×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~   作:今峰鏡

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 投稿が遅れました事と同時に、重大なミスの訂正とお詫びを申し上げます。
 シュートのステータスですが、アイビスサマーダッシュのリザルト時点から間違いがありましたので、7月時点のステータスに前回までの能力値上昇を加え、以下のように訂正します。


 スピード ■□□□□[B+]
 スタミナ ■□□□□[A]
 パワー  ■■■□□[C+]
 根性   □□□□□[D+]
 賢さ   □□□□□[D+]

 上記のステータスを反映して、チャンピオンズカップの処理を行います。それではお楽しみ下さい。


クラシック級 12月

『チャンピオンズカップ 中京ダート1800m』

 

天候【1D4:2】1.快晴 2.晴れ 3.曇り 4.雨

 

★注目ウマ娘のステータスを公開します。

 

①『ハッピーシュート』

SP B+(A)

ST A

PW C+(B)

根 D+

賢 D+

適正:バ場S 距離S

脚質:先行

 

スキル:『最強へと至る道』Lv.2:1ターン目の『ピックアップステータス』を自分の最も『ステータス値』の高いステータスにする(同値の場合はランダム)。この対決に勝利した場合、勝利への道標を辿って『最終ターン』の補正値に『+11』する。

 

 

②『レメゲトン』

SP A

ST C+

PW A

根 C

賢 C

適正:バ場A 距離A

脚質:逃げ

 

スキル:『第一の書・ゴエティア』:自身の最も低いステータスが『ピックアップステータス』に選ばれた際に一度だけ発動する。72柱の悪魔の力を宿し、そのターン自身はダイスを振らず、自身のあらゆる補正値を0にした上で『達成値』を『72』にする。

 

 

③『ノーザンセブンス』

長所【1D5:2】[スタミナ](1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)

短所【1D5:2】[パワー](同上、同値ならひとつ右にずれる)

SP B

ST A

PW E+

根 B

賢 C+

適正:バ場A 距離A

脚質:【1D4:1】1.逃げ 2.先行 3.差し 4.追込

 

スキル:『破軍・逆さ七星』:自身の最も低いステータスが『ピックアップステータス』に選ばれた際に一度だけ発動する。破軍星(アルカイド)を背に負う事で強敵を打ち破る力を得る。自身を含む全員のA~Eのステータス補正がCを中心に逆転する。A+以上のステータスには効果が無い。

 

 

④『イズモヤエガキ』

SP B+

ST C

PW C+

根 C

賢 C+

適正:バ場A 距離A

脚質:先行

 

スキル:『八重垣つくる その八重垣を』:分厚い雲が相手に纏わり付き、自身以外のレースターンの補正値を『-10』する。この効果は第一ターンから3回勝利するまで発動する。最終ターンまでに2回勝利していなければこの効果は消失し、自身の最終ターンの補正値を『-20』する。

 

 

UUU

 

 中京レース場の地下バ道で、二人のウマ娘が対峙していた。

 片方は青毛のウマ娘だ。日本ウマ娘にしては高い身長と豊満なスタイルに似合わず、未だ幼さが見える童顔のウマ娘はイズモヤエガキである。

 もう一人は尾花栗毛の金髪少女。中背細身に夜空を思わせる群青色の勝負服を纏った彼女は、同色の眼鏡のブリッジを押し上げ、イズモヤエガキを伺うように見上げていた。

 その尾花栗毛のウマ娘こそ、今年のダート三冠ウマ娘・ノーザンセブンスだった。

 

 豊満な胸を持ち上げるようにして腕を組み、見下すように睨みつけてくるイズモヤエガキに、ノーザンセブンスは助けを求めて視線を彷徨わせるが、生憎今回の出走メンバーの中に親しい相手は居ない。多くのウマ娘が二人を遠巻きにして本バ場へと向かうばかりだ。

 

「あのぉ……ヤエガキさん?」

 

 覚悟を決めて名前を呼ぶが、イズモヤエガキはムスッとしたまま口を開かない。

 それどころか()()と身を乗り出し、こちらへ一歩踏み出してくる。

 ノーザンセブンスが一歩後ずさると、ヤエガキはさらに歩を進める。驚いてまた一歩下がればヤエガキもまた一歩。

 繰り返す内に踵がコツンと壁に当たる感触で、彼女はいつの間にか壁際に追い込まれた事を悟った。

 

