無職転生 ~領主になったら本気だす~   作:華氏使うな

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第二十五話「神を名乗る詐欺師?」

 

 

白い空間。まただ。

 

 

………

 

 

「やあ」

 

 

…チッ………

 

「返事をしてくれよ」

 

………

 

「無視かい、そうかい」

 

………

 

「強情だね。でも、僕の話を聞かないと後悔するよ?」

 

……………

 

「まあ、話を聞けば返事をしたくなる筈さ」

 

………

 

「まず、君の家族は、君のことを探して旅に出た。この意味が分かるかい?」

 

 

………クソッ、ああ、分かるさ。そりゃ、危険があるってことだろ?

 

「ご名答。まあ、僕も具体的に何があるかまでは分からないけど…、兎に角、君は早く帰る必要がある」

 

じゃあ、お前の指示に逆らって大正解だったじゃねえか。

ロキシーもエリナリーゼも、この上無く頼もしいだろ。

 

「それは否定しないよ。でも、君は僕の助言に従ってれば、もっと早く帰ることが出来た」

 

そうかよ。でも、精々誤差の範囲だろ。どんなに強い奴が居たって、物理的な距離は無視出来ないよな?

 

「まあ、聞いてくれ。君は左に進めば、クラスマという町に着いていたんだ。そこには、魔界大帝キシリカ・キシリスという人物が居る。知ってるかい?」

 

知ってる。確かに、今のメンバーよりも強いかも知れないな。で、なんだってんだよ。

 

「君は、なんやかんやあってキシリカに食事を奢る。そして、そのキシリカはその地の魔王、バクラーハグラーの上司だ。バクラーハグラーは、海族にコネを持っている。だから君は、食事のお礼に、キシリカに口添えをして貰うことで、クラスマから中央大陸北部に一週間程度で帰れる。そして、そこから更に一ヶ月でアスラ王国に着く。その頃はまだ、君の家族は国内を探してるから、君の誘拐事件は笑い話で終わることになるのさ」

 

随分と都合の良い話だな。そんなご都合主義みたいな話があるのか?

 

「調べてくれたって構わないよ?僕の話が全部事実だって分かる筈さ。尤も、だから何だって話でも無いけどね」

 

じゃあ、今キシリカが何処に居るのか教えてくれよ。ロキシーとエリナリーゼを回収して帰れば、最良の形だろ?

 

「それは出来ない」

 

なんでだよ!俺の手助けをしたいなら可笑しいじゃねえか。何が目的なんだ?

 

「僕も万能じゃないってことさ。色々と制約がある。例えば、君の前に表れることだって、全く制御出来てないからね。不意のことなんだ」

 

じゃあなんだ、制約ってのを教えてくれよ。

それも勘案して、上手くプランを立てれば良いだけだ。

 

「それも、出来ない」

 

ハッ、それもまた制約ってことか?随分都合の良い制約なんだな。そういう秘密主義的なところが、一番信用出来ない理由なんだよ。

 

「まあ、僕のことはなんだって良いさ。ただ、君は調べていく内に、僕の言ってることが本当だと気づくだろうから、助言だけはしておこう」

 

で、お前がなんで俺のことを助けたいのかだって、サッパリ分からないんだが。

 

「面白いからだよ。理由としては不十分かい?」

 

それなら、お前にしたって、俺が魔大陸を旅する方が面白いだろ?

ただ船に乗って終わり!って話より、お涙ちょちょぎれる話の方が、お前みたいに高みで見下ろすタイプの輩には楽しいんじゃないのか?

 

「そこはほら、個人の趣向さ。僕はハッピーエンドが好き。それだけだよ」

 

へえ、そうかい。じゃあ、パウロ達に伝えてくれよ。

貴方の息子は無事に帰ってきます。だから、家で大人しく待ってて下さいってな。

 

「君の父親が、それで待ってると思うかい?それに、繰り返し言うけど、僕も万能じゃない。今、君の家族に声を届けることは出来ない」

 

……今のは、俺が間違ってた。パウロが待ってる訳ないってのは認めてやる。

 

「納得してくれたかい?じゃあ、助言を授けよう。ルーデウスよ。リカリスの町に行き、ノコパラという男に接触しなさい。そうすれば、貴方の悩みは後々解決するでしょう」

 

でしょう………でしょう………でしょう………。

 

そんなエコーと共に、俺の意識は消えて行った。

 

 

ーーー

 

 

「うおっ…」

 

