×××はバ主になるようです ~ダイスで生き抜く未来のウマ娘世界~ 作:今峰鏡
【トレーニング 6月】
シュート【1D7:1】
1.スピード(オビカネシューズで効果2倍)
2.スタミナ
3.パワー
4.根性
5.根性
6.賢さ
7.白 石 最 強
リヒト【1D6:2】
キミノ【1D6:5】
トレセン学園練習コース 芝1600m 馬場:良
ハッピーシュート達は梅雨の晴れ間を利用して、実戦を想定したペースでのタイム計測を行っていた。
併せる相手の居ない、あくまで理想のコース取りでのタイムとは言え、かなりの速さでゴール板を駆け抜けたシュートは、仏頂面でストップウォッチを眺める白石にドヤ顔で問うた。
「はぁ、はぁ、どう?」
「1:35:02……ぼちぼちやな」
東京芝1600mでのメイクデビュー平均タイムがおおよそ1:37:00である事を考えると、余裕で1着を狙えるタイムであるにも関わらず、白石の反応は渋いものだった。
当然、シュートも一転不機嫌そうに眉を吊り上げる事になる。
「ぼちぼちって、ベストタイムなんだけど?」
「アホウ、こんなもんがベストタイムでイキるなや。加速はまずまずやけど追い出しが遅い。ゴール板で最高速度になっても遅いねん。加速はまずまずなんやから、もう少し手前からスパートして最高速度を維持できるようにするんや」
白石の言はなるほど、理にかなった物のように思える。だがそれはあくまで理想的なレース運びでのタイムであり、実戦でそのパフォーマンスを発揮する事は困難極まりない。
だがそれを練習で発揮できなければ、実戦で同様の実力を出すことが難しいのも確かである。
シュートは喉まで出かかった不満を飲み込み、小さく頷く。
「わかった……」
「返事は『はい』や」
露骨に顔を顰めるシュートであったが、ここで不満を露わにしても仕方がない。
未だ3ヶ月にも満たない期間であるが、白石の指導を受けて確実に実力が身についている事はシュートも実感していた。
特にスタミナには元から自信があったものの、先月の拷問じみたプール練習によってさらに大きく成長している。
それを思えば多少の不快感を仕舞い込んで指示通りトレーニングに打ち込むべきであると考えたシュートは、オビカネ製シューズの靴紐を結び直しつつ答えた。
「……はいセンセ。それじゃあもう一本お願いします」
「待ちぃシュート、足に痛みとかあるか?」
「別に? 多少疲れたけど坂路を何本も走らされるのに比べたらね」
「流石は帯金さんとこのシューズやな、最初は経費が浮くくらいに考えとったけど、これはええ買いモンしたわ」
さらっと皮肉を流されたシュートを気にした風もなく、白石は満足気に腕を組んで頷いた。
無敵かこの人はなどと思いつつ、しかしこのトレーニングシューズの寸評に、シュートも否やはない。
「確かに今まで使ってたシューズより走りやすいかも」
「せやろ。ほな10分休んだらもう一本タイム測るで」
白石の言葉に驚いた表情を浮かべるのはシュートだ。
ついまじまじと師の顔を眺めてしまう彼女に、流石の白石も鼻白む。
「なんや」
「すぐに行け~って言われると思った」
「アホウ、いつもと違って今回のトレーニングの目的はスピードを高める事や。どうすれば一番早いタイムで走れるか、それを体に教え込むんが重要なんやから、クタクタになって全力で走れんようやったら意味無いやろ」
「な、なるほど……」
「だからなんや、歯切れ悪いな」
「いや、その……ひたすらスパルタ式で走らせるのがセンセ流なんだと思ってた」
シュートの評価がそうなるのも無理はないだろう。
なにせひたすらダートコースを走らされたと思えば、次は重りを付けてプールに叩き込まれたのだ。
キミノワルツも現役時代は同じようなトレーニングを受けたと聞いていたし、普段の厳しい態度やパワハラ寸前の物言いも加わり、シュートの白石へのイメージは前時代じみた熱血トレーナーで固定されつつあった。
「オマエなぁ! こちとら年度最優秀トレーナーにも選ばれとるんや! ごちゃごちゃ言わんと黙って着いて来ぃ! あんま文句垂れるんやったらトレーニング止めてまうぞ!」
と、すぐに怒鳴りつける所はやはり前時代的だ。
そう思いつつも、シュートは姿勢を正して答える。
「わ、分かりました! 文句言わないんで続きお願いします!」
「分かりゃええんや、休憩あと10分、ゲート前で休んどき」
「ハイセンセ!」
勢いよく返事をしてゲートへと向かうシュートを見送り、溜息を吐きつつも白石は満足げな表情で呟いた。
「ったく……怒鳴りつけられて『続きお願いします』とは、多少は根性出てきたやないか。まぁ、まだまだ足りへんけどな」
[スピードのトレーニング進行度が2アップ!]
