こういう妄想をネットにぶち上げるのは初めてだけど、きっと他にもこんな妄想した人いる、よね。
ライスが可愛すぎるのがいけない。
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「コンコン」
と部屋のドアがノックされた音で意識が覚醒する。
どうやらパソコン作業中にうたた寝していたらしい。
「はーい、どうぞー」
欠伸を噛み殺しつつ、ドアの向こうへ声をかける。
今日は休日だからあんまり人がいないはず。誰だろうか?
目線をパソコンから外してドアを見ると、そこには予想外の人物がいた。
「あっお兄様、もしかしてお仕事中だった?」
「ライス?今日は休日……あぁそうか」
ライスシャワーだった。しかもいつもとは違う服装。かわいい(語彙消失)。
黒、紫、オレンジといった色が用いられたゴスロリ風なドレス。そこにカボチャのアクセサリーや、背中には可愛らしいコウモリの羽が付いていたりすれば、季節感に疎い俺でも今日が何の日かわかる。
今日は10月31日の日曜日。ハロウィン当日だ。
「お兄様にこの衣装見せたくて。来ちゃった」
「それがこの前話してた衣装か。うんうん、よく似合ってるよ、吸血鬼さんコス」
「あぅ、えへへ。ありがとう、お兄様」
素直にほめるとライスはちょっと顔を赤くしてはにかむ。かわいい(語彙消失)。
ミホノブルボンが実行委員長となったハロウィンパーティの準備を手伝っているとは以前から聞いてきた。その一環で衣装を用意してもらったとも。
ウマ娘の寮の中で行われるパーティなので、人間のトレーナーである俺は当然参加できない。つまりライスのパーティ衣装も見れない。見てみたいなーとは思っていたけど、ライスから見せてくれるとは。
パソコンをスリープモードにして席を立つ。
「ライスも来たことだし、ちょっと一休みしようかな。ライスもお茶飲む?」
「あ、その、ライス、お兄様に言わないといけないことがあるの!」
言わないといけないこと?
もしかして練習がきつすぎるとか? もしくは俺の抜け毛が最近多いことに気付いたとか? はたまた1年前、間違って食べてしまったライスのプリンを気付かれない様に買い直したことがバレた?それとも、この前のレースでの賞金を全てライスの口座に振り込んだことだろうか?
思わず身構える――が、その心配は杞憂だった。
「とりっくおあとりーと! お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞぉー!」
両手を前に構えて、きしゃ―とでも言いそうなポーズをとるライス。かわいい(語彙消失)。
というかそうだよな、わざわざハロウィンに仮装してやってくるのだから、それが目的でここに来たんだろう。
「わぁ、なんて怖い吸血鬼なんだー(棒読み)。お菓子をあげるから見逃し、て…………あ゛」
ふと一昨日の記憶がよみがえった。
俺の部屋に突如やって来たゴールドシップが、「菓子貰っていくぞー」とだけ言って俺の部屋のお菓子類を根こそぎ持って行った記憶が。
確認のためにお菓子を入れていた収納を開くも、一つだけ空の小包装のビニールがあるだけ。
今、この部屋にお菓子はない。
ライスに向き直って少し頭を下げる。
「ごめん、ライス。この前ちょうどお菓子を切らしたところで……甘んじて悪戯を受けるよ」
「ふぇ? え、い、いたずら、しなきゃ、ダメ?」
「そういう風習だしね。ま、お手柔らかに?」
これがお菓子を持っていったゴールドシップ相手だったら、何されるかわからないので近くのコンビニにダッシュしてお菓子を買いに行くところだが、その点ライスならそんな変なことはしないだろうし安心できる。
あと目の前であわあわしているライスがかわいい。
「そ、それじゃあ、お菓子をくれない悪いお兄様の血を吸っちゃいます! だから、えーと、そこに座ってください!」
「ワァオ、結構ヘビーな感じだった。はいよー」
字面的にはヘビーだけど、まさか本当に血を吸うわけでもあるまいし、ちょっと噛まれるくらいかな。
ライスが指さしたソファーに腰掛ける。
すると少し俯いたライスが、真正面から近づいてくる。
……何だろう、急にライスの雰囲気が変わった?
