無職転生 ~領主になったら本気だす~ 作:華氏使うな
ーーーロキシー視点ーーー
親との再会を果たした私は、やることもないので暫く村に滞在することにした。
親の想いがやっと分かった。
それだけで、帰ってきて良かったと思う。
その後は、村の外で待ってくれていたエリナリーゼと一緒に、村でダラダラとしていた。
ミグルド族を見たエリナリーゼは、お眼鏡に叶ったようで、ミグルド族を早速口説いたりしてたのだが…『童貞っぽい見た目なのに、経験者だったりして扱いが分かりにくい』などとロクでもないことを言って、不満そうにしていた。酷い評価だ。
私も舌が肥えてしまったようで、どうにも食事だけは不満を感じていた。が、お互いに概ね良好な生活を送れていただろう。
魔大陸にあるとは言っても、基本的に貧乏な村だ。わざわざ、盗賊だってこんな村を襲ったりしない。
そう思っていたのだが…
ある日の昼下がり。甲羅に何かが当たった音がした。
そして、大きな音を立てた。爆発音だ。こんな音は自然に起きない。
「ロキシー!」
「はい」
エリナリーゼは歴戦の戦士らしく、即座に動いた。
私も杖を持って飛び出す。
間違いない、襲撃者だ。全く、何もこんな村をわざわざ襲わないでも……私は、そう思わずには居られないのだった。
ーーールーデウス視点ーーー
「汚物は消毒だあ!!」
俺は、この冒険で学んだことがあった。
それは、無理にでも楽しみを作らなければ、人は壊れてしまうということだ。
だからこそ、バカみたいでもこうしてチンピラの物真似をしているのだ。
尤も、本心で楽しめてはいないので棒読みだが。意味あるのかな、本当に。
魔術を直撃させる。
これをすると、鈍いながらに亀どもは逃げ出すので、威嚇するように水マシンガンを飛ばしてやろう、と思ったのだが、今日の亀は動く気配がない。
もしや、もう死んでる?
題して、亀の大量不審死事件だ。恐ろしい。周囲にシリアルキラーでも居るのだろうか?あ、俺か。
なんて下らないことを考えていたが、ふと魔大陸に来る直前のことを思い出した。
そう言えば、あのときも勝ったと思ったらノーダメージだったのだ。
耐えるどころか、全然平気な生き物が居たって不思議じゃない。魔術があるからと言って慢心していると、ああ言うことになるのだ。
確実に、慎重にトドメは刺そう。
爆発なんかじゃ甘っちょろい。直接、火で燃やしてやろう。
「死ねえええええええい!!」
勿論、遊び心も忘れずにだ。
亀は固いだけで遅いから出来ることだ。
どうせ、ロクな攻撃手段など持ち合わせていない。そう思っていた。
アウトレンジから打つことで、確実に安全策を取っていたとさえ思っていた。
だから俺は…
「そこまでです!」
魔術の詠唱に、反応出来なかった。
多少は加減された魔術が直撃する。
「ぐぼらっ!」
宙を回転しながら地面に落ちる。あ、危ない。一歩間違えてたら首の骨が折れてたぞ。
と、思う間も無く上から女がマウントを取ってくる。
フランスパン見たいなロールを持った、超美人の女だ。
つまり、間違って俺は人間に攻撃してしまったのだろう。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「…ほう?中々イケメンじゃありませんの」
ジュルリと女が舌なめずりをする。
喜んで!
いや、違う。貞操の危機だ。童貞じゃないけど。でも、完全に浮気だ。これはいけない。何がいけないって、下半身的にはバッチコイなことだ。
「勘違いです、すいません!だからストップ!スターップ!!」
「気にしてないですのよ。だからほら、行きますわよ」
「そこの人、助けてください!」
ダメだ、主語が無いのに何を要求されてるのか完全に分かってしまう。
青い髪の、ロキシーを彷彿とさせる女の子に助けを求める。
その女の子が驚いたように顔を上げる。
ジト目の美少女だった。
って、えっ?!
