×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~   作:今峰鏡

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メイクデビュー・オウショウケイマ 後編

 

★3第ターン

ピックアップステータス【1D5:1】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)

 

【オウショウケイマの固有スキル『三桂あって詰まぬ事なし』発動中! 補正値に+4】

 

①オウショウケイマ【5D10:31】+5 +4 =40

②ライクアゴースト【5D10:30】+5 =35

 

[オウショウケイマの勝利!]

[オウショウケイマの固有スキルが一段階強化されます]

 

 

 跳ぶ。

 地を蹴って、芝を散らして。

 一歩駆けるごとに寒風が切り裂かれ、びょうと音を立てる。

 寒さは感じない。

 むしろ体の底からこみ上げる熱で暑いくらいだ。

 

 気持ち良さそうに先頭を行くオウショウケイマの後ろを必死になって追いかける一団についても気にならない。

 いくつものバ蹄の音が体を揺らすほどの轟音となっても、ケイマの耳には念仏ほども響かない。

 

 怖くないのだ。

 『領域』に至るためのトレーニングで併せた時のシュートに比べればちっとも怖くない。

 

 力強い踏み込みで跳躍角を調整し、ロスを少なくコーナーを曲がる。

 模擬レースではシュートに弱点を突かれたこの走法も、未勝利戦では咎める者も居ない。

 

 中山の小さいコーナーを曲がり切った先、下り坂を飛び降りるようにして駆け下りればバックスストレッチの直線はもう半ばだ。置いていかれたウマ娘達の足音が遠くに聞こえる。

 

「ははっ!」

 

 思わず漏れたのは笑い声。

 広々としたコースを一人先頭で走る事のなんと気持ちの良いものか。

 

 清々しい気持ちを胸に、坂道から平坦になった残りの直線をあっという間に駆け抜ければ、第3コーナーへと差し掛かる。

 脳内を駆け巡るアドレナリンが疲労を誤魔化しており、苦痛は感じない。

 それでも体力をかなり消耗している事は分かった。

 最初のコーナーに比べ、踏み切る脚に力が入っていない。

 やや外側に膨らみつつ、僅かに速度を落とす。

 それだけで遠く離れていた足音がぐっと近づく。

 まだ油断は出来ない。

 浮かべていた笑みを消し、オウショウケイマは踏み切った。

 

 

★最終ターン

ピックアップステータス【1D5:1】(1から順に スピ,スタ,パワ,根,賢)

 

【オウショウケイマの固有スキル『三桂あって詰まぬ事なし』発動中! 補正値に+5】

【ライクアゴーストの固有スキル『Like a STELLA in the dark』発動! 補正値に+10】

【必要スタミナ不足により、オウショウケイマの補正値に-5】

 

①オウショウケイマ【5D10:33】+5 +5 -5 =38

②ライクアゴースト【5D10:32】+5 +10 =47

 

[ライクアゴーストの勝利!]

 

 

 オウショウケイマが軽快に直線を飛ばしていくのと同じ頃、ライクアゴーストは一塊になって進んでいた集団に綻びが生まれるのを視認した。

 ケイマの飛翔にそれでも付いていこうとする者たち、疲労に喘ぎながら速度を上げる彼女たちを見て冷静になったのか速度を落として控える者たち、単純にスタミナの限界や壮絶な潰し合いによるメンタルの限界を迎え落伍していく者たち。

 同一の敵(オウショウケイマ)の存在により、統率されたかのような隊伍を組んでいた集団が割れる。

 そこに秩序は無い。

 てんでバラバラに砕け散る集団はそれでも、壁としてではなく障害物としてライクアゴーストの進出を阻害している。

 

(だけど、隙間はある)

 

 決して大きな隙間があるわけではないが、一分の隙もない壁よりは幾分もマシだ。

 それに――

 

(速度を落とした彼女たちなら、躱すのは難しくない)

 

 未勝利戦に出走するウマ娘の中で、ライクアゴーストのスピードは卓越している。

 彼我の相対速度を考えれば、眼の前を行くウマ娘たちは止まっているのに等しい。

 

 姿勢を前傾させ、芝を蹴った。

 

UUU

 

 それは、レース場の4階にあるバ主席からよく見えた。

 

 バックストレッチの直線中程でバラけたバ群を、速度を上げたライクアゴーストが後方から追い抜いていく。

 コース上で散り散りになって走るウマ娘たちの隙間を器用に縫って行く。

 

 障害物をすり抜けるようにして進む姿はまるで――

 

幽霊(ゴースト)か……」

 

 思わず呟いた白石に、キミノワルツが視線を向ける。

 その向こうで、ライクアゴーストの快進撃に歓声を上げていた燦が視線を向けぬまま。

 第3コーナーへと入った芦毛のウマ娘から目を逸らさぬまま、呟く。

 

「いいえ、星です。暗闇を照らす私の、私だけの(ステラ)――」

 

 ライクアゴーストが、オウショウケイマを射程距離に捉えた。

 

 

★最終直線

1.ライクアゴーストの勝利!

2.ライクアゴーストの勝利!

3.競り合い

4.競り合い

5.競り合い

6.競り合い

7.競り合い

8.オウショウケイマの勝利!

9.オウショウケイマの勝利!

10.オウショウケイマ、今ゴール板を跳びこえて――ゴールインッ!