「ひえっ」

 

 小さく悲鳴を漏らした時だった。

 ()()()と風切り音を立て、顔の横へヤエガキの手が突き立った。

 所謂(いわゆる)壁ドンの体勢に持ち込まれた尾花栗毛のウマ娘の額から汗が流れ落ちる。

 じっと見つめ合う二人、ノーザンセブンスの浅い呼吸音、遠くに聞こえる観客のざわめき。

 

 それほど長い時間では無かった。

 それでも()()にとって無限とも思える間を置いて、イズモヤエガキが口を開いた。

 

「セブンさんはさぁ……」

「あ、はい」

「ダート三冠ウマ娘なんだから、もっと堂々としてよ」

「はい……」

 

 自身の気の小ささを咎める言葉に耳を伏せてシュンとしながら、視線を逸らしたノーザンセブンスが答える。

 再び無言になったイズモヤエガキの方を、恐る恐る見上げる。

 イズモヤエガキの表情に感情は見えない。だからノーザセンブンスは、彼女の見下ろす瞳に揺らぐ感情を読み取ろうと、自身の星空のような瞳でじっと彼女を見つめた。

 

 生来気が小さく、他人の表情を伺って過ごしてきたノーザンセブンスは、他人の瞳から感情を読み取る事に長けていた。

 そんな彼女だから、イズモヤエガキが悔しさと羞恥を堪えてそう言っていることが分かった。

 

「今回はレメねーさまに、白毛のおねーさんも出てくるの。ヤエを負かした相手が、大した事ないヤツだって舐められるのは我慢ならない」

 

 羽田盃に東京ダービー、そしてジャパンダートクラシック。

 約半年の間、二人はクラシック級ダート戦線で戦ってきた。

 一度も勝つことは出来なかったが、それでもまだ負けていないと食らいついてきたつもりだ。

 

 だからこれは、一種の敗北宣言だ。

 

 イズモヤエガキよりノーザンセブンスの方が格上だと、彼女は自ら認めた。

 一度ハッピーシュートに敗北している自分とノーザンセブンスが同格では、自分たちの世代が芝のダービーウマ娘(ハッピーシュート)より格下という事になってしまう。

 

 だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そうしたロジックの上での敗北宣言だった。

 

「だけど、今度は負けないから」

 

 そしてその上で、イズモヤエガキはノーザンセブンスに勝負を挑む。

 レメゲトンでもシュートでもなく、眼の前のダート三冠ウマ娘(ノーザンセブンス)に。

 

「レメねーさまも、白毛のアイツも関係ない。ヤエはセブンさんに勝ちたい」

 

 イズモヤエガキの瞳から、彼女が悔しさを堪えて自身を格上だと認めた事。そして格下として自分に下剋上を挑むと覚悟を決めたことを察し、ノーザンセブンスはそっとヤエガキの頬に触れ、大きく頷いた。

 

「……私も、ヤエちゃんに負けたくありません。レメゲトンさんにも、ハッピーシュートさんにも負けません――私が勝ちます」

 

 ノーザンセブンスの星空のような瞳に、不安はもう無かった。

 あるのは砂の帝国の後継者に相応しい、王者の覚悟だった。

 

 

 

★スタートフェイズ

①ハッピーシュート【5D10:21】+5 =26

②レメゲトン   【5D10:33】+10 =43

③ノーザンセブンス【5D10:37】+15 =52

④イズモヤエガキ 【5D10:27】+15 =42

 

 

 ゲート入りの順番を待つシュートの前に、栗毛の悪魔が立ち塞がった。

 奇しくも地下バ道でのノーザンセブンスとイズモヤエガキと同じような構図になった二人の間を、寒さを増してきた乾風が吹き抜ける。傾きかけた日を浴びて、長い影が砂地に伸びていた。

 栗毛の悪魔が――レメゲトンが好戦的な笑みを浮かべると、シュートはムッとした顔で彼女を迎え撃つ。

 

「もう土手煮は食べたかな? あたしは中京レース場に来たら必ず食べるんだ」

「まだよ、観光は勝ってからって決めてるの」

 

 レメゲトンはシュートの言葉に一時きょとんとすると、すぐに相好を崩して笑い声を上げた。

 

