強トレーナーは~』にする
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変更するにしても↑のタイトルは無いわ
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その他(感想に意見下さい)