無職転生 ~領主になったら本気だす~   作:華氏使うな

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第十九話「出頭命令」

朝。小鳥が囀ずっている。朝チュンだが、朝チュンではない。

 

「おはようございます」

 

「ああ、おはよう」

 

清々しい朝に、おはようと挨拶が出来る。素晴らしいことだ。

今までは深夜2時起きだったが、朝六時にまで戻すことが出来た。

それもこれも、証拠が挙がったお陰だ。ルーク?とやらには感謝してもし切れない。

 

「おはようございます」

 

「ルディ、おはよう」

 

挨拶する相手の顔色も、随分見違えている。

最初に挨拶したのがフィリップで、次に挨拶したのがパウロだ。

 

夜中、けたたましい笑い声が聞こえて来たと思えば、バルコニーから身を乗り出して、肺がひきつる音をさせながら高笑いしてたフィリップ。

夢と現実の区別が付かなくなり、何もない虚空に向かって過去のパーティメンバーに謝罪を始めたパウロ。

何が原因なのか手がプルプルと震え続け、書類を提出したらギースに薬物中毒を疑われた俺。

 

明らかに何処か壊れていた俺達三人だったが、紙一重で真人間に戻ることが出来た。またしても意図せぬ形だが、ロキシーに助けられてしまったな。

 

何はともあれ一段落だ。

証拠を関連性が分かりやすいように纏められたら、フィリップが王都に行ってピレモン達を通報してくるそうだ。

後は告発するだけなので、もう余裕だとフィリップが言っていた。

 

待ってろよ、ピレモン。

今、引導を渡してやるからな…フィリップが。

 

 

ーーー

 

 

「パウロ・N・グレイラット殿、ルーデウス・N・グレイラット殿、フィリップ・B・グレイラット殿。及びエリス・B・グレイラット嬢。王都から出頭命令が出ています。来てください」

 

(あれぇ~?)

 

余裕とはなんだったのか。

ピレモンに引導を渡されそうです。

 

 

ーーー

 

 

「あの、すいません。何の容疑で出頭命令なんか出されてるんですか?」

 

「フィリップ殿とフィットア領主のサウロス殿に、戦争幇助の罪が掛けられています。また、パウロ殿もフィリップ殿の後見者なので、連帯責任が発生します。戦争幇助は罪が重いので、息子のルーデウス殿と娘のエリス嬢にも、連座で罰が下るでしょう」

 

「つまり、着いて行けば死あるのみだと?抵抗しても良いですか?」

 

「まだ裁定前なので、冤罪であるなら堂々と行けば良いのです」

 

上級貴族ということで手荒な真似こそされなかったが、俺達は馬車に拘禁状態で乗せられていた。

周囲には大量の騎士が居る。馬車の中にも三人の騎士が乗っていて、その内の一人が対応してくれていた。

犯罪者扱いの割に、対応が丁寧なのは有り難いことだ。

 

フィリップも犯罪をやらかすような奴じゃないし、王都観光位の気持ちで大丈夫そうだな。

 

エリスとフィリップは凄く堂々としている。

頼もしい。

若干挙動不審なパウロが恥ずかしい位だ。普通の反応のはずなのに。

 

 

「というか、何をしたら戦争幇助になるんですか?」

 

普通に疑問だ。余程のことをしないと戦争幇助なんて出来ないだろう。一個人の力は限られてるしな。

それに、フィリップもサウロスの爺さんもそんなことをする性格じゃない。

が、だからと言って完全な証拠のない冤罪なら何故出頭させられるのかが分からない。

それなら、適当な罪を騒ぎ立てるだけで、幾らでも出頭妨害なんてことが出来てしまうからな。

 

「色々なケースがありますが、今回の場合だと、フィリップ殿とサウロス殿が違法性のある奴隷を購入したことが原因だとされています」

 

「な、なんでそれが戦争幇助になるんだ?違法奴隷位、言っちゃ悪いが、上級貴族なら大体買ってるだろ」

 

パウロが吼える。ん?奴隷……?