「し、師匠?!」
「え?……あっ、ルディ?!」
俺は四週間の旅の果てに、まさかの再会を果たしたのだった。
ーーー
「お久しぶりです、師匠!」
ロキシーが居た。
それだけで、俺の今までの旅の鬱憤は全て消しとんでいた。
髪、目、顔…どれを取っても、やっぱりロキシーは素晴らしい。
「ちょっと、わたくしにも反応して下さっても良いのですのよ」
「あっ、すいません、どちら様でしょう」
「冷たいですわね。わたくしの名前はエリナリーゼ。エリナリーゼ・ドラゴンロードですわ」
フランスパンの美人さんの方は、エリナリーゼと言うらしい。何処かで聞いたことのあるような名前だ。どこだっけ?
まあ、そんなことはどうでも良い。
今はロキシーだ。
エリナリーゼと話してると、ズルズルと浮気してしまいそうな気がする。それはいけない。というか、エリス達は無事なのか?
すっかりその可能性は考えていなかったが、パウロ達も拐われてるかも知れない。
魔大陸に俺を放逐した犯人の目的はサッパリ分からないが、情報収集はすべきだろう。
それに、何が左に進めだ。ロキシーとの再会以上に良いことなど無い。ヒトガミとやらを信じなくて本当に良かった。
「僕はルーデウス・グレイラットです。宜しくお願いします」
考えることが多くて空返事になってしまったが、浮気しないためには、この位で丁度良い。そうとさえ思っていたのだが…
「げえっ、パウロの息子ですの?」
突然、エリナリーゼの誘惑度が格段に下がった。パウロあいつ、一体何やったんだ?
「こんなに可愛らしい子がパウロの息子なんて、運命は残酷ですわ…!」
「あの…父様は一体、何をしたんですか?」
「知らなくて良いですのよ」
今度はエリナリーゼの返事が素っ気無くなった。
魔大陸にまで来ても轟くパウロの名。世界が狭いのか、パウロの顔が広いのか。
というか、非常にパウロが何をしたのか気になる。これもエリナリーゼの作戦なのか?
なんて策士なんだ。
暫くエリナリーゼをジーっと見るが、結局答えてくれることは無かった。いつか聞き出してやりたい。
そういえば、エリナリーゼってパウロのパーティメンバーか。ギース達が喋ってたんだ。
「………」
ロキシーはさっきから凄く静かだ。
チラチラと此方の方を見てくる。
「で、師匠、さっきから静かですね」
「あっ、その…ルディが思ったより大きくなってて…」
ほほーん、惚の字か?
なんてことだ。凄まじく嬉しい。自発的に貞操の危機だ。
俺は今12歳だが、健康的な生活を送ってるお陰でそれなりに大きい。若干、ロキシーを越えてるかな?って位だ。可能性はある。
あれ、でもそう考えると今のロキシーってお姉さんになってないと可笑しくないか?
「師匠はあんまり変わりませんね」
「魔族ですから。寿命が長いんです」
「ほーん……因みに、師匠は今おいくつで?」
「46歳です。ミグルド族の寿命は200歳位なので、人間に換算すると…18歳位ですね」
ナチュラルに失礼なことを聞いてしまったが、ロキシーは気にしてなかった。流石だ。
そして、前世と合わせて同い年か。ちょっと嬉しい。
ただ、18歳か。なら、もうちょい大きいJKロキシーになってそうな物だが、個人差の範囲なのか?
「ここは私の故郷なんですよ」
そう言う語り口でロキシーが話し出す。
幼い頃に辛かったこと。
村を出たこと。
冒険者になったこと。
そして、俺達と出会い、里帰りしようと思ったこと。
親と分かり合えたこと。
そんなことを話してくれた。
想いが伝わってくる、素晴らしい話だった。
「あっ、あれが私の両親なんですよ」
ロキシーがそんなことを言う。
目線の先には、中学生位の男女が二人。
が、何故か硬直してる。
(んん?)
更に二人の目線の先には……
先程までロキシーが幸せそうに語っていた生家が、激しい音を立てて燃え盛っていた。
はわわ…