×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~   作:今峰鏡

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(作中で)あけましておめでとうございます。

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(作中で)今年も良い年でありますように!


クラシック級 年末

 

「あけましておめでとう!」

「あけおめ~」

「あけましておめでとうございます」

「…………」

 

 美浦寮の一室、同室が居ないことでクラシック世代の溜まり場となっているハッピーシュートの居室に、四人のウマ娘が集まっていた。

 

「でもよ、オレは次走がアメリカJCCだから寮に残ってるけど、シュートとポピーは帰らなくてよかったのか?」

 

 その中の一人、青毛の長髪を流したスレンダーなウマ娘――ブルーサイレントが部屋主のシュートとポピーミントに訊ねた。

 

「あたしは次走が【1D2:1】(1.東海S 2.根岸S)だから。レース場は違うけど、ブルーと同じ日がレースだね」

 

 ポピーミントが答え、シュートに視線を向けると、彼女は()()()()を気にしつつ答えた。

 

「私はチャンピオンズカップの後の検査とかが長引いたから残ってただけで、明後日くらいから帰省するつもり。次走は――」

 

 

‖シュートのシニア級初戦‖

1.高松宮記念(3月)

2.ドバイWCミーティング(3月)

3.川崎記念(4月)

4.香港チャンピオンズカップデー(4月)

5.4月から凱旋門賞まで欧州留学

6.白 石 最 強

【1D6:2】

 

[【朗報】シャイたん再登場フラグ、キマシタワー建立か?]

 

 

‖ドバイで出走するレースは?‖

1.アルクオーツ・スプリント(芝直線1200m)

2.ドバイゴールデンシャヒーン(ダート1200m)

3.ドバイターフ(芝1800m)

4.ドバイシーマクラシック(芝2410m)

5.ドバイワールドカップ(ダート2000m)

6.白 石 最 強

【1D6:3】

 

[みんな大好きパンサラッサくんが勝ったレースです]

[しかしドバイの芝……また調べ物が増える……ウウッ……]

 

 

「またドバイに行くから、そこそこ余裕があるしね」

「じゃあ今年はドバイWCに出るのか?」

「ううん、招待は来てたみたいだけど、出るのはドバイターフよ。凱旋門賞に向けて海外の芝と遠征に慣れるためだって」

 

 ドバイのメイダンレース場の芝は日本と欧州の中間に位置する重さのため、フランスの重たい芝で走る前に一度経験したほうが良いと判断を下したのは白石だ。また、知り合いも居て尚且つ二度目のドバイなら、リスク無く海外遠征の経験も積めるだろうという、いささか過保護な思慮の結果によるものでもあった。

 そのため白石をよく知る古参バ主などからは「初めての支援ウマ娘に順調に脳を灼かれておるなぁ」と微笑ましげな目を向けられているのだが……彼らはまだその事に気付いていない。

 

 それはさておき、自身の出走予定を開陳し終えたシュートは、先程から黙って膝を抱えている()()()()へと問いかける。

 

「で、アンタはどうなの?」

「…………」

 

 ちらとシュートへ目線を向けたのは、小柄な黒鹿毛のウマ娘だ。

 先日の有馬記念でワイルドファイアに負けるまで無敗()()()トリプルティアラウマ娘、カイノクロコマである。

 

 青毛などよりもよほど真っ黒な毛色のそのウマ娘は、髪と同色の黒い瞳でシュートをじっと見つめると、小さな唇を僅かに動かしてぼそぼそと告げる。

 

「私は……わかんない。負けた、から……」

 

 それだけ言うと、カイノクロコマは再び抱えた膝の間へ顔を埋めてしまう。

 シュートとポピーは困ったように顔を見合わせ、ブルーサイレントはやれやれと肩を竦めた。

 

「ちょっとポピー、アンタこの娘と()()()()()でしょ、なんとかしなさいよ」

「えぇ……そうは言ってもトレーナーが違うから殆ど面識が無いし……あたしは武田さんと、そんなに話した事も無いから」

 

 困ったなと頭を掻くポピーミントの言葉に、小柄なウマ娘の肩がピクリと反応した。

 

「貴女、おじさまの支援ウマ娘?」

「あ、はい。そうだけど……」

「おじさま、何か言ってた?」

「いや、だからあたしは武田さんとはあんまり話した事が無くて……」

「…………そう」

 

 それっきり黙ってしまったカイノクロコマを尻目に、ブルーが迷惑そうにシュートへと水を向けた。

 

「おいパイセン、何でこいつを連れてきたんだよ」

「だって、真っ暗な廊下の隅っこで膝を抱えて蹲ってたのよ、流石に心配になるでしょ」

「とは言えずっとこのままじゃね……とりあえずトレーナーを通して武田さんには連絡しておくよ」

 