 

「ミリス大陸で、拐われた獣族が奴隷として売られた問題で、緊張が高まってるのは御存じですか?お二方が購入なされたのは、ミリス大陸の獣族であると、起訴者によって主張されているのです。よって、国王陛下により、事実であれば有罪という判断が下った次第です」

 

 

おい、待てよ。

 

俺は知っている。この前、エリスとフィリップが出掛けたことを。そして、嬉しそうに獣族の子供を連れて帰って来たことを。

族長の孫だと知って我慢出来なかった、等とほざいて正当化してたことを、俺は知っている。

名前は、ミニトーナとテルセナ。奴隷を買うことで救済してる、とか大嘘こいて懐かせていたことを、俺は知っている。

ギレーヌの親戚だと知って、フィリップが隠蔽工作をしてたことを、俺は知っている。

 

 

ガン見したかったが、その反応をすると限りなく怪しいので、チラ見にとどめて覗き見る。

 

エリスとフィリップは、惚れ惚れするほどに堂々としていた。

 

(冤罪じゃないじゃねえか!)

 

なんでこんなに堂々としていられるんだ。この犯罪者二人は。バリバリに実行犯の分際で。

 

「まあ、フィリップ殿もわざわざ違法奴隷なんて買わないでしょうからね。証拠も捏造でしょう。国王陛下も、署名を集められると立場上受けざるを得ないんですよ。申し訳ないです」

 

え、てか連座するんだよね?大丈夫?俺も巻き添え喰らわない?

騎士が何か言っているが、今の俺には良く分からなかった。『ヤバイ』という言葉が、頭の中を延々と駆け巡る。

こんな状況になっても尚、やましいことなんて何一つとして無いかのように堂々としてる二人が恨めしい。

 

だ、ダメだ。冷や汗が止まらない。

なんとか弁護する方法を考えないと。

冤罪じゃないから行為自体を否認は出来ない。法律上で何か都合の良いことはなかったか?

 

様々な単語が頭の中をグルグルと回る。何か使えそうな物は…

 

あっ、そうだよ!推定無罪の原則と不遡及の原則があるじゃないか。

そもそも、その組織がミリスの獣人を売ってるなんて知らなかったし、ミリスで緊張が高まっていることも知らなかった。

ということにすれば良い。何も問題ない筈だ。

前者も後者も、水掛け論に持ち込める。

 

よし、そうと決まれば大丈夫だな。

だが、俺の知識は素人知識だ。一応間違いがあっては困るので、騎士に聞いておくことにしよう。

 

「あの、推定無罪の原則と不遡及の原則ってどんなんでしたっけ?」

 

「スイテ…、推定無罪?フソキュウ?というのは文字も想像が付きませんね。それは一体?」

 

(えっ?)

 

「え、あの…確実に100%有罪じゃなければ、罪には問われませんよね?それに、そんな曖昧な定義だと違法奴隷を購入した罪にしか問えないのでは?」

 

「はい?別にやってない可能性があっても、明らかに有罪だと国王陛下が思ったら有罪ですよ。何を言ってるんです?」

 

「流石に、国王という立場に就ける方なら、冤罪かどうか位の判断は出来ますよ。それに、圧力があっても陛下は公正に判断して下さいますからね。ご安心ください」

 

騎士達が、不思議そうな口ぶりでそんなことを…

えっ、そんな適当な感じなの?

 

「ウッソだろ、おい!」

 

思わずそんな声をあげてしまった。

絶対王政や中世世界観のガバガバな法律に悪態を付きながら俺は、馬車、もとい棺桶で揺られていったのだった。

冷や汗が止まらない。

 

 

ーーー

 

「あの、フィリップ様…大丈夫なんですか?」

 

夜。お花摘みに行くふりをして、フィリップにそれとなく伺いを立てる。

 

「ダメだね」

 

「ダメじゃないですか!」

 

堂々としてるから何か策があるのかと思いきや、諦めていたからあんなに堂々としてたようだ。

パッションで乗り切る気なのかも知れないが、流石にヤバすぎるだろう。

 

「なに、問題ないさ。実際に罪を侵して居ても、多数派は第一王子派だからね。パウロを失脚させないよう、第一王子派がなんとかしてくれるだろう」

 

「本当に大丈夫なんですか?」

 

「国王だって少数派に味方したってどうしようも無いからね。問題ないよ」

 

フィリップは自信ありげに言っているが…

 

「それに、まだ完全な形ではないが、幾つか証拠も持ってきたさ。いざってときは、有耶無耶に出来ると思うよ」

 

「もし、失敗したらどうするんですか?」

 

「命までは取られないだろう。心配要らないさ」

 

如何せん、フィリップが楽観的すぎる気がする。

間違ったことは言ってないが…

大丈夫なのだろうか?

 

 

 

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