×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~   作:今峰鏡

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オマタセシマシタ。

コミケに来て下さった方はありがとうございました。
やっぱり本を作るのは楽しいですね!(在庫の入った段ボールを押し入れにしまいながら)

今回は難産だった上に長くなりすぎたので前後編です。
あっさり目で行くつもりだったのに……


メイクデビュー・オウショウケイマ 前編

【中山レース場 クラシック級 未勝利 芝2000m】

 

 注目ウマ娘数【1D3:2】-1[1]人

 注目ウマ娘のステータス評価【1D100:95】(最低保証30)

 

[未勝利戦からライバル登場!? 一応ライバル候補は考えてはいましたが、こんな早く登場するとは]

 

 

‖こんな素質バが2月未勝利戦に出ている理由はなんでしょう?‖

 

1.まだ本格化が来ていない晩成型。

2.メイクデビューでもっとヤバいウマ娘と当たったから。

3.トレーナーの育成方針でデビューを遅らせた。

4.とある欠点のせいで勝ち上がれずにいる。

5.バ主が決まらないまま本格化を迎えてしまった。

6.故障でジュニア級一年間を棒に振った。

【1D6:5】

 

[なかなかバ主が決まらずデビュー出来なかったようです]

 

 

‖バ主が決まらなかった理由‖

 

1.零細レース教室出身のため、バ主の目に留まらなかった。

2.レース教室にも通っておらず、レースウマ娘になるつもりもなかった。

3.スカウトされないほど弱かったが、本格化した事で突然覚醒した。

4.スカウトはあったが、本人がバ主を選り好みしていた。

5.当初スカウトした地方バ主が中央のバ主資格を持っていなかった。

6.バ主が預ける予定だったトレーナーのライセンス習得を待っていた。

【1D6:5】

 

[オグリキャップみたいな経歴のウマ娘ですね……うーん、これは主人公属性]

 

UUU

 

 中山5R・クラシック級未勝利戦の下バ評はオウショウケイマの優勢一色だった。

 ハッピーシュートを見出した『最強』の二人目の愛バが注目を集める中、そのウマ娘は誰にも注目される事無くひっそりとパドックに佇んでいた。

 

 灰色の髪を持つ芦毛のウマ娘は、慣れない中央の芝を確かめるように軽く足踏みをする。

 故郷から遠く離れたこの街に来て一ヶ月と少し。地方トレセンと同じような所もあればまるっきり違う事も多かった。

 それでも、こうして見上げる空は笠松と変わらない。澄んだ冬の空気に青い色を湛えている。

 

 彼女は――【ライクアゴースト】は、ふとパドックを囲む観客席に目を向けた。

 ぐるりと回りを取り囲みながらも、誰一人として自分に注目していない観客達の中、一つだけ、ただ一人だけ自身を見つめる視線があった。

 

「あの人は……自分の立場を分かってるのか? バレたら騒ぎになるぞ」

 

 スポーツキャップに、今しがた眺めていた空のような青髪を押し込んで、色の濃いサングラスをかけた少女。

 

 つい一月前に自身のバ主になったばかりの少女は、ライクアゴーストの心配を他所に大きく手を振ってくる。

 ライクアゴーストが苦笑しながら控えめに手を振り返すと、彼女はサングラスの下で満面の笑みを浮かべた。

 

 地方でバ主をしている親戚の支援でデビューするはずだった自分を、中央のバ主資格を大急ぎで得てまで引っ張ってくれた恩人――今をときめくアイドルシンガー、【星空(ほしぞら) (さん)】。

 

 自分の走りを見て、熱心に中央行きを勧めてくれた元バ主の大叔父が中央のバ主資格を持つ人物を探してくれている中、街で偶然出会った少女が、まさか中央のバ主になれるほど売れっ子の歌手だなんて思ってもみなかった。

 

『きっとこれは運命だから』

 

 そう言って、自分をここに連れてきてくれた燦のためにも、不甲斐ない結果を残す訳にはいかない。

 

 このレースでのライバルとなるのは、圧倒的一番人気に推されている『最強』の愛バ。

 

「オウショウケイマ――きっと強いんだろうな、勝てるかな?」

 

 いや、勝つんだ。

 私は中央(ここ)で何者かになる為に走るんだ。

 誰にも気付かれない、透明な幽霊のように生きてきた自分を変えるために勝つんだ。

 

 夜空に燦々と輝く、(キミ)みたいに―― 

 

