無職転生 ~領主になったら本気だす~   作:華氏使うな

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なんかバグってたので上げ直しました


第十六話「独白」

 

ーーーピレモン視点ーーー

 

金を王都アルスまで運んでから、二日が経った。

今のところ、領主の座を取り返す計画は順調に進んでいる。

 

第二王女派からの支持取り付け。

そして、第一王子派の一部貴族にも、そちらの派閥に乗り換えると言って、前金として金をバラまいたら寝返らせることが出来た。

 

いや、『寝返らせた』は不適切だな。

 

彼等はあくまで、第一王子派の一貴族のトップを変えただけで、

この私、ピレモンは第一王子派になるのだから、決して第二王女派を利する行為をした訳じゃないのだ。

 

無論、本当にそんな詭弁を信じる奴は居ないだろうが。

 

 

これがダリウス上級大臣だったりしたら、目先の餌には飛び付かなかっただろう。

後のことを考えれると言うのもあるし、今回勧誘に成功した貴族があまり甘い汁を吸えない立場だったと言うのもある。

 

だが別に、ダリウスのように能力的な意味で有力な者は居なくて良いのだ。

重要なのは、家格。

先祖が培ってきた力は、一代の無能・有能で大きく左右されはしない。

だからこそ、私に利する意味も分からないようなバカを利用すれば、幾らでもやりようはある。

精々、先祖の努力を私の足元に差し出せば良い。

 

 

…かくいう私も、同じ穴の筵かも知れないが。

 

虚しい人生だと、我ながら思う。

父に期待されず、兄・パウロと比較され、サウロスや家臣にバカにされ続けて。

生まれたときから、誰も彼も、私が領主になるなんて考えても居なかった。

 

領主になれたのだって、パウロが帰って来なかったからだ。

そしていざ領主になっても、私に領主としての能力は無かった。

問題に対処する能力も低く、家臣からの求心力だって集められなかった。

リーダーシップという物が無いのだ。

 

そして、挙げ句の果てにはパウロが帰ってきた瞬間に、ポイだ。

 

その報を聞いたとき、私は震えた。

目も震え、頭も震え、肩も震え、足も震えた。

それが怒りなのか、悲しみなのか、はたまた別の何かによる物だったかは、今となっては分からない。

 

ただ、『負けた』と感じたことは覚えている。

 

 

しかし、救いはあった。

たった一つだけ、たった一つだけだが、私にも得意とすることがある。

暗闘の才能だ。他人の足を引っ張り、貶め、自らを相対的に高める。

それだけは、誰にも負けない自信があった。

 

 

例えば、今だって精力的に弱みを探っていて、現にサウロスとフィリップの弱みは手に入れたのだ。

 

奴等は、奴隷を買っていた。

それだけなら問題ではない。だが、ミリス大陸の獣族を買っていたのだ。

今、奴隷問題でミリス神聖国ー獣族間の緊張が高まってる時期に、奴隷商人に金を流すのは、明らかに戦争を助長する行為だ。

 

そこを突けば、奴等を失脚させることも可能だろう。

パウロは半ば後見人のような立場なので、纏めて叩き潰せる。

 

散々バカにされた能力だ。

会う者の中で、人間として信用出来る者には、須く見下された能力だと自負している。

 

そして今、アイツらに目に物見せてやるのだ。

お前らがバカにしてたこの私が、お前らを地に貶めてやる。

 

領主の座はどうでも良い。ただ、負けたくなかった。

 

 

いや、領主の座がどうでも良いことは無かったな。

私には、二人の息子が居る。

 

長男は、社交的な能力に優れている。

次男は、女をタラし込む才能だけだと思っていたが…今回の件で、意外に暗闘と、人を見極める方面にも才能があることが分かった。

 

領主交代の穴をついて、税金を回収することは自分も考えていた。

ただ、断念した。

どこまでパウロが領主になった話が伝わってるか分からなかったし、税金を回収者にくすねられては、ただリスクだけを負うことになるからだ。

それに、金が無くても何とかなる目処は立っていた、というのもある。

 

ある日、次男は似たような提案をしてきた。

出来る訳がない、そう思った。だから諭そうと思ったのだが、次男は自信に満ち溢れていた。

 

ならばと思い、賭けるような思いで次男に任せたのだが…

次男は無事に、税金回収を成功させて来たのだ。

 

この一件で、次男には才能があると分かった。

一体、どのようにこの短時間で人を集め、計画を実行したのかは分からない。

しかし、それはつまり私には測れないほど、高度な頭脳と手腕を持っている証左だろう。

 

昔の私なら、嫉妬したと思う。

父、兄に続き、息子までコンプレックスとなれば、どうなっていたことか。

 

しかし、今の私にとってはそう大きなことではなかった。

 

 

意味を見出だしたのだ。

確かに、私はパウロに劣る。望まれてない人物かも知れない。

 

ただ、息子達はどうだ。彼等はパウロどころか、フィリップだって出し抜いたのだ。

 

息子達は、きっと望まれる人物になる。

長男が家督を継ぎ、次男が陰ながら支える。きっと、何者にも負けないコンビになるだろう。

 

そう考えれば、救われた気がした。

私は、息子達の輝かしい未来の踏み台となるのだ。

望まれる息子達を領主にするための、置き石なのだ。

 

それならば、私は断じてパウロのスペアなどではない。

必要とされた、代えの効かない人間だ。

 

 

だから、息子の為ならやって見せる。

下げたくない頭だって下げる。

金だって幾らでも出す。

格下相手にだって、媚びへつらってやる。

 

汚名は一身に背負って退場してやろう。

パウロも、フィリップも、サウロスも道連れだ。

 

そして言ってやるのだ。

 

「勝った」

 

と。

 

 

ーーー

 

 

計画は着実に進んでいる。

多少のミスがあったり、フィリップらに勘づかれても最早、取り返しがつかない所まで来ている。

後は、時を待つだけだ。

 

 




次男=ルーク
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