「勝つつもりでいるんだね、このあたしに」

「勝つわ。私は『最強』になるの、センセのために、ママのために」

「『最強』か……()()()()()()()()()()()()()()だけれど?」

 

 レメゲトンの口ぶりはまるで、()()()()()()()()()()()()()()と取れるような言い方だった。

 そうした言葉の機微に気付いているのかいないのか、シュートは腰に手を当てて言う。

 

「ダートでは、そうね。だからまずはアンタを倒す! その後は芝の『すごいウマ娘』達も倒す! 凱旋門賞だって取るわ、そしたらアタシが『最強』でしょ?」

「――なるほど。さしずめあたしは、君にとっての最初の『鍵』か……いいね、益々()()()()()()()()()

 

 レメゲトンが獰猛に笑う。

 シュートも得意げに笑った。

 

「……そろそろ私の枠入りね。ありがと、レメゲトンさん」

「うん? 何がだい?」

「私に()()()()って思ってくれたこと!」

 

 そう言って、白毛のウマ娘は楽しそうにゲートへと入っていく。

 それを見送って、レメゲトンは自嘲気味に笑んだ。

 

「23歳の小娘がこんな事を言うのは滑稽かも知れないけれど……うん、若いね。これが若さか、あたしも大人になったって事かな?」

 

 呟いて、レメゲトンもスターティングゲートへと向かった。

 

 

 

★1第ターン

【ハッピーシュートの固有スキル『最強へと至る道』発動!】

[ピックアップステータスのダイスが変化します]

 ピックアップステータス【1D2:2】(1.スピ 2.スタ

 

【イズモヤエガキの固有スキル『八重垣つくる その八重垣を』発動!】

[イズモヤエガキ以外のウマ娘の補正値に-10]

 

①ハッピーシュート【5D10:39】+30 -10 =59

②レメゲトン   【5D10:24】+15 -10 =29

③ノーザンセブンス【5D10:27】+30 -10 =47

④イズモヤエガキ 【5D10:26】+10 =36

 

[ハッピーシュートの勝利!]

[固有スキルにより最終ターンの補正値に+11されます]

 

 

 ゲートを飛び出した瞬間、出走ウマ娘16人中15人が、纏わりつくようなプレッシャーにより足を鈍らせた。

 分厚い雲が手足に絡みつき、自由に動くことを阻害する。あるいは視覚や聴覚を鈍らされ、正常な判断力を失わせる。

 イズモヤエガキの『領域』だ。

 

 早くも彼女の『領域』により掛かったウマ娘が向こう正面まで続く登り坂を駆け上がり、先頭争いをしながら逃げるレメゲトンとノーザンセブンスに競りかけた。

 

 ()()()()()()()()()により強制的にハイペースを作り出して逃げウマ娘を潰し、後方脚質のウマ娘は足を鈍らせて追いつけなくさせる。

 これにより自身はペースを守って走るだけで有利になる――ハズだった。

 

 いつかに聞いた、力強いバ蹄の音を聞くまでは。

 

「ハッピーシュート!」

「二度目だけど、やっぱ走りにくいわね!」

 

 ハイペースを維持しながらゴールまで走り続けられるスタミナ、そして多少の妨害を苦にしないパワーと、プレッシャーに動じない鈍感さを持ったウマ娘によって、イズモヤエガキの作戦はまたも破綻させられようとしてた。

 

「またヤエの邪魔をしてッ!」

「邪魔してんのはそっちでしょ!」

 

 怒鳴り合いながら、二人は並んで坂道を駆ける。

 逃げるウマ娘達のすぐ後方に控えた所で、先に音を上げたのはイズモヤエガキだった。

 

(白毛のおねーさんに付き合ってたらヤエのスタミナも保たない……! 先団が垂れて来て前を塞がれたおねーさんを、ヤエが外から追い抜く――それしかない!)