UUU

 

‖注目ウマ娘のステータスを公開します‖

 

①『オウショウケイマ』

SP C+(D+)

ST D+

PW C

根 E+

賢 E

適正:バ場A 距離中C

 

スキル:『三桂あって詰まぬ事なし』:大きく跳んで逃げる事により、毎ターン自身の補正値を『+3』する。この効果は『レースターン』に勝利するごとに強化され、補正値が追加で『+1』される。さらに『レースターン』で3回勝利していた場合『最後の競り合い』の補正値に『+30』する。

 

 

②『ライクアゴースト』

SP D+

ST C

PW E+

根 C

賢 E+

適正:バ場A  距離A  

 

スキル:【1D3:1】1.解放済 2,3.未開放

『Like a STELLA in the dark』:『最終ターン』に暗闇に輝く星を掴むために加速し、自身の補正値に『+10』する。最終ターンまで一度も勝利していなかった場合、さらに補正値に『+5』する。

 

 

★スタートフェイズ

①オウショウケイマ【5D10:24】-10 =14 出遅れ

②ライクアゴースト【5D10:17】-5 =12 出遅れ

 

[どっちも賢さが低めなので、まあこうなるだろうなとは思っていました]

 

 

 パドックから本バ場へとウマ娘たちが入場していく中、キミノワルツを伴った白石がバ主席へと向かう。

 

 パドックにはバ主用の観覧スペースもあるのだが、今回はスタンドからケイマを見守る事にしたリヒトと直前まで一緒にいたため、一般のパドック席からバ主席まで向かわなくてはいけない。

 それなりの距離を移動する必要があるため若干億劫になりはじめた白石が、バ主席のある4階へと上がるためのエレベーターを待っていると「あのぉ」と後ろから声をかけられた。

 

 振り返れば、そこに居たのはスポーツキャップにサングラスを掛けたラフな格好の少女。

 

「お嬢ちゃん、ここはバ主席に上がるエレベーターやで。スタンドに上がるんやったら向こうや」

「あっ、いえ、バ主席に行くのはここで良かったのかなって思って……あのっ! 私バ主です!」

「お嬢ちゃんが?」

 

 どう見てもバ主には見えない格好の彼女に、白石が首を傾げる。

 バ主席は上流階級の集まりだ、明文化されていないものの最低限のドレスコードはある。

 不審げな視線に慌てた少女は、あたふたと視線を彷徨わせてから、サングラスとキャップを脱いだ。

 

 キャップから溢れた青髪が、陽光を反射してキラキラと輝いている。

 夜空を思わせる群青色の瞳に、星のように輝く虹彩を見てキミノワルツが息を呑んだ。

 にっこりと、人好きのする笑みを浮かべて少女が言う。

 

「夜空に輝く一番星! こんにちは、星空燦ですっ! ぶい!」

 

 チーン……と到着したエレベーターが音を立てて扉を開いた。

 ポカンと口を開けて固まった白石の後ろで、何だ乗らねえのかよと言いたげにエレベーターが扉を閉じる。

 笑みの上から気まずそうに冷や汗を流し始めた燦を横目に、キミノワルツが白石へと耳打ちした。

 

「有名な歌手の方です、先生」

「お、おぅ………………いやあ、まさかあの星空さんだとは! びっくりしてつい固まってしまいましたわ!」

「いやいやいや! 絶対私のこと知らない系の反応でしたよね!? うわー! 恥ずかしい! 自分のことスターだと思ってる系のイタいアイドルムーブしちゃったよぉ!」

 

 白々しく知ったかぶる白石にキミノは一つため息を吐くと、鞄から一枚の名刺を取り出して頭を抱えて悶える燦に差し出した。

 

「こちらは中央のバ主兼トレーナーをしております、白石です。私は秘書のキミノワルツと申します。先日発表された新曲の『Star in the dark』聞きました。物悲しいのに、どこか希望を持たせられるような歌詞とメロディが素晴らしかったです」

「あ、ありがとうございます……」

 

 キミノのフォローで落ち着きを取り戻した燦がおずおずと名刺を受け取ると、空気を壊さない内に素早く呼び出しボタンを押し、白石を差し置いて燦をエレベーターへ案内する。

 

「さ、どうぞ星空さん。バ主席までご案内します」

「私、レース場に来るのも初めてで……助かります」

「あっ、おいキミノ!」

 

 呆気にとられる白石を置いて、エレベーターの扉が閉まった。

 上昇を始めたエレベーターの前で、白石がポツリと呟く。

 

「で、出遅れた……」

 

 

★1第ターン

ピックアップステータス【1D5:2】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)

 

【オウショウケイマの固有スキル『三桂あって詰まぬ事なし』発動! 補正値に+3】

【出遅れによりオウショウケイマとライクアゴーストの補正値に-10】

 

①オウショウケイマ【5D10:26】+5 -10 +3 =24

②ライクアゴースト【5D10:18】+10 -10 =18

 

[オウショウケイマの勝利!]

