無職転生 ~領主になったら本気だす~   作:華氏使うな

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第十七話「vs北王ウィ・ター」

 

「不味いな…」

 

パウロが腹立たしげに呟く。

理由は、ピレモンのことだ。

 

ピレモンが何かをやっていた痕跡は、意外にも早く見つかった。ただ、決定的な物だけは見つからない。

フィリップはこの事態を受け、時間稼ぎをされてることに気づいたようだが、だからと言って何が出来る訳でもない。

今、ノコノコと王都に出ていったところで、ピレモンの策略にまんまと嵌まるだけだからだ。

一応、フィリップが手紙の速達便で、王都の方も探っているようだ。敬意を持って『元祖リモートワーカー』の称号を授けたい。

 

で、どうにかして、何らかの不正の証拠を見つけなければいけないのだが…

探せば探すだけ、誘導されてる気がしてならないのだ。

わざと見つかるようにされてるって言う感じ?

 

ギースはノトス家の潤沢な資産を利用して、冒険者でローラー作戦を行うことを提案していた。が、これはフィリップに却下されていた。

あまり大人数でして、その中にピレモンのお手つきが混ざってればイタズラに金を浪費する結果に繋がるからだそうだ。

 

ただ、ギースの知り合いで信用出来る奴に頼むこと自体は採用されたようで、ギースは冒険者達を率いて何処かに行っていた。

 

 

と言うわけで、俺やエリス、パウロと言った中心人物でさえ動員されて、何か痕跡がないかと捜索しているが、結果は芳しく無かった。

遅延工作がされていると言うのに、どうすることも出来ないもどかしさ。

 

それでパウロら大人組はピリついている。

尤も、ギレーヌやエリスら獣組は別なのだが。

 

俺はあれから、潜伏場所になりそうな森や山を、しらみ潰しに探していた。

町などの人が居る場所は、ギースの担当だ。

 

最初こそ尻込みしていた俺だったが、意外に入ってしまえば何てことはない、と言うことが分かった。

そもそも、エリスとギレーヌら前衛の安定感がレベチなのだ。

彼女らは、遠く離れた距離からでも気配を察することが出来る。そのため、俺がアウトレンジから魔術を叩き込めば終わってしまってしまうのだ。

 

ギレーヌは獣人だから兎も角として、エリスは一体どうやって察知しているのだろうか。

 

それはさておき。

ギレーヌはそんな俺の慢心を察知してか、「あまり力を過信するな」という有り難いお言葉を下さった。

ギレーヌは剣王だし、

エリスも剣聖の技『光の太刀』こそ使えないものの、剣聖並の腕前を持っている。更にパウロのお陰で北神流や水神流の技も取り入れてるので、実質剣聖の上澄み位の実力はあるだろう。

俺だって、一応水聖級魔術師だ。

 

アスラ王国で一体何を心配することがあるんだ、と思わなくも無かったが、別の大地でも同じ環境とは限らないのだ。

だから、アスラ王国で心構えを学んでおくのは良いことだろう。

そう考えて、素直に言うことを聞くことにする。

 

今思えば、訓練気分すらも軽かったのかも知れないが。

 

 

ーーー

 

「彼方から匂いがするな。行ってみよう」

 

ギレーヌがそんなことを言う。

今の俺達は、ギースが集めてきた情報を元に、潜伏先となっている可能性が高そうな場所を探し回ってる最中だ。

 

因みに、この方法で四個の森に行ったのだが、二個は当たりがあった。

しかし、既に引き払った後のようで、あまり収穫は無かったが。

 

まあ、だとしてもこれでギースの情報収集能力の高さが分かるだろう。半分は当たりだからな。

 

で、ギレーヌが反応した訳だ。

今回は当たりっぽいな。

 

「……若干、新しい人の匂いがする。警戒してくれ」

 

おっ、これは当たりも当たり、大当たりじゃないか?

そんなことを考えながらテンション高めに行軍する。

此処のところ、目立った成果が無かったから、意識せずともテンションが上がってしまったのだ。

 

なるべく、音を出さないように進んでいたつもりだったが…もしかすると、エリスやギレーヌ程気を潜められて居なかったのかも知れない。

 

森を掻き分け進んでいくと、立派なログハウスが出てきた。

動物が居なかった謎の森の奴とは、比べるまでもない。

 

大成果だ。これでパウロ達の心労もちょっとは減るだろう。そう思ったとき。

 

「うわっ!」

 

唐突に、目に光が飛び込んできた。

森が開けたからか?いや、だからと言って此処まで目は潰れない筈…

 

そんなことを考えてる間に、何かが飛んでくる。

あれは…剣だ!