【イベント 6月】
【1D6:3】
1.向日葵 ◇◇◇
2.シュート ◇◇◇
3.リヒト ◇◇◇
4.キミノ ◆◇◇
5.帯金 ◆◇◇
6.奥さん ◇◇◇
現在白石のチームにはシュートを除いて【1D6:1】人のウマ娘が所属している。
白石はバ主資格を得るにあたり新規のトレーニング依頼を断っていたため、現在はハッピーシュート一人への指導に注力していた。
残っている一人のウマ娘も、主に指導しているのは助手のリヒトである。
シュートのトレーニングにリヒトが殆ど顔を出さないのも、最後に残った一人のトレーニングを主に見ているからだ。
そしてこれはウマ娘本人とバ主には許可を得た上で行われている、リヒト自身の卒業試験でもあった。
|リヒトの担当ウマ娘の設定|
学年【1.初等部 2.中等部 3.高等部】 [1.初等部]
身長 120+【6D10:25】 [145cm]
バスト【1.無 2.微 3.普 4.巨 5.爆】 [3.普通]
耳飾りの位置【1.右 2.左】 [2.左(元ネタが牝馬)]
毛色【1.白毛 2.栗毛 3.鹿毛 4.青鹿毛 5.黒鹿毛 6.青毛 7.栃栗毛 8.芦毛】[3.鹿毛]
長所【1.スピード 2.スタミナ 3.パワー 4.根性 5.賢さ】[3.パワー]
短所【1.スピード 2.スタミナ 3.パワー 4.根性 5.賢さ】[3.パワー]!?
「それじゃあ行くっすよ【カズサヒカリ】! よ~い、ドン!」
勢いよくゲートを飛び出た小柄なウマ娘が、鹿毛の残像を引いて加速していく。
そのままものすごいスピードで直線コースを駆け抜けると、あっという間にゴール板を踏み切った――が、そのまま止まることなく外ラチに突っ込んだ。
「ヒカリぃぃぃ!?」
慌ててリヒトが駆け寄ると、真っ赤にしたおでこをさすりながら、あどけない顔で少女は笑った。
「にゃはは、また止まれませんでした!」
「大丈夫っすか、ヒカリ」
「はいトレーナー! ヒカリは大丈夫です!」
そう言って立ち上がったウマ娘の名はカズサヒカリ。
トレセン学園中等部への入学を控える11歳、小学6年生であった。
そんな
「おどれは何しとるんじゃ」
「あ痛っ……先生」
「ぴぃ」
リヒトの頭にげんこつを落とした白石を見て、ヒカリがリヒトの背中に隠れた。白石はその姿を見て鼻を鳴らすと、リヒトに向き直って説教を始める。
「心配なんは分かるがな、相手は年頃の娘さんや、もう少し気ぃつかったり」
「はい先生」
「ほんで、まだアカンか」
「そっすねぇ……まだ自分の力を制御できてないみたいでして」
言いつつ、ヒカリの頭を撫でる。するとヒカリは嬉しそうに目を細めた。
このカズサヒカリというウマ娘は、小柄な体に似合わぬ怪力の持ち主である。パワーがあると言うことは、レースにおいて坂の上り下りや最終直線での瞬発力に優れていると言う事でもあるが、彼女の場合はその制御がままならず、本気を出した場合に己の怪力に振り回されてしまうという欠点があった。
その欠点を克服させるべく、様々な手法を試していたリヒトであったが、近頃はどれも上手くいかずに行き詰まっているのだった。
そんな中でも自分を慕って付いてきてくれるヒカリへの罪悪感と、己の不甲斐なさにリヒトはここ最近思い悩んでいたのである。
そんな弟子の様子に白石も重い腰を上げることにした。
一つのトレーニングだけで彼女の欠点を無くすことは出来ないだろうが、解決の糸口にはなるだろうと考えて。
「…………よっしゃ、出かけるで」
「はい? どこにっすか?」
「『え・え・と・こ』や。ほら行くで二人とも。キミノ、シュート呼んで車回してくれや」
「はい先生」
リヒトにヒカリ、そして突然呼び出されて目を白黒させているシュートに、いつもどおりのキミノを連れた白石がやってきたのは、都内にある雑居ビルであった。
事前に白石(の指示を受けたキミノ)が手続きをしていたのだろう、店内で簡単に受付を済ませると、5人はビルの地下へと案内された。
薄暗いコンクリート打ちっぱなしの地下室は壁という壁に落書きがされており、部屋の隅には家電や家具、食器やおもちゃの残骸が転がっている。
ここだけ見れば不良が屯するような、治安の悪い地区にある廃ビルの様でもある。
「えっと、ここは?」
「ブレイクルームや、最近アメリカから輸入されたアミューズメント施設でな、名前の通り好きなだけモノをぶっ壊せる」
「えっ、そんな事していいの?」
「ここはそういうコンセプトのお店やからな、当然や」
