無職転生 ~領主になったら本気だす~ 作:華氏使うな
第十話「新婚旅行の始まり」
ロキシーに手紙を出していよいよ心残りも無くなった俺は、エリスとギレーヌと共に旅支度をしていた。
今回の面子はこの三人だ。新婚旅行なのに着いてくるのか?と思うかも知れないが、流石に護衛無しとは行かないのだろう。
「ルーデウス、もう少し色々、予定は詰めた方が良いんじゃないか?」
と言うわけでギレーヌは護衛なのだが、別にギレーヌが畏まったりはしなかった。敬語自体は使えるみたいなんだけどね。
「いえ、これくらいゆったりしてた方が良いですよ。疲れちゃいますし」
「なによルーデウス!おじいちゃん見たいなこと言って」
「じゃあ、エリスはまたあの行軍をしたいんですか?」
「…それが良いわね」
納得してくれたようで何よりだ。
「お嬢様も、お前と一緒に色んなところに行きたいんだろう。もう少し考えてやれ」
「ほう?」
「うっ……またニチャっとした顔してる…」
失礼な。というか、キメ顔しても言われるんだが、もしかして俺のキメ顔ってエロオヤジの顔なのか?んなバカな。
「おい、ルーデウス。寝具も軽くで良いから持っていけ」
ギレーヌが俺の荷物を見てそう言ってくる。
「え、普通に出先の村で泊めて貰えるんじゃないんですか?」
「新婚旅行なんだろう?今まで構ってやれなかった分、存分に構ってやれ。別にお前が初対面の家で寛げるなら無くても良いと思うがな」
「野原でするんですか?」
「いや、私は野宿させて貰うが、二人は馬車を使えば良いだろう」
つまり……カーセッ◯ス?!
「またなってるわよ!」
おっと、失敬。
ーーー
てなわけで計画も煮詰まったので話して行こう。
まず、一ヶ月の内20日はそこら辺の村で人気取りをする。そして、移動時間含めて残りの10日で領都に戻り、その間は休みながら、フィリップに色々と教えて貰うということになっている。
実に単純で分かりやすい計画だ。
んで、二十日の間に俺は魔術でマウントを取りまくり、夜はエリスにマウントを取られる訳だ。
因みに、俺も頑張って責めようとしてるが、最終的には受けになってしまうのが今の状況だ。
何時かは勝てるようになろうと、日々修練を積んでるところである。相手も積んでるんだがね。一人じゃ出来ないし。
まあ、聞いてお分かりだと思うが、計画というほどの計画は無い。
気の赴くままに、一応区切りは付けておいて行動しようって訳だ。
十日間の方で勉強をするときは、パウロとギースもやるらしい。エリスが居ないのは、フィリップの期待の表れだろう。
むさいオッサン達で勉強会。実に華がない。出先との落差が激しすぎると思う。帰るのは、なるべくギリギリにしよう。
で、旅をするに当たっての、道案内は居ない。全員、信用出来る土地勘のある奴は、フィリップに着きっ切りなのだ。新婚旅行と領政じゃ、優先順位が違うからな。
こんなものだ。
考えてみると、行き当たりばったりなのが際立つ。
フィリップは「どこに行っても良いよ」とのことだ。アポとかも取らないらしい。
そんなんで大丈夫なのか。
心配は過分にあるが、フィリップを信じよう。
いよいよ、出発の時間だ。
ーーー
「じゃあ、行ってきますね」
「おう。こっちのことは大人に任せとけ」
いつになくパウロが頼もしい。親父としての威厳に道溢れた顔をしていた。アイシャやノルンをあやしているときとは、大違いである。
「ルディ、良い?ちゃんとエリスちゃんと遊んでくるのよ?あくまで魔術巡業とかは二の次だからね」
ゼニスは母親としてそれで良いのか?いや、良いのか。
「ルーデウス坊ちゃん、帰ってきたら、渡したい物がありますので…」
リーリャは何やら気になることを言ってきた。それなら、今渡して欲しいというのは野暮なのだろうか?
