×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~ 作:今峰鏡
冬コミの原稿を脱稿したので最新話投稿です。
冬コミ情報についてはあとがきをどうぞ。
【イベント 2月】
【1D10:8】
1.向日葵 ◆◇◇
2.シュート ◆◆◇
3.リヒト ◆◇◇
4.キミノ ◆◆◇
5.帯金 ◆◆◇
6.奥さん ◆◇◇
7:ライバル ◇◇◇
8.仲間たち ◆◇◇
9.ママ ◇◇◇
10.白 石 最 強
[メイクデビュー前にイベントを引いてくるとは……やはり持ってますね]
[ここでそれ出されたら、ケイマ強化イベントしか無いでしょう]
将棋を打って家族を食わすプロ棋士だ。
国営放送の将棋解説でアナウンサーをやっていたウマ娘と結婚し、己れが生まれた。
幼い頃は「キシ」と聞いて、父親のことを『騎士』だと思っていたので、自分も跡を継ごうと剣の道を志す事になる。
急に剣道を習いたいと言い出した己れに両親は困惑していたが結果的に快く了承してくれ、親戚が開いている道場へと通うことになった。
ぼろっちい道場だった。
門下生もほとんど居ないジジイの溜まり場めいた場所だったが、棋士である父はジジイのアイドルだったので、その娘である己れはそれはもうチヤホヤされた訳だが……話はそう上手くいかない。
チヤホヤされすぎた結果、己れはそのジジイ達が受け継いできたニンジャの技術まで教え込まれるハメになったのだった。
馬庭忍軍。
歴史の闇に葬られた、将軍家の
今では後継者もなく途絶えるだけだった忍者の技術を持て余したジジイ達により、己れは何故か『騎士』では無く『忍者』となっていたのだ――!
「いや、忍者となっていたのだ――って……そもそも騎士の時点で間違ってる上に、剣道だったら侍じゃないの?」
「似たようなモンだろう」
「そうかな……そうかも」
「まぁ馬庭忍法の奥義がどうこう言われ始めた辺りで、父の職業が『棋士』だと気付いて辞めたがな。ジジイ共は泣いていたが」
豊満な胸を張って言う体操着に短パン姿のケイマに、ブルマ着用のシュートがジト目を落とした。
先日ケイマとヒカリが街中で黒須姉弟を発見し、オンギョウ・ジツでフィッティングルームにスニーキングした際の話で「ちょっと待ってニンジャ!? ニンジャナンデ!?」とシュートが軽い
二人が話しているのは、例によってトレセン学園の練習コース、その一角に設置されたスターティングゲートの中だった。
シュートはドバイ遠征前に休暇中のサビ落としを、そしてケイマはメイクデビューを目前にした調整のため、二人は併せウマを行うことになったのだった。
勝つつもりで気合の入っているケイマに対し、シュートは脚への負担を考えて全力で走るつもりも無ければ準備もしていない。しかし1つだけ言い含められていることがあった。
「私がキミノさんにやられたみたいに、全力で『領域』を使え――ねぇ」
恐らくこれは、シュートがキミノとの模擬レースで『領域』に至った事の再現なのだろう。
しかし、そう上手く行くだろうか。
こう言ってしまってはキミノに悪いが、休みを挟んでまだ本調子ではないとは言え、当時のシュートとキミノ以上に二人の実力は離れている。
そこに『領域』まで使ってしまっては、併せウマではなくただのイジメだ。
それほどまでに、クラシック級の一年間というのはウマ娘の成長にとって大きい。
――まぁ、
「それなら見せてもらうとしましょうか、今のアンタの実力を!」
ゲートが開き、シュートが勢いよく飛び出した。
|ケイマの固有スキルの傾向について決めます|
1.王の早逃げ八手の得(大逃げスキル)
2.ウマの守りは金銀三枚(カウンタースキル)
3.桂は控えて打て(溜め逃げスキル)
4.三桂あって詰まぬ事なし(段階強化スキル)
5.ウマ娘の……ニンジャ!(忍者系スキル)
6.馬 庭 忍 法 奥 義
