無職転生 ~領主になったら本気だす~   作:華氏使うな

20 / 28
第十八話「神の気配」

こんにちは。ルーデウスです。

私は今、話題の豪邸に来ています。

 

なんと此方の豪邸。出勤時間が0分なんです。

そう、職場と一体型の物件なんですね。

 

なので、仕事がめんどくさい方にオススメの物件です。此処に住むだけで、毎日家に居ることが出来ます。

 

更に、なんと電灯モドキが完備されているので、中世系異世界であるにも関わらず、なんと深夜まで活動することが出来るんです。

家具・食事は勿論完備。一日三食、誰かが食事を作って持ってきてくれます。

 

更に、同僚や部下も職場兼家に常駐してるので、本当の意味でアットホーム。

 

親戚のお茶目な叔父さんが、遊んでくれる特典付き。

かくれんぼやチャンバラごっこ、人狼ゲームで遊んでくれます。

その叔父さんは、いつも人生を追体験させようとしてくるので、いつでも童心に帰ることが出来る仕様になってるんですね。

 

 

 

どうです?住みたくなったでしょ?

 

…ちょっとでも仕事が出来るなら誰でも良いので、是非引っ越しを検討してください。毎日がパーティーナイトなんです。B5の紙吹雪がフィーバーしてジャックポットなんです。

 

というか、助けてください。

もう19時間労働は嫌なんです………

 

 

---

 

 

「ああ…」

 

深夜3時。夜の廊下を歩く男が一人。

そう、俺だ。

 

パウロやギースが探索に出ていき、フィリップが探偵紛いのことを始めた結果、なんと仕事時間は驚異の19時間の大台を達成していた。

 

育ち盛りの子供だぞ。こっちは。

まあ、9時就寝の2時起きだから成長ホルモン的には問題ないんだが。

 

今、屋敷の業務は殆んど俺が一身に背負っている。

事実上の領主だ。ちっとも楽じゃないけど。むしろ平民の方が楽だ。

 

この仕事量で、更に贅沢までしてるアスラ貴族は、実はメチャメチャ有能なんじゃないだろうか。

この量の仕事をこなした上で、ワークライフバランスも守ってる訳だからな。

 

というか、ピレモンは何が悲しくてこんな座を取り替えそうとしてるのだろう。ワーカホリックなのかな。

 

 

なんて、どうでも良いことを考えていられる時間は終わってしまった。自室に着いてしまったのだ。

なるべく早く終わらせて、早く寝よう。

 

 

ーーー

 

 

「うっわ、めんどくせえ…」

 

深夜四時。俺は非常に嫌な気持ちになっていた。

前にフィリップは『書式は統一されている』と言っていたが、一部例外がある。

ピレモン対策は平時にない仕事だったので、雛形が無いのだ。

 

もっとも、大抵の場合は見れば分かるように書かれているのだが…たまに、悲惨な物が紛れ込むのだ。

注釈や略称まみれで、何が書いてあるかサッパリ分からない。固有名詞だからって全部(以下乙とする)とかしなくて良いんだよ?マジで。

それに、一々出典書かなくて良いから。ウィ◯ペディアあるまいし。

 

と、こんな風に霞ヶ関パワポのような書類は、何を書いているのか分からないので、聞きに行かなくてはならないのだ。

一度解読を試みたが、一枚読むのに一時間掛かった。

 

 

「はあ…行くか…」

 

近頃は、エリスとおせっせどころか一緒に寝ることすら、あまり出来ていない。

そろそろ12歳だが、パウロのように家出すら考えるレベルだ。

まあ、パウロはもっと可哀想だからしないけど。

 

それにしても、エリスは今が一番の育ち時なのだ。胸の膨らみのアハ体験すら出来そうな位に。

というかしたい。

 

もうなんかどうでも良く思えてきた。

フィリップをぶん殴って、気絶してる所を無理矢理一緒に引っ越せば良いんじゃないかな。

 

冗談…じゃなく割とマジな考えはさておき。

 

えーっと、確かコイツが居るのは二階の情報管理部門だったか。

少なくとも、紙の上の情報は管理出来てないみたいだが。

 

「失礼しまーす…」

 

中に入ると、三列に並んだ長机に、死んだ顔のオジサン達が机に向き合っていた。手元には書類。お勤めご苦労様だね。

 

って、あれ?何やら(ロキシー)の気配がする。

居るわけが無いのに、何故かする。

 

何故だろう。凄く気になるが、見回してもお役人ロキシーが居たりはしなかった。

 

(でも、確実にするんだよな………あっちの方か?)

 

感覚の赴くままに探る。

多分、あっちだ。

 

壁際の方。

自分の、足の付け根程度の高さ。

そこにあったのは…

 

「ゴミ箱?」

 

紙ゴミが大量に入ったゴミ箱だった。

なんでこんな所から神の気配が?

 

流石に漁る訳にもいかないので、目を凝らして見る。

電灯も数が限られてるので、此処までは光が届かない。シュレッター代わりに、紙をビリビリに破って捨ててるようだ。良く分からない数値が書かれてたり、整備文の一部が見えたりする。

 

報告書に、計算用紙。謎の数値に何かの手紙。手紙に関してはなんでこんな所に?

ってあれ、破り方のせいで、手紙の差出人の名前が丸々残ってるな。

上の邪魔な紙を退ける。

名前は…、ロキシー…ミグルディア……

 

 

 

「は…え?なんでだって……おい…」

 

ロキシーの手紙がビリビリに破られていた。

怒りのあまり、声が漏れてしまった。

なんで、誰だ?誰がやったんだ。ふざけやがって。

 

魔力がちょっと漏れている。もしかすると、これが闘気なのかも知れないが、そんなことはどうでも良い。

 

 

ロキシーの、手紙を、ビリビリに、破った。

許される訳がない。犯人は必ずぶっ殺してやる。

 

何人かが此方を見ている。アイツらか?アイツらなのか?