朝だ。

体の感覚が丸っきり変わる感覚は慣れない。変な声を出してしまった。

隣にはロキシー……の父親のロインが寝てる。

華の無いことだ。

 

それはさておき。

俺は、ヒトガミが信用に足るのか、考えなくてはならない。

ヒトガミ云々は抜きにして、俺の家族が、俺のことを探しに来るということは、分かる。納得出来る。

 

だから、早く帰る必要があるというのは、どのような状況下でも認識していただろう。例え、ヒトガミが『ゆっくり帰れ』と言っていたとしても。

 

でだ。

ヒトガミのお告げは嫌な感覚がするし、感情的には信じられないが、それは前世の体のせいかも知れない。

 

一旦、そういうのをフラットにして考えると、確かに奴の助言通りに事が運べば、結末は悪くなかったと思う。

だからこそ、俺はヒトガミの話が本当なのか、そして奴が信用出来るのか、調べる必要がある。

 

キシリカ関連の話は、ロキシー達が起きたら訊くとして…

 

 

何か、ヒトガミの話に矛盾は無かったか考えよう。

 

『パウロ達に助言は出来ないよ。だから、早く帰った方が良いよ。僕はハッピーエンドが好きだから、そう悪いようにはしないよ』

 

ヒトガミの話を大雑把に纏めるとこうだ。

 

能力は不便というところから考えよう。

都合が良すぎる気がするが、矛盾はしてない。

これは保留だ。

 

気になることがあるとすれば、ハッピーエンド云々のところだ。

奴の口振りだと『偶然俺に繋がった』みたいな論調だったが、じゃあ例えばド悪党に繋がったりしたら、そいつを助けるのか?

自分でも若干無理のある主張な気がするが、偶然繋がった俺にハッピーエンドを見せる、というのは違和感がある気がする。

対象を選べる、となるとストンと俯に落ちる感じはするんだがな。

 

後は、片側の未来だけハッキリと見えてることも、気になる点だ。

原理が分からないから何とも言えないが、ヒトガミの助言に従った場合は『確実に帰れる』なのに、従わなかった場合は『家族が危ないかも?』だ。

「平行世界の未来が見える」というよりは、俺のことを誘導してるように感じてしまうのは、ひねた考えだろうか?

 

…くそっ、そもそも、こんなことを考えてる時点で、何か大きな思い違いをしてるのか?

考えが上手く纏まらない。

 

仕方ない、一回、キシリカのことをロキシー達に聞くか。

ロキシーは一人で居間に居た。

 

「おはようございます、ルディ」

 

「先生、おはようございます」

 

ああ、流石はロキシーだ。

顔を見ただけでスッカリ嫌な気分が晴れた。

エリナリーゼ達は、まだ起きてないみたいだ。

 

「あの、起き抜けで悪いんですけど、ちょっと聞きたいことがあるんです」

 

「なんですか?」

 

「クラスマの町って、どこら辺にあるんですか?」

 

「はあ…クラスマの町ですか?それなら、魔大陸の北西ですね」

 

「因みに此処は?」

 

「北東です。丁度、クラスマとは真逆でしょうか」

 

まあ、さすがに地図を見れば分かるような嘘は付かないか。

この感じだと、魔界大帝キシリカも居るんだろうなぁ…。

 

「じゃあ、魔界大帝キシリカの目撃情報を知ってたりしますか?」

 

「魔眼でも欲しいんですか?そんなのが無くても、ルディは十分強いと思いますよ?」

 

魔眼。確かに凄く魅力的だが、今はそれじゃない。

 

「目撃情報ですか……。ノコパ…知人が、一年位前に指名手配の紙を見たと言ってましたね」

 

 

ちゃんと居たのか。

話を纏めると、やはり嘘はついてない。

 

胡散臭いだけで、言ってることは本当なのか?

 

いや、信用するには早い。

嘘を付くには、本当のことを混ぜろと言う。

ヒトガミは『調べれば助言が本当だと分かる』と言っていた。なら、嘘が混ざるなら能力云々の方だ。

 

が、信用しないにしても、恐らく早く帰ろうとすれば、奴の助言が一番になってしまう気がする。助言自体に嘘は混ざってなさそうだからな。

だからと言って、脳死で従うようなことは危険だろう。気づかない内に操られかねない。

 

 

何か、ヒトガミの性質を確信出来ることが有れば良いんだが…

 

 

俺の旅の目標が、一つ追加された。

 

 

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