無職転生 ~領主になったら本気だす~   作:華氏使うな

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第二十二話「魔大陸グルメツアー」

 

 

「………」

 

あれから三時間位経ったが、何かが見つかる気配はない。

たまに、魔物が襲ってきたりするが、その位だ。

 

人・建造物と言った、安心出来るような物は出てこない。ただ、魔物と不毛な荒野だけが広がっていた。

 

「グガァァァァッ!」

 

ほら、また来た。シルエットはワンコロっぽいのだが、細部細部に人を不快にさせる意匠が凝らされている。一体全体、どういう目的があってこんな姿になったのだろうか。

 

魔術で適当にあしらう。ボッ、と火がついて魔物は焼け死んだ。中途半端に燃えながら突っ込まれたら困るので、ちゃんと強火だ。

 

「グウゥゥゥ……」

 

おっと、これは魔物の鳴き声じゃないぞ。

俺の腹の音だ。

さっきから、腹が鳴って仕方ない。俺が三時間位かな?と分かるのも腹時計のお陰だ。

普段から時計があまり無い生活をしてると、こういう体内時計ってのはかなりの精度になるみたいだ。

 

で、食料だ。

水の方は幸いにして、こんなカラカラした荒野でも魔術で幾らでも飲めるのだが、食料になりそうな物は全くない。

たまに枯れかけの雑草があったりする位だ。

まあ、昔は藁食ったりしてたらしいから食えるかも知れないが。とはいえども、腹を満たせる程の量はない。

 

魔物が居るじゃないかって?

いや、良く考えてほしい。

あれは、そう…五年前のことだ。

 

ギレーヌがエリスを諭してくれたとき、なんと言っていた?そう。「食う物がなくて、魔物の糞を食って死にかけた」と言っていたのだ。

 

が、ここで疑問が湧かないだろうか?

そう、糞があるなら当然、出した奴も居ると言うことである。

ギレーヌの腕前を考えると、魔物が食えるなら狩って食えば良いだけだ。なのに、そうしなかった。

つまり、魔物は人体に害なのではないか?ということだ。

で、進んでたが空腹に耐えかね、食えない物を食って死にかけた、と。

 

俺は、そのような仮説を立てた。

最初は魔物を食おうと思ってたが、見た目が毒々しいことに怖じ気づいた俺が、何か参考になりそうなことが無いか漁ったときに出てきた記憶だ。

 

どうせ襲ってくるなら何でも同じだと、あまり定義自体に興味を持ってなかったことが悔やまれる。

 

人間を襲うと魔物で、それ以外が動物?

いや、それは魔物と魔獣の違いだったか?

等と言ったような、超初歩のことですら良く覚えていない。

 

俺は魔物を食ったことがあったっけか。

例えば『毒のある魔物もいるし、無い奴もいる』みたいな可能性もある。

なら、食える魔物は食卓に出されたかもしれない。

 

…いや、それもないか。

パウロはたまに、森へ狩りに行っていた。趣味では無く、必要に応じてだ。

しかし、パウロが『俺が今日狩ってきた捕れたてだぞ~』とか言って、魔物を持って帰ってきたことなど無かった。

つまり、食える魔物など居ない可能性は高いのではないか?

 

魔物になる条件は、魔力だったか?

魔大陸は魔力溜まりが多いと言うし、理に叶った説明な気がする。

 

(じゃあ、魔力を抜き出せば食べれるのでは?!)

 

論理的な俺がそれに気づいた。

魔物に共通した点は魔力くらいだ。多分。

で、全部食えないなら魔力が原因な可能性が高い。

つまり、そこさえ抜けば只の肉……

 

 

 

(で、どう抜けば良いんだ?)

 

冷静な俺がそう囁いた。

食事はもう暫く我慢しようと思います。

 

 

ーーー

 

1日経った。

土魔術でドームを作って寝たので、襲撃は心配要らなかったのだが、如何せん空腹で寝付けなかった。

 

本格的に不味いな。

このまま行くと、ギレーヌ状態になりそうだ。

腹が減り、体力が磨り減り、更に魔物も出てこない。

確実なバッドエンドだ。

近接型で体力のあるギレーヌが"死にかけ"なら、魔術師の俺は、その状態に陥れば"死"あるのみだ。

 

…四の五の言ってる場合じゃないな。

仕方ない。──食うか!

 

 

ーーー

 

 

「ヒャッハー!汚物は消毒だぁ!!」

 

出会い頭にさようなら!

魔物に炎をぶちこんで焼き払う。

って、ダメじゃん。消毒(消し炭)したら食えないじゃん。

 

ごめん、名も知らぬ魔物君。

日本人は良く食材に感謝すると言われてるけど、君は全くの無駄になってしまった。本当にごめんよ。

 

よし、次の魔物君!君は感謝しながら食ってあげるよ!じゃあ氏ね!

 

今度は焼いてしまっては仕方ないので、必殺の土魔術を食らわせてやる。

水聖級魔術師だから勘違いされがちだが、俺はどちらかと言えば土の方が得意だ。

 

魔術はバガン!と直撃して……

 

……魔物は粉々に砕け散った。

 

ご、ごめん。

 

 

ーーー

 

「おおっ!……おお?」

 

あのあと、三体目でやっと食える状態で仕留められた俺は、上手いこと上の方だけ切り離して、手のひらで焼いていた。

薪等も全く見当たらないので、仕方ない処置だ。

 

肉が焼ける匂いがする。非常に良い香り………?