 スマートフォンを取り出したポピーの向かいで、ブルーサイレントが出前のピザを口に押し込んだ。彼女が口いっぱいに頬張ったピザをラッパ飲みのコーラで流し込むまでの間、沈黙に包まれていた部屋だったが、オロオロとするばかりのシュートを見かねたブルーサイレントがベッドから降りて、床にうずくまるカイノクロコマの肩を抱いた。

 

「お前さ、有マ記念でファイアに負けたからって落ち込んでるのか?」

「ファイア……ワイルドファイア。貴女はおともだち?」

「俺もシュートも親友(ライバル)さ。年末はテレビに引っ張りだこらしくて、今日は来てないけどな」

 

 ダービーの冠こそシュートに取られたものの、去年からの人気を維持したまま二冠馬に輝き、有マ記念を制して年度代表ウマ娘になったワイルドファイアは、今や世代を引っ張るアイドルウマ娘だ。しかもクラブ所属でありウマドル売りもしている彼女が、この時期に暇な理由が無かった。

 

「私、勝てると思ってた。ワイルドファイアより私の方が速いって、おじさまもトレーナーも言ってた」

「ははぁん、ナルホドね。でもよ、速さだけで言うなら多分、俺やシュートの方がアイツより速いぜ。だけど俺もシュートもファイアに負けてる。何でか分かるか?」

 

 「ちょっと! 私は勝ってるわよ!」と抗議の声を上げるシュートと、それをなだめるポピーを無視してブルーサイレントは続けた。

 

「『速い』と『強い』は別だからだぜ。ファイアは強ぇ、レース勘は冴えてるし視野も広い、限界を超えても走り続けるガッツもある。そういう全部をひっくるめての『勝負強さ』に俺達は負けたんだよ」

「私はワイルドファイアより、弱い?」

「弱えな、全然弱え。少なくともアイツはシュートに負けたからって、そんな風にウジウジなんてしてなかったぜ。すぐに切り替えて対策を練って練習して……そんで皐月賞で勝った。そういうのも『強さ』だろ?」

 

 ニヒルに笑うブルーサイレントをじっと見つめ、カイノクロコマはこくりと頷くと、(おもむろ)に立ち上がった。

 

「練習してくる」

「待て待て待て待て!」

 

 ブルーサイレントが慌ててカイノクロコマの腕を掴むと、彼女はこてんと首を傾げて不思議そうな顔をした。

 

「一緒にする?」

「しねぇよ!? 思い切りの良さが尋常じゃねぇぜ!」

「じゃあ何で止めるの?」

「まぁまぁ、そう事を急いたって良い事はねぇ、また今度トレーナーと相談して決めなって」

 

 ブルーサイレントがカイノクロコマを座らせると、すかさずポピーミントがピザの箱を目の前に並べた。

 これまで心配そうな顔で二人を眺めていたシュートも、ホッとした顔でフライドポテトをケチャップとマヨネーズにディップして一度に二つ食べた。

 

 ブルーサイレントがコップに注いだコーラをカイノクロコマに手渡し、その頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

 細い毛質の黒髪が所々ハネてしまったカイノクロコマが、不思議そうに彼女を見上げた。

 

「せっかく俺達の年越しパーティーに来たんだ、今日くらいはゆっくり休んで楽しんでってくれよ」

 

 その後、年末特番に生出演するワイルドファイアを眺めながら、四人は様々な事を語り合った。

 

 カイノクロコマが年末の表彰式でクラシッククイーンの表彰を受けながらも、隣に立つワイルドファイアに萎縮してしまい、そのまま逃げるように寮へと戻ってきてからずっと塞ぎ込んでいた事を。

 ブルーサイレントがAJCCに勝利したら、その次は阪神大賞典からの天皇賞・春を狙っている事を。

 ポピーミントはシュートがフェブラリーステークスか川崎記念に出走すると踏んで、再戦を楽しみにしていたのに、彼女がドバイに行くと聞いてがっかりした事を。

 

 そしてシュートは、ドバイで久しぶりに再開する事になる、異国の王子様の格好良さを――

 

UUU

 

 シュート達が寮でささやかなパーティーを開いていた頃。時差の関係で未だ新年を迎えていないドバイでは、彼女らのそれとは比較にならないほど絢爛で豪華なニューイヤーパーティーが催されていた。

 

 新年と同時にドバイのランドマークである『ブルジュ・ハリファ』から打ち上げられる花火が最もよく見えるホテルの最上階で行われているそのパーティーは、ドバイ王族の一人であり、ドバイレース界の重鎮であるシャムス王子が主催する物だ。