ギレーヌが防ぐよりも早く、俺が魔術で剣を溶かした。

あぶねえ。一度見たことが無かったら、対処出来ていなかった。

 

「何者だ!」

 

「我が名は北王ウィ・ター!強者を狩る為に旅をしている者である!」

 

大嘘だな。

というか、嘘を付く気すら無さそうだ。

一応、便宜上ピレモンの部下だと言ってないだけだろう。

 

そいつはピカピカに光る鎧を着た少年…いや、恰幅が良い辺り小人族か。

眩しいのは、鎧のせいか。あれに光が反射しているのだ。

しょっぱい技だが、しかし効果的だと言わざるを得ないだろう。

 

「ガアッ!」

「……」

 

サッと目配せし合ったエリスとギレーヌが、即座にウィ・ターに突っ込んでいく。

が、やはり眩しさが災いしてか全力を出せていないようだ。

これは不味い。

 

どうしたものか…取りあえず、魔術で援護するのは確実として、何を使うかが問題だ。

あの鎧は高そうだ。つまり、何らかの魔術付与がされてる可能性が高い。下手に警戒させるだけの結果に終われば、アイツは逃げる。それは不味い。

 

よって、魔術が打ち込めるのは一撃だ。

だからこそ、何の攻撃をするべきか考えなくてはいけないのだが…

 

うむ、分からん!

何やら薄く模様が書かれてるのは分かるが、俺にそれを解読することなんて出来やしない。

取りあえず、一発打ち込んでみるか?

全部がダメじゃなきゃ、成功する確率は割と高いように思える。それか、なんなら同時に全部打ち込むか。

 

いや、それをするにはエリスとギレーヌが近すぎる。一体どうすれば良いのか。

声を掛けて下げさせれば、それは俺の無詠唱のアドバンテージを捨てるに等しい。

 

…いや、発想を変えよう。

何も、魔術を馬鹿正直に喰らわせられなくても良いのだ。

あの光さえ消せればどうにかなる筈だ。

 

なら、泥沼魔術だな。

ここまで、思考時間は5秒間。

長いと感じるかは微妙だが、強者同士だとかなりの時間だ。

 

魔術を手に込めて…地面を泥沼に!

 

「うお!」

 

粘度の高い泥沼に、ウィ・ターが突っ込む。アイツだけを対象にしたようだったが、突っ込んでったエリスも片足を取られてしまった。

が、そこはエリス、即座に足を抜いて切り掛かろうとするが…

ウィ・ターもまた、強いということなのだろう。

エリスに向けて、剣を向ける。

まるで、見せつけるかのように。

それを見て俺は、剣を弾くために岩砲弾の準備をする。

 

足が嵌まってないギレーヌは、振りかぶればウィ・ターを殺すことが出来た筈だが…

エリスのことを庇うように、剣を振った。

 

多分、俺の魔術援護も間に合ったように思うし、エリスもエリスで致命傷になるほど、やられっぱなしにはならなかっただろう。

 

だが、ギレーヌはエリスを庇うような動き方をした。別に捨て身って訳ではないが。

 

そして、その一瞬の隙を見逃すウィ・ターではない。

多分、誰かに攻撃を仕掛けてくるだろう。そう思ったのだが…

 

「さらばだ!」

 

ウィ・ターはそういって逃げて行ってしまった。

えぇ……?

 

いや、確かにあのまま行けば、ウィ・ターはジリ貧で負けていただろう。アレは、どちらかと言えば初見殺しのタイプで、持久戦が得意そうじゃなかったからな。

 

しかし、逃がしてしまったか。

まいったな。

俺達は、弱くない。ウィ・ターを退けたのだって、運が良かったからじゃない。実力の賜物だ。

だがしかし、運が悪ければ負けていた可能性はあった。

 

俺はその、運が悪い可能性にエリスやギレーヌを巻き込みたくない。そして俺も、流石に一人で入りたいとは思わない。

 

つまり、実質的に俺達は使えなくなってしまった訳だ。

 

 

またしても、完全にしてやられた。

 

因みに、奥のログハウスでは、今までよりかは決定的な資料が見つけられた。

 

明らかに、出所不明の大金の帳簿だ。

致命傷ではないが、とっかかりになる位の証拠には思える。ピレモンにしては、迂闊なことだ。

 

もしかすると、ウィ・ターに回収させに来たところに俺達が鉢合わせたのかもな。

 

収穫はあった。

しかし、決定的ではない。何か、あと一つあれば変わりそうなのだが…

 

しかし、俺達はもう、探索は出来ないのだ。どうした物か。

 

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