「あれ?」と思う間にライスは俺の体に乗り上げ、両手を広げて俺の背中へと回していた。
抱き付かれるような格好になり、まさに目と鼻の先の距離でライスと向き合う。
いくら小さい女の子相手とはいえ、突然の事態に心臓の鼓動が早くなる。超至近距離で見るライスの瞳は紅く光っていた。口元が緩められ、牙が覗いて見える。
そしてライスが俺の首筋に顔をうずめて――
プスッと皮膚に何かが突き刺さって、そこから血が吸いだされる。でも不思議と痛みはなくて、むしろ心地よいというか、なんだか頭がぼーっとしてゆくような……
朦朧とする意識の中、顔を上げたライスの口周りが艶めかしい紅で染められているのが見えた。
「ふふっ、お兄様、だいすき」
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「コンコン」
と部屋のドアがノックされた音で意識が覚醒する。
どうやらパソコン作業中にうたた寝していたらしい。それと、なんだか変な夢を見たような気がする。
「はーい、どうぞー」
欠伸を噛み殺しつつ、ドアの向こうへ声をかける。
今日は休日だからあんまり人がいないはず。誰だろうか?
目線をパソコンから外してドアを見ると、そこにはライスシャワーが立っていた。
「あっお兄様、もしかしてお仕事中だった?」
「ライス? あぁ、ハロウィンか」
ライスはいつもと違う服装だった。以前言っていたハロウィンパーティの衣装だと思うんだけど……何故だろうか。初めて見るはずなのに既視感がある。
良く似合っている旨を伝えれば可愛らしくはにかむライス。とても可愛いんだけど、これもなんとなく既視感がある。
つい最近こんなやり取りをしたような。
「あ、その、ライス、お兄様に言わないといけないことがあるの!」
言わないといけないこと、ね。
このあと、トリックオアトリートって言うんじゃないか?
「とりっくおあとりーと! お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞぉー!」
ほらね。
え、マジでなんでわかったんだ? いつの間にか俺は予知能力に目覚めていた……!?
まぁそんなわけはないだろうけど。偶然、偶然。
ただ、たしかお菓子は根こそぎ持っていかれちゃったんだよなぁ。そう思いながらお菓子の収納を開けると……
「あれ?」
未開封のチョコ菓子の袋が一つだけ鎮座していた。
封を切り、中に入っていた小包装を手に取る。ちゃんと中身がある。
これまでとは逆の違和感があるものの、渡さないという選択肢はない。
「はい、ライス。こんな安っちいので申し訳ないけど」
「ありがとうお兄様」
ライスはお菓子を笑顔で受け取った。
袋詰めの安価なお菓子でこれだけの笑顔を返してくれるライスの優しさが心にしみる……
「それじゃあお兄様、これからパーティの準備をしなくちゃだから、ライスは帰るね。お兄様もお休みの日だから頑張りすぎちゃダメだよ?」
「うん。そうする」
目的を果たしたライスが背を向けて帰ろうとする。
「ライス」
「なぁにお兄様]
なんとなく気になったことがあってつい呼び止めてしまった。
「その、もしお菓子が無かったら、ライスはどんな悪戯をした?」
「えぇっ?うーん、いたずら、いたずら……いたずら、しなきゃダメ?」
「まぁそういう風習だし。それに仮定の話だよ」
「仮定の話……それなら、今のライスは吸血鬼だから、
上目遣いでもじもじとしながら答えるその言葉を聞いて少しホッとするような、もしくは残念なような。
相反する感情を抱き、しかし、残念な気持ちがそのまま口を突いて出てしまう。
「腕に?首筋じゃなくて?」
「く、首筋っ!? えぇと、ちょっと恥かしい、かも……」
その場面を想像したのか、ライスが顔を赤くして答える。
確かに考えてみれば、首に噛みつくには前からするにせよ、後ろからするにせよ、お互いの体同士を密着させないといけないわけだもんな。
恋人同士とかならばともかく、ただのウマ娘とそのトレーナーという関係がするには好ましくない距離感だろう。
「悪い、変なこと聞いたな。パーティの準備、しておいで」
「うぅ、お兄様、大胆な方が好きなのかな」
「?」
「もう行くねっ! ハッピーハロウィン!」
「お、おう。ハッピーハロウィン」
逃げ出すようにして部屋を出ていくライスを、俺は茫然と見送るのだった。
全体的にハロライスはえっちだと思う。