「じゃあ、お兄ちゃん!行ってらっしゃい!」
「…行ってらっしゃい」
アイシャとノルンにも見送られる。まだ、ノルンとはあまり距離を詰められてない。嫌われてる訳じゃ無さそうだけど…人見知りされているのだろう。
アイシャの方はいつも通り、超フレンドリーだ。リーリャは一体どんな教育をしたのだろうか。洗脳じみたことをしたんじゃないかと疑うレベルだ。
「じゃあルーデウス、行きましょ!」
そして、催促してくるのはエリスだ。
紆余曲折あったが、今世の家族関係は非常に順調だ。
今はまだキチンと避妊してるが、あと三年もすれば孫も抱かせてやれるだろう。
フラグのようだが、逆に此処から家庭崩壊させることが出来たら、大した才能と思う。
ーーー
道中は、来たときと特に変わらなかった。
今回は御者はギレーヌで、夜は馬車の中で野宿、もといカーセ◯クスすることになっている。
昼間は世間話をして過ごすが、その間も俺は期待で色々な物が膨らんでいた。
流石に立ちっぱなしじゃなかったけど。
「ふぁ……もう夕方ね」
エリスはちょっと退屈そうだ。世間話だけで間を持たせるのは無理があると思ったので、ボードゲームも持ってきたが、俺が圧倒的すぎてエリスの機嫌が悪くなった。
お互いに強いと、性格が強気な方が優位になるのも考えものだ。
さて、そろそろ日が沈む。
いよいよ……お楽しみの時間だ!!
「じゃあ、エリス……しましょうか?」
「え?何をするのよ」
「楽しいことですよ、楽しいこと」
「分かったわ!キャンプでもするのね!」
いや、そんな焦らしプレイ求めてない…
と思ったのだが、エリスの目はキラキラしていた。
年相応に、無邪気に外で遊ぶことを楽しみにしている目だった。
思わず俺も毒気、もとい性欲を抜かれてしまう。
良く良く考えたらそうか。十三才で、そんなにヤることばっか考えてる筈もないもんな。
だとすると、仕事に忙殺されてた方がエリスにとっては丁度良かったのかもしれない。悲しい事実だ。
「行きましょ!」
「はいはい」
しかし、たまにはこう言うのも悪くない。
外に出てみると、爛々と星が輝いていた。
汚染されてない空は実に綺麗である。
「で、ルーデウス、何をするの?」
「そうですねぇ…ギレーヌ、何かありませんか?」
「ルーデウスの魔術で凍らせられるから、何個か生物も持ってきている。それを焼いたらどうだ」
御者台から降りてきたギレーヌも来た。
最初は何で居るんだ、なんて思ったが、性欲を抜きにすればこうして三人で過ごすのも良いものだ。
魔術で火を付け、焚き火に金網を乗せる。
「持ってきたぞ」
ギレーヌが持ってきたのは肉とパン。野菜の彩りなんて寸分もない。だが、それが良い。調味料は塩オンリーだ。
「じゃあ、行きますよ」
肉を焼いてる間、エリスがパブロフの犬みたいになっていたので、火力を強めて焼いてやる。
解凍などもせずに直火だが、意外にも肉は直ぐ焼けた。
「はい、どうぞ」
「おお」
「…食べて良いのね?!」
「まだ塩も降ってないですよ。ほら、今掛けますね」
全く、気の早いことだ。
塩を降った途端、二人ががっつきだす。
「うん、中々いけるわね!」
エリスよ、その反応は、毎日丹精込めて料理を作ってる料理人が泣くぞ。
じゃあ、俺も頂きますかね。
まずは一齧り…
「おおっ」
中々にいける口だった。
凍らせたせいで若干味が変だが、肉と塩だけのシンプルな味わいはスッと食べることが出来た。
ギレーヌとエリスのがっつき隊に俺も参加してしまう。
すると、あっという間に肉は無くなってしまった。
「ギレーヌ、もう肉は無いの?!」
「ああ。もう無いな」
「………じゃあルーデウス、一緒に取りに行きましょ!」
「え?」
おっと、とんでもない話になったぞ?
「いや、私が取ってこよう」
「違うわよギレーヌ!ルーデウスと行きたいのよ!」
エリスは可愛いが、しかし大丈夫なのだろうか。
そもそも、夜の森に肉になりそうな動物は居るのだろうか。よしんば取れたとしても、寄生虫とかも居そうだし…
「そうか。じゃあ、私は馬車を見ている。二人で行ってこい」
ギレーヌさん、護衛としてそれで良いんすか。
「護衛無しで大丈夫なんですか?」
「問題ないだろう。師匠として、ルーデウスとお嬢様の二人なら遅れは取るまい」
まあ、確かに…エリスは最近のパウロとの戦いで、メキメキ力を伸ばしてきてる。
戦い方というのを、弁えてきたのだ。
所詮は森だし、魔物の一つや二つ、なんとかなるか。ゼニスに治癒魔術も教えて貰ってるし。
それに、エリスのキラキラした顔を見ろ。これで断ったら夫失格だ。
というわけで俺とエリスは、森の中へ進んで行った…
あんまり進んでないです。
あと、評価してくれると嬉しいです。