店の広さや形態によって壊せるものなどの種類は違うが、小型家電や家具、ガラス製品などを鈍器やバールなどで破壊する事でストレスを発散するアミューズメント施設こそがブレイクルームであり、今回はそこを白石の伝手でトレーニングのために借り切っていた。
ウマ娘のトレーニングという事もあるため、今回は特別に、冷蔵庫やコンクリートブロック、木製のデスクやワーキングチェアなど、比較的頑丈で大型のものが用意されている。
「ちゅーわけでシュート、ヒカリ、二人にはここで片っ端からモノをぶっ壊してもらう。今回は競争や、時間内で派手にモノを壊した方の勝ち、ただし二人とも素手でや」
「怪我をしないように、二人には各種プロテクターとグローブを付けてもらいます」
白石の言葉を補足したキミノから、ツナギやヘルメット、グローブなどを受け取りつつ、シュートはどこか心配そうな表情でリヒトの後ろに隠れるようにして立つ童女を見やった。
「アタシはいいけどさ。センセ、この娘初等部でしょ? 勝負になるの?」
「むっ……」
ほぼ初対面でヒカリの怪力を知らないシュートからしてみれば、幼気な少女相手に本気になるのも憚られた。
「なはは、それならそれでもええ、年上の力見せつけたれ」
白石の言葉を受けて、渋々トレーニングを開始したシュートだったが……十数分後、そこには素手で冷蔵庫やテレビなどの家電をボコボコに破壊するカズサヒカリの姿があった。
テレビのモニターはぶち抜かれ、もはや反対側の風景を映す事しか出来なくなっており、冷蔵庫もあちこちが凹んで扉が取れかかっている。木製のデスクは真ん中から2つに割れ、足も折れていた。
「相変わらずごっついパワーやのう」
その様子を見て白石が満足気に頷いていると、呆気にとられていたリヒトが近寄ってきた。
「先生、本当にこんなのがトレーニングになるんすか?」
最もな疑問であるが、この名伯楽が無駄なトレーニングをするとはリヒトには思えなかった。ウマ娘をゲートに縛り付けたり、重りを付けてプールに沈めたりと、時にぶっ飛んだトレーニングをする事もあるが、どれも彼なりの理論に則って行われたものである。
「力を制御できん言うんは、全力で力を出したらどうなるかが分かっとらんのや」
「でも、その全力をセーブできないから、今日も外ラチに突っ込んだんじゃ……」
先程の練習での失敗を思い出し、苦々しく思いながら尋ねたリヒトに帰ってきたのは、彼にとって思っても居なかった言葉だ。
「お前、本当にアレが全力やったんと思っとるんか?」
「ち、違うんですか?」
「あの娘の素質はあんなもんちゃう」
言って、白石はカズサヒカリの方を向くと、どこからか取り出したメガホンで叫んだ。
「ほれヒカリぃ! もっと本気でぶっ叩かんかい!」
「ひゃ、ひゃい!」
白石の怒声に驚き、全力で放たれたヒカリの右フックを貰った冷蔵庫が真ん中から
轟音と揺れがブレイクルームの入ったビル全体を襲う。対面の部屋で電子レンジに踵落としをお見舞いしていたシュートの顔が青ざめた。
「シュートもそんな小物にイキっとるんちゃうぞ! アレくらいやって見せんかい!」
「は、はいセンセ!」
慌てて机を真っ二つに粉砕するシュートの反対側で、ヒカリに蹴り上げられたカラーボックスが天井に激突し大小の木片と散る。
「自分がどこまで力を出せるか、そうするとどんな結果を引き起こすのか、正しく理解すればそうそう力の制御なん間違わへん」
とは言え、これはあくまで制御のコツを掴む取っ掛かりにすぎない。
完全に欠点を克服するためには、状況に合わせた反復トレーニングが必須である。
それでも、自分の悩みを呆気なく解決した白石に、リヒトは深々と頭を下げた。
「……ありがとうございます、先生」
「アホウ。お前に任しとる言うても、ヒカリかて俺の担当ウマ娘や。それにレースやないとは言え、勝てない相手と競い合う経験言うんは、シュートにとっても必要やからな」
そう言ってウマ娘たちを見やれば、瓦割りの如くコンクリートブロックを叩き割るヒカリを、
[パワーのトレーニング進行度が1アップ!]
[リヒトとの絆が深まった!]
【 R E S U L T 】
スピード ■■■□□[C]
スタミナ □□□□□[C+]
パワー ■□□□□[C]
根性 ■■□□□[E]
賢さ □□□□□[E]
【 R E S U L T 】
1.向日葵 ◇◇◇
2.シュート ◇◇◇
3.リヒト ◆◇◇
4.キミノ ◆◇◇
5.帯金 ◆◇◇
6.奥さん ◇◇◇
特殊タグ使うの楽しいですが、有ると無いとでは露骨に執筆速度の差が出ますね。
そこそこ安産でした。