 レース界の重鎮の主催というだけあって、世界各地からレース関係者や有力バ主が集まるそのパーティーは、たった一夜のために億単位の金がかけられている。精々一万円程度の予算で行われているシュート達のパーティーとは、月とスッポンに例えるのも烏滸がましいほどの差があった。

 

 そんな華やかなパーティーの中で、一人のウマ娘が壁の華となっていた。

 

 褐色の肌に艷やかな青鹿毛が映える(はしばみ)色の瞳をしたウマ娘は、UAEダービーでシュートと競ったシャイターンバスターだった。

 

 パーティーの主催者であるシャムス王子の支援ウマ娘でありながら彼女が壁の華に徹していられる理由は、その服装にあるだろう。

 

 普段は学ランにも似た軍服風の勝負服に身を包む男装の麗人といった風情の彼女であるが、このパーティーでは大きく胸元の開いた肩出しのマーメイドドレスに身を包んでいるが故に、多くの参加者が彼女をシャイターンバスターだと認識できないで居たのだ。

 

 そして彼女の顔をよく知るようなセレブは、わざわざ喧騒から離れ、憂い顔で一人グラスを傾ける彼女に話しかけるほど野暮ではない。

 

 彼女が想うのは、遠く離れた極東の友人の事だ。

 UAEダービーで共に高め合い、そして競った相手だ。

 

 ハッピーシュート。

 

 あの日出会い、短くも濃密な日々を過ごした白毛の君は、ドバイワールドカップへは出走せず、ドバイターフに出ると言う。

 ミスター・シライシと仲の良いシャムス王子が、国際電話で直接確かめたと言うのだから間違いないだろう。

 

「自分は、貴女とまた走りたかったのでありますが――」

 

 貴女はそうでは無かったのですね、という言葉は飲み込んだ。

 彼女にも事情はあるだろうし、同じレースに出られなくとも、きっと再会を喜んでくれるだろうと思えたから。

 

 それでも、とシャイターンバスターは思わずに居られない。

 あのレースで見送った靡く白毛の眩しさは、今でも脳裏に焼き付いている。

 

 嗚呼、これではまるで――

 

「恋をしているようだ……かな?」

 

 声のした方に目を向ければ、そこに立っていたのは護衛を引き連れた自身のバ主――シャムス王子だった。

 変わらず仮面のような笑みを浮かべる彼に、シャイターンバスターは無言で一礼する。

 

「フフ、君のそういう所は素直に好ましいよ。それで、シャイターンバスター」

 

 ドバイのレース界に君臨する尊い血の貴公子は、抱きしめるようにシャイターンバスターの肩に手を置くと、耳飾りをつけた右のウマミミへと唇を寄せてそっと囁いた。

 

「ドバイターフに出たいかい?」

 

 シャイターンバスターの耳が、それ以上の甘言を拒否するようにキュっと絞られた。

 その様子を軽く笑って顔を離すと、王子は彼女の頬に指を這わせてからそっと下がった。

 

「君が望むのならば、私は答える用意があるとも。それでは、パーティーを楽しみたまえ」

 

 それだけ告げると去っていくシャムス王子を見送り、両手で包むように持ったグラスへと視線を落としたシャイターンバスターが、ポツリと零す。

 

「自分は――」

 

 

‖シャイターンバスターの芝適正‖

【1D5:3】(1~5:D~S)

 

[普通に走れそうなので、ちょっと確率を上げます]

 

【1D3:1】

1,2.シュート殿とまた戦いたい

3.…………

 

 

「また、シュート殿と……」

 

 数日後、ドバイでは大々的に、日本ではレース新聞の片隅で報道された内容は、一部のレース関係者に衝撃を齎した。

 

 

『ドバイウマ娘・シャイターンバスター、ドバイターフ(GⅠ・メイダン芝1800m)への出走を表明。陣営は『打倒ハッピーシュート』を宣言!』

 

 

 




 Pixiv版のルール説明で、デフォルメ絵柄のキミノワルツさんを描いて気付いたのですが、『ジュニア級 4月』でおもいっきり「明るい鹿毛」と描写しているのにも関わらず、すっかり忘れて『登場ウマ娘紹介』で毛色ダイスを振っていました。

 今後は挿絵に準拠してキミノワルツさんの毛色は「明るい鹿毛」とさせて頂く事をお詫びすると共に、『登場ウマ娘紹介』の記述を変更させていただきました事をお知らせします。
 誠に申し訳ありませんでした。

拙作のタイトル変更について

  • 変更しない方が良い
  • タイトルを『最強トレーナーは~』にする
  • 変更するにしても↑のタイトルは無いわ
  • その他(感想に意見下さい)
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