 

 レメゲトンから『領域』頼りだと言われたヤエガキは、自身の『領域』を有効に使うべく、必死に勉強を重ねてきた。自身の知識に照らし合わせ、最適の作戦を選んでシュートの数バ身後方に控える。

 徐々に開いていく先頭との差を、これで良いのだと言い聞かせて。

 

 だが、彼女は知らなかった。

 

 シュートが持つ領域を。

 いずれ最強へと至る、勝利への道を。

 

 シュートの視界に浮かぶ輝く道は、未だ内ラチ沿いを照らしている。

 その輝きは、彼女の勝利を暗示するようだった。

 

 

 

★2第ターン

ピックアップステータス【1D5:2】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)

【イズモヤエガキの固有スキル発動中!】

[イズモヤエガキ以外のウマ娘の補正値に-10]

 

①ハッピーシュート【5D10:31】+30 -10 =51

②レメゲトン   【5D10:34】+15 -10 =39

③ノーザンセブンス【5D10:27】+30 -10 =47

④イズモヤエガキ 【5D10:26】+10 =36

 

[ハッピーシュートの勝利!]

 

 

(これは……キツいね)

 初めて身に受けたイズモヤエガキのプレッシャーは、思わぬ消耗をレメゲトンに強いていた。

 掛かったウマ娘を強引にねじ伏せ、ハナを取ってペースを握ったは良いものの、ここまでに体力を消費しすぎた。

 

 それはすぐ後ろに着けるノーザンセブンスも同じだろうが、ダートクラシック路線で何度もこのプレッシャーを浴びてきたであろう彼女には、自身よりも余裕があるように見える。

 

(それに――)

 

 5バ身以上後方に控えるヤエガキとは違い、射程圏内とも言える位置でこちらを追走する足音は、恐らくハッピーシュートの物だ。

 

(向こう正面の下り坂で息を入れないと、直線の登り坂で垂れるのはあたしになる!)

 

 刻一刻と近付く敗北の足音に、レメゲトンは()()()()()笑った。

 

UUU

 

「なぁおい。俺はダートのレースにゃ詳しくねぇけど……さすがにコレは異常じゃねぇか?」

「ダートウマ娘のあたしから見ても異常だよ……()()()()()()()()()

 

 トレセン学園のトレーナー棟の一角。

 期待の新人トレーナーである福岡裕二のトレーナー室で、二人のウマ娘が中京レース場で行われているチャンピオンズカップの中継を観戦していた。

 

 ポピーミントとブルーサイレントである。

 

 二人が食い入るように見つめるテレビ画面の中では、ダートコースを2つの隊列が駆けていた。

 先頭を芝コースかと思うようなラップタイムで走るレメゲトンとノーザンセブンス、そして掛かったと思しき二人のウマ娘。そこから2バ身ほど置いて二人の共通の友人であるハッピーシュートの白毛がたなびいていた。シュートの少し後ろにはイズモヤエガキが着いているが、そこからが異常だった。

 イズモヤエガキの次番手を走るウマ娘は、彼女から10馬身以上離れていた。

 テレビ画面でも分かるほどに走り辛そうに足を動かすウマ娘達は、誰もが苦悶の表情を浮かべている。

 

「『領域』の影響だね」

 

 二人の後ろで腕を組みながらレースを眺めていた福岡トレーナーが呟いた。

 

「所謂デバフ系の『領域』ってワケか、これは遣り辛そうだぜ」

「これが……」

 

 納得したような顔で苦々し気に言うブルーサイレントに対し、未だ『領域』に至っていないポピーミントは驚いたような顔をしている。

 半信半疑と言った様子のポピーミントに、福岡トレーナーが告げた。

 

「オープンクラス入りしたポピーは、今後こういう相手と戦うことになるかも知れない。シュートさんの走りをよく見ておくんだ」

「うん。分かったよ、トレーナー」

 

 頷き、真剣な表情で画面に視線を戻すポピーミントと違い、ブルーサイレントは目を離して福岡トレーナーへと視線を投げかけた。

 

「でもこれ、参考にならないかも知れないぜ」

「どういう事だい?」

「俺はパイセンの『これ』を目の前で何度も見せられてきたから分かる。パイセンの奴、デバフがうぜぇからって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ハッピーシュートの得意技とも言うべき、豊富なスタミナに任せたゴリ押し。逃げウマ娘に匹敵する速度で前に付け、その状態でも有り余っているスタミナで抜け出すいつもの戦法だ。

 ブルーサイレント自身がロングスパートを磨いて対抗せざるを得なかった、無尽蔵のスタミナによる暴力。

 

 こうしたハイペースで逃げるウマ娘が居るレースでは、無類の強さを発揮する戦法だ。

 この時点でブルーサイレントはシュートの勝利を半ば確信していた。

 だが、それに答える福岡トレーナーの言葉はそれを否定する物だった。

 