【1D10:3】

 

 

 最終コーナーを回る。

 一人直線に入ったオウショウケイマの耳に、その音は届いていた。

 

 軽く、しかし鋭く、速いテンポの足音。

 シュートのように重くはない、力強さもない。

 なのにこのプレッシャーは何だ。

 背筋が凍るような怖気、圧倒的な力を持って自身を置き去りにした親友とはまた別の恐ろしさ。

 

 ケイマの細い首筋を、疲労とは違う種類の汗が伝った。

 

(面白い……! レースはそうでなくてはな!)

 

 気持ちは高揚している。

 ただ身体はもう限界だ。

 ケイマに再び跳ぶ余力は残されていない。

 

 足音が迫ってくる。

 最終コーナーからわずかに膨らんで飛び出し、内ラチより少し外側に居る自分の後方。

 

 ライクアゴーストだ。

 

 前を走っていたウマ娘たちを軒並み追い越し、その姿はオウショウケイマと半バ身にまで迫っていた。

 その気配を察し、ケイマが歩幅を限界まで広く取るべく足を伸ばす。

 前傾姿勢で脚の回転率を高め、素早く地を掻くライクアゴーストが追い縋った。

 

 ゴール板までは残り100メートルも無い。

 それでも一歩ごとに、彼我の差はジリジリと詰まっていく。

 

 ケイマの口角が上がる。

 ちらと横を見れば、内ラチと自身との隙間に身体をねじ込んできていたライクアゴーストと目が合った。

 もうここまで来たのかと、驚きと同時に笑みが深まる。ライクアゴーストも口元に微笑を浮かべている。

 お互いの視線が絡み合ったのは一瞬にも満たない須臾の間だ。

 すぐに笑みを消し、ただ前を見る。

 

 互いに互いを認識しながら、どちらも相手を意識することなく、己の走りにだけ集中する。

 懸命に脚を伸ばし、地面を掻く。

 

 平行線を描く栗毛と芦毛のバ体が、ほぼ同時にゴール板を駆け抜けた。

 

 

★最後の競り合い

①オウショウケイマ 根性E+【1D100:85】-5 =80 

②ライクアゴースト 根性C 【1D100:74】+10 =84

 

 

 星空燦は初めて生で見るウマ娘レースの熱に中てられ、ただ呆けてゴール板を駆け抜けた二人のウマ娘を見ている事しか出来なかった。

 

 それでも、高い位置にあるバ主席まで届く歓声に、ステージの上から聞くソレとはまた別種の熱を感じたのは確かだ。そしてそれと同じ熱が、自分の胸の中にある。

 未だに激しく脈打つ心臓は、まるで恋をしたような錯覚をもたらしている。

 いや、事実恋をしているのだ。見知らぬ街で一人のウマ娘に一目惚れしたその時から。

 

 レースが終わり、ざわついていた観衆が一瞬だけ静まる。

 そして、ドッと大きく湧いた。

 眼下の人々の声に我を取り戻した燦は、ここでようやくどちらが勝ったのかという疑問を抱いた。

 

 燦にレースの結果は分からない。

 二人はほぼ同時にゴールしたように見えたが、この場合どのようにして1着と2着を決めるのか知らなかった。

 

 質問をしようと、隣に視線を向ける。

 同じタイミングでこちらを見たキミノワルツと目が合った。

 何も言わずとも、全て承知しているかのようにキミノワルツが電光掲示板を指し示した。

 

 その一番上、Ⅰの隣には6の文字が灯っている。

 

「1着はゼッケン6番、ライクアゴーストさんです」

 

 

 

 【中山5R クラシック級未勝利 着順】

 

1着 ライクアゴースト 

2着 オウショウケイマ ハナ

 

 

 

 オウショウケイマは酸欠で狭まる視界の中、空を見上げて荒い息を吐くライクアゴーストを睨めつけ、口元に笑みを浮かべる。

 大きく息を吸えば、視界は徐々に明るさを増し、光を受けて輝く芦毛の白が目を焼いた。

 眩さに怯まず投げかけられた視線に気付いたのか、顔を下げたライクアゴーストと目が合った。

 オウショウケイマの笑みに気付き、レース中と同じように彼女も笑む。

 

()れの負けだ! だが投了はせんぞ。クラシック級は始まったばかり、次は負けん!」

 

 胸元から取り出した扇子をバサリと開き、呵々と大笑するケイマにライクアゴーストも応えた。

 

「次も私が勝つよ。大切な人のために、私が星になるために」

「そうか、()()か、星に!」

 

 笑みを抑え扇子を閉じる。

 瞳に闘志を灯して、閉じた扇子で対手を指した。

 

「されば成星(なりほし)殿よ、此度は心躍る対局だった! 次の対局も楽しみにしているぞ!」

 

 何やら奇妙なあだ名を付けられた事に内心首を傾げながらも、これが中央流かと一人納得したライクアゴーストが応えて頷く。

 

「ああ、楽しかった。こんなに楽しいレースは初めてだった。次はもっと楽しくしよう」

 

 ライクアゴーストが手を差し出し、オウショウケイマがそれを握る。

 未勝利戦とは思えぬ歓声の中、互いが互いの熱を感じながら、どちらもが相手を好敵手と認識する。

 

 認めあった二人のウマ娘が、これからどのような勝負を繰り広げる事になるのか――未来のレース結果は、まだ女神にも分からなかった。

 

 

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