[オウショウケイマの固有スキルが一段階強化されます]

 

 

 白石がバ主席に遅れて辿り着くと、丁度未勝利戦のゲートが開くところだった。

 未勝利戦ではよく見かけるバラバラっとしたスタート。

 思い思いに前を目指して駆けるウマ娘たちの中から、出遅れ気味ながらも跳ぶように先頭へと躍り出るウマ娘が一人。

 

 オウショウケイマだ。

 

 小さな身体全体を使った大跳びで苦も無くハナに立ったケイマと、それに置いていかれまいとするクラシック級未勝利のウマ娘達の中に、落ち着いた様子で後方に控えるウマ娘が一人。

 

「あれは……確か地方からデビュー前に移籍して来た……」

 

 呟き、出走ウマ娘のデータを思い返す。

 

 カサマツトレセンから移籍して来た、これまで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()『第二のオグリキャップ』の内の一人。

 

「ライクアゴースト……地方出身故に全く情報が無かったさかい、ノーマークにならざるを得なかったウマ娘やな」

 

 パっと見ただけならば、地方から出てきたばかりのウマ娘が、ケイマの作り出すハイペースに付いて行けず取り残されているようにも見える。

 

 だが、違う。

 

 桐生院の相マ眼に頼るまでもない。

 白石の目には――そしてスタンドでレースを見守るリヒトの目にも、ソレは理解できた。

 

 ケイマに追いすがる他のウマ娘達とは()()()()()、と。

 

「これは……楽勝とは行かんかもしれへんぞ、リヒト」

 

 

★2第ターン

ピックアップステータス【1D5:4】(1から順に スピ,スタ,パワ,,賢)

 

【オウショウケイマの固有スキル『三桂あって詰まぬ事なし』発動中! 補正値に+4】

 

①オウショウケイマ【5D10:25】-5 +4 =24

②ライクアゴースト【5D10:19】+10 =29

 

[ライクアゴーストの勝利!]

 

 

 地を蹴り、駆ける。

 そんな事が、こんなにも楽しい。

 

 それだけじゃない。

 カサマツでは今のように体力温存のため控えて走っても()()()()()

 中央では未勝利戦に出るウマ娘達でさえ、そんな自分を置き去りにして行っている。レベルが違う。

 

「すごいな、やっぱり中央ってすごい!」

 

 喜色を浮かべ感嘆するライクアゴーストだったが、これは一人抜け出して逃げる一番人気(オウショウケイマ)を自由にさせないため、ほぼ全員が追いすがっていった結果の隊列だった。

 有力ウマ娘を警戒するばかりに発生した歪な隊形――とは言え、地方とはレベルが違うのもまた事実だ。

 

 ある種の勘違いによるものではあったが、結果としてライクアゴーストは最善の判断を下す。

 

 即ち――地方と同じように走っていては負ける!

 

 芦毛のバ体が煌めき、薄青い瞳が輝く。

 かつて灰色だった世界が、燦と出会って色づき出したように。

 ライクアゴーストの闘志に()が灯った。

 

UUU
 

 

「はわわ……ゴーストぉ~」

 

 最後方を行くライクアゴーストに、星空燦が悲鳴を上げた。

 燦はレース初心者だ。

 ライブツアーの名古屋講演の際に()()()()電車を乗り過ごして降り立った岐阜の街で()()出会ったライクアゴーストに一目惚れし、勢いのままバ主になったが、生まれてこの方レースにはとんと興味がなかった。

 

 他のスポーツにも疎い彼女にとっては「一番最初にゴールすれば勝ち」という事しか分からない。

 だからだろう、脚質についても知らない彼女はライクアゴーストが負けそうになっていると考えていた。

 

 これまでの会話からそれを察したキミノワルツが慰めるように言う。

 