「だとしたら、怖いのは彼女――ノーザンセブンスかも知れない」

「それって、どういう事? 2番手とは言え、逃げてるノーザンセブンスさんはかなりの体力を消耗しているはずじゃ……」

 

 画面を見つめたまま、ポピーミントが眉を下げる。ブルーサイレントも興味深げに中継へと視線を戻した。

 

「ノーザンセブンスもスタミナが豊富なウマ娘だ。それにイズモヤエガキの『領域』をこの中で最も体感してきたウマ娘でもある。未だ脚を残していると見ていいだろうね」

 

 福岡の言を証明するように、向こう正面の下り坂で息を入れようとしたのか、脚を緩めたレメゲトンをノーザンセブンスが追い抜く。相対的にシュートも先頭との距離を詰めた。

 

 間もなく第3コーナーを抜け、最終コーナーへと入る。

 下り坂の終わりが見えようとしていた。

 

 

 

★最終ターン

ピックアップステータス【1D5:3】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)

【ノーザンセブンスの固有スキル『破軍・逆さ七星』発動!】

[E~Aのステータス補正値が逆転します]

[固有スキルの効果でハッピーシュートの補正値 +11]

[固有スキルの効果でイズモヤエガキの補正値 -20]

 

①ハッピーシュート【5D10:27】+0 +11 =38

②レメゲトン   【5D10:27】-10 =17

③ノーザンセブンス【5D10:21】+25 =46

④イズモヤエガキ 【5D10:38】+5 -20 =13

 

[ノーザンセブンスの勝利!]

 

 

 先頭集団は第3コーナーから第4コーナーへ。

 ここに来て、掛かって前へと競りかけていたウマ娘がスタミナを使い果たし後退を始める。

 それを見てイズモヤエガキが仕掛けた。

 

 目論見通り、垂れた二人のウマ娘はハッピーシュートの進路を塞ぐ位置に来ている。そこから自分がコーナーを利用して外側に陣取れば、シュートはどこにも進路を取れずに後退していく事になる。

 

「もらったぁ――は?」

 

 加速し、後退するウマ娘を追い抜いた先で、イズモヤエガキはあり得ないものを見た。

 

「どうやって抜け出したの!?」

 

 内側を通ったことで、僅かに自身より先を走る白毛のウマ娘だ。

 何のことは無い、理由は明白だった。

 壁となったウマ娘が疲労で僅かにヨレた隙を突いて、接触ギリギリの隙間を抜けてきたのだ。

 シュートの『領域』が描く『輝く道標』を信じて、壁となった二人にノーブレーキで突っ込んだ彼女の度胸が作り出した奇跡だった。

 

 それをヤエガキが認めた途端、シュート達を覆っていたプレッシャーが霧散する。

 プレッシャーは敗北感となり、イズモヤエガキのウマソウルを萎縮させた。

 

「まだヤエは! セブンスさんにっ!」

 

 再び『領域』を発動しようとするも成せぬまま、イズモヤエガキはハッピーシュートに突き放されていく。

 それを振り返ることもなく、次にシュートが捉えたのはレメゲトンだった。

 

 下り坂で息を入れたこと、そしてイズモヤエガキの『領域』が消失した事によって幾ばくかスタミナを取り戻したレメゲトンは、最終コーナー出口でハナに立つべく脚を早めていた。

 それでもスタミナはギリギリだ。仕掛けどころを間違えばノーザンセブンスに届くこと無く負けるだろう。

 

 機を伺いながら前を目指すレメゲトンに、シュートが並んだ。

 いや、()()()()()()()

 第4コーナー出口、登り坂に差し掛かった所でレメゲトンが仕掛けた。

 

(ノーザンセブンスのレースは何回も分析した。この娘の弱点は登り坂での力の弱さ、あたしのパワーでねじ伏せる!)

 

 足元の砂を弾けさせながらレメゲトンが踏み込んだ時だった。

 

「――っ!?」

 

 先程までのしかかって来ていた物と同レベルのプレッシャーが、彼女の両肩へとかかった。

 

(ヤエが『領域』を再発動した? いや、違う!)