【1D6:3】
ポンと飛び出したシュートを追って、少し遅れてスタートしたケイマが駆ける。
逃げ脚質のケイマがハナを取るべく加速するが、シュートはそれに付き合わずにスっと後ろに控えた。
軽快にハナを行くケイマの背に焦点は合わせない。見るのは第1コーナーまでのコース全体だ。
シュートの『領域』は序盤に最も最適な位置取りを見つけ、そのまま勝利への道筋を紡ぐ物。だから見るのは相手ではなくターフ。それこそが、これまで戦ってきた
広く取った視界の中、昼間であるにも関わらず世界が、空が、薄暗く陰る。
レースというものは十数人のウマ娘の思惑が高速で交わる事で、コンマ数秒先の未来すら見通せない薄暗闇に包まれているのが常だ。
だが、もしその暗闇を照らす光があったとしたら――
誰もが望むレースの先を照らす明かり。
その闇の中に浮かび上がる光の道を視認できるのは、
光の轍を踏んでシュートが行く。
跳ねるようなステップで走るケイマの首筋に悪寒が走った。
これは、知らない。
桐生院のレース教室に通っていた時、幾度となく競争した頃のシュートには無かった威圧感だ。
「これが本格化したウマ娘の一年か!」
クラシック期を戦い抜いたウマ娘の一年間がプレッシャーとなってケイマを襲う。
後方から迫る足音は、昔から聞き慣れたそれであるはずなのに、今は全く違って聞こえた。
背筋が震える。
だが――
「己れも一年間、ただ遊んでいた訳では無いッ!」
跳ねた。
「小柄な体故の狭い歩幅を補う大跳び……【トウカイテイオー】を彷彿とさせる走りや」
「はい、ケイマの強みは力強いバネから繰り出される瞬発力っす。プールではあえてバタ足だけで泳がせ、坂路練習でも広いストライドを意識させて鍛えてきたっすから」
「スタミナを強化しつつ強みを伸ばす――流石やな、もう教えることはあらへん」
見守る白石とリヒトの視線の先で、ケイマが大きく跳ねるように加速して第1コーナーへと入った。
大跳びのウマ娘は、ピッチ走法のウマ娘に比べてコーナーが不得意である傾向にある。一歩の歩幅の
しかしケイマは強いバネから繰り出される一歩を高い柔軟性をもって制御する事で、遠心力を相殺しながら最短距離でコーナーを曲がり切った。続けて第2コーナーへと入る頃には、シュートとの距離は4バ身ほど開いている。
未だセーフティリードとは言えないが、序盤に最小限の消耗で理想的なコース取りが出来た事は、この後の展開で必ず有利に働くだろう。
とは言え、シュートも決して劣るような動きをしている訳ではなかった。好スタートを切り、ケイマの逃げに惑わされること無くマイペースに走りつつ好位置に付けた状態で第2コーナーへと入った現状は、先行ウマ娘として理想的な動きだ。
「けど、ケイマは跳べば跳ぶほど強くなるっすよ……!」
第2コーナーを先ほどと同じように小さく回ると、向こう正面に入った所で再びケイマが
まるでスキップするようなその走りは、自身の歩幅以上の距離を一完歩で稼ぐ。
更に速度を上げたケイマが軽快に先を行く。
だが――
「居るな、シュート!」
「まだ置いていかれるような速度じゃ無いっての!」
コーナーでつけた差をそのままに、ハッピーシュートはケイマの後ろに居た。
そもそもの話、この一年で急成長したシュートの最高速度はケイマよりも
むしろシュートに追い着かれていないケイマを褒めるべきだろう。彼女の大跳びはそれほどまでの武器だと言えた。
しかし、それでも。
ケイマがどれだけ必死に脚を繰り出しても、シュートを引き離すことは出来ない。
第3コーナーに入り、さらにギリギリを狙って体を傾ける。
力強い足音が先程よりも近く聞こえる。
白毛のバ体から溢れるプレッシャーをより鮮明に感じられた。
だから。
「まだ跳ぶとも!」
踏み込み、さらに一完歩を広く取った。
コーナーを曲がれるギリギリの歩幅で駆ける。
プレッシャーが僅かに薄れた。