「まだ序盤ですよ、星空さん。ライクアゴーストさんは今力を溜めている状態です、後方に居ても問題はありません」

「そ、そうなんですか?」

「はい。ですが――」

 

「先団が固まりすぎとる。中央のレースを地方と同じように考えとったな、これまでは出遅れても前に付けられたんやろうが……いや、そもそも地方ならあの程度、出遅れにもならんか」

 

「先生」

 

 キミノの言葉を引き継いで、白石が彼女の隣へ座る。

 視線はターフへと向けたまま、聞かせるでもなく展開について解説を始めた。

 

「中央のウマ娘と併せた事が無いんやろうな、今はまだ地方と中央の(ギャップ)を埋められとらん。それに他のウマ娘が揃ってケイマをマークしに行ったさかい、前には分厚い壁が出来とる。まずはこれを攻略せにゃアカン」

 

「じゃあゴーストは……負けちゃうんでしょうか?」

 

 呟く白石に、恐る恐る燦が訪ねた。

 白石はついレースに夢中になり、リヒトにそうするように解説していたことに気付いて一瞬バツの悪そうな表情を浮かべると咳払い一つ、気を取り直して燦に向けて話し始めた。

 

「ここからライクアゴーストが勝つためには、まずは先を行くバ群の攻略、そして逃げるケイマを射程距離に捉える事、最後にそれだけの事をしながら2000メートルを走り切るスタミナを残しておく事、この三つが重要ですわ」

「つまりは前に出るためのタイミングを見極める勝負勘に、勝負所で前を追い抜くスピードと瞬発力、そしてジュニア級初期のウマ娘にとっては長い距離を走り切るスタミナが必要になってくるということです」

 

 キミノの補足にうんうん頷く燦へ、白石は「それだけやない」と言葉を続ける。

 

「中山2000メートルには最後に急坂がある。一昨年のホープフルSで()()ブルーサイレントさえ跳ね返した坂や。そしてケイマにはそれを越えるだけのパワーがある。見た所ライクアゴーストは……まぁ地方から移籍したばかりでトレーニングが足らんかったんでしょうな、ケイマに匹敵するだけのパワーが足りてへん」

「そんな……ゴーストぉ」

 

 レースに疎い燦は白石が『最強』と呼ばれている事すら知らない。だが中央のトレーナーもしているという彼にここまで不利な要素を挙げられては、最早ライクアゴーストの勝利は絶望的だと思ってしまっても無理はなかった。

 

「せやけど」

 

 目端に光るものを浮かべ始めた燦だったが、白石が零した呟きに顔を上げる。

 

「この時期の未勝利戦は、言葉を選ばずに言えば『かけっこ』ですわ。脚の速いウマ娘なら、あらゆる不利を帳消しにして勝ちまで持っていけます」

「じゃあ!」

「ま、ウチのケイマも脚は速いですがな! はっはっは!」

「そんなぁ~~~~!」

「先生……」

 

 打ちひしがれる燦と、大人気なく愛バ自慢をする白石へジト目を向けるキミノを尻目に余裕ぶって笑いながらも、白石の脳裏にはしっかりとケイマの()()()も思い浮かんでいた。

 

 ケイマが負けるとしたら、それは――

 

(スタミナ……やろうな)

 

 リヒトのトレーニングで彼女のスタミナは随分と伸びた。小柄なバ体と大跳びという走り方から距離適性を考えて2000メートルの未勝利戦に出走させたが、実際のレースで中距離を走りきれるスタミナがあるかと問われれば……

 

(ギリギリ足りるか足らへんか……根性見せてくれよ、ケイマ)

 

 各々のバ主が見守る先、それぞれに期待を背負ったウマ娘達のレースは中盤へと入った。

 

 




 2021年から芝の3歳新馬戦は2月半ばで終了するようになったため、未来のウマ娘世界でも同じような設定としました。なので中距離のレースを選んだ結果未勝利戦への出走となったワケですね。(本文中で説明しようと思いましたが、入る隙間がありませんでした。私の力量不足です、すいません)

 
 そして突然ケイマのライバルが生えてきました。ライクアゴーストちゃんです。名前の通りネイティヴダンサー(グレイゴースト)に似ている子です。なのでオグリキャップにも似ています。この世界の史実設定的には父:ダンスインザダーク、母父:オグリキャップという競走馬です。

 次回はなるべく早めに投稿します。よろしくお願いします。
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