 

「ノーザンセブンスの『領域』!?」

 

 悟ると同時、レメゲトンはノーザンセブンスの『領域』を分析する。

 まずイズモヤエガキと同種のデバフ系能力を疑い、それをすぐに否定した。

 

 ノーザンセブンスが苦手なはずの坂道を苦も無く登り始めたのを見たからだ。

 そして、自身を追い抜いていったハッピーシュートを見送り、気付く。

 

「強弱の反転――強者にこそ強く働く『領域』か!」

 

 気付いた時にはもう遅かった。

 既に白毛と尾花栗毛の尻尾が自身の数バ身先で揺れていた。

 

 その揺れる尾花栗毛の持ち主、ノーザンセブンスは『領域』の発動による過集中で夜空のように暗くなった視界の中、陰ること無く輝く白毛のウマ娘を見た。

 イズモヤエガキの目論見は、限界までスタミナを使いハナをとってペースメイクをしたレメゲトンと、無尽蔵のスタミナでデバフ自体を無効化したシュートによって潰えた。

 そしてレメゲトンが直線の登り坂に見出した勝算は、自分(ノーザンセブンス)の『領域』により乱された。

 

 最後はこの白毛のウマ娘が辿る勝ち筋を塞げば、ヤエガキと交わした言葉通り、自分がこのレースの勝者だ。

 

 スタミナに自信があり、イズモヤエガキのプレッシャーにも慣れている自分に付いて来られる体力の持ち主は、事前情報通りならトップスピードもほぼ同等か()()()()()()()だ。

 坂道を一気呵成に駆け上がれる膂力も自分の『領域』が抑え込んでいる今、ハッピーシュートに勝ち筋は無いだろう。

 

 だから――

 

「私が勝ちます。ダート三冠が、決してダービーウマ娘に劣るものでは無いという事をお見せしましょう!」

 

 堂々と、胸を張って。

 砂の帝国の新たな王者としての矜持を胸に、気弱なウマ娘(ノーザンセブンス)は精一杯虚勢を張って駆ける。

 

「ダートの現役最強は、私ですッ!」

 

 

 

★最終直線

1.ノーザンセブンス坂道でむしろ加速している!

2.ノーザンセブンスの勝利!

3.競り合い

4.レメゲトンも加えて3人の競り合い

5.競り合い

6.ハッピーシュートの勝利!

7.ハッピーシュートの勝利!

8.ハッピーシュートの勝利!

9.ハッピーシュートの勝利!

10.ハッピーシュート、スタミナで全員すり潰して圧勝!

【1D10:6】

 

 

 最終コーナーを回ってから、シュートの目に映る光り輝く道は、ノーザンセブンスのわずかに外側を通り真っ直ぐゴールへと続いていた。

 

(つまり、ここからは小細工なしの追い比べって事ね!)

 

 望む所だ、とシュートは脚に力を込めた。

 眼の前を行く尾花栗毛のウマ娘はこれまでと違い、スタミナ勝負で上回れる相手ではない。

 自分の強みが通用しない相手に、しかしシュートは口角を上げて笑う。

 

(この娘も『すごいウマ娘』だ! だから楽しい! だから()()()()()勝ちたい!)

 

 シュートは思う。

 このウマ娘に勝てば、自分はまた一歩『最強』へと近づける。

 ママの娘が『最強』になれば、ママは世界で一番の母親だ。

 

 シュートは母親の愛を自覚して育った。

 そしてその愛が、シングルマザーである故の()()()()()()()である事も、何となく察していた。

 だからシュートは証明したいのだ。

 

(私は「ママの娘だからこんなに立派になったんだよ」って……!)

 

 そう誇るために、シュートは眼の前のウマ娘を追い抜かなくてはならない。

 だから――

 

「行くわ!」

 

 行った。

 凄まじい量のキックバックを放ちながら、ノーザンセブンスの『領域』によるプレッシャーを跳ね除けて前へと行く。

 坂道の半ばで加速したシュートの視界に映るのは、残り200mの標識だ。

 

 フっと身体が軽くなる。

 自分を後ろへと引っ張っていた重力が軽くなったのを感じた。

 ノーザンセブンスの後ろから、シュートが再び伸びていく。

 

「っ!? 何で隣に!」

 

 ノーザンセブンスが眼鏡の奥の瞳を大きく見開く。

 ハッピーシュートが彼女に並びかけたのだ。

 二人は並んだまま①と書かれたハロン棒を通り過ぎ、残り50m付近。もはやゴールが目前となった所でシュートが更に前に出た。

 