逃げ切れる。
そう思った時だった。
「『桂の高跳び歩の餌食』――いや、この場合は『桂先の銀定石なり』か」
「桂馬は真正面には跳べないため、頭を抑えるように銀将を打つことで動きを制限できる。という意味の将棋用語ですね」
シニカルな笑みを浮かべて呟く白石の言葉を桐生院が補足するが、隣のリヒトは驚愕に目を見開き、答えることが出来ずに居た。
何が起きたのか、何をされたのか一瞬分からなかった。
だが、内ラチ沿いを走っていたはずのケイマを
「ケイマが大跳びのために踏み切った瞬間を狙って前に出たんすか!?」
「そうや。いくらケイマが
白石の言う通り、一完歩が長いと言う事は
さらに『跳ねるように走る』ケイマは、両足が地面から離れている時間も長い。それはつまり『急な方向転換が出来ない』と言う事でもあった。
結果、僅かに外へと膨らんだ瞬間を狙ってシュートが前に出た事により、次の跳び先を潰されたケイマは外へと跳ぶ事しか出来ず、大外に出てコーナーを回る事を強要されたのだった。
勝利へと至る道を踏み、最短距離で先頭に立ち直線を向いた先行ウマ娘に、逃げウマ娘が勝てる道理は無い。
そのまま末脚を開放して前へ行ったシュートが【1D10:10】[このハッピーシュート、容赦せん!]10バ身の差をつけてゴールした。
「流石はシュートだな! 完敗だ!」
「いやいや、私が道中
膝に手をついて荒い息を吐くケイマを見下ろして、僅かに汗を滲ませる程度のシュートが言う。
感心したように言うケイマだったが、むしろ驚いているのはシュートの方だった。
思った以上に仕上がっていたケイマに、思わず本気を出してしまった。
(でも、そのおかげかな。前よりも光の道がはっきり見えるようになった気がする)
「それで、ケイマは『領域』に至れたの? なんかこう、ゾーンに入れた的な感覚、あった?」
「ふむ……そうだな」
‖ケイマの『領域』覚醒への進捗‖
【1D100:88】
「シュートに追いつかれまいと跳ぶごとに『駒台に桂馬が増えていくイメージ』と言うのだろうか……何か不思議な感覚があった。後はその持ち駒を使って、
「ふぅん……将棋の事は分かんないけど、それなら多分もうちょっとね! ねぇ、もう一回走りましょ!」
「うむ! 次は負けん!」
言って、二人してスターティングゲートへと駆ける。
晩冬の冷たい空気が火照った体に心地良い。
風を切りながら、シュートが「あはは」と笑い声を上げた。
「なんか、向日葵センセの所に居た頃に戻ったみたい!」
「そうだな! 己れも思っていた!」
勝利に対する執着も無く、ただ走るだけで楽しかったあの頃。
白石に師事し、クラシックの冠を競い合った事で、自分は遥かに成長した。
だけど、レースの原初体験は未だそこにある。
そこにあって、
ただその事が、シュートには嬉しかった。
【 R E S U L T 】
ハッピーシュート:10バ身ボーナスで固有スキル強化! Lv.2 → Lv.3
『最強へと至る道』Lv.3:1ターン目の『ピックアップステータス』を自分の最も『ステータス値』の高いステータスにする(同値の場合はランダム)。この対決に勝利した場合、勝利への道標を辿って『最終ターン』の補正値に 『11+【1D3:2】[13]』する。
オウショウケイマ:固有スキル獲得!
『三桂あって詰まぬ事なし』:大きく跳んで逃げる事により、毎ターン自身の補正値を『+3』する。この効果は『レースターン』に勝利するごとに強化され、補正値が追加で『+1』される。さらに『レースターン』で3回勝利していた場合『最後の競り合い』の補正値に『+30』する。
まえがきにも書きましたが、コミックマーケット105に『日曜日(12/29) 西く43a「メイドおじさん」』として参加いたします。
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