 

「うえっ、ゴホッ、ゴホッ……」

 

なんだこれは。

とんでもなく目に染みる匂いだ。

煙は出てないが、まるで煙に当てられたみたいに感じる刺激臭だ。

 

これ、味は大丈夫か?

味も臭いも、根本のところではそう変わらない。どちらも成分を感じているからだ。

そう考えると、臭いと味は相当な相関関係にある気がする。

 

いや、ご託はいらない。どうせ食わなきゃいけないんだ。頭で考えたって分かるものか。

 

「ええい、ままよ!頂きます!」

 

パクっ、と口の中に肉を放り込む。

口の中で味わいが広がる。

それはさながら、様々な美食をかき集めて、一つにしたような味わい。

それぞれの味が自分を強く主張しつつも、メインテイストである酸味が主役として引き立てられている。

つまり、これは…

 

(ゲロじゃねえか!)

 

「うっ、オロロロロロロロロロロ」

 

直後に昇ってきたそれと、味はまったくもって一緒だった。通りで誰も食わない訳だよ!

 

一通りだし終わった後に、冷静に状況を纏める。

つまりアレか。

 

俺は今……ゲロ味の肉を食うか、糞味の糞を食うかの選択を迫られてると……?

 

 

ヒトガミ様…どうか、どうか僕に助言を…!

 

つい、そう思ってしまった。思ってから、良く考えたら凄く嫌なので後悔した。

 

その日も結局断食した。が、吐いたせいで動く気も沸かなかったので、移動もしなかった。

 

ヒトガミは出てこなかった。

良かった。

 

 

ーーー

 

 

断食生活二日目。

魔物の肉が食えないなら、土を食おう。

俺はそう思い至った。

農家の人は土を食べる…というのは重大な偏見かもだが、食えない物じゃない筈だ。

あれよりはマシな味だと思いたい。

 

幸いなことに、周囲に土は沢山ある。

適当な場所の物を掬って食べる。

 

うーん、魔物の肉よりかはマシだが…

ボソボソとしてるし、飲み込むのにはかなりの抵抗感を感じる。

味自体にそこまで不愉快な要素は無いはずなのに、土の味ということが脳に強い抵抗感を与えてるみたいだ。

 

どうしたもんかな。

他に何か案はないかと考えると…

 

(ん…?)

 

良く目を凝らすと、あちらの方に黒土がある。

なんでこんなところに?

 

と思わないでも無かったが、今は気にしない。黒土の方が栄養がある筈だ。多少は食えるかも知れない。

 

黒土を掬う。

ボロボロとしてるし、固い。水が無いからからか?

 

口に含み、味を感じる。一体、どんな味なのか…

 

「ぶへっ、ぺっ!ぺっ!」

 

にっが!とんでもなく苦い。

反射的に口から吐いてしまった。

だが、不思議だ。苦いには苦いのだが…土のように本能的な抵抗感は薄かった。

味もなんていうか、焦げ肉のような…

 

まさかと思い、近くを見る。骨が転がっていた。

風化してるようだったので、古い物かと思ったが…若干熱を持っていた。

 

つまり、これは──消し炭肉だ。

焦げ肉。

炭化は偉大だ。どんな物でも炭の味に変えてくれる。

ゲロと炭。どちらかと言えば炭の方がマシなのは、言うまでもない。

 

かくして俺は、やっとの思いで食べれる物を手に入れることが出来た。

 

食は凄く細くなった。

成長に悪影響がないと良いんだが…

 

 

ーーー

 

あれから相変わらず、焦げ肉を食べ続け、進む日々。

一週間経った。

そろそろ、何も見えなくて不安になってくる時期だ。

この道らしきものは、どこにも繋がってないんじゃないか。そんな気がする。

 

あまりにも代わり映えがしないと、頭が可笑しくなりそうだ。魔物も最初は刺激になっていたのだが、慣れてルーティン的に処理出来るようになると、却って精神に悪影響になっていた。

 

水・食料はあるにはある。が、どれも喜びを感じられるような物じゃない。栄養補給自体は問題ないが、腹も満たせないし味も不味いのでは寧ろストレスだ。

 

そうして、鬱憤が溜まるばかりで何もない日々は唐突に終わりを告げた。

 

「ふっ……ぐっ………」

 

腎臓が痛い。

とんでもなく痛い。

毒って感じじゃないのだが、塩を取りすぎたみたいな痛みがする。

 

どうすれば良いんだ、これは。

このままでは進むこともままならない。

げ、解毒魔術とかなら効くか…?

 

解毒魔術を掛ける。すると、かなりマシになった。

ゼニスに解毒魔術を習っておいて本当に良かった。

 

でも、間違いなく原因は肉だよなぁ…

 

早くどうにかせねば。

 

ーーー

 

更に一週間経った。

発狂しそうだ。

マジで何もない。

 

魔物、荒野。それだけだ。

どうしよう、ヒトガミの助言に従うべきだったか?ただ、今から戻ると二週間のロスだ。

勿体ない気がする。だが、進んだところで何かあるのか?四週間以上経って何もなければより損だ。

損切りするべきか、否か。そんなことを悩むほど俺は追い詰められていた。

 

デカイ亀の魔物、ネズミの魔物、犬の魔物…

全部消し炭にした。

そして全部炭の味だ。辛くなったら解毒魔術。

このルーティンが続くばかりで、それ以外には何もない。

 

辛い。

 

ーーー

 

 

三週間経った。

亀の群れらしき物が遠目に見える。

燃やしに行くか。

 

 

 

 

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