 

 

中京11R チャンピオンズカップ 着順

 

1着 ハッピーシュート

2着 ノーザンセブンス ハナ

3着 レメゲトン    11/2

 

 

 

 ゴール板を駆け抜け、脚を緩めながらクールダウンに入るシュートに、ノーザンセブンスが並んだ。

 後ろを見れば体力を使い果たして座り込むウマ娘も居る中で、流石はスタミナ自慢とも言うべき余裕さを持ってノーザンセブンスが語りかける。

 

中京ダート1800m(このコース)の登り坂は、残り200m地点でほぼ平坦になります……それまでに『領域』で差を付けられなかった私の負けです」

「ん? あぁ、やっぱり『領域』だったのね」

 

 チャンピオンズカップのコースは最終直線に急坂があるものの、ゴールの手前で平坦に近くなり、最後の数十メートルに至っては僅かに下り坂となる。

 『領域』によりシュートのパワーを封じ込めたはずのノーザンセブンスが、ゴール板手前で追い抜かれた()()()()はそこにあった。

 

「それでも事前情報では、トップスピードは私が上だったはずです。なのに、ギリギリで貴女は私のスピードを上回った……」

 

 眼鏡の奥から夜空のような瞳で見つめられたシュートは、(おとがい)に指を当てて暫く考えると、あっけらかんと言った。

 

「それ、事前情報が間違ってたんじゃない?」

 

 その答えに、ノーザンセブンスは呆気にとられた。

 確かにあの加速はそうとしか考えられない。

 だが、七月のアイビスサマーダッシュの時点から、脚部不安で菊花賞を回避したウマ娘がここまで成長するものだろうか。

 

「脚に不安を抱えながらトレーニングを控えなかったって言うんですか!?」

「脚って……全力で走ったらクールダウンを設けるよう言われただけで、トレーニングが全く駄目って訳じゃないし」

 

 だとしても、そんなウマ娘を相手にここまで能力を伸ばす指導が出来る白石最強(彼女のトレーナー)はやはり化け物だ。

 ノーザンセブンスは眼鏡の汚れを勝負服の裾で拭い、足を止める。

 シュートもそれに気付いて立ち止まると、彼女へと向き直った。

 

「……シュートさん、私は強かったですか?」

 

 傾き始めた光が眼鏡に反射し、表情の読めないノーザンセブンスが問う。

 シュートは怪訝そうに眉をひそめると、言った。

 

「はぁ? 私のハナ差2着のアンタがそれを聞く? 強かったわよ、弱い訳無いでしょ」

 

 何を当たり前のことを聞くんだとでも言いたげなシュートの言葉に、愚問だったとノーザンセブンスは自嘲した。

 

「では、次は負けません。貴女以上の努力をして、次こそ勝ちます。だって私は――」

 

 

「――ダート三冠ウマ娘ですから!」

 

 

 

★レース勝利ボーナス

 

1.スピード

2.スタミナ

3.パワー

4.根性

5.賢さ

6.バ場適性

7.距離適正

8.白 石 最 強

 

【1D8:2】のトレーニング進行度が【1D3:2】上昇!(適正上昇の場合、1段階のみ)

 

 ファン数が【5D50:132】×10 + 10000 [11320]人増えた!

 

 

 

 【 R E S U L T 】

 

 

 スピード ■□□□□[B+]

 スタミナ ■■■□□[A]

 パワー  ■■■□□[C+]

 根性   □□□□□[D+]

 賢さ   □□□□□[D+]

 

【ファン数 53949人 → 65269人】

 

 




 お仕事が忙しかったり、その影響でモチベーションが上がらなかったり、インプットのためにLOH用のウマ娘を育成したり、競馬を見たり、あんこスレを見たり、ドラゴンズの応援をしたり、ステータスのミスを見つけて書き直したりしていたら遅れました。申し訳ございません。

 まえがきのミスについては、また時間がある時に修正しようと思っております。

 次回は年末処理とかライバルのレース結果とか掲示板回ができればなと思っております。おたのしみに!

拙作のタイトル変更について

  • 変更しない方が良い
  • タイトルを『最強トレーナーは~』にする
  • 変更するにしても↑のタイトルは無いわ
  • その他(感想に意見下さい)
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