いや、落ち着け俺。冷静に、冷静に尋問するんだ。殺すのは最後だ。まずは情報を聞き出す所からだ。

 

「あの、すいません」

 

「え?なんです…」

 

仕事をしていた文官に話しかける。普通に受け答えをしていた文官の言葉が突如止まった。視線が一点に注がれている。俺の手だ。

魔術の炎が灯ってるが、そんなことはどうだって良いだろう?

 

「ここの部屋で、手紙を管理してる人とかって居ますか?」

 

「ヒッ、私じゃ、私じゃないです!違います!」

 

ダメだ。話が通じない。

というか、大声で叫びやがって。周りから注目が集まってしまった。

 

「答えてください」

 

「あ、え…その…違うんです…」

 

しどろもどろになってる。使えない奴だ。というか、コイツがやったのか?だから答えられないのか?

 

「貴方がやったんですか?」

 

「おい、ご乱心だ!ギレーヌ殿を呼べ!」

 

「お辞めください、危険ですぞ!」

 

「逃げろ!」

 

 

尋問の途中だが、周りの奴等がパニックになってしまった。浅野内匠頭のような扱いで、ちょっと怒りが覚めた。

どさくさに紛れて逃げられては叶わないので、扉を土魔術で塞ぐ。

 

「まあ、待ってくださいよ。あなた方にも訊きたいんです。私の大事な人の手紙がビリビリに破られて居たのですが、誰がやったか分かりますか?此処で、手紙に関連した仕事を請け負う人は誰ですか?」

 

「い、いやだ…助けてくれ!」

 

「ダメだ、開かねえ!」

 

話を聞きゃしない。別に取って食おうって訳じゃないのに。

それとも、ここ全員ぐるみでイジメやってたの?アイツだけグループラインからハブってやろうって?

辞めてくれ。その攻撃は俺に効く。

 

「ちょ、落ち着いてください。質問に答えさえしてくれれば良いんです」

 

「お前ら来てくれ!手伝ってくれ!」

 

「知りません!知りません!助けてください!」

 

扉に全力で体当たりする者。命乞いを始める者。

まるで殺人鬼か何かのごとき扱いだ。

え、どう落ち着かせれば良いんだ?逆に、今のイメージを利用して『逃げようとしたら殺す』とか言って落ち着かせるか。

 

「逃げるな!逃げたら殺す!!!」

 

「ルーデウス、どうした!」

「どうしたの!」

 

俺が叫んだ瞬間。ギレーヌとエリスが扉を蹴り飛ばして突っ込んできた。二人が衝撃的な表情で此方を見てくる。

 

「ルーデウス…」

 

数秒して、固まっていたエリスが優しい表情で此方に向かってきた。

夫になってからも、滅多に見れない表情である。

 

「ルーデウス、あなた疲れてるのよ」

 

エリスがスカリーみたいなことを言いながら、優しく抱き込んで来る。

ギレーヌの表情も心なしか悲しそうだ。

 

「私からも、フィリップ様に言っておく。何、心配するな。頑張って書類仕事も覚えてみせる」

 

あのギレーヌが。四則演算ですら苦労してたギレーヌがそんなことを言った。

 

 

これはアレだ。お花畑でゆっくり過ごすことを提案されてるんだ。

 

「違うんです!」

 

誤解を解くのに三十分掛かった。

睡眠時間も勿論減った。ホントに暴れそうだ。

 

 

ーーー

 

翌朝。

 

「大収穫だ!」

 

事の報告をフィリップにすると、フィリップがそう言った。キャラがちょっと変わってないか?

 

「素晴らしい、素晴らしいよ!これで一人裏切り者が潰せる!」

 

高笑いでも始めそうな位に手を思いっきり上げて、コロンビアのポーズをしてクルクル回りながら、フィリップが嬉々として語っている。

 

内容はあまり分からなかったが、これで20人のトップ文官の内、一人の裏切りが分かったそうだ。良かったね。

 

 

 

「フィリップ様!大戦果だぜ!見つけた!」

 

そこに、一ヶ月くらい姿の見えなかったギースが帰ってきた。喜色満面の笑みを浮かべている。

 

「どうしたんだ?!」

 

フィリップがハイテンションに聞き返す。

ギレーヌは、俺より先にフィリップの心配をするべきじゃないだろうか。

 

「税金をくすねた下手人を見つけたんだ!ピレモンに金は全額渡したって言ってやがった!しかも、やった実行犯が息子のルークという奴ってことも分かった!大チャンスだ!」

 

「最高だ!ギース、臨時ボーナスだ!」

 

そういって、フィリップが机から袋をぶん投げる。ジャラジャラ音する辺り、中身は金だろう。

 

「あざっす!ヘヘ、上物に目星はついてんだ、早速やってくるぜ!」

 

そういってギースは受け取り様に駆けて行った。

フィリップも獣人を語らうときのような表情のまま出ていく。

 

ふと、頬を触ると、俺の口角までも上がっていた。

 

「へっ、ふひっ…」

 

ヤバイ、何も面白く無いのに笑いが出てくる。俺も少し頭が可笑しくなってるな。

フィリップらは喜んでいたが、その前に俺達が完全に可笑しくなりそうだ。

 

 

ダメだコイツら、早くなんとかしないと…

 

 




色々